(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393430
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 37/23 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
F16L37/23
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-543636(P2017-543636)
(86)(22)【出願日】2016年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2016079105
(87)【国際公開番号】WO2017057720
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2017年9月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-196827(P2015-196827)
(32)【優先日】2015年10月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】井本 裕樹
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭60−30545(JP,Y2)
【文献】
実公昭63−32475(JP,Y2)
【文献】
実公平3−11446(JP,Y2)
【文献】
米国特許第6237631(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0067837(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する雄型管継手部材に取り外し可能に連結される雌型管継手部材であって、
該雄型管継手部材を受け入れる筒状周壁部、及び該筒状周壁部に径方向で貫通するように形成された施錠子保持孔を有する継手本体と、
該施錠子保持孔内に配置された施錠子であって、該筒状周壁部内に受け入れた雄型管継手部材を施錠するように該筒状周壁部から内側に一部が突出した施錠位置と、該雄型管継手部材に対する施錠を解除するように該施錠位置よりも外側に位置し該筒状周壁部から外側に一部が突出した施錠解除位置との間で変位可能とされた施錠子と、
内周面及び外周面を有し、該筒状周壁部を周方向で囲むように配置され、該筒状周壁部の外周面に沿って変位可能とされたスリーブであって、該スリーブの該内周面から該外周面に貫通し、該内周面に開口する内側開口周縁部、該外周面に開口する外側開口周縁部、及び該内側開口周縁部と外側開口周縁部との間に延びる孔内周面とを有する施錠子受入孔を有し、該施錠子受入孔が該施錠子保持孔と径方向で整合して該筒状周壁部から外側に突出する該施錠子の一部を受け入れて該施錠子が該施錠解除位置となることを許容する施錠子解放位置と、該施錠子受入孔が該施錠子保持孔と径方向で整合せず該スリーブの該内周面によって該施錠子を該施錠位置に保持する施錠保持位置との間で変位可能とされ、該スリーブが該施錠子解放位置にあるときに該施錠子受入孔の該内側開口周縁部、該外側開口周縁部、及び該孔内周面のうちの何れかが該施錠子に係合して、該施錠子が該スリーブを径方向外側に通過するのを阻止するようになされている、スリーブと、
を備える雌型管継手部材。
【請求項2】
該施錠子が球形の部材であり、該施錠子受入孔が該施錠子の直径よりも小さい直径を有する円形の孔である、請求項1に記載の雌型管継手部材。
【請求項3】
該スリーブの該内周面に凹部が形成され、該施錠子受入孔の該内側開口周縁部が、該凹部に開口して該継手本体の外周面から離れた位置となるようにされ、該スリーブが該施錠子解放位置にあるときに該内側開口周縁部が該施錠子に係合するようにされた、請求項1又は2に記載の雌型管継手部材。
【請求項4】
該施錠子が該施錠解除位置にあるときに、該施錠子の径方向での頂部の位置が、該スリーブの該外周面と略面一となる、請求項1乃至3の何れか一項に記載の雌型管継手部材。
【請求項5】
該継手本体に設けられた第1ガイド部と、該スリーブに設けられた第2ガイド部と、をさらに備え、該スリーブを該施錠子保持位置から該施錠子解放位置に変位させるときに、該第1ガイド部と該第2ガイド部とが係合して、該スリーブが該施錠子解放位置に向かってガイドされるようにされた、請求項1乃至4の何れか一項に記載の雌型管継手部材。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の雌型管継手部材と、
該雌型管継手部材に取り外し可能に連結される雄型管継手部材と、
を備える、管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌型管継手部材、及び雌型管継手部材と雄型管継手部材とからなる管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、雄型管継手部材と雌型管継手部材とからなる管継手において、施錠子によって雄型管継手部材と雌型管継手部材とを取り外し可能に連結するようにしたものがよく知られている。このような管継手における雌型管継手部材は、通常、雄型管継手部材を受け入れる継手本体と、継手本体の施錠子保持孔内において径方向に変位可能に保持された施錠子と、継手本体の外周面上に配置されて施錠子の位置を制限するようにされたスリーブとを備えている。この雌型管継手本体が雄型管継手本体との連結状態となっているときには、施錠子が、継手本体の内周面から突出して雄型管継手部材の係合溝に係合し、またスリーブの内周面によって径方向外側から押えられて係合溝に係合した状態に維持されるようにされ、これにより雄型管継手部材は雌型管継手部材から取り外しできない状態となる。この連結を解除する際には、スリーブの内周面に設けられた拡径部が施錠子と径方向で整合するようにスリーブを継手本体に対して変位させて、施錠子が雄型管継手部材の係合溝から径方向外側に変位可能な状態とする。この状態で雄型管継手部材を雌型管継手部材から引き抜くようにすると、施錠子は係合溝によって径方向外側に変位して係合溝との係合が解除される。
【0003】
連結が解除される際に、施錠子はスリーブの拡径部に向かって径方向外側に変位するが、この拡径部は、施錠子及び施錠子保持孔を径方向外側から覆うような内周面を有する形状とされている。この拡径部の内周面が施錠子の外側頂部に当接して該施錠子の径方向外側への変位を制限するようにすることで、該施錠子が施錠子保持孔から完全に外れてしまうことがないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−202310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
管継手を通して流すことが可能な流量は、主として管継手の流路の大きさによって決まる。したがって、最大流量を大きくするためには流路を大きくする必要があるが、そうすると必然的に管継手の径も大きくなる。上述のような管継手における雌型管継手部材においては、連結解除状態において施錠子が継手本体の内周面に突出しない位置となるが、そのときにこの施錠子が施錠子保持孔から完全には外れないようにするためにスリーブに施錠子全体を径方向外側から押える上記拡径部のような構造が設けられている。したがって、雌型管継手部材の外径は、継手本体の内径に少なくとも施錠子と該施錠子全体を覆う部分のスリーブの厚みとを加えた大きさとなり、このような構成が管継手の外径を小さくすることの妨げとなっていた。
【0006】
そこで本発明は、上記従来技術の問題に鑑みて、流路に対する外径の大きさを従来のものに比べて小さくすることが可能な構成を有する雌型管継手部材、及びこのような雌型管継手部材と雄型管継手部材とからなる管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、
対応する雄型管継手部材に取り外し可能に連結される雌型管継手部材であって、
該雄型管継手部材を受け入れる筒状周壁部、及び該筒状周壁部に径方向で貫通するように形成された施錠子保持孔を有する継手本体と、
該施錠子保持孔内に配置された施錠子であって、該筒状周壁部内に受け入れた雄型管継手部材を施錠するように該筒状周壁部から内側に一部が突出した施錠位置と、該雄型管継手部材に対する施錠を解除するように該施錠位置よりも外側に位置し該筒状周壁部から外側に一部が突出した施錠解除位置との間で変位可能とされた施錠子と、
内周面及び外周面を有し、該筒状周壁部を周方向で囲むように配置され、該筒状周壁部の外周面に沿って変位可能とされたスリーブであって、該スリーブの該内周面から該外周面に貫通し、該内周面に開口する内側開口周縁部、該外周面に開口する外側開口周縁部、及び該内側開口周縁部と外側開口周縁部との間に延びる孔内周面とを有する施錠子受入孔を有し、該施錠子受入孔が該施錠子保持孔と径方向で整合して該筒状周壁部から外側に突出する該施錠子の一部を受け入れて該施錠子が該施錠解除位置となることを許容する施錠子解放位置と、該施錠子受入孔が該施錠子保持孔と径方向で整合せず該スリーブの該内周面によって該施錠子を該施錠位置に保持する施錠保持位置との間で変位可能とされ、該スリーブが該施錠子解放位置にあるときに該施錠子受入孔の該内側開口周縁部、該外側開口周縁部、及び該孔内周面のうちの何れかが該施錠子に係合して、該施錠子が該スリーブを径方向外側に通過するのを阻止するようになされている、スリーブと、
を備える雌型管継手部材を提供する。
【0008】
当該雌型管継手部材においては、施錠解除位置となった施錠子を貫通した施錠子
受入孔に受け入れるようになっている。そのため、施錠解除位置にある施錠子を径方向外側から覆って押える拡径部を有する従来の雌型管継手部材に比べて、施錠子を覆う部分がなくなる分だけスリーブを薄くすることが可能となる。これにより、流路に対する雌型管継手部材の外径を従来のものに比べて小さくすることが可能となる。
【0009】
好ましくは、該施錠子が球形の部材であり、該施錠子受入孔が該施錠子の直径よりも小さい直径を有する円形の孔であるようにすることができる。
【0010】
より好ましくは、該スリーブの該内周面に凹部が形成され、該施錠子受入孔の該内側開口周縁部が、該凹部に開口して該継手本体の外周面から離れた位置となるようにされ、該スリーブが該施錠子解放位置にあるときに該内側開口周縁部が該施錠子に係合するようにすることができる。
【0011】
このような構成により、施錠子受入孔の内側開口周縁部が球形の施錠子のより外側の位置で接触するようになるため、スリーブを施錠子解放位置から施錠子保持位置に変位させる際に施錠子受入孔の内側開口周縁部によって施錠子に加わる力がより内側向きとなり、施錠子をより円滑に径方向内側に向かって施錠位置にまで変位させることが可能となる。
【0012】
好ましくは、該施錠子が該施錠解除位置にあるときに、該施錠子の径方向での頂部の位置が、該スリーブの該外周面と略面一となるようにすることができる。
【0013】
このような構成とすることにより、施錠子を利用した雌型管継手部材において、流路に対する雌型管継手部材の外径の大きさを実質的に最小とすることが可能となる。
【0014】
好ましくは、該継手本体に設けられた第1ガイド部と、該スリーブに設けられた第2ガイド部と、をさらに備え、該スリーブを該施錠子解放位置から該施錠子保持位置に変位させるときに、該第1ガイド部と該第2ガイド部とが係合して、該スリーブが該施錠子保持位置に向かってガイドされるようにすることができる。
【0015】
当該雌型管継手部材においては、スリーブを施錠子解放位置とするためには、施錠子受入孔と施錠子とを径方向で整合させる必要があるが、第1及び第2ガイド部によりスリーブを施錠子解放位置に向かってガイドすることにより、施錠子受入孔と施錠子との位置を整合させるためのスリーブの操作をより容易に行うことが可能となる。
【0016】
本発明はまた、
上記の何れかの雌型管継手部材と、
該雌型管継手部材に取り外し可能に連結される雄型管継手部材と、
を備える、管継手を提供する。
【0017】
以下、本発明に係る管継手の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る管継手の非連結状態における断面図である。
【
図2】
図1の管継手の雄型管継手部材が雌型管継手部材内に挿入されている状態を示す図である。
【
図4】施錠子、施錠子保持孔、及び施錠子受入孔を示す拡大図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る管継手の非連結状態における断面図である。
【
図7】
図6の管継手の雄型管継手部材が雌型管継手部材内に挿入されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態に係る管継手100は、
図1に示すように互いに取り外し可能に連結される雄型管継手部材102と雌型管継手部材104とからなる。
【0020】
雄型管継手部材102は、雄側流路110を有する筒状の雄側継手本体112と、雄側流路110内でその長手軸線Lの方向に変位可能に配置された弁体114と、弁体114を雄側継手本体112の前端開口116に設けられた弁座部118に向かって押圧するスプリング120とからなる。弁体114がスプリング120の付勢力によって弁座部118に押しつけられることにより、雄側流路110は閉止された状態となる。雄側継手本体112の外周面112aには、後述する施錠子136が係合する円環状の施錠子係合溝122が形成されている。図示の雄側継手本体112は、相互に同軸状にされた前方筒部112A及び後方筒部112Bが連結して構成されているが、それらを一体成形のものとすることもできる。
【0021】
雌型管継手部材104は、雌側流路130を有する筒状の雌側継手本体132と、雌側継手本体132に形成された施錠子保持孔134内に配置された施錠子136と、雌側継手本体132の外周面132a上に配置されたスリーブ138とを備える。雌側継手本体132は、雄型管継手部材102を受け入れる筒状周壁部140を有し、施錠子保持孔134はこの筒状周壁部140に径方向で貫通するように形成されている。雌側継手本体132はさらに雌側流路130の中央に配置された弁座部142を備えており、この弁座部142と筒状周壁部140との間には長手軸線Lの方向に摺動可能に配置されたスライド弁144が配置されている。スライド弁144は、弁座部142に密封係合する円環状の弁体146と、この弁体146を保持し筒状周壁部140の内周面140bに対して摺動する筒状の弁体支持部材148とからなる。スライド弁144は、スプリング150によって雌側継手本体132の前端開口152に向かって付勢され、スプリング150の付勢力によって弁体146が弁座部142に押しつけられることにより雌側流路130を閉止する。スリーブ138には、その内周面138bから外周面138aにまで貫通する円形の施錠子受入孔154が形成されている。施錠子受入孔154の直径は、施錠子136の直径よりも小さく、施錠子136を径方向外側に通過させない大きさとなっている。図示の雌側継手本体132は相互に同軸状にされた前方筒部132A及び後方筒部132Bが連結して構成されているが、これは後方筒部132Bに弁座部142を一体成形するようにしたためであり、前方筒部132A及び後方筒部132Bを一体成形とし、それらとは別体に形成した弁座部を連結するようにすることもできる。
【0022】
弁体146の前端には前方(図で見て右方)に突出した円環状の外側リップ部146aと内側リップ部146bが形成されており、その間に吸着空間146cを形成している。後述するように雄型管継手部材102を雌型管継手部材104内に挿入すると雄側継手本体112の前端部112bが弁体146に当接することになるが、その際に弁体146の外側リップ部146aと内側リップ部146bとが雄側継手本体112の前端部112bによって潰される。そうすると、吸着空間146c内の空気は一定量排出され、吸着空間146cが圧縮されたような状態となる。この状態で雄側継手本体112が弁体146に対して相対的に前方に変位しようとすると吸着空間146cは真空状態(負圧状態)となり、弁体146を前方へ引っ張ろうとする吸着力が生じる。
【0023】
図4に示すように、スリーブ138の内周面138bには凹部156が設けられている。施錠子受入孔154は、スリーブ138の内周面138bに開口する内側開口周縁部154a、外周面138aに開口する外側開口周縁部154b、及び内側開口周縁部154aと外側開口周縁部154bとの間に延びる孔内周面154cを有しており、内側開口周縁部154aは、凹部156に開口して雌側継手本体132の外周面140aから離れた位置となっている。また、雌側継手本体132の施錠子保持孔134は、その内周面134aが当該雌側継手本体132の半径方向内側に向うに従って狭くなるようなテーパー形状となっていて、雌側継手本体132の内周面に開口する内側開口部134bが施錠子136の直径よりも小さくなっている。これにより、施錠子136は施錠子保持孔134を径方向内側に通過して施錠子保持孔134から外れることがない。
【0024】
図1の非連結状態においては、雌型管継手部材104のスライド弁144はスプリング150によって前方へ付勢された弁体146が弁座部142に押しつけられた状態となり、また弁体支持部材148が施錠子136及び施錠子保持孔134の径方向内側に位置している。施錠子136は、スライド弁144の弁体支持部材148によって内側から支持され、その一部が雌側継手本体132の筒状周壁部140の外周面140aから突出して、スリーブ138の施錠子受入孔154に受け入れられた施錠解除位置となっている。スリーブ138はスプリング159によって当該雌型管継手部材104の前端側(図で見て右側)に付勢されているが、施錠子受入孔154の内側開口周縁部154aが施錠子136に係合することにより、
図1に示す施錠子解放位置に保持されている。このときに施錠子136の径方向での外側頂部136aが、
図4に示すように、スリーブ138の外周面138aと略面一となる程度にまで、スリーブ138の厚さは薄くなっている。
【0025】
図1の非連結状態から、雄型管継手部材102を雌型管継手部材104内に挿入していくと、雄側継手本体112の前端部112bがスライド弁144の弁体146に当接してスライド弁144を雌型管継手部材104の後方(図で見て左方)に押し込み、雌側流路130を開放させる。また同時に、雌側継手本体132の弁座部142が雄型管継手部材102の弁体114に当接して弁体114を雄型管継手部材102の後方(図で見て右方)に押し込み、雄側流路110を開放させる。これにより、
図2に示すように、雌側流路130と雄側流路110とが連通した状態となる。このとき、弁体146の外側リップ部146aと内側リップ部146bとが雄側継手本体112の前端部112bによって潰され、吸着空間146cは圧縮されて内部の空気は一定量排出される。
【0026】
図2に示すように雄型管継手部材102の施錠子係合溝122が施錠子136のすぐ内側の位置にまで来ると、施錠子136は、スリーブ138に形成されている施錠子受入孔154の内側開口周縁部154aによって径方向内側に押され、施錠子受入孔154から内側に離れ、
図3に示すように一部が雌側継手本体
132の筒状周壁部140から内側に突出して施錠子係合溝122に係合した施錠位置となる。このため、スリーブ138はスプリング159の付勢力により前方(図で見て右側)に変位し、当該スリーブ138の内周面138bによって施錠子136を外側から押えて施錠子136を施錠位置に保持する、施錠子保持位置となる。施錠子136が施錠位置に保持されることにより、雄型管継手部材102は雌型管継手部材104に施錠子136を介して保持され、雌型管継手部材104と雄型管継手部材102とは連結状態となる。なお、
図1の非連結状態においては、上述のように施錠子受入孔154の内側開口周縁部154aは、雌側継手本体132の外周面140aから離れた位置にあるため、そのようにされていない場合に比べて、施錠解放位置にある施錠子136のより外側の位置で係合するようになり、施錠子136を押す力の向きがより当該雌側継手本体132の径方向内側に向くようになっている。これにより当該管継手が
図2に示す状態となったときに施錠子136が施錠位置にまで円滑に変位するようになる。
【0027】
図3の連結状態から連結を解除する際には、施錠子保持位置にあるスリーブ138を
図2の施錠子解放位置にまで変位させて、施錠子受入孔154が施錠子136及び施錠子保持孔134と径方向で整合した状態とする。そうすると、施錠子136は施錠位置から径方向外側に変位して、その一部が筒状周壁部140から外側に突出した
施錠解除位置へと変位可能な状態となる。この状態で雄型管継手部材102を雌型管継手部材104から引き抜くようにすれば、施錠子136は施錠子係合溝122の傾斜側面によって外側に押され、その一部が施錠子受入孔154に受け入れられて施錠解除位置に変位すると共に、スライド弁144の弁体支持部材148によって内側から支持されて
施錠解除位置に保持される。雄型管継手部材102を雌型管継手部材104から引き抜くときに雄側継手本体112の前端部112bがスライド弁144の弁体146から相対的に離れようとすると、吸着空間146cが拡大されて真空状態となり、雄側継手本体112の前端部112bとスライド弁144の弁体146との間に吸着力が生じる。このため、例えばスライド弁144と雌側継手本体132との間の摩擦抵抗が大きくなるなどしてスプリング150の付勢力だけではスライド弁144が変位しない状態となったとしても、スライド弁144は雄側継手本体112により前方に引っ張られるため、スライド弁144をより確実に
図1の位置にまで戻すことができる。スリーブ138は、施錠子136と長手軸線Lの方向で係合することにより、
図1の施錠子解放位置に保持される。
【0028】
雌側継手本体132の筒状周壁部140の外周面140aの側には、ガイドボール(第1ガイド部)160が圧入されており、また、スリーブ138には
図5に示すようにL字形状のガイド孔(第2ガイド部)162が形成されている。ガイドボール160はガイド孔162内に位置しており、ガイドボール160によりスリーブ138の可動範囲は制限される。また、スリーブ138を付勢しているスプリング159は、スリーブ138を長手軸線Lの方向での前端側(図で見て右側)に付勢すると共に、前端側から見て時計回りにも付勢するように取り付けられている。スリーブ138が施錠子解放位置(
図1)にあるときには、ガイドボール160がガイド孔162の第1端部162aに位置しており、回転方向での位置が拘束される。スリーブ138を施錠子保持位置に変位させる際には、スリーブ138はまずガイドボール160がガイド孔162の角部162bに位置するまで長手軸線Lの方向で前方に移動させ、次いでガイドボール160がガイド孔162の第2端部162cに位置するまで回転させる。逆にスリーブ138を施錠子保持位置から施錠子解放位置に変位させる際には、まずスリーブ138を前方から見て反時計回りに回転させてから長手軸線Lの方向で後方に変位させるようにする。施錠子
解放位置においては、施錠子受入孔154が施錠子136と長手軸線Lの方向及び回転方向の両方で整合しなければならないが、ガイドボール160がスリーブ138の可動範囲をこのように制限することにより、スリーブ138を施錠子
保持位置から施錠子
解放位置に変位させるときに、スリーブ138は施錠子
解放位置に向かってガイドされるため、施錠子受入孔154が施錠子136と整合する施錠子
解放位置に変位させるのが容易になる。なお、ガイド孔162がL字状となっていることにより、スリーブ138を施錠子保持位置から施錠子解放位置に変位させる際に、回転動作と直動動作とが必要になるため、スリーブ138が誤って施錠子解放位置に変位して連結解除状態となることを防止することができる。
【0029】
図6乃至11に示す本発明の第2の実施形態に係る管継手200は、上記第1の実施形態に係る管継手に対して、雌型管継手部材204のスリーブ238の構成及び操作が異なる。具体的には、
図9に示すように、スリーブ238に形成されたL字形状のガイド孔262の形状が異なっており、スリーブ238を施錠子保持位置と施錠子解放位置との間で変位させる際の操作が異なる。
【0030】
スリーブ238が施錠子解放位置(
図6、
図7、
図10)にあるときには、ガイドボール260がガイド孔262の第1端部262aに位置しており、スリーブ238の長手軸線Lの方向での位置が拘束される。スリーブ238を施錠子保持位置(
図8、
図11)に変位させる際には、スリーブ238をまずガイドボール260がガイド孔262の角部262bに位置するまで前方から見て時計回りに回転させ、次いでガイドボール260がガイド孔262の第2端部262cに位置するまで長手軸線Lの方向で前方に移動させる。逆にスリーブ238を施錠子保持位置(
図8、
図11)から施錠子解放位置(
図6、
図7、
図10)に変位させる際には、まずスリーブ238を長手軸線Lの方向で後方に変位させてから前方から見て反時計回りに回転させるようにする。
【0031】
本願発明に係る雌型管継手部材104、204においては、スリーブ138,238に設けた施錠子受入孔154、254が施錠子136、236を受け入れて、施錠子受入孔154、254の内側開口周縁部154aによって係合して該施錠子136、236を施錠解除位置に保持するようになっている。すなわち、本願発明では、上記従来技術において施錠子を径方向外側から保持していたカバー部に相当する部分を設ける必要がない。このため、流路に対する雌型管継手部材104、204の外径を小さくすることが可能となる。尚、図示の実施形態では、施錠子受入孔154、254の直径が施錠子136、236よりも小さくなっているが、これに限定されるものではない。施錠子受入孔154,254の直径が施錠子136、236よりも大きな場合であっても、スプリング159によって付勢されるスリーブ138における施錠子受入孔154,254の内側開口周縁部154aが、
図4に示すものと同様に、施錠子136を施錠子保持孔134の内周面134aとの間に挟んで、施錠子136を施錠解除位置に保持することができる。更に、施錠子136に係合して施錠子136をこの内周面134aとの間に挟む部分は施錠子受入孔154、254の内側開口周縁部154aに限らず、外側開口周縁部154bや孔内周面154cであってもよい。
【0032】
上記実施形態においては、ガイド孔162、262がL字形状となっていて、スリーブ138、238を施錠子保持位置と施錠子解放位置との間で変位させる際に、長手軸線Lの方向での直動動作と回転動作とが必要となるようになっているが、ガイド孔を長手軸線の方向又は回転方向にまっすぐに伸びる直線上の孔として、長手軸線の方向での直動動作又は回転動作のみでスリーブが施錠子保持位置と施錠子解放位置との間で変位するようにすることもできる。また、ガイドボールとガイド孔は、雌側継手本体に対するスリーブの可動範囲を適切に制限できるものであれば他の形態でももちろんよく、例えば、スリーブの内周面にガイド部としての突起を設け、雌側継手本体にガイド部としての溝を形成し、これら突起と溝とが係合することによりスリーブの可動範囲を制限するようにしてもよい。さらには、施錠子は球形以外の形状としてもよく、また施錠子受入孔の形状も施錠解放位置にある施錠子を受け入れつつ施錠子が径方向外側に通過しないような円形以外の形状の貫通孔としてもよい。
【符号の説明】
【0033】
管継手100;雄型管継手部材102;雌型管継手部材104;雄側流路110;雄側継手本体112;前方筒部112A;後方筒部112B;外周面112a;前端部112b;弁体114;前端開口116;弁座部118;スプリング120;施錠子係合溝122;雌側流路130;雌側継手本体132;前方筒部132A;後方筒部132B;外周面132a;施錠子保持孔134;内周面134a;内側開口部134b;施錠子136;外側頂部136a;スリーブ138;外周面138a;内周面138b;筒状周壁部140;外周面140a;内周面140b;弁座部142;スライド弁144;弁体146;外側リップ部146a;内側リップ部146b;吸着空間146c;弁体支持部材148;スプリング150;先端開口152;施錠子受入孔154;内側開口周縁部154a;外側開口周縁部154b;孔内周面154c;凹部156;スプリング159;ガイドボール160;ガイド孔162;第1端部162a;角部162b;第2端部162c;
管継手200;雌型管継手部材204;施錠子:236;スリーブ238;施錠子受入孔254;ガイドボール260;ガイド孔262;第1端部262a;角部262b;第2端部262c;
長手軸線L