特許第6393431号(P6393431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソリッド インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393431
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】波長可変レーザを用いる光線路検査器
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/071 20130101AFI20180910BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   H04B10/071
   G01M11/00 R
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-552770(P2017-552770)
(86)(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公表番号】特表2018-509109(P2018-509109A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】KR2015014061
(87)【国際公開番号】WO2016105066
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2017年6月23日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0188002
(32)【優先日】2014年12月24日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517223668
【氏名又は名称】ソリッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ナ,キウン
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−152376(JP,A)
【文献】 特開2010−139253(JP,A)
【文献】 特開平05−203412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/071
G01M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも光線路の切断位置を測定するための光線路検査器であって、
複数の波長が交互に周期的に示される(ここで、一つの波長が繰り返して示される周期を「波長繰り返し周期」という)第1光信号を生成する第1波長可変レーザソースと、
前記第1光信号と同じでありながら調節される遅延時間を持つ第2光信号を生成する第2波長可変レーザソースと、
前記光線路に出射された第1光信号が戻ってきた反射光信号と前記第2光信号との間に干渉を引き起こして干渉信号を出力する干渉計と、を備え、
前記遅延時間を可変させつつ前記干渉信号の出力を測定することを特徴とする光線路検査器。
【請求項2】
少なくとも光線路の切断位置を測定するための光線路検査器であって、
複数の波長が交互に周期的に示される(ここで、一つの波長が繰り返して示される周期を「波長繰り返し周期」という)第1光信号を生成するように第1波長制御信号によって制御される第1波長可変レーザソースと、
前記第1波長制御信号と同じでありながら調節される遅延時間を持つ第2波長制御信号によって制御されて第2光信号を生成する第2波長可変レーザソースと、
前記光線路に出射された第1光信号が戻ってきた反射光信号と前記第2光信号との間に干渉を引き起こして干渉信号を出力する干渉計と、を備え、
前記遅延時間を可変させつつ前記干渉信号の出力を測定することを特徴とする光線路検査器。
【請求項3】
前記第1波長制御信号を前記遅延時間だけ遅延させて前記第2波長制御信号を出力する遅延手段をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の光線路検査器。
【請求項4】
前記測定された出力が最大になる遅延時間を用いて前記切断位置を計算することを特徴とする請求項1または2に記載の光線路検査器。
【請求項5】
二つ以上の互いに異なる前記波長繰り返し周期において、前記遅延時間を可変させつつ前記干渉信号の出力を測定し、前記二つ以上の互いに異なる波長繰り返し周期のすべてにおいて、前記測定された出力が最大になる遅延時間を用いて前記切断位置を計算することを特徴とする請求項1または2に記載の光線路検査器。
【請求項6】
前記第1光信号及び前記第2光信号の光パワーは一定または連続的であることを特徴とする請求項1または2に記載の光線路検査器。
【請求項7】
前記干渉計は、前記反射光信号と前記第2光信号との間の偏光を合わせるための偏光制御器を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の光線路検査器。
【請求項8】
前記干渉計から出力される光信号を電気信号に変換する光信号受信器をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の光線路検査器。
【請求項9】
少なくとも光線路の切断位置を測定するための光線路検査器であって、
複数の波長が交互に周期的に示される(ここで、一つの波長が繰り返して示される周期を「波長繰り返し周期」という)光信号を生成する波長可変レーザソースを二つ備え、
前記二つの波長可変レーザソースのうち一つの波長可変レーザソースから生成される第1光信号は前記光線路に出射され、
前記二つの波長可変レーザソースのうち他の一つの波長可変レーザソースから生成された第2光信号は、可変される遅延時間が付与されたものであり、
前記第1光信号が前記光線路に出射された後で戻ってくるラウンドトリップ時間が前記第2光信号の前記遅延時間と同一または整数倍である時の干渉効果を用いて前記切断位置を測定し、前記遅延時間を可変させつつ干渉信号の出力を測定することを特徴とする光線路検査器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OTDR(OPTICAL TIME DOMAIN REFLECTOMETER)のような光線路検査器に係り、さらに詳細には、波長可変レーザを用いる光線路検査器に関する。
【背景技術】
【0002】
通信量の増加に応じて、銅線基盤の通信線路が光ファイバ基盤の光線路に置き換えられている実情である。光線路は電話局と電話局とを接続する区間でのみ設けられていたが、VOD(Video On Demand)などのマルチメディアサービスの増加のためFTTH(Fiber To The Home)のように、今は家庭や家庭の各部屋にまで光線路が設けられている実情である。したがって、サービス供給者としては、非常に多い光線路の管理及び障害地点の把握が通信ネットワーク管理において非常に重要なことになっている。
【0003】
光線路を管理するための装置の一つとして光線路検査器が使われ、代表的なものがOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)である。OTDRは、図1のように、レーザ1でパワーが強くて幅の狭い光パルス2を発生させて検査しようとする光線路3に入射させることで検査を始める。光線路3のどこかで微細に切断している微細切断面4があれば、光パルス2はここから進行方向と逆に反射パルスを作り、この反射パルスを再び受信して一般的に図2のような形態で結果を表示する。OTDRの動作原理は公知の技術に該当するため具体的な説明は略する。
【0004】
(参考文献:韓国公開特許公報2004−23305号、韓国公開特許公報1997−28648号)
ところが、光パルスを用いる古典的なOTDRは、大まかに光線路の品質を管理するに当っては有用な道具であったが、次のような短所を持っている。
【0005】
先ず、動的作動範囲を広げ難いということである。動的作動範囲はOTDRが測定できる距離を意味するが、この範囲を広げるためには光パルスのサイズを大きくせねばならない。しかし、光パルスのサイズをしきい値以上に大きくすれば、光線路と光パルスとの相互作用による非線形効果が強く起き、光パルスの形態が歪むようになって測定エラーを引き起こす。
【0006】
このエラーを回避するために現在は光パルスのサイズを大きくすることはできず、その代りに光パルスの長さ(幅)を増やしている。このようにすれば、動的作動範囲は広がる。しかし、光パルスの長さ(幅)が増えるにつれて図3のようにOTDRの分解能が落ちるという他の問題点を引き起こす。分解能は、光パルスの長さが短いほど当然よくなる。分解能は、イベントデッドゾーン及び減衰デッドゾーンなどのパラメータで現れるが、これら全てのものが互いに結び付いていて、一つの特性を改善させれば他の特性は劣るようになっている。
【0007】
また動的作動範囲を広げるための他の方法として光増幅器(EDFA:Erbum Doped Fiber Amplifier)を使ってもよいが、既存のOTDR方式は経時的に光パワーの変化が激しい光パルスを使うため、光パルスの増幅にEDFAを使うことは適してない。
【0008】
このように従来の技術によれば、動的作動範囲及び分解能をさらに改善するのに限界があるため、これを解決できる技術が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、前記のような従来技術を改善するために案出されたものとして、動的作動範囲及び分解能を改善できる光線路検査器を提供することである。
【0010】
また本発明の課題は、測定光信号が光線路で起こす非線形効果を最小化してEDFA(Erbum Doped Fiber Amplifier)のような光増幅器を使うことができる光線路検査器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様による光線路検査器は、少なくとも光線路の切断位置を測定するための光線路検査器であって、複数の波長が交互に周期的に示される(ここで、一つの波長が繰り返して示される周期を「波長繰り返し周期」という)第1光信号を生成する第1波長可変レーザソースと、前記第1光信号と同じでありながら調節される遅延時間を持つ第2光信号を生成する第2波長可変レーザソースと、前記光線路に出射された第1光信号が戻ってきた反射光信号と前記第2光信号との間に干渉を引き起こして干渉信号を出力する干渉計と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様による光線路検査器は、少なくとも光線路の切断位置を測定するための光線路検査器であって、複数の波長が交互に周期的に示される(ここで、一つの波長が繰り返して示される周期を「波長繰り返し周期」という)第1光信号を生成するように第1波長制御信号によって制御される第1波長可変レーザソースと、前記第1波長制御信号と同じでありながら調節される遅延時間を持つ第2波長制御信号によって制御されて第2光信号を生成する第2波長可変レーザソースと、前記光線路に出射された第1光信号が戻ってきた反射光信号と前記第2光信号との間に干渉を引き起こして干渉信号を出力する干渉計と、を備えることを特徴とする。
【0013】
前記光線路検査器において、前記第1波長制御信号を前記遅延時間だけ遅延させて前記第2波長制御信号を出力する遅延手段をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
前記光線路検査器において、前記遅延時間を可変させつつ前記干渉信号の出力を測定することを特徴とする。
【0015】
前記光線路検査器において、前記測定された出力が最大になる遅延時間を用いて前記切断位置を計算することを特徴とする。
【0016】
前記光線路検査器において、二つ以上の互いに異なる前記波長繰り返し周期において、前記遅延時間を可変させつつ前記干渉信号の出力を測定し、前記二つ以上の互いに異なる波長繰り返し周期のすべてにおいて、前記測定された出力が最大になる遅延時間を用いて前記切断位置を計算することを特徴とする。
【0017】
前記光線路検査器において、前記第1光信号及び前記第2光信号の光パワーは一定または連続的であることを特徴とする。
【0018】
前記光線路検査器において、前記干渉計は、前記反射光信号と前記第2光信号との間の偏光を合わせるための偏光制御器を備えることを特徴とする。
【0019】
前記光線路検査器において、前記干渉計から出力される光信号を電気信号に変換する光信号受信器をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様による光線路検査器は、少なくとも光線路の切断位置を測定するための光線路検査器であって、複数の波長が交互に周期的に示される(ここで、一つの波長が繰り返して示される周期を「波長繰り返し周期」という)光信号を生成する波長可変レーザソースを二つ備え、前記二つの波長可変レーザソースのうち一つの波長可変レーザソースから生成される第1光信号は前記光線路に出射され、前記二つの波長可変レーザソースのうち他の一つの波長可変レーザソースから生成された第2光信号は、可変される遅延時間が付与されたものであり、前記第1光信号が前記光線路に出射された後で戻ってくるラウンドトリップ時間が前記第2光信号の前記遅延時間と同一または整数倍である時の干渉効果を用いて前記切断位置を測定する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、光パルスとは異なって使われる光信号の光パワーが一定または連続的であるため、光パワーが大きくなっても光信号と光線路との間の非線形効果が発生しないか、または低減し、さらには測定のための光信号の光パワーが大きくなっても良いため、光線路検査器において分解能を犠牲にしなくても動的作動範囲を大きく向上させられる。
【0022】
本発明の一態様によれば、分解能及び動的作動範囲の優れた光線路検査器を提供でき、さらに長距離光線路において切断位置などを精密に測定できるようになる。
【0023】
また、本発明の一態様によれば、測定光信号が光線路で引き起こす非線形効果を最小化できるため、EDFA(Erbum Doped Fiber Amplifier)のような光増幅器を使えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一般的なOTDRの測定原理を説明するための図である。
図2】一般的なOTDRの測定結果を示す信号波形図である。
図3】光パルス幅と分解能との関係を説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態による光線路検査器の構成を示すブロック図である。
図5】ポリマー波長可変レーザの構造を示す図である。
図6A】波長制御信号とそれによって波長可変レーザソースから出力される光信号との関係を示す図である。
図6B】光信号受信器の出力が最大であるときの二つの波長制御信号の関係を示す図である。
図6C】光信号受信器の出力が最低であるときの二つの波長制御信号の関係を示す図である。
図7A】遅延時間による光信号受信器の出力を示すグラフであって、測定しようとする光線路の長さがゼロであり、光線路検査器で全ての内部光線路の長さもゼロであると仮定する時のグラフである。
図7B】遅延時間による光信号受信器の出力を示すグラフであって、光線路の経路において長さに差がある時のグラフである。
図8A】光信号受信器の出力で最大点が明確に区別されないことを説明するための図である。
図8B】互いに異なる複数の周期を持つ波長制御信号を用いる状況を説明するための図である。
図9A】周期の互いに異なる複数の波長制御信号とそれによる波長可変レーザソースの出力とを示す図である。
図9B】周期の互いに異なる複数の波長制御信号とそれによる波長可変レーザソースの出力とを示す図である。
図9C】周期の互いに異なる複数の波長制御信号とそれによる波長可変レーザソースの出力とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
前述した目的、特徴及び長所は、添付した図面に係る以下の詳細な説明を通じて明らかになり、それによって当業者が本発明の技術的思想を容易に行える。また、本発明を説明するに当って、本発明に関連する公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。以下、添付した図面を参照して本発明による望ましい一実施形態を詳細に説明する。
【0026】
図4は、本発明の一実施形態による光線路検査器100の構成を示すブロック図である。
【0027】
本発明の一実施形態による光線路検査器100は、少なくとも光線路の切断位置を測定するためのものであり、第1波長可変レーザソースTOS1、第2波長可変レーザソースTOS2、遅延手段DL、第1方向性カプラDC1、光信号受信器PD、アナログデジタル変換器ADC、信号処理及び制御器CONT及び干渉計IFMを備える。
【0028】
第1波長可変レーザソースTOS1及び第2波長可変レーザソースTOS2は、信号処理及び制御器CONTから波長制御信号を受け、それに似合う波長の光を出力するブロックである。
【0029】
第1波長可変レーザソースTOS1及び第2波長可変レーザソースTOS2は、例えば、ポリマー波長可変レーザを備える。
【0030】
図5は、本発明の一実施形態による波長可変レーザソースに使われるポリマー波長可変レーザ10の構造を示す図面である。
【0031】
ポリマー波長可変レーザ10は可変波長の光信号を出力するものであって、CW(Continuous Wave)光信号を出力する一面が無反射コーティングされたレーザダイオード11と、レーザダイオード11との外部共振を通じてCWレーザの波長を制御するためのポリマーブラッグ格子導波路14と、ポリマーブラッグ格子導波路14に熱を加えることでブラッグ格子の温度を変化させて制御するための熱電極12と、を備える。
【0032】
ポリマーブラッグ格子導波路14は、ポリマー材料で導波路を作り、かつその導波路上にブラッグ格子を生成したものである。ブラッグ格子導波路は、入射される多様な波長の光信号のうち格子間隔によって定められる光波長λ1の光信号のみを反射させて残りの波長は通過させる受動光素子である。
【0033】
したがって、一面が無反射コーティングされたレーザダイオード11の光出力のうち光波場λ1の光信号は、ポリマーブラッグ格子導波路14で反射してレーザダイオード11に回帰する。よって、レーザダイオード11とポリマーブラッグ格子導波路14とは外部共振器として作用し、結果的にレーザダイオード11は光波場λ1の光信号を出力する。
【0034】
一方、ポリマーは、熱光学効果を持って熱によって屈折率の変化する特徴を持つ。よって、ポリマーブラッグ格子導波路14は、熱電極12によって加えられる熱によって反射する光波場を他の光波場λ2にチューニングでき、これによってレーザダイオード11とポリマーブラッグ格子導波路14との間の共振波長がチューニングされる。結果的に、レーザダイオード11は光波場λ2の光信号を出力する。
【0035】
例えば、ポリマー波長可変レーザ10を備える第1波長可変レーザソースTOS1及び第2波長可変レーザソースTOS2は、波長制御信号wc1及びwc2によって対応する波長の光を出力する。
【0036】
図6Aは、波長制御信号とそれによって波長可変レーザソースから出力される光信号との関係を示す図面である。
【0037】
特徴的に本発明での第1波長可変レーザソースTOS1及び第2波長可変レーザソースTOS2は、複数の波長が交互に周期的に示される光信号を生成し、光信号の光パワーは一定または少なくとも連続的である。波長可変レーザソースの出力光信号は波長が繰り返して示される波長繰り返し周期を持ち、したがって、波長可変レーザソースを制御するための電気的信号である波長制御信号も周期Tpを持つ。
【0038】
図4に戻って、第1波長可変レーザソースTOS1は第1波長制御信号wc1によって制御され、第1波長制御信号wc1は、第1波長可変レーザソースTOS1が複数の波長が交互に周期的に示される光信号を生成するように第1波長可変レーザソースTOS1を制御する。
【0039】
また第2波長可変レーザソースTOS2は、第1波長制御信号wc1と同じでありながら調節される遅延時間を持つ第2波長制御信号wc2によって制御され、第2波長制御信号wc2は、第2波長可変レーザソースTOS2が複数の波長が交互に周期的に示される光信号を生成するように第2波長可変レーザソースTOS2を制御する。
【0040】
第1波長可変レーザソースTOS1は、複数の波長が交互に周期的に示される第1光信号を生成し、第2波長可変レーザソースTOS2は、第1光信号と同じでありながら調節される遅延時間を持つ第2光信号を生成する。
【0041】
遅延手段DLは第1波長制御信号wc1を遅延時間だけ遅延させて第2波長制御信号wc2を出力し、信号処理及び制御器CONTは制御信号dによって遅延手段DLの遅延時間を制御する。
【0042】
第1方向性カプラDC1は、第1波長可変レーザソースTOS1から出力される光信号を測定対象となる光線路DUTに出射させ、光線路DUTの光線路切断面から戻る光の一部を干渉計IFMの偏光制御器PC側に伝達する役割を行う。
【0043】
干渉計IFMは、光線路DUTに出射された第1光信号が戻ってきた反射光信号と、前記第2光信号とを入力されて、反射光信号と第2光信号との間に干渉を引き起こして干渉信号を出力する。
【0044】
干渉計IFMは、二つの入力ポート及び一つの出力ポートを持ち、二つの入力ポートのうち一つは第1方向性カプラDC1から反射光信号を入力され、残りの一つの入力ポートは第2波長可変レーザソースTOS2から第2光信号を入力される。
【0045】
一般的に二つの光信号はその偏光が互いに合わない。偏光が互いに合わなければ干渉が起きないため、二つのポートのうち一つに偏光制御器PCを設けることが干渉計の一般的な構造である。
【0046】
干渉計IFMは、第2方向性カプラDC2及び偏光制御器PCを備え、偏光制御器PCは、反射光信号と第2光信号との間の偏光を合わせるためのものであり、第2方向性カプラDC2は、偏光制御器PCからの光信号及び第2光信号を光信号受信器PDに送信する。
【0047】
光信号受信器PDは、干渉計IFMから出力される光信号を入力されて電気信号に変換する役割を行い、アナログデジタル変換器ADCは、アナログ電気信号をデジタル電気信号に変換する。
【0048】
信号処理及び制御器CONTは光線路検査器100全体の動作を管理し、特に波長可変レーザソース及び遅延手段を制御するための制御信号を提供し、アナログデジタル変換器ADCからデジタル電気信号を入力されて信号処理を行い、どの地点で光線路が切断したかを計算するなどの機能を行う。
【0049】
以下、本発明の光線路検査器の動作について図面を参照してまとめて説明する。
【0050】
信号処理及び制御器CONTは、第1波長制御信号wc1を第1波長可変レーザソースTOC1に加える。第1波長可変レーザソースTOC1は、図6Aのように制御信号によって出力波長が交互に変化する光信号を出力し、これは測定しようとする光線路DUTに入射される。
【0051】
そして、光線路DUTの切断面では光反射が起き、第1波長可変レーザソースTOC1が送信した光信号の一部が反射して、再び元の位置へと逆に進行する。進行する光信号の一部は第1方向性カプラDC1によって干渉計IFMに入力される。
【0052】
干渉計IFMは、二つの入力ポート及び一つの出力ポートを持ち、二つの入力ポートのうち一つは第1方向性カプラDC1からの光信号を受け、残りの一つは第2波長可変レーザソースTOS2からの光信号を受け、偏光制御器PCによって二つの光信号の間で偏光を制御して合わせる。
【0053】
干渉計IFMの出力は光信号受信器PDに入力され、光信号受信器PDの出力電気信号はアナログデジタル変換器ADCを通じて信号処理及び制御器CONTに入力され、これは光線路切断面の位置を調べる時に用いられる。
【0054】
以下、本発明の一実施形態による光線路検査器を用いる測定原理を仮定して段階的に説明する。
【0055】
まず、仮定して測定しようとする光線路DUTの長さがゼロであると仮定し、光線路検査器100の全ての内部光線路の長さもゼロであると仮定する。
【0056】
このような仮定状態で、まず、第1波長可変レーザソースTOS1に加えられる第1波長制御信号wc1と第2波長可変レーザソースTOS2に加えられる第2波長制御信号wc2との間の遅延時間Tdをゼロとする場合を調べる。例えば、二つの波長制御信号の形態は図6Bのようになる。
【0057】
この場合、第1波長可変レーザソースTOS1の信号と第2波長可変レーザソースTOS2の信号との間には遅延時間がなく、結局干渉計IFMに到逹する二つの光信号の間に干渉効果が最大に起き、光信号受信器PDの出力は最大になる(この値をPD_maxという)。
【0058】
そして、第1波長可変レーザソースTOS1に加えられる第1波長制御信号wc1と第2波長可変レーザソースTOS2に加えられる第2波長制御信号wc2との間に遅延時間Tdを与えて図6Cのようにした場合を調べる。
【0059】
この場合には、第1波長可変レーザソースTOS1の信号と第2波長可変レーザソースTOS2の信号との間には周波数差が最も大きいため、光信号受信器PDの出力は最小になる(この値をPD_minという)。
【0060】
図7A及び図7Bは、遅延時間Tdによる光信号受信器PDの出力を示すグラフであって、図7Aは、測定しようとする光線路DUTの長さがゼロであり、光線路検査器100で全ての内部光線路の長さもゼロであると仮定するときのグラフである。
【0061】
図7Aに示したように、遅延時間Tdを可変させつつ光信号受信器PDの出力をグラフで描けば、波長制御信号の周期であるTpを一周期とする繰り返しパターンが示される(グラフで横軸は、遅延時間Tdである)。
【0062】
尚、測定対象光線路DUTの長さがある場合には光信号受信器PDの出力がどのように変わるかを調べる(実際の測定対象光線路DUTの長さはゼロではなくL(m)になる)。このとき、光長さがL(m)である光線路の終端まで行ってから反射して戻ってくるラウンドトリップ時間を2Trとする。
【0063】
先ず、遅延時間Tdが0である状態で遅延時間Tdを次第に増加させながら光信号受信器PDの出力を描けば、図7Bのようになる。そして、グラフで出力が最大になる地点の遅延時間Tdは前記の2Trになる。なぜならば、測定対象光線路DUTを通じるラウンドトリップ時間2Trと第2波長可変レーザソースTOS2に注入される信号の遅延時間Tdとの値が同一であるときに干渉計の信号が最大になるからである。
【0064】
このようにして、光線路検査器100はラウンドトリップ時間2Trの値を調べることができ、このようにして分かった値から光線路の切断面がLだけ離れたところにあるということが計算できる。
【0065】
本発明の一実施形態による光線路検査器100は、遅延時間Tdを可変させつつ干渉信号の出力を測定し、ここで干渉計IFMは、光線路に出射された第1光信号が戻ってきた反射光信号と遅延時間が付与された第2光信号との間に干渉を引き起こして干渉信号を出力する時に用いられる。そして測定された出力が最大になる遅延時間を用いて光線路の切断位置を計算する。
【0066】
二つの波長可変レーザソースのうち一つである第1波長可変レーザソースTOS1から生成される第1光信号は光線路に出射され、二つの波長可変レーザソースのうち他の一つである第2波長可変レーザソースTOS2から生成された第2光信号は、可変される遅延時間Tdが付与されたものである。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、第1光信号が光線路に出射された後で戻ってくるラウンドトリップ時間2Trが第2光信号の遅延時間Tdと同一または整数倍である時の干渉効果を用いて切断位置を測定する。
【0068】
一方、波長制御信号の周期Tpを大きくすれば、光線路切断面の位置を調べることはできるが、正確な位置は分かり難い。その理由は、図8Aに示したようにPD_maxの最大点が明確に区別されないからである。
【0069】
このような短所を解決するために、本発明の他の実施形態では周期の互いに異なる複数の波長制御信号を使って測定する。
【0070】
図9Aないし図9Cは、周期の互いに異なる複数の波長制御信号とそれによる波長可変レーザソースの出力とを示すものであり、図9Aは、波長制御信号の周期TpがT1である場合であり、図9Bは、波長制御信号の周期TpがT2である場合であり、図9Cは、波長制御信号の周期TpがT3である場合である(T1≠T2≠T3)。
【0071】
図9Aないし図9Cに示したように、光線路検査器100が波長制御信号の周期Tpを異ならせつつ干渉信号の出力を順次に測定して光信号受信器PDの出力をグラフで重ねて示せば、図8Bのようになる。
【0072】
本発明の他の実施形態によれば、周期の異なる波長制御信号を使って得た干渉結果を重ねることで光線路の正確な位置情報を得る。
【0073】
波長制御信号の周期Tpは、波長可変レーザソースから出力される光信号でいずれか一つの波長が繰り返して示される周期と同じくなる(以下「波長繰り返し周期」という)。
【0074】
本発明の他の実施形態によれば、二つ以上の互いに異なる波長繰り返し周期において、遅延時間Tdを可変させつつ干渉信号の出力を測定し、前記二つ以上の互いに異なる波長繰り返し周期のすべてにおいて、測定された出力が最大になる遅延時間を用いて切断位置を計算する。
【0075】
以下、本発明の構成による効果について調べる。
【0076】
従来の光線路検査器によれば、光パワーが急に変化する光パルスを用いて光線路の切断位置を調べる方式を使うことで、光パルスのサイズをある限度以上大きくできず、ある限度以上大きくすれば、光線路と光パルスとの間に非線形効果が生じて測定エラーが生じるという問題点があり、光パルスの幅を大きくすれば分解能が落ちるという問題点がある。
【0077】
これに対し、本発明の一態様によれば、使われる光信号は光パワーが一定または連続的であるため、光パワーが大きくなっても光信号と光線路との間の非線形効果が発生しないか、または低減する。
【0078】
したがって、本発明の一態様によれば、測定のための光信号の光パワーが大きくなってもよいため、光線路検査器において分解能を犠牲にしなくても動的作動範囲を大きく向上させられる。
【0079】
本発明の一態様によれば、分解能及び動的作動範囲の優れた光線路検査器を提供でき、さらに長距離光線路において切断位置などを精密に測定できる。
【0080】
また、本発明の一態様によれば、測定光信号が光線路で引き起こす非線形効果を最小化できるため、EDFAのような光増幅器を使うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7(a)】
図7(b)】
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C