特許第6393471号(P6393471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393471
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】医療用処置具
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   A61F9/007 160
   A61F9/007 170
   A61F9/007 130J
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-231504(P2013-231504)
(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公開番号】特開2015-89490(P2015-89490A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】八田 知紀
(72)【発明者】
【氏名】成田 洵
【審査官】 寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03788327(US,A)
【文献】 国際公開第2013/000879(WO,A1)
【文献】 特表2008−504063(JP,A)
【文献】 特開2013−202088(JP,A)
【文献】 特表2009−508587(JP,A)
【文献】 米国特許第05626559(US,A)
【文献】 特表2012−516211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑内障を治療するための医療用処置具であって、
眼球に沿う球面状に形成された球面部と、
前記球面部の前記眼球側の所定位置に当該球面部から突出して設けられ、所定の長さを有する少なくとも1つの穿刺部とを備え、
前記穿刺部は、当該穿刺部と前記球面部とを貫通する貫通孔を有し
前記穿刺部は、複数設けられ、
前記複数の穿刺部は、当該医療用処置具が前記眼球に装着されたときに隅角に達する長さ、または虹彩を貫通する長さを有する第1穿刺部と、硝子体に達する長さを有する第2穿刺部とを備えていることを特徴とする医療用処置具。
【請求項2】
緑内障を治療するための医療用処置具であって、
眼球に沿う球面状に形成された球面部と、
前記球面部の前記眼球側の所定位置に当該球面部から突出して設けられ、所定の長さを有する少なくとも1つの穿刺部と、
前記穿刺部を前記眼球に穿刺するための突出部を有する穿刺用部材とを備え、
前記球面部および前記穿刺部は、前記球面部を貫通して前記穿刺部内に延設され、前記穿刺用部材の前記突出部を収容する収容孔を有し、
前記穿刺用部材は、前記球面部および前記穿刺部から分離可能に設けられていることを特徴とする医療用処置具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の医療用処置具において、
前記球面部および前記穿刺部は、生体適合性を有する素材で形成されていることを特徴とする医療用処置具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の医療用処置具において、
前記球面部は、中央部に開口を有していることを特徴とする医療用処置具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の医療用処置具において、
前記穿刺部は、当該医療用処置具が前記眼球に装着されたときの角膜の位置に設けられていることを特徴とする医療用処置具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の医療用処置具において、
前記穿刺部は、当該医療用処置具が前記眼球に装着されたときに隅角に達する長さ、または虹彩を貫通する長さを有することを特徴とする医療用処置具。
【請求項7】
請求項に記載の医療用処置具において、
前記第2穿刺部には、抗血管内皮増殖因子剤が塗布されていることを特徴とする医療用処置具。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれかに記載の医療用処置具において、
前記球面部の外縁部には、ゲル状物が塗布されていることを特徴とする医療用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緑内障を治療するための医療用処置具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の医療用処置具は、先端が斜めに切り落とされた管状体と、一端に眼球に吸着可能なフランジ部が設けられ、内部に管状体を収容する筒状部材と、筒状部材内に進退可能に設けられ、管状体を押し出す押出部材とを備えている。この医療用処置具で患者に治療を施す際は、眼球の表面に筒状部材のフランジ部を吸着させた状態において、押出部材で管状体を押し出して角膜に貫通させ、管状体の先端を前房に位置させる。その後、筒状部材および押出部材を取り除き、管状体を留置することにより、当該管状体を介して前房の房水が排出され、緑内障による高い眼圧が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5743868号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の医療用処置具は、患者への処置に際して高侵襲な手技を伴うため、患者にかかる負担が大きいという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、緑内障の治療に際して患者にかかる負担を軽減できる医療用処置具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の医療用処置具は、緑内障を治療するための医療用処置具であって、眼球に沿う球面状に形成された球面部と、前記球面部の前記眼球側の所定位置に当該球面部から突出して設けられ、所定の長さを有する少なくとも1つの穿刺部とを備え、前記穿刺部は、当該穿刺部と前記球面部とを貫通する貫通孔を有し、前記穿刺部は、複数設けられ、前記複数の穿刺部は、当該医療用処置具が前記眼球に装着されたときに隅角に達する長さ、または虹彩を貫通する長さを有する第1穿刺部と、硝子体に達する長さを有する第2穿刺部とを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、球面部の眼球側に穿刺部が設けられているため、医療用処置具をコンタクトレンズのように眼球に装着することができ、緑内障の治療に際して患者にかかる負担を軽減することができる。
【0011】
本発明によれば、穿刺部と球面部とを貫通する貫通孔が設けられているため、貫通孔から房水を排出することができ、房水の排出効率を向上させることができる。
また、貫通孔により房水を医療用処置具の外表面に排出するため、医療用処置具の外表面を湿潤状態に保つことが可能となる。
また、第1穿刺部が隅角に達する、または虹彩を貫通する長さを有しているため、房水を効率的に排出することができる。また、緑内障に加齢黄斑変性症を合併した場合、眼球に医療用処置具を装着した状態で、加齢黄斑変性症の治療に必要な抗血管内皮増殖因子(VEGF:Vascular Endothelial Growth Factor)剤を点眼することにより、第2穿刺部を介して抗血管内皮増殖因子剤を硝子体に投与することができる。
【0014】
本発明の医療用処置具において、前記球面部および前記穿刺部は、生体適合性を有する素材で形成されていることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、球面部および穿刺部が生体適合性を有する素材で形成されているため、眼球への刺激を抑制することができる。このため、眼球に医療用処置具を長時間装着することができ、眼球からの医療用処置具の取り外しを容易に行うこともできる。
【0016】
本発明の医療用処置具において、前記球面部は、中央部に開口を有していることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、球面部が開口を有しているため、穿刺部に沿って排出された排出物で球面部の中央部が汚れてしまうことを防止することができる。
また、開口により眼球の表面を露出させることができるので、球面部における酸素の透過性を向上させることができる。
【0018】
本発明の医療用処置具は、緑内障を治療するための医療用処置具であって、眼球に沿う球面状に形成された球面部と、前記球面部の前記眼球側の所定位置に当該球面部から突出して設けられ、所定の長さを有する少なくとも1つの穿刺部と、前記穿刺部を前記眼球に穿刺するための突出部を有する穿刺用部材を備え、前記球面部および前記穿刺部は、前記球面部を貫通して前記穿刺部内に延設され、前記穿刺用部材の前記突出部を収容する収容孔を有し、前記穿刺用部材は、前記球面部および前記穿刺部から分離可能に設けられていることを特徴とする
【0019】
本発明によれば、穿刺用部材が設けられているため、球面部および穿刺部を柔らかい素材で形成することができ、医療用処置具が留置されている間の患者の違和感を緩和することができる。
【0020】
本発明の医療用処置具において、前記穿刺部は、当該医療用処置具が前記眼球に装着されたときの角膜の位置に設けられていることが好ましい。
【0021】
本発明によれば、穿刺部が角膜の位置に設けられているため、房水を効率的に排出することができる。
【0022】
本発明の医療用処置具において、前記穿刺部は、当該医療用処置具が前記眼球に装着されたときに隅角に達する長さ、または虹彩を貫通する長さを有することが好ましい。
【0023】
本発明によれば、穿刺部が隅角に達する、または虹彩を貫通する長さを有しているため、房水を効率的に排出することができる。
【0026】
本発明の医療用処置具において、前記第2穿刺部には、抗血管内皮増殖因子剤が塗布されていることが好ましい。
【0027】
本発明によれば、眼球に医療用処置具を装着することにより、第2穿刺部の表面に予め塗布された抗血管内皮増殖因子剤を硝子体に投与することができる。
【0028】
本発明の医療用処置具において、前記球面部の外縁部には、ゲル状物が塗布されていることが好ましい。
【0029】
本発明によれば、球面部の外縁部にゲル状物が塗布されているため、球面部が動きにくくなり、医療用処置具が眼球に対して位置ずれすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】(A)は本発明の第1実施形態に係る医療用処置具の平面図、(B)はその側面図。
図2図1の医療用処置具の使用例を示す側面図。
図3】(A)は本発明の第2実施形態に係る医療用処置具の平面図、(B)はその側面図。
図4】(A)は本発明の第3実施形態に係る医療用処置具の平面図、(B)はその側面図。
図5】(A)は本発明の第4実施形態に係る医療用処置具の平面図、(B)はその側面図。
図6図5の医療用処置具の使用例を示す側面図。
図7】本発明の第5実施形態に係る医療用処置具の使用例を示す側面図。
図8】本発明の第6実施形態に係る医療用処置具の側面図。
図9】本発明の変形例に係る医療用処置具の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、説明の都合上、図面の寸法比率が誇張され、実際の比率とは異なる場合がある。
また、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0032】
[第1実施形態]
図1および図2において、医療用処置具1は、眼球EBに沿う球面状に形成された球面部2と、球面部2の眼球EB側の所定位置に当該球面部2から突出して設けられ、所定の長さを有する少なくとも1つの穿刺部3A、3Bとを備えている。この医療用処置具1は、透明かつ生分解性を有する素材、例えば、一般的なハードコンタクトレンズに用いられる酸素透過性(RGP:Rigid Gas Permeable)レンズやポリメチルメタアクリレート等の素材、または一般的なソフトコンタクトレンズに用いられるポリヒドロキシエチルメタクリレート等の含水性やアクリル系エラストマー等の非含水性もしくはシリコーンハイドロゲル等の高酸素透過性を有する素材により球面部2および穿刺部3A、3Bが形成され、球面部2と穿刺部3A、3Bとが一体成型されている。
【0033】
球面部2は、コンタクトレンズと同様の形状を有し、平面視で円形状、かつ側面視で中央部が窪んだ形状に形成されている。球面部2の内側面21、すなわち球面部2の眼球EB側の面は、眼球EBに沿った球面であり、その外縁部には、皮膚低刺激性を有するアクリル系樹脂等のゲル状物が塗布されている。なお、図1では、説明の便宜上、球面部2と眼球EBとの間に隙間が存在するが、医療用処置具1が眼球EBに装着される際は、球面部2がより眼球EBに密着する。
【0034】
穿刺部3A、3Bは、いわゆるマイクロニードルであり、球面部2の内面から突出した針形状を有している。穿刺部3A、3Bは、医療用処置具1が眼球EBに装着されたときに、図1(A)中の一点鎖線および図2に示す角膜COの位置、好ましくは虹彩IRの位置に設けられ、角膜COを貫通して隅角ANに達する長さを有している。穿刺部3A、3Bが虹彩IRの位置に設けられた場合は、視野確保の点でより有利となる。また、穿刺部3A、3Bは、例えば、約10〜200ミクロンの直径を有しており、低侵襲であることが好ましい。穿刺部3A、3Bの側面には、当該穿刺部3A、3Bの突出方向に延設され、当該穿刺部3A、3Bの先端から球面部2の内側面21にわたる溝31が形成されている。
【0035】
以上の医療用処置具1は、図2に示すように、眼球EBに装着されると、穿刺部3A、3Bが角膜COに穿刺され、当該穿刺部3A、3Bの先端が隅角ANに達する。このため、隅角ANに滞留していた房水を穿刺部3A、3Bに沿って眼球EBの外側に排出することができ、緑内障により高くなっていた眼圧を低下させることができる。ここで、穿刺部3A、3Bには、当該穿刺部3A、3Bの先端から球面部2の内面に向かって溝31が形成されているため、房水を溝31に沿って排出することができ、房水の排出効率を向上させることができる。
【0036】
以上のような本実施形態によれば、次のような効果がある。
すなわち、球面部2の眼球EB側に穿刺部3A、3Bが設けられているため、医療用処置具1をコンタクトレンズのように眼球EBに装着することができ、緑内障の治療に際して患者にかかる負担を軽減することができる。
【0037】
また、穿刺部3A、3Bが突出方向の溝31を有するため、溝31に沿って房水を排出することができ、房水の排出効率を向上させることができる。
【0038】
また、球面部2および穿刺部3A、3Bが生体適合性を有する素材で形成されているため、眼球EBへの刺激を抑制することができる。このため、眼球EBに医療用処置具1を長時間装着することができ、眼球EBからの医療用処置具1の取り外しを容易に行うこともできる。
【0039】
また、球面部2が開口23を有しているため、穿刺部3A、3Bに沿って排出された排出物で球面部2の中央部が汚れてしまうことを防止することができる。
また、開口23により眼球EBの表面を露出させることができるので、球面部2における酸素の透過性を向上させることができる。
【0040】
また、穿刺部3A、3Bが角膜COの位置に設けられているため、房水を効率的に排出することができる。
【0041】
また、穿刺部3A、3Bが隅角ANに達する、または虹彩IRを貫通する長さを有しているため、房水を効率的に排出することができる。
【0042】
また、球面部2の外縁部にゲル状物が塗布されているため、球面部2が動きにくくなり、医療用処置具1が眼球EBに対して位置ずれすることを防止できる。
【0043】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る医療用処置具1は、図3(A)、(B)に示すように、穿刺部3A、3Bが当該穿刺部3A、3Bと球面部2とを貫通する貫通孔32を有している点が、第1実施形態と相違する。
貫通孔32は、穿刺部3A、3Bの突出方向に延設されている。貫通孔32の一端は、穿刺部3A、3Bの先端に開口し、貫通孔32の他端は、球面部2の外側面22に開口している。
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、次のような効果がある。
すなわち、貫通孔32により房水を医療用処置具1の外表面に排出するため、医療用処置具1の外表面を湿潤状態に保つことが可能となる。
【0044】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る医療用処置具1は、図4(A)、(B)に示すように、球面部2が中央部に開口23を有している点が、第1実施形態と相違する。
【0045】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、次のような効果がある。
すなわち、球面部2が開口23を有しているため、穿刺部3A、3Bに沿って排出された排出物で球面部2の中央部が汚れてしまうことを防止することができる。
また、開口23により眼球EBの表面を露出させることができるので、球面部2における酸素の透過性を向上させることができる。
【0046】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係る医療用処置具1は、図5(A)、(B)および図6に示すように、球面部2および穿刺部3A、3Bの構成が異なる点、および球面部2内および穿刺部3A、3B内に連通路4が設けられている点が、第1実施形態と相違する。
【0047】
球面部2内には、平面視で当該球面部2と同心円状に形成された環状路24が設けられている。
穿刺部3A、3Bは、それぞれ先端に開口を有するとともに、内部に当該開口と環状路24とを接続する通路33を有している。ここで、一方の穿刺部3Aは、図6に示すように、医療用処置具1が眼球EBに装着されたときに、角膜COを貫通して隅角ANに達する長さを有し、他方の穿刺部3Bは、角膜COを貫通して強膜SCに達する長さを有している。
連通路4は、球面部2の環状路24と、穿刺部3A、3Bの通路33とにより構成され、穿刺部3Aの開口と穿刺部3Bの開口とを連通する。
【0048】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、次のような効果がある。
すなわち、排出された房水を連通路4により強膜SCに戻すことができるので、眼球EBが排出物で感染することを防止できる。
【0049】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態に係る医療用処置具1は、図7に示すように、穿刺部3Bの構成が、第1実施形態と相違する。
医療用処置具1は、球面部2と、第1穿刺部としての穿刺部3Aと、当該医療用処置具1が眼球EBに装着されたときに硝子体VBに達する長さを有する第2穿刺部としての穿刺部3Bとを備えている。
【0050】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、次のような効果がある。
すなわち、緑内障に加齢黄斑変性症を合併した場合、眼球EBに医療用処置具1を装着した状態で、加齢黄斑変性症の治療に必要な抗血管内皮増殖因子剤を点眼することにより、穿刺部3Bを介して抗血管内皮増殖因子剤を硝子体VBに投与することができる。なお、房水の内圧が高いため、抗血管内皮増殖因子剤が穿刺部3Aを介して眼房に入り込むことはない。
また、穿刺部3Bの表面に予め抗血管内皮増殖因子剤を塗布しておけば、眼球EBに医療用処置具1を装着することにより、穿刺部3Bの表面に予め塗布された抗血管内皮増殖因子剤を硝子体VBに投与することができる。
【0051】
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態に係る医療用処置具1は、図8(A)、(B)に示すように、球面部2および穿刺部3A、3Bの構成が異なる点、および穿刺部3A、3Bを眼球EBに穿刺するための穿刺用部材5を備える点が、第1実施形態と相違する。
【0052】
球面部2は、中央部に開口23を有している。
穿刺部3A、3Bは、球面部2を貫通して当該穿刺部3A、3B内に延設された収容孔としての貫通孔32を有している。この貫通孔32は、穿刺部3A、3Bと球面部2とを貫通している。
ここで、球面部2および穿刺部3A、3Bは、第1実施形態よりも柔らかい素材で形成されている。
【0053】
穿刺用部材5は、基部51と、基部51から突出した突出部52とを備え、球面部2および穿刺部3A、3Bから分離可能に構成されている。
基部51は、球面状に形成されるとともに、球面部2の開口23を覆う大きさを有している。
突出部52は、形状および大きさが貫通孔32と同様に形成され、当該貫通孔32に収容可能に構成されている。
【0054】
ここで、穿刺用部材5は、球面部2および穿刺部3A、3Bよりも固い素材で形成されている。このため、医療用処置具1を眼球EBに装着する際は、穿刺部3A、3Bの貫通孔32に穿刺用部材5の突出部52を収容した状態で、穿刺用部材5を押し込むことで、穿刺部3A、3Bが隅角ANまで穿刺される。その後は、図8(B)に示すように、球面部2および穿刺部3A、3Bから穿刺用部材5を分離させ、球面部2および穿刺部3A、3Bを留置する。
【0055】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、次のような効果がある。
すなわち、穿刺用部材5が設けられているため、球面部2および穿刺部3A、3Bを柔らかい素材で形成することができ、医療用処置具1が留置されている間の患者の違和感を緩和することができる。
【0056】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、房水を効率的に排出するために、球面部2や穿刺部3A、3Bに設ける構成としては、前記各実施形態のものに限られず、例えば、図9(A)、(B)に示す構成としてもよい。図9(A)に示す穿刺部3A、3Bには、一端が当該穿刺部3A、3Bの先端に開口し、他端が穿刺部3A、3Bの側面に開口する孔34が設けられている。図9(A)に示す球面部2および穿刺部3A、3Bには、一端が当該穿刺部3A、3Bの先端に開口し、他端が球面部2の内側面21に開口する孔35が設けられている
【0057】
球面部2および穿刺部3A、3Bは、生体適合性を有する素材であれば、例えば、樹脂や金属等の他の素材で形成してもよい。また、球面部2と穿刺部3A、3Bとを異なる素材で形成してもよい。
【0058】
穿刺部3A、3Bは、少なくとも1つ設けられていればよく、1つだけ設けられてもよいし、3つ以上設けられてもよい。
また、穿刺部3A、3Bは、医療用処置具1が前記眼球に装着されたときに虹彩IRを貫通する長さを有してもよい。
さらに、穿刺部3A、3Bの開口は、房水を排出可能な位置であれば、先端以外に設けられてもよい。
穿刺部3A、3Bにおける収容孔としては、穿刺用部材5の突出部52を収容可能、かつ当該突出部52で穿刺部3A、3Bを眼球EBに穿刺可能であればよく、例えば、穿刺部3A、3Bの先端まで貫通していないものであってもよい。また、貫通孔32とは別に収容孔を設けてもよい。
【0059】
穿刺用部材5は、突出部52を有していれば、球面状、環状等、任意の形状を採用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 医療用処置具
2 球面部
3A 穿刺部、第1穿刺部
3B 穿刺部、第2穿刺部
4 連通路
5 穿刺用部材
23 開口
31 溝
32 貫通孔
AN 隅角
CO 角膜
EB 眼球
VB 硝子体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9