【文献】
Arabidopsis thaliana At3g21150 mRNA,complete CDS(14−MAR−2003)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記DNA分子が、ダイズ植物、植物細胞、種子、子孫植物、植物部分、または商品生産物に含まれたDNA分子であり、ここに、商品生産物が、全種子または加工種子、動物用飼料、粗粉、粉、フレーク、ふすま、およびバイオマスからなる群から選択される、請求項1に記載のDNA分子。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】事象MON87712を含むダイズのゲノム中のトランスジェニックインサートの図表示であり、[A]は、ともにトランスジェニックインサートの5’部分と隣接ゲノムDNAの3’部分との間の結合部を形成する配列番号1および配列番号7の相対位置に対応し、[B]は、ともにトランスジェニックインサートの3’部分と隣接ゲノムDNAの5’部分との間の結合部を形成する配列番号2および配列番号8の相対位置に対応し、[C]は、ダイズゲノム隣接領域およびトランスジェニックDNAインサートの任意に指定された5’末端の部分を含む配列番号3の相対位置に対応し、[D]は、ダイズゲノム隣接領域およびトランスジェニックDNAインサートの任意に指定された3’末端の部分を含む配列番号4の相対位置に対応し、[E]は、事象MON87712を含むダイズ植物のゲノムに組み込まれたBBX32発現カセットを含む、トランスジェニックDNAインサートの配列である配列番号5を表し、[F]は、図中に左から右に示すように、5’隣接ゲノム配列、トランスジェニックインサート、および3’隣接ゲノム配列である配列番号3、配列番号5、および配列番号4を含む連続配列である配列番号6を表し、配列番号1および7、ならびに配列番号2および8は、これらの配列が事象MON87712を含む植物のゲノム中に存在するとき、上述のように組み込まれ、[G]および[H]は、それぞれMON87712および野生型対立遺伝子を特定するための事象特異的接合状態エンドポイントTAQMAN(登録商標)PCR用の順方向プライマー(配列番号11または配列番号15、および配列番号13)を表し、[I]は、MON87712および野生型対立遺伝子を特定するための逆方向プライマー(配列番号10)を表し、[J]および[K]は、それぞれMON87712および野生型対立遺伝子を特定するための事象特異的接合状態エンドポイントTAQMAN(登録商標)PCRに使用されるプローブ(配列番号12および配列番号14)を表す。矢印は、5’から3’への方向を示す。LB:T−DNAの左境界を指す;RB:T−DNAの右境界を指す。
【
図2】米国または南米における4作期のフィールド試験からの9つのトランスジェニック事象の収量データのメタ分析であり、MON87712 DNAを含む事象1の最も高い収量を示している。パネルA:トランスジェニック事象の平均収量のそれらの対応する陰性同質遺伝子系統と比較した増加(ブッシェル/エーカー)。パネルB:トランスジェニック事象の平均収量の野生型対照と比較した増加(ブッシェル/エーカー)。各バーの上の数字は、増加%を表す。
【0022】
配列の簡単な説明
配列番号1−ダイズゲノムDNAと組み込まれたDNAインサートとの間の左境界結合部を表す22bpのヌクレオチド配列。この配列は、配列番号6の位置3495〜3516、および配列番号3(
図1の[C])の位置3495〜3516に対応する。さらに、配列番号1は、配列番号5(
図1の[E])の組み込まれた発現カセットの位置1〜11の左境界に対応する。
【0023】
配列番号2−組み込まれたDNAインサートとダイズゲノムDNAとの間の右境界結合部を表す22bpのヌクレオチド配列。この配列は、配列番号6の位置5509〜5530、および配列番号4(
図1の[D])の位置90〜111に対応する。さらに、配列番号2は、配列番号5(
図1の[E])の位置2004〜2014に対応する。
【0024】
配列番号3−挿入された事象MON87712のDNAと隣接する5’ダイズゲノム配列(3505bp)と、組み込まれたDNAの領域(100bp)とを含む3605bpのヌクレオチド配列。この配列は、配列番号6の位置1〜3605に相当する。配列番号3の位置3451〜3463の配列は、13〜100個の範囲の個々のc残基を連続して含み得ると考えられている。
【0025】
配列番号4−挿入された事象MON87712のDNAと隣接する3’ダイズゲノム配列(1965bp)と、組み込まれたDNAの領域(100bp)とを含む2065bpのヌクレオチド配列。この配列は、配列番号6の位置5420〜7484に相当する。
【0026】
配列番号5−組み込み後の左境界配列および右境界配列を含む、増加した収量を付与する組み込まれた発現カセットの配列。配列番号5は、配列番号6のヌクレオチド位置3506〜5519に対応する。
【0027】
配列番号6−挿入されたMON87712のDNAと隣接する5’配列(配列番号3)と、組み込まれたDNAインサートの配列(配列番号5)と、挿入されたMON87712のDNAと隣接する3’配列(配列番号4)とのコンティグを表す7484bpのヌクレオチド配列。配列番号6の位置3451〜3463の配列は、13〜100個の範囲の個々のc残基を連続して含み得ると考えられている。
【0028】
配列番号7:ダイズゲノムDNAと組み込まれたDNAインサートとの間の左境界結合部を表す100bpのヌクレオチド配列。この配列は、配列番号6の位置3456〜3555、および配列番号3(
図1の[C])の位置3456〜3555に対応する。さらに、配列番号7は、配列番号5(
図1の[E])の組み込まれた発現カセットの位置1〜50の左境界に対応する。
【0029】
配列番号8−組み込まれたDNAインサートとダイズゲノムDNAとの間の右境界結合部を表す100bpのヌクレオチド配列。この配列は、配列番号6の位置5470〜5569、および配列番号4(
図1の[D])の位置51〜150に対応する。さらに、配列番号8は、配列番号5(
図1の[E])の位置1965〜2014に対応する。
【0030】
配列番号9−pMON83132のBBX32発現カセットのヌクレオチド配列。
【0031】
配列番号10−MON87712 DNA/対立遺伝子および野生型DNA/対立遺伝子の両者を特定するための事象特異的接合状態エンドポイントTAQMAN PCRアッセイに使用する逆方向プライマー配列。配列番号10は、配列番号6のヌクレオチド位置5517〜5546に対応する。プライマー配列番号10および配列番号11または15の組み合わせを用いたPCRアンプリコンの生成は、事象MON87712の存在の陽性結果である。
【0032】
配列番号11−MON87712事象およびMON87712事象の接合状態を特定するために使用する順方向プライマー配列。配列番号11は、配列番号6のヌクレオチド位置5435〜5458に対応する。
【0033】
配列番号12−MON87712事象およびMON87712事象の接合状態を特定するために使用するプローブ配列。配列番号12は、6FAM(商標)標識合成オリゴヌクレオチドである。TAQMAN(登録商標)アッセイにおいて、プライマー配列番号10および配列番号11または15を6FAM(商標)標識プローブと組み合わせて使用する増幅反応で蛍光シグナルが放出されることは、事象MON87712に特徴的である。
【0034】
配列番号13−野生型DNA/対立遺伝子を特定するための事象特異的接合状態エンドポイントTAQMAN(登録商標)PCRに使用する順方向プライマー配列。プライマー配列番号13および配列番号10を使用したPCRアンプリコンの生成は、野生型DNAに特徴的である。
【0035】
配列番号14−ダイズ野生型DNA/対立遺伝子の存在を決定するために使用するプローブ配列。配列番号14は、VIC(商標)標識合成オリゴヌクレオチドである。TAQMAN(登録商標)アッセイにおいて、プライマー配列番号10および配列番号13をVIC(商標)標識プローブと組み合わせて使用する増幅反応で蛍光シグナルが放出されることは、接合状態アッセイにおける野生型対立遺伝子に特徴的である。
【0036】
配列番号15−MON87712事象およびMON87712事象の接合状態を特定するために使用する別の順方向プライマー配列。配列番号15は、配列番号6のヌクレオチド位置5432〜5455に対応する。
【0037】
配列番号16−MON87712事象を特定するために使用するプライマーSQ3983の配列。プライマーSQ3983およびSQ22982(配列番号17)の組み合わせを用いた97bpのPCRアンプリコンの生成は、事象MON87712の存在の陽性結果である。
【0038】
配列番号17−MON87712事象を特定するために使用するプライマーSQ22982の配列。
【0039】
配列番号18−MON87712事象を特定するために使用するプローブPB10453の配列。これは6FAM(商標)標識合成オリゴヌクレオチドである。
【0040】
配列番号19−エンドポイントTAQMAN(登録商標)アッセイで内部対照として使用するプライマーSQ1532の配列。
【0041】
配列番号20−エンドポイントTAQMAN(登録商標)アッセイで内部対照として使用するプライマーSQ1533の配列。
【0042】
配列番号21−エンドポイントTAQMAN(登録商標)アッセイで内部対照として使用するVIC(商標)標識合成オリゴヌクレオチドプローブPB0359の配列。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下の定義および方法は、本発明をより明確に定義し、本発明の実施において当業者を指導するために提供される。特記しない限り、用語は、当業者による従来の用法に準じて理解すべきである。分子生物学における定義および一般用語は、Rieger et al.,Glossary of Genetics:Classical and Molecular,5th edition,Springer−Verlag:New York,1991、およびLewin,Genes V,Oxford University Press:New York,1994にも記載されている。
【0044】
本発明は、トランスジェニックダイズ事象MON87712を提供する。本明細書において使用する「事象」という用語は、植物のゲノムの染色体上の特定の位置にトランスジェニックDNAを挿入した結果として生成されるDNA分子を指す。事象MON87712は、本明細書において配列番号5として提示する配列を有するトランスジェニックDNAをグリシン・マックス(Glycine max)ゲノム中の特定の染色体位置に挿入した結果として生成されるDNA分子を指す。また、事象MON87712を含む植物、種子、子孫、細胞、およびそれらの植物部分も本発明において提供される。MON87712を含む種子の試料は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)に受入番号PTA−10296として、2009年8月20日に寄託されている。MON87712を含む植物は収量の増加を示す。
【0045】
本明細書において使用する「ダイズ」という用語は、グリシン・マックスを意味し、これには野生ダイズ種ならびに種間の交配を可能とするグリシン・ソヤ(Glycine soja)に属する植物を含む、大豆と交配することができる全ての植物品種が含まれる。
【0046】
トランスジェニック「事象」は、異種DNA、すなわち当該トランス遺伝子を含む核酸構築物によって植物細胞を形質転換し、植物のゲノムにトランス遺伝子を挿入することによって独立して形質転換されたトランスジェニック植物の集団を再生し、望ましい分子的特徴、例えば、特定のゲノム位置へのトランス遺伝子の単一コピーの挿入、トランスジェニックDNAの完全性、および収量の増加などの改善された形質を有する特定の植物を選択することによって生成される。本事象を含む植物は、植物のゲノムの特定の位置に挿入されたトランス遺伝子を含む最初の形質転換体も指してよい。また、本事象を含む植物は、植物のゲノム中の同じ特定の位置にトランス遺伝子を保有する、最初の形質転換体の子孫も指してもよい。そのような子孫は、自殖、または形質転換体もしくはその子孫と別の植物との有性異系交配によって生成することができる。そのような別の植物は、同じまたは異なるトランス遺伝子を含むトランスジェニック植物であってもよく、または非トランスジェニック植物、例えば異なる品種のものであってもよい。得られる子孫は、事象MON87712 DNA(挿入されたDNAおよび隣接するDNA)に対してホモ接合性またはヘテロ接合性であってよい。反復親への繰り返し戻し交配後でさえ、形質転換された親に由来する事象DNAは、その交配種の子孫の同じ遺伝子位置に存在する。
【0047】
事象MON87712を含むDNA分子とは、挿入されたトランスジェニックDNA(配列番号5として提供される)の少なくとも一部と、挿入されたDNAと直接隣り合う隣接ゲノムDNAの少なくとも一部とを含むDNA分子を指す。したがって、事象MON87712を含むDNA分子は、トランスジェニックDNAインサートの少なくとも一部と、トランスジェニックDNAが挿入された植物のゲノムの特定の領域の少なくとも一部とに相当するヌクレオチド配列を有する。周囲の植物ゲノムと関連した事象MON87712中の挿入されたDNAの配列は、事象MON87712に特有かつ固有であり、したがってそのようなDNAのヌクレオチド配列は、事象MON87712に特徴的であり、これを特定する。そのようなDNA分子の配列の例は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、および配列番号6として、本明細書において提供する。また、このようなDNA分子は、事象MON87712を含む植物の染色体の必須部分であり、その植物の子孫に伝えることができる。
【0048】
本明細書において使用する「組み換えDNA分子」という用語は、自然に一緒に存在しないであろうDNA分子の組み合わせを含むDNA分子であり、人の介入の結果であるが、これには例えば、互いに異種の少なくとも2つのDNA分子の組み合わせからなるDNA分子、および/または人工的に合成された、自然界に通常存在するであろうポリヌクレオチド配列から逸脱するポリヌクレオチド配列を含むDNA分子、および/または宿主細胞のゲノムDNAに人工的に取り込まれたトランス遺伝子とその宿主細胞のゲノムの関連する隣接DNAとを含むDNA分子がある。組み換えDNA分子の一例は、グリシン・マックスのゲノムにトランス遺伝子を挿入した結果生じる本明細書に記載されるDNA分子であり、これは最終的にその生物における組み換えRNAおよび/またはタンパク質分子の発現をもたらすことができる。また、ヌクレオチド配列またはそれに由来する任意のフラグメントも、DNA分子が、細胞、または組織、または植物もしくは種子もしくは植物組織のホモジネートから抽出できる場合、あるいは細胞、または組織、または植物もしくは種子もしくは植物組織のホモジネートから抽出したDNAもしくはRNAからアンプリコンとして生成できる場合(これらのいずれも事象MON87712を含む植物に由来する材料から得られる)、組み換えDNA分子とみなされるであろう。その点において、配列番号1、配列番号2、配列番号7、および配列番号8に記載した結合部配列、ならびにこれらの結合部配列を同様に含む事象MON87712から得られたヌクレオチド配列は、これらの配列が事象MON87712を含む細胞のゲノム中に存在しても、あるいは事象MON87712を含む植物から得られた組織、子孫、生物試料、または商品生産物中に検出可能な量で存在しても、組み換えDNAであるとみなされる。本明細書において使用する「トランス遺伝子」という用語は、宿主細胞のゲノムに人工的に取り込まれたポリヌクレオチド分子を指す。そのようなトランス遺伝子は、宿主細胞に対して異種であってもよい。「トランスジェニック植物」という用語は、そのようなトランス遺伝子を含む植物を指す。「トランスジェニック植物」には、組み換えDNAの安定な組み込みによってゲノムが変更された植物、植物部分、植物細胞、または種子が含まれる。トランスジェニック植物には、最初に形質転換された植物細胞から再生された植物、および形質転換植物の後世代または交配種からの子孫トランスジェニック植物が含まれる。そのようなゲノム変化の結果として、トランスジェニック植物は関連野生型植物と明確に異なる。トランスジェニック植物の一例は、事象MON87712を含むとして本明細書に記載する植物である。
【0049】
本明細書において使用する「異種の」という用語は、配列が現在認められる遺伝的背景において、所定の宿主ゲノム中に通常は存在しない配列を指す。この点において、配列は宿主ゲノム生来のものであってもよいが、宿主配列内の他の遺伝子配列に関して再配列してもよい。
【0050】
本発明は、DNA分子およびそれに対応するヌクレオチド配列を提供する。本明細書において使用する「DNA配列」、「ヌクレオチド配列」、および「ポリヌクレオチド配列」という用語は、DNA分子のヌクレオチド配列を指し、通常は5’(上流)末端から3’(下流)末端へと提示する。本明細書において使用する命名法は、連邦規則集(United States Code of Federal Regulations)37巻第1.822の条に規定されるものであり、WIPO Standard ST.25(1998),Appendix 2,Tables 1 and 3の表に記載されている。本発明は、トランスジェニック事象MON87712中に提供される2つのヌクレオチド配列鎖のうちの一方に関してのみ開示される。したがって、当分野で完全相補体または逆相補的配列とも称される相補的配列も暗示され、導き出されることにより、本発明の範囲に含まれ、したがって請求項に記載される対象の範囲に含まれるよう意図される。
【0051】
挿入されたトランスジェニックDNAの完全なヌクレオチド配列、および挿入されたトランスジェニックDNAのいずれかの末端に隣接するグリシン・マックスゲノムDNAの実質的なセグメントに対応するヌクレオチド配列が、本明細書において配列番号6として提供される。この小区分が、配列番号5として提供される挿入されたトランスジェニックDNAである。挿入されたトランスジェニックDNAの5’末端に隣接するゲノムDNA、および挿入されたDNAの5’末端の一部のヌクレオチド配列が、本明細書において配列番号3として提供される。挿入されたトランスジェニックDNAの3’末端に隣接するゲノムDNA、および挿入されたDNAの3’末端の一部のヌクレオチド配列が、本明細書において配列番号4として提供される。トランスジェニックDNAゲノムDNAと連結および結合する位置にまたがる領域は、本明細書において結合部と称する。「結合部配列」または「結合部領域」は、挿入されたトランスジェニックDNAと隣り合う隣接ゲノムDNAとにまたがるDNA配列および/または対応するDNA分子を指す。事象MON87712の結合部配列の例は、本明細書において配列番号1、配列番号2、配列番号7、および配列番号8として提供される。ダイズ植物または種子から得られたヌクレオチド分子におけるこれらの結合部配列のうちの1つの特定は、そのDNAが事象MON87712から取得されたことを確定し、またこれは事象MON87712由来のDNAの存在に特徴的である。配列番号1は、ゲノムDNAと挿入されたDNAの5’末端との間の結合部にまたがる22bpのヌクレオチド配列である。配列番号7は、ゲノムDNAと挿入されたDNAの5’末端との間の結合部にまたがる100bpのヌクレオチド配列である。配列番号2は、ゲノムDNAと挿入されたDNAの3’末端との間の結合部にまたがる22bpのヌクレオチド配列である。配列番号8は、ゲノムDNAと挿入されたDNAの3’末端との間の結合部にまたがる100bpのヌクレオチド配列である。配列番号1の連続するヌクレオチド、あるいは配列番号7の51個の連続するヌクレオチド、55個の連続するヌクレオチド、60個の連続するヌクレオチド、65個の連続するヌクレオチド、70個の連続するヌクレオチド、75個の連続するヌクレオチド、80個の連続するヌクレオチド、85個の連続するヌクレオチド、90個の連続するヌクレオチド、95個の連続するヌクレオチド、または全てのヌクレオチドを含む、トランスジェニック事象MON87712から得られたDNAのいかなるセグメントも本発明の範囲に含まれる。配列番号2の連続するヌクレオチド、あるいは配列番号8の51個の連続するヌクレオチド、55個の連続するヌクレオチド、60個の連続するヌクレオチド、65個の連続するヌクレオチド、70個の連続するヌクレオチド、75個の連続するヌクレオチド、80個の連続するヌクレオチド、85個の連続するヌクレオチド、90個の連続するヌクレオチド、95個の連続するヌクレオチド、または全てのヌクレオチドを含む、トランスジェニック事象MON87712から得られたDNAのいかなるセグメントも本発明の範囲に含まれる。さらに、本段落に記載する配列のいずれかに相補的な配列を含むいかなるポリヌクレオチド分子も本発明の範囲に含まれる。
図1は、事象MON87712を含むダイズのゲノム中のトランスジェニックDNAインサート、および5’から3’に配列された配列番号1〜8の相対位置の図である。また、本発明は、配列番号6の全長と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を有するポリヌクレオチドを含む核酸分子も提供する。
【0052】
本発明は、試料中の事象MON87712から得られたDNAの存在に特徴的であるプライマーまたはプローブのいずれかとして使用可能な例示的DNA分子もさらに提供する。そのようなプライマーまたはプローブは、標的核酸配列に特異的であり、したがって本明細書に記載の本発明の方法による事象MON87712核酸配列の特定に有用である。
【0053】
「プローブ」は、検出可能な標識またはレポーター分子、例えば、放射性同位体、リガンド、化学発光剤、または酵素が結合した、単離された核酸である。そのようなプローブは、標的核酸の鎖、本発明については、事象MON87712を含むダイズ由来(本事象由来のDNAを含むダイズ植物由来であっても試料由来であっても)のゲノムDNAの鎖に相補的である。本発明によるプローブは、デオキシリボ核酸またはリボ核酸だけでなく、標的DNA配列に特異的に結合し、そのような結合の検出を用いて特定の試料中のその標的DNA配列の存在を特定/決定/確認することが可能なポリアミドまたは他のプローブ材料も含む。
【0054】
「プライマー」は、典型的には、相補的標的DNA鎖にハイブリダイズしてプライマーと標的DNA鎖とのハイブリッドを形成し、次いでポリメラーゼ、例えDNAポリメラーゼによって標的DNA鎖に沿って伸長させるための特定のアニーリングまたはハイブリダイゼーション方法において使用するために設計された、単離されたポリヌクレオチドである。プライマー対を鋳型DNA、例えばグリシン・マックスゲノムDNAの試料とともに、熱増幅もしくは等温増幅、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、または他の核酸増幅方法で用いて、アンプリコンを生成してもよく、そのような反応から生成されるアンプリコンは、プライマーが鋳型にハイブリダイズした2つの部位の間に位置する鋳型DNAの配列に対応するDNA配列を有するであろう。本明細書において使用する「アンプリコン」とは、増幅手法を用いて合成されたDNAの断片またはフラグメント、すなわち増幅反応の産物である。本発明の一実施形態において、事象MON87712に特徴的なアンプリコンは、グリシン・マックスゲノム中に自然には見られない配列を含む。プライマー対とは、本発明において使用するとき、典型的には熱増幅もしくは等温増幅反応、または他の核酸増幅方法において、プライマー対の個々のメンバーに結合の標的とされる位置間のポリヌクレオチドセグメントを線形に増幅するために、二本鎖ヌクレオチドセグメントのそれぞれの鎖を結合する2つのプライマーの使用を指すことが意図される。プライマーとして有用な例示的DNA分子は、配列番号10〜11、配列番号13、および配列番号15として提供される。配列番号10および配列番号11または15として提供されるプライマー対は、第1のDNA分子および第1のDNA分子と異なる第2のDNA分子として使用してもよく、両分子は、それぞれDNAプライマーとして機能するのに十分な長さの配列番号4、配列番号5、または配列番号6、あるいはそれらの相補体の連続するヌクレオチドを有し、それにより事象MON87712で得られた鋳型DNAと一緒に増幅反応に使用した場合に、トランスジェニック事象MON87712に特有かつ固有のアンプリコンが生成されるであろう。「アンプリコン」という用語の使用は、DNA増幅反応において形成され得るプライマーダイマーを明確に除外する。
【0055】
本発明によるプローブおよびプライマーは、標的配列に対して完全な配列同一性を有してもよいが、標的配列に選択的にハイブリダイズする能力を保持する標的配列と異なるプライマーおよびプローブを従来の方法によって設計してもよい。核酸分子がプライマーまたはプローブの役割を果たすためには、使用する特定の溶媒および塩の濃度で安定な二本鎖構造体を形成することができるように、配列が十分に相補的であることのみが必要とされる。いかなる核酸ハイブリダイゼーションまたは増幅方法を用いて、試料中の事象MON87712由来のトランスジェニックDNAの存在を特定してもよい。プローブおよびプライマーは、一般に少なくとも約11ヌクレオチド長、少なくとも約18ヌクレオチド長、少なくとも約24ヌクレオチド長、および少なくとも約30ヌクレオチド長、またはそれ以上の長さである。そのようなプローブおよびプライマーは、高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、標的配列に特異的にハイブリダイズする。
【0056】
プローブおよびプライマーを準備および使用するための方法は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1−3,ed.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989(以下、「Sambrook et al.,1989」とする)、Current Protocols in Molecular Biology,ed.Ausubel et al.,Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York,1992(定期的に改定される)(以下、「Ausubel et al.,1992」とする)、およびInnis et al.,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press:San Diego,1990に記載されている。PCR−プライマー対は、例えば、その目的のためのコンピュータプログラム、例えばPrimer(Version 0.5,(C)1991,Whitehead Institute for Biomedical Research,Cambridge,MA)を用いて、既知の配列から得ることができる。
【0057】
隣接DNAおよび本明細書において開示されるインサート配列に基づくプライマーおよびプローブは、既知の方法によって、例えばそのような配列を再クローニングおよび配列決定することによって、この開示される配列を確認するために使用することができる。
【0058】
本発明の核酸プローブおよびプライマーは、ストリンジェントな条件下で、標的DNA配列にハイブリダイズする。いかなる核酸ハイブリダイゼーションまたは増幅方法を用いて、試料中のトランスジェニック事象由来のDNAの存在を特定してもよい。核酸分子またはそのフラグメントは、特定の状況下で、他の核酸分子に特異的にハイブリダイズすることができる。本明細書において使用するとき、2つの核酸分子は、それら2つの分子が逆平行二本鎖核酸構造体を形成できれば、互いに特異的にハイブリダイズできるとされる。核酸分子は、別の核酸分子と完全な相補性を示す場合、その「相補体」であるとされる。本明細書において使用するとき、分子は、その分子のうちの一方のあらゆるヌクレオチドが他方のヌクレオチドに相補的であるとき、「完全な相補性」を示すとされる。2つの分子は、少なくとも「低ストリンジェンシー」条件下でこれらが互いにアニールされた状態を維持するのに十分な安定性で互いにハイブリダイズすることができる場合に、「最小限に相補的」であるとされる。同様に、分子は、「高ストリンジェンシー」条件下でこれらが互いにアニールされた状態を維持するのに十分な安定性で互いにハイブリダイズすることができる場合に、「相補的」であるとされる。ストリンジェンシー条件は、Sambrook et al.,1989、およびHaymes et al.,In:Nucleic Acid Hybridization,A Practical Approach,IRL Press,Washington,DC(1985)に記載されている。したがって、完全な相補性からの逸脱は、そのような逸脱が二本鎖構造体を形成する分子の能力を完全に排除しない限り許容される。核酸分子がプライマーまたはプローブの役割を果たすためには、使用する特定の溶媒および塩の濃度で安定な二本鎖構造体を形成することができるように、配列が十分に相補的であることのみが必要とされる。
【0059】
本明細書において使用するとき、実質的に相同な配列とは、高ストリンジェンシー条件下で比較される核酸配列の相補体に特異的にハイブリダイズするであろう核酸配列である。DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件、例えば、約45℃で6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)後の50℃で2.0×SSC洗浄は、当業者に既知であり、あるいはこれはCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6に記載されている。例えば、洗浄ステップにおける塩濃度は、50℃で約2.0×SSCの低ストリンジェンシーから、50℃で約0.2×SSCの高ストリンジェンシーまでで選択することができる。さらに、洗浄ステップにおける温度は、室温の低ストリンジェンシー条件、約22℃から、約65℃の高ストリンジェンシー条件へと増加させることができる。温度および塩の両方を変更してもよく、あるいは温度または塩濃度のいずれか一方を一定に保ち、他方の変数を変化させてもよい。一実施形態において、本発明の核酸は、高ストリンジェンシー条件下で、配列番号1、配列番号2、配列番号7、および配列番号8に記載した核酸分子、またはそれらの相補体もしくはフラグメントの1つまたは複数に特異的にハイブリダイズする。標的DNA分子に対するプローブのハイブリダイゼーションは、当業者に既知の多数の方法のいずれを用いて検出してもよい。これには、蛍光タグ、放射性タグ、抗体ベースのタグ、および化学発光タグを含み得るが、これらに限定されない。
【0060】
特定の増幅プライマー対を用いた標的核酸配列の増幅(例えば、PCRによる)に関して、「ストリンジェント条件」は、DNA増幅反応において、プライマー対が、対応する野生型配列(またはその相補体)を有するプライマーが結合するであろう標的核酸配列のみにハイブリダイズし、好ましくは固有の増幅産物であるアンプリコンを生成するのを可能にする条件である。DNA増幅方法の例には、PCR、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)(例えば、米国特許第No.7,485,428号を参照)、鎖置換増幅(SDA)(例えば、米国特許第5,455,166号および第5,470,723号を参照)、転写媒介性増幅(TMA)(例えば、Guatelli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878(1990)を参照)、ローリングサークル増幅(RCA)(例えば、Fire and Xu,Proc.Natl.Acad Sci.USA 92:4641−4645(1995)、Lui,et al.,J.Am.Chem.Soc.118:1587−1594(1996)、Lizardi,et al.,Nature Genetics 19:225−232(1998)、米国特許第5,714,320号および第6,235,502号)を参照)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)(例えば、Vincent et al.,EMBO Reports 5(8):795−800(2004);米国特許第7,282,328号を参照)、および多置換増幅(MDA)(例えば、Dean et.al.,Proc.Natl.Acad Sci.USA 99:5261−5266(2002)を参照)がある。
【0061】
「(標的配列)に特異的な」という用語は、プローブまたはプライマーが、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、標的配列を含む試料中の標的配列のみとハイブリダイズすることを示す。
【0062】
本明細書において使用する「単離された」という用語は、分子をその分子がその天然または自然状態で通常は会合している他の分子から少なくとも部分的に分離することを指す。一実施形態において、「単離された」という用語は、その天然または自然状態でDNA分子と通常は隣接する核酸から少なくとも部分的に分離されたDNA分子を指す。したがって、例えば組み換え手法の結果として、通常は会合していない調節配列またはコード配列と融合したDNA分子は、本明細書において単離されたものとみなされる。このような分子は、宿主細胞の染色体に組み込まれている場合、あるいは他のDNA分子を含む核酸溶液中に存在する場合にも、単離されたものとみなされる。
【0063】
当業者に既知の多数の方法のいずれを用いて、本発明において開示されるDNA分子またはそのフラグメントを単離および操作してもよい。例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)技術は、特定の出発DNA分子を増幅するため、および/または元の分子の変異体を生成するために使用可能である。また、DNA分子、またはそのフラグメントは、他の手法を用いて、例えば、自動オリゴヌクレオチド合成機を用いて一般に実施されているように、化学的手法によってフラグメントを直接合成することによって取得することもできる。
【0064】
有性交配種の子孫が当該トランス遺伝子/ゲノムDNAを含むかどうかを決定するために、特定の植物のトランス遺伝子/ゲノムDNAの存在を検出することができることは有利であろう。さらに、特定の植物を検出するための方法は、トランスジェニック作物植物に由来する食品の市販前承認およびラベル表示を要求する規制に従う際に有用であろう。
【0065】
トランス遺伝子の存在は、核酸プローブを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはDNAハイブリダイゼーションなど、いかなる周知の核酸検出方法によって検出してもよい。このような検出方法は、一般に、頻繁に使用される遺伝要素、例えばプロモーター、ターミネーター、マーカー遺伝子などに重点を置いている。結果として、そのような方法は、異なる形質転換事象、特に同じDNA構築物を用いて生成されたものを区別するためには、挿入されたDNAと隣り合う染色体DNA(「隣接DNA」)の配列が既知でない限り、有用ではないかもしれない。事象特異的PCRアッセイは、例えば、Taverniers et al.(J.Agric.Food Chem.,53:3041−3052,2005)によって考察され、この中でトランスジェニックトウモロコシ系統Bt11、Bt176、およびGA21、ならびにキャノーラ事象GT73に対する事象特異的追跡系が示されている。この研究において、事象特異的プライマーおよびプローブは、各事象について、ゲノム/トランス遺伝子結合部の配列に基づいて設計される。また、トランスジェニック植物事象特異的DNA検出方法は、米国特許第6,893,826号、第6,825,400号、第6,740,488号、第6,733,974号、第6,689,880号、第6,900,014号、および第6,818,807号にも記載されている。
【0066】
したがって、本明細書において提供されるDNA分子および対応するヌクレオチド配列は、とりわけ、事象MON87712を特定し、事象MON87712を含む植物の変種またはハイブリッドを選択し、試料中の事象MON87712から得られたDNAの存在を検出し、事象MON87712または事象MON87712を含む植物および植物部分の存在および/または不在について試料をモニターするために有用である。
【0067】
本発明は、植物、子孫、種子、植物細胞、植物部分(花粉、胚珠、莢、花、根または茎の組織、繊維、および葉)、および商品生産物を提供する。このような植物、子孫、種子、植物細胞、植物部分、および商品生産物は、検出可能な量の本発明のポリヌクレオチド、すなわち配列番号1の連続するヌクレオチド、配列番号2の連続するヌクレオチド、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、または配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチドとして提供される配列のうちの少なくとも1つを含むポリヌクレオチドなどを含む。また、本発明の植物、子孫、種子、植物細胞、植物部分、および商品生産物は、1つまたは複数の付加トランス遺伝子も含んでよい。そのようなトランス遺伝子は、虫害抵抗性の向上、水利用効率または乾燥耐性の向上、収量性の向上、窒素利用効率の向上または高いもしくは低い窒素供給量などの窒素ストレスに対する耐性の向上、種子品質の向上、病害抵抗性の向上、栄養品質の改善、および/または除草剤耐性、例えばグリホサートもしくはジカンバ耐性の向上を含むがこれらに限定されない望ましい形質を付与するタンパク質またはRNA分子をコードするいかなるヌクレオチド配列であってもよく、このとき望ましい形質は、そのような付加トランス遺伝子を含まない相当する植物に対して比較される。
【0068】
本発明は、事象MON87712を含むトランスジェニック植物から得られた植物、子孫、種子、植物細胞、および植物部分、例えば花粉、胚珠、莢、花、根または茎組織、および葉を提供する。事象MON87712を含む種子の代表試料は、本発明に権利を付与する目的で、ブダペスト条約に従って寄託されている。寄託先に選択したレポジトリーは、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)であり、その所在地は、10801 University Boulevard,Manassas,Virginia USA,Zip Code 20110である。ATCCレポジトリーは、事象MON87712含有種子に、受入番号PTA−10296を指定した。
【0069】
本発明は、そのゲノム中に存在する、配列番号1の連続するヌクレオチド、配列番号2の連続するヌクレオチド、配列番号7または配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチドからなる群から選択されるヌクレオチド配列を有するDNA分子を含む微生物を提供する。そのような微生物の例は、トランスジェニック植物細胞である。本発明の植物細胞などの微生物は、多くの産業用途において有用であり、これには、(i)科学研究または産業調査のためのリサーチツールとしての使用、(ii)その後の科学調査に、または工業製品として使用可能な、内因性もしくは組み換え炭水化物、脂質、核酸、酵素、またはタンパク質産物、あるいは小分子を製造するための培養における使用、(iii)のちに農業研究および生成に使用可能なトランスジェニック植物または植物組織培養物を生成するための現代の植物組織培養手法での使用が含まれるが、これらに限定されない。トランスジェニック植物細胞などの微生物の製造および使用は、現代の微生物学的手法および人の介入を利用して、人工の固有の微生物を製造する。この過程において、組み換えDNAを植物細胞のゲノムに挿入して、天然の植物細胞と異なる固有のトランスジェニック植物細胞を作成する。このトランスジェニック植物細胞は、次いで、現代の微生物学手法を用いて、細菌および酵母細胞と同じように培養することができ、未分化の単細胞状態で存在してもよい。この新しい植物細胞の遺伝子組成および表現型は、細胞のゲノムに異種DNAを組み込むことによって生じる技術的効果である。本発明の別の態様は、本発明の微生物を使用する方法である。トランスジェニック植物細胞などの本発明の微生物を使用する方法には、(i)細胞のゲノムに組み換えDNAを組み込むことによってトランスジェニック細胞を製造し、次いでこの細胞を使用して同じ異種DNAを有するさらなる細胞を得る方法、(ii)現代の微生物学手法を用いて、組み換えDNAを含む細胞を培養する方法、(iii)培養細胞から、内因性もしくは組み換え炭水化物、脂質、核酸、酵素、またはタンパク質産物を製造および精製する方法、並びに(iv)現代の植物組織培養手法をトランスジェニック植物細胞に用いて、トランスジェニック植物またはトランスジェニック植物組織培養物を製造する方法が含まれる。
【0070】
本明細書において使用する「子孫」とは、祖先植物から得た事象DNAおよび/または配列番号1の連続するヌクレオチド、配列番号2の連続するヌクレオチド、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、もしくは配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチドとして提供される、少なくとも1つの連鎖を有するポリヌクレオチドを含むあらゆる植物、種子、植物細胞、および/または再生可能な植物部分を含む。植物、子孫、および種子は、トランス遺伝子に対して、ホモ接合性またはヘテロ接合性であってよい。子孫は、事象MON87712を含む植物によって生成された種子から、および/または事象MON87712を含む植物の花粉で受精させた植物によって生成された種子から栽培してもよい。
【0071】
子孫植物を自家受粉(「自殖」としても知られる)して、植物の真の育種系統、すなわちトランス遺伝子に対してホモ接合性の植物を作り出すこともできる。あるいは、子孫植物を異系交配して(例えば、別の植物と交配して)、変種もしくはハイブリッドの種子または植物を生成してもよい。他の植物は、トランスジェニックまたは非トランスジェニックであってよい。したがって、本発明の変種もしくはハイブリッドの種子または植物は、事象MON87712の特有かつ固有のDNAを含まない第1の親と、事象MON87712を含む第2の親とを交配することにより、事象MON87712の特有かつ固有のDNAを含むハイブリッドを生じることによって得ることができる。各親は、交配または品種改良が本発明の植物または種子、すなわち事象MON87712の特有かつ固有のDNAおよび/または配列番号1もしくは配列番号2の連続するヌクレオチド、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、または配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチドを含む少なくとも1つの対立遺伝子を有する種子をもたらす限り、ハイブリッドまたは同系/変種であってよい。したがって、2つの異なるトランスジェニック植物を交配して、2つの別々に分離する付加外来遺伝子を含むハイブリッドの子孫を生成してもよい。例えば、増加した収量を有する事象MON87712を含む植物を別のトランスジェニック植物、例えばグリホサートに対して耐性を有するものと交配して、両方のトランスジェニック親の特徴を有する植物を生成することができる。適切な子孫の自殖により、両方の追加外来遺伝子に対してホモ接合性の植物を生成することができる。また、親植物への戻し交配および非トランスジェニック植物との異系交配、また栄養繁殖も想定される。様々な形質および作物に一般に使用される他の品種改良法の説明は、いくつかの文献のうちの1つに記載されており、これには例えば、Fehr,in Breeding Methods for Cultivar Development,Wilcox J.ed.,American Society of Agronomy,Madison WI(1987)がある。1つの植物と別の植物との有性交配、すなわち他花受粉は、人の介入によって達成または促進することができるが、これは例えば:人の手で1つの植物の花粉を採取して、この花粉を第2の植物の花柱もしくは柱頭に接触させることによって;人の手および/または人の行為により、植物の雄しべもしくは葯を除去、破壊、または被覆して(例えば、手作業による介入によって、または化学的除雄剤の適用によって)、自然自家受粉を防止して、受精を行うためには他花受粉を行わなければならないようにすることによって;人が、花粉媒介昆虫を「計画受粉」のための位置に配置することによって(例えば、果樹園もしくは畑にミツバチの巣箱を配置することによって、または植物を花粉媒介昆虫と一緒にケージに入れることによって);人が、花柱もしくは柱頭に外来花粉を配置または接触させられるように、花の部分を開放または除去することによって;植物の選択的配置によって(例えば、意図的に植物を受粉距離内に植える);および/または化学物質を適用して、開花を促進するか、または(花粉に対する柱頭の)感受性を助長することによって行われる。
【0072】
この方法の実施において、1つの植物をそれ自体と有性交配する、すなわち自家受粉または自殖するステップは、人の介入によって達成または促進することができるが、これは例えば:人の手で植物の花粉を採取して、この花粉を同じ植物の花柱もしくは柱頭に接触させ、場合によってはその後その植物のさらなる受精を防止することによって;人の手および/または人の行為により、他の付近の植物の雄しべもしくは葯を除去、破壊、または被覆して(例えば、雄穂除去によって、または化学的除雄剤の適用によって)、自然他花受粉を防止して、受精を行うためには自家受粉を行わなければならないようにすることによって;人が、花粉媒介昆虫を「計画受粉」のための位置に配置することによって(例えば、1つの植物のみを花粉媒介昆虫と一緒にケージに入れることによって);自家受粉を可能にするように花またはその部分を人が操作することによって;植物の選択的配置によって(例えば、意図的に植物を受粉距離外に植える);および/または化学物質を適用して、開花を促進するか、または(花粉に対する柱頭の)感受性を助長することによって行われる。
【0073】
本発明は、事象MON87712を含む植物から得られた植物部分を提供する。本明細書において使用するとき、「植物部分」とは、事象MON87712を含む植物から得られた材料から構成される、植物のあらゆる部分を指す。植物部分には、細胞、花粉、胚珠、莢、花、根または茎組織、繊維、および葉が含まれるが、これらに限定されない。植物部分は、生存可能、生存不能、再生可能、および/または再生不能であってよい。
【0074】
本発明は、事象MON87712を含む植物から得られた商品生産物を提供する。本明細書において使用するとき、「商品生産物」とは、事象MON87712を含む植物、種子、植物細胞、または植物部分から得られた材料から構成される、組成物または生産物を指す。商品生産物は、消費者に販売されてもよく、また生存可能または生存不能であってよい。生存不能な商品生産物には、育成不能の種子および穀粒、加工された種子、種子部分および植物部分、脱水した植物組織、凍結した植物組織および加工された植物組織、陸生動物および/または水生動物が摂取するために加工された種子および植物部分の動物用飼料、油、粗粉、粉、フレーク、ふすま、繊維、およびヒトが摂取するための他のあらゆる食品、ならびにバイオマスおよび燃料製品が含まれるが、これらに限定されない。加工ダイズは、世界中でタンパク飼料および植物油の最大の原料である。MON87712を含む植物由来のダイズおよびダイズ油は、多くの異なる生産物の製造に使用することができ、これには非毒性プラスチック、印刷用インク、潤滑剤、ワックス、油圧油、変圧器油、溶媒、化粧品、および頭髪用製品があるが、これらに限定されない。MON87712を含む植物のダイズおよび油は、全ダイズから作製されたダイズ食品、例えば、豆乳、ダイズバター、納豆、およびテンペ、ならびに加工ダイズおよびダイズ油から作製されたダイズ食品、例えば、ダイズ粗粉、ダイズ粉、ダイズタンパク質濃縮物、ダイズタンパク質単離物、質感を与えたダイズタンパク質濃縮物、加水分解ダイズタンパク質、ホイップクリーム、料理用油、サラダ油、ショートニング、およびレシチンにおける使用に好適となり得る。また、全ダイズは食用に適し、通常は生で、炒って、または枝豆として、消費者に販売される。通常は全ダイズを浸漬し、粉砕することによって製造される豆乳は、他の加工をせずに、噴霧乾燥して、またはダイズヨーグルト、ダイズチーズ、豆腐、もしくは湯葉を作製するために加工して摂取してもよい。生存可能な商品生産物には種子および植物細胞が含まれるが、これらに限定されない。したがって、事象MON87712を含む植物を用いて、ダイズ植物から通常得られるいかなる商品生産物を製造してもよい。事象MON87712を含む植物から得られるそのようないかなる商品生産物も少なくとも検出可能な量の事象MON87712に対応する特有かつ固有のDNAを含んでよく、また具体的には、配列番号1の連続するヌクレオチド、配列番号2の連続するヌクレオチド、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、または配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を有する検出可能な量のポリヌクレオチドを含んでもよい。本明細書において開示される検出方法を含む、ポリヌクレオチド分子を検出するためのいかなる標準的方法を用いてもよい。商品生産物は、任意の検出可能な量の配列番号1の連続するヌクレオチド、配列番号2の連続するヌクレオチド、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、または配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチドがその商品生産物中に存在する場合、本発明の範囲に含まれる。
【0075】
したがって、本発明の植物、子孫、種子、植物細胞、植物部分(花粉、胚珠、莢、花、根または茎組織、および葉など)、および商品生産物は、とりわけ、農業目的の事象MON87712を含む種子および/または植物部分を生成するための植物の栽培、植物の品種改良および研究用途での事象MON87712を含む子孫の生成、産業および研究用途での微生物学的手法による使用、ならびに消費者への販売に有用である。
【0076】
本発明は、増加した収量を有する植物および事象MON87712を含む植物を生成する方法を提供する。事象MON87712を含む植物は、構築物pMON83132(表1)を含む同系ダイズ系統を用いて、米国特許第5,914,451号に記載されている方法と類似する、アグロバクテリウム媒介形質転換方法によって生成した。構築物pMON83132は、ダイズ植物細胞におけるBBX32タンパク質の発現のための植物発現カセットを含む。トランスジェニックダイズ細胞無傷ダイズ植物に再生し、独立して形質転換したトランスジェニック植物の集団から、望ましい分子的特徴、例えば、単一遺伝子座におけるトランス遺伝子カセットの単一コピー、トランス遺伝子カセットの完全性、構築物骨格配列の不在、結合していないグリホサート抵抗性選択カセットの不在を示す個々の植物を選択した。さらに、逆PCRおよびDNA配列分析を実施して、5’および3’のインサートと植物ゲノムとの結合部を決定して、インサート中の要素の構成を確認し(
図1)、ダイズ事象MON87712中のインサート(配列番号5)の完全なDNA配列を決定した。さらに、実地条件での収量増加について、トランスジェニック植物をスクリーニングし、選択した。そのゲノム中にpMON83132のBBX32発現カセットを含むダイズ植物は、本発明の態様である。
【0077】
本発明のトランスジェニック植物の収量の増加は、試験重量、1植物当たりの種子数、種子重量、単位エリア当たりの種子数(すなわち、1エーカー当たりの種子または種子の重量)、1エーカー当たりのブッシェル数、1エーカー当たりのトン数、またはヘクタール当たりのキロ数を含む多数の方法で測定することができる。事象MON87712を含む植物におけるBBX32タンパク質の発現は、成長および繁殖発生能力の向上によってもたらされる収量の増加につながる。収量の増加は、1区画当たりのより多い種子、より大きい種子、1植物当たりのより多くの種子、および/または1区画当たりのより多くの植物を含む収量パラメータのうちの1つまたは複数において、成長の分配からもたらされる。本発明で使用する組み換えDNAは、同じ遺伝的背景を有する非トランスジェニックダイズと比較したときの供給源化合物の増加によって収量の増加をもたらす。これらの生化学的変化および代謝性変化は、BBX32の活性の影響を受け、炭素代謝および窒素代謝を含む、日周性に調節される経路と関連している。
【0078】
トランスジェニック事象MON87712を含む増加した収量を有する植物を生成するための方法が提供される。これらの方法において使用されるトランスジェニック植物は、トランス遺伝子に対してホモ接合性またはヘテロ接合性であってよい。これらの方法によって生成される子孫植物は、変種またはハイブリッドの植物であってよく、植物から生成された種子および/または事象MON87712を含む植物の花粉で受精させた植物によって生成された事象MON87712を含む種子から栽培してもよく、またトランス遺伝子に対して、ホモ接合性またはヘテロ接合性であってよい。子孫植物を続いて自家受粉して、植物の真の育種系統、すなわちトランス遺伝子に対してホモ接合性の植物を作り出してもよく、あるいは異系交配して、例えば別の非関連植物と交配して、変種もしくはハイブリッドの種子または植物を生成してもよい。本明細書において使用するとき、「接合状態」という用語は、植物中の特定の染色体位置(遺伝子座)におけるDNAの類似性を指す。本発明において、DNAは、具体的には、結合部配列(事象DNA)の他に、トランス遺伝子インサートを指す。結合部配列を含むトランス遺伝子インサートが、染色体対のそれぞれの染色体上の同じ位置に存在する場合(2つの対立遺伝子)、植物はホモ接合性である。結合部配列を含むトランス遺伝子インサートが、染色体対の1つの染色体上のみに存在する場合(1つの対立遺伝子)、植物はヘテロ接合性とみなされる。野生型植物は、事象DNAに対してヌルである。
【0079】
増加した収量を有する植物は、配列番号1の連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、配列番号2の連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、および/または配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチドを含む事象MON87712を含む植物を別の植物と交配し、それによって種子を生成し、それを子孫植物に栽培することによって生成することができる。このような子孫植物は、事象MON87712 DNAを含む子孫植物または増加した収量を有する子孫植物を選択するための特定法を用いて分析することができる。使用する他の植物は、トランスジェニックであっても、トランスジェニックでなくてもよい。生成される子孫植物および/または種子は、変種またはハイブリッドの種子であってよい。
【0080】
増加した収量を有する植物は、配列番号1の連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、配列番号2の連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、または配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチドを含む事象MON87712を含む植物を自殖し、それによって種子を生成し、それを子孫植物に栽培することによって生成することができる。このような子孫植物は、次いで事象MON87712 DNAを含む子孫植物を選択するための特定法を用いて分析することができる。
【0081】
これらの方法に包含され、これらの方法を用いて生成される子孫植物および種子は他の植物とは異なるが、これは例えばこれらの子孫植物および種子が組み換えであり、したがって人の介入によって作成され、本発明のトランスジェニックDNAからなる少なくとも1つの対立遺伝子を含み、および/または配列番号1の連続するヌクレオチド、配列番号2の連続するヌクレオチド、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、および配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチドからなる群から選択される、検出可能な量のポリヌクレオチド配列を含むためである。種子は個々の子孫植物から選択することができ、種子が配列番号1、配列番号2、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、および/または配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチドを含む限り、これは本発明の範囲に含まれる。
【0082】
本発明の植物、子孫、種子、植物細胞、植物部分(花粉、胚珠、莢、花、根または茎組織、および葉など)、および商品生産物は、DNA組成、遺伝子発現、および/またはタンパク質発現について評価することができる。そのような評価は、様々な方法、例えばPCR、配列決定、ノーザンブロット法、サザン分析、ウエスタンブロット法、免疫沈降法、およびELISAを用いて、あるいは本明細書において提供される検出方法および/または検出キットを用いて行ってもよい。
【0083】
試料中の事象MON87712に特異的な組成物の存在を検出する方法が提供される。1つの方法は、事象MON87712を含む細胞、組織、種子、植物、または植物部分に特異的な、またはそれらから得られたDNAの存在を検出することからなる。本方法は、増幅に適した条件に供したときに事象MON87712 DNAからアンプリコン、特に配列番号1、配列番号2、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、および/または配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、あるいはそれらの相補体を含むアンプリコンを生成することが可能なプライマー対と接触させるための鋳型DNA試料を提供する。このアンプリコンは、事象MON87712から得られた鋳型DNA分子から、この鋳型DNA分子が配列番号1、配列番号2、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、および/または配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチドの特有かつ固有のヌクレオチド配列を取り込む限り生成される。アンプリコンは、そのアンプリコンの生成に使用するために選択されたポリメラーゼに応じて、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAであってよい。そのようなあらゆる増幅反応で生成されたアンプリコン分子を検出し、そのアンプリコンの配列中の配列番号1、配列番号2、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、および/または配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、あるいはそれらの相補体に対応するヌクレオチドの存在を確認するための方法が提供される。アンプリコン中の配列番号1、配列番号2、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、および/または配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、あるいはそれらの相補体に対応するヌクレオチドの検出は、事象MON87712特異的DNAの存在、ひいては試料中に事象MON87712を含む生物材料に決定的および/または特徴的である。
【0084】
植物または植物組織から得られた材料からなる試料中の配列番号3または配列番号4に対応するDNA分子の存在を検出するための別の方法が提供される。本方法は、(i)植物または異なる植物の群からDNA試料を取得することと、(ii)配列番号1または配列番号2のいずれかに記載されるヌクレオチドを含むDNAプローブ分子に、そのDNA試料を接触させることと、(iii)プローブとDNA試料とをストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズさせることと、その後(iv)プローブと標的DNA試料との間のハイブリダイゼーション事象を検出することとからなる。このハイブリッド組成物の検出は、場合によってはDNA試料中の、配列番号3または配列番号4の存在に特徴的である。あるいはハイブリダイゼーションの不在は、適切な陽性対照が同時に試験されている場合、試料中のトランスジェニック事象の不在に特徴的である。あるいは、特定の植物が、配列番号1または配列番号2に対応する配列のいずれかまたは両方、あるいはそれらの相補体を決定することは、その植物が、事象MON87712に対応する少なくとも1つの対立遺伝子を含むことを決定する。
【0085】
したがって、核酸プローブを用いて、任意の周知の核酸増幅および検出方法、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、またはDNAハイブリダイゼーションによって、本発明の核酸分子の存在を検出することが可能である。事象特異的PCRアッセイは、例えば、Taverniers et al.(J.Agric.Food Chem.,53:3041−3052,2005)によって考察され、この中でトランスジェニックトウモロコシ系統Bt11、Bt176、およびGA21、ならびにトランスジェニック事象RT73に対する事象特異的追跡系が示されている。この研究において、事象特異的プライマーおよびプローブは、各事象について、ゲノム/トランス遺伝子結合部の配列に基づいて設計されている。また、トランスジェニック植物事象特異的DNA検出方法は、米国特許第6,893,826号、第6,825,400号、第6,740,488号、第6,733,974号、第6,689,880号、第6,900,014号、および第6,818,807号にも記載されている。
【0086】
DNA検出キットが提供される。1つのタイプのキットは、試料中のトランスジェニック事象MON87712から得られたDNAの存在の検出に特異的なDNAプライマーまたはプローブとして機能するのに十分な長さの配列番号3、配列番号5、または配列番号6の連続ヌクレオチドを有する少なくとも1つのDNA分子を含む。このキットで検出されるDNA分子は、配列番号1に記載される配列の連続ヌクレオチドまたは配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチドを含む。あるいは、キットは、試料中のトランスジェニック事象MON87712から得られたDNAの存在の検出に特異的なDNAプライマーまたはプローブとして機能するのに十分な長さの配列番号4、配列番号5、または配列番号6の連続ヌクレオチドを有する少なくとも1つのDNA分子を含んでもよい。このキットで検出されるDNA分子は、配列番号2に記載される配列の連続ヌクレオチドまたは配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチドを含む。
【0087】
別のキットは、標的DNA試料を上述のようなプライマー対と接触させ、次いで配列番号1、配列番号2の連続するヌクレオチド、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、または配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチドを含むアンプリコンを生成するのに十分な核酸増幅反応を実施する方法を利用する。アンプリコンの検出、およびそのアンプリコン配列中の配列番号1、配列番号2の連続するヌクレオチド、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、または配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、あるいはそれらの相補体の存在の決定は、DNA試料中の事象MON87712特異的DNAの存在に特徴的である。
【0088】
試料中の事象MON87712 DNAに特有かつ固有のDNAの存在、またはさらには不在を決定、検出、または特定するのに有用な、DNAプローブとしての使用に十分なDNA分子が提供される。このDNA分子は、配列番号1の連続するヌクレオチド、またはその相補体、配列番号2の連続するヌクレオチド、またはその相補体、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、またはその相補体、配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、またはその相補体を含む。
【0089】
核酸増幅は、熱増幅および等温増幅方法を含む当分野で既知の様々な核酸増幅方法のいずれによって達成してもよい。事象MON87712(ATCC PTA−10296として寄託された事象MON87712を含む代表種子試料)由来の異種DNAインサートの配列、結合部配列、または隣接配列は、本明細書において提供する配列から得られたプライマーを用いて、本事象由来のかかる配列を増幅し、その後アンプリコンまたはクローン化DNAの標準的DNA配列決定を行うことによって検証することができる。
【0090】
このような方法で生成されたアンプリコンは、複数の手法によって検出することができる。そのような方法の1つは、遺伝子ビット分析(Nikiforov,et al.Nucleic Acid Res.22:4167−4175,1994)であり、この方法では隣り合う隣接ゲノムDNA配列および挿入されたDNA配列の両方と重複するDNAオリゴヌクレオチドが設計される。オリゴヌクレオチドをマイクロウェルプレートのウェル中で固定化する。当該領域の熱増幅(挿入配列中に1つのプライマー、隣り合う隣接ゲノム配列中に1つのプライマーを使用)後、一本鎖アンプリコンは固定化したオリゴヌクレオチドにハイブリダイズし、DNAポリメラーゼおよび予測される次の塩基に特異的な標識ddNTPを用いた単一塩基伸長反応のための鋳型として機能することができる。読み出しは、蛍光性またはELISAに基づいてもよい。蛍光シグナルまたは他のシグナルの検出は、増幅、ハイブリダイゼーション、および単一塩基伸長の成功によるインサート/隣接配列の存在を示す。
【0091】
別の方法は、Winge(Innov.Pharma.Tech.00:18−24,2000)に記載されているようなピロシーケンス法である。この方法では、隣り合うゲノムDNAとインサートDNAとの結合部と重複するオリゴヌクレオチドが設計される。このオリゴヌクレオチドを当該領域由来の一本鎖アンプリコン(挿入配列中に1つのプライマー、隣接ゲノム配列中に1つのプライマー)とハイブリダイズさせ、DNAポリメラーゼ、ATP、スルフリラーゼ、ルシフェラーゼ、アピラーゼ、アデノシン5’ホスホ硫酸、およびルシフェリンの存在下でインキュベートする。ddNTPを個々に添加すると、取り込みが光シグナルを生じるので、これを測定する。光シグナルは、増幅、ハイブリダイゼーション、および単一塩基伸長または多塩基伸長の成功によるトランス遺伝子インサート/隣接配列の存在を示す。
【0092】
Chen,et al.,(Genome Res.9:492−498,1999)により記載されているような蛍光偏光法は、アンプリコンを検出ために使用可能な方法である。この方法を用いて、ゲノムの隣接DNAと挿入DNAとの結合部と重複するオリゴヌクレオチドが設計される。このオリゴヌクレオチドを当該領域由来の一本鎖アンプリコン(挿入DNA中に1つのプライマー、隣接ゲノムDNA配列中に1つのプライマー)とハイブリダイズさせ、DNAポリメラーゼおよび蛍光標識ddNTPの存在下でインキュベートする。単一塩基伸長は、ddNTPの取り込みをもたらす。取り込みは、蛍光光度計を用いて、偏光の変化として測定することができる。偏光の変化は、増幅、ハイブリダイゼーション、および単一塩基伸長の成功によるトランス遺伝子インサート/隣接配列の存在を示す。
【0093】
また、TAQMAN(登録商標)(PE Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて、製造業者により提供される説明書を用いて、DNA配列の存在を検出および/または定量化してもよい。簡潔に述べると、FRETオリゴヌクレオチドプローブは、ゲノムの隣接DNAと挿入DNAとの結合部と重複するよう設計される。熱安定性ポリメラーゼおよびdNTPの存在下で、FRETプローブおよび増幅プライマー(インサートDNA配列中に1つのプライマー、隣接ゲノム配列中に1つのプライマー)のサイクルを実施する。FRETプローブのハイブリダイゼーションの結果、FRETプローブ上の消光部分から蛍光部分が切断され、遠くに放たれる。蛍光シグナルは、増幅およびハイブリダイゼーションの成功による、隣接/トランス遺伝子インサート配列の存在を示す。
【0094】
分子指標は、Tyangi,et al.(Nature Biotech.14:303−308,1996)に記載されているように、配列検出における使用について記載されている。。簡潔に述べると、FRETオリゴヌクレオチドプローブは、隣接ゲノムDNAとインサートDNAとの結合部と重複するように設計されている。FRETプローブの固有の構造は、それに含まれる二次構造をもたらし、これは蛍光部分と消光部分との近接を維持する。熱安定性ポリメラーゼおよびdNTPの存在下で、FRETプローブおよび増幅プライマー(インサートDNA配列中に1つのプライマー、隣接ゲノム配列中に1つのプライマー)のサイクルを実施した。増幅の成功後、FRETプローブの標的配列とのハイブリダイゼーションにより、プローブの二次構造の除去、および蛍光部分と消光部分との立体的隔離がもたらされ、これは蛍光シグナルの生成につながる。蛍光シグナルは、増幅およびハイブリダイゼーションの成功による、隣接/トランス遺伝子インサート配列の存在を示す。
【0095】
記載されている他の方法、例えばマイクロフルイディクス(米国特許公開第2006068398号、米国特許第6,544,734号)などは、DNA試料を分離および増幅するための方法および装置を提供する。光学色素は、特定のDNA分子を検出および測定するために使用される(WO/05017181号)。ナノチューブ素子は、DNA分子または特定のDNA分子への結合後に検出可能なナノビーズを検出するための電子センサを含む(WO/06024023号)。
【0096】
DNA検出キットは、本明細書に記載される組成物およびDNA検出の分野で周知の方法を用いて開発することができる。このキットは、試料中の事象MON87712の特定に有用であり、適切な事象DNAを含む植物を育種するための方法に適用することができる。このキットは、配列番号1〜6に類似する、または相補的なDNAプライマーまたはプローブ、あるいはそれらのフラグメントまたは相補体を含んでもよい。
【0097】
したがって、本発明のキットおよび検出方法は、とりわけ、事象MON87712を特定し、事象MON87712を含む植物の変種またはハイブリッドを選択し、試料中の事象MON87712から得られたDNAの存在を検出し、事象MON87712または事象MON87712を含む植物、植物部分、もしくは商品生産物の存在および/または不在について試料をモニターするために有用である。
【0098】
以下の実施例は、本発明の一部の実施形態の例を示すために含める。当業者は、以下に示す実施例において開示される手法が、本発明を実施する際に良好に機能することを本発明者らが見出したアプローチを示し、したがってその実施のための好ましい様式の例をなすと考えられることを理解すべきである。しかしながら、当業者は、本開示を踏まえ、開示される特定の実施形態に多くの変更を行うことが可能であり、依然として本発明の精神および範囲から逸脱することなく類似または同様の結果を得ることができることを理解すべきである。
【実施例】
【0099】
実施例1:pMON83132によるダイズの形質転換および事象選択
この実施例は、形質転換およびトランスジェニックダイズ事象の発生、ならびに事象MON87712の選択を説明する。
【0100】
アグロバクテリウム媒介形質転換方法を用いて、pMON83132と指定された二成分構築物でダイズ細胞を形質転換した。この構築物は、2つの植物形質転換カセットまたはT−DNAを含む。各カセットは、右境界配列および左境界配列に隣接する。配列番号5に記載されるトランスジェニックインサートは、ゴシピウム・バルバデンセ(Gossypium barbadense、ワタ)の繊維タンパク質E6遺伝子由来の3’非翻訳領域に作用可能に結合した、BBX32タンパク質をコードするDNA分子に作用可能に結合した、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)由来の増強35Sプロモーターを含む形質転換カセットを含む。第2の形質転換カセットは、伸長因子EF−1αをコードするシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のEF−1α遺伝子のプロモーターと組み合わせたゴマノハグサモザイクウイルス(FMV)35S RNAのプロモーター由来のエンハンサー配列からなるキメラプロモーターを含む。またこれは、エンドウ(Pisum sativum)由来のRbcS2遺伝子の3’非翻訳領域に作用可能に結合した、CP4 EPSPSタンパク質をコードするアグロバクテリウム菌種.(Agrobacterium sp.)株CP4由来のaroA遺伝子のコドン改変コード配列に融合した、シロイヌナズナEPSPシンターゼ由来の葉緑体輸送ペプチド(CTP2)をコードするDNA分子に作用可能に結合した、シロイヌナズナEF−1α遺伝子の隣接スプライス部位を含むリーダー(エキソン1)およびイントロンも含む。CP4 aroA遺伝子はグリホサートに対する耐性を付与し、これを選択可能なマーカーとして使用した。表1は、pMON83132中の遺伝要素の要約である。
【0101】
構築物pMON83132での形質転換後、グリホサートを含有する培地上で、形質転換細胞を成長および増殖させた。植物を生存細胞から再生させた。合計4944個の個々のR0形質転換事象を生成し、詳細な分子分析によって特徴付けた。定量PCRおよびRT−PCR(TAQMAN(登録商標))によって、事象をインサートの数(ダイズゲノム中の組み込み部位の数)、コピー数(1つの遺伝子座内のT−DNAのコピーの数)、挿入されたカセットの完全性および骨格配列の不在、ならびにAtBBX32トランス遺伝子転写物の発現についてスクリーニングした。望ましくない分子的特徴、例えばトランス遺伝子の複数のコピーの存在および/またはインサートの分子の複雑性、形質転換ベクター骨格配列の存在を有する事象を排除した。さらに、連鎖サザン分析を実施して、BBX32発現カセットがCP4選択可能なマーカーカセットと連鎖する事象を除外した。合計284個の事象が、上述の分析に基づいて、厳しい分子選択基準を満たした。さらに3個の事象をホモ接合性の原種が入手できないことからさらに排除し、その結果281個の事象をR1世代に進めた。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
1B:境界
2P:プロモーター
3CS:コード配列
4T:転写終結配列
5L:リーダー
6I:イントロン
7TS:標的配列
8OR:複製起点
【0102】
R1世代において、ホモ接合性およびヘテロ接合性の植物のみを次に進めるために、事象に分離比分析を行った。さらに、CP4連鎖分析、TAQMAN(登録商標)分析、およびBBX32発現分析を実施して、CP4がBBX32トランス遺伝子と連鎖する事象、またはOriV複製起点の配列(骨格)が検出された事象、またはBBX32トランス遺伝子発現レベルが望ましくない事象を除外し、結果として121個の事象が残った。様々なプローブを用いたサザンハイブリダイゼーション分析は、単一コピーではない事象、または単一インサートではない事象、または骨格非含有でない事象の42個の事象をさらに排除した。プローブは、無傷のBBX32コード領域およびそれぞれのプロモーター、ポリアデニル化配列、ならびにプラスミド骨格を含んだ。先に進める十分な種子がないことから、さらに2個の事象を停止し、R2世代に進める77個の事象が残った。
【0103】
R2世代において、1)R2栽培のための十分な種子の不足(1事象)、または2)望ましくない農学的表現型(2事象)、または3)BBX32発現レベルまたは代表的ホモ接合性系統の不在(Invader(登録商標)(Third Wave Technologies,Inc.,Madison,WI)により決定)(6事象)によって、さらに9個の事象を排除した。結果として、68個の事象を米国における1年目収量フィールド試験に進めた。収量性に基づいて、16個の事象を南米における第2期フィールド試験に進め、このうち9個の事象をさらなる収量試験用に選択した。米国または南米のそれぞれ複数の地点(表2)における4期のフィールド実験からの収量データのメタ分析は、事象MON87712を含むと指定される1つの子孫系統が最も高収量の事象であることを示した(
図2)。
【表2】
【0104】
実施例2:逆PCRと用いた隣接配列の単離および配列決定による隣接配列の特定
この実施例は、事象MON87712における逆PCRを用いたトランスジェニックDNAインサートに隣接するダイズゲノムDNA配列の単離、および配列決定によるその隣接ゲノム配列の特定を説明する。
【0105】
事象MON87712中のT−DNA挿入と隣接する配列をOchman et al.,1990(PCR Protocols:A guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.)に記載されるように、逆PCRを用いて決定した。野生型A3525およびトランスジェニック系統の両者から、温室条件下で栽培した組織の植物ゲノムDNAを単離した。液体窒素中で乳鉢と乳棒を用いて、または機械的粉砕によって凍結葉組織を粉砕し、その後当分野で既知の方法を用いてDNAを抽出した。この方法は、種子を含むがそれに限定されない任意の組織からDNAを抽出するように、当業者によって変更することができる。
【0106】
トランスジェニックDNAの制限分析に基づいて選択された制限エンドヌクレアーゼで、それぞれの試料からの一定分量のDNAを消化した。制限フラグメントのセルフライゲーション後、トランスジェニックDNAの5’末端および3’末端から伸長する配列を増幅するであろうトランスジェニック配列から設計されたプライマーを用いて、PCR増幅を実施した。様々なTaqポリメラーゼおよび増幅システムを使用することができる。表3は、Phusion High Fidelity DNAポリメラーゼ(Cat.No.F531SまたはF531L、New England Biolabs)、ならびにThermalcyclers Applied Biosystems GeneAmp 9700、ABI 9800 Fast Thermal Cycler、およびMJ Opticonを用いた、隣接配列単離のためのPCR増幅の例を示している。
【表3】
【0107】
アガロースゲル電気泳動によりPCR産物を分離し、QIAGENゲル精製キット(Qiagen,Valencia,CA)を用いて精製した。その結果生じた産物を、標準的配列決定を用いて直接配列決定した。これら2つの方法を用いて、BBX32発現カセットを含む組み込まれたDNAインサートの左境界配列内へと伸長する5’隣接配列を特定し、これを配列番号3として示す(
図1の[C])。BBX32発現カセットを含む組み込まれたDNAインサートの右境界配列内へと伸長する3’接配列を特定し、これを配列番号4として示す(
図1の[D])。ダイズゲノムDNAに組み込まれたトランスジェニックDNAは、配列番号5として示す(
図1の[E])。
【0108】
単離された配列をT−DNA配列と比較して、隣接配列および共単離されたT−DNAフラグメントを特定した。発現カセットの存在の確認は、推定隣接配列データおよび既知のT−DNA配列に基づいて設計されたプライマーを用いたPCRによって達成した。MON87712中の隣接配列から設計されたプライマーを用いて、形質転換系統にT−DNAが組み込まれたのと同じ領域に対応する野生型配列を単離した。MON87712中の隣接配列および野生型配列を複数のヌクレオチドおよびタンパク質データベースに対して分析した。この情報を使用して、トランス遺伝子の植物ゲノムとの関係を調べ、挿入部位完全性を検査した。隣接配列および野生型配列を用いて、実施例3に記載する、事象を特定し、接合状態を決定するためのTAQMAN(登録商標)エンドポイントアッセイのためのプライマーを設計した。
【0109】
実施例3:事象特異的エンドポイントTAQMAN(登録商標)および接合状態アッセイ
この実施例は、試料中のMON87712 DNAを特定するための事象特異的エンドポイントTAQMAN(登録商標)熱増幅法を説明する。
【0110】
事象MON87712特異的エンドポイントTAQMAN(登録商標)法で有用な条件の例を表4および表5に記載する。エンドポイントアッセイに使用するDNAプライマーは、プライマーSQ3983(配列番号16)およびSQ22982(配列番号17)であり、6−FAM(商標)標識オリゴヌクレオチドプローブは、PB10453(配列番号18)である。6FAM(商標)は、DNAプローブに結合したApplied Biosystems(Foster City,CA)製の蛍光色素製品である。TAQMAN(登録商標)MGB(副溝結合)プローブでは、Taq DNAポリメラーゼの5’エキソヌクレアーゼ活性が、フルオロフォアと消光剤との間で5’末端からプローブを切断する。標的DNA鎖にハイブリダイズされると、消光剤とフルオロフォアとは、蛍光シグナルを発生するのに十分なだけ離れる。
【0111】
プライマーSQ3983(配列番号16)およびSQ22982(配列番号17)は、プローブPB10453(配列番号18)とともに記載のように使用したとき、事象MON87712 DNAに特徴的なアンプリコンを生成する。分析には、事象MON87712 DNAを含むことが知られるダイズ由来の陽性対称、非トランスジェニックダイズ由来の陰性対称、および鋳型DNAを含有しない陰性対称が含まれる。
【0112】
これらのアッセイは、Applied Biosystems GeneAmp PCR System 9700、ABI 9800 Fast Thermal Cycler、およびMJ Opticonで使用するために最適化する。当業者に既知の他の方法および装置を用いて、事象MON87712 DNAを特定するアンプリコンを生成してもよい。
【表4】
【表5】
【0113】
以下の実施例は、試料中の事象MON87712の接合状態を決定するために開発された事象特異的エンドポイントTAQMAN(登録商標)熱増幅法を説明する。接合状態アッセイは、事象を含む植物が事象DNAに対してホモ接合性であるか、すなわち染色体対の各染色体上の同じ位置に外来性DNAを含むか、または事象DNAに対してヘテロ接合性であるか、すなわち染色体対のうち1つの染色体のみに外来性DNAを含むか、または事象DNAに対してヌルであるか、すなわち野生型であるかを決定するために有用である。3つのプライマーの組(配列番号10、13、および11または15)、6FAM(商標)標識プローブ(配列番号12)、およびVIC(商標)標識プローブ(配列番号14)をアッセイに使用した(表8)。6FAM(商標)およびVIC(商標)は、DNAプローブに結合したApplied Biosystems(Foster City,CA)製の蛍光色素製品である。プライマー配列番号11または15は、挿入された外来性DNAにハイブリダイズし、そこから特異的に伸長し、プライマー配列番号10は、挿入された外来性DNAの3’側に隣接するDNAにハイブリダイズし、そこから特異的に伸長し、プライマー配列番号13は、トランスジェニック事象MON87712のT−DNA挿入時に欠失した領域に対応する野生型DNAにハイブリダイズし、そこから特異的に伸長する。これらのプライマーは特徴的である。この実施例において、プライマー配列番号10および配列番号11または15、ならびに6FAM(商標)標識オリゴヌクレオチドプローブ配列番号12は、事象MON87712 DNAに特徴的である、プローブ配列番号12からの蛍光シグナルの放出によって示されるDNAアンプリコンを生成し、ゲノムDNA中に存在する挿入されたトランスジェニックDNAのコピーを示す。プライマー配列番号10および配列番号13、ならびにVIC(商標)標識オリゴヌクレオチドプローブ配列番号14は、野生型対立遺伝子に特徴的である、プローブ配列番号14からの蛍光シグナルの放出によって示されるアンプリコンを生成し、ゲノムDNA中に存在する挿入された外来性DNAのコピーがないことを示す。PCR反応において植物から抽出したDNAとこれら3つのプライマーおよび2つのプローブが混合された場合、6FAM(商標)標識オリゴヌクレオチドプローブ(配列番号12)のみからの蛍光シグナルの放出は、事象MON87712に対してホモ接合性の植物の指標となり、これに特徴的である。PCR反応において植物から抽出したDNAとこれら3つのプライマーおよび2つのプローブが混合された場合、6FAM(商標)標識オリゴヌクレオチドプローブ配列番号12とVIC(商標)標識オリゴヌクレオチドプローブ配列番号14とからの蛍光シグナルの放出は、事象MON87712に対してヘテロ接合性の植物の指標となり、これに特徴的である。PCR反応において植物から抽出したDNAとこれら3つのプライマーおよび2つのプローブが混合された場合、VIC(商標)標識オリゴヌクレオチドプローブ(配列番号14)のみからの蛍光シグナルの放出は、事象MON87712に対してヌルである植物、すなわち野生型の指標となり、これに特徴的である。このアッセイにも事象MON87712 DNAを含むダイズ由来の陽性対称、非トランスジェニックダイズ由来の陰性対称、および鋳型DNAを含有しない陰性対称が含まれる。
【0114】
表6および表7は、試料中の事象MON87712の接合状態アッセイに使用する条件の例を提示する。これらのアッセイは、Applied Biosystems GeneAmp PCR System 9700で使用するために最適化した。対立遺伝子の検出は、Applied Biosystems製の7900HT Sequence Detection System、またはBMG Labtech製のPHERAstarで使用するために最適化した。事象MON87712 DNAを特定するアンプリコンを生成する当業者に既知の他の方法および装置は、当該技術の範囲内である。
【表6】
*MGB:副溝結合
【表7】
【表8】
実施例4:任意のMON87712含有品種改良事象における事象MON87712の特定
【0115】
この実施例は、任意の品種改良事象を含むMON87712ダイズの子孫中のMON87712事象をどのようにして特定することができるかを説明する。
【0116】
事象DNAプライマー対を用いて、ダイズ事象MON87712に特徴的なアンプリコンを生成する。MON87712に特徴的なアンプリコンは、配列番号1、配列番号2、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、または配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチドとして本明細書において提供される少なくとも1つの結合部配列、あるいはそれらの相補体を含む(それぞれ
図1に記載される[A]または[B])。配列番号1(
図1の[A])は、5’隣接配列(配列番号3[C]の位置3495〜3516、
図1を参照)と組み込まれたDNAインサートの左境界(配列番号5[E]の位置1〜11、
図1を参照)との結合部に対応するヌクレオチド配列である。配列番号2(
図1の[B])は、組み込まれたDNAインサートの右境界(配列番号5[E]の位置2004〜2014、
図1を参照)と3’隣接配列(配列番号4[D]の位置90〜111、
図1を参照)との結合部に対応するヌクレオチド配列である。配列番号7(
図1の[A])は、5’隣接配列(配列番号3[C]の位置3456〜3555、
図1を参照)とDNAインサートの左境界(配列番号5[E]の位置1〜50
図1を参照)との結合部に対応するヌクレオチド配列である。配列番号8(
図1の[B])は、組み込まれたDNAインサートの右境界(配列番号5[E]の位置1965〜2014、
図1を参照)と3’隣接配列(配列番号4[D]の位置51〜150、
図1を参照)との結合部に対応するヌクレオチド配列である。
【0117】
MON87712に特徴的なアンプリコンを生成する事象プライマー対には、隣接配列(配列番号3および配列番号4)および組み込まれたトランスジェニックDNA配列(配列番号5)を用いて設計されたプライマー対が含まれる。配列番号1の少なくとも15個のヌクレオチドが認められる特徴的なアンプリコンを得るために、配列番号3の塩基1〜3494に基づいて順方向プライマーを、挿入された発現カセットのDNA配列である配列番号5の位置12〜2014に基づいて逆方向プライマーを設計し得るが、これらのプライマーは、配列番号3および配列番号5に特異的にハイブリダイズするのに十分な長さの連続ヌクレオチドを有する。配列番号2の少なくとも15個のヌクレオチドが認められる特徴的なアンプリコンを得るために、挿入された発現カセットのDNA配列である配列番号5の位置1〜2003に基づいて順方向プライマーを、配列番号4である3’隣接配列の塩基12〜2065に基づいて逆方向プライマーを設計し得るが、これらのプライマーは、配列番号4および配列番号5に特異的にハイブリダイズするのに十分な長さの連続ヌクレオチドを有する。実際上は、限定されたサイズ範囲、例えば100〜1000塩基のアンプリコンを生成するプライマーを設計すべきである。より小さいサイズ(より短いヌクレオチド長)のアンプリコンは、一般的にPCR反応においてより確実に生成することができ、サイクル時間を短縮することができ、またアガロースゲル上で容易に分離および可視化することができる、あるいはエンドポイントTAQMAN(登録商標)のようなアッセイでの使用に適合させることができる。さらに、プライマー対を用いて生成したアンプリコンは、ベクターにクローン化、繁殖、単離、および配列決定することができ、あるいは当分野で十分に確立された方法を用いて直接配列決定することができる。MON87712に特徴的なアンプリコン、MON87712を含む植物、またはその子孫を生成するためのDNA増幅方法において有用な配列番号3と配列番号5の組み合わせ、または配列番号4と配列番号5の組み合わせから得られたあらゆるプライマー対は、本発明の態様である。MON87712に特徴的なアンプリコン、MON87712を含む植物、またはその子孫を生成するためのDNA増幅方法において有用な配列番号3の少なくとも11個の連続ヌクレオチド、またはその相補体を含むあらゆる単一の単離されたDNAプライマー分子は、本発明の態様である。MON87712に特徴的なアンプリコン、MON87712を含む植物、またはその子孫を生成するためのDNA増幅方法において有用な配列番号4の少なくとも11個の連続ヌクレオチド、またはその相補体を含むあらゆる単一の単離されたDNAプライマー分子は、本発明の態様である。MON87712に特徴的なアンプリコン、MON87712を含む植物、またはその子孫を生成するためのDNA増幅方法において有用な配列番号5の少なくとも11個の連続ヌクレオチド、またはその相補体を含むあらゆる単一の単離されたDNAプライマー分子は、本発明の態様である。
【0118】
この分析のための増幅条件の例は、表4および表5(実施例3)に示す。しかしながら、これらの方法、あるいはMON87712に特徴的なアンプリコンを生成する、事象MON87712の配列番号3、配列番号4、またはトランスジェニックインサートDNA配列(配列番号5)と相同もしくは相補的なDNAプライマーの使用のいかなる変更も本開示の範囲に含まれる。特徴的アンプリコンは、少なくとも1つのトランス遺伝子/ゲノム結合部DNA(配列番号1、配列番号2、配列番号7の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、または配列番号8の少なくとも51個の連続するヌクレオチド、あるいはそれらの相補体)と相同または相補的なDNA分子、あるいはそれらの実質的部分を含む。
【0119】
試料中の事象MON87712 DNAの分析は、事象MON87712由来の陽性対称、事象MON87712を含まないダイズ植物由来の陰性対称、例えばこれには限らないが野生型対称、およびダイズゲノムDNAを含まない陰性対称を含むべきである。内因性ダイズDNA分子を増幅するプライマー対は、DNA増幅条件の内部対照としての役割を果たすことになる。DNA増幅方法の当業者は、配列番号3、配列番号4、または配列番号5から他のプライマー配列を選択することができ、また表4および表5に示す方法によってアンプリコンを生成するために選択される条件は異なり得るが、事象MON87712 DNAに特徴的なアンプリコンをもたらす。表4および表5の方法を変更したこれらのDNAプライマー配列の使用は、本発明の範囲に含まれる。事象MON87712 に特徴的な、配列番号3、配列番号4、または配列番号5から得られた少なくとも1つのDNAプライマー配列によって生成されたアンプリコンは、本発明の態様である。
【0120】
DNA増幅方法で使用したときに、MON87712、MON87712を含む植物、またはその子孫に特徴的なアンプリコンを生成する、配列番号3、配列番号4、または配列番号5から得られた少なくとも1つのDNAプライマーを含むDNA検出キットは、本発明の態様である。DNA増幅方法で試験したときにゲノムDNAがMON87712に特徴的なアンプリコンを生成するダイズ植物または種子は、本発明の態様である。MON87712アンプリコンに対するアッセイは、Applied Biosystems GeneAmp PCR System 9700、ABI 9800 Fast Thermal Cycler、およびMJ Opticon、Stratagene Robocycler、MJ Engine、Perkin−Elmer 9700、またはEppendorf Mastercycler Gradientサーモサイクラー、あるいはMON87712に特徴的なアンプリコンを生成するために使用可能な他の任意の増幅システムを用いて実施することができる。
【0121】
上記に開示され、特許請求の範囲に記載されるダイズ事象MON87712を含む種子は、ブダペスト条約の下、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC、10801 University Boulevard,Manassas,VA.20110)に寄託された。寄託日は2009年8月20日であり、ATCC受入番号はPTA−10296である。寄託時の全ての制限事項は、特許の発行時に解除されるものであり、この寄託は、37 C.F.R.§§1.801−1.809の全ての要件を満たすことを意図する。この寄託は、30年間または最新の要請から5年間、あるいは特許の有効期間のうち長い方の期間にわたり寄託期間に保持され、その期間中に必要に応じて交換される。
【0122】
本発明の原理を説明および記載したが、当業者は、かかる原理を逸脱することなく本発明の構成および詳細を変更できることを理解すべきである。本発明者らは、添付の特許請求の範囲の精神および範囲に含まれる全ての変更形態を特許請求する。