(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393484
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】チップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
H01C 1/032 20060101AFI20180910BHJP
H01C 7/00 20060101ALI20180910BHJP
H01C 17/242 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
H01C1/032
H01C7/00 110
H01C17/242
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-25750(P2014-25750)
(22)【出願日】2014年2月13日
(65)【公開番号】特開2015-153872(P2015-153872A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 勇太
【審査官】
田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−026204(JP,A)
【文献】
特開平09−312201(JP,A)
【文献】
特開2001−076901(JP,A)
【文献】
特開2005−150516(JP,A)
【文献】
特開2002−367818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/032
H01C 7/00
H01C 17/242
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体状の絶縁性基板と、この絶縁性基板上に所定間隔を存して対向配置された銀を主成分とする一対の表電極と、これら両表電極間を橋絡する長方形状の抵抗体と、この抵抗体を覆うガラス材料からなる第1絶縁層と、この第1絶縁層を覆う樹脂材料からなる第2絶縁層とを備え、前記抵抗体と前記第1絶縁層にトリミング溝を形成して抵抗値を調整するようにしたチップ抵抗器において、
前記第1絶縁層は前記抵抗体の側辺を越えて外方まで延出しており、この第1絶縁層の側辺の一部を前記絶縁性基板の側辺に向かってさらに突出させて凸状の幅広部を形成し、前記トリミング溝を前記幅広部の内側領域を始端として前記抵抗体と前記第1絶縁層との重なり部分に向かって形成したことを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項2】
請求項1の記載において、
前記第1絶縁層は前記抵抗体の相対抗する両側辺を越えて外方まで延出しており、この第1絶縁層の両側辺に前記幅広部をそれぞれ形成し、これら幅広部の何れか一方に前記トリミング溝を形成したことを特徴とするチップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面実装タイプのチップ抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は従来の一般的なチップ抵抗器を模式的に示す平面図、
図11は
図10のC−C線に沿う断面図、
図12は
図10のD−D線に沿う断面図である。
図10に示すチップ抵抗器101は、直方体状の絶縁性基板102と、絶縁性基板102の表面に所定間隔を存して対向配置された一対の表電極103と、これら両表電極103の間を橋絡する長方形状の抵抗体104と、この抵抗体104を覆う第1絶縁層105および第2絶縁層106等によって主として構成されている。なお、図示省略されているが、絶縁性基板102の裏面には表電極103に対応するように一対の裏電極が設けられており、絶縁性基板2の短手方向に沿う両端面には表電極103と裏電極を橋絡する端面電極が設けられている。
【0003】
絶縁性基板102は、大判基板を縦横の分割溝に沿って分割して多数個取りされたものであり、大判基板はアルミナを主成分とするセラミックス基板である。また、表電極103は銀を主成分とする導電材料からなり、抵抗体104は酸化ルテニウム等からなる。第1絶縁層105は耐熱性に優れたガラス材料からなり、この第1絶縁層105で抵抗体104を覆った後に、抵抗体104と第1絶縁層105の一部にレーザー光を照射して抵抗値調整用のトリミング溝107が形成される。
【0004】
トリミング溝107は、両表電極103に測定端子(プローブ)を接触させて抵抗体104の抵抗値を測定しながら、第1絶縁層105の一方の端面から抵抗体104の短手方向にレーザー光を照射することによって形成され、トリミング溝107の始端側が第1絶縁層105の一端面に破断面として露出する。このトリミング溝107の形成後、外的環境により抵抗体104の抵抗値が変わらないようにするために、第1絶縁層105の全体を覆い隠すようにして第2絶縁層106が形成される。
【0005】
近年では、低温で硬化可能な樹脂材料を用いて第2絶縁層106の形成を行ったチップ抵抗器101が主流となりつつある。ここで、チップ抵抗器101の製造過程において、第1絶縁層105で抵抗体104を覆うと、第1絶縁層105の両端面105aと絶縁性基板102の板面102bとによって段差部分が生じ、その後に第2絶縁層106で第1絶縁層105を覆うとき、第2絶縁層106と前記段差部分との間に隙間S200が生じ易くなる(
図11参照)。したがって、このようなチップ抵抗器101を高湿度のもとで使用すると、樹脂はガラスに比べて耐湿性に乏しいため、第2絶縁層106を水分が透過して隙間S200に蓄積され、表電極103の主成分である銀が隙間S200に蓄積された水分を伝って移動するマイグレーションを発生させることがある。そして、表電極103の銀がトリミング溝107まで到達すると、トリミング溝107に露出する抵抗体104の破断面と表電極103との間で短絡して、チップ抵抗器101の抵抗値が変動するという問題が起こる。
【0006】
そこで、マイグレーションの発生を抑制するために、例えば、樹脂材料を用いた保護膜によって抵抗体を被覆し、この保護膜に撥水処理を施したチップ抵抗器が提案されている(特許文献1)。この特許文献1に記載されたチップ抵抗器は、セラミック基板(絶縁性基板102)と、このセラミック基板の端面に対向配置された一対の外部電極(表電極103)と、これら外部電極の間を橋絡する抵抗体と、この抵抗体を覆う樹脂材料からなる保護膜(第2絶縁層106)とで構成されており、保護膜の表面には撥水膜を有する無機フィラーが露出している。特許文献1の記載によると、保護膜に施された撥水膜により水分の吸着を抑制することでマイグレーションの発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−252150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、樹脂はガラスに比べて密着性に乏しいため、樹脂を用いて第2絶縁層106を形成すると、絶縁性基板102の長手方向に沿う両端面102aと第2絶縁層106の両端面106aとの間に第1絶縁層105の両端面105aまで通じる隙間S100が生じ易くなる(
図11参照)。そして、隙間S100と隙間S200とが繋がった場合には、樹脂材料からなる第2絶縁層106に撥水膜を形成したとしても、あるいは、高耐湿の樹脂材料を用いて第2絶縁層を形成したとしても、隙間S200内への水分の侵入を阻止することができない。
【0009】
さらに、第1絶縁層105の一方の端面105aにはトリミング溝107による破断面が露出していることから、隙間S200は表電極103の銀をトリミング溝107まで移動可能とする経路となり得る。この場合、表電極103の銀が隙間S200内に侵入した水分を伝ってトリミング溝107まで到達可能となるため、マイグレーションに起因する抵抗値の変動を防止することができなくなる。
【0010】
本発明は、上記した従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、マイグレーションに起因する抵抗値の変動を防止することのできるチップ抵抗器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明のチップ抵抗器は、直方体状の絶縁性基板と、この絶縁性基板上に所定間隔を存して対向配置された銀を主成分とする一対の表電極と、これら両表電極間を橋絡する長方形状の抵抗体と、この抵抗体を覆うガラス材料からなる第1絶縁層と、この第1絶縁層を覆う樹脂材料からなる第2絶縁層とを備え、前記抵抗体と前記第1絶縁層にトリミング溝を形成して抵抗値を調整するようにしたチップ抵抗器において、前記第1絶縁層
は前記抵抗体の側辺を越えて
外方まで延出しており、この第1絶縁層の側辺の一部を前記絶縁性基板の側辺に向かってさらに突出させて凸状の幅広部を形成し、前記トリミング溝を前記幅広部の内側領域を始端として前記抵抗体と前記第1絶縁層との重なり部分に向かって形成したことを特徴とする。
【0012】
このように構成されたチップ抵抗器では、抵抗体を覆う第1絶縁層に抵抗体の側辺を越えて絶縁性基板の側辺に向かって突出する幅広部を設けてあり、この幅広部の内側領域を始端としてトリミング溝が抵抗体と第1絶縁層との重なり部分に向かって形成されているため、第1絶縁層の端面にトリミング溝が露出しない構成となる。これにより、表電極の銀がトリミング溝に到達することを阻止して、マイグレーションに起因する抵抗値の変動を防止することができる。
【0013】
また、上記構成において、
前記第1絶縁層は前記抵抗体の相対抗する両側辺を越えて外方まで延出しており、この第1絶縁層の両側辺に前記幅広部をそれぞれ形成し、これら幅広部の何れか一方に前記トリミング溝を形成したことを特徴とする。なお、前記幅広部を前記絶縁性基板の前記側辺に至る手前位置まで突出させると、第1絶縁層の幅広部が大判基板の分割溝を被覆しない構成となるため、大判基板から多数個のチップ抵抗器を取り出す際に、大判基板の分割溝に沿って分割し易い。
【発明の効果】
【0014】
本発明のチップ抵抗器では、幅広部の内側領域を始端としてトリミング溝が抵抗体と第1絶縁層との重なり部分に向かって形成されて、第1絶縁層の端面にトリミング溝が露出しない構成となるため、表電極の銀がトリミング溝に到達することを阻止して、マイグレーションに起因する抵抗値の変動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態例に係るチップ抵抗器を模式的に示す平面図である。
【
図4】該チップ抵抗器の製造工程を示す説明図である。
【
図5】該チップ抵抗器の製造工程を示す説明図である。
【
図6】該チップ抵抗器の製造工程を示す説明図である。
【
図7】本発明の第2実施形態例に係るチップ抵抗器を模式的に示す平面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態例に係るチップ抵抗器を模式的に示す平面図である。
【
図9】本発明の第4実施形態例に係るチップ抵抗器を模式的に示す平面図である。
【
図10】従来の一般的なチップ抵抗器を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、
図1は本発明の第1実施形態例に係るチップ抵抗器を模式的に示す平面図であるが、便宜上、第2絶縁層6(
図6参照)の図示を省略している。また、
図2は
図1のA−A線に沿う断面図であり、
図3は
図1のB−B線に沿う断面図である。
【0017】
図1に示すチップ抵抗器1は、直方体形状の絶縁性基板2と、絶縁性基板2の表面の長手方向両端部に設けられた一対の表電極3と、これら両表電極3の間を橋絡する抵抗体4と、抵抗体4を覆うガラス材料からなる第1絶縁層5と、第1絶縁層5を覆う樹脂材料からなる第2絶縁層6等によって主として構成されている。なお、図示省略されているが、絶縁性基板2の裏面には表電極3に対応するように一対の裏電極が設けられており、絶縁性基板2の短手方向に沿う両端面には表電極3と裏電極を橋絡する端面電極が設けられている。
【0018】
絶縁性基板2は、後述する大判基板40を縦横の分割溝41,42に沿って分割して多数個取りされたものであり、大判基板40の主成分はアルミナを主成分とするセラミックス基板である。表電極3と裏電極の主成分は銀であり、抵抗体4は酸化ルテニウム等からなる。そして、この抵抗体4と第1絶縁層5にトリミング溝7を形成することによってチップ抵抗器1の抵抗値が調整されている。
【0019】
図1に示すように、抵抗体4は長方形状に形成されており、抵抗体4の長手方向両端部が各表電極3に重なるようにして配置されている。第1絶縁層5は抵抗体4の全体を覆うようにして形成されており、この第1絶縁層5には抵抗体4の側辺4aを越えて絶縁性基板2の両側辺2cの手前位置まで突出する幅広部E1,E2(図中の斜線部分)がそれぞれ設けられている。トリミング溝7は、両表電極3に測定端子(プローブ)を接触させて抵抗体4の抵抗値を測定しながら、幅広部E1の内側領域に位置する始端7aから抵抗体4の短手方向にレーザー光を照射することによって形成され、測定抵抗値が目標抵抗値に一致する位置(終端)するまでL字状に延びている。抵抗体4と第1絶縁層5にトリミング溝7を形成した後に、外的環境により抵抗体4の抵抗値が変わらないようにするために、第1絶縁層5の全体と絶縁性基板2の大部分を覆い隠すようにして第2絶縁層6が形成される。
【0020】
次に、このチップ抵抗器1の製造工程(第1工程〜第12工程)について、
図4〜
図6を用いて説明する。
【0021】
まず、第1工程として、絶縁性基板2が多数個取りされる大判基板40の表面40aに、Ag/Pdペーストをスクリーン印刷して乾燥させることによって未焼成の表電極3を形成する(
図4(1))。なお、大判基板40には予め1次分割溝41と2次分割溝42が格子状に設けられており、両分割溝41,42によって区切られたマス目の1つ1つが1個分のチップ領域となるが、表電極層3は1次分割溝41を介して隣接する一方のチップ領域の長手方向一端部と他方のチップ領域の長手方向他端部とに連続的に形成する。
【0022】
なお、図示省略してあるが、上記第1工程に前後して、絶縁性基板2が多数個取りされる大判基板40の裏面に、Agペーストをスクリーン印刷して乾燥させることによって未焼成の裏電極を形成する(図示せず)。これら裏電極群の形成位置と表電極3群の形成位置はほぼ対応している。
【0023】
次に、第2工程として、表電極3と裏電極を850℃程度の高温で焼成する。これにより、大判基板40の表面40aと裏面にそれぞれ焼成銀からなる表電極3と裏電極が密着して固定される。
【0024】
次に、第3工程として、大判基板40の表面40aに酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷して乾燥させることにより、各チップ領域に未焼成の抵抗体4を形成する(
図4(2))。その際、表電極3が抵抗体4の長手方向両端部と重なるようにして合わせ置かれる。そして、次なる第4工程で、この抵抗体4を850℃程度の高温で焼成する。
【0025】
次に、第5工程として、抵抗体4を覆う領域にガラスペーストをスクリーン印刷した後、第6工程でこのガラスペーストを600℃程度の高温で焼成することにより、抵抗体4を覆う第1絶縁層5を形成する(
図4(3))。なお、上述のように、第1絶縁層5には、抵抗体4の側辺4aを越えて絶縁性基板2の両側辺2cの手前位置まで突出する一対の幅広部E1,E2が設けられている(
図5(1))。この第1絶縁層5は、次工程で照射されるレーザーの熱で抵抗体4のトリミング溝7近傍が損傷しないようにするためのものである。なお、第5,6工程において、第1絶縁層5の長手方向に沿う両端面5aと絶縁性基板2の板面2bとによって段差部分が生じる(
図2参照)。
【0026】
次に、第7工程として、抵抗体4および第1絶縁層5にレーザー光を照射してトリミング溝7を形成する。上述したように、トリミング溝7の形成は幅広部E1の内側領域に位置する始端7aから抵抗体4の目標抵抗値となる位置まで行われる(
図5(2),(3))。
【0027】
次に、第8工程として、第1絶縁層5やトリミング溝7を覆うようにエポキシ系等の樹脂ペーストをスクリーン印刷した後、第9工程でこの樹脂ペーストを200℃程度の低温で加熱硬化させることにより、第2絶縁層6を形成する(
図6(1))。なお、第8工程において、第2絶縁層6で第1絶縁層5を覆うとき、第2絶縁層6と前記段差部分との間に隙間S2(
図2参照)が生じ易くなる。
【0028】
ここまでの工程は多数個取り用の大判基板40に対する一括処理であるが、次なる第10工程では、ブレークによって大判基板40を1次分割溝41に沿って短冊状に分割するという1次ブレーク加工を行う。これにより、複数個分のチップ領域が設けられた短冊状基板43を得る(
図6(2))。
【0029】
次に、第11工程で、短冊状基板43の分割面にNi/Crをスパッタリングすることにより、表電極3と裏電極を橋絡する端面電極(図示せず)を形成する。そして、次の第12工程で、短冊状基板43を2次分割溝42に沿って分割するという2次ブレーク加工を行うことにより(
図6(3))、チップ抵抗器1が完成する(
図1)。
【0030】
なお、第1実施形態例の第2絶縁層6は、ガラスに比べて密着性に乏しい樹脂材料を用いて形成されているため、第12工程において2次ブレーク加工が行われると、絶縁性基板2の長手方向に沿う側面2aと第2絶縁層6の側面6aとの間に第1絶縁層5の両端面5aまで通じる隙間S1(
図2参照)が生じ易くなる。この隙間S1が上記した隙間S2と繋がると、表電極3の間に水分が移動してきて、マイグレーションが発生しやすい状態となる。
【0031】
ここで、第1実施形態例のチップ抵抗器1では、抵抗体4を覆う第1絶縁層5に抵抗体4の側辺4aを越えて絶縁性基板2の両側辺2cに向かって突出する幅広部E1,E2を設けてあり、トリミング溝7が一方の幅広部E1の内側領域を始端7aとして抵抗体4と第1絶縁層5との重なり部分に向かって形成されているため、第1絶縁層5の端面5aにトリミング溝7の破断面が露出しない構成、すなわち、隙間S2(
図2参照)とトリミング溝7の破断面とが繋がらない構成となる。これにより、マイグレーションによる表電極3の銀がトリミング溝7の破断面に到達することを阻止して、マイグレーションに起因する抵抗値の変動を防止することができる。
【0032】
また、幅広部E1,E2を絶縁性基板2の両側辺2cに至る手前位置まで突出させているため、第1絶縁層5の幅広部E1,E2が大判基板40の分割溝42を被覆しない構成となるため、2次ブレーク加工を行い易い。
【0033】
さらに、第1絶縁層5には一対の幅広部E1,E2が設けられていることから、
図1に示すように一方の幅広部E1の内側領域を始端7aとするトリミング溝7を形成することができるのみならず、他方の幅広部E2の内側領域を始端とするトリミング溝も形成可能である。なお、第1絶縁層5にいずれか一方の幅広部E1,E2を設け、この幅広部の内側領域をトリミング溝の始端とする構成であっても良い。
【0034】
なお、第1実施形態例では、
図1に示すように、幅広部E1,E2の設けられた第1絶縁層5の形状を長方形状とし、この第1絶縁層5で抵抗体4を全て覆うような構成としたが、これに限られず、
図7に示す第2実施形態例のチップ抵抗器10のように、抵抗体4の電極間部分を第1絶縁層11で覆い、この第1絶縁層11にトリミング溝7の始端7aを形成できる程度の幅広部E3と幅広部E4を設けるような構成としても良い。このような構成としても、第7工程で照射されるレーザーの熱で抵抗体4のトリミング溝7近傍を損傷しないようにすることができると共に、第1実施形態例の奏する効果、すなわち、マイグレーションに起因する抵抗値の変動を防止するという効果を得ることができる。
【0035】
また、
図8に示す第3実施形態例のチップ抵抗器20は、第1実施形態例のチップ抵抗器1と比較すると、抵抗体4の配置位置が異なっている。具体的には、第3実施形態例の抵抗体21は、第1実施形態例の抵抗体4に比べて両表電極3の中央部でなく図示下側にシフトした位置に配置されている。このように、抵抗体21の幅と配置される位置を工夫することにより、第1絶縁層22に幅広部E5を容易に確保することができる。
【0036】
また、第1実施形態例では、L字状のトリミング溝7を1つ形成したが、トリミング溝7の形状や数はこれに限らず、
図9(1),(2)に示す第4実施形態例に係るチップ抵抗器30に示すように、例えば直線状のトリミング溝31を複数設けた場合であっても良い。このように、複数のトリミング溝を形成したり、トリミング溝の形状を異なるものとしたとしても、抵抗体4を覆う第1絶縁層5に幅広部E1,E2を設けて、これら幅広部の内側領域を始端31aとしてトリミング溝31を形成すれば、第1実施形態例と同様に、マイグレーションに起因する抵抗値の変動を防止するという効果を得ることが可能である。
【0037】
なお、第1実施形態例では、表電極3を絶縁性基板2の長手方向両端部に対向配置すると共に、抵抗体4の長手方向両端部を表電極3と重なるようにして、抵抗体4を両表電極3の間に橋絡させているが(
図4(2))、これに限られず、表電極3を絶縁性基板2の短手方向両端部に形成した後、抵抗体4の短手方向両端部を表電極3と重なるようして、抵抗体4を両表電極3の間に橋絡させても良い。このように表電極3と抵抗体4とを配置させたとしても、第1実施形態例の奏する効果、すなわち、マイグレーション起因する抵抗値の変動を防止するという効果を得ることが可能であることは言うまでもない。
【0038】
また、第1実施形態例では、両表電極3の対向辺が抵抗体4と直角に交差する直角辺となっているが、これに限られず、両表電極3の一方の対向辺が抵抗体4と斜めに重なる傾斜辺となっていても良いし、両表電極3の双方の対向辺が抵抗体4と斜めに重なる傾斜辺となっていても良い。