(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393491
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】水処理設備、及び有機性排水の生物処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20060101AFI20180910BHJP
C02F 11/02 20060101ALI20180910BHJP
C02F 11/12 20060101ALI20180910BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
C02F3/12 A
C02F3/12 SZAB
C02F11/02
C02F11/12 C
C02F3/12 D
C02F1/44 F
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-38166(P2014-38166)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-160188(P2015-160188A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境サ−ビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】植地 俊仁
(72)【発明者】
【氏名】安部 剛
(72)【発明者】
【氏名】橘 峰生
【審査官】
松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−105631(JP,A)
【文献】
特開2008−023468(JP,A)
【文献】
特開2012−005924(JP,A)
【文献】
特開2005−161233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/12
C02F 1/44
C02F 11/02
C02F 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性排水を微生物によって生物処理する生物処理槽と、前記生物処理槽で処理された有機性排水を固液分離する固液分離槽と、前記固液分離槽で固液分離された汚泥を脱水処理する脱水機構とを備えている水処理設備であって、
前記微生物のうち特定微生物群を優占化する生物処理助剤が充填されたリアクターが設けられ、前記生物処理槽は前記リアクターで生物処理助剤が溶出した汚泥によって特定微生物群を優占化するとともに優占化した汚泥によって有機性排水を生物処理するように構成され、
前記固液分離槽で固液分離され特定微生物群が優占化された汚泥が投入され、当該汚泥を曝気する散気機構を備えた汚泥調質槽が設けられ、
前記汚泥調質槽で嫌気処理されることなく調質された汚泥が前記脱水機構で脱水処理されるように構成されている水処理設備。
【請求項2】
前記汚泥調質槽に移送された汚泥の滞留時間が2日以上に設定され、且つ、吹込み空気量が800g−O2/m3・日以上に設定されている請求項1記載の水処理設備。
【請求項3】
前記固液分離槽で固液分離された汚泥の一部を前記生物処理槽へ返送する返送経路が設けられ、前記リアクターが前記返送経路に設けられている請求項1または2記載の水処理設備。
【請求項4】
前記固液分離槽が膜分離槽で構成されるとともに、前記膜分離槽で固液分離された汚泥の一部を前記生物処理槽へ返送する返送経路が設けられ、前記リアクターが前記膜分離槽に浸漬されている請求項1または2記載の水処理設備。
【請求項5】
前記固液分離槽で固液分離された汚泥を貯留する汚泥貯留槽を備え、前記汚泥調質槽が前記汚泥貯留槽の前段に設けられている請求項1から4の何れかに記載の水処理設備。
【請求項6】
前記汚泥調質槽が前記汚泥貯留槽と兼用されている請求項1から4の何れかに記載の水処理設備。
【請求項7】
有機性排水がし尿または浄化槽汚泥である請求項1から6の何れかに記載の水処理設備。
【請求項8】
前記生物処理助剤が腐植物質及び/または珪酸を含むミネラルであり、前記特定微生物群がバチルス属細菌を含む土壌微生物群である請求項1から7の何れかに記載の水処理設備。
【請求項9】
生物処理助剤が保持されたリアクターに汚泥を接触させて生物処理助剤を溶出させる生物処理助剤溶出工程と、
前記生物処理助剤溶出工程で生物処理助剤が溶出された汚泥により生物処理槽で特定微生物群を優占化するとともに優占化した汚泥によって有機性排水を処理する生物処理工程と、
前記生物処理工程によって特定微生物群が優占化された汚泥を固液分離する固液分離工程と、
前記固液分離工程で固液分離された汚泥を嫌気処理することなく所定期間曝気して減容化する減容化工程と、
前記減容化工程で減容化された汚泥を脱水処理する脱水処理工程と、
を含む有機性排水の生物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水を生物処理する水処理設備、及び有機性排水の生物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機性排水を生物処理する水処理設備に搬入された汚水は、し渣の除去等の前処理が行なわれた後に、一旦貯留槽に貯留され、貯留槽から生物処理槽に定量的に送水される。そして、生物処理された被処理水は、活性炭ろ過等の高度処理が行なわれた後に河川等に放流される。一方、固体成分である汚泥はフィルタプレス脱水機等で脱水された後、焼却等の処理が行なわれる。
【0003】
このような従来の水処理設備では、余剰汚泥の処理コストが水処理に掛かるコストの中で大きな割合を占めていることから、コスト低減のために余剰汚泥の減容化が求められている。
【0004】
そこで、本願発明者らは、活性汚泥法を採用する水処理装置の処理槽に生物処理助剤を供給することで、特定の微生物叢を汚泥中で優占化させ、汚水処理能力を向上させる技術を研究開発しつつあり、このような微生物叢による生物処理によって悪臭発生の軽減とともに、余剰汚泥の発生量の低減が見込まれている。
【0005】
しかし、当該技術により従来の活性汚泥法より余剰汚泥が削減されるものの、有機性排水処理に掛かるコストで余剰汚泥処理コストの占める割合は依然として高く、更なる余剰汚泥の削減が求められている。
【0006】
余剰汚泥を減容化する技術の一つとして、余剰汚泥に対して曝気を行い、自己分解させる技術が知られている。例えば特許文献1には、生物処理槽から引き抜いた余剰汚泥に対して汚泥減容化槽内で通常曝気下での好気性処理と制限曝気下(このときは微生物による酸素消費によって無酸素状態となる。)での脱窒素処理を交互に行うことで汚泥を減容化する汚泥の処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−260498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載された汚泥の処理方法は曝気量を通常曝気と制限曝気とで切り替える必要がある上、通常曝気から制限曝気への切り替え時に生物処理槽から新たな汚泥を導入するため、設備の運転制御が煩雑であるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、煩雑な運転制御を必要とせず余剰汚泥を減容化可能な水処理設備及び有機性排水の生物処理方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明による水処理設備の第一特徴構成は、有機性排水を微生物によって生物処理する生物処理槽と、前記生物処理槽で処理された有機性排水を固液分離する固液分離槽と、前記固液分離槽で固液分離された汚泥を脱水処理する脱水機構とを備えている水処理設備であって、前記微生物のうち特定微生物群を優占化する生物処理助剤が充填されたリアクター
が設けられ、
前記生物処理槽は前記リアクターで生物処理助剤が溶出した汚泥によっ
て特定微生物群を優占化するとともに優占化した汚泥によって有機性排水を生物処理するように構成され、前記固液分離槽で固液分離され特定微生物群が優占化された汚泥が投入され、当該汚泥を曝気する散気機構を備えた汚泥調質槽が設けられ、前記汚泥調質槽で嫌気処理されることなく調質された汚泥が前記脱水機構で脱水処理されるように構成されている点にある。
【0011】
本願発明者は鋭意研究を重ねた結果、リアクターから供給される生物処理助剤によって特定微生物群が優占化され、特定微生物群で生物処理されて発生した余剰汚泥を曝気すると、従来の生物処理で生じた余剰汚泥を曝気する場合と比べて自己分解による減容化率が極めて高くなるという新知見を得た。そこで、当該新知見に基づいて散気装置を備えた汚泥調質槽を備え、汚泥調質槽で余剰汚泥を曝気することによって大幅に減容化することができるようになった。
【0012】
また、リアクターから汚泥に供給される生物処理助剤によって汚泥中で特定微生物群が優占化され、その特定微生物群による生物処理の結果、排水に含まれる有機物に対する分解効率が向上するとともに余剰汚泥の発生量自体も少なくなり、そのような余剰汚泥に含まれる未処理の有機物の含有率も少なくなるため、汚泥調質槽では専ら特定微生物群の自己分解が促進される結果、余剰汚泥の高い減容化率が得られると推測される。
【0013】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記汚泥調質槽に移送された汚泥の滞留時間が2日以上に設定され、且つ、吹込み空気量が800g−O
2/m
3・日以上に設定されている点にある。
【0014】
汚泥調質槽内で2日以上の期間に亘り、吹込み空気量が800g−O
2/m
3・日以上で曝気することが好ましく、これにより汚泥が十分に自己分解されて減容化される。
【0015】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記固液分離槽で固液分離された汚泥の一部を前記生物処理槽へ返送する返送経路が設けられ、前記リアクターが前記返送経路に設けられている点にある。
【0016】
リアクターを汚泥返送経路に設置することで、生物処理助剤に接触した汚泥が無駄なく効率的に生物処理槽に循環供給されるようになる。
【0017】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記固液分離槽が膜分離槽で構成されるとともに、前記膜分離槽で固液分離された汚泥の一部を前記生物処理槽へ返送する返送経路が設けられ、前記リアクターが前記膜分離槽に浸漬されている点にある。
【0018】
リアクターを膜分離槽で構成された固液分離槽に浸漬すれば、固液分離槽に備えた散気機構によってリアクターの生物処理助剤に被処理水を効率的に接触させて溶出させることができ、生物処理助剤に被処理水を接触させる別途の散気装置をリアクター等に備える必要がなくなる。
【0019】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記固液分離槽で固液分離された汚泥を貯留する汚泥貯留槽を備え、前記汚泥調質槽が前記汚泥貯留槽の前段に設けられている点にある。
【0020】
汚泥調質槽で減容化された余剰汚泥が汚泥貯留槽に貯留されるように構成することで、汚泥貯留槽の容量を増大させなくても効率的に減容化処理できるようになる。
【0021】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記汚泥調質槽が前記汚泥貯留槽と兼用されている点にある。
【0022】
汚泥調質槽が汚泥貯留槽と兼用されることで、水処理設備を構成する槽の数を削減できるため、設備を安価に構成できるようになる。
【0023】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、有機性排水がし尿または浄化槽汚泥である点にある。
【0024】
し尿または浄化槽汚泥等の有機性排水が本発明による水処理設備によって好適に生物処理される。
【0025】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一から第七の何れかの特徴構成に加えて、前記生物処理助剤が腐植物質及び/または珪酸を含むミネラルであり、前記特定微生物群がバチルス属細菌を含む土壌微生物群である点にある。
【0026】
腐植物質及び/または珪酸等のミネラルを生物処理助剤として汚泥に供給すると、汚泥中の微生物叢がバチルス属細菌を含む土壌微生物群に優占化される。このような汚泥で有機性排水を生物処理することで、有機性排水の処理効率が上昇し、汚泥の発生量の低減及び悪臭の発生の抑制が可能になるといった効果が得られる。
【0027】
本発明による有機性排水の生物処理方法の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、生物処理助剤が保持されたリアクターに汚泥を接触させて生物処理助剤を溶出させる生物処理助剤溶出工程と、前記生物処理助剤溶出工程で生物処理助剤が溶出された汚泥により生物処理槽で特定微生物群を優占化するとともに優占化した汚泥によって有機性排水を処理する生物処理工程と、前記生物処理工程によって特定微生物群が優占化された汚泥を固液分離する固液分離工程と、前記固液分離工程で固液分離された汚泥を嫌気処理することなく所定期間曝気して減容化する減容化工程と、前記減容化工程で減容化された汚泥を脱水処理する脱水処理工程と、を含む点にある。
【0028】
生物処理工程によって特定微生物群が優占化された汚泥によって有機性排水が効率的に処理され、固液分離工程で固液分離された余剰汚泥に殆ど有機物が含まれないような状態になる。そのため、減容化工程では専ら特定微生物群の自己分解作用が促進され、脱水処理工程で生じる脱水ケーキの量が極めて少なくなり、余剰汚泥の処理コストが大幅に低減されるようになる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明した通り、本発明によれば、煩雑な運転制御を必要とせず余剰汚泥を減容化可能な水処理設備及び有機性排水の生物処理方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明による水処理設備の第一の実施形態の説明図
【
図5】リアクターの有無による汚泥の自己分解による減容率の差異を示す表
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明による水処理設備及び有機性排水の生物処理方法の第一の実施形態を説明する。
図1に示すように、本発明による水処理設備10は、生物処理槽と、固液分離槽11と、汚泥調質槽12と、汚泥貯留槽13と、汚泥混和槽と、脱水機構と、脱水ケーキホッパと、高度処理設備と、消毒設備と、リアクター14を備えている。
【0032】
生物処理槽は活性汚泥を用いて有機性排水を生物処理する槽である。固液分離槽11は生物処理槽で処理された有機性排水を固液分離する槽であり、本実施形態では散気機構11a及び膜分離装置11bを備えた膜分離槽である。
【0033】
汚泥調質槽12は散気機構12aを備え、固液分離槽11で固液分離された余剰汚泥15を所定期間で、曝気することで余剰汚泥15を自己分解させて減容化するとともに均質化する設備である。
【0034】
汚泥貯留槽13は汚泥調質槽12で減容化及び均質化された汚泥を均質化するために貯留する設備である。汚泥混和槽は汚泥に高分子凝集剤やポリ硫酸第二鉄等の無機凝集剤を添加してフロック状の汚泥を凝集処理する設備である。
【0035】
脱水機構は本実施形態においてはフィルタプレス式の脱水機が用いられ、汚泥貯留槽13の汚泥を脱水して脱水ケーキを得る設備である。尚、脱水の際に生じる水は再度生物処理槽へ送られ、生物処理される。脱水ケーキホッパは脱水機構で脱水された後の脱水ケーキを資源化するまでの間、貯留する設備である。
【0036】
高度処理設備は固液分離槽11で固液分離された液体成分を活性炭等により高度処理する設備で、消毒設備では高度処理後の有機性排水を外部に放流する前の最終的な処理として消毒が行なわれる。
【0037】
リアクター14は固液分離槽11から引き抜いた汚泥の一部を生物処理槽へ返送汚泥として返送する返送経路に設置され、汚泥を受け入れる汚泥滞留槽と、生物処理助剤が充填された生物処理助剤保持部と、汚泥に上向流を発生させる散気機構を有する。汚泥滞留槽の底部に散気機構が設置され、その上方に生物処理助剤保持部が位置している。
【0038】
生物処理助剤保持部の底面及び上面はパンチングメタル或いはメッシュ等といった汚泥が通流可能な部材で構成されており、下方の散気機構から散気することで汚泥に生物処理助剤保持部内を下方から上方へ通流する上向流を発生させ、生物処理助剤を溶出させる。生物処理助剤が溶け込んだ返送汚泥を生物処理槽に返送することで生物処理槽の汚泥に生物処理助剤を供給する。尚、汚泥に上向流を発生させるために散気機構の代わりに回転翼等を用いてもよい。
【0039】
し尿等の有機性排水を生物処理する水処理設備では、悪臭の拡散を回避する等の観点で生物処理槽や固液分離槽等の各処理槽が密閉状態に維持され、メンテナンス用の小さな蓋体が設けられているに過ぎないため、そのような処理槽にリアクターを浸漬したり、メンテナンスのために出し入れしたりするのは困難であるが、本実施形態によればそのような水処理設備であってもリアクター14を設置することが可能である。また、生物処理助剤が溶け込んだ返送汚泥は全て生物処理槽に流入するため、生物処理槽の汚泥に効率よく生物処理助剤が供給される。
【0040】
本実施形態では生物処理助剤として、腐植物質及び/または珪酸等のミネラルを用いる。より好ましくは、ペレット状に成形した腐植成分やミネラル塊、詳しくは腐植、腐植抽出物、フミン酸、フルボ酸、珪砂、珪石等のうちの一種または複数種が用いられる。これらの物質を汚泥に供給することで、汚泥中の微生物叢がバチルス属細菌を含む土壌微生物群に優占化される。
【0041】
このような水処理設備10による有機性排水の処理方法は、リアクター14によって生物処理槽の汚泥に生物処理助剤を接触させて特定微生物群を優占化し、特定微生物群を優占化した汚泥によって有機性排水を生物処理する生物処理工程と、特定微生物群を優占化した汚泥を含む生物処理後の有機性排水を固液分離槽11で固液分離する固液分離工程と、固液分離された固体成分である余剰汚泥を汚泥調質槽12で曝気して所定期間滞留させて減容化する減容化工程と、減容化された汚泥を前記脱水機で脱水処理する脱水処理工程と、を含む。
【0042】
生物処理助剤によって特定微生物群が優占化された汚泥は、生物処理工程での汚泥の発生量が低減される。また、余剰汚泥に対して散気することによって余剰汚泥が自己分解して減容化される。
【0043】
本願発明者は鋭意研究を重ねた結果、生物処理助剤によって特定微生物群が優占化された汚泥は通常の汚泥と比較して自己分解による減容化率が高くなるという知見を得、リアクター14から供給された生物処理助剤によって特定微生物群が優占化された余剰汚泥15に対して汚泥調質槽12で散気して自己分解させることで、単なる公知技術の組み合わせの範囲を超えて効率的に余剰汚泥を減容化することが可能となった。
【0044】
汚泥調質槽12では余剰汚泥15を十分に自己分解させるため、少なくとも2日間に亘り、吹込み空気量が800g−O
2/m
3・日で曝気することが好ましい。尚、曝気する期間が2日より長くても構わないし、吹込み空気量が800g−O
2/m
3・日より高くてもよい。曝気する期間は2日から4日の範囲が好ましく、吹込み空気量は800g−O
2/m
3・日から1600g−O
2/m
3・日が好ましい。
【0045】
また、汚泥調質槽12は汚泥貯留槽13の前段に設けられているため、汚泥貯留槽13は汚泥調質槽12で減容化された後の余剰汚泥15を受け入れるだけの比較的小規模な槽でよい。
【0046】
以下に、本発明による水処理設備の別実施形態について説明する。尚、上述の実施形態と共通する構成には同じ符号を振って説明を省略する。
【0047】
図2に示すように、固液分離槽11として膜分離槽でなく沈殿槽を用いてもよい。
【0048】
図3に示すように、リアクター14を膜分離槽である固液分離槽11に浸漬させてもよい。本実施形態におけるリアクター14は汚泥滞留槽及び散気機構が無く、底面及び上面がパンチングメタル或いはメッシュ等の汚泥が通流可能な部材で構成され、生物処理助剤が充填された生物処理助剤保持部のみで構成されている。また、固液分離槽11が備える散気機構11aがリアクター14に対しても散気するように配置されている。
【0049】
このように構成すれば、散気機構11aによってリアクター14内に上向流を発生させ、余剰汚泥15に生物処理助剤を溶出させることができる。即ちリアクター14に汚泥を通流させるための機構を別個に設ける必要がなくなるため、部品の点数を削減できる。
【0050】
図4に示すように、汚泥調質槽12が汚泥貯留槽と兼用されるように構成してもよい。この場合、水処理設備を構成する槽の数が汚泥調質槽と汚泥貯留槽を別個に設けるより少なくなるため、水処理設備を小規模化できる。
【0051】
有機性排水を生物処理する生物処理槽の構成については特に制限はなく、単一の生物処理槽であってもよいし、複数の生物処理槽、例えば深層反応槽、硝化槽、脱窒槽、及び再曝気槽で構成されていてもよい。また処理対象となる有機性排水もし尿や浄化槽汚泥に限定されず、例えば下水や食品工場等の排水処理に適用することもできる。
【0052】
固液分離槽11の散気機構11aと汚泥調質槽12の散気機構12aとで共通のブロワファンを用いるように構成してもよい。その場合、散気機構11a及び12aに夫々バルブを設ける等、散気の有無について個別に制御できるように構成することが好ましい。
【0053】
上述したリアクターの態様は例示に過ぎず、上述した態様と異なるリアクターを用いることを禁止するものではない。
【0054】
上述した実施形態は本発明の一態様であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成や制御態様は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【実施例】
【0055】
図5に、汚泥に生物処理助剤を供給するリアクターがない水処理設備と膜分離槽にリアクターが浸漬された水処理設備の夫々について、汚泥調質槽での汚泥削減率の実験結果を示す。
【0056】
実験では、容量が314m
3である汚泥調質槽に、800g−O
2/m
3・日から1600g−O
2/m
3・日の吹込み空気量で3日に亘り曝気した。2つの槽は上部に開口が設けられ、互いに溢流可能に構成されている。
【0057】
図5において(A)平均投入量は水処理設備へ投入された有機性排水の1日当たりの平均量、(B)余剰汚泥固形物量は生物処理槽から引き抜かれた余剰汚泥に含まれる固形物の1日当たりの平均量であり、(C)脱水ケーキ固形物量は脱水ケーキに含まれる固形物の1日当たりの平均量である。即ち、(B)÷(A)は水処理設備に投入された有機性排水1m
3当たりの余剰汚泥に含まれる固形物の割合、(C)÷(A)は水処理設備に投入された有機性排水1m
3当たりの脱水ケーキに含まれる固形物の割合である。
【0058】
汚泥調質槽での削減率は、余剰汚泥が汚泥調質槽での自己分解を経て脱水ケーキになる過程で減少した質量の、余剰汚泥固形分に対する比率であり、以下の数式で算出される。
(1−(((C)÷(A))÷((B)÷(A))))×100 [%]
【0059】
リアクターなしの水処理設備においては汚泥調質槽での削減率は13.2%であるのに対し、リアクターありの水処理設備においては汚泥調質槽での削減率は26.0%である。この結果は、リアクターから供給された生物処理助剤によってバチルス属細菌を主とする特定微生物群に優占化された汚泥は、通常の汚泥と比較して汚泥調質槽での余剰汚泥の固形分の質量削減率が約2倍になったことを示している。
【0060】
尚、この他の実験により、曝気する期間を長くすると汚泥の削減率が向上し、4日でほぼ飽和することが分かっている。また汚泥の削減率に対する吹込み空気量の寄与は800g−O
2/m
3・日で概ね飽和し、それ以上吹込み空気量を増やしても汚泥の削減率に大した変化は見られないことも分かっている。
【符号の説明】
【0061】
10:水処理設備
11:固液分離槽
12:汚泥調質槽
12a:散気機構
13: 汚泥貯留槽
14:リアクター