(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393506
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】水素を含有する組成物、水素含有シートおよびこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20180910BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20180910BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20180910BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20180910BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20180910BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/02
A61Q19/00
A61Q11/00
A61K33/00
A61K9/70 405
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-83865(P2014-83865)
(22)【出願日】2014年4月15日
(65)【公開番号】特開2015-203024(P2015-203024A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】306018365
【氏名又は名称】クラシエホームプロダクツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】307042880
【氏名又は名称】株式会社ブルー・マーキュリー
(74)【代理人】
【識別番号】100150142
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 礼路
(74)【代理人】
【識別番号】100174849
【弁理士】
【氏名又は名称】森脇 理生
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】牛木 勝
(72)【発明者】
【氏名】後藤 久美子
(72)【発明者】
【氏名】小林 悦子
(72)【発明者】
【氏名】室田 渉
【審査官】
松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−077035(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3130460(JP,U)
【文献】
特開2005−089432(JP,A)
【文献】
特開2007−238535(JP,A)
【文献】
特開2007−308467(JP,A)
【文献】
特開2005−245427(JP,A)
【文献】
特開2011−079753(JP,A)
【文献】
特開2014−234374(JP,A)
【文献】
特開2005−082411(JP,A)
【文献】
特開2001−324498(JP,A)
【文献】
特開2015−203025(JP,A)
【文献】
FRAGRANCE JOURNAL,1993年 5月,Vol.21, No.5,p.68-72
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
A45D 44/22
A61K 9/70
A61K 33/00
A23L 33/10
C01B 3/00
B01F 3/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度が1000mPa・s以上2000mPa・s以下の粘性成分に、気体の水素を流し込みながら15分以上30分以下混合し、溶存水素量を1000μm/L以上とする混合工程と、
前記混合工程で生じた混合物を容器に充填する充填工程と、
前記容器を密閉する密封工程とを含み、
前記粘性成分が、皮膚に塗布するための成分、口腔内において使用するための成分、または体内に摂取もしくは挿入するための成分である、水素を含有する組成物の製造方法。
【請求項2】
前記密封工程の直前に、気体の水素を前記容器に充填する水素充填工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
水素を含有する組成物を含浸させた水素含有シートの製造方法であって、
粘度が1000mPa・s以上2000mPa・s以下の粘性成分に、気体の水素を流し込みながら15分以上30分以下混合し、溶存水素量を1000μm/L以上とする混合工程と、
シートを容器に収容するシート収容工程と、
前記混合工程で生じた混合物を前記容器に充填する充填工程と、
前記容器を密閉する密封工程と
を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を含有する組成物、この組成物が含浸されている水素含有シート、およびこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、抗酸化能を有しているため、皮膚老化防止、酸化ストレスの減少、成人病予防およびアンチエイジングによる健康維持などの幅広い分野での応用が期待されている。水素を利用するための製品は、種々の形態で提供されており、たとえば、水素が溶解した水素水のように飲用として提供されたり、浴用剤などのように水に溶解することにより水素を発生する製品として提供されたりしている。
【0003】
その他、上記のような水素の機能性を利用するために、水素水をスキンケア用品、生活用水および皮膚外用組成物などとして利用する技術が特許文献1〜3に記載されている。
【0004】
特許文献1には、肌に直接接触するスキンケア用品あるいは生活用水に、酸化還元電位(ORP)がORP=0.80-0.047pH以下で、皮膚のORPと同等、またはそれ以下の還元性を付与することにより、スキンケア用品あるいは生活用水に皮膚のエイジング(老化)抑制または予防効果を付与する方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、水素化アルカリ金属、水素化アルカリ土類金属および水素化ホウ素金属塩からなる群から選択される少なくとも1種の水素化合物が固体状の水溶性化合物またはそれらの混合物中に包埋されてなる水素発生剤が開示されており、これを化粧水および入浴剤に用いることが記載されている。
【0006】
特許文献3には、皮膚を酸化傷害から守る抗酸化剤の働きを有効に発揮させ、若々しい健康な肌を維持または回復させることを目的として、抗酸化剤と活性水素水とを含有する皮膚外用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-119161号公報
【特許文献2】特許第4384227号公報
【特許文献3】特開2003-095915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、水素水をスキンケア用品などとして利用することにより、水素の抗酸化作用による多くの効果を得ることができる。本発明者らは、肌に直接接触させるシートにあらかじめ水素水を含浸させて提供することにより、このシートを肌に直接接触させるだけで水素による効果を簡単に得ることができると考えた。
【0009】
しかし、水素は気体であるため、これを含むシートから空気中に簡単に拡散して喪失してしまう。したがって、水素による効果を効率よく得るためには、使用時まで水素を含むシートを密封しておく必要がある。しかしながら、水素水を含浸させたシートを、水素の喪失を抑制しつつ包装容器に密封することは困難である。たとえばシートに水素水を含浸させてから容器内に収容して密封したのでは、密封するまでの間に水素が喪失してしまう。また、水素水を密封直前に充填する場合でも、充填作業中などに水素が抜けてしまい、充填後の溶液において溶存水素が検出されないという問題がある。
【0010】
特許文献1〜3には、化粧料や皮膚外用組成物などに水素による効果を付与する方法が記載されているものの、水素の喪失を抑制し、高い溶存水素を有する化粧料等を得る手段は記載されていない。
【0011】
そこで、本発明の目的は、組成物中の溶存水素濃度を高め、かつ維持することができる組成物の製造方法、高い溶存水素濃度を有する組成物、この組成物を含浸させた水素含有シートおよびこの水素含有シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために、粘性の成分と気体の水素とを混合したところ、高い溶存水素濃度を有する組成物が得られることを見出した。さらに、この組成物を容器内に密封した場合には、高い溶存水素濃度が長期間維持されることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、粘度が300mPa・s以上の粘性成分と気体の水素とを混合する混合工程と、混合工程で生じた混合物を容器に充填する充填工程と、容器を密閉する密封工程とを含む、水素を含有する組成物の製造方法を提供する。
【0014】
また本発明は、上記製造方法において、密封工程の直前に、気体の水素を容器に充填する水素充填工程をさらに含む製造方法を提供する。
【0015】
また本発明は、上記製造方法において、粘性成分が、皮膚に塗布するための成分、口腔内において使用するための成分、または体内に摂取もしくは挿入するための成分である製造方法を提供する。
【0016】
また本発明は、粘度が300mPa・s以上の粘性成分と水素とを含有する、組成物を提供する。
【0017】
また本発明は、上記組成物が含浸されている、水素含有シートを提供する。
【0018】
また本発明は、容器内に密封された使い切りの化粧用シートであり、前記粘性成分が化粧料である、上記水素含有シートを提供する。
【0019】
また本発明は、容器がアルミパウチである、上記水素含有シートを提供する。
【0020】
また本発明は、水素を含有する組成物を含浸させた水素含有シートの製造方法であって、粘度が300mPa・s以上の粘性成分と気体の水素とを混合する混合工程と、シートを容器に収容するシート収容工程と、混合工程で生じた混合物を容器に充填する充填工程と、容器を密閉する密封工程とを含む、製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高い溶存水素濃度を有し、かつ維持することができる組成物およびこの組成物を含浸させた水素含有シートを提供することができる。したがって、本発明の組成物および水素含有シートを皮膚に適用する場合には、皮膚に対し十分な水素を供給することができ、水素の抗酸化能を効果的に発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(組成物)
本発明は、水素を含有する組成物およびその製造方法を提供する。本発明の組成物は、少なくとも粘性成分と水素とを含有する。組成物中の水素は、少なくとも一部が粘性成分中に溶存しており、全てが粘性成分に溶存していてもよい。組成物中の水素は、一部が気体として、たとえば泡の形態で、存在していてもよい。
【0023】
粘性成分は、300mPa・s以上の粘度を有する成分である。本明細書において「粘度」とは、B型粘度計、たとえば単一円筒型回転粘度計ビストロンVS−A1(芝浦システム社製)を用いて、流体中で円筒を回転させたときの円筒に働くトルクを測定することにより測定された粘度であってもよい。粘性成分が300mPa・s以上の粘度を有することにより、溶存水素が粘性成分中に長く保持されやすいため、高い溶存水素濃度を実現させることができる。粘性成分の粘度は、高いほど水素を保持しやすいため好ましく、たとえば400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900または2000mPa・s以上であってもよい。粘性成分の粘度の上限は特に制限されないが、水素とともに撹拌することが可能な程度の流動性を有する粘度であることができる。
【0024】
粘性成分には、300mPa・s以上の粘度を有する任意の物質および組成物などを用いることができる。粘性成分は、特に限定されないが、たとえば皮膚に塗布するための成分、口腔内において使用するための成分、および体内に摂取もしくは挿入するための成分などであることができる。
【0025】
本発明における粘性成分が皮膚に塗布するための成分である場合、本発明の組成物は、皮膚に直接塗布して使用することができ、水素の抗酸化能による効果を皮膚に対し効率的に提供することができる。また、本発明における粘性成分が口腔内において使用するための成分である場合、本発明の組成物は、口腔内に直接使用することができ、水素の抗酸化能による効果を口腔内に対し効率的に提供することができる。また、本発明における粘性成分が体内に摂取もしくは挿入するための成分である場合、本発明の組成物は、体内に直接摂取もしくは挿入することができ、水素の抗酸化能による効果を体内に効率的に提供することができる。
【0026】
本発明における粘性成分は、具体的には、化粧料、食品、医薬品、医薬部外品、日用品または雑貨であって、皮膚に塗布するか、口腔内において使用するか、または体内に摂取もしくは挿入するものであってもよい。
【0027】
化粧料とは、美容効果および治癒効果などを得ることを目的として皮膚に塗布する組成物をいい、たとえば化粧水、乳液、美容液および美容クリームなどの形態であることができる。食品は、特に限定されないが、たとえば液体状、ゾル状またはゲル状のものであることができ、たとえば各種飲料、各種スープ類、乳製品、マヨネーズ等の調味料、ゼリー等の菓子類および健康食品などが含まれる。医薬品および医薬部外品には、たとえば外用薬、内服薬、注射剤、浣腸剤および口中清涼剤などが含まれる。日用品および雑貨には、たとえば洗剤、オーラルケア用品、ボディケア用品、スキンケア用品、ヘアケア用品、フェイスケア用品、入浴剤、消臭剤および芳香剤などが含まれる。
【0028】
粘性成分は、美容効果を有する成分、治癒効果を有する成分および薬効成分などを含むことができる。たとえば粘性成分が皮膚に塗布するためのものである場合、粘性成分は、皮膚に対し直接塗布することで美容効果を有する成分、治癒効果を有する成分および薬効成分などを含むことができる。また、たとえば粘性成分が口腔内において使用するための成分、または体内に摂取もしくは挿入するための成分である場合、粘性成分は、口腔内において、あるいは体内に取り込まれることによって効果を発揮する薬効成分などを含むことができる。
【0029】
美容効果を有する成分は、たとえば保湿成分、美白成分、紫外線防止成分および制汗成分などである。また、治癒効果を有する成分は、たとえば消炎剤、消毒剤および治癒剤などである。薬効成分とは、人体に適用されることが効果的な成分をいう。これらの成分は、特に本発明の組成物が使用される部位に対して効果を有する成分であることができる。
【0030】
薬効成分としては、たとえば医薬品、医薬部外品、ビタミン類、アミノ酸および生薬類などが挙げられる。生薬類には、種々の植物エキスまたは粉末等も含まれる。薬効成分は、たとえばチンピ(ミカンの皮)、トウガラシ、高麗ニンジン、生姜、当帰、ヨモギ、レモンの皮、海藻、スピルリナ、クロロフィル、ドナリエラ、ヒノキ、ヒバ、米ヌカ、ショウブ、ショウキョウ、カンゾウ、トウヒ、ハッカ、ケイヒ、ウバイ、ドクダミ、モモノハ、カミツレ、アロエ、ジャスミン、ローズヒップ、ラベンダー、グァバ、オウゴン、クコ、レイシ、ニワトコ、アシタバ、ウコギ、ゴボウ、カンゾウ、コウカ、ゲンノショウコ、およびトウガラシ等の粉砕物並びにこれらの油溶性または水溶性抽出液であってもよい。
【0031】
また、粘性成分は、防腐剤、緩衝剤、抗菌剤、薬用成分、保湿剤、増粘剤、色素、香料、紫外線吸収剤、溶剤、抗酸化剤および清涼剤などを含んでいてもよい。
【0032】
本発明の組成物は、たとえば外用剤、浣腸剤、注射剤、液剤、スプレー剤、エアゾール剤、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤、軟膏剤、シロップ剤、ドリンク剤およびローション剤などの形態であることができる。
【0033】
本発明の組成物は、溶存水素濃度が高いため、水素がもつ様々な効果を利用する種々の生活用品、化粧品、医薬品、医薬部外品、医療品および飲食品などに利用することができる。
【0034】
(水素含有シート)
本発明はまた、上述した組成物が含浸されている水素含有シートをも提供する。
【0035】
本発明の水素含有シートは、上述した組成物が含浸されているため、水素を供給したい場所、たとえば皮膚などに接触させることにより、水素を供給することができる。本発明の組成物は、高い溶存水素濃度を有するため、本発明の水素含有シートを用いることにより、皮膚などに対し十分な水素を供給することができ、水素の抗酸化能を効果的に発揮させることができる。
【0036】
水素含有シートに用いるシートは、たとえば不織布、ガーゼ、織物などの布、脱脂綿および樹脂シートなどであることができる。水素含有シートは、任意の形態であることができる。たとえば、水素含有シートは、化粧用シート、医療用シート、皮膚保護シート、湿布、パッチシートおよび絆創膏などの形態であってもよい。化粧用シートは、美容効果および治癒効果などを得ることを目的として顔などの皮膚に直接接触させるシートであり、たとえばフェイスマスク、ポイントマスク、パックシートおよび化粧用コットンなどが含まれる。水素含有シートが化粧用シートである場合、この水素含有シートに含浸される組成物は、粘性成分として化粧料を含有していてもよい。
【0037】
本発明の組成物および水素含有シートは、たとえば、密封された容器内に充填された使い切りの製品であってもよい。「使い切り」とは、1回あるいは数回使用した後廃棄するように設計されていること、すなわち使い捨てにするように設計されていることを意味する。使い切りとすることによって、使用直前まで高い溶存水素濃度を維持することができ、使用時に十分な水素を提供することができる。
【0038】
(組成物の製造方法)
本発明の製造方法は、上述したような水素を含有する組成物の製造方法であり、混合工程と、充填工程と、密封工程とを含む。混合工程、充填工程および密封工程は、この順で行うことができる。
【0039】
混合工程では、粘性成分と気体の水素とを混合する。粘性成分と気体の水素とは、任意の方法によって混合することができ、たとえば粘性成分中に水素を流し込んで撹拌することによって混合することができる。具体的には、たとえば密閉タンク内に粘性成分を投入し、密閉環境で気体の水素をタンク内に流し込みながら、ポンプによって粘性成分を回転させることによって混合することができる。
【0040】
気体の水素は、100容量%の水素ガスであってもよいし、水素と他の気体との混合気体であってもよい。混合気体を用いる場合、水素が含まれていればよく、水素の含有率は1容量%以上、たとえば4容量%以上であってもよい。
【0041】
混合工程では、少なくとも一部の水素を粘性成分に溶解させることができる。混合工程では、全ての水素が粘性成分に溶解されてもよく、一部の水素が気体のまま残っていてもよい。粘性成分中に、気体のまま、たとえば泡の形態で残っている水素は、密封工程より前に除いてもよいが、そのまま容器内に密封されてもよい。水素の泡を混合物中に残しておくことにより、密封後に容器内で水素が粘性成分にさらに溶解し、溶存水素濃度を高めることができる。
【0042】
充填工程では、混合工程で生じた混合物を容器に充填する。充填する方法として、任意の方法を用いることができ、たとえば一般的な充填機を用いることができる。
【0043】
密封工程では、充填工程後の容器を密閉する。密封工程は、充填工程の直後に行うことができ、これにより混合物からの水素喪失を少なくすることができる。密封する方法として、任意の方法、たとえば容器の種類に応じて適切な方法を用いることができる。たとえば、容器として、ブリスターパックを用いる場合には、収容部の開口部を覆うように蓋体を載せ、収容部の開口部周縁の平坦部と蓋体とを接着させることにより密封することができる。蓋体は、たとえばヒートシール、コールドシールおよび接着剤などを用いて平坦部に接着させることができる。
【0044】
容器としては、密封可能な包装容器を用いることができ、たとえば袋、パウチ、ブリスターパック、缶および瓶などの任意の容器を用いることができる。容器の材質は、液体および気体が透過しにくい材質であればよく、たとえばアルミニウム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリスチレン等の任意の材質であることができる。また、容器として、アルミパウチを用いることができる。アルミパウチとは、プラスチックフィルムもしくは金属箔またはこれらを多層に合わせたものを袋状またはその他の形状に成形した容器である。アルミパウチを用いることにより、密封後に水素を外部にほとんど逃がさないため、組成物中の溶存水素濃度を維持することができる。アルミパウチとして、化粧品、食品および医薬品などに通常使用されるアルミ積層フィルムを用いたアルミパウチ、たとえば4方シールタイプのアルミパウチなどを用いることができる。
【0045】
容器は、水素発生剤を含んでいてもよい。水素発生剤は、水と反応して水素を発生する薬剤であり、たとえば水と化学反応することにより分解して水素を放出する化合物である。容器が水素発生剤を含むことにより、密封した後に容器内で水素をさらに発生させることができ、組成物中の溶存水素濃度を維持または増加させることができる。
【0046】
水と反応して水素を発生する化合物は、たとえば水素化金属粒子、水素発生性のセラミック(陶器)、ガラス、マグネシウム、アルミニウムおよびカーボンなどの単体並びにその誘導体、シリカ誘導体、シリコーン誘導体、ゲルマニウム、ケイ酸・ケイ酸アルミニウム等、焼成カルシウム、ゼオライトおよび無水ケイ酸、並びにカーボンチューブなどに圧力などをかけて水素を埋蔵させたものなどが挙げられる。これらのなかでも、安価で製造が容易であり、効率よく本発明を完成させることができるという点から、水素化金属粒子を使用することが特に好ましい。
【0047】
水素化金属粒子としては特に限定されず、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化バリウム、水素化ベリリウム、水素化ストロンチウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムナトリウムおよび水素化ケイ素等の公知のものを使用することができる。水素化金属粒子は、その粒子径および凝集状態を調整することによって、水との反応性を制御することができる。よって、目的に応じて粒子径等を調整して使用することもできる。また、反応性を抑制する目的で顆粒化してもよい。
【0048】
本発明の製造方法では、密封工程の直前に、気体の水素を容器に充填する水素充填工程をさらに含んでいてもよい。気体の水素を容器に充填する方法としては、任意の方法を用いることができ、たとえば一般的な充填機を用いることができる。水素充填工程を密封工程の直前に行うことにより、水素をできるだけ逃がさずに容器内に充填させることができる。水素充填工程によって充填された水素は、容器内で粘性成分に溶解されることができる。したがって、水素充填工程を行うことにより、組成物中の溶存水素濃度を維持することができ、あるいはさらに高めることができる。
【0049】
(水素含有シートの製造方法)
本発明はまた、水素を含有する組成物を含浸させた水素含有シートの製造方法をも提供する。本発明の水素含有シートの製造方法は、粘度が300mPa・s以上の粘性成分と気体の水素とを混合する混合工程と、シートを容器に収容するシート収容工程と、混合工程で生じた混合物を容器に充填する充填工程と、容器を密閉する密封工程とを含む。混合工程、充填工程および密封工程は、それぞれ上述した混合工程、充填工程および密封工程と同様に行うことができる。
【0050】
シート収容工程は、容器内にシートを収容する工程であり、密封工程より前のいずれの段階において行ってもよいが、水素の喪失を少なくする観点からは充填工程より前またはこれと同時に行うことができる。
【0051】
シートは、圧縮加工されたシートであってもよい。圧縮加工されたシートとは、円盤状などの小さな塊に圧縮加工されており、水分を含浸させると膨潤して通常の形態に戻るシートである。圧縮加工されたシートは、たとえばシートを折り畳んで小さな塊にしたものを一般的な圧縮機等で圧縮することにより作製してもよいし、市販のものを利用してもよい。シートが圧縮加工されたシート、たとえばコインマスクのような圧縮マスクである場合には、コンパクトなためシート収容工程において容器内に容易に収容することができるとともに、容器内で組成物を容易に含浸させることができる。
【0052】
本発明の水素含有シートの製造方法は、密封工程の直前に、気体の水素を容器に充填する水素充填工程をさらに含んでいてもよい。水素充填工程は、上述した水素充填工程と同様に行うことができる。水素充填工程を行うことにより、水素含有シートに含浸される組成物中の溶存水素濃度を維持することができ、あるいはさらに高めることができる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(粘性成分)
粘性成分として、美容液A(粘度2000mPa・s;クラシエホームプロダクツ社製)および美容液B(粘度400mPa・s;クラシエホームプロダクツ社製)を用いた。粘性成分の粘度は、単一円筒型回転粘度計ビストロンVS−A1(芝浦システム社製)を用いて測定した。
【0055】
(実施例1)
美容液Aの20Lをタンクに投入し、水素ガス(100容量%水素)をタンク内に流し込みながらポンプを回転させて混合したところ、約15分で溶存水素量が1000μg/Lに達した。得られた混合液25gを、予め不織布(製品名:コットンエースCO60-S-A07;ユニチカ社製)を収容したアルミパウチ容器(細川洋行社製)に充填して密封した。
【0056】
(実施例2)
美容液Aの20Lをタンクに投入し、水素ガス(100容量%水素)をタンク内に流し込みながらポンプを回転させて混合したところ、約15分で溶存水素量が1000μg/Lに達した。得られた混合液35gを、不織布を収容していないアルミパウチ容器(細川洋行社製)に充填して密封した。
【0057】
(実施例3)
美容液Bの20Lをタンクに投入し、水素ガス(100容量%水素)をタンク内に流し込みながらポンプを回転させて混合したところ、約30分で溶存水素量が600μg/Lに達した。得られた混合液25gを、予め不織布(CO60S/A07;ユニチカ社製)を収容した容器(大日本印刷社製)に充填して密封した。
【0058】
(実施例4)
美容液Bの20Lをタンクに投入し、水素ガス(100容量%水素)をタンク内に流し込みながらポンプを回転させて混合したところ、約30分で溶存水素量が600μg/Lに達した。得られた混合液35gを、不織布を収容していない容器(大日本印刷社製)に充填して密封した。
【0059】
(比較例1)
あらかじめ調製された美容液A液25gを、予め不織布(CO60S/A07;ユニチカ社製)を収容したアルミパウチ容器(細川洋行社製)に充填して密封した。
【0060】
(比較例2)
あらかじめ調製された美容液B液25gを、予め不織布(CO60S/A07;ユニチカ社製)を収容したアルミパウチ容器(大日本印刷社製)に充填して密封した。
【0061】
(溶存水素濃度測定)
実施例1〜6、および比較例1〜2について、サンプル調製直後、その3日後、1ヶ月後および3ヶ月後の溶存水素濃度をMicrosensor Monometer(Unisense社製)により測定した結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示すように、調製直後の溶存水素濃度が高いことから、粘性成分と気体の水素とを混合すると、溶存水素濃度を高めることができることが示された。また、特に粘度が高い美容液Aを用いた場合には、高い溶存水素濃度が長期間維持されることが示された。さらに、溶存水素濃度は、時間が経つにつれて高まっていた。このことから、粘性成分に巻き込まれた水素の泡(気泡)が、容器内で粘性成分に徐々に溶解することによって、溶存水素濃度をさらに高めたことが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、水素がもつ様々な効果を利用する種々の生活用品、化粧品、医薬品、医薬部外品、医療品および飲食品などに利用することができる。