(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、隣接する鉄骨梁部材同士の接合方法を簡素化したいとの要望がある。特に、ハンチ鉄骨梁では、梁成が異なる鉄骨梁部材同士を接合するため、その接合作業に手間がかかる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、梁成が異なる鉄骨梁部材の接合作業の手間を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係る異種鉄骨梁接合構造は、柱に接合された第1鉄骨梁部材と、前記第1鉄骨梁部材よりも梁成が低くされ、上フランジ部が前記第1鉄骨梁部材の上フランジ部と連続するように配置されて且つ該上フランジ部と非接合とされる第2鉄骨梁部材と、前記第1鉄骨梁部材及び前記第2鉄骨梁部材の各々のウェブ部に亘って配置され、該ウェブ部にそれぞれボルト接合される接合プレートと、を備える。
【0008】
第1態様に係る異種鉄骨梁接合構造によれば、第1鉄骨梁部材及び第2鉄骨梁部材の上フランジ部同士を非接合とすると共に、第1鉄骨梁部材及び第2鉄骨梁部材のウェブ部同士を接合プレートを介してボルト接合する。
【0009】
したがって、例えば、第1鉄骨梁部材及び第2鉄骨梁部材の上フランジ部同士を溶接接合すると共にウェブ部同士を接合プレートを介して溶接接合する場合と比較して、第1鉄骨梁部材と第2鉄骨梁部材との接合作業の手間を低減することができる。
【0010】
第2態様に係る異種鉄骨梁接合構造は、
第1態様に係る異種鉄骨梁接合構造において、前記接合プレートには、該接合プレートの下部から面外方向に延出し、前記第1鉄骨梁部材及び前記第2鉄骨梁部材の下フランジ部の各々と対向する応力伝達リブ部が設けられる。
【0011】
第2態様に係る異種鉄骨梁接合構造によれば、接合プレートには、応力伝達リブ部が設けられる。この応力伝達リブ部は、接合プレートの下部から面外方向に延出し、第1鉄骨梁部材及び第2鉄骨梁部材の下フランジ部の各々と対向する。
【0012】
ここで、第1鉄骨梁部材と第2鉄骨梁部材とは、梁成が異なると共にその上フランジ部同士が連続するように配置されるため、その下フランジ部同士が連続しない。したがって、これらの下フランジ部間で応力を伝達することが難しい。
【0013】
これに対して本発明では、接合プレートの下部には、第1鉄骨梁部材及び第2鉄骨梁部材の下フランジ部の各々と対向する応力伝達リブ部が設けられる。これにより、応力伝達リブ部を介して、第1鉄骨梁部材及び第2鉄骨梁部材の下フランジ部間で応力が伝達される。
【0014】
また、応力伝達リブ部によって、第1鉄骨梁部材が補強されるため、当該第1鉄骨梁部材の下フランジ部の座屈(横座屈)等が抑制される。
【0015】
このように本発明では、第1鉄骨梁部材及び第2鉄骨梁部材の下フランジ部間の応力伝達を良好にしつつ、第1鉄骨梁部材の下フランジ部の座屈等を抑制することができる。
【0016】
第3態様に係る異種鉄骨梁接合構造は、
第1態様に係る異種鉄骨梁接合構造において、前記第1鉄骨梁部材の前記ウェブ部に重ねられてボルト接合されると共に該ウェブ部から前記第2鉄骨梁部材の下フランジ部の下側へ延出するベースプレート部と、前記ベースプレート部の上端部に沿って設けられ、前記第1鉄骨梁部材と前記第2鉄骨梁部材に亘ると共に前記第2鉄骨梁部材の前記下フランジ部に下側から重ねられてボルト接合される応力伝達リブ部と、を有する応力伝達部材を備える。
【0017】
第3態様に係る異種鉄骨梁接合構造によれば、応力伝達部材は、ベースプレート部と、ベースプレート部の上端部に沿って設けられた応力伝達リブ部とを有する。ベースプレート部は、第1鉄骨梁部材のウェブ部に重ねられてボルト接合される。一方、応力伝達リブ部は、第2鉄骨梁部材の下フランジ部に下側から重ねられてボルト接合される。この応力伝達部材を介して第1鉄骨梁部材と第2鉄骨梁部材とが接合される。
【0018】
したがって、第1鉄骨梁部材及び第2鉄骨梁部材に応力伝達部材をそれぞれ溶接接合する場合と比較して、第1鉄骨梁部材及び第2鉄骨梁部材の接合作業の手間を低減することができる。
【0019】
また、応力伝達リブ部は、第1鉄骨梁部材と第2鉄骨梁部材とに亘って配置される。これにより、応力伝達リブ部を介して、第1鉄骨梁部材及び第2鉄骨梁部材の下フランジ部間で応力が伝達される。
【0020】
さらに、応力伝達リブ部によって、第1鉄骨梁部材が補強されるため、当該第1鉄骨梁部材の下フランジ部の座屈(横座屈)等が抑制される。
【0021】
このように本発明では、第1鉄骨梁部材及び第2鉄骨梁部材の下フランジ部間の応力伝達を良好にしつつ、第1鉄骨梁部材の下フランジ部の座屈等を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係る異種鉄骨梁接合構造によれば、梁成が異なる鉄骨梁部材の接合作業の手間を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る異種鉄骨梁接合構造について説明する。
【0025】
先ず、第1実施形態について説明する。
【0026】
図1には、第1実施形態に係る異種鉄骨梁接合構造10が適用されたハンチ鉄骨梁12が示されている。ハンチ鉄骨梁12は、一対の柱14に架設されている。このハンチ鉄骨梁12は、一対の第1鉄骨梁部材20と、第2鉄骨梁部材30とを備えている。
【0027】
一対の第1鉄骨梁部材20は、H形鋼で形成されており、上下方向に対向する一対の上フランジ部20U及び下フランジ部20Lと、一対の上フランジ部20Uと下フランジ部20Lとを接続するウェブ部20Wとを有している。各第1鉄骨梁部材20の材軸方向の一端部は、柱14の仕口部14Aに接合されている。
【0028】
具体的には、柱14の仕口部14Aには、ガセットプレート16と、上下一対のダイアフラム18とが設けられている。ガセットプレート16は、柱14の側面に溶接等で接合されている。このガセットプレート16は、第1鉄骨梁部材20のウェブ部20Wに重ねられた状態でボルト22及び図示しないナットによりボルト接合されている。
【0029】
一対のダイアフラム18は、例えば、通しダイアフラムや外ダイアフラムとされており、ガセットプレート16の上下に配置されている。この一対のダイアフラム18には、第1鉄骨梁部材20の上フランジ部20U及び下フランジ部20Lが溶接等によりそれぞれ接合されている。これにより、柱14の仕口部14Aに、第1鉄骨梁部材20の材軸方向の一端部が接合(剛接合)されている。
【0030】
なお、柱14は、例えば、角形鋼管や丸形鋼管、H形鋼等で形成される。また、柱14は、鉄骨造に限らず、RC造やSRC造、CFT造でも良い。
【0031】
一対の第1鉄骨梁部材20の間には、第2鉄骨梁部材30が配置されている。第2鉄骨梁部材30は、第1鉄骨梁部材20と同様に、H形鋼で形成されており、上下方向に対向する一対の上フランジ部30U及び下フランジ部30Lと、一対の上フランジ部30Uと下フランジ部30Lとを接続するウェブ部30Wとを有している。
【0032】
ここで、第2鉄骨梁部材30の梁成H
2は、第1鉄骨梁部材20の梁成H
1よりも低くされている。つまり、ハンチ鉄骨梁12は、材軸方向中間部の梁成H
2が、材軸方向両側(柱14側)の梁成H
1よりも低くなっている。これにより、ハンチ鉄骨梁12における柱14側の剛性及び耐力を確保しつつ、ハンチ鉄骨梁12の軽量化が図られている。
【0033】
なお、第1鉄骨梁部材20と第2鉄骨梁部材30とは、上フランジ部20U,30U同士の板厚や幅が同じでも良いし、異なっていても良い。下フランジ部20L,30L同士及びウェブ部20W,30W同士についても同様である。また、第1鉄骨梁部材20と第2鉄骨梁部材30とは材質(強度)が同じでも良いし、異なっていても良い。さらに、材質が異なっていれば、第1鉄骨梁部材20と第2鉄骨梁部材30との梁成H
1,H
2が同じであっても良い。さらには、第1鉄骨梁部材及び第2鉄骨梁部材は、H形鋼に限らない。第1鉄骨梁部材及び第2鉄骨梁部材は、少なくもウェブ部及び上フランジ部を有していれば良く、例えば、I形鋼、C形鋼、T形鋼等であっても良い。また、例えば、第1鉄骨梁部材及び第2鉄骨梁部材の一方をH形鋼で形成しても良いし、他方をC形鋼等で形成しても良い。
【0034】
第2鉄骨梁部材30の材軸方向の両端部は、一対の第1鉄骨梁部材20の材軸方向の他端部にそれぞれ接合されている。具体的には、第2鉄骨梁部材30は、その上フランジ部30Uが第1鉄骨梁部材20の上フランジ部20Uと連続するように配置されており、その下フランジ部30Lが第1鉄骨梁部材20の下フランジ部20Lよりも上側に位置している。そのため、下フランジ部30Lと下フランジ部20Lとの間に、段差が形成されている。これにより、第2鉄骨梁部材30の下に、設備配線や配管等の設置スペースが形成されている。
【0035】
なお、ここでいう第1鉄骨梁部材20の上フランジ部20Uと第2鉄骨梁部材30の上フランジ部30Uとが連続するとは、施工誤差等により上フランジ部20U,30Uが上下方向にずれる構成や、上フランジ部20U,30Uの幅方向にずれる構成等を含む概念である。また、第2鉄骨梁部材30の上フランジ部30Uと第1鉄骨梁部材20の上フランジ部30Uとは非接合とされており、溶接やボルトによって接合されていない。
【0036】
図1及び
図2に示されるように、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wは、一対の接合プレート40を介してボルト接合される。具体的には、一対の接合プレート(フラットプレート)40は、矩形の平板状に形成されており、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wの面外方向の両側に配置されている。なお、接合プレート40の形状は矩形状に限らず、多角形状や楕円形状でも良い。
【0037】
各接合プレート40は、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wに亘って配置され、これらのウェブ部20W,30Wの各々に重ねられた状態で複数のボルト42及びナット44によりボルト接合されている。換言すると、一対の接合プレート40は、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wを面外方向の両側から挟み込んだ状態で、複数のボルト42及びナット44により互いにボルト接合されている。これにより、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30W同士がピン接合されており、一対の接合プレート40を介してウェブ部20W,30Wの間でせん断力が伝達されるようになっている。なお、ボルト42には、高力ボルトを用いても良いし、通常のボルトを用いても良い。
【0038】
次に、第1実施形態の作用について説明する。
【0039】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係る異種鉄骨梁接合構造10によれば、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の上フランジ部20U,30U同士を非接合とすると共に、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30W同士を一対の接合プレート40を介してボルト接合する。
【0040】
したがって、例えば、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の上フランジ部20U,30U同士を溶接接合すると共にウェブ部20W,30W同士を一対の接合プレート40を介して溶接接合する場合と比較して、第1鉄骨梁部材20と第2鉄骨梁部材30との接合作業の手間を低減することができる。
【0041】
また、ボルト接合では、溶接接合で必要となる非破壊検査(UT)が不要になる。したがって、非破壊検査(UT)が完了するまでの第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の一時保管スペースを不要にすることができる。
【0042】
さらに、ボルト接合は、施工が容易であるため、熟練工が不要であり、また、現場においても工場と同等の接合品質を確保することができる。そのため、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30を分割した状態で現場へ運搬し、現場で第1鉄骨梁部材20と第2鉄骨梁部材30とを接合することができる。したがって、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の運搬性及び揚重性が向上する。
【0043】
さらに、例えば、第1鉄骨梁部材20と第2鉄骨梁部材30との接合部を、長期荷重に起因する曲げモーメントがゼロになる反曲点若しくは反曲点付近に位置させることにより、第1鉄骨梁部材20と第2鉄骨梁部材30との接合構造を合理的に簡素化することができる。
【0044】
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成のものは、同符号を付して説明を省略する。
【0045】
図3(A)及び
図3(B)には、第2実施形態に係る異種鉄骨梁接合構造50が適用されたハンチ鉄骨梁52が示されている。第2実施形態では、第1実施形態と異なり、接合プレート54に応力伝達リブ部54Bが設けられている。
【0046】
具体的には、一対の接合プレート54は、断面L字状に形成されており、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wの面外方向の両側に配置されている。各接合プレート54は、ベースプレート部(フラットプレート部)54Aと、応力伝達リブ部54Bとを有している。なお、接合プレート54は、不等辺山形鋼でも良いし、等辺山形鋼でも良い。また、接合プレート54は、溝形鋼で良い。
【0047】
ベースプレート部54Aは、矩形の平板状に形成されている。このベースプレート部54Aは、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wに亘って配置されており、これらのウェブ部20W,30Wにそれぞれ重ねられた状態で複数のボルト56A,56B及びナット58によってボルト接合されている。換言すると、一対のベースプレート部54Aは、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wを面外方向の両側から挟み込んだ状態で、複数のボルト56A,56B及びナット58により互いにボルト接合されている。これにより、第1鉄骨梁部材20と第2鉄骨梁部材30とがピン接合されている。
【0048】
応力伝達リブ部54Bは、ベースプレート部54Aの下端部に沿って設けられており、第1鉄骨梁部材20と第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wに亘って配置されている。この応力伝達リブ部54Bは、ベースプレート部54Aの下端部から面外方向に延出している。つまり、応力伝達リブ部54Bは、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wの表面(側面)に対して略垂直に立てられている。この応力伝達リブ部54Bによって、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wが補強されている。
【0049】
また、応力伝達リブ部54Bは、第2鉄骨梁部材30の下フランジ部30Lの上側に配置され、当該下フランジ部30Lと近接した状態で対向している。この応力伝達リブ部54Bは、下フランジ部30Lに沿って第2鉄骨梁部材30のウェブ部30Wから第1鉄骨梁部材20のウェブ部20Wへ延出し、第1鉄骨梁部材20の下フランジ部20Lと対向している。この応力伝達リブ部54Bを介して、第2鉄骨梁部材30の下フランジ部30Lと第1鉄骨梁部材20の下フランジ部20Lとの間で応力が伝達される。
【0050】
なお、接合プレート54は、断面L字状に限らず、断面T字状でも良い。つまり、応力伝達リブ部54Bは、ベースプレート部54Aの下端部に限らず、当該下端部以外の下部に設けても良い。
【0051】
ここで、本実施形態では、ボルト56A,56Bが複数段複数列で配列されている。そして、最下段のボルト56Bの数、すなわち応力伝達リブ部54B側のボルト56Bの数(列数)が、その上段のボルト56Aの数(列数)よりも多くなっている。また、最下段のボルト56Bは、応力伝達リブ部54Bに沿って配列されている。これらのボルト56Bによって、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wと応力伝達リブ部54Bとの間の応力伝達効率が向上されている。なお、ボルト56A,56Bの数や配列は、適宜変更可能である。
【0052】
図4(A)及び
図4(B)に示されるように、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の上には、例えば、鉄筋コンクリート造のスラブ60が形成される。スラブ60には、上端スラブ筋62及び下端スラブ筋64が水平二方向にそれぞれ埋設されている。このスラブ60は、複数のスタッド66を介して第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30と接合されている。
【0053】
具体的には、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の上フランジ部20U,30Uの上面には、せん断力伝達部材としての複数のスタッド66がそれぞれ設けられている。これらのスタッド66をスラブ60の下面側に埋設することにより第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30とスラブ60とが一体化されている。なお、スラブ60は、図示しないデッキプレートを用いた合成スラブとされている。
【0054】
ここで、スラブ60におけるスタッド66の周辺部には、複数の応力伝達筋(補強筋)68がハンチ鉄骨梁52の材軸方向に沿って埋設されている。複数の応力伝達筋68は、上端スラブ筋62と下端スラブ筋64との間に配置されると共に、ウェブ部20W,30Wの面外方向(矢印X方向)に間隔を空けて配筋されている。また、各応力伝達筋68は、上端スラブ筋62及び下端スラブ筋64よりも径が大きくされている。
【0055】
これにより、応力伝達筋68及びスタッド66を介して、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の上フランジ部20U,30Uの間で応力が伝達されるようになっている。つまり、応力伝達筋68及びスタッド66は、スラブ60内に上フランジ部20U,30U間の応力伝達経路を形成している。
【0056】
なお、応力伝達筋68及びスタッド66の数や配置は、適宜変更可能である。また、応力伝達筋68とスタッド66とは、結束線等で適宜結束しても良い。
【0057】
次に、第2実施形態の作用について説明する。
【0058】
図3(A)及び
図3(B)に示されるように、本実施形態に係る異種鉄骨梁接合構造50によれば、接合プレート54には、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wに亘る応力伝達リブ部54Bが設けられている。この応力伝達リブ部54Bは、ベースプレート部54Aの下端部から面外方向に延出し、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の下フランジ部20L,30Lの各々と対向している。
【0059】
ここで、第1鉄骨梁部材20と第2鉄骨梁部材30とは、梁成H
1,H
2が異なると共にその上フランジ部20U,30U同士が連続するように配置される。そのため、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の下フランジ部20L,30L同士が連続せず、その間に段差が形成されている。したがって、下フランジ部20L,30Lの間で応力を伝達することが難しい。
【0060】
これに対して本実施形態では、接合プレート54に、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wに亘る応力伝達リブ部54Bが設けられている。これにより、例えば、第2鉄骨梁部材30の下フランジ部30Lに作用する応力(引張応力)は、第2鉄骨梁部材30側のウェブ部30W、ボルト56B、ベースプレート部54Aを介して応力伝達リブ部54Bに伝達される。また、応力伝達リブ部54Bに伝達された応力は、第1鉄骨梁部材20側のベースプレート部54A、ボルト56B、及びウェブ部20Wを介して当該第1鉄骨梁部材20の下フランジ部20Lへ伝達される。
【0061】
また、本実施形態で、複数段のボルト56A,56Bのうち、最下段のボルト56Bの数(列数)がその上段のボルト56Aの数(列数)よりも多くなっている。これにより、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wと応力伝達リブ部54Bとの間の応力伝達が良好になる。したがって、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の下フランジ部20L,30L間の応力伝達効率が向上する。
【0062】
さらに、応力伝達リブ部54Bによって、第1鉄骨梁部材20の下フランジ部20Lの座屈(横座屈)等が抑制される。したがって、第1鉄骨梁部材20と第2鉄骨梁部材30との接合部の耐力を高めることができる。
【0063】
また、応力伝達リブ部54Bが設けられた接合プレート54は、第1鉄骨梁部材20のウェブ部20Wにボルト接合される。したがって、例えば、
図5に示される比較例のように、第1鉄骨梁部材20のウェブ部20Wに座屈防止用の補剛リブ100を溶接する構成と比べ、第1鉄骨梁部材20の製作性が向上する。
【0064】
このように本実施形態では、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の下フランジ部20L,30L間の応力伝達を良好にしつつ、第1鉄骨梁部材20の下フランジ部20Lの座屈等を抑制することができる。
【0065】
さらに、
図4(A)及び
図4(B)に示されるように、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の上に形成されるスラブ60には、複数の応力伝達筋(補強筋)68が埋設されている。これらの応力伝達筋68及びスタッド66を介して、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の上フランジ部20U,30U間で応力が伝達される。
【0066】
したがって、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の上フランジ部20U,30U同士を溶接等により直接的に接合せずに、第1鉄骨梁部材20と第2鉄骨梁部材30との接合部の耐力を高めることができる。
【0067】
なお、応力伝達筋68及びスタッド66によって、スラブ60内に上フランジ部20U,30U間の応力伝達経路を形成する構成は、上記第1実施形態や後述する第3,第4実施形態にも適宜適用可能である。
【0068】
次に、第3実施形態について説明する。なお、第1,第2実施形態と同じ構成のものは、同符号を付して説明を省略する。
【0069】
図6(A)及び
図6(B)には、第3実施形態に係る異種鉄骨梁接合構造70が適用されたハンチ鉄骨梁72が示されている。第3実施形態では、第1,第2実施形態と異なり、一対の第1鉄骨梁部材20と第2鉄骨梁部材30とが、一対の接合プレート74及び一対の応力伝達部材80を介してボルト接合されている。
【0070】
具体的には、一対の接合プレート74は、第1実施形態における接合プレート40(
図1参照)と同様の構成とされており、矩形の平板状に形成されている。また、一対の接合プレート74は、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wの面外方向の両側に配置されており、複数のボルト76及びナット78によってウェブ部20W,30Wにそれぞれボルト接合されている。この一対の接合プレート74は、主として第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30W間でせん断力を伝達する。
【0071】
一方、一対の応力伝達部材80は、断面L字状に形成されており、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wの面外方向の両側に配置されている。各応力伝達部材80は、ベースプレート部80Aと、応力伝達リブ部80Bとを有し、長手方向をハンチ鉄骨梁72の材軸方向とすると共に応力伝達リブ部80Bを下にした状態で配置されている。この一対の応力伝達部材80は、主として第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の下フランジ部20L,30L間で応力(引張応力)を伝達する。
【0072】
ベースプレート部80Aは、矩形の平板状に形成されている。このベースプレート部80Aは、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wに亘って配置されており、これらのウェブ部20W,30Wにそれぞれ重ねられた状態で複数のボルト82及びナット84によってボルト接合されている。
【0073】
応力伝達リブ部80Bは、ベースプレート部80Aの下端部に沿って設けられており、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wに亘っている。この応力伝達リブ部80Bは、ベースプレート部80Aの下端部から面外方向に延出している。つまり、応力伝達リブ部80Bは、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wの表面(側面)に対して略垂直に立てられている。この応力伝達リブ部80Bによって、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wが補強されている。
【0074】
また、応力伝達リブ部80Bは、第2鉄骨梁部材30の下フランジ部30Lの上側に配置され、当該下フランジ部30Lと近接した状態で対向している。この応力伝達リブ部80Bは、下フランジ部30Lに沿って第2鉄骨梁部材30のウェブ部30Wから第1鉄骨梁部材20のウェブ部20Wへ延出し、第1鉄骨梁部材20の下フランジ部20Lと対向している。この応力伝達リブ部80Bを介して、第2鉄骨梁部材30の下フランジ部30Lと第1鉄骨梁部材20の下フランジ部20Lとの間で応力が伝達される。
【0075】
さらに、応力伝達部材80における第1鉄骨梁部材20側の長さは、第2鉄骨梁部材30側よりも長くなっている。また、応力伝達部材80は、接合プレート74よりも第2鉄骨梁部材30から柱14側へ延出している。これにより、第1鉄骨梁部材20の下フランジ部20Lの座屈(横座屈)がより確実に抑制されている。
【0076】
なお、応力伝達部材80の長さは適宜変更可能であり、例えば、応力伝達部材80における第1鉄骨梁部材20側と第2鉄骨梁部材30側の長さを同じにしても良いし、第1鉄骨梁部材20側よりも第2鉄骨梁部材30側の長さを長くしても良い。また、応力伝達部材80は、接合プレート74と同じ長さにしても良いし、接合プレート74よりも短くしても良い。
【0077】
次に、第3実施形態の作用について説明する。
【0078】
図6(A)及び
図6(B)に示されるように、本実施形態に係る異種鉄骨梁接合構造70によれば、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30W間でせん断力を伝達する接合プレート74と、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の下フランジ部20L,30L間で応力(引張応力)を伝達する応力伝達部材80とが別体(別部材)とされている。
【0079】
このように接合プレート74と応力伝達部材80とを機能(役割)ごとに別部材とすることにより、接合プレート74及び応力伝達部材80の設計が容易となる。また、接合プレート74及び応力伝達部材80を一体にした場合と比較して、各接合プレート74及び応力伝達部材80がそれぞれ軽くなるため、施工性が向上する。
【0080】
また、本実施形態では、応力伝達部材80が、接合プレート74よりも第2鉄骨梁部材30から柱14側へ延出している。これにより、第1鉄骨梁部材20の下フランジ部20Lの座屈(横座屈)をより確実に抑制することができる。したがって、本実施形態では、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の下フランジ部20L,30L間の応力伝達を良好にしつつ、第1鉄骨梁部材20の下フランジ部20Lの座屈等をより確実に抑制することができる。
【0081】
さらに、応力伝達部材80は、接合プレート74と同様に、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30にボルト接合される。したがって、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30に応力伝達部材80をそれぞれ溶接接合する場合と比較して、第1鉄骨梁部材20と第2鉄骨梁部材30との接合作業の手間を低減することができる。
【0082】
次に、第4実施形態について説明する。なお、第1〜第3実施形態と同じ構成のものは、同符号を付して説明を省略する。
【0083】
図7(A)及び
図7(B)には、第4実施形態に係る異種鉄骨梁接合構造90が適用されたハンチ鉄骨梁92が示されている。第4実施形態では、第3実施形態と異なり、一対の応力伝達部材80が第2鉄骨梁部材30の下側に配置されている。
【0084】
具体的には、一対の応力伝達部材80は、応力伝達リブ部80Bを上にした状態で配置されている。この一対の応力伝達部材80のベースプレート部80Aにおける長手方向一方側(第1鉄骨梁部材20側)は、第1鉄骨梁部材20のウェブ部20Wに重ねられた状態でボルト82及びナット(図示省略)によりボルト接合されている。
【0085】
一方、一対の応力伝達部材80のベースプレート部80Aにおける長手方向他方側(第2鉄骨梁部材30側)は、第1鉄骨梁部材20のウェブ部20Wから第2鉄骨梁部材30の下フランジ部30Lの下側へそれぞれ延出しており、板状のスペーサ94を挟んだ状態でボルト96及びナット97により互いにボルト接合されている。なお、スペーサ94は、第1鉄骨梁部材20のウェブ部20Wと略同じ板厚とされている。また、スペーサ94は、適宜省略可能である。
【0086】
応力伝達リブ部80Bは、ベースプレート部80Aの上端部に沿って設けられており、第1鉄骨梁部材20のウェブ部20Wと第2鉄骨梁部材30の下フランジ部30Lとに亘っている。この応力伝達リブ部80Bは、第2鉄骨梁部材30の下フランジ部30Lに下側から重ねられた状態で、複数のボルト98及びナット99によりボルト接合されている。
【0087】
次に、第4実施形態の作用について説明する。
【0088】
図7(A)及び
図7(B)に示されるように、本実施形態に係る異種鉄骨梁接合構造90によれば、一対の応力伝達部材80の応力伝達リブ部80Bは、第2鉄骨梁部材30の下フランジ部30Lに下側から重ねられた状態でボルト98及びナット99によりボルト接合される。
【0089】
これにより、第2鉄骨梁部材30の下フランジ部30Lに作用する応力(引張応力)が、応力伝達リブ部80Bに直接的に伝達される。また、応力伝達リブ部80Bに伝達された応力は、第1鉄骨梁部材20側のベースプレート部80A、ボルト82、及びウェブ部20Wを介して当該第1鉄骨梁部材20の下フランジ部20Lへ伝達される。したがって、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の下フランジ部20L,30L間の応力伝達効率が向上する。
【0090】
また、応力伝達リブ部80Bを第2鉄骨梁部材30の下フランジ部30Lにボルト接合することにより、応力伝達リブ部80Bの固定度が高くなる。したがって、第1鉄骨梁部材20の下フランジ部20Lの座屈(横座屈)をより確実に抑制することができる。
【0091】
このように本実施形態では、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30の下フランジ部20L,30L間の応力伝達を良好にしつつ、第1鉄骨梁部材20の下フランジ部20Lの座屈等を抑制することができる。
【0092】
また、応力伝達部材80は、接合プレート40と同様に、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30にボルト接合される。したがって、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30に応力伝達部材80をそれぞれ溶接接合する場合と比較して、第1鉄骨梁部材20と第2鉄骨梁部材30との接合作業の手間を低減することができる。
【0093】
次に、上記第1〜第4実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、第1実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は第2〜第4実施形態にも適宜適用可能である。
【0094】
上記第1実施形態では、第1鉄骨梁部材20及び第2鉄骨梁部材30のウェブ部20W,30Wの面外方向の両側に一対の接合プレート40を設けた例を示したが、これに限らない。接合プレート40は、ウェブ部20W,30Wの面外方向の片側にのみ設けても良い。第2実施形態における接合プレート54や、第3,第4実施形態における応力伝達部材80についても同様である。
【0095】
また、上記第1実施形態では、第2鉄骨梁部材30の材軸方向の両端部に一対の第1鉄骨梁部材20を接合した例を示したが、これに限らない。第2鉄骨梁部材30の材軸方向の一端部にのみ第1鉄骨梁部材20を接合し、第2鉄骨梁部材30の材軸方向の他端部は柱14の仕口部14Aに接合しても良い。
【0096】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。