特許第6393522号(P6393522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6393522コンクリートの電気化学的処理方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393522
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】コンクリートの電気化学的処理方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   E04G23/02 A
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-113762(P2014-113762)
(22)【出願日】2014年6月2日
(65)【公開番号】特開2015-227578(P2015-227578A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】大即 信明
(72)【発明者】
【氏名】西田 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】庄野 昭
(72)【発明者】
【氏名】庄司 慎
(72)【発明者】
【氏名】宮口 克一
(72)【発明者】
【氏名】入内島 克明
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−328886(JP,A)
【文献】 特開2001−020532(JP,A)
【文献】 特開2002−047810(JP,A)
【文献】 米国特許第05141607(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート内部の鋼材を内部電極とし、コンクリートの表面に溶液を保持する溶液保持部材を介して設置した電極を外部電極とし、内部電極と外部電極との間に電流を流すコンクリートの電気化学的処理方法において、
前記溶液保持部材に、水密性及び溶液に対して化学的耐性を有し、一方の面に複数の凸部を設けたシートを採用し、
コンクリートの表面に前記シートを前記複数の凸部を有する面をコンクリートの表面に向けて被着し、コンクリートの表面と前記シートとの間を空気の吸引により負圧にして密着させ、その隙間に溶液を連続的又は断続的に流す、
ことを特徴とする、
コンクリートの電気化学的処理方法。
【請求項2】
コンクリートの表面のうち特に下向きの面を被着するシートに、溶液の重量で弛まない程度に表面硬度の高いシートを採用する請求項1に記載のコンクリートの電気化学的処理方法。
【請求項3】
下向きの面に被着するシートは全体を略樋形に形成し、前記略樋形のシートを下向きの面及びその両側に沿って被着し、当該下向きの面に押し付けるようにして取り付け固定する請求項2に記載のコンクリートの電気化学的処理方法。
【請求項4】
シートをコンクリートの表面に、溶液を浸透保持可能な溶液浸透保持シートを介挿して、被着する請求項1乃至のいずれかに記載のコンクリートの電気化学的処理方法。
【請求項5】
シートの適宜箇所に吸引口を設け、前記吸引口に吸引装置を接続して、前記吸引装置により、コンクリートの表面とシートとの間の空気を吸引する請求項1乃至4のいずれかに記載のコンクリートの電気化学的処理方法。
【請求項6】
コンクリートの表面とシートとの間に溶液供給用の配管を配置し、前記配管に溶液供給装置を連結して、前記配管及び前記溶液供給装置により、コンクリートの表面と前記シートとの間に溶液を供給する請求項1乃至5のいずれかに記載のコンクリートの電気化学的処理方法。
【請求項7】
溶液を貯留する溶液タンクを設置し、前記溶液タンクの溶液をコンクリートの表面とシートとの間に供給し、コンクリートの表面と前記シートとの間の空気を溶液とともに吸引して、吸引した溶液を前記溶液タンクに戻し入れて、溶液をコンクリートの表面と前記シートとの間に循環させる請求項1乃至6のいずれかに記載のコンクリートの電気化学的処理方法。
【請求項8】
コンクリート内部の鋼材を内部電極として、コンクリートの表面に設置される外部電極と、
コンクリートの表面に前記外部電極を介して被着される、水密性及び溶液に対して化学的耐性を有する溶液保持シートとして採用される気泡緩衝材と、
コンクリートの表面と前記溶液保持シートとの間の空気を吸引する吸引装置と、
コンクリートの表面と前記溶液保持シートとの間に溶液を供給する溶液供給装置と、
を備え、
コンクリートの表面に前記溶液保持シートを被着し、コンクリートの表面と前記溶液保持シートとの間を前記吸引装置により空気を吸引することにより負圧にして密着させ、その隙間に前記溶液供給装置により溶液を連続的又は断続的に流しながら、前記内部電極と前記外部電極との間に電流を流す、
ことを特徴とするコンクリートの電気化学的処理システム
【請求項9】
コンクリートの表面のうち特に下向きの面を被着する溶液保持シートとして、溶液の重量で弛まない程度に表面硬度の高い、プラスチック段ボールを含むシートを採用される請求項8に記載のコンクリートの電気化学的処理システム。
【請求項10】
コンクリートの表面と外部電極との間に溶液を浸透保持可能な溶液浸透保持シートが介挿される請求項8又は9に記載のコンクリートの電気化学的処理システム。
【請求項11】
溶液供給装置と吸引装置との間に溶液タンクが設置され、前記溶液タンクに溶液を貯留して、前記溶液タンクの溶液を前記溶液供給装置により、コンクリートの表面と溶液保持シートとの間に供給し、前記吸引装置により、コンクリートの表面と前記溶液保持シートとの間の空気を溶液とともに吸引して、溶液を回収し前記溶液タンクに戻し入れるようにして、前記溶液タンクの溶液をコンクリートの表面と前記溶液保持シートとの間に循環させる請求項8乃至10のいずれかに記載のコンクリートの電気化学的処理システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの電気化学的処理方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の耐久性低下の主な原因に、中性化、塩害があり、このようなコンクリート構造物を補修する方法として、電気化学的処理方法が知られている。この電気化学的処理方法には、脱塩工法、再アルカリ化工法、電着工法がある。
(1)脱塩工法
脱塩工法は、コンクリート中に存在する塩化物イオンを電気泳動によってコンクリート外部に移動して、塩化物イオンを除去する方法で、この工法には、陽極周辺にセルロースファイバーを吹き付けるファイバー方式と、陽極をパネルで覆い、パネル内部に電解質溶液を充填するパネル方式がある。この種の工法が特許文献1、2などに開示されている。
(2)再アルカリ化工法
再アルカリ化工法は、コンクリート中に電気浸透によってアルカリ性溶液を浸透させ、アルカリ性を再付与することで、中性化したコンクリートを本来のコンクリートの有するpH値程度に回復させ、鋼材を再不動態化する方法である。この工法もまた、ファイバー方式やパネル方式が採用される。この種の工法が特許文献3などに開示されている。
(3)電着工法
電着工法は、海水中に存在する電解質イオンを電気泳動によって、鋼材側に移動し、コンクリート表面に無機系物質の電着物を析出する方法で、この工法には、海中で陽極をコンクリート表面に仮設する水中施工方式と、大気中で保水材、陽極材、防水材からなる容器をコンクリート表面に仮設する給水施工方式がある。この種の工法が特許文献4などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−302384号公報
【特許文献2】特開平7−315960号公報
【特許文献3】特開2006−328886公報
【特許文献4】特開平6−65938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなコンクリートの電気化学的処理方法においては、特に、ファイバー方式やパネル方式が実用化されているところ、このファイバー方式、パネル方式には、次のような問題がある。
ファイバー方式の場合、コンクリート構造物にセルロースファイバーを吹き付けるため、専用の吹付け機械が必要でその分だけ施工コストが増大する。セルロースファイバーの吹付け時は粉塵が発生し、周辺環境を悪化させる。通電中のコンクリート構造物はセルロースファイバーに覆われるため、外観が悪い。通電完了後は、溶液を含んだ多量の吹き付け材が廃棄物となり、その除去、処分など煩雑な作業が必要となる。
パネル方式の場合、コンクリート構造物の表面に複数のパネルを取付部材を介して組み立ていくため、工数が多く施工性が悪い。パネルの形状は決まっており、適用部位がフラットな面に限定される。
【0005】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、この種のコンクリートの電気化学的処理方法及びシステムにおいて、コンクリートの表面に溶液の供給、保持に必要な設備を一般的で簡素な機材を用いて容易に設置すること、溶液をコンクリートの表面に確実に保持し、しかも均一に行き渡らせること、溶液をコンクリートの表面に循環して供給すること、粉塵などの発生がなく周辺環境を良好にすること、コンクリート構造物の通電中の外観を良好に維持することなど、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、コンクリート内部の鋼材を内部電極とし、コンクリートの表面に溶液を保持する溶液保持部材を介して設置した電極を外部電極とし、内部電極と外部電極との間に電流を流すコンクリートの電気化学的処理方法において、前記溶液保持部材に、水密性及び溶液に対して化学的耐性を有し、一方の面に複数の凸部を設けたシートを採用し、コンクリートの表面に前記シートを前記複数の凸部を有する面をコンクリートの表面に向けて被着し、コンクリートの表面と前記シートとの間を空気の吸引により負圧にして密着させ、その隙間に溶液を連続的又は断続的に流す、ことを要旨とする。
また、この方法は、次のように具体化されることが好ましい。
(1)コンクリートの表面のうち特に下向きの面を被着するシートに、溶液の重量で弛まない程度に表面硬度の高いシートを採用する
この場合、下向きの面に被着するシートは全体を略樋形に形成し、前記略樋形のシートを下向きの面及びその両側に沿って被着し、当該下向きの面に押し付けるようにして取り付け固定する
(2)シートをコンクリートの表面に、溶液を浸透保持可能な溶液浸透保持シートを介挿して、被着する
(3)シートの適宜箇所に吸引口を設け、前記吸引口に吸引装置を接続して、前記吸引装置により、コンクリートの表面とシートとの間の空気を吸引する
(4)コンクリートの表面とシートとの間に溶液供給用の配管を配置し、前記配管に溶液供給装置を連結して、前記配管及び前記溶液供給装置により、コンクリートの表面と前記シートとの間に溶液を供給する
(5)溶液を貯留する溶液タンクを設置し、前記溶液タンクの溶液をコンクリートの表面とシートとの間に供給し、コンクリートの表面と前記シートとの間の空気を溶液とともに吸引して、吸引した溶液を前記溶液タンクに戻し入れて、溶液をコンクリートの表面と前記シートとの間に循環させる
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のコンクリートの電気化学的処理システムは、コンクリート内部の鋼材を内部電極として、コンクリートの表面に設置される外部電極と、コンクリートの表面に前記外部電極を介して被着される、水密性及び溶液に対して化学的耐性を有する溶液保持シートとして採用される気泡緩衝材と、コンクリートの表面と前記溶液保持シートとの間の空気を吸引する吸引装置と、コンクリートの表面と前記溶液保持シートとの間に溶液を供給する溶液供給装置とを備え、コンクリートの表面に前記溶液保持シートを被着し、コンクリートの表面と前記溶液保持シートとの間を前記吸引装置により空気を吸引することにより負圧にして密着させ、その隙間に前記溶液供給装置により溶液を連続的又は断続的に流しながら、前記内部電極と前記外部電極との間に電流を流す、ことを要旨とする。
また、このシステムは、各部に次のような構成を備えることが好ましい。
(1)コンクリートの表面のうち特に下向きの面を被着する溶液保持シートとして、溶液の重量で弛まない程度に表面硬度の高い、プラスチック段ボールを含むシートを採用される
(2)コンクリートの表面と外部電極との間に溶液を浸透保持可能な溶液浸透保持シートが介挿される
(3)溶液供給装置と吸引装置との間に溶液タンクが設置され、前記溶液タンクに溶液を貯留して、前記溶液タンクの溶液を前記溶液供給装置により、コンクリートの表面と溶液保持シートとの間に供給し、前記吸引装置により、コンクリートの表面と前記溶液保持シートとの間の空気を溶液とともに吸引して、溶液を回収し前記溶液タンクに戻し入れるようにして、前記溶液タンクの溶液をコンクリートの表面と前記溶液保持シートとの間に循環させる
【発明の効果】
【0008】
(1)本発明のコンクリートの電気化学的処理方法によれば、溶液保持部材に、水密性及び溶液に対して化学的耐性を有し、一方の面に複数の凸部を設けたシートを採用し、このシートをコンクリートの表面に複数の凸部を有する面をコンクリートの表面に向けて被着して、コンクリートの表面とシートとの間を空気の吸引により負圧にして密着させ、その隙間に溶液を連続的又は断続的に流しながら、内部電極と外部電極との間に電流を流すようにしたので、次のような本発明独自の格別な効果を奏する。
(1)コンクリートの表面に溶液の供給、保持に必要な設備を一般的で簡素な機材を用いて容易に設置することができる。
(2)施工の際に粉塵などの発生がなく周辺環境を良好にすることができる。
(3)溶液をコンクリートの表面に確実に保持し、しかも均一に行き渡らせることができる。
(4)コンクリート構造物の通電中、コンクリート構造物の外観を良好に維持することができる。
(5)溶液を溶液タンクに貯留して、この溶液をコンクリートの表面とシートとの間に供給し、コンクリートの表面とシートとの間の空気を溶液とともに吸引して、吸引した溶液を回収し、溶液タンクに戻し入れることで、溶液をコンクリートの表面とシートとの間に循環させることができる。
【0009】
本発明のコンクリートの電気化学的処理システムによれば、上記の構成により、コンクリートの表面に溶液保持シートとして気泡緩衝材を被着し、コンクリートの表面と溶液保持シートとの間を吸引装置により空気を吸引することにより負圧にして密着させ、その隙間に溶液供給装置により溶液を連続的又は断続的に流しながら、内部電極と外部電極との間に電流を流すようにしたので、次のような本発明独自の格別な効果を奏する。
(1)コンクリートの表面に溶液の供給、保持に必要な設備を一般的で簡素な機材を用いて容易に設置することができる。
(2)施工の際に粉塵などの発生がなく周辺環境を良好にすることができる。
(3)溶液をコンクリートの表面に確実に保持し、しかも均一に行き渡らせることができる。
(4)コンクリート構造物の通電中、コンクリート構造物の外観を良好に維持することができる。
(5)溶液を溶液タンクに貯留して、この溶液をコンクリートの表面と溶液保持シートとの間に供給し、コンクリートの表面と溶液保持シートとの間の空気を溶液とともに吸引して、吸引した溶液を回収し、溶液タンクに戻し入れることで、溶液をコンクリートの表面と溶液保持シートとの間に循環させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態におけるコンクリートの電気化学的処理方法を示す図
図2】同方法の特に下面側のシートの固定方法を示す図
図3】同方法の特に下面側のシートの固定方法を示す図
図4】同電気化学的処理方法に用いる電気化学的処理システムの概略構成を示す図((a)は正面図(b)は要部側面拡大断面図)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。図1にコンクリートの電気化学的処理方法を示している。なお、この実施の形態では、この電気化学的処理方法方法をI桁に適用した場合を例示している。
図1に示すように、このコンクリートの電気化学的処理方法は、I桁のコンクリートC内部の鋼材Mを陰極の内部電極とし(以下、内部電極Mという。)、コンクリートCの表面に溶液を保持する溶液保持部材Hを介して設置した電極Pを陽極の外部電極として(以下、外部電極Pという。)、内部電極Mと外部電極Pとの間に電流を流す工法である。
そして、この工法では、特に、溶液保持部材Hに、水密性、及び溶液に対して化学的耐性を有するシート1(以下、溶液保持シート1という。)を採用し、コンクリートCの表面に溶液保持シート1を被着し、コンクリートCの表面とシート1との間を空気の吸引により負圧にして密着させ、その隙間に溶液を連続的又は断続的に流すようにしたものである。
【0012】
内部電極MをなすコンクリートC内部の鋼材としては、コンクリートC内部に配筋された鉄筋などの導電性を有する補強材を利用する。
外部電極Pは、ネット状、メッシュ状、シート状の導電性材料などこの種の電気化学的処理方法で一般に使用される電極材(陽極材)を使用する。このような外部電極Pを、I桁の上部フランジC1(の鉛直面及び下面)から中間部C2(の鉛直面)、下部フランジC3(鉛直面及び下面)までのコンクリートCの表面に、溶液を浸透保持可能な溶液浸透保持シート3を介挿して、展着する。この場合、溶液浸透保持シート3に不織布を用いる。
【0013】
溶液保持シート1は、水密性を有し、化学的に安定していて溶液に耐性がある他に、コンクリートCの表面に吸着させやすいように、薄く、軽量で、機械的強度に優れたものが好ましく、さらに一方の面に複数の凸部を有するものがなお好ましい。この溶液保持シート1の適宜箇所には吸引口を設けておく。この場合、溶液保持シート1はポリエステルシートなどのプラスチックシートからなり、片側一方の面に空気が封入された複数の凸部10を有するもので、吸引口11は溶液保持シート1のI桁の中間部C1の鉛直面の上下方向中間付近となる箇所に形成してある。このようにして溶液保持シート1を、複数の凸部10を有する面を内側にして(つまり、コンクリートCの表面に向けて)、I桁の上部フランジC1(鉛直面及び下面)から、中間部C2(の鉛直面)、下部フランジC3までのコンクリートCの表面に、外部電極Pの上から、被着する。また、この方法では、溶液保持シート1を下向きの面、この場合、下部フランジC3の下面まで被着してもよいが、この場合、シートが溶液の重量で下部フランジC3の下面から弛まないようにするため、下部フランジC3の下面にあってはその両側面とともに、溶液保持シート1とは別の下面用の溶液保持シート2を被着するものとし、溶液保持シート1は下部フランジC3鉛直面の上下方向中間部当たりまで被着するようにする。
【0014】
コンクリートCの表面と溶液保持シート1との間の空気の吸引は吸引装置を使用する。この場合、溶液保持シート1の適宜箇所に設けた吸引口11に配管41を介して吸引機を接続する。
【0015】
コンクリートCの表面と溶液保持シート1との間への溶液の供給は溶液供給用の配管と溶液供給装置を使用する。この場合、コンクリートCの表面と溶液保持シート1との間の最上位置、ここではI桁の上部フランジC1の鉛直面上部に沿って溶液供給用の配管51を配置し、この配管51に溶液供給装置を連結する。
【0016】
また、この場合、溶液を貯留する溶液タンクを設置し、溶液供給装置により溶液タンクの溶液をコンクリートCの表面と溶液保持シート1との間に供給し、吸引装置によりコンクリートCの表面と溶液保持シート1との間の空気を溶液とともに吸引して、溶液を回収し溶液タンクに戻し入れることで、溶液をコンクリートCの表面と溶液保持シートとの間に循環させるようにする。
【0017】
また、下部フランジC3の下面に被着する下面用の溶液保持シート2は、水密性を有し、化学的に安定していて溶液に耐性がある他に、コンクリートCの表面に吸引可能に、軽量で、溶液の重量で弛まない程度に表面硬度が高く、機械的強度に優れたものが好ましい。また、この溶液保持シート2の場合、図2図3に示すように、全体を略樋形に形成し、シートの適宜箇所に吸引口を設けておく。この場合、溶液保持シート2は下部フランジC3の下面と略同じ大きさ、形状の底部201と、下部フランジC3の両側面よりも少し低い高さの両側部202とからなる略樋形に形成し、吸引口21は底部201の略中央に形成している。このようにしてこの下面側の溶液保持シート2を下部フランジC3の下面及びその両側面のコンクリートCの表面に、外部電極Pの上から被着し、コンクリートCの下面に押し付けるようにして取り付け固定する。
この下面側の溶液保持シート2の固定方法を図2及び図3に示している。
図2は、複数のバタ材71と締め付け金具72とを用いる固定方法を示し、この場合、各バタ材71は下部フランジC3の下面の幅方向の寸法よりも長い横バタにして、その上面両側に取付部材を介して2つの締め付け金具72を相互に対向して取り付ける。この固定方法の場合、下面側の溶液保持シート2の底部201及び両側部202をそれぞれ下部フランジC3の下面及び両側面に沿って被着した後、その下から、バタ材71を添え当て、このバタ材71で下面側の溶液保持シート2の底部201を下部フランジC3の下面に押し付けるように押圧して、この状態から、両側の各締め付け金具72を下面側の溶液保持シート2の両側部202の上から下部フランジC3の両側面に向けて締め込み、下面側の溶液保持シート2の底部201をバタ材71で押え固定する。この溶液保持シート2の固定を下部フランジC3の長さ方向に所定の間隔毎に行う。この場合、下面側の溶液保持シート2の長さ1800mmに対して3点支持とする。
図3は、複数のバタ材71と吊り下げ用のアンカーボルト73とを用いる固定方法を示し、この場合、各バタ材71は下部フランジC3の下面の幅方向の寸法よりも長い横バタにして、その両側に吊り下げ用のアンカーボルト73を対称的に取り付ける。この固定方法の場合、下面側の溶液保持シート2の底部201及び両側部202をそれぞれ下部フランジC3の下面及び両側面に沿って被着した後、その下にバタ材71を配置し、両側の各吊り下げ用のアンカーボルト73を上部フランジC1又は床版の下面に固定して、このバタ材71を吊り上げ、このバタ材71で溶液保持シート2の底部201を押え固定する。この下面側の溶液保持シート2の固定を下部フランジC3の長さ方向に所定の間隔毎に行う。この場合、下面側の溶液保持シート2の長さ1800mmに対して3点支持とする。なお、この固定方法の場合、上部フランジC1又は床版の下面に接着剤で固定した吊りボルトを用いて、バタ材71を吊り上げてもよい。
そして、下面側の溶液保持シート2の適宜箇所に設けた吸引口21に配管42を介して吸引装置を接続する。
【0018】
このようにしてI桁のコンクリートCの表面に、溶液を供給、保持するための設備を設置する。
【0019】
この電気化学的処理方法は脱塩工法、再アルカリ化工法、電着工法に広く適用される。この方法をいずれの工法に用いる場合でも、吸引装置によりコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間の空気を吸引することにより、コンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間を負圧にして、コンクリートCの表面に、溶液浸透保持シート3、外部電極P、及び溶液保持シート1、2を密着させた状態から、溶液供給装置により、コンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間の隙間に、溶液を連続的又は断続的に供給することにより、コンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間に溶液を流し、この状態で、内部電極Mと外部電極Pとの間に電流を流して、電気化学的処理を施す。このようなコンクリートC表面への溶液の供給、保持により、溶液はコンクリートCの表面全体に均一に行き渡り、コンクリートC全体に亘って電気化学的処理が施される。この場合、コンクリートCの表面上に溶液浸透保持シート3として不織布を被着しているので、コンクリートCの表面上に溶液が保持され、コンクリートCの表面が酸荒れにより劣化するのを防止される。
また、この場合、溶液を溶液タンクから溶液供給装置によりコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間に供給し、吸引装置によりコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間の空気を溶液とともに吸引して、溶液を回収し溶液タンクに戻し入れて、溶液の供給、回収を繰り返すので、溶液がコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間に循環され、コンクリートC全体に亘って電気化学的処理が均一に施される。
そして、I桁の通電中は、このI桁のコンクリートCの表面が各溶液保持シート1、2に覆われており、通電中のI桁の外観はきれいに維持される。
【0020】
以上説明したように、この電気化学的処理方法によれば、図1に示すように、I桁のコンクリートCの表面に設置する溶液を供給、保持するための設備を、溶液保持シート1、2、吸引装置及び溶液供給装置により構成し、コンクリートCの表面に、溶液浸透保持シート3及び外部電極Pを介して、溶液保持シート1、2を被着し、吸引装置、溶液供給装置の設置と配管を行うだけなので、溶液を供給、保持するための設備を一般的で簡素な機材を用いて簡易に施工することができる。しかも、従来のファイバー方式の施工のように粉塵などの発生がなく、周辺環境を良好に維持することができる。
また、この方法では、I桁のコンクリートCの表面に水密性、及び溶液に対して化学的耐性を有する溶液保持シート1、2を被着して、吸引装置により、コンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間を空気の吸引により負圧にして密着させ、溶液供給装置により、溶液をコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間の隙間に連続的又は断続的に流しながら、内部電極Mと外部電極Pとの間に電流を流し、電気化学的処理を施すので、溶液をコンクリートCの表面に確実に保持し、均一に行き渡らせることができ、コンクリートC全体に電気化学的処理を確実に施すことができる。しかも、この場合、溶液を溶液タンクに貯留して、この溶液をコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間に供給し、コンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間の空気を溶液とともに吸引して、溶液を回収し溶液タンクに戻し入れて、溶液をコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間に循環させるので、溶液を再利用して、コンクリートC全体に亘り電気化学的処理を均一に施すことができる。
また、I桁の通電中は、コンクリートCの表面が各溶液保持シート1、2により覆われるので、通電中の外観を良好に維持することができる。
【0021】
なお、この実施の形態では、下部フランジC3の下面に下面側の溶液保持シート2を用いたが、既述のとおり、上部フランジC1から下部フランジC3の下面までを同じ溶液保持シート1で被着してもよく、この場合には、下部フランジC3の下面を覆う溶液保持シート1の下に表面硬度の高いシート又はプレートを添え当て、このシート又はプレートを下部フランジC3の下面に押し付けるようにして取り付け固定することが好ましい。このようにしても上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、この実施の形態では、I桁の電気化学的処理方法について例示したが、この電気化学的処理方法は各種のコンクリート構造物に適用できることは勿論である。
【0022】
図4にこの方法に用いる電気化学的処理システムを示している。
図4に示すように、この電気化学的処理システムは、コンクリートC内部の鋼材を陰極の内部電極Mとして、コンクリートCの表面に設置される陽極の外部電極Pと、コンクリートCの表面に外部電極Pを介して被着される、水密性、及び溶液に対して化学的耐性を有する溶液保持シート1、2と、コンクリートCの表面と溶液保持シート1、2との間に連通して配置される吸引用の配管41、42、及び吸引用の配管41、42に連結される吸引機40を有し、コンクリートCの表面と溶液保持シート1、2との間の空気を吸引する吸引装置4と、コンクリートCの表面と溶液保持シート1、2との間に配置される溶液供給用の配管51、及び溶液供給用の配管51に連結される溶液供給用のポンプ50を有し、コンクリートCの表面と溶液保持シート1、2との間に溶液を供給する溶液供給装置5とを備える。
【0023】
内部電極MをなすコンクリートC内部の鋼材としては、コンクリートC内部に配筋された鉄筋などの導電性を有する補強材が利用される。
外部電極Pは、ネット状、メッシュ状、シート状の導電性材料などこの種の電気化学的処理方法で一般に使用する電極材(陽極材)が用いられる。この場合、チタンメッシュ(以下、チタンメッシュPという。)を使用する。なお、チタンメッシュに代えてステンレスメッシュ、炭素繊維シートを用いてもよい。
【0024】
溶液保持シート1は、既述のとおり、水密性を有し、化学的に安定していて溶液に耐性がある他、コンクリートCの表面に吸着させやすいように、薄く、軽量で、機械的強度に優れたものが好ましく、さらに一方の面に複数の凸部を有するものがなお好ましい。この溶液保持シート1の適宜箇所には吸引口が設けられる。この場合、この溶液保持シート1はポリエチレン製の気泡緩衝材(エアークッション)を採用する。吸引口11はこの気泡緩衝材1のI桁の中間部鉛直面の上下方向中間付近となる箇所に形成する。また、この場合、この気泡緩衝材1を下部フランジの両側面の上下方向中間付近まで被着し、下部フランジの下面にあっては、シートが溶液の重量で下部フランジの下面から弛まないように、下部フランジの両側面とともに、下面側の溶液保持シート2を被着する。この下面側の溶液保持シート2は、既述のとおり、水密性を有し、化学的に安定していて溶液に耐性がある他、コンクリートCの表面に吸引可能に、軽量で、溶液の重量で弛まない程度に表面硬度が高く、機械的強度に優れたものが好ましい。また、この下面側の溶液保持シート2は、全体が略樋形に形成され、シートの適宜箇所に吸引口を設けられる。この場合、この溶液保持シート2にプラスチック段ボールを採用し、2枚のプラスチック段ボールを相互の中空部が直交するように重ねて2重構造にし、下部フランジの下面と略同じ大きさ、形状の底部と、下部フランジの両側面よりも少し低い高さの両側部とからなる略樋形に形成し、吸引口21を底部の略中央に形成する。
【0025】
吸引装置4の吸引機40と溶液保持シート1及び下面側の溶液保持シート2との間の配管41、42はホースが用いられ、吸引機40には吸引ポンプが採用される(以下、配管41、42をホース41、42と、吸引機40を吸引ポンプ40という。)。
【0026】
コンクリートCの表面と各溶液保持シート1との間の溶液供給用の配管51に散水ホースが用いられ(以下、配管51を散水ホース51という。)、この散水ホース51と溶液供給装置5の溶液供給用のポンプ50との間の配管52にはホースが用いられ、溶液供給用のポンプ50に給水ポンプ(水中ポンプ)が採用される(以下、配管51を散水ホース51、配管52をホース52、溶液供給用のポンプ50を給水ポンプ50という。)。
また、この場合、吸引ポンプ40と給水ポンプ50との間に溶液を貯留するための溶液タンク6が設置され、吸引ポンプ40の排水口が溶液タンク6上又は溶液タンク6中に配置され、給水ポンプ50が溶液タンク6内に設置される。このようにして溶液タンク6の溶液をコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間に供給し、吸引ポンプ40によりコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間の空気を溶液とともに吸引して、溶液を回収し、溶液タンク6に戻し入れるようにして、溶液をコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間に循環させる溶液循環機構を構成する。
【0027】
電気化学的処理システムはかかる構成を備え、図1に示すように、I桁の上部フランジC1(鉛直面及び下面)から中間部C2(の鉛直面)、下部フランジC3(鉛直面及び下面)までのコンクリートCの表面に、溶液浸透保持シートとして不織布3、外部電極としてチタンメッシュPが順次被着され、その上から、各溶液保持シート1、2としてポリエチレンからなる気泡緩衝材、及びプラスチック段ボールからなる樋形のシートが被着される。この場合、溶液保持シート1は複数の凸部10を有する面を内側にして、上部フランジC1(の鉛直面、下面)から、中間部C2(の鉛直面)、下部フランジC3までのコンクリートCの表面に被着され、下面側の溶液保持シート2は下部フランジC3の下面及びその両側面のコンクリートCの表面に被着され、既述のとおり、バタ材71や締め付け金具73又は吊り上げ用のアンカーボルト73などを用いてコンクリートCの下面に押し付けるようにして固定される。そして、溶液保持シート1、下面側の溶液保持シート2の適宜箇所に設けた吸引口11、21にホース41、42を介して吸引ポンプ40が接続され、コンクリートCの表面と溶液保持シート1との間で最上位置、ここではI桁の上部フランジC1の鉛直面上部に沿って散水ホース51が配置されて、この散水ホース51にホース52を介して給水ポンプ50が連結される。
このようにしてI桁のコンクリートCの表面に、溶液を供給、保持するための設備が設置される。
【0028】
このシステムは脱塩工法、再アルカリ化工法、電着工法に広く適用される。このシステムをいずれの工法で使用する場合でも、吸引ポンプ40によりコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間の空気を吸引することにより、コンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間を負圧にして、コンクリートCの表面に、溶液浸透保持シート3、外部電極P、及び溶液保持シート1、2を密着させた状態から、給水ポンプ50によりコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間の隙間、すなわちコンクリートの表面と気泡緩衝材との間にあってはこの両者間の隙間、言い換えれば気泡緩衝材の各凸部間の隙間に、コンクリートの表面とプラスチック段ボールのシートとの間にあってはこの両者間の隙間に、溶液を連続的又は断続的に供給することにより、コンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間に溶液を流し、この状態で、内部電極Mと外部電極Pとの間に電流を流して、電気化学的処理を施す。このようなコンクリートC表面への溶液の供給、保持により、溶液はコンクリートCの表面全体に均一に行き渡り、コンクリート全体に亘って電気化学的処理が施される。この場合、コンクリートCの表面上に不織布3を被着しているので、コンクリートCの表面に溶液が保持され、コンクリートCの表面が酸荒れにより劣化するのを防止される。
また、この場合、溶液を溶液タンク6から給水ポンプ50によりコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間に供給し、吸引ポンプ40によりコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間の空気を溶液とともに吸引して、溶液を回収し溶液タンク6に戻し入れて、溶液の供給、回収を繰り返すので、溶液がコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間に循環され、コンクリートC全体に亘って電気化学的処理が均一に施される。
そして、I桁の通電中は、このI桁のコンクリートCの表面が気泡緩衝材及びプラスチック段ボールからなるシートに覆われており、通電中のI桁の外観はきれいに維持される。
【0029】
以上説明したように、この電気化学的処理システムによれば、I桁のコンクリートCの表面に設置する溶液を供給、保持するための設備を、気泡緩衝材及びプラスチック段ボールからなる溶液保持シート1、2、吸引ポンプ40及び給水ポンプ50により構成し、コンクリートCの表面に、不織布3及び外部電極Pを介して、各溶液保持シート1、2を被着し、吸引ポンプ40、給水ポンプ50の設置と各ホース41、42、51、52の配管を行うだけなので、溶液を供給、保持するための設備を一般的で簡素な機材を用いて簡易に施工することができる。しかも、従来のファイバー方式の施工のように粉塵などの発生がなく、周辺環境を良好に維持することができる。
また、このシステムでは、I桁のコンクリートCの表面に気泡緩衝材及びプラスチック段ボールからなる溶液保持シート1、2を被着して、吸引ポンプ40により、コンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間を空気の吸引により負圧にして密着させ、給水ポンプ50により、溶液をコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間の隙間に連続的又は断続的に流しながら、内部電極Mと外部電極Pとの間に電流を流し、電気化学的処理を施すので、溶液をコンクリートCの表面に確実に保持し、均一に行き渡らせることができ、コンクリートC全体に電気化学的処理を確実に施すことができる。しかも、この場合、溶液を溶液タンク6に貯留して、この溶液をコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間に供給し、コンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間の空気を溶液とともに吸引して、溶液を回収し溶液タンク6に戻し入れて、溶液をコンクリートCの表面と各溶液保持シート1、2との間に循環させるので、溶液を再利用して、コンクリートC全体に亘り電気化学的処理を均一に施すことができる。
また、I桁の通電中は、コンクリートCの表面が気泡緩衝材及びプラスチック段ボールからなる溶液保持シート1、2により覆われるので、通電中の外観を良好に維持することができる。
【0030】
なお、このシステムでは、下部フランジC3の下面に下面側の溶液保持シート2を用いたが、既述のとおり、上部フランジC1から下部フランジC3の下面までを同じ溶液保持シート1、すなわち気泡緩衝材で被着してもよく、この場合には、下部フランジC3の下面を覆う気泡緩衝材の下に表面硬度の高いシート又はプレートを添え当て、このシート又はプレートを下部フランジC3の下面に押し付けるようにして取り付け固定することが好ましい。このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、このシステムでは、溶液保持シート1、2に気泡緩衝材、プラスチック段ボールを用いたが、この溶液保持シート1、2はこれに限定されるものではなく、これら気泡緩衝材、プラスチック段ボールと概ね同様の作用を有する限り、種々の材料からなる他のシートに変更可能である。
また、このシステムでは、吸引機40に吸引ポンプを用いたが、吸引ファンに代えることもできる。
さらに、このシステムは、I桁に適用するものとして例示したが、このシステムは各種の他のコンクリート構造物にも同様に適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
C コンクリート
C1 上部フランジ
C2 中間部
C3 下部フランジ
M 電極(内部電極)
P 電極(外部電極、チタンメッシュ又はステンレスメッシュ又は炭素繊維シート)
H 溶液保持部材
1 シート(溶液保持シート)
10 凸部
11 吸引口
2 シート(溶液保持シート)
201 底部
202 側部
21 吸引口
3 溶液浸透保持シート
4 吸引装置
40 吸引機(吸引ポンプ又は吸引ファン)
41 配管(ホース)
42 配管(ホース)
5 溶液供給装置
50 溶液供給用のポンプ(給水ポンプ)
51 配管(散水ホース)
52 配管(ホース)
6 溶液タンク
71 バタ材
72 締め付け金具
73 吊り上げ用のアンカーボルト
図1
図2
図3
図4