特許第6393552号(P6393552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 河西工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6393552-合成樹脂部品の結合構造 図000002
  • 特許6393552-合成樹脂部品の結合構造 図000003
  • 特許6393552-合成樹脂部品の結合構造 図000004
  • 特許6393552-合成樹脂部品の結合構造 図000005
  • 特許6393552-合成樹脂部品の結合構造 図000006
  • 特許6393552-合成樹脂部品の結合構造 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393552
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】合成樹脂部品の結合構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/56 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   B29C65/56
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-167124(P2014-167124)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2016-43500(P2016-43500A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124454
【氏名又は名称】河西工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 智也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 翔一
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−235956(JP,A)
【文献】 実開平04−063227(JP,U)
【文献】 実開昭60−051027(JP,U)
【文献】 実開昭63−139920(JP,U)
【文献】 実開平06−001813(JP,U)
【文献】 実開平04−113122(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00−65/82
F16B 5/00− 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側部材に突設したボス部を、該下側部材に重合配置した中間部材と上側部材とに挿通し、該ボス部の突出端部を熱かしめして結合する構造であって、
前記中間部材に、前記下側部材のボス部と共に前記上側部材のボス挿通孔に挿通されて同心的に突出する環状のボス部を設け、
前記中間部材の環状のボス部と、前記下側部材のボス部とが一体に溶融されていて、前記上側部材のボス挿通孔の周縁部上に熱かしめされている
ことを特徴とする合成樹脂部品の結合構造。
【請求項2】
前記中間部材の環状のボス部の突出する長さを前記下側部材のボス部の突出する長さよりも低く設定し、該下側部材のボス部が熱かしめ治具の成形凹部に先当たりするようにしたことを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂部品の結合構造。
【請求項3】
前記熱かしめ治具が、超音波溶着機のホーンであることを特徴とする請求項2に記載の合成樹脂製品の結合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の合成樹脂部品の相互を重合して、該重合部分をボス溶着工法により熱かしめして結合する合成樹脂部品の結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図5図6は従来の合成樹脂部品の結合構造の一例を示すもので、本例では熱可塑性樹脂材からなる3枚の平板状の合成樹脂部品を部分的に重合して、該重合部分をボス溶着工法により熱かしめして結合する場合を示している。
【0003】
下側部材1、中間部材2、および上側部材3はそれらの連結部分を相互に重合してあって、下側部材1にはボス部4を突設してある一方、中間部材2および上側部材3にはボス挿通孔5、6を形成して、これらボス挿通孔5、6にボス部4を挿通してある。
【0004】
そして、ボス部4の突出端部を例えば超音波溶着機を用いて、そのホーンにより所要の押圧力と超音波振動を付加して発生する摩擦熱で溶融し、ホーンの成形凹部の内面形状に見合った熱かしめ部Wを形成して、これら3部材1、2、3を熱かしめにより結合するようにしている。
【0005】
このような結合構造は、例えば自動車のドアトリムにおけるロアトリムとセンタートリムとドアアームレストとの重ね合わせ結合部分などに用いられている。この類似構造は、例えば特許文献1および特許文献2に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4−113122号公報
【特許文献2】特開2000−67337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来の結合構造では、3部材1、2、3の組付け性を考慮して中間部材2と上側部材3のボス挿通孔5、6を、部材相互の成形誤差を十分に吸収し得るようにボス部4よりも大径に形成する必要がある。
【0008】
一方、ボス部4の熱かしめ処理でボス部4と上側部材3とは溶着されるが、中間部材2はボス部4とは非溶着関係にあるため走行時振動等で中間部材2に図6A図6Bに示すようにずれを生じ易く、これが低吸音の発生原因となってしまう不具合を生じる。
【0009】
そこで、本発明は下側部材と上側部材との間に介在する中間部材にずれを生じることなく、それらの重合部分をボス溶着工法により熱かしめして結合することができる合成樹脂部品の結合構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る合成樹脂部品の結合構造は、下側部材に突設したボス部を、該下側部材に重合配置した中間部材と上側部材とに挿通し、該ボス部の突出端部を熱かしめして結合する構造であって、前記中間部材に、前記下側部材のボス部と共に前記上側部材のボス挿通孔に挿通されて同心的に突出する環状のボス部を設け、前記中間部材の環状のボス部と、前記下側部材のボス部とが一体に溶融されていて、前記上側部材のボス挿通孔の周縁部上に熱かしめされていることを特徴としている。
【0013】
上述の中間部材の環状のボス部の突出する長さを前記下側部材のボス部の突出する長さよりも低く設定し、該下側部材のボス部が熱かしめ治具の成形凹部に先当たりするようにしたことを特徴としている。
【0014】
また、この熱かしめを超音波溶着機を用いてそのホーンで所要の形状、大きさの熱かしめ部を形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、下側部材のボス部と中間部材の環状のボス部とが上側部材を挿通して同心的に突出してそれらを一体に熱かしめして結合してあるため、これら下側部材と中間部材および上側部材とを相互に溶着関係の結合構造とすることができる。
【0016】
この結果、中間部材が正規位置からずれてパーティングラインが不整合となって外観を損なったり、外部振動でずれ動いて不快な低級音を生じたりするのを回避できることができる。
【0017】
上述の中間部材の環状のボス部の突出量を下側部材のボス部の突出量よりも低く設定して、該下側部材のボス部を熱かしめ治具の成形凹部に先当たりさせれば、ボス部の熱溶着が中心側から多段に行われてボス溶着による熱かしめをスムーズに行わせることができる。
【0018】
また、熱かしめを超音波溶着機を用いて行う場合に、ホーンによる溶着加工中に超音波振動で中間部材がずれ動いて結合不良を生じるのを回避することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態における複数の合成樹脂部品の配置関係を示す分解斜視図。
図2】第1実施形態のボス溶着による熱かしめ前の状態を示す断面図。
図3】第1実施形態のボス溶着による熱かしめ後の状態を示す断面図。
図4】本発明の第2実施形態を示す図2と同様の断面図。
図5】従来の構造の一例を示す図1と同様の分解斜視図。
図6】従来の構造のボス溶着による熱かしめ後における中間部材の正常状態とずれ状態とを(A)、(B)にて示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面と共に前記従来の構造と同一部分に同一符号を付して詳述する。
【0021】
図1に示す第1実施形態は熱可塑性樹脂材からなる3枚の平板状の合成樹脂部品を部分的に重合して、該重合部分をボス溶着工法により熱かしめして結合する場合を示している。
【0022】
下側部材1、中間部材2、および上側部材3は図2に示すようにそれらの連結部分を相互に重合してあって、下側部材1にはボス部4を突設してある一方、中間部材2および上側部材3にはボス挿通孔5、6を形成して、これらボス挿通孔5、6にボス部4を挿通してある。
【0023】
ボス部4は端部側から溶融し易いように円筒状に形成することによって、下側部材1の表面側(図1図2の下側)のヒケ防止と樹脂材料の軽減化を図ると共に、突出端部に対する後述するホーン10のセッティングを行い易いようにしている。
【0024】
中間部材2のボス挿通孔5は、下側部材1のボス部4を遊挿可能なように該ボス部4よりも大径に形成して良好な組付け性が得られるようにしてあり、その上側の孔縁部にはボス部4と共に上側部材3を挿通して上側に向けて同心的に突出する環状のボス部7を突設してある。
【0025】
従って、上側部材3のボス挿通孔6は、この環状のボス部7を遊挿可能なように該環状のボス部7よりも大径に形成して良好な組付け性が得られるようにしている。
【0026】
そして、この中間部材2の環状のボス部7を図3に熱かしめ部Wとして示すように下側部材1のボス部4と一体に上側部材3のボス挿通孔6の周縁部上に熱かしめして、下側部材1と中間部材2と上側部材3とを結合している。
【0027】
ボス部4および環状のボス部7の上側部材3からの突出量は、十分な結合強度を確保できる大きさの熱かしめ部Wが得られるように任意に設定される。
【0028】
本実施形態では図2に示すように中間部材2の環状のボス部7の突出量を下側部材1のボス部4の突出量よりも低く設定して、該下側部材1のボス部4が熱かしめ治具10の成形凹部11に先当たりするようにしている。
【0029】
上述の熱かしめ部Wを成形するボス溶着工法として公知の超音波溶着機を用いることができる。
【0030】
図2に例示した熱かしめ治具10はこの超音波溶着機のホーンを示しており、ホーン10の成形凹部11は所要の容積の略半球状凹部として形成してあって、その凹部中心にはボス部4の端部の加振,溶融を促進するための突起12を突設してある。
【0031】
このホーン10の成形凹部11を図2に示すように下側部材1のボス部4の突出端部にセットする場合に、突起12がボス部4の筒状の端部内に進入することにより自動調芯されてセッティングを容易に行うことができる。
【0032】
そこで、このホーン10によりボス部4の突出端部に所要の押圧力と超音波振動を付加すると、その接触部に発生する摩擦熱でボス部4の突出端部が溶融する。
【0033】
そして、このボス部4の突出端部の溶融に続いてホーン10の成形凹部11が中間部材2の環状のボス部7の外周縁側から接触して、該環状のボス部7も一体となって溶融することによって、ホーン10の成形凹部11の内面形状に見合った熱かしめ部Wが形成される。
【0034】
これにより、これら下側部材1と中間部材2および上側部材3の3部材を熱かしめによりしっかりと結合することができる。
【0035】
以上のように本実施形態の構造によれば、下側部材1のボス部4と中間部材2の環状のボス部7とが上側部材3を挿通して同心的に突出してそれらを一体に熱かしめして結合してあるため、これら下側部材1と中間部材2および上側部材3とを相互に溶着関係の結合構造とすることができる。
【0036】
この結果、中間部材2が正規位置からずれてパーティングラインが不整合となって外観を損なったり、外部振動でずれ動いて不快な低級音を生じたりするのを回避することができる。
【0037】
また、中間部材2の環状のボス部7の突出量を下側部材1のボス部4の突出量よりも低く設定して、該下側部材1のボス部4を熱かしめ治具10の成形凹部11に先当たりさせるようにしているので、熱溶着が中心側のボス部4から外周側の環状のボス部7に多段に行われてボス溶着をスムーズに行わせることができる。
【0038】
そして、上述のように下側部材1のボス部4と中間部材2の環状のボス部7とを一体に溶融して上側部材3のボス挿通孔6の周縁部上に熱かしめするので、この熱かしめを超音波溶着機を用いて行う場合に、ホーン10による溶着加工中に超音波振動で中間部材2がずれ動いて結合不良を生じるのを回避することもできる。
【0039】
図4は、下側部材1と上側部材3との間に複数の中間部材、例えば2つの中間部材2、2Aを介装した本発明の第2実施形態を示している。
【0040】
中間部材2Aのボス挿通孔5Aは、中間部材2の環状のボス部7を遊挿可能なように該ボス部7よりも大径に形成して良好な組付け性が得られるようにしてあり、その上側の孔縁部にはボス部4および環状のボス部7と共に上側部材3を挿通して上側に向けて同心的に突出する環状のボス部7Aを突設してある。
【0041】
環状のボス部7,7Aはボス部4の外周側に2枚重ねとなるため、上側部材3のボス挿通孔6および熱かしめ部W(図3参照)が徒に大きくならないようにそれぞれ肉厚,外径が任意に設定される。
【0042】
そして、下側部材1のボス部4とこれら中間部材2,2Aの環状のボス部7,7Aとを、上側部材3を挿通して上方に同心的に突出させてそれらを一体に熱かしめして結合してある。
【0043】
従って、本実施形態にあっても下側部材1と中間部材2,2Aおよび上側部材3とを相互に溶着関係の結合構造とすることができ、前記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
前述の各実施形態の結合構造は、例えば自動車のドアトリムやリアサイドトリム等の車両用内装材における複数の合成樹脂部品の重ね合わせ結合部分に適用して有効であるが、これに限らず各種の合成樹脂部品の結合構造に適用することができる。
【0045】
また、上側部材3は熱かしめ部Wにより抜け止め固定されるので、熱可塑性樹脂材に限定されることはなく、他の合成樹脂製あるいは金属製等の部品の場合にも適用することが可能である。
【0046】
更に、前記実施形態では熱かしめを超音波溶着機のホーンで行う場合を例示したが、この他、熱源を備えた熱かしめ治具を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…下側部材
2、2A…中間部材
3…上側部材
4…ボス部
5、5A…中間部材のボス挿通孔
6…上側部材のボス挿通孔
7、7A…環状のボス部
10…ホーン(熱かしめ治具)
11…成形凹部
12…凹部中心の突起
W…熱かしめ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6