(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッド、インクを貯留するインクタンク、前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとの間でインクを循環させる循環経路、インクを循環させるために前記インクタンクから前記インクジェットヘッドへインクを送液するインクポンプ、インク温度を検出するインク温度検出部を有する印刷部と、
前記インクタンクに負圧を付与するとともに、前記インクタンクの圧力を調整する圧力調整部と、
前記印刷部のインク温度に基づき設定負圧を決定し、前記圧力調整部を制御して前記インクタンクの圧力を前記設定負圧に調整するとともに、前記設定負圧に基づき前記インクポンプの駆動率を調整する制御部と
を備えることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0014】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。
図2は、
図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部および圧力調整部の概略構成図である。なお、以下の説明における上下方向は鉛直方向であり、
図2における紙面の上下を上下方向とする。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、4つの印刷部2と、圧力調整部3と、搬送部4と、制御部5とを備える。
【0017】
印刷部2は、インクを循環させつつ、搬送部4により搬送される用紙にインクを吐出して画像を印刷する。4つの印刷部2は、それぞれ異なる色(例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y))のインクを吐出する。4つの印刷部2は、吐出するインクの色が異なる以外は、同様の構成を有する。
【0018】
図2に示すように、印刷部2は、インクジェットヘッド11と、インク循環部12と、インク補給部13とを備える。
【0019】
インクジェットヘッド11は、インク循環部12により供給されるインクを吐出する。インクジェットヘッド11は、複数のヘッドモジュール16からなる。
【0020】
ヘッドモジュール16は、インクを貯留するインクチャンバ(図示せず)と、インクを吐出する複数のノズル(図示せず)とを有する。インクチャンバ内には、ピエゾ素子(図示せず)が配置されている。ピエゾ素子の駆動により、ノズルからインクが吐出される。複数のヘッドモジュール16は、ノズルが開口するノズル面(下面)の高さが、すべてのヘッドモジュール16で同じ高さになるように配置されている。
【0021】
インク循環部12は、インクを循環させつつインクジェットヘッド11にインクを供給する。インク循環部12は、インクタンク21と、分配器22と、集合器23と、インクポンプ24と、インク温度調整部25と、インク温度センサ(請求項のインク温度検出部に相当)26と、インク導管27,28とを備える。
【0022】
インクタンク21は、インクジェットヘッド11に供給するインクを貯留する。インクタンク21には、インク補給部13によりインクが補給される。また、インクタンク21には、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクが集合器23およびインク導管28を介して帰還する。インクタンク21内には、インクの液面上に空気層が形成されている。インクタンク21は、インクジェットヘッド11より低い位置(下方)に配置されている。
【0023】
インクタンク21には、液面センサ29が設けられている。液面センサ29は、インクタンク21内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。液面センサ29は、インクタンク21内のインクの液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
【0024】
分配器22は、インク導管27を介してインクタンク21から供給されるインクを、インクジェットヘッド11の各ヘッドモジュール16に分配する。
【0025】
集合器23は、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクを各ヘッドモジュール16から集める。集合器23により集められたインクは、インク導管28を介してインクタンク21へと流れる。
【0026】
インクポンプ24は、インクを循環させるために、インクタンク21からインクジェットヘッド11へインクを送液する。インクポンプ24は、インク導管27の途中に設けられている。
【0027】
インク温度調整部25は、インク循環部12におけるインクの温度を調整する。インク温度調整部25は、インク導管27の途中に設けられている。インク温度調整部25は、ヒータ31と、ヒートシンク32と、冷却ファン33とを備える。
【0028】
ヒータ31は、インク導管27内のインクを加熱する。ヒートシンク32は、放熱によりインク導管27内のインクを冷却する。冷却ファン33は、ヒートシンク32に冷却風を送る。
【0029】
インク温度センサ26は、インク循環部12におけるインク温度Tiを検出する。インク温度センサ26は、インク導管27の途中に設けられている。
【0030】
インク導管27は、インクタンク21と分配器22とを接続する。インク導管27には、インクタンク21から分配器22に向かってインクが流れる。インク導管28は、集合器23とインクタンク21とを接続する。インク導管28には、集合器23からインクタンク21に向かってインクが流れる。インク導管27,28と分配器22と集合器23とにより、インクタンク21とインクジェットヘッド11との間でインクを循環させる循環経路が形成される。
【0031】
インク補給部13は、インク循環部12にインクを補給する。インク補給部13は、インクカートリッジ36と、インク補給弁37と、インク導管38とを備える。
【0032】
インクカートリッジ36は、インクジェットヘッド11による印刷に用いるインクを収容している。インクカートリッジ36内のインクは、インク導管38を介してインク循環部12のインクタンク21に供給される。
【0033】
インク補給弁37は、インク導管38内のインクの流路を開閉する。インクタンク21へインクを補給する際、インク補給弁37が開かれる。
【0034】
インク導管38は、インクカートリッジ36とインクタンク21とを接続する。インク導管38には、インクカートリッジ36からインクタンク21に向かってインクが流れる。
【0035】
圧力調整部3は、インクタンク21に負圧を付与するとともに、インクタンク21の圧力を調整する。圧力調整部3は、すべての印刷部2に共通のものである。圧力調整部3は、共通気室41と、エアポンプ42と、大気開放弁43と、圧力調整弁44と、圧力センサ45と、4本の空気導管46と、空気導管47〜49とを備える。
【0036】
共通気室41は、各印刷部2のインクタンク21の圧力を等しくするための気室である。共通気室41は、4本の空気導管46を介して4つの印刷部2のインクタンク21の空気層と連通されている。これにより、各印刷部2のインクタンク21どうしが、共通気室41および空気導管46を介して連通されている。
【0037】
エアポンプ42は、空気導管47を介して空気を共通気室41から吸引し、共通気室41および各印刷部2のインクタンク21に負圧を付与する。エアポンプ42は、空気導管47の途中に設けられている。
【0038】
大気開放弁43は、共通気室41および各印刷部2のインクタンク21を密閉状態(大気から遮断した状態)と大気開放状態(大気に通じた状態)との間で切り替えるために、空気導管48内の空気の流路を開閉する。大気開放弁43は、空気導管48の途中に設けられている。
【0039】
圧力調整弁44は、共通気室41および各印刷部2のインクタンク21の圧力を調整するために、空気導管49内の空気の流路を開閉する。圧力調整弁44は、空気導管49の途中に設けられている。
【0040】
圧力センサ45は、共通気室41内の圧力を検出する。共通気室41内の圧力は、各印刷部2のインクタンク21内の圧力と等しい。空気導管46により共通気室41と各印刷部2のインクタンク21の空気層とが連通されているためである。
【0041】
4本の空気導管46は、共通気室41と4つの印刷部2のインクタンク21とを接続する。空気導管46は、一端が共通気室41に接続され、他端がインクタンク21の空気層に接続されている。
【0042】
空気導管48は、共通気室41およびインクタンク21を大気開放するための空気の流路を形成する。空気導管48は、一端が共通気室41に接続され、他端が大気に通じている。
【0043】
空気導管49は、共通気室41およびインクタンク21の圧力調整のための空気の流路を形成する。空気導管49は、空気導管48より流路抵抗が大きいパイプからなる。具体的には、空気導管49は、空気導管48より細いパイプからなる。空気導管49は、一端が共通気室41に接続され、他端が大気に通じている。
【0044】
搬送部4は、給紙台(図示せず)から用紙を取り出し、その用紙を搬送経路(図示せず)に沿って搬送する。搬送部4は、用紙を搬送するためのローラ、ローラを駆動させるモータ(いずれも図示せず)等を有する。
【0045】
制御部5は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部5は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0046】
制御部5は、各印刷部2のインク温度Tiに応じて、インクタンク21の圧力を圧力調整部3により調整するとともに、インクポンプ24の駆動率(デューティ比)を調整する。
【0047】
具体的には、制御部5は、各印刷部2のインク温度Tiに基づきインクタンク21の設定負圧Pfを決定するとともに、設定負圧Pf、インク温度Ti、および規定ノズル圧Pnに応じたインクの必要循環流量Qnを印刷部2ごとに決定する。また、制御部5は、印刷部2ごとに設定負圧Pf、インク温度Ti、および必要循環流量Qnに応じたインクポンプ24の駆動率を決定する。そして、制御部5は、圧力調整部3により各インクタンク21の圧力を設定負圧Pfに調整するとともに、印刷部2ごとに決定した駆動率でインクポンプ24を駆動させる。
【0048】
制御部5は、インク循環部12における上流側流路、下流側流路のそれぞれについて、インクの粘度あたりの流路抵抗(流路抵抗/粘度)の理論値を記憶している。
【0049】
上流側流路は、インク導管27と、分配器22と、インクジェットヘッド11の各ヘッドモジュール16の入力ポートとノズルとの間の流路とからなるインクの流路である。下流側流路は、インクジェットヘッド11の各ヘッドモジュール16のノズルと出力ポートとの間の流路と、集合器23と、インク導管28とからなるインクの流路である。
【0050】
流路抵抗は、インクの粘度μに比例する。粘度あたりの流路抵抗は、その比例係数である。粘度あたりの流路抵抗は、流路形状で決まるものである。粘度あたりの流路抵抗は、インク温度Tiに応じた粘度μから、上流側流路の流路抵抗Ruおよび下流側流路の流路抵抗Rdを算出するために用いられる。下流側流路の流路抵抗Rdは、設定負圧Pfを決定する際に、後述の標準負圧Ptを算出するために用いられる。上流側流路の流路抵抗Ruは、インクポンプ24の駆動率を決定するために必要な負荷圧力Pを算出するために用いられる。
【0051】
制御部5は、各印刷部2に対応する各色のインクのそれぞれについて、インク温度Tiからインクの粘度μを求めるための算出式を記憶している。インクの粘度μは、上流側流路の流路抵抗Ruおよび下流側流路の流路抵抗Rdを算出するために用いられる。
【0052】
制御部5は、各色のインクのそれぞれについて、インク温度Tiからインクの密度ρを求めるための算出式を記憶している。インクの密度ρは、設定負圧Pfを決定する際に、後述の標準負圧Ptを算出するために用いられる。また、インクの密度ρは、インクポンプ24の駆動率を決定する際に、後述の必要循環流量Qnを算出するために用いられる。
【0053】
制御部5は、インクポンプ24の負荷圧力Pおよび流量Qから駆動率(デューティ比)を求めるための算出式を記憶している。ここで、インクポンプ24は、例えば
図3に示すような、駆動率に応じた送液特性(PQ特性)を有している。インクポンプ24の駆動率の算出式は、
図3のようなPQ特性に基づき、負荷圧力Pおよび流量Qから駆動率が算出できるように作成されたものである。インクポンプ24の駆動率の算出式は、負荷圧力Pの範囲に応じて複数存在することがある。
【0054】
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
【0055】
図4は、インクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
図4のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1に印刷ジョブが入力されることにより開始となる。
【0056】
図4のステップS1において、制御部5は、圧力センサ45の初期化を行う。
【0057】
次いで、ステップS2において、制御部5は、各印刷部2のインク温度センサ26からインク温度Tiを取得する。
【0058】
次いで、ステップS3において、制御部5は、インクタンク21の設定負圧Pfを決定する。
【0059】
具体的には、まず、制御部5は、各印刷部2における現在のインク温度Tiでのインクタンク21の標準負圧Ptを算出する。標準負圧Ptは、下記の式(1)により算出される。
【0060】
Pt=−Qmin×Rd+Pn+H×ρ×g …(1)
標準負圧Pt(Pa)は、必要最低流量Qmin(m
3/s)の循環流量でノズル圧が規定ノズル圧Pn(Pa)となるようなインクタンク21の圧力である。
【0061】
必要最低流量Qminは、インクジェットヘッド11のヘッドモジュール16のピエゾ素子を冷却したり、ノズル近傍の気泡や異物(ゴミや増粘したインク等)を押し流したりするために必要な最低限の循環流量である。必要最低流量Qminは、予め設定された固定値である。
【0062】
規定ノズル圧Pnは、インク吐出のために適正なノズル圧として予め設定されたものである。
【0063】
下流側流路の流路抵抗Rd(Pa・s/m
3)は、下流側流路の粘度あたりの流路抵抗(流路抵抗/粘度)の理論値と、インクの粘度μ(Pa・s)とから算出される。粘度μは、インク温度Tiから算出される。
【0064】
H(m)は、
図2に示すように、インクジェットヘッド11のヘッドモジュール16のノズル面(下面)と、インクタンク21の液面(基準高さ)との高低差(水頭差)である。
【0065】
インクの密度ρ(kg/m
3)は、インク温度Tiから算出される。g(m/s
2)は、重力加速度である。
【0066】
式(1)における「Qmin×Rd」は必要最低流量Qminに対する下流側流路による圧力損失であり、「H×ρ×g」は水頭圧である。
【0067】
式(1)により各印刷部2におけるインク温度Tiに応じた標準負圧Ptを算出すると、制御部5は、各印刷部2の標準負圧Ptのうち最小(絶対値が最大)のものを、設定負圧Pfとして決定する。
【0068】
次いで、ステップS4において、制御部5は、各印刷部2のインクポンプ24の駆動率を算出する。
【0069】
具体的には、まず、制御部5は、各印刷部2について、設定負圧Pf、インク温度Ti、および規定ノズル圧Pnに応じたインクの必要循環流量Qn(m
3/s)を算出する。必要循環流量Qnは、下記の式(2)により算出される。
【0070】
Qn=(−Pf+Pn+H×ρ×g)/Rd …(2)
必要循環流量Qnは、現在のインク温度Tiにおいて、インクタンク21の圧力を設定負圧Pfとしたときに、ノズル圧を規定ノズル圧Pnとするために必要な循環流量である。なお、標準負圧Ptが設定負圧Pfとして採用された印刷部2においては、必要最低流量Qminが必要循環流量Qnとなる。
【0071】
続いて、制御部5は、各印刷部2について、設定負圧Pf、インク温度Ti、および必要循環流量Qnに応じたインクポンプ24の負荷圧力P(Pa)を算出する。負荷圧力Pは、下記の式(3)により算出される。
【0072】
P=−Pf+Qn×Ru …(3)
ここで、上流側流路の流路抵抗Ru(Pa・s/m
3)は、上流側流路の粘度あたりの流路抵抗(流路抵抗/粘度)の理論値と、インク温度Tiに応じた粘度μとから算出される。「Qn×Ru」は必要循環流量Qnに対する上流側流路による圧力損失である。
【0073】
そして、制御部5は、前述したPQ特性に応じた駆動率の算出式を用いて、各印刷部2における負荷圧力Pおよび必要循環流量Qnに応じたインクポンプ24の駆動率を算出する。
【0074】
次いで、ステップS5において、制御部5は、インク循環動作を開始する。具体的には、まず、制御部5は、大気開放弁43を閉じる。なお、インクジェット印刷装置1がインク循環を行わない待機中は、大気開放弁43が開かれ、インクタンク21は大気開放されている。圧力調整弁44は待機中から閉じられている。
【0075】
次いで、制御部5は、エアポンプ42の駆動を開始させる。エアポンプ42の駆動により、共通気室41およびインクタンク21が減圧される。制御部5は、圧力センサ45の検出値が設定負圧Pfになると、エアポンプ42を停止させる。
【0076】
また、制御部5は、エアポンプ42の駆動開始とともに、各印刷部2のインクポンプ24の駆動を開始させる。ここで、制御部5は、上述のステップS4で算出した駆動率で、各印刷部2のインクポンプ24を駆動させる。
【0077】
エアポンプ42によりインクタンク21に負圧が付与され、インクポンプ24が駆動することで、インク循環部12の循環経路に沿ってインクが循環する。
【0078】
インク循環動作中において、制御部5は、印刷ジョブを実行する。具体的には、制御部5は、印刷ジョブに基づき、搬送部4により搬送される用紙にインクジェットヘッド11からインクを吐出させる。これにより、用紙に画像が印刷される。
【0079】
印刷によりインク循環部12内のインク量が減少すると、制御部5は、インク補給部12によるインク補給を行うよう制御する。具体的には、制御部5は、インク循環部12内のインクの減少によりインクタンク21の液面が下降し、液面センサ29がオフになると、インク補給弁37を開く。これにより、インクカートリッジ36のインクがインクタンク21に供給される。インクが供給されてインクタンク21の液面が上昇し、液面センサ29がオンになると、制御部5は、インク補給弁37を閉じる。
【0080】
また、インク循環動作中において、インクジェットヘッド11が吐出動作を行うと、インクジェットヘッド11が発熱し、その影響でインクの温度が上昇する。これに対し、制御部5は、インク温度センサ26の検出温度がインクジェットヘッド11の印刷可能温度範囲を逸脱しないように、インク温度調整部26を制御してインク温度の調整を行う。
【0081】
このように、インク循環動作中において、インクジェットヘッド11の駆動やインク温度調整部26による温度調整により、インク温度Tiの変動が生じる。これに対し、制御部5は、インク循環動作中も、インク温度Tiの変動に応じて、インクタンク21の圧力およびインクポンプ24の駆動率を調整する。
【0082】
具体的には、インク循環動作の開始後、ステップS6において、制御部5は、インク温度取得タイミングになったか否かを判断する。インク温度取得タイミングは、インク循環動作開始後の所定時間ごとに設定される。
【0083】
インク温度取得タイミングになったと判断した場合(ステップS6:YES)、制御部5は、ステップS7へ進む。ステップS7〜S9の処理は、前述のステップS2〜S4の処理と同様である。
【0084】
ステップS9に続いて、ステップS10において、制御部5は、圧力調整部3を制御してインクタンク21の圧力をステップS8で決定した設定負圧Pfに調整する。それとともに、制御部5は、インクポンプ24の駆動率をステップS9で決定した駆動率に変更する。
【0085】
ここで、インクタンク21の圧力の調整は、インクポンプ42または圧力調整弁44により行う。具体的には、インクタンク21の圧力を低下させる場合、制御部5は、インクポンプ42を駆動させる。これにより、共通気室41から空気が吸引され、共通気室41とともにインクタンク21の圧力が低下する。また、インクタンク21の圧力を上昇させる場合、制御部5は、圧力調整弁44を開く。これにより、共通気室41に空気が流入し、共通気室41とともにインクタンク21の圧力が上昇する。
【0086】
ステップS10の後、制御部5は、ステップS6に戻る。
【0087】
ステップS6において、インク温度取得タイミングになっていないと判断した場合(ステップS6:NO)、ステップS11において、制御部5は、印刷ジョブが終了したか否かを判断する。印刷ジョブが終了していないと判断した場合(ステップS11:NO)、制御部5は、ステップS6に戻る。
【0088】
印刷ジョブが終了したと判断した場合(ステップS11:YES)、ステップS12において、制御部5は、インク循環動作を終了する。具体的には、制御部5は、大気開放弁43を開き、インクポンプ24を停止させる。これにより、インクジェット印刷装置1の動作が終了し、待機状態となる。
【0089】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、制御部5は、各印刷部2のインク温度Tiに応じて、インクタンク21の圧力およびインクポンプ24の駆動率を調整する。具体的には、制御部5は、各印刷部2のインク温度Tiに基づきインクタンク21の設定負圧Pfを決定するとともに、設定負圧Pf、インク温度Ti、および規定ノズル圧Pnに応じたインクの必要循環流量Qnを印刷部2ごとに決定する。また、制御部5は、印刷部2ごとに設定負圧Pf、インク温度Ti、および必要循環流量Qnに応じたインクポンプ24の駆動率を決定する。そして、制御部5は、圧力調整部3により各インクタンク21の圧力を設定負圧Pfに調整するとともに、印刷部2ごとに決定した駆動率でインクポンプ24を駆動させる。
【0090】
これにより、インクジェット印刷装置1は、各印刷部2におけるインク温度Tiの変動に応じたインクの循環流量の変動およびノズル圧の変動を抑制できる。この結果、各印刷部2のインクポンプ24の負荷を抑えつつ、印刷画質の低下を抑制できる。また、高性能なインクポンプを必要としないため、装置の大型化を回避できる。
【0091】
上記実施の形態では、4つの印刷部2を有するインクジェット印刷装置1について説明したが、印刷部2の数はこれに限らない。印刷部2が1つの場合でも本発明は適用可能である。
【0092】
印刷部2が1つの構成の場合、当該印刷部2のインク温度Tiでのインクタンク21の標準負圧Ptを設定負圧Pfとすればよい。また、必要最低流量Qminを必要循環流量Qnとして、インクポンプ24の駆動率を算出し、その駆動率でインクポンプ24を駆動させればよい。
【0093】
このように、印刷部2が1つの構成の場合でも、印刷部2のインク温度Tiに応じてインクタンク21の圧力およびインクポンプ24の駆動率を調整することで、インク温度Tiの変動に応じたインクの循環流量の変動およびノズル圧の変動を抑制できる。これにより、インクポンプ24の負荷を抑えつつ、印刷画質の低下を抑制できる。
【0094】
エアポンプ42として、逆回転可能なものを用いてもよい。この場合、エアポンプ42によりインクタンク21の加圧も可能になる。このため、圧力調整弁44および空気導管49を省略できる。
【0095】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。