(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第一の実施形態>
以下、本発明による蓄電素子の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、円筒形二次電池の第一の実施形態を示す拡大断面図である。
【0015】
円筒形二次電池1は、底部を有し、上部が開口された円筒形の電池缶2および電池缶2の上部を封口するハット型の電池蓋3で構成される電池容器4を有する。電池容器4の内部には、以下に説明する発電用の各構成部材が収容され、非水電解液5が注入されている。
【0016】
円筒形の電池缶2には、上端側に設けられた開口部2b側に電池缶2の内側に突き出した溝2aが形成されている。
【0017】
電池缶2の内部には、発電要素10が配置されている。発電要素10は、軸方向に沿う中空部を有する細長い円筒形の軸芯15と、軸芯15の周囲に捲回された正極電極11および負極電極12とを備える。円筒形状の軸芯15の中空部は、軸方向(図面の上下方向)で軸方向に垂直な面の断面形状が異なる。中空部の上方での断面形状は平行部と曲線部で形成されるトラック形状をしている。中空部の下方での断面形状は上方の平行部の幅よりも小さい径の円形である。この上方の中空部15aに円筒状の正極集電リング25が圧入されている。正極集電リング25は、円盤状の基部25aと、この基部25aの内周部において軸芯15側に向かって突出し、軸芯15の内面に圧入される下部筒部25bと、外周縁において電池蓋3側に突き出す上部筒部25cとを有する。正極集電リング25はこの下部筒部25bにより軸芯15の上端部に固定、支持されている。
【0018】
正極電極の正極タブ16は、正極集電リング25の上部筒部25cに溶接されている。正極集電リング25は例えばアルミニウム系金属により形成され、上部筒部25cの外周には、正極電極の正極タブ16および押え部材28が溶接されている。多数の正極タブ16は、正極集電リング25の上部筒部25cの外周に密着させておき、正極タブ16の外周に押え部材28をリング状に巻き付けて仮固定し、この状態で超音波溶接により接合される。
【0019】
軸芯15の下端部の外周には、外径が径小とされた段部15bが形成され、この段部15bに負極集電リング21が圧入されて固定されている。負極集電リング21は、例えば、銅系金属により形成され、円盤状の基部21aに軸芯15の段部15bに圧入される開口部21bが形成され、外周縁に、電池缶2の底部側に向かって突き出す外周筒部21cが形成されている。負極集電リング21の基部21aには、軸芯15の中空軸に注液された非水電解液5を発電要素10に浸透させるための開口部21d(
図2参照)が形成されている。
【0020】
負極電極の負極タブ17は、負極集電リング21の外周筒部21cに接合される。
負極集電リング21の外周筒部21cの外周には、負極電極の負極タブ17および押え部材22が溶接されている。多数の負極タブ17を、負極集電板21の外周筒部21cの外周に密着させておき、負極タブ17の外周に押え部材22をリング状に巻き付けて仮固定し、この状態で溶接される。負極集電リング21の基部21aには、接続リード板50が、抵抗溶接、或いはレーザ溶接等により接合されている。
【0021】
多数の正極タブ16は、正極集電リング25に溶接され、多数の負極タブ17が負極集電リング21に溶接されることにより、正極集電リング25、負極集電リング21および発電要素10が一体的にユニット化された発電ユニット20が構成される。電池缶2の内部には、非水電解液5が所定量注入されている。非水電解液5の一例として、リチウム塩がカーボネート系溶媒に溶解した溶液が上げられる。
【0022】
図2は円筒形二次電池の分解斜視図である。
【0023】
円筒形状の軸芯15の中空部の上方には、円筒状の正極集電リング25が圧入されている。正極集電リング25は、例えば、アルミニウム系金属により形成されている。正極集電リング25の基部25aには、電池内部で発生するガスを放出するための開口部25dが形成されている。正極集電リング25に形成された開口部25eは、接続リード板50を電池缶2に溶接するための電極棒(図示せず)を挿通するためのものである。電極棒を正極集電リング25に形成された開口部25eから軸芯15の中空部に差し込み、その先端部で接続リード板50を電池缶2の底部2cの内面に押し付けて抵抗溶接を行う。これにより発電ユニット20は電池缶2の底部2cに固定される。また、負極集電リング21に接続されている電池缶2の底面は一方の出力端子として作用し、発電要素10に蓄電された電力を電池缶2から取り出すことができる。正極集電リング25の基部25aの上面には、複数のアルミニウム箔が積層されて構成されたフレキシブルな導電リード41が、その一端部を溶接されて接合されている。
【0024】
正極集電リング25の上部筒部25c上には、電池蓋ユニット30が配置されている。電池蓋ユニット30は、リング形状をした絶縁板34、絶縁板34に設けられた開口部34aに嵌入された接続板35、接続板35に溶接されたダイアフラム37およびダイアフラム37に、かしめと溶接により固定された電池蓋3により構成される。
【0025】
絶縁板34は、円形の開口部34aを有する絶縁性樹脂材料からなるリング形状を有し、正極集電リング25の上部筒部25c上に載置されている。
【0026】
絶縁板34は、開口部34aおよび下方に突出する側部34bを有している。絶縁板34の開口部34a内には接続板35が嵌合されている。接続板35の下面には、導電リード41の他端部が溶接されて接合されている。
【0027】
接続板35は、アルミニウム系金属で形成され、中央部を除くほぼ全体が均一でかつ、中央側が少々低い位置に撓んだ、ほぼ皿形状を有している。接続板35の中心には、薄肉でドーム形状に形成された突起部35aが形成されており、突起部35aの周囲には、複数の開口部35bが形成されている。開口部35bは、電池内部に発生するガスを放出する機能を有している。接続板35の突起部35aはダイアフラム37の中央部の底面に抵抗溶接または摩擦攪拌接合により接合されている。ダイアフラム37はアルミニウム系金属で形成され、ダイアフラム37の中心部を中心とする円形の切込み37aを有する。切込み37aはプレスにより上面側をV字形状に押し潰して、残部を薄肉にしたものである。ダイアフラム37は、電池の安全性確保のために設けられており、電池の内圧が上昇すると、切込み37aにおいて開裂し、内部のガスを放出する機能を有する。
【0028】
ダイアフラム37は周縁部において電池蓋3の周縁部を固定している。ダイアフラム37は
図2に図示されるように、当初、周縁部に電池蓋3側に向かって垂直に起立する側壁37bを有している。この側壁37b内に電池蓋3を収容し、かしめ加工により、側壁37bを電池蓋3の上面側に屈曲して固定する。
【0029】
電池蓋3は、炭素鋼等の鉄で形成され、表裏両面にニッケルめっきが施されており、ダイアフラム37に接触する円盤状の周縁部3aと、この周縁部3aから上方に突出する筒部3bを有するハット型を有する。筒部3bには開口部3cが形成されている。この開口部3cは、電池内部に発生するガス圧によりダイアフラム37が開裂した際、ガスを電池外部に放出するためのものである。電池蓋3は一方の電力出力端として作用し、電池蓋3から蓄電された電力を取り出すことができる。
【0030】
ダイアフラム37と電池蓋3とのかしめ部を覆う絶縁部材からなるガスケット43が設けられている。ガスケット43は、ゴムで形成されており、限定する意図ではないが、1つの好ましい材料の例として、フッ素系樹脂をあげることができる。
【0031】
ガスケット43は、リング状の基部43aの周側縁に、上部方向に向けてほぼ垂直に起立して形成された外周壁部43bを有する形状を有している。
【0032】
そして、プレス等により、電池缶2と共にガスケット43の外周壁部43bを屈曲して基部43aと外周壁部43bにより、ダイアフラム37と電池蓋3を軸方向に圧接するようにかしめ加工される。これにより、電池蓋3、ダイアフラム37、絶縁板34および接続板35が一体に形成された電池蓋ユニット30がガスケット43を介して電池缶2に固定されると共に、絶縁板34が発電ユニット20の正極集電リング25に当接し、発電ユニット20を電池缶2の缶底側に押しつけている。
【0033】
図3は、発電要素10の構造の詳細を示すための分解断面斜視図である。
【0034】
発電要素10は、軸芯15の周囲に、正極電極11、負極電極12、および第1、第2のセパレータ13、14が捲回された構造を有する。
【0035】
軸芯15は、例えば、PP(ポリプロピレン)のような絶縁材により形成され、中空円筒形状を有する。軸芯15には、第1のセパレータ13、負極電極12、第2のセパレータ14および正極電極11が、順に積層され、捲回されている。最内周の負極電極12の内側には第1のセパレータ13および第2のセパレータ14が数周(
図3では、1周)捲回されている。第1のセパレータ13および第2のセパレータ14は、絶縁性の多孔質体で形成されている。
【0036】
最内周(軸芯側)では、負極電極12の捲き始めが正極電極11の捲き始めよりも周方向に延出している。また、最外周(電池缶側)では負極電極12が正極電極11よりも外周側に捲回されており、負極電極12の捲き終わりが正極電極11の捲き終わりよりも周方向に延出されている。最外周の負極電極12の外周に第2のセパレータ14が捲回されている。最外周の第2のセパレータ14終端が接着テープ19で止められる。尚、最外周で第1のセパレータ13および第2のセパレータ14が数回、捲回された後、接着テープ19で止められることもある。
【0037】
正極電極11は、アルミニウム箔により形成され長尺な形状を有し、正極金属箔11aと、この正極金属箔11aの両面に正極合剤が塗布された正極合剤層11bを有する。正極金属箔11aの長手方向に延在する上方側の側縁は、正極合剤が塗布されず正極金属箔11aが露出した正極箔露出部11cとなっている。この正極箔露出部11cには、軸芯15の軸に沿って上方に突き出す多数の正極タブ16が等間隔に一体的に形成されている。
【0038】
正極合剤は正極活物質と、正極導電材と、正極バインダとからなる。正極活物質として、コバルト、マンガン、ニッケル等のリチウム酸化物が挙げられる。
【0039】
正極バインダとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やフッ素ゴムなどが挙げられる。
【0040】
正極合剤を正極金属箔11aに塗布する方法の例として、ロール塗工法、スリットダイ塗工法、等が挙げられる。正極合剤に分散溶液を混練したスラリを、厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、プレスし、裁断する。正極合剤の塗布厚さの一例としては片側約40μmである。正極金属箔11aを裁断する際、正極タブ16を一体的に形成する。すべての正極タブ16の長さは、ほぼ同じである。
【0041】
負極電極12は、銅箔により形成され長尺な形状を有する負極金属箔12aと、この負極金属箔12aの両面に負極合剤が塗布された負極合剤層12bとを有する。負極金属箔12aの長手方向に延在する下方側の側縁は、負極合剤が塗布されず銅箔が露出した負極箔露出部12cとなっている。この負極箔露出部12cには、軸芯15の軸に沿って正極タブ16とは反対方向に延出された、多数の負極タブ17が等間隔に一体的に形成されている。
【0042】
負極合剤は、負極活物質と、負極バインダと、増粘剤とからなる。負極活物質としては、黒鉛炭素が挙げられる。
【0043】
負極合剤を負極金属箔12aに塗布する方法の例として、ロール塗工法、スリットダイ塗工法等が挙げられる。
【0044】
負極合剤に分散溶媒を混練したスラリを、厚さ10μmの圧延銅箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、裁断する。負極合剤の塗布厚さの一例としては片側約40μmである。負極金属箔12aをプレスにより裁断する際、負極タブ17を一体的に形成する。すべての負極タブ17の長さは、ほぼ同じである。
【0045】
第1、第2のセパレータ13、14の幅は、負極電極12の負極合剤層12bの幅よりも大きい。負極電極12の負極合剤層12bの幅は、正極電極11の正極合剤層11bの幅よりも大きい。負極合剤層12bの幅および長さを正極合剤層11bの幅および長さよりも大きくして、正極合剤層11bの全領域を負極合剤層12bで覆う構造とされている。リチウムイオン二次電池の場合、正極活物質であるリチウムがイオン化してセパレータを浸透し、負極活物質に吸蔵される。この場合、負極側に負極活物質が形成されておらず負極金属箔12aが表出していると負極金属箔12aにリチウムが析出し、内部短絡を発生する原因となる。上記の如く、正極合剤層11bの全領域を負極合剤層12bで覆うことにより、このようなリチウム析出に伴う内部短絡を防止することができる。
【0046】
第1のセパレータ13および第2のセパレータ14は、それぞれ、例えば、厚さ40μmのポリエチレン製多孔膜で形成されている。
【0047】
図4(a)〜(c)は、本実施形態に係る導電リード41と絶縁袋44の詳細図及び組立後の図を示したものである。
図4(a)は導電リード41、
図4(b)は絶縁袋44、
図4(c)は導電リード41を絶縁袋44に通した図となっている。絶縁袋44は絶縁性のフィルムを袋状に加工し両端を開口することでチューブ形状にしたもので、導電リード41が挿される。絶縁袋44と一体になった導電リード41の両端を正極集電部リング25および蓋ユニット30に接続することで本発明の構成を実現することが出来る。または、正極集電リング25と蓋ユニット30のどちらか一方を先に導電リード41に接続してから、絶縁袋44を導電リード41に被せ、もう一方の部材を接続する方法でも良い。
【0048】
フレキシブル且つ絶縁性と耐電解液性を備えた材料として、セパレータ等の材料として一般的なポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂が挙げられる。なお、絶縁袋44に使われるフィルムは、フレキシブルに動くことを考えると厚みが薄いほうが好ましい。上述の材料を使用する場合には、具体的な絶縁袋44の厚みは0.02mm以上0.50mm以下とするのが好ましい。絶縁袋44の厚みを0.02mm以上としたのは絶縁袋44の強度及び絶縁性を考慮したものであり、これ以上薄くなると絶縁性の確保が難しくなる。一方、絶縁袋44の厚みを0.50mm以下としたのはフレキシブル性を考慮したものであり、これ以上の厚みとすると絶縁袋44が折り曲げにくくなりフレキシブル性を確保するのが難しくなる。
【0049】
導電リード41と絶縁袋44の間には十分な隙間を持たせることで導電リード41のフレキシブル性を維持することを可能にする。つまり本発明では絶縁袋44を導電リード41との間で隙間を有して摺動可能に保持することによって、導電リード41と絶縁袋44を固着させる構造を取らないため、導電リード41及び絶縁袋44のフレキシブル性を保っている。
【0050】
図5は、本発明の実施形態であり、かしめられる前の工程途中、即ち蓋ユニット30と導電リード41との接続後、注液までの工程おける導電リード41周辺の断面図である。導電リードの端部41bは蓋ユニット30と、導電リードのもう一方の端部41cは正極集電リング25と接続されており、絶縁袋44で覆われている中央部の導電リード41はフレキシブル性を維持している。なお、導電リード41及び、蓋ユニット30を構成し導電リード41に接続される接続板35と、同じく導電リード41に接続される正極集電リング25は、何れもアルミニウム系金属を用いることで、レーザ溶接で容易に接続が可能である。接続後の蓋ユニット30は、導電リード41によって支えられてはいるが固定されていない状態である。電解液を注液する工程においては、中空の正極集電リング25および軸心15の中心部を電解液が通過して発電要素10の中に充填される。このため、フレキシブルな導電リード41に接続された蓋ユニット30は開口部上方で位置を変えることが出来、蓋ユニット30が注液工程を阻害しない。
【0051】
図6は、本発明の実施形態であり、かしめ工程における導電リード41周辺の断面図である。この工程は、電池缶2に設けられた溝部2aを蓋ユニット30で蓋をし、電池缶2及び蓋ユニット30とを、ガスケット43を介してかしめることで電池缶2内の密閉を確保する。このとき、導電リード41は正極集電リング25と蓋ユニット30との間の空間に折りたたまれるように収納される。
【0052】
導電リード41は、蓋ユニット30に対しては一方の端部41bと、正極リング25に対してはもう一方の端部41cでのみ接続されているはずであるが、かしめられた後では折り返された折り返し部41aが蓋ユニット30ないし正極集電リング25に接触する可能性がある。
【0053】
このとき、導電リード41の折り返し部41aを含む稼動部の表面が絶縁することにより接触部分での分流や電力集中を防ぐことが出来る。本発明の実施形態では導電リード41を絶縁袋44で覆っているため、絶縁リード41の稼動部の絶縁性とともにフレキシブル性を維持することが可能となる。
【0054】
なお絶縁袋44の長さL(
図4参照)は、最大で端部41bと端部41cの間の長さとなっている。絶縁袋の長さを端部41bと端部41cの間の長さとすることによって、端部41b及び41c以外の導電リード41を覆うことができ、絶縁信頼性が最も高い状態となる。
【0055】
一方で、溶接工程の関係上、生産性を考慮すると必ずしも絶縁袋の長さを端部41bと端部41cの間の長さとすることが良いわけではない。生産性と絶縁性の両立を目指すと、絶縁袋44は導電リード41の折り返し部41aを覆いつつも端部41bまで達していない長さとすることが好ましい。絶縁袋44の長さLを、折り返し部41aを覆いつつも端部41bまで達していない長さにすることによって、溶接時に端部41b及び41cと絶縁袋44とのクリランスを確保することが可能となる。そのため、溶接時に溶接がしやすくなり、生産性が向上する。また、最低限折り返し部41aが絶縁袋44で覆われていれば、絶縁袋44は導電リード41と正極集電リング25の基部25aとの間、及び折り曲げ部41aのそれぞれで固定されることになる。従って、振動による絶縁袋44のずれが抑制され、絶縁性が十分に確保される。また、導電リード41の折り返し部41aまで絶縁袋44で覆われていることによって、正極集電リング25と導電リード41が接触する恐れがなくなり絶縁信頼性が向上する。
【0056】
言い換えると、絶縁袋44の長さLは、端部41cから導電リード41の折り返し部41aまでの長さ<L<端部41cから端部41bまでの長さ、とすることが好ましい。
【0057】
<第二の実施形態>
続いて第二の実施形態について説明する。本実施形態が第一の実施形態と異なる点は、絶縁袋を、一枚の絶縁シートの端部を溶着して袋形状としたものに変更した点である。なお、第一の実施形態で用いた構成と同じ構成については、第一の実施形態で用いた図面番号と同様の図面番号を用いている。
【0058】
図7(a)〜(c)は、本発明の第二の実施形態に係る導電リード41と絶縁シート144の詳細図及び組立後の図を示したものである。
図7(a)は第一の実施形態の導電リード41と同様のものなので説明を割愛する。
図7(b)に示すように、絶縁シート144は2箇所の折り曲げ部144a1及び144a2を有しており、導電リード41を絶縁シート144で覆った後に折り返した最上部のシートの端部を熱溶着などの方法で固定することで、本発明の構成を実現できる。
図7(c)は導電リード41を絶縁シート144で覆った後の図である。絶縁シート144は絶縁シート固着部144bが設けられており、絶縁シート144の端部同士が絶縁シート固着部144bで固定されることによって絶縁袋144cとなる。
【0059】
第一の実施形態の絶縁袋44では、導電リード41を絶縁袋44に通さなければならないため、絶縁袋44の幅が大きくなってしまう。絶縁袋44の幅が大きくなった場合には、蓋ユニット30を電池缶2に組み付ける際に絶縁袋44が絶縁板34と干渉し、生産性の低下や絶縁袋44の破壊につながる可能性がある。
【0060】
本発明では絶縁シート144に2箇所の折り曲げ部で折り曲げ、絶縁シート固着部144bを導電リード41の幅広面41dと対向する部分に配置することによって絶縁袋144cを作成するする。絶縁シート固着部144bを導電リード41の幅広面41dと対向する位置に設けることによって、導電リード41から絶縁シート固着部144cがはみ出すことなく絶縁袋144cの幅を導電リード41の幅と同等の幅に調整することができる。そのため、蓋ユニット30を電池缶2に組み付ける際の絶縁袋144cと絶縁板34との干渉を防ぐことができ、生産性及び絶縁信頼性が向上する。
【0061】
なお、絶縁シート144の固定方法として粘着テープを用いても良いが、テープの厚みの分フレキシブル性が下がるため、熱溶着の方が好ましい。またこの場合、導電リード41に、正極集電リング25と蓋ユニット30を接続する通常の組立工程の後でも絶縁袋144を装着することが可能である。
【0062】
本実施形態のように一枚の絶縁シート144を用いることによって、寸法公差等で導電リードの幅が多少変更されていたとしても、絶縁シート固着部144bの固着幅で調整できるため、生産性の向上や歩留まり向上につながる。
【0063】
<第三の実施形態>
続いて第三の実施形態について説明する。本実施形態が第二の実施形態と異なる点は、絶縁シートの折り曲げ部が2箇所だったものを、折り曲げ箇所を1箇所に変更した点である。なお、第二の実施形態で用いた構成と同じ構成については、第二の実施形態で用いた図面番号と同様の図面番号を用いている。
【0064】
図8(a)〜(c)は、本発明の第三の実施形態に係る導電リード41と絶縁シート244の詳細図及び組立後の図を示したものである。
図8(a)は第一の実施形態の導電リード41と同様のものなので説明を割愛する。
図8(b)に示すように、本実施形態の絶縁シート244は、1箇所の折り曲げ部244aを有している。この絶縁シート244で導電リード41を挟み込み、その端部を熱溶着などの方法で固定することで本発明を実現できる。
図8(c)は導電リード41を絶縁シート144で覆った後の図である。絶縁シート244は絶縁シート固着部244bが設けられており、絶縁シート244の端部同士が絶縁シート固着部244bで固定されることによって絶縁袋244cとなる。
【0065】
本実施形態では第二の実施形態と異なり、折り曲げ箇所が1箇所なので導電リード41の幅広面41d上に絶縁シート固着部244bを配置することはできない。そのため、
図8(c)に示すように導電リード41の側面部41eと対向する位置に絶縁シート固着部244bが設けられる。また第二の実施形態と同様、通常の組立工程の後でも絶縁シート244の装着が可能である。
【0066】
第二の実施形態では折り曲げ部が2箇所あったため、2度の折り曲げの精度が悪いと絶縁シート144を固着する場合にずれが生じ、絶縁シートの固着が十分でない可能性があった。一方で本実施形態では、折り曲げ箇所を1箇所にすることによって2度折って発生するずれの可能性(2回折るので、ずれる可能性も2倍になる)を1度だけにすることができ、絶縁シート244の端部を固着する際のずれを抑制することが出来、生産性が向上する。なお、本実施形態では絶縁シート固着部244bを導電リード41の側面部41eと対向する位置にしか設けることが出来ないため、第二の実施形態と比較して絶縁袋244cの幅は広くなってしまう。従って、蓋ユニット30を電池缶2に組み付ける際の絶縁袋と絶縁板34との干渉という観点では第二の実施形態の方が有利になる。
【0067】
また、第二の実施形態及び第三の実施形態に共通で言えることだが、第二の実施形態及び第三の実施形態では絶縁シート固着部が設けられるため、絶縁袋の状態で硬くなる部分が発生する。そのため、フレキシブル性と言った意味では第二の実施形態及び第三の実施形態と比較して第一の実施形態の方が有利となる。
【0068】
以上、本発明についてまとめる。本発明に記載の円筒形二次電池は、軸芯(15)の周囲に正極電極(11)と負極電極(12)とをセパレータ(13、14)を介して捲回した発電要素(10)と、発電要素(10)と接続される集電リング(25)と、集電リング(25)と一端(41c)が接続され、複数枚の金属箔からなる導電リード(41)と、導電リード(41)の他端(41b)が折り返されて接続される接続板(35)を有し、導電リード(41)は絶縁袋(44、144c、244c)で覆われており、導電リード(41)と絶縁袋(44、144c、244c)との間には隙間を有する。このような構造にすることによって、フレキシブルな導電リードとフレキシブルな絶縁袋が互いに固着する構造とならないため、導電リード及び絶縁袋共にフレキシブル性の低下が無くなる。従って、振動等によって導電リードと他の部分との絶縁性が破壊される恐れが低下するため、絶縁信頼性が向上する。
【0069】
また、本発明に記載の円筒形二次電池は、絶縁袋(44、144c、244c)がオレフィン系樹脂で構成され、絶縁袋(44、144c、244c)の厚みが0.02mm以上0.50mm以下である。このような構造にすることによって、絶縁性を確保しつつもフレキシブル性を損なわない構造とすることが出来る。
【0070】
また、本発明に記載の円筒形二次電池は、絶縁袋(44、144c、244c)の長さLが、導電リード(41)が集電リング(25)と接続された一端(41c)から導電リード(41)の折り返し部(41a)までの長さより大きく、導電リード(41)が集電リング(25)と接続された一端(41c)から導電リード(41)が接続板(35)と接続された
他端(41b)までの長さより小さい。このような構造にすることによって、導電リードの折り返し部を確実に絶縁袋で保護することが可能となり、絶縁信頼性が向上する。
【0071】
また、本発明に記載の円筒形二次電池は、絶縁袋(144c、244c)が1枚の絶縁シート(144、244)からなり、絶縁シート(144、244)の端部同士が固着された絶縁シート固着部(144b、244b)を有する。このような構造にすることによって、導電リードの幅がどのようなものであったとしても対応が可能となり、生産性の向上や歩留まりの向上につながる。
【0072】
また、本発明に記載の円筒形二次電池は、導電リード(41)が幅広面(41d)及び側面部(41e)を有し、絶縁シート(144)は2箇所で折り曲げられ、導電リード(41)の幅広面(41d)と対向する位置に絶縁シート固着部(144b)が配置される。このような構造にすることによって、絶縁袋の幅がほぼ導電リードの幅とすることができる。そのため、蓋ユニットを電池缶に組み付ける際に、蓋ユニットの絶縁板が絶縁袋と干渉する恐れが低くなり、生産性及び絶縁信頼性が向上する。
【0073】
また、本発明に記載の円筒形二次電池は、導電リード(41)が幅広面(41d)及び側面部(41e)を有し、絶縁シート(244)は1箇所で折り曲げられ、導電リード(41)の側面部(41e)と対向する位置に絶縁シート固着部(244b)が配置される。このような構造にすることによって、絶縁シートの折り曲げ回数が1回で絶縁袋を作成することができるため、折り曲げに起因するずれを小さくできる。従って絶縁シートを固着する際のずれを抑制できるので、生産性が向上する。
【0074】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。