(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393607
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】シートカバー及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
B60N2/58
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-254064(P2014-254064)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-113046(P2016-113046A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151194
【弁理士】
【氏名又は名称】尾澤 俊之
(72)【発明者】
【氏名】片岡 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】知野見 勇平
【審査官】
渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−207442(JP,A)
【文献】
特開2010−184521(JP,A)
【文献】
特開2008−014361(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/203890(WO,A1)
【文献】
特開平07−052717(JP,A)
【文献】
特開2011−057061(JP,A)
【文献】
特開2003−325273(JP,A)
【文献】
特開2014−034253(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0203010(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
B60K37/00
A47C 7/00− 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートのフレームを覆って前記シートに装着されるシートカバーであって、
シートカバーは、シートクッションの底面部、シートバックの背面部、又はシートクッションの側面部に装着されるものであり、
シートカバーが前記シートに装着される際に前記シートに固定される固定部と、
前記固定部とは別に設けられており、シートカバーが前記シートに装着される際に前記フレームに当接する当接部と、
を備え、
前記当接部の前記フレームとの対向面には、シートカバーが前記シートに装着される際に前記当接部が前記フレームに当接することによって圧潰する変形部がそれぞれ設けられており、
前記変形部は、シートカバーが前記シートに装着された際に前記フレームに密接しているシートカバー。
【請求項2】
請求項1記載のシートカバーであって、
前記変形部は、前記当接部の対向面に設けられた凸部であるシートカバー。
【請求項3】
請求項2記載のシートカバーであって、
前記当接部の対向面は、前記フレームの少なくとも一部を収容する凹形状に形成されているシートカバー。
【請求項4】
請求項3記載のシートカバーであって、
前記当接部は板状に形成され、前記当接部の対向面は該当接部の縁面とされており、
前記当接部の対向面には、前記変形部と、前記当接部の縁に沿って前記変形部を間に挟む一対の凹部が設けられているシートカバー。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項記載のシートカバーが装着された車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートカバー及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたシートカバーは、シートバックが傾倒可能なリクライニングシートにおいて、リクライニング装置及びフレームを覆ってシートクッションに装着されるカバーである。リクライニング装置及びフレームに対向するカバーの内面には複数のリブが設けられており、リブがシートのフレームに当接された状態で、カバーはフレームに締結されている。
【0003】
特許文献2に記載されたシートカバーは、シートクッションの左右一対のサイドフレームを連結する上下二本のパイプからなるリヤフレームを覆ってシートクッション下面部に装着されるカバーである。リヤフレームに対向するカバーの内面には、上側パイプが嵌り込む複数の円弧状の第1リブ、及び下側パイプを下方から支持する複数の第2リブが設けられており、第2リブが下側パイプに当接され、そして上側パイプが第1リブに嵌め込まれて、カバーはフレームに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−52717号公報
【特許文献2】特開2014−34253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シートカバーは一般に樹脂で形成されている。特許文献1や特許文献2に記載されたシートカバーは、いずれもカバーの内面に設けられたリブがシートのフレームに当接されてシートに装着されているが、例えば樹脂のヒケによる成形誤差等に起因して一部のリブとフレームとの間に隙間が生じる虞がある。
【0006】
フレームに当接されるリブとフレームとの間に隙間があると、フレームに対するカバーのガタつきが生じ、リブとフレームとの衝突による打音が発生する虞がある。特に車両用シートなど振動が作用しやすいシートでは、振動に起因して打音が発生する可能性が高まる。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、フレームに対するシートカバーのガタつきを抑制し、打音を軽減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のシートカバーは、シートのフレームを覆って前記シートに装着されるシートカバーであって、
シートカバーは、シートクッションの底面部、シートバックの背面部、又はシートクッションの側面部に装着されるものであり、シートカバーが前記シートに装着される際に前記シートに固定される固定部と、前記固定部とは別に設けられており、シートカバーが前記シートに装着される際に前記フレームに当接する当接部
と、を備え、前記当接部の前記フレームとの対向面には、
シートカバーが前記シートに装着される際に前記当接部が前記フレームに当接する
ことによって圧潰する変形部がそれぞれ設けられて
おり、前記変形部は、シートカバーが前記シートに装着された際に前記フレームに密接している。
【0009】
また、本発明の一態様の車両用シートは、前記シートカバーが装着されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フレームに対するシートカバーのガタつきを抑制し、打音を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態を説明するための、車両用シートの一例の構成を示す図である。
【
図2】
図1の車両用シートのシートカバーの構成を示す図である。
【
図3】
図2のシートカバーの当接部の一例の構成を示す図である。
【
図4】シートカバーが車両用シートに装着された状態での
図3の当接部の状態を示す図である。
【
図5】
図2のシートカバーの当接部の他の例の構成を示す図である。
【
図6】
図5において破線円VIで囲まれた部分を拡大して示す図である。
【
図7】シートカバーが車両用シートに装着された状態での
図5の当接部の状態を示す図である。
【
図8】
図5の当接部の変形例の構成を示す図である。
【
図9】シートカバーが車両用シートに装着された状態での
図8の当接部の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び
図2は、本発明の実施形態を説明するための、車両用シートの一例の構成を示す。
【0013】
図1に示す車両用シート1は、座面部分を構成するシートクッション2と、背もたれ部分を構成するシートバック3とを備える。シートクッション2及びシートバック3は、例えばウレタンフォームなどの発泡材からなるクッションパッド、及びクッションパッドを支持するフレームをそれぞれ有し、クッションパッドやフレームは、例えば塩化ビニールなどの表皮材で適宜包被されている。
【0014】
車両用シート1は、シートのフレームを覆ってシートに装着されるシートカバー4をさらに備える。図示の例では、シートカバー4は、シートクッション2のフレームを覆ってシートクッション2の底面部に装着されている。
【0015】
図2は、シートカバー4の構成を示す。
【0016】
シートカバー4は、樹脂からなり、枠状に形成されているシートクッション2のフレーム10の外側に少なくとも部分的に張り出す大きさを有するパネル状に形成されている。
【0017】
シートカバー4には、シートカバー4の各所に分散して複数の固定部11が設けられている。これらの固定部11が、締結等の適宜な手段により、フレーム10やフレーム10に一体に取り付けられているシートクッション2の構造材に固定され、シートカバー4はシートクッション2の底面部に装着される。
【0018】
そして、フレーム10に対向するシートカバー4の内面には、シートカバー4の縁部に沿って延びる枠状の側壁部12と、側壁部12の内側で側壁部12に沿って間隔をあけて配置された複数の当接部13とが設けられている。
【0019】
シートカバー4がシートクッション2の底面部に装着された際には、シートカバー4は、フレーム10を側壁部12の内側に収めてフレーム10を覆い、側壁部12の内側に配置された複数の当接部13をフレーム10に当接させる。
【0020】
図3は、当接部13の一例の構成を示す。
【0021】
当接部13のフレーム10との対向面13aには、フレーム10との当接によって圧潰可能な変形部14が設けられている。
【0022】
当接部13は、図示の例では、リブ状(板状)に形成されてシートカバー4の内面に立設されており、当接部13の縁面がフレーム10との対向面13aとされている。
【0023】
変形部14は、対向面13aに設けられた凸部とされており、図示の例では、当接部13の縁に沿って延びる片状の突起で構成されている。
【0024】
対向面13a上の凸部である変形部14は、突出方向と交差する側方には支持されておらず、変形部14の周囲には変形部14を構成する材料の逃げ場所が設けられる。それより、変形部14はフレーム10との当接によって比較的容易に変形して圧潰される。
【0025】
シートカバー4がシートクッション2に装着されるのに伴い、当接部13はフレーム10にそれぞれ当接し、
図4に示すように、当接部13の各々の変形部14がフレーム10との当接によって適宜圧潰され、当接部13の各々とフレーム10とが密接する。それにより、フレーム10に対するシートカバー4のガタつきが抑制され、当接部13とフレーム10との衝突による打音が抑制される。
【0026】
なお、当接部13はシートカバー4に少なくとも一つ設けられていればよく、また、当接部13の形状はリブ状に限定されず、例えばボス状(柱状)であってもよい。変形部14は、フレーム10との当接によって圧潰可能である限りにおいて特に限定されず、例えば点状の突起であってもよく、当接部13の各々に複数設けられていてもよい。
【0027】
図5及び
図6は、当接部13の他の例の構成を示す。
【0028】
図5及び
図6に示す例は、当接部13のフレーム10との対向面13aが、フレーム10の少なくとも一部を収容する凹形状に形成されている。図示の例では、フレーム10の断面の外形が略円形状であり、対向面13aは、フレーム10の断面外形に倣う略円弧状に形成されている。
【0029】
変形部14は凹形状の対向面13aの底部に設けられており、さらに対向面13aの底部には、当接部13の縁に沿って変形部14を間に挟む一対の凹部15が設けられている。変形部14は、一対の凹部15に挟まれることにより、対向面13aの底部で、これらの凹部15に対して凸部とされている。凸部である変形部14は、上記のとおり、フレーム10との当接によって比較的容易に変形して圧潰される。
【0030】
シートカバー4がシートクッション2に装着されるのに伴い、当接部13はフレーム10にそれぞれ当接し、
図7に示すように、当接部13の各々の変形部14がフレーム10との当接によって適宜圧潰され、当接部13の各々とフレーム10とが密接する。それにより、フレーム10に対するシートカバー4のガタつきが抑制され、当接部13とフレーム10との衝突による打音が抑制される。
【0031】
そして、本例では、対向面13aが凹形状に形成されており、フレーム10の少なくとも一部が対向面13aによって形成される凹部に収容されることから、当接部13におけるフレーム10の安定性が高まる。さらに、圧潰された変形部14を構成する材料が変形部14に隣設されている凹部15に逃げ、凹部15がフレーム10の外形に倣って埋められるので、当接部13におけるフレーム10の安定性が一層高まる。それにより、フレーム10に対するシートカバー4のガタつきを一層抑制することができる。
【0032】
なお、凹形状に形成された対向面13aにおける変形部14の設置位置は底部に限られるものではない。例えば、
図8及び
図9に示すように、凹形状に形成された対向面13aの開放側の端部に変形部14を設けることもできる。この場合、対向面13aの両端部の各々に変形部14を設けることが好ましい。
【0033】
上述した車両用シート1及びシートカバー4の構成は例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、適宜な変形や変更を施すことが可能である。
【0034】
例えば、シートクッション2の底面部に装着されるシートカバー4を例に本発明を説明したが、本発明は、シートバック3の背面部に装着されるシートカバーや、リクライニングシートにおいてシートクッション2の側面部に装着されるシートカバーなどにも適用可能である。
【0035】
以上、説明したとおり、本明細書に開示されたシートカバーは、シートのフレームを覆って前記シートに装着されるシートカバーであって、前記フレームに当接する当接部を備え、前記当接部の前記フレームとの対向面には、前記フレームとの当接によって圧潰可能な変形部がそれぞれ設けられている。
【0036】
また、本明細書に開示されたシートカバーは、前記変形部が、前記当接部の対向面に設けられた凸部である。
【0037】
また、本明細書に開示されたシートカバーは、前記当接部の対向面が、前記フレームの少なくとも一部を収容する凹形状に形成されている。
【0038】
また、本明細書に開示されたシートカバーは、前記当接部が板状に形成され、前記当接部の対向面は該当接部の縁面とされており、前記当接部の対向面には、前記変形部と、前記当接部の縁に沿って前記変形部を間に挟む一対の凹部が設けられている。
【0039】
また、本明細書に開示された車両用シートは、前記シートカバーが装着されている。
【符号の説明】
【0040】
1 車両用シート
2 シートクッション
3 シートバック
4 シートカバー
10 フレーム
13 当接部
13a 対向面
14 変形部