特許第6393608号(P6393608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393608
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】浴槽用手摺り
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/12 20060101AFI20180910BHJP
   E04F 11/18 20060101ALI20180910BHJP
   A61H 33/00 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   A47K3/12
   E04F11/18
   A61H33/00 310C
【請求項の数】19
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-254693(P2014-254693)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-112275(P2016-112275A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】大河原 由梨
(72)【発明者】
【氏名】土井 健史
(72)【発明者】
【氏名】花井 健祥
(72)【発明者】
【氏名】石井 賢俊
【審査官】 中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3186169(JP,U)
【文献】 実開昭56−019974(JP,U)
【文献】 実用新案登録第2564437(JP,Y2)
【文献】 実開昭60−077490(JP,U)
【文献】 特開平10−057265(JP,A)
【文献】 特開平10−179438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02− 4/00
A61H 33/00−37/00
E04F 11/00−11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽側壁の上面に載置される左方側基材、右方側基材、および前記左方側基材と前記右方側基材とを連結する後方側基材とから構成されている支持基材と、そして
前方端部、左方端部および右方端部を有しており、前記支持基材に回動自在に取り付けられている回動部材と
からなる浴槽用手摺りにおいて、
前記回動部材は把持手段を含んでおり、そして
前記把持手段は、前記回動部材を閉じた時、前記回動部材の前記左方端部が前記左方側基材によって支持され、そして前記回動部材の前記右方端部が前記右方側基材によって支持されることにより、前記左方側基材と前記右方側基材との間を横断するように配置されており、
前記支持基材の前記左方側基材の内側には、回動部材を下方から支持するための左方突設部であって、回動部材を閉じた時、前記左方突設部の前方縁部は前記回動部材の前記左方端部よりも後方に位置するように配置される左方突設部が形成されており、そして前記支持基材の前記右方側基材の内側には、回動部材を下方から支持するための右方突設部であって、回動部材を閉じた時、前記右方突設部の前方縁部が前記回動部材の前記右方端部よりも後方に位置するように配置されている右方突設部が形成されている浴槽用手摺り。
【請求項2】
前記左方側基材の下面には、前記浴槽側壁の内面に当接させるためのストッパーが前記左方側基材の横幅方向にスライド自在に取り付けられており、そして
前記右方側基材の下面には、前記浴槽側壁の内面に当接させるためのストッパーが前記右方側基材の横幅方向にスライド自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の浴槽用手摺り。
【請求項3】
前記左方側基材および前記右方側基材は板状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の浴槽用手摺り。
【請求項4】
前記後方側基材は板状であり、そして前記左方側基材と前記右方側基材と一体的に結合されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項5】
前記支持基材は、平面視において略コの字形状を有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項6】
前記回動部材は、板状部材からできていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項7】
前記回動部材は、前記回動部材を閉じた時、前記支持基材の内側に配置されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項8】
前記回動部材は、前記回動部材を閉じた時、前記支持基材との間に実質的に隙間が形成されないことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項9】
前記回動部材の上面は、前記回動部材を閉じた時、前記支持基材の上面と略面一となるように形成されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項10】
前記回動部材の前記前方端部の前記左方端部側には、前記回動部材の前記前方端部の中央部および前記左方側基材の前方縁部よりも後方へ湾曲した凹部が形成されており、そして
前記回動部材の前記前方端部の前記右方端部側には、前記回動部材の前記前方端部の中央部および前記右方側基材の前方縁部よりも後方へ湾曲した凹部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項11】
前記回動部材を閉じた時、前記回動部材の前方端部の中央部、前記左方側基材の前方縁部および前記右方側基材の前方縁部は、略直線上に並ぶように配置されることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項12】
前記把持手段は、平面視において、略円形状のノブであることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項13】
前記ノブは、前記回動部材の上面に取り付けられていることを特徴とする請求項12に記載の浴槽用手摺り。
【請求項14】
前記ノブの上面には、使用者の手の平を支持するための略平坦な支持面が形成されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の浴槽用手摺り。
【請求項15】
前記ノブは第1の係合手段を備えており、前記回動部材の上面に複数の第2の係合手段を備えており、そして
前記ノブは、前記第1の係合手段と係合させる前記第2の係合手段を選択することにより、前記ノブの取り付け位置を移動できることを特徴とする請求項12ないし14のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項16】
前記ノブは、前記回動部材の上面にスライド可能に取り付けられていることを特徴とする請求項12ないし14のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項17】
前記ノブは、前記回動部材の前記前方端部寄りの位置であって、且つ前記回動部材の前記左方端部寄りの位置および/または前記右方端部寄りの位置に取り付けられていることを特徴とする請求項12ないし16のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項18】
前記把持手段は、棒状のハンドルであることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の浴槽用手摺り。
【請求項19】
前記ハンドルは、前記回動部材の上面に取り付けられていることを特徴とする請求項18に記載の浴槽用手摺り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ高齢者や要介護者などの入浴を補助にするために浴槽に着脱自在に固定される浴槽用手摺りに関し、特に浴槽を横断するように配置された把持手段を、浴槽の側壁の上面に載置および固定された支持基材へ回動自在に取り付けることにより、浴槽の側壁をクランプすることなく、浴槽の側壁に着脱自在に簡単且つ強固に取り付けられる浴槽用手摺りに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高齢者や要介護者などの身体の不自由な人が浴槽に出入りする際に身体を容易に支持することができるように、浴槽の側壁へ着脱自在に取り付けることができる浴槽用手摺りが知られている(特許文献1,2)。
【0003】
しかしながら、このタイプの浴槽用手摺りは、押圧板等を用いて浴槽側壁をクランプすることにより浴槽の側壁へ固定するものであるため、浴槽の側壁が中空構造であったり、或いは浴槽側壁の外壁が板状の化粧版からできているような場合は、浴槽用手摺りを浴槽の側壁に強固に固定することができないという問題があった。また、このタイプの浴槽用手摺りは浴槽の洗い場側にのみ設置され、浴槽を横断するように設置されるものではないので、浴槽の外から中へ又は中から外へ移動する使用者の動作を最初から最後まで十分に補助できないという問題があった。
【0004】
また、他方では、高齢者や要介護者などの身体の不自由な人の入浴を容易にするために、浴槽の開口部の一部に設置されるバスボードが知られている(特許文献3〜6)。このようなバスボードは、高齢者や要介護者などの使用者が入浴する際に浴槽の開口部の一部に掛け渡しておき、使用者がバスボードへ腰を掛けたままの状態で浴槽の外から中へ又は中から外へ移動できるようすることにより、浴槽への出入りを容易にしたものである。
【0005】
しかしながら、このタイプのバスボードは、上述の浴槽用手摺りのように、立位の状態で浴槽の側壁を跨ごうとする高齢者などによって使用されることが全く想定されていないため、使用者が大きく腰を屈めたり、手を大きく前方へ差し伸ばすなどして不自然な姿勢をとらなければ、浴槽用手摺りとして使用することができないという問題があった。
【0006】
さらに、使用者が無理をして上記のバスボードを浴槽用手摺りとして使用したとしても、手が滑り易かったりするなど危険であり、さらに、浴槽の開口部の一部に掛け渡しておいたバスボードが邪魔となって使用者が湯船に浸かるのを妨げてしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−246691
【特許文献2】特開2014−147851
【特許文献3】特開平8−196452号公報
【特許文献4】特開2003−24409号公報
【特許文献5】実用新案登録第3186169号公報
【特許文献6】実用新案登録第2564437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ高齢者や要介護者などが身体の動きを最初から最後まで補助することができるように浴槽に設置される浴槽用手摺りであって、浴槽の側壁をクランプすることなく浴槽に確実に固定することができ、そして使用者が湯船に浸かる際にもその妨げとならない浴槽用手摺りを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、使用者が立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ際の動作、浴槽における浴槽用手摺りの取り付け位置、その固定方法、浴槽用手摺りの形状及び構造などについて鋭意研究を重ねた結果、浴槽を横断するように配置された把持手段を、浴槽の側壁の上面に着脱自在に固定された支持基材へ回動自在に取り付けることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、浴槽側壁の上面に載置される左方側基材、右方側基材、および前記左方側基材と前記右方側基材とを連結する後方側基材とから構成されている支持基材と、そして前方端部、左方端部および右方端部を有しており、前記支持基材に回動自在に取り付けられている回動部材とからなる浴槽用手摺りにおいて、前記回動部材は把持手段を含んでおり、そして前記把持手段は、前記回動部材を閉じた時、前記回動部材の前記左方端部が前記左方側基材によって支持され、そして前記回動部材の前記右方端部が前記右方側基材によって支持されることにより、前記左方側基材と前記右方側基材との間を横断するように配置されることを特徴とする浴槽用手摺りが提供される。
【0011】
ここで、本願明細書で使用する用語について説明する。本願明細書では、「前方」とは浴槽用手摺りの回動部材の自由端側に相当し、「後方」とは浴槽用手摺りの回動部材の支持端側に相当する。したがって、「左方」とは回動部材の前方と後方とを結ぶ方向と直交する方向の一の端部側に相当し、「右方」とは左方の反対側に位置する他の端部側に相当する。本発明の浴槽用手摺りは基本的に浴槽の片隅に寄せて固定されるため、浴槽用手摺りの前方は浴槽の内側方向に相当し、浴槽用手摺りの後方は浴槽の外側方向に相当する。また、浴槽用手摺りの左方は浴槽の洗い場側または浴室の側壁側に相当し、浴槽用手摺りの左方は浴室の側壁側または浴槽の洗い場側に相当する。
【0012】
本発明の浴槽用手摺りに使用される材料は、各部品に求められる強度を有するものであれば特に制限されるものではなく、プラスチック材料、金属材料、木製材料、繊維材料又はそれらを組み合わせた複合材料などを使用することができる。ただし、浴室内は高温多湿の過酷な腐食環境であるので、耐腐食性が高く、しかも軽量であるプラスチック材料を主要材料として浴槽用手摺りへ用いることが好ましい。
【0013】
支持基材は、浴槽用手摺りの腰掛け部分の一部を形成すると共に、浴槽用手摺りを浴槽の側壁に固定し、そして後述する回動部材を回動自在に支持するために機能する。このため、支持基材は浴槽側壁の上面に載置できるものであれば、板状、棒状またはそれらを組み合わせた形状を有するものを使用することができる。ただし、浴槽用手摺りを浴槽側壁に設置した際の安定性、浴槽側壁の上面へのダメージ回避、使用者の利便性などを考慮すると、支持基材は板状であることが好ましく、さらに浴槽側壁の上面に載置した時、平面視において浴槽側壁の上面を隠すように完全に覆うことができる幅を有していることが好ましい。
【0014】
また、支持基材は浴槽側壁の上面形状に沿うように配置できる形状を有していることが好ましく、そのため支持基材は、少なくとも浴槽の左方側壁に載置される左方側基材と、右方側壁に載置される右方側基材とを備えていることが好ましい。この場合、左方側基材および右方側基材は、浴槽側壁の上面に載置した時、平面視において浴槽の左方側壁の上面および右方側壁の上面を隠すように完全に覆うことができる幅を有していることが好ましい。
【0015】
一般に浴室の側壁に設けられた手摺りは、浴槽の蓋の取り付け/取り外し或いは開け閉めを容易にするため、浴槽側壁の上面を越えて浴室の側壁から浴槽側壁の内側まで突出させて設置されることが殆どない。このため、浴槽用手摺りを浴槽側壁の上面に載置した時、支持基材、または左方側基材と右方側基材が平面視において浴槽側壁の上面を隠すように完全に覆うことができる幅を有していると、その内側に配置される浴槽用手摺りの回動部材は、浴槽側壁に隣接する浴室側壁に取り付けられた手摺りと干渉することなく、自由に開閉することができるようになる。また、支持基材、または左方側基材と右方側基材が浴槽側壁の上面を覆うことができる幅を有していると、回動部材は浴槽側壁の上面と当接することがなくなるので、繰り返し開閉しても浴槽側壁の上面を傷付けることもなくなる。
【0016】
左方側基材と右方側基材は、浴槽用手摺りを浴槽へ取り付けた時の剛性を向上させるため、後方側基材によって相互に連結されていることが好ましい。すなわち、浴槽側壁の片隅の上面は、通常、コの字形又はU字形の形状を有しているため、左方側基材および右方側基材も浴槽側壁の上面形状に合わせて、後方側基材によって略コの字形または略U字形を形成するように連結されることが好ましい。
【0017】
また、左方側基材と右方側基材を後方支持基材を介して連結した場合、左方側基材、右方側基材および後方側基材の各基材は、浴槽側壁の上面に載置できるものであれば、それぞれに板状、棒状またはそれらを組み合わせた形状を有するものを選択することができる。例えば、プラスチック材料からなる板状の左方側基材と右方側基材を、金属材料からなる棒状の後方側基材によって連結して支持基材を構成することができる。例えば、板状の左方側基材と右方側基材を板状の後方側基材によって連結することで、同じプラスチック材料からなる支持基材として一体成形することもできる。
【0018】
なお、後方側基材は左方側基材および右方側基材とは異なり、主に左方側基材と右方側基材を連結することによって支持基材の強度を向上させるために機能するものであるので、平面視において、必ずしも浴槽の後方側壁の上面を隠すように完全に覆うことができる幅を有している必要はない。
【0019】
支持基材の後方側基材には、前方端部、左方端部および右方端部を有している回動部材が回動自在に取り付けられる。また、回動部材は把持手段を含んでおり、そして把持手段は、回動部材を閉じた時、回動部材の左方端部が左方側基材によって支持され、そして回動部材の右方端部が右方側基材によって支持されることにより、浴槽の左方側壁に固定された左方側基材と右方側壁に固定された右方側基材との間、すなわち浴槽の左方側壁と右方側壁との間を横断するように配置される。
【0020】
このように、本発明では、支持基材や回動部材、或いは回動部材に取り付けられた把持手段は、浴槽の外部(洗い場)から浴槽の内部、浴槽の外部(洗い場)とは反対側に位置する浴槽側壁まで配置される。このため、本発明の浴槽用手摺りの使用者は、立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ際は浴槽用手摺りと向き合いながら、浴槽の外部(洗い場)から、浴槽の内部、浴槽の外部(洗い場)とは反対側に位置する浴槽側壁に至るまでの間、連続して浴槽用手摺りの把持手段を掴んだり、或いは回動部材や支持基材へ手を載置することができるので、自己の身体を浴槽用手摺りによって支えながら容易に浴槽への出入りを行うことができるようになる。
【0021】
特に本発明の浴槽用手摺りは、特許文献1,2に記載されているような従来のタイプの浴槽用手摺りとは異なり、浴槽を横断するように浴槽の外部(洗い場)からその反対側に位置する浴槽側壁に至るまで配置されるので、使用者は、浴槽用手摺りへアクセスする位置や方向を選ぶことなく自由に浴槽用手摺りへアクセスすることができる。このため、使用者は、自己の肩幅またはそれ以上に広げた両手、両腕を使って本発明の浴槽用手摺りを掴んだり手を添えたりすることができ、立位の状態で容易に浴槽の側壁を跨ぐことができるようになる。また、本発明の浴槽用手摺りは、浴槽の開口部に配置された回動部材を跳ね上げることができるので、入浴中の使用者の邪魔になることがない。
【0022】
本発明の浴槽用手摺りは、左方側基材の下面に、左方側基材の横幅方向にスライド自在であり、且つ浴槽側壁の内面に当接させることができる左方ストッパーと、そして右方側基材の下面に、右方側基材の横幅方向にスライド自在であり、且つ浴槽側壁の内面に当接させることができる右方ストッパーを備えていることが好ましい。
【0023】
ストッパーは、左方側基材の下面または右方側基材の下面において横幅方向にスライド自在に移動させることができ、所定の位置で固定できるものであれば、その構造は特に限定されるものではない。例えば、特許文献3〜5に記載されているストッパーを本発明の浴槽用手摺りのストッパーとして転用することができる。この結果、本発明の浴槽用手摺りは、左方ストッパーおよび右方ストッパーを浴槽側壁の内面に当接させることにより、両ストッパーの摩擦力によって浴槽用手摺りの支持基材を浴槽の側壁へ簡単且つ強固に取り付けることができるので、浴槽の側壁をクランプすることなく、浴槽および浴槽側壁へ着脱自在に確実に取り付けることができる。
【0024】
本発明の浴槽用手摺りでは、回動部材は板状部材からできていることが好ましい。回動部材が板状部材からできていると、本発明の浴槽用手摺りを浴槽の開口部の一部に取り付けることにより、使用者は、浴槽用手摺りの回動部材などへ腰を掛けたままの状態で浴槽の外から中へ又は中から外へ移動することができるようになり便利である。
【0025】
このため、回動部材を、閉じた時、例えば左方側基材の内側および右方側基材の内側に突設させた棚板などによって支持すれば、支持基材の内側に配置されるように支持基材へ取り付けることもできる。この場合、回動部材と、左方側基材および右方側基材は、連続した上面を形成することができるので、浴槽用手摺りへのアクセス性がさらに向上し、使用者は浴槽用手摺りにおいて手で触れる位置や方向を選ぶことなく容易に浴槽用手摺りへアクセスすることができるようになる。
【0026】
また、回動部材を支持基材の内側に配置されるように取り付けた場合、回動部材を閉じた時、回動部材と支持基材との間に実質的な隙間が生じないようにすることで、すなわち、使用者の指などが挟まれるような隙間が形成されないようにすることで、使用者が浴槽用手摺りへアクセスする際の安全性を向上させることができる。
【0027】
さらに、本発明の浴槽用手摺りでは、回動部材の上面は、回動部材を閉じた時、支持基材の上面と略面一となるように形成させてもよい。
【0028】
回動部材を閉じた時、支持基材の上面と回動部材の上面が略面一となるように形成されていると、浴槽用手摺りへのアクセス性がさらに向上すると共に、使用者は手の平や臀部を滑らすように浴槽用手摺りの上面上を移動させることができるようになるので、浴槽への出入りがより安全且つ容易になる。
【0029】
また、回動部材の前方端部の中央部、左方側基材の前方縁部および右方側基材の前方縁部は、回動部材を閉じた時、略直線上に並ぶように配置されていることが好ましい。回動部材の左右凹部以外の前方端部と左方側基材および右方側基材の前方縁部が略直線上に並ぶように配置されていると、矩形状の汎用の浴槽用の蓋を密接させて容易に並べることができるようになるので、本発明の浴槽用手摺りを浴槽の蓋の一部としても使用することができるようになる。
【0030】
また、本発明の浴槽用手摺りでは、回動部材の前方端部の左方端部側には、回動部材の前方端部の中央部および左方側基材の前方縁部よりも後方へ湾曲した凹部を形成させ、回動部材の前方端部の右方端部側には、回動部材の前方端部の中央部および右方側基材の前方縁部よりも後方へ湾曲した凹部を形成させてもよい。
【0031】
回動部材の前方端部は、その左右端部において中央部よりも後方へ湾曲した凹部を有しているので、使用者は不自然な姿勢をとって必ずしも目視する必要はなく、手の平の感触等によって回動部材の左右端部の位置(凹部)を確認することができる。また、凹部が、使用者の手の平が納まる大きさに切り欠かれていると、使用者は、回動部材を開閉する時、手の平が自然と回動部材の凹部へ誘導されるので、回動部材と浴槽側壁との間または回動部材と支持基材との間に手を挟まれることなく安全に回動部材を開閉することができる。
【0032】
このため、浴槽用手摺りの左方側基材および右方側基材の内側には、回動部材を閉じた時に下方から支持するための左方棚部および右方棚部が内側に向けて突設されていることが好ましい。また、左方棚部の前方縁部は、回動部材を閉じた時、回動部材の凹部における前方端部と面一となるか又は後方に位置するように配置されており、そして右方側基材の前方縁部は、回動部材を閉じた時、回動部材の凹部における前方端部と面一となるか又は後方に位置するように配置される。
【0033】
特に回動部材を閉じた時、左方棚部の前方縁部および右方棚部の前方縁部が、それぞれに回動部材の凹部よりも後方に位置するように配置されていると、回動部材を掴む使用者の手が、凹部において回動部材の裏面へまで回りこんでいる場合であっても、使用者の手が回動部材と左方棚部との間、回動部材と右方棚部との間に挟み込まれるのを効果的に防止することができる。
【0034】
回動部材は、前方端部の他、さらに前方端部と略直行する向きに、互いに対向する略直線状の左方端部と右方端部を備えていることが好ましい。浴槽用手摺りの支持基材、または左方側基材と右方側基材が浴槽側壁の上面を覆うことができる幅を有していると、回動部材が板状である場合、回動部材の左方端部および右方端部は支持基材の内縁に沿うように形成されるので、回動部材を閉じた時、回動部材の左方端部および右方端部が支持基材の内側に配置されるように取り付けられる。このため、回動部材の左方端部および右方端部は、浴槽側壁に隣接する浴室側壁に取り付けられた手摺りと干渉することなく、回動部材を自由に開閉することができるようになる。
【0035】
また、浴槽用手摺りの回動部材は、浴槽用手摺りを浴槽側壁の上面に取り付けた時、平面視において浴槽側壁の左方側壁の上面及び/又は右方側壁の上面と重なり合わない位置に配置することもできる。一般に浴室の側壁に設けられた手摺りは、蓋の開け閉めを容易にするため、浴槽側壁の上面を越えて浴室の側壁から浴槽側壁の内側まで突出させて設置されることが殆どない。このため、浴槽用手摺りを浴槽側壁の上面に取り付けた時、回動部材を平面視において浴槽側壁の左方側壁の上面及び/又は右方側壁の上面と重なり合わない位置に配置すると、回動部材は、浴槽側壁に隣接する浴室側壁に取り付けられた手摺りと干渉することなく、自由に開閉することができるようになる。また、回動部材は浴槽側壁の上面と当接することがなくなるので、繰り返し開閉しても浴槽側壁の上面を傷付けることもなくなる。
【0036】
回動部材の回動手段は蝶番、ボールジョイントなど周知技術を採用することができ、特に制限はない。また、回動部材は支持基材の中の後方側基材へ取り付けてもよく、或いは回動部材をその両側から左方側基材と右方側基材によって挟み込むように左方側基材と右方側基材へ回動可能に支持させてもよい。
【0037】
本発明の浴槽用手摺りは、把持手段として、回動部材の上面に使用者の手の平を支持するための略平坦な支持面が形成されているノブを備えていることが好ましい。
【0038】
浴槽用手摺りは、高齢者や要介護者などの身体の不自由な人が浴槽の側壁を立位の状態で跨ぐ際に使用される。この場合、使用者は浴槽用手摺りと向き合い、浴槽用手摺りの上面に手を置いて浴槽の側壁を跨ぐことになる。このため、浴槽用手摺りの上面にノブを設けておくと、使用者はノブに手を添えることで自己の体重の一部を確実に浴槽用手摺りへ預けることができるようになるので、安全且つ容易に立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐことができるようになる。なお、本発明の浴槽用手摺りは、回動部材が板状である時は、浴槽の開口部の一部に掛け渡しておき、高齢者や要介護者などの身体の不自由な人が浴槽用手摺りへ腰を掛けたままの状態で浴槽の外から中へ又は中から外へ移動するために使用することもできる。
【0039】
このため、ノブの上面には略平坦な支持面が形成されていることが好ましい。高齢者や要介護者などは十分な握力を有していない場合が多いので、ノブの上面に略平坦な支持面を設けておくと、使用者はノブの支持面に手の平、手の甲または握り拳を置いて或いはノブを軽く握るだけで、手を滑らせることなく自己の体重の一部を浴槽用手摺りへ預けることができるようになる。この結果、使用者はより安全且つより簡単に立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐことができるようになる。このため、ノブは平面視において略円形であることが好ましい。ノブの上面の形状やノブ全体の形状を平面視において略円形とすることにより、使用者はどの方向からも簡単にノブへアクセスすることができるようになり、場所を選ばず、自己の体重の一部を浴槽用手摺りへ預けることができるようになる。
【0040】
また、ノブの支持面には、使用者の手の平、手の甲または握り拳を安定して支え易くするために、側面から中央に掛けて凹んだ凹部が形成されていてもよい。また、ノブの支持面に水分が溜まるのを嫌う場合は、側面から中央へ向けて膨らんだ凸部が形成されていてもよい。
【0041】
ノブの支持面を、側面から中央付近へ向けて凹んだ形状とした場合は、ノブの支持面に水分が溜まるのを防止するための排水孔や排水溝を設けることが好ましい。特にノブの支持面に排水溝を設けた場合は、側面から中央付近へ向けて膨らんだ底面を有する溝部を少なくとも1つ設けることが好ましい。この場合、ノブの支持面に溜まった水分は溝部へ誘導され、そして支持面に溜まった水分は溝部を介してノブの中央付近から側面の開口へ排水される。また、溝部は、使用者がノブの支持面に手の平、手の甲または握り拳を置いた時、それらが支持面上で滑るのを防止するためにも機能する。このため、溝部はノブの支持面に格子状または放射状等に複数設けてもよい。
【0042】
ノブは、使用者の手によりアクセスされるグリップ部と、グリップ部を回動部材の上面に取り付けるための支柱部とから構成されており、そしてグリップ部における水平断面の最大断面積は、支柱部における水平断面の最大断面積よりも大きいことが好ましい。この場合、上述のノブの上面に形成された支持面は、グリップ部の上面と一致している。
【0043】
ノブをグリップ部と支柱部から構成し、そしてグリップにおける水平断面の最大断面積を支柱部における水平断面の最大断面積よりも大きくすると、握力の十分でない使用者であってもグリップ部の裏面に簡単に指を引っ掛けることができるので、より安定した状態で自己の体重の一部をグリップ部へ預けることができるようになる。
【0044】
また、本発明の浴槽用手摺りでは、グリップ部は1つの支柱部を介して浴槽用手摺りの上面に取り付けられていることが好ましい。グリップ部を1つの支柱部で支えると、使用者はグリップ部へアクセスする位置を選ぶことなく、どの方向からもより簡単にグリップ部を掴んだり或いはグリップ部の上に握り拳などを置いて、自己の体重の一部をグリップ部へ預けることができると共に、ノブ全体の強度も向上し、使用者による安全な使用が保証される。
【0045】
また、グリップ部の外周部には、使用者が指を掛けるための略同一幅の側面を設け、そしてグリップ部の側面は連続した曲面によって支持面と連結させることが好ましい。グリップ部の外周部に略同一幅の側面が形成されていると、使用者はどの方向からでもグリップ部を容易に掴むことができるようになり、また、グリップ部の側面が連続した曲面によって支持面と連結されていると、使用者の手の平に対するグリップ部のフィット性も向上する。このため、グリップ部の側面は略同一幅を有していれば、側面視において略平坦な形状を有していても又は外側へやや膨らんだ形状を有していてもよい。
【0046】
ノブは、浴槽用手摺りの回動部材の前方端部寄りの位置であって、且つ回動部材の左方端部寄りの位置および/または右方端部寄りの位置に取り付けられていることが好ましい。例えば使用者が浴槽用手摺りを主に座位の状態で移動するために使用するのであれば、ノブは回動部材の前方端部寄りの位置であって洗い場側とは反対側の位置に取り付けられているのが好ましく、例えば使用者が浴槽用手摺りを主に手を置いて立位の状態で使用するのであれば、ノブは回動部材の前方端部寄りの位置であって洗い場側とは反対側の位置または前方端部寄りの位置であって洗い場側の位置とその反対側の位置に取り付けられているのが好ましい。
【0047】
使用者が浴槽用手摺りを使って立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ時は、使用者は浴槽用手摺りと向き合い、浴槽用手摺りのノブに手を置いて浴槽の側壁を跨ぐことになる。このため、ノブが、浴槽用手摺りの回動部材の前方端部寄りの位置であって、且つ回動部材の左方端部寄りの位置および/または右方端部寄りの位置に取り付けられていると、使用者は簡単にノブへアクセスすることができ、自己の身体を支えることができるようになる。また、使用者が浴槽用手摺りへ腰を掛けたままの状態で浴槽へ出入りしようとする際も、使用者はノブを利用して自己の身体を簡単に移動することができるようになる。
【0048】
さらに、ノブが回動部材の前方端部寄りの位置に配置されていると、ノブが洗い場側に取り付けられている場合においても、浴槽用手摺り上に腰をかけた使用者は膝を少し持ち上げるだけで浴槽の側壁と一緒にノブの上を乗り越えることができるので、ノブは、使用者が座位の状態で浴槽へ出入りしようとする際の障害となることもない。また、ノブは支持基材ではなく、回動部材へ取り付けられるので、ノブを利用することにより回動部材の開閉が容易となる。また、回動部材の前方端部は回動軸から離れているので、使用者はノブが回動軸付近に取り付けられている場合に比べて小さな力で回動部材を開閉することができるようになる。
【0049】
本発明の浴槽用手摺りでは、使用者の体格等に合わせて、浴槽用手摺り上でのノブの取り付け位置を変更/移動できるようにしておくことが好ましい。このため、ノブには、例えば雄ネジのような第1の係合手段を設け、回動部材の上面には、例えば雌ネジ(ネジ孔)のような第2の係合手段を複数個配設し、そして第1の係合手段と係合させる第2の係合手段を選択することにより、ノブの取り付け位置を変更/移動できるようすることができる。
【0050】
また、ノブは、回動部材の上面にスライド可能に取り付けることによって、ノブの取り付け位置を無段階で連続的に変更/移動できるようすることもできる。この場合、ノブのスライド機構は、回動部材の上面においてノブをスライド自在に移動させることができ、所定の位置で固定できるものであれば、その構造は特に限定されるものではない。例えば、特許文献1〜3に記載されているストッパーのスライド機構をノブのスライド機構として転用することも可能である。
【0051】
本発明の浴槽用手摺りでは、把持手段を棒状のハンドルとすることができる。この場合、棒状のハンドルからなる把持手段を回動部材の一部として構成し、回動部材を閉じた時、棒状のハンドルからなる把持手段を兼ねた回動部材の左方端部を左方側基材によって支持するようにし、そして把持手段を兼ねた回動部材の右方端部を右方側基材によって支持するように構成することにより、棒状のハンドルからなる把持手段を兼ねた回動部材が左方側基材と右方側基材との間を横断するように配置することができる。
【0052】
この結果、棒状のハンドルからなる把持手段は、浴槽の外部(洗い場)から浴槽の内部、浴槽の外部(洗い場)とは反対側に位置する浴槽側壁まで配置することができる。このため、本発明の浴槽用手摺りの使用者は、立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ際は浴槽用手摺りと向き合いながら、浴槽の外部(洗い場)から、浴槽の内部、浴槽の外部(洗い場)とは反対側に位置する浴槽側壁に至るまでの間、連続して浴槽用手摺りの把持手段を掴んだり、或いは回動部材や支持基材へ手を載置することができるので、自己の身体を浴槽用手摺りによって支えながら容易に浴槽への出入りを行うことができるようになる。
【0053】
さらに、本発明の浴槽用手摺りでは、上記の棒状のハンドルを、回動部材とは別体として回動部材の上面に取り付けることができる。この場合、本発明の浴槽用手摺りは、上述したように、把持手段を棒状のハンドルとすることにより得られる効果を奏することができると共に、浴槽の側壁を跨ぐ際には立位の状態でも座位の状態でも使用することができるようになる。また、浴槽の外部(洗い場)から、浴槽の外部(洗い場)とは反対側に位置する浴槽側壁に至るまでの間、連続した浴槽用手摺りの上面および棒状のハンドルからなる把持手段が配置されるので、使用者は容易且つ安全に本発明の浴槽用手摺りへアクセスすることができるようになる。
【0054】
また、本発明の浴槽用手摺りでは回動部材を棒状部材から作製し、その形状も棒状とすることができる。この場合、例えば把持手段も棒状のハンドルとしている場合は、把持手段を兼ねた回動部材の全体形状をT字型とすることで、棒状のハンドルからなる把持手段を兼ねた回動部材の左右端部を左右側基材によって支持するようにし、そして回動部材の後方端部を支持基材に回動自在に取り付けることができる。このため、把持手段を含む回動部材を極めて軽量にすることができるので、浴槽用手摺りの操作性が向上し、浴槽への着脱も容易になる。
【発明の効果】
【0055】
本発明の浴槽用手摺りによれば、回動部材或いは回動部材に取り付けられた把持手段は、支持基材の左方側基材と右方側基材との間若しくは浴槽を横断するように配置することができるので、使用者は、立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ際は浴槽用手摺りと向き合いながら、浴槽の外部(洗い場)から、浴槽の内部、浴槽の外部(洗い場)とは反対側に位置する浴槽側壁に至るまでの間、連続して浴槽用手摺りの把持手段を掴んだり、或いは回動部材や支持基材へ手を載置することができるようになり、自己の身体を浴槽用手摺りによって支えながら容易に浴槽への出入りを行うことができる。
【0056】
また、本発明の浴槽用手摺りは、支持基材の左右側基材の下面に、左右側基材の横幅方向にスライド自在であり、且つ浴槽側壁の内面に当接させることができる左右ストッパーを設けることにより、浴槽の側壁をクランプすることなく、両ストッパーの摩擦力によって浴槽用手摺りを浴槽および浴槽側壁へ着脱自在に簡単且つ強固に取り付けることができる。
【0057】
本発明の浴槽用手摺りによれば、特殊な形状を有するノブまたは棒状のハンドルを浴槽用手摺りの回動部材の上面に取り付けることができるので、使用者はノブまたはハンドルに手を添えることで自己の体重の一部を確実に浴槽用手摺りへ預けることができ、安全且つ容易に立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐことができるようになる。
【0058】
本発明の浴槽用手摺りによれば、高齢者や要介護者などの入浴を容易にする共に、支持基材が浴槽側壁の上面を隠すように完全に覆うことができる幅を有しているか、或いは浴槽用手摺りの回動部材が浴槽側壁の上面と重なり合わない位置に配置されているので、浴室の側壁に手摺りが設けられているような浴槽においても浴槽用手摺りの回動部材を開閉させることができ、また繰り返し開閉しても浴槽側壁の上面を傷付けることもない。
【0059】
本発明の浴槽用手摺りによれば、回動部材の前方端部には、左右端部が中央部よりも後方へ湾曲した凹部が形成されているので、使用者は不自然な姿勢をとって必ずしも目視する必要はなく、手の平の感触等によって回動部材の左右端部の位置(凹部)を確認することができ、また回動部材と浴槽側壁との間または回動部材と支持基材との間に手を挟まれることなく安全に回動部材を開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】浴槽へ取り付けられた状態の本発明の第1の実施形態に係る浴槽用手摺りを示した斜視図である。
図2図1に示された浴槽用手摺りの回動部材を跳ね上げた様態を示した斜視図である。
図3】浴槽へ取り付けられた状態の本発明の他の実施形態に係る浴槽用手摺りを示した斜視図である。
図4図1に示された浴槽用手摺りの裏面を示した斜視図である。
図5図1に示された浴槽用手摺りの取り付け状態を示した側面図である。
図6図1に示された浴槽用手摺りのノブ周辺を部分的に拡大した斜視図である。
図7図6に示されたノブをX−X断面で切り取った断面図である。
図8】使用者が立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ際の浴槽用手摺りの使用態様を示した斜視図である。
図9】支持面に溝部が形成されているノブ周辺を部分的に拡大した斜視図である。
図10図9に示されたノブをY−Y断面で切り取った断面図である。
図11】使用者が座位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ際の浴槽用手摺りの使用態様を示した斜視図である。
図12】浴槽へ取り付けられた状態の本発明の第2の実施形態に係る浴槽用手摺りを示した斜視図である。
図13図12に示された浴槽用手摺りの回動部材を跳ね上げた様態を示した斜視図である。
図14】浴槽へ取り付けられた状態の本発明の第3の実施形態に係る浴槽用手摺りを示した斜視図である。
図15図13に示された浴槽用手摺りの回動部材を跳ね上げた様態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明の一実施形態に係る浴槽用手摺りについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例1】
【0062】
図1には、浴槽2へ取り付けられた状態の本発明の第1の実施形態に係る浴槽用手摺り1が示されている。図2には、図1に示された浴槽用手摺り1の回動部材4を跳ね上げた様態が示されている。図3には、浴槽2へ取り付けられた状態の本発明の他の実施形態に係る浴槽用手摺り1’が示されている。図1,2において、「前方」とは左下斜め方向を意味し、「後方」とは右上斜め方向を意味する。したがって、「左方」とは右下斜め方向、すなわち浴槽2の手前側(洗い場側)を意味し、「右方」とは左上斜め方向、すなわち浴槽2の奥側(浴室の側壁側)を意味する。
【0063】
図1,2に示されているように、本実施形態に係る浴槽用手摺り1は浴槽側壁20の上面21に載置される板状の支持基材3と、支持基材3に内側に配置され且つ支持基材3に回動自在に取り付けられている板状の回動部材4と、そして回動部材4の上面に取り付けられたノブ5から構成されている。
【0064】
また、浴槽用手摺り1に使用される材料は、各部品に求められる強度を有するものであれば特に制限されるものではないが、浴室内は高温多湿の過酷な腐食環境であるので、耐腐食性が高く、しかも軽量であるプラスチック材料が主要材料として用いられている。
【0065】
支持基材3は、浴槽用手摺り1の腰掛け部分の一部を形成すると共に、浴槽用手摺り1を浴槽2の側壁20に固定し、そして後述する回動部材4を回動自在に支持するために機能する。このため、支持基材3は浴槽側壁20の上面21に載置できるものであれば、板状、棒状またはそれらを組み合わせた形状を有するものを使用することができる。ただし、本実施形態では、浴槽用手摺り1を浴槽側壁20に設置した際の安定性、浴槽側壁20の上面21へのダメージ回避、使用者の利便性などを考慮して、板状の支持基材3が用いられている。
【0066】
支持基材3は、浴槽2の左方側壁22aの上面に載置される板状の左方側基材31aと、浴槽2の右方側壁22bの上面に載置される板状の右方側基材31bと、そして浴槽2の後方側壁22cの上面に載置される板状の後方側基材31cを含んでおり、全体として、平面視において略コの字形を形成するように一体成形されている。このため、本実施形態に係る支持基材3は浴槽側壁20の上面21の形状に沿うように配置することができるため、浴槽2へ取り付けた際の安定性が高く、極めて高い剛性を有する。
【0067】
本実施形態に係る左方側基材31a、右方側基材31bおよび後方側基材31cは、浴槽側壁20の上面21に載置した時、平面視においてそれぞれに浴槽2の左方側壁22aの上面、右方側壁22bの上面、後方側壁22cの上面を隠すように完全に覆うことができる幅を有している。一方、近年では図1,2に示されているように、浴槽2に隣接した浴室の側壁に手摺り6が設けられていることが多いが、浴槽2の蓋の取り付け/取り外し或いは開け閉めを容易にするため、手摺り6が浴槽側壁20の上面21を越えて浴室の側壁から浴槽側壁20の内側まで突出させて設置されることは殆どない。このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、支持基材3の内側に配置される回動部材4は、浴室の側壁に取り付けられた手摺り6と干渉することなく、自由に開閉することができる。また、回動部材4が浴槽側壁20の上面21と直接当接することもなくなるので、回動部材4を繰り返し開閉しても浴槽側壁20の上面21を傷付けることがない。
【0068】
本実施形態に係る回動部材4は略四角形状を有する板状の部材であって、それぞれの端部には、中央部よりも左右端部が後方へ湾曲した凹部41a,41bを有する前方端部40と、前方端部40に対向する略直線状の後方端部42cと、前方端部40および後方端部42cと略直角に隣接し、そして互いに対向する略直線状の左方端部42aと略直線状の右方端部42bが形成されている(図2)。さらに、回動部材4の前方端部40に形成された凹部41a,41bは、それぞれの外側に配置されている左方側基材31aの前方縁部および右方側基材31bの前方縁部よりも後方へ湾曲している(図2)。本実施形態に係る浴槽用手摺り1は、浴槽2の開口部に配置された回動部材4を跳ね上げることができるので、入浴中の使用者の邪魔になることがない。
【0069】
前方端部40は回動部材4の自由端であり、その他の後方端部42c、左方端部42aおよび右方端部42bは、回動部材4を閉じた時、それぞれに支持基材3の後方側基材31c、左方側基材31aおよび右方側基材31bと接するようにそれらの内側に配置される(図1)。このため、回動部材4は、浴槽用手摺り1を浴槽側壁20の上面21に取り付けた時、平面視において浴槽側壁20の左方側壁22aの上面および右方側壁22bの上面と重なり合わない位置に配置される。
【0070】
回動部材4は把持手段としてノブ5を含んでおり、そしてノブ5は、回動部材4を閉じた時、回動部材4の左方端部42aが左方側基材31aによって支持され、そして回動部材4の右方端部42bが右方側基材31bによって支持されることにより、浴槽2の左方側壁22aに固定された左方側基材31aと右方側壁22bに固定された右方側基材31bとの間、すなわち浴槽2の左方側壁22aと右方側壁22bとの間を横断するように配置される。
【0071】
このように、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、支持基材3や回動部材4、或いは回動部材4に取り付けられたノブ5は、浴槽2の外部(洗い場)から浴槽2の内部、浴槽2の外部(洗い場)とは反対側に位置する浴槽側壁20まで任意の位置に配置することができる。このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り1の使用者は、立位の状態で浴槽2の側壁20を跨ぐ際は浴槽用手摺り1と向き合いながら、浴槽2の外部(洗い場)から、浴槽2の内部、浴槽2の外部(洗い場)とは反対側に位置する浴槽側壁20に至るまでの間、連続して浴槽用手摺り1のノブ5を掴んだり、或いは回動部材4や支持基材3へ手を載置することができるので、自己の身体を浴槽用手摺り1によって支えながら容易に浴槽2への出入りを行うことができるようになる。
【0072】
特に本実施形態に係る浴槽用手摺り1は、特許文献1,2に記載されているような従来のタイプの浴槽用手摺りとは異なり、浴槽2を横断するように浴槽2の外部(洗い場)からその反対側に位置する浴槽側壁20に至るまで配置されるので、使用者は、浴槽用手摺り1へアクセスする位置や方向を選ぶことなく自由に浴槽用手摺り1へアクセスすることができる。このため、使用者は、自己の肩幅またはそれ以上に広げた両手、両腕を使って本実施形態に係る浴槽用手摺り1を掴んだり手を添えたりすることができ、立位の状態で容易に浴槽2の側壁20を跨ぐことができるようになる。
【0073】
他の実施形態に係る浴槽用手摺り1’では、回動部材4’は、浴槽用手摺り1’を浴槽側壁20の上面21に取り付けた時、図3に示されるように、平面視において浴槽側壁20の左方側壁22aの上面および右方側壁22bの上面と重なり合わない位置に配置されていれば、閉じた時、左方端部42a’および右方端部42b’が、それぞれに支持基材3’の左方側基材31a’および右方側基材31b’と接するようにそれらの内側に配置されていてもよい。この実施形態の場合は、左方側基材31a’と右方側基材31b’とを連結する後方側基材31c’は、回動部材4’を閉じた時、回動部材4’の下部に隠れるように配置されている。
【0074】
ところで、上述したように、浴槽2に隣接した浴室の側壁に設けられる手摺り6が浴槽側壁20の上面21を越えて浴室の側壁から浴槽側壁20の内側まで突出させて設置されることは殆どないので、支持基材3の内側で、浴槽側壁20の左方側壁22aの上面および右方側壁22bの上面と重なり合わない位置に配置された回動部材4は、浴室の側壁に取り付けられた手摺り6と干渉することなく、自由に開閉することができる。また、回動部材4が浴槽側壁20の上面21と直接当接することもなくなるので、回動部材4を繰り返し開閉しても浴槽側壁20の上面21を傷付けることがない。
【0075】
また、回動部材4の前方端部40には、その左右端部が中央部よりも後方へ湾曲した凹部41a,41bが形成されている。より詳細に説明すると、支持基材3に回動可能に取り付けられた回動部材4の前方端部40の左方端部42a側には、回動部材4の前方端部40の中央部および左方側基材31aの前方縁部よりも後方へ凹んだ(湾曲した)、使用者の手の平で掴むための左方凹部41aが形成されており、そして回動部材4の前方端部40の右方端部42b側には、回動部材4の前方端部40の中央部および右方側基材31bの前方縁部よりも後方へ凹んだ(湾曲した)、使用者の手の平で掴むための右方凹部41bが形成されている。
【0076】
このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、使用者は不自然な姿勢をとって必ずしも目視する必要はなく、手の平の感触等によって回動部材4の前方端部40に設けられた左方凹部41aおよび右方凹部41bの位置を確認することができる。また、左方凹部41aおよび右方凹部41bは使用者の手の平が納まる大きさに切り欠かれているので、使用者は、回動部材4を開閉する時、使用者の手の平が自然と回動部材4の左方凹部41aまたは右方凹部41bへ誘導されて、回動部材4と浴槽側壁20との間または回動部材4と支持基材3との間などに手を挟まれることなく安全に回動部材4を開閉することができる。
【0077】
また、図1に示されているように、浴槽用手摺り1の左方側基材31aの内側、すなわち左方側基材31aの回動部材4側には、回動部材4を下方から支持するための左方棚部30aが突設されており、左方棚部30aの前方縁部301aは、回動部材4を閉じた時、回動部材4の左方凹部41aの端部よりも後方に位置するように配置される。また、浴槽用手摺り1の右方側基材31bの内側、すなわち右方側基材31bの回動部材4側には、回動部材4を下方から支持するための右方棚部30bが突設されており、右方棚部30bの前方縁部301bは、回動部材4を閉じた時、回動部材4の右方凹部41bの端部よりも後方に位置するように配置される。
【0078】
このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、回動部材4を掴む使用者の手が、左方凹部41a、右方凹部41bにおいて回動部材4の裏面へまで回りこんでいる場合であっても、使用者の手が回動部材4と左方棚部30aとの間、回動部材4と右方棚部30bとの間に挟み込まれるのを効果的に防止することができる。
【0079】
さらに、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、左方棚部30aの支持面300aは左方側基材31aの上面より下方に形成されており、そして右方棚部30bの支持面300bは右方側基材31bの上面より下方に形成されている。左方棚部30aの支持面300aおよび右方棚部30bの支持面300bが左方側基材31aおよび右方側基材31bの上面より下方に形成されていると、回動部材4の厚みは棚部30a,30bの支持面300a,300bと支持基材3の上面との間に形成された段差部分の中に収容されるので、回動部材4を閉じた時、回動部材4の上面と支持基材3の上面を略面一にすることができる。
【0080】
回動部材4を閉じた時、支持基材3の上面と回動部材4の上面が略面一となるように形成されていると、浴槽用手摺り1へのアクセス性がさらに向上すると共に、使用者は手の平や臀部を滑らすように浴槽用手摺り1の上面上を移動させることができるようになるので、浴槽2への出入りがより安全且つ容易になる。また、回動部材4と、左方側基材31aおよび右方側基材31bは、連続した上面を形成することができるので、浴槽用手摺り1へのアクセス性がさらに向上し、使用者は浴槽用手摺り1において手で触れる位置や方向を選ぶことなく容易に浴槽用手摺り1へアクセスすることができるようになる。
【0081】
さらに、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、図1,5及び6に示されているように、回動部材4を閉じた時、回動部材4と支持基材3との間に実質的な隙間、すなわち使用者の指などが挟まれるような隙間が形成されていないので、使用者は安全に浴槽用手摺り1へアクセスすることができる。
【0082】
なお、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、回動部材4が板状部材からできているので、浴槽用手摺り1を浴槽2の開口部の一部に取り付けることにより、使用者は、浴槽用手摺り1の回動部材4や支持基材3へ腰を掛けたままの状態で浴槽2の外から中へ又は中から外へ移動することもできる。
【0083】
本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、回動部材4の前方端部40の中央部、左方側基材31aの前方縁部および右方側基材31bの前方縁部は、回動部材4を閉じた時、略直線上に並ぶように配置される(図1,3及び4)。このように、回動部材4の左方凹部41aおよび右方凹部41b以外の前方端部40と左方側基材31aおよび右方側基材31bの前方縁部が略直線上に並ぶように配置されていると、矩形状の汎用の浴槽用の蓋を密接させて容易に並べることができるようになるので、浴槽用手摺り1を浴槽2の蓋の一部としても使用することができるようになる。
【0084】
なお、回動部材4の回動手段は蝶番、ボールジョイントなど周知技術を採用することができ、特に制限はない。また、回動部材4は支持基材3の中の後方側基材31cへ取り付けてもよく、或いは回動部材4をその両側から左方側基材31aと右方側基材31bによって挟み込むように左方側基材31aと右方側基材31bへ回動可能に支持させてもよい。本実施形態の場合は、図示しないが、回動板部材4の左方端部42aおよび右方端部42bの後方端部42c付近のそれぞれに回動軸が突設されている。そして支持基材3の左方側基材31aおよび右方側基材31bには、それぞれに左方端部42aの回動軸および右方端部42bの回動軸を支持するための軸受け部が設けられており、回動軸を軸受け部に嵌合させることにより、回動部材4は支持基材3に回動可能に支持される。
【0085】
図4には、本実施形態に係る浴槽用手摺り1の裏面が示されている。支持基材3の左方側基材31aの下面には、左方側基材31aの横幅方向にスライド自在であり且つ浴槽2の左方側壁22aの内面に当接させることができる左方ストッパー7と、そして右方側基材31bの下面には、右方側基材31bの横幅方向にスライド自在であり且つ浴槽2の右方側壁22bの内面に当接させることができる右方ストッパー7が設けられている。左方ストッパー7と右方ストッパー7は同じ形状、構造を有しており、外周部にゴムなどの弾性樹脂からなる滑り止めラバーが被着された円柱形状を有している。
【0086】
本実施形態では、左方側基材31aの裏面および右方側基材31bの裏面には、横幅方向に一定の横幅を有する左方スリット32aおよび右方スリット32bが設けられており、各スリット32a,32bの中には、スリット32a,32bの横幅より大きな四辺を有する矩形状のアンカープレート70が埋め込まれており、そしてアンカープレート70にはスリット32a,32bの外部へ向けて雄ネジ(図示せず)が固着されている。
【0087】
一方、図示しないが、左方ストッパー7および右方ストッパー7の内部には雌ネジが形成されているので、ストッパー7の雌ネジをアンカープレート70に固着された雄ネジに螺合させて締め付けることにより、左方ストッパー7および右方ストッパー7を浴槽用手摺り1の裏面の所定の位置に固定することができる。また、ストッパー7を回転させることにより、ストッパー7の雌ネジとアンカープレート70の雄ネジの螺合を緩めると、左方ストッパー7および右方ストッパー7は、それぞれに浴槽用手摺り1の裏面に形成された左方スリット32aおよび右方スリット32bの中をスライドさせることができる。
【0088】
この結果、左方ストッパー7および右方ストッパー7は、図5における想像線に示すように、それぞれに左方側基材31aおよび右方側基材31bの横幅方向に摺動および固定が可能となり、左方ストッパー7および右方ストッパー7のそれぞれを浴槽2の相互に対向する左方側壁22aの内面および右方側壁22bの内面へ当接させることにより、浴槽用手摺り1の水平方向への移動を拘束させることができる。すなわち、本実施形態に係る浴槽用手摺り1は、左方ストッパー7および右方ストッパー7の摩擦力によって浴槽2の側壁20をクランプすることなく、浴槽2および浴槽側壁20へ着脱自在に簡単且つ強固に取り付けることができる。
【0089】
なお、ストッパー7は、左方側基材31aの下面または右方側基材31bの下面において横幅方向にスライド自在に移動させることができ、所定の位置で固定できるものであれば、その構造は特に限定されるものではない。例えば、特許文献1〜3に記載されているストッパーを本実施形態に係る浴槽用手摺り1のストッパー7として転用することができる。
【0090】
図6には、本実施形態に係る浴槽用手摺り1のノブ5の周辺を部分的に拡大した斜視図が示されている。図7には、図6に示されたノブ5をX−X断面で切り取った断面図が示されている。さらに、図8には、使用者が立位の状態で浴槽2の側壁20を跨ぐ際の浴槽用手摺り1の使用態様が示されている。図1,6及び9を参照して理解されるように、本実施形態に係る浴槽用手摺り1は、把持手段として、回動部材4の上面に使用者の手の平を支持するための略平坦な支持面50が形成されているノブ5を備えている。
【0091】
浴槽用手摺り1は、図8に示されているように、高齢者や要介護者などの身体の不自由な人が浴槽2の側壁20を立位の状態で跨ぐ際に使用される。この場合、使用者は浴槽用手摺り1と向き合い、浴槽用手摺り1の上面に手を置いて浴槽2の側壁20を跨ぐことになる。このため、浴槽用手摺り1の上面にノブ5が設けられていると、使用者はノブ5に手を添えることで自己の体重の一部を確実に浴槽用手摺り1へ預けることができるようになるので、安全且つ容易に立位の状態で浴槽2の側壁20を跨ぐことができるようになる。
【0092】
このため、本実施形態に係るノブ5の上面には略平坦な支持面50が形成されている。高齢者や要介護者などは十分な握力を有していない場合が多いので、ノブ5の上面に略平坦な支持面50を設けておくと、使用者はノブ5の支持面50に手の平、手の甲または握り拳を置いて或いはノブ5を軽く握るだけで、手を滑らせることなく自己の体重の一部を浴槽用手摺り1へ預けることができるようになる。この結果、使用者はより安全且つより簡単に立位の状態で浴槽2の側壁を跨ぐことができるようになる。このため、本実施形態のノブ5は平面視において略円形を有している。ノブ5の上面の形状およびノブ5の全体の形状を平面視において略円形とすることにより、使用者はどの方向からも簡単にノブ5へアクセスすることができるようになり、場所を選ばず、自己の体重の一部を浴槽用手摺り1へ預けることができるようになる。
【0093】
なお、本実施形態に係るノブ5の支持面50では、支持面50に水分が溜まり難くなるようにするため、ノブ5の側面55から中央へ向けて僅かに膨らんだ凸部が形成されている(図7)。しかしながら、使用者の手の平、手の甲または握り拳を安定して支え易くすることを重視する場合は、図9及び10に示されているように、ノブ5の側面55からに中央に掛けて凹んだ凹部が形成されていてもよい。
【0094】
ノブ5の支持面50を、側面55から中央付近へ向けて凹んだ形状とした場合、ノブ5の支持面50には、図9及び10に示されているように、側面55から中央付近へ向けて膨らんだ底面52を有する溝部51が設けられる。この場合、ノブ5の支持面50に溜まった水分は溝部51へ誘導され、そして支持面50に溜まった水分は溝部51を介してノブ5の中央付近から側面55の開口へ排水される。また、溝部51は、使用者がノブ5の支持面50に手の平、手の甲または握り拳を置いた時、それらが支持面50の上で滑るのを防止するためにも機能する。このため、本実施形態に係る溝部51はノブ5の支持面50の略中央で直交するように放射状に複数設けられている。
【0095】
本実施形態に係るノブ5は、図7及び10に示されているように、使用者の手によりアクセスされるグリップ部53と、グリップ部53を回動部材4の上面に取り付けるための支柱部54とから構成されており、そしてグリップ部53における水平断面の最大断面積は、支柱部54における水平断面の最大断面積よりも大きくなっている。すなわち、ノブ5の上面に形成された上述の支持面50は、グリップ部53の上面と一致している。このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、握力の十分でない使用者であってもグリップ部53の裏面に簡単に指を引っ掛けることができるので、より安定した状態で自己の体重の一部をグリップ部53へ預けることができるようになる。
【0096】
なお、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、グリップ部53は1つの支柱部54を介して浴槽用手摺り1の上面に取り付けられている。このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、使用者はグリップ部53へアクセスする位置を選ぶことなく、どの方向からもより簡単にグリップ部53を掴んだり或いはグリップ部53の上に握り拳などを置いて、自己の体重の一部をグリップ部53へ預けることができると共に、ノブ5全体の強度も向上し、使用者による安全な使用が保証される。
【0097】
また、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、グリップ部53の外周部には、使用者が指を掛けるための略同一幅の側面55が設けられており、そしてグリップ部53の側面55は連続した曲面によって支持面50と連結されている(図7,10)。このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、使用者はどの方向からでもグリップ部53を容易に掴むことができるようになり、また、グリップ部53の側面55が連続した曲面によって支持面50と連結されているので、使用者の手の平に対するグリップ部53のフィット性も向上する。このため、グリップ部53の側面55は略同一幅を有していれば、本実施形態のように、側面視において略平坦な面を形成していても又は外側へ多少膨らんだ面を形成していてもよい。
【0098】
本実施形態に係るノブ5は、浴槽用手摺り1の回動部材4の前方端部40寄りの位置であって、且つ回動部材4の右方端部42b寄りの位置、すなわち支持基材3の右方側基材31b寄りの位置に取り付けられている(図1,3)。ノブ5は、例えば使用者が浴槽用手摺り1を主に座位の状態で移動するために使用するのであれば、回動部材4の前方端部40寄りの位置であって洗い場側とは反対側の位置に取り付けられているのが好ましく、例えば使用者が浴槽用手摺りを主に手を置いて立位の状態で使用するのであれば、回動部材4の前方端部40寄りの位置であって洗い場側とは反対側の位置または前方端部40寄りの位置であって洗い場側の位置およびその反対側の位置に取り付けられているのが好ましい(図1,3)。
【0099】
使用者が浴槽用手摺り1を使って立位の状態で浴槽2の側壁20を跨ぐ時は、使用者は浴槽用手摺り1と向き合い、浴槽用手摺り1のノブ5に手を掛けて浴槽2の側壁20を跨ぐことになる。このため、ノブ5が、上述のように浴槽用手摺り1の回動部材4の所定の位置に取り付けられていると、使用者は簡単にノブ5へアクセスすることができ、自己の身体を支えることができるようになる。また、図11に示されるように、使用者が浴槽用手摺り1へ腰を掛けたままの状態で浴槽2へ出入りしようとする際も、使用者はノブ5を利用して自己の身体を簡単に移動することができるようになる。
【0100】
さらに、ノブ5が回動部材4の前方端部40寄りの位置に配置されていると、ノブ5が洗い場側に取り付けられている場合においても、浴槽用手摺り1上に腰をかけた使用者は膝を少し持ち上げるだけで浴槽2の側壁20と一緒にノブ5の上を乗り越えることができるので、ノブ5は、使用者が座位の状態で浴槽2へ出入りしようとする際の障害となることもない。また、ノブ5は支持基材3ではなく、回動部材4へ取り付けられるので、ノブ5を利用することにより回動部材4の開閉が容易となる。また、回動部材4の前方端部40は回動軸から離れているので、使用者はノブ5が回動軸付近に取り付けられている場合に比べて小さな力で回動部材4を開閉することができるようになる。
【0101】
このように、ノブ5の取り付け位置は、使用者による浴槽用手摺り1の使用態様や使用者の好みに応じて、浴槽用手摺り1の回動部材4の前方端部40寄りの位置であって、且つ回動部材4の左方端部42a寄りの位置および/または右方端部42b寄りの位置、すなわち支持基材3の左方側基材31a寄りの位置および/または右方側基材31b寄りの位置を選択することができる。
【0102】
本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、ノブ5の下部には雄ネジからなる第1の係合手段(図示せず)が設けられており、回動部材4の上面には、雌ネジ(ネジ孔)35からなる第2の係合手段(図1,5,8)が複数個配設されている。このため、ノブ5は、使用者の体格等に合わせて第1の係合手段と係合させる第2の係合手段を選択することにより、任意の取り付け位置へ変更/移動することができる。
【0103】
また、図示しないが、ノブ5は、回動部材4の上面にスライド可能に取り付けることによって、ノブ5の取り付け位置を無段階で連続的に変更/移動できるようすることもできる。この場合、ノブ5のスライド機構は、回動部材4の上面においてノブ5をスライド自在に移動させることができ、所定の位置で固定できるものであれば、その構造は特に限定されるものではない。例えば、上述した本実施形態に係るストッパー7のスライド機構や、または特許文献1〜3に記載されているストッパーのスライド機構をノブ5のスライド機構として転用することも可能である。
【実施例2】
【0104】
図12には、浴槽2へ取り付けられた状態の本発明の第2の実施形態に係る浴槽用手摺り1”が示されている。図13には、図12に示された浴槽用手摺り1”の回動部材4を跳ね上げた様態が示されている。
【0105】
図12,13に示されているように、本実施形態に係る浴槽用手摺り1”は浴槽側壁20の上面21に載置される板状の支持基材3と、支持基材3に内側に配置され且つ支持基材3に回動自在に取り付けられている板状の回動部材4と、そして回動部材4の上面に取り付けられた棒状のハンドル5”から構成されており、把持手段としてのノブ5が棒状のハンドル5”へ変更されていること以外は、第1の実施形態に係る浴槽用手摺り1と同じ構成を有している。このため、第2の実施形態に係る浴槽用手摺り1”は、ノブ5を有することにより得られる効果以外の効果については、上述した第1の実施形態に係る浴槽用手摺り1が奏する効果と同じ効果を奏することができる。
【0106】
本実施形態に係る浴槽用手摺り1”では、把持手段である棒状のハンドル5”を回動部材4とは別体として回動部材4の上面に取り付け、回動部材4を閉じた時、棒状のハンドル5”を兼ねた回動部材4の左方端部42aを左方側基材31aによって支持するようにし、そして棒状のハンドル5”を兼ねた回動部材4の右方端部42bを右方側基材31bによって支持するように構成しているので、棒状のハンドル5”を兼ねた回動部材4が左方側基材31aと右方側基材31bとの間を横断するように配置することができる。
【0107】
この結果、棒状のハンドル5”は、浴槽2の外部(洗い場)から浴槽2の内部、浴槽2の外部(洗い場)とは反対側に位置する浴槽側壁20まで配置することができる。このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り1”の使用者は、立位の状態で浴槽2の側壁20を跨ぐ際は浴槽用手摺り1と向き合いながら、浴槽2の外部(洗い場)から、浴槽2の内部、浴槽2の外部(洗い場)とは反対側に位置する浴槽側壁20に至るまでの間、連続して浴槽用手摺り1の棒状のハンドル5”を掴んだり、或いは回動部材4や支持基材3へ手を載置することができるので、自己の身体を浴槽用手摺り1によって支えながら容易に浴槽2への出入りを行うことができるようになる。
【0108】
また、本実施形態に係る浴槽用手摺り1”は使用者が座位の状態でも使用することができ、浴槽用手摺り1の上面および棒状のハンドル5”が浴槽2を横断するように配置されるので、使用者は容易且つ安全に浴槽用手摺り1”へアクセスすることができる。
【0109】
また、図示しないが、本実施形態に係る浴槽用手摺り1”では、支持基材3の左右側基材31a,31bの下面に、左右側基材31a,31bの横幅方向にスライド自在であり、且つ浴槽側壁20の内面に当接させることができる左右ストッパー7が設けられているので、浴槽2の側壁20をクランプすることなく、両ストッパー7の摩擦力によって浴槽用手摺り1”を浴槽2および浴槽側壁20へ着脱自在に簡単且つ強固に取り付けることができる。
【実施例3】
【0110】
図14には、浴槽2へ取り付けられた状態の本発明の第3の実施形態に係る浴槽用手摺り10が示されている。図15には、図14に示された浴槽用手摺り10の回動部材400を跳ね上げた様態が示されている。
【0111】
図14,15に示されているように、本実施形態に係る浴槽用手摺り10は浴槽側壁20の上面21に載置される板状の支持基材300と、支持基材300に回動自在に取り付けられている棒状の回動部材400から構成されており、棒状の回動部材400には、把持手段としての棒状のハンドル500が含まれている。
【0112】
本実施形態に係る浴槽用手摺り10は回動部材400が板状に形成されていないため、使用者が座位の状態で使用するには適していないが、把持手段である棒状のハンドル500が浴槽2の内部、浴槽2の外部(洗い場)とは反対側に位置する浴槽側壁20に至るまでの間、浴槽2を横断するように配置されるので、回動部材が板状であることにより得られる効果以外の効果については、上述した第1の実施形態に係る浴槽用手摺り1が奏する効果と同じ効果を奏することができる。
【0113】
本実施形態に係る浴槽用手摺り10では、棒状のハンドル500を兼ねた回動部材400は棒状部材から一体的に作製されており、全体としてはT字型形状を有している。回動部材400の中の棒状のハンドル500部分は、回動部材400を閉じた時、回動部材400の左方端部420a、すなわちハンドル500の左方端部420aが左方側基材310aによって支持され、そして回動部材400の右方端部420b、すなわちハンドル500の右方端部420bが右方側基材310bによって支持されることにより、左方側基材310aと右方側基材310bとの間を横断するように配置される。このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り10の支持基材300は、第1および第2の実施形態に係る浴槽用手摺り1,1”の支持基材3とは異なり、ハンドル500部分を構成する回動部材400を支持するための棚部が設けられていない。また、回動部材400の中の後方端部420cは、支持基材300の後方側基材310cに回動自在に取り付けられている。
【0114】
このように、本実施形態に係る浴槽用手摺り10では、浴槽用手摺り1の棒状のハンドル500が浴槽2を横断するように配置されるので、使用者は、立位の状態で浴槽2の側壁20を跨ぐ際は浴槽用手摺り10と向き合いながら、浴槽2の外部(洗い場)から、浴槽2の内部、浴槽2の外部(洗い場)とは反対側に位置する浴槽側壁20に至るまでの間、連続して浴槽用手摺り10の棒状のハンドル500を掴むことができるので、自己の身体を浴槽用手摺り10によって支えながら容易に浴槽2への出入りを行うことができるようになる。また、使用者が入浴中は、浴槽に取り付けられた浴槽用手摺り10の回動部材400を跳ね上げることができるので、使用者の邪魔になることがない。
【0115】
また、図示しないが、本実施形態に係る浴槽用手摺り10では、支持基材300の左右側基材310a,310bの下面に、左右側基材310a,310bの横幅方向にスライド自在であり、且つ浴槽側壁20の内面に当接させることができる左右ストッパー7が設けられているので、浴槽2の側壁20をクランプすることなく、両ストッパー7の摩擦力によって浴槽用手摺り10を浴槽2および浴槽側壁20へ着脱自在に簡単且つ強固に取り付けることができる。
【0116】
さらに、本実施形態に係る浴槽用手摺り10は、ハンドル500を含む回動部材400がT字型の極めて単純な構造にされているので、一体的に成形等することより軽量にすることが可能であり、また、軽量化に伴って浴槽用手摺り10の操作性も向上し、浴槽への着脱も容易になる。
【符号の説明】
【0117】
1,1’,1”,10・・・浴槽用手摺り
2・・・・浴槽
20・・・浴槽側壁
21・・・上面
22a・・・左方側壁
22b・・・右方側壁
22c・・・後方側壁
3,3’,300・・・支持基材
30a・・・左方棚部
30b・・・右方棚部
300a,300b・・・支持面
301a,301b・・・前方縁部
31a,31a’,310a・・・左方側基材
31b,31b’,310b・・・右方側基材
31c,31c’・・・後方側基材
32a・・・左方スリット
32b・・・右方スリット
35・・・雌ネジ(ネジ孔)
4,4’,400・・・回動部材
40・・・前方端部
41a・・・左方凹部
41b・・・右方凹部
42a,42a’,420a・・・左方端部
42b,42b’,420b・・・右方端部
42c,420c・・・後方端部
5,5’・・・ノブ
5”,500・・・ハンドル
50,50’・・・支持面
51・・・溝部
52・・・底面
53,53’・・・グリップ部
54,54’・・・支柱部
55,55’・・・側面
6・・・・手摺り
7・・・・ストッパー
70・・・アンカープレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15