【実施例1】
【0062】
図1には、浴槽2へ取り付けられた状態の本発明の第1の実施形態に係る浴槽用手摺り1が示されている。
図2には、
図1に示された浴槽用手摺り1の回動部材4を跳ね上げた様態が示されている。
図3には、浴槽2へ取り付けられた状態の本発明の他の実施形態に係る浴槽用手摺り1’が示されている。
図1,2において、「前方」とは左下斜め方向を意味し、「後方」とは右上斜め方向を意味する。したがって、「左方」とは右下斜め方向、すなわち浴槽2の手前側(洗い場側)を意味し、「右方」とは左上斜め方向、すなわち浴槽2の奥側(浴室の側壁側)を意味する。
【0063】
図1,2に示されているように、本実施形態に係る浴槽用手摺り1は浴槽側壁20の上面21に載置される板状の支持基材3と、支持基材3に内側に配置され且つ支持基材3に回動自在に取り付けられている板状の回動部材4と、そして回動部材4の上面に取り付けられたノブ5から構成されている。
【0064】
また、浴槽用手摺り1に使用される材料は、各部品に求められる強度を有するものであれば特に制限されるものではないが、浴室内は高温多湿の過酷な腐食環境であるので、耐腐食性が高く、しかも軽量であるプラスチック材料が主要材料として用いられている。
【0065】
支持基材3は、浴槽用手摺り1の腰掛け部分の一部を形成すると共に、浴槽用手摺り1を浴槽2の側壁20に固定し、そして後述する回動部材4を回動自在に支持するために機能する。このため、支持基材3は浴槽側壁20の上面21に載置できるものであれば、板状、棒状またはそれらを組み合わせた形状を有するものを使用することができる。ただし、本実施形態では、浴槽用手摺り1を浴槽側壁20に設置した際の安定性、浴槽側壁20の上面21へのダメージ回避、使用者の利便性などを考慮して、板状の支持基材3が用いられている。
【0066】
支持基材3は、浴槽2の左方側壁22aの上面に載置される板状の左方側基材31aと、浴槽2の右方側壁22bの上面に載置される板状の右方側基材31bと、そして浴槽2の後方側壁22cの上面に載置される板状の後方側基材31cを含んでおり、全体として、平面視において略コの字形を形成するように一体成形されている。このため、本実施形態に係る支持基材3は浴槽側壁20の上面21の形状に沿うように配置することができるため、浴槽2へ取り付けた際の安定性が高く、極めて高い剛性を有する。
【0067】
本実施形態に係る左方側基材31a、右方側基材31bおよび後方側基材31cは、浴槽側壁20の上面21に載置した時、平面視においてそれぞれに浴槽2の左方側壁22aの上面、右方側壁22bの上面、後方側壁22cの上面を隠すように完全に覆うことができる幅を有している。一方、近年では
図1,2に示されているように、浴槽2に隣接した浴室の側壁に手摺り6が設けられていることが多いが、浴槽2の蓋の取り付け/取り外し或いは開け閉めを容易にするため、手摺り6が浴槽側壁20の上面21を越えて浴室の側壁から浴槽側壁20の内側まで突出させて設置されることは殆どない。このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、支持基材3の内側に配置される回動部材4は、浴室の側壁に取り付けられた手摺り6と干渉することなく、自由に開閉することができる。また、回動部材4が浴槽側壁20の上面21と直接当接することもなくなるので、回動部材4を繰り返し開閉しても浴槽側壁20の上面21を傷付けることがない。
【0068】
本実施形態に係る回動部材4は略四角形状を有する板状の部材であって、それぞれの端部には、中央部よりも左右端部が後方へ湾曲した凹部41a,41bを有する前方端部40と、前方端部40に対向する略直線状の後方端部42cと、前方端部40および後方端部42cと略直角に隣接し、そして互いに対向する略直線状の左方端部42aと略直線状の右方端部42bが形成されている(
図2)。さらに、回動部材4の前方端部40に形成された凹部41a,41bは、それぞれの外側に配置されている左方側基材31aの前方縁部および右方側基材31bの前方縁部よりも後方へ湾曲している(
図2)。本実施形態に係る浴槽用手摺り1は、浴槽2の開口部に配置された回動部材4を跳ね上げることができるので、入浴中の使用者の邪魔になることがない。
【0069】
前方端部40は回動部材4の自由端であり、その他の後方端部42c、左方端部42aおよび右方端部42bは、回動部材4を閉じた時、それぞれに支持基材3の後方側基材31c、左方側基材31aおよび右方側基材31bと接するようにそれらの内側に配置される(
図1)。このため、回動部材4は、浴槽用手摺り1を浴槽側壁20の上面21に取り付けた時、平面視において浴槽側壁20の左方側壁22aの上面および右方側壁22bの上面と重なり合わない位置に配置される。
【0070】
回動部材4は把持手段としてノブ5を含んでおり、そしてノブ5は、回動部材4を閉じた時、回動部材4の左方端部42aが左方側基材31aによって支持され、そして回動部材4の右方端部42bが右方側基材31bによって支持されることにより、浴槽2の左方側壁22aに固定された左方側基材31aと右方側壁22bに固定された右方側基材31bとの間、すなわち浴槽2の左方側壁22aと右方側壁22bとの間を横断するように配置される。
【0071】
このように、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、支持基材3や回動部材4、或いは回動部材4に取り付けられたノブ5は、浴槽2の外部(洗い場)から浴槽2の内部、浴槽2の外部(洗い場)とは反対側に位置する浴槽側壁20まで任意の位置に配置することができる。このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り1の使用者は、立位の状態で浴槽2の側壁20を跨ぐ際は浴槽用手摺り1と向き合いながら、浴槽2の外部(洗い場)から、浴槽2の内部、浴槽2の外部(洗い場)とは反対側に位置する浴槽側壁20に至るまでの間、連続して浴槽用手摺り1のノブ5を掴んだり、或いは回動部材4や支持基材3へ手を載置することができるので、自己の身体を浴槽用手摺り1によって支えながら容易に浴槽2への出入りを行うことができるようになる。
【0072】
特に本実施形態に係る浴槽用手摺り1は、特許文献1,2に記載されているような従来のタイプの浴槽用手摺りとは異なり、浴槽2を横断するように浴槽2の外部(洗い場)からその反対側に位置する浴槽側壁20に至るまで配置されるので、使用者は、浴槽用手摺り1へアクセスする位置や方向を選ぶことなく自由に浴槽用手摺り1へアクセスすることができる。このため、使用者は、自己の肩幅またはそれ以上に広げた両手、両腕を使って本実施形態に係る浴槽用手摺り1を掴んだり手を添えたりすることができ、立位の状態で容易に浴槽2の側壁20を跨ぐことができるようになる。
【0073】
他の実施形態に係る浴槽用手摺り1’では、回動部材4’は、浴槽用手摺り1’を浴槽側壁20の上面21に取り付けた時、
図3に示されるように、平面視において浴槽側壁20の左方側壁22aの上面および右方側壁22bの上面と重なり合わない位置に配置されていれば、閉じた時、左方端部42a’および右方端部42b’が、それぞれに支持基材3’の左方側基材31a’および右方側基材31b’と接するようにそれらの内側に配置されていてもよい。この実施形態の場合は、左方側基材31a’と右方側基材31b’とを連結する後方側基材31c’は、回動部材4’を閉じた時、回動部材4’の下部に隠れるように配置されている。
【0074】
ところで、上述したように、浴槽2に隣接した浴室の側壁に設けられる手摺り6が浴槽側壁20の上面21を越えて浴室の側壁から浴槽側壁20の内側まで突出させて設置されることは殆どないので、支持基材3の内側で、浴槽側壁20の左方側壁22aの上面および右方側壁22bの上面と重なり合わない位置に配置された回動部材4は、浴室の側壁に取り付けられた手摺り6と干渉することなく、自由に開閉することができる。また、回動部材4が浴槽側壁20の上面21と直接当接することもなくなるので、回動部材4を繰り返し開閉しても浴槽側壁20の上面21を傷付けることがない。
【0075】
また、回動部材4の前方端部40には、その左右端部が中央部よりも後方へ湾曲した凹部41a,41bが形成されている。より詳細に説明すると、支持基材3に回動可能に取り付けられた回動部材4の前方端部40の左方端部42a側には、回動部材4の前方端部40の中央部および左方側基材31aの前方縁部よりも後方へ凹んだ(湾曲した)、使用者の手の平で掴むための左方凹部41aが形成されており、そして回動部材4の前方端部40の右方端部42b側には、回動部材4の前方端部40の中央部および右方側基材31bの前方縁部よりも後方へ凹んだ(湾曲した)、使用者の手の平で掴むための右方凹部41bが形成されている。
【0076】
このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、使用者は不自然な姿勢をとって必ずしも目視する必要はなく、手の平の感触等によって回動部材4の前方端部40に設けられた左方凹部41aおよび右方凹部41bの位置を確認することができる。また、左方凹部41aおよび右方凹部41bは使用者の手の平が納まる大きさに切り欠かれているので、使用者は、回動部材4を開閉する時、使用者の手の平が自然と回動部材4の左方凹部41aまたは右方凹部41bへ誘導されて、回動部材4と浴槽側壁20との間または回動部材4と支持基材3との間などに手を挟まれることなく安全に回動部材4を開閉することができる。
【0077】
また、
図1に示されているように、浴槽用手摺り1の左方側基材31aの内側、すなわち左方側基材31aの回動部材4側には、回動部材4を下方から支持するための左方棚部30aが突設されており、左方棚部30aの前方縁部301aは、回動部材4を閉じた時、回動部材4の左方凹部41aの端部よりも後方に位置するように配置される。また、浴槽用手摺り1の右方側基材31bの内側、すなわち右方側基材31bの回動部材4側には、回動部材4を下方から支持するための右方棚部30bが突設されており、右方棚部30bの前方縁部301bは、回動部材4を閉じた時、回動部材4の右方凹部41bの端部よりも後方に位置するように配置される。
【0078】
このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、回動部材4を掴む使用者の手が、左方凹部41a、右方凹部41bにおいて回動部材4の裏面へまで回りこんでいる場合であっても、使用者の手が回動部材4と左方棚部30aとの間、回動部材4と右方棚部30bとの間に挟み込まれるのを効果的に防止することができる。
【0079】
さらに、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、左方棚部30aの支持面300aは左方側基材31aの上面より下方に形成されており、そして右方棚部30bの支持面300bは右方側基材31bの上面より下方に形成されている。左方棚部30aの支持面300aおよび右方棚部30bの支持面300bが左方側基材31aおよび右方側基材31bの上面より下方に形成されていると、回動部材4の厚みは棚部30a,30bの支持面300a,300bと支持基材3の上面との間に形成された段差部分の中に収容されるので、回動部材4を閉じた時、回動部材4の上面と支持基材3の上面を略面一にすることができる。
【0080】
回動部材4を閉じた時、支持基材3の上面と回動部材4の上面が略面一となるように形成されていると、浴槽用手摺り1へのアクセス性がさらに向上すると共に、使用者は手の平や臀部を滑らすように浴槽用手摺り1の上面上を移動させることができるようになるので、浴槽2への出入りがより安全且つ容易になる。また、回動部材4と、左方側基材31aおよび右方側基材31bは、連続した上面を形成することができるので、浴槽用手摺り1へのアクセス性がさらに向上し、使用者は浴槽用手摺り1において手で触れる位置や方向を選ぶことなく容易に浴槽用手摺り1へアクセスすることができるようになる。
【0081】
さらに、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、
図1,5及び6に示されているように、回動部材4を閉じた時、回動部材4と支持基材3との間に実質的な隙間、すなわち使用者の指などが挟まれるような隙間が形成されていないので、使用者は安全に浴槽用手摺り1へアクセスすることができる。
【0082】
なお、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、回動部材4が板状部材からできているので、浴槽用手摺り1を浴槽2の開口部の一部に取り付けることにより、使用者は、浴槽用手摺り1の回動部材4や支持基材3へ腰を掛けたままの状態で浴槽2の外から中へ又は中から外へ移動することもできる。
【0083】
本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、回動部材4の前方端部40の中央部、左方側基材31aの前方縁部および右方側基材31bの前方縁部は、回動部材4を閉じた時、略直線上に並ぶように配置される(
図1,3及び4)。このように、回動部材4の左方凹部41aおよび右方凹部41b以外の前方端部40と左方側基材31aおよび右方側基材31bの前方縁部が略直線上に並ぶように配置されていると、矩形状の汎用の浴槽用の蓋を密接させて容易に並べることができるようになるので、浴槽用手摺り1を浴槽2の蓋の一部としても使用することができるようになる。
【0084】
なお、回動部材4の回動手段は蝶番、ボールジョイントなど周知技術を採用することができ、特に制限はない。また、回動部材4は支持基材3の中の後方側基材31cへ取り付けてもよく、或いは回動部材4をその両側から左方側基材31aと右方側基材31bによって挟み込むように左方側基材31aと右方側基材31bへ回動可能に支持させてもよい。本実施形態の場合は、図示しないが、回動板部材4の左方端部42aおよび右方端部42bの後方端部42c付近のそれぞれに回動軸が突設されている。そして支持基材3の左方側基材31aおよび右方側基材31bには、それぞれに左方端部42aの回動軸および右方端部42bの回動軸を支持するための軸受け部が設けられており、回動軸を軸受け部に嵌合させることにより、回動部材4は支持基材3に回動可能に支持される。
【0085】
図4には、本実施形態に係る浴槽用手摺り1の裏面が示されている。支持基材3の左方側基材31aの下面には、左方側基材31aの横幅方向にスライド自在であり且つ浴槽2の左方側壁22aの内面に当接させることができる左方ストッパー7と、そして右方側基材31bの下面には、右方側基材31bの横幅方向にスライド自在であり且つ浴槽2の右方側壁22bの内面に当接させることができる右方ストッパー7が設けられている。左方ストッパー7と右方ストッパー7は同じ形状、構造を有しており、外周部にゴムなどの弾性樹脂からなる滑り止めラバーが被着された円柱形状を有している。
【0086】
本実施形態では、左方側基材31aの裏面および右方側基材31bの裏面には、横幅方向に一定の横幅を有する左方スリット32aおよび右方スリット32bが設けられており、各スリット32a,32bの中には、スリット32a,32bの横幅より大きな四辺を有する矩形状のアンカープレート70が埋め込まれており、そしてアンカープレート70にはスリット32a,32bの外部へ向けて雄ネジ(図示せず)が固着されている。
【0087】
一方、図示しないが、左方ストッパー7および右方ストッパー7の内部には雌ネジが形成されているので、ストッパー7の雌ネジをアンカープレート70に固着された雄ネジに螺合させて締め付けることにより、左方ストッパー7および右方ストッパー7を浴槽用手摺り1の裏面の所定の位置に固定することができる。また、ストッパー7を回転させることにより、ストッパー7の雌ネジとアンカープレート70の雄ネジの螺合を緩めると、左方ストッパー7および右方ストッパー7は、それぞれに浴槽用手摺り1の裏面に形成された左方スリット32aおよび右方スリット32bの中をスライドさせることができる。
【0088】
この結果、左方ストッパー7および右方ストッパー7は、
図5における想像線に示すように、それぞれに左方側基材31aおよび右方側基材31bの横幅方向に摺動および固定が可能となり、左方ストッパー7および右方ストッパー7のそれぞれを浴槽2の相互に対向する左方側壁22aの内面および右方側壁22bの内面へ当接させることにより、浴槽用手摺り1の水平方向への移動を拘束させることができる。すなわち、本実施形態に係る浴槽用手摺り1は、左方ストッパー7および右方ストッパー7の摩擦力によって浴槽2の側壁20をクランプすることなく、浴槽2および浴槽側壁20へ着脱自在に簡単且つ強固に取り付けることができる。
【0089】
なお、ストッパー7は、左方側基材31aの下面または右方側基材31bの下面において横幅方向にスライド自在に移動させることができ、所定の位置で固定できるものであれば、その構造は特に限定されるものではない。例えば、特許文献1〜3に記載されているストッパーを本実施形態に係る浴槽用手摺り1のストッパー7として転用することができる。
【0090】
図6には、本実施形態に係る浴槽用手摺り1のノブ5の周辺を部分的に拡大した斜視図が示されている。
図7には、
図6に示されたノブ5をX−X断面で切り取った断面図が示されている。さらに、
図8には、使用者が立位の状態で浴槽2の側壁20を跨ぐ際の浴槽用手摺り1の使用態様が示されている。
図1,6及び9を参照して理解されるように、本実施形態に係る浴槽用手摺り1は、把持手段として、回動部材4の上面に使用者の手の平を支持するための略平坦な支持面50が形成されているノブ5を備えている。
【0091】
浴槽用手摺り1は、
図8に示されているように、高齢者や要介護者などの身体の不自由な人が浴槽2の側壁20を立位の状態で跨ぐ際に使用される。この場合、使用者は浴槽用手摺り1と向き合い、浴槽用手摺り1の上面に手を置いて浴槽2の側壁20を跨ぐことになる。このため、浴槽用手摺り1の上面にノブ5が設けられていると、使用者はノブ5に手を添えることで自己の体重の一部を確実に浴槽用手摺り1へ預けることができるようになるので、安全且つ容易に立位の状態で浴槽2の側壁20を跨ぐことができるようになる。
【0092】
このため、本実施形態に係るノブ5の上面には略平坦な支持面50が形成されている。高齢者や要介護者などは十分な握力を有していない場合が多いので、ノブ5の上面に略平坦な支持面50を設けておくと、使用者はノブ5の支持面50に手の平、手の甲または握り拳を置いて或いはノブ5を軽く握るだけで、手を滑らせることなく自己の体重の一部を浴槽用手摺り1へ預けることができるようになる。この結果、使用者はより安全且つより簡単に立位の状態で浴槽2の側壁を跨ぐことができるようになる。このため、本実施形態のノブ5は平面視において略円形を有している。ノブ5の上面の形状およびノブ5の全体の形状を平面視において略円形とすることにより、使用者はどの方向からも簡単にノブ5へアクセスすることができるようになり、場所を選ばず、自己の体重の一部を浴槽用手摺り1へ預けることができるようになる。
【0093】
なお、本実施形態に係るノブ5の支持面50では、支持面50に水分が溜まり難くなるようにするため、ノブ5の側面55から中央へ向けて僅かに膨らんだ凸部が形成されている(
図7)。しかしながら、使用者の手の平、手の甲または握り拳を安定して支え易くすることを重視する場合は、
図9及び10に示されているように、ノブ5の側面55からに中央に掛けて凹んだ凹部が形成されていてもよい。
【0094】
ノブ5の支持面50を、側面55から中央付近へ向けて凹んだ形状とした場合、ノブ5の支持面50には、
図9及び10に示されているように、側面55から中央付近へ向けて膨らんだ底面52を有する溝部51が設けられる。この場合、ノブ5の支持面50に溜まった水分は溝部51へ誘導され、そして支持面50に溜まった水分は溝部51を介してノブ5の中央付近から側面55の開口へ排水される。また、溝部51は、使用者がノブ5の支持面50に手の平、手の甲または握り拳を置いた時、それらが支持面50の上で滑るのを防止するためにも機能する。このため、本実施形態に係る溝部51はノブ5の支持面50の略中央で直交するように放射状に複数設けられている。
【0095】
本実施形態に係るノブ5は、
図7及び10に示されているように、使用者の手によりアクセスされるグリップ部53と、グリップ部53を回動部材4の上面に取り付けるための支柱部54とから構成されており、そしてグリップ部53における水平断面の最大断面積は、支柱部54における水平断面の最大断面積よりも大きくなっている。すなわち、ノブ5の上面に形成された上述の支持面50は、グリップ部53の上面と一致している。このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、握力の十分でない使用者であってもグリップ部53の裏面に簡単に指を引っ掛けることができるので、より安定した状態で自己の体重の一部をグリップ部53へ預けることができるようになる。
【0096】
なお、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、グリップ部53は1つの支柱部54を介して浴槽用手摺り1の上面に取り付けられている。このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、使用者はグリップ部53へアクセスする位置を選ぶことなく、どの方向からもより簡単にグリップ部53を掴んだり或いはグリップ部53の上に握り拳などを置いて、自己の体重の一部をグリップ部53へ預けることができると共に、ノブ5全体の強度も向上し、使用者による安全な使用が保証される。
【0097】
また、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、グリップ部53の外周部には、使用者が指を掛けるための略同一幅の側面55が設けられており、そしてグリップ部53の側面55は連続した曲面によって支持面50と連結されている(
図7,10)。このため、本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、使用者はどの方向からでもグリップ部53を容易に掴むことができるようになり、また、グリップ部53の側面55が連続した曲面によって支持面50と連結されているので、使用者の手の平に対するグリップ部53のフィット性も向上する。このため、グリップ部53の側面55は略同一幅を有していれば、本実施形態のように、側面視において略平坦な面を形成していても又は外側へ多少膨らんだ面を形成していてもよい。
【0098】
本実施形態に係るノブ5は、浴槽用手摺り1の回動部材4の前方端部40寄りの位置であって、且つ回動部材4の右方端部42b寄りの位置、すなわち支持基材3の右方側基材31b寄りの位置に取り付けられている(
図1,3)。ノブ5は、例えば使用者が浴槽用手摺り1を主に座位の状態で移動するために使用するのであれば、回動部材4の前方端部40寄りの位置であって洗い場側とは反対側の位置に取り付けられているのが好ましく、例えば使用者が浴槽用手摺りを主に手を置いて立位の状態で使用するのであれば、回動部材4の前方端部40寄りの位置であって洗い場側とは反対側の位置または前方端部40寄りの位置であって洗い場側の位置およびその反対側の位置に取り付けられているのが好ましい(
図1,3)。
【0099】
使用者が浴槽用手摺り1を使って立位の状態で浴槽2の側壁20を跨ぐ時は、使用者は浴槽用手摺り1と向き合い、浴槽用手摺り1のノブ5に手を掛けて浴槽2の側壁20を跨ぐことになる。このため、ノブ5が、上述のように浴槽用手摺り1の回動部材4の所定の位置に取り付けられていると、使用者は簡単にノブ5へアクセスすることができ、自己の身体を支えることができるようになる。また、
図11に示されるように、使用者が浴槽用手摺り1へ腰を掛けたままの状態で浴槽2へ出入りしようとする際も、使用者はノブ5を利用して自己の身体を簡単に移動することができるようになる。
【0100】
さらに、ノブ5が回動部材4の前方端部40寄りの位置に配置されていると、ノブ5が洗い場側に取り付けられている場合においても、浴槽用手摺り1上に腰をかけた使用者は膝を少し持ち上げるだけで浴槽2の側壁20と一緒にノブ5の上を乗り越えることができるので、ノブ5は、使用者が座位の状態で浴槽2へ出入りしようとする際の障害となることもない。また、ノブ5は支持基材3ではなく、回動部材4へ取り付けられるので、ノブ5を利用することにより回動部材4の開閉が容易となる。また、回動部材4の前方端部40は回動軸から離れているので、使用者はノブ5が回動軸付近に取り付けられている場合に比べて小さな力で回動部材4を開閉することができるようになる。
【0101】
このように、ノブ5の取り付け位置は、使用者による浴槽用手摺り1の使用態様や使用者の好みに応じて、浴槽用手摺り1の回動部材4の前方端部40寄りの位置であって、且つ回動部材4の左方端部42a寄りの位置および/または右方端部42b寄りの位置、すなわち支持基材3の左方側基材31a寄りの位置および/または右方側基材31b寄りの位置を選択することができる。
【0102】
本実施形態に係る浴槽用手摺り1では、ノブ5の下部には雄ネジからなる第1の係合手段(図示せず)が設けられており、回動部材4の上面には、雌ネジ(ネジ孔)35からなる第2の係合手段(
図1,5,8)が複数個配設されている。このため、ノブ5は、使用者の体格等に合わせて第1の係合手段と係合させる第2の係合手段を選択することにより、任意の取り付け位置へ変更/移動することができる。
【0103】
また、図示しないが、ノブ5は、回動部材4の上面にスライド可能に取り付けることによって、ノブ5の取り付け位置を無段階で連続的に変更/移動できるようすることもできる。この場合、ノブ5のスライド機構は、回動部材4の上面においてノブ5をスライド自在に移動させることができ、所定の位置で固定できるものであれば、その構造は特に限定されるものではない。例えば、上述した本実施形態に係るストッパー7のスライド機構や、または特許文献1〜3に記載されているストッパーのスライド機構をノブ5のスライド機構として転用することも可能である。