(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記本体部と前記キャリア部とが前記連結機構部で連結した状態で前記飛行部が浮上飛行を行うことで、前記本体部を前記ケーブル又はワイヤーの上に載せる、あるいは前記本体部を前記ケーブル又はワイヤーから降ろす、あるいは前記本体部が前記ケーブル又はワイヤーに取り付けられた障害物を乗り越える、の少なくともいずれか1つを行うようにした
請求項1〜3のいずれか1項に記載の検査装置。
前記走行処理では、前記ケーブル又はワイヤーが所定の角度以下の上り勾配であるとき、前記ケーブル又はワイヤーに沿って前記本体部を走行させ、前記ケーブル又はワイヤーが所定の角度を越えた上り勾配であるとき、前記本体部に連結された前記キャリア部の飛行部による浮上力で、前記本体部の走行をアシストするようにした
請求項6に記載の検査方法。
前記本体部と前記キャリア部とが前記連結処理で連結した状態で前記飛行処理を行うことで、前記本体部を前記ケーブル又はワイヤーの上に載せる、あるいは前記本体部を前記ケーブル又はワイヤーから降ろす、あるいは前記本体部が前記ケーブル又はワイヤーに取り付けられた障害物を乗り越える、の少なくともいずれか1つを行うようにした
請求項6又は7に記載の検査方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
架空電線は、例えば鉄塔の間に懸架され、高所に配設される。このため、架空電線検査装置で検査を行う際には、高所に配設された架空電線に架空電線検査装置を載せる必要がある。また、架空電線には、懸垂碍子やスペーサなどの設備(障害物)が取り付けられ、架空電線検査装置が架空電線の上を移動する際には、これらの障害物を乗り越える必要がある。
【0006】
このため、特許文献1に記載されるように、検査装置そのものが飛行用のロータを備えて、検査装置が空中飛行を行うことで、検査装置は、高所の架空電線の上に載せることが容易にできると共に、障害物を乗り越えることも容易になる。
ところで、この種の検査装置に組み合わせて使用されることが想定されるロータ付きの小型の飛行体は、バッテリの駆動でロータが回転して飛行を行うものであり、通常、連続飛行が可能な時間が比較的短い時間に制限される。
【0007】
したがって、ロータでの飛行で、架空電線検査装置が架空電線に沿った移動を行うようにした場合、ロータを回転駆動させる電力の供給手段がなければ、連続した長時間の架空電線の検査ができないという問題がある。
特許文献1に記載の検査装置の場合には、検査装置そのものが、近接した架空電線から電力を取り込むパンタグラフを備えて、そのパンタグラフが受電した電力で、ロータを連続駆動することが提案されている。
【0008】
しかしながら、架空電線から受電した電力でロータが飛行を行う構成の場合、活線状態の架空電線しか検査できないという問題がある。すなわち、架空電線の検査を行う場合には、架空電線が送電を停止した非活線状態で検査を行う場合と、架空電線が送電中の活線状態で検査を行う場合とがあり、検査装置は、いずれの場合も対応できることが好ましい。また、架空電線から受電した電力でロータが飛行を行う検査装置の場合、橋梁に設置されたワイヤーなどの検査を行うことは不可能である。
【0009】
本発明は、架空電線などのケーブルやワイヤーの検査が常時良好にできる検査装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明の検査装置は、ケーブル又はワイヤーの状態を検査する本体部と、本体部を搬送するキャリア部とを備えた検査装置である。
そして本体部は、ケーブル又はワイヤーの状態を検査する検査機能部と、ケーブル又はワイヤーの上に載せられた本体部を走行させる走行部とを備える。
またキャリア部は、キャリア部を浮上させる飛行部を備える。
さらに、本体部とキャリア部の少なくともいずれか一方には、本体部とキャリア部との連結及び切り離しを行う連結機構部を備える。
そして、本体部とキャリア部のいずれか一方には、位置検出用の基準部を備え、本体部とキャリア部のいずれか他方には、基準部を検出する位置検出部を備え、位置検出部が検出した位置に基づいて、本体部とキャリア部の相対位置が適正な位置であると判別したとき、連結機構部が、本体部とキャリア部との連結を行うようにした。
【0011】
第2の発明の検査装置は、ケーブル又はワイヤーの状態を検査する検査機能部と、ケーブル又はワイヤーの上に載せられた検査装置を走行させる走行部と、別体のキャリア部で検査装置の位置を検出するための基準部と、キャリア部で検査装置を保持するための連結部とを備える。
【0012】
第1の発明の検査方法は、ケーブル又はワイヤーの状態を検査する本体部と、本体部を搬送するキャリア部とを備えた装置を使用して検査を行う検査方法である。
そして、本体部が備えた検査機能部が、ケーブル又はワイヤーの状態を検査する検査処理と、ケーブル又はワイヤーの上に載せられた本体部を走行させる走行処理と、キャリア部と本体部とを着脱自在に連結する連結処理と、キャリア部が本体部と連結した状態で、本体部を浮上させる飛行処理とを含む。
そして、本体部とキャリア部のいずれか一方には、位置検出用の基準部を備え、本体部とキャリア部のいずれか他方には、基準部を検出する位置検出部を備え、連結処理では、位置検出部が検出した位置に基づいて、本体部とキャリア部の相対位置が適正な位置であると判別したとき、連結を行うようにした。
【0013】
第2の発明の検査方法は、検査装置の本体部が
備える検査機能部がケーブル又はワイヤーの状態を検査する検査処理と、ケーブル又はワイヤーの上に載せられた検査装置の本体部を走行させる走行処理と、
検査装置の本体部に設けられた基準部を使って、浮上処理を行うキャリア部で検査装置の位置を検出する位置検出処理と、位置検出処理で位置を確認しながら、検査装置
の本体部に、浮上処理を行うキャリア部を着脱自在に連結させる連結処理とを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、本体部がケーブル又はワイヤーの上を走行するため、キャリア部による浮上飛行は、本体部をケーブル又はワイヤーに載せたり降ろしたりする際、及び、本体部がケーブル又はワイヤー上の障害物を通過するときに行えばよく、最低限の浮上飛行でよい。したがって、キャリア部は、比較的小容量のバッテリによる駆動で、短時間の浮上飛行を行えば良く、活線状態のケーブルの検査と、非活線状態のケーブル又はワイヤーの検査の双方が行える。また、キャリア部が本体部から着脱可能であるため、本体部を小型に構成することができ、ケーブル又はワイヤーに負担が少ない状態で、良好な検査を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する。)を、添付図面を参照して説明する。
[1.検査装置の全体構成]
図1は、本例の検査装置100の全体構成を示す。
検査装置100は、本体部110とキャリア部150とを備える。また、本体部110とキャリア部150とを無線操作するためのコントローラ190を備える。
本体部110は、架空電線11に載せられて、架空電線11の上を自走して、架空電線11の検査を行う。キャリア部150は、回転するロータ151〜154を備える。キャリア部150は、ロータ151〜154がロータ用モータ151a〜154a(
図2)による駆動で回転することで、浮上して飛行する。キャリア部150は、4個のロータ151〜154の回転状態により、浮上する高さや浮上位置がコントロールされる。なお、キャリア部150は、単独で飛行する場合と、本体部110を連結した状態で飛行する場合とがある。
【0017】
本体部110は、複数の走行用プーリ111〜113と、クランププーリ114,115とを備える。走行用プーリ111〜113は、本体部110の走行部として機能する。
図1に示すように、架空電線11に本体部110が載せられた状態のとき、走行用プーリ111,112とクランププーリ114,115とが架空電線11を上下から挟む。本体部110は、このように走行用プーリ111,112とクランププーリ114,115とで架空電線11を挟むことで、架空電線11から脱落しない構成になっている。なお、クランププーリ114,115は、本体部110を架空電線11に載せるときと、本体部110を架空電線11から外すときに、架空電線11から離れる。
走行用プーリ111,112は、プーリ駆動部144(
図2)による駆動で回転する。この走行用プーリ111,112が回転することで、本体部110は、架空電線11の上を走行する。
【0018】
本体部110は、複数台のカメラ121〜125を備え、本体部110と隣接した架空電線11や、本体部110の周囲を撮影する。なお、
図1では、架空電線11に近接して配置された2台のカメラ121,122と、本体部110の上面に配置されたカメラ123と、本体部110の前面に配置されたカメラ124のみを示す。不図示のカメラ125は、本体部110の後面に配置される。また、本体部110は、架空電線11の直径などの状態や走行距離(走行位置)を計測するセンサ126(
図2)を備える。
【0019】
本体部110の上面には、カメラ123の他に、基準用マーカー131と連結用孔132,133が配置されている。基準用マーカー131は、キャリア部150が備えるカメラ182(
図4)が撮影して、その基準用マーカー131が表示された位置をキャリア部150が検出するためのものである。この基準用マーカー131は、キャリア部150が本体部110と連結する際に、本体部110との相対位置を検出する基準部として使用される。
連結用孔132,133は、本体部110がキャリア部150に連結される際の連結部として使用される。
【0020】
キャリア部150は、それぞれのロータ151〜154の外周部に、カバー161〜164を備える。カバー161〜164は、キャリア部150が飛行する際に、ロータ151〜154が架空電線11と接触するのを防止するように機能する。
【0021】
そして、キャリア部150は、2本のアーム171,172を備える。この2本のアーム171,172は、本体部110と連結及び切り離しを行う連結機構部として機能する。
それぞれのアーム171,172は、キャリア部150に取り付けられた基端側171a,172aが、アーム駆動部174(
図2)による駆動で矢印θ1,θ2に示す方向に約90°回動可能である。
また、2本のアーム171,172の先端側171b,172bは、フック形状になっている。このフック形状の先端側171b,172bが、本体部110の連結用孔132,133に嵌ることにより、キャリア部150が本体部110と連結状態になる。2本のアーム171,172は、切り離し状態のときには水平状態(
図1に示す状態)になり、連結状態のときには、この水平状態から約90°曲がった直立状態になる。
【0022】
また、キャリア部150は、上側カメラ181と下側カメラ182(
図4)を備える。上側カメラ181は、キャリア部150の上側を撮影し、下側カメラ182は、キャリア部150の下側を撮影する。これらのカメラ181,182が撮影した画像は、キャリア部150を本体部110に連結する際の位置制御に使用される。また、キャリア部150のカメラ181,182が、架空電線11を撮影して、その撮影画像から架空電線11の状態を検査することもできる。
【0023】
なお、本体部110に取り付けられた各カメラ121〜125が撮影した画像や、キャリア部150が撮影した画像は、コントローラ190の表示部193が表示する。また、コントローラ190は、本体部110の走行状態や、キャリア部150の浮上状態(飛行状態)を制御することができる。
【0024】
[2.検査装置の内部構成]
図2は、本例の検査装置100の内部構成例を示す。
本体部110は、無線通信部141と検査機能部142と走行制御部143とプーリ駆動部144とを備える。無線通信部141は、コントローラ190やキャリア部150と無線通信を行う。検査機能部142には、各カメラ121〜125が撮影した画像データやセンサ126の検出データが供給される。センサ126では、例えば架空電線の直径の計測などが行われる。
【0025】
検査機能部142は、供給される画像データや検出データに基づいて、架空電線に異常があるか否かの判断などの検査処理を行う。また、検査機能部142が備えるデータ記憶部(不図示)には、収集した画像データや検出データが記憶される。なお、検査機能部142は、画像データや検出データの収集のみを行い、架空電線の状態の判断は、外部の解析装置(コンピュータ装置)が行うようにしてもよい。
また、検査機能部142が収集した画像データや検出データの一部又は全部は、無線通信部141からコントローラ190に供給される。
【0026】
走行制御部143は、プーリ駆動部144に指令を送ることで、本体部110の走行用プーリ111〜113による走行処理を制御する。また、走行制御部143は、クランププーリ114,115によるクランプ状態の実行及び解除を制御する。これらの走行制御部143による走行とクランプ状態の実行及び解除は、無線通信部141がコントローラ190から受信したデータに基づいて実行される。
【0027】
キャリア部150は、無線通信部183と飛行制御部184と連結制御部173とを備える。無線通信部183は、コントローラ190や本体部110と無線通信を行う。飛行制御部184は、4個のロータ用モータ151a〜154aの駆動状態を制御して、ロータ151〜154の回転による飛行状態を制御する。このとき、飛行制御部184は、図示しないセンサによりキャリア部150の姿勢や飛行高度や飛行位置を検出して、適切な飛行となるように制御する。
【0028】
連結制御部173は、アーム171,172の回動駆動を行うアーム駆動部174を制御して、連結処理を行う。例えば、キャリア部150を本体部110に連結させる際には、連結制御部173からの指示で、アーム駆動部174がアーム171,172を水平状態から直立状態に移動させる。また、キャリア部150を本体部110から切り離す際には、連結制御部173からの指示で、アーム駆動部174がアーム171,172を直立状態から水平状態に移動させる。
【0029】
これらの連結と切り離しの処理動作は、無線通信部183がコントローラ190から受信したデータに基づいて行われる。連結制御部173による連結動作は、下側カメラ182が撮影した画像から、キャリア部150と本体部110との相対位置関係が適切であると判断した際に実行される。すなわち、キャリア部150の下側カメラ182が、本体部110の上面の基準用マーカー131を撮影し、連結制御部173が、キャリア部150と本体部110との相対位置関係を判断する。そして、キャリア部150が本体部110の真上であると判断したとき、連結制御部173は、アーム171,172を水平状態から直立状態に移動させる指示を行う。
上側カメラ181と下側カメラ182が撮影した画像データは、無線通信部183からコントローラ190に無線伝送される。
【0030】
コントローラ190は、無線通信部191と、制御部192と、表示部193と、操作部194とを備える。無線通信部191は、本体部110やキャリア部150と無線通信を行う。制御部192は、受信した画像や検出データなどの表示部193での表示の制御を行うと共に、操作部194が受け付けた操作データの無線通信部191からの無線伝送の制御を行う。操作部194は、表示部193と一体化されたタッチパネルでもよい。
作業者は、操作部194を使った操作で、キャリア部150の飛行と本体部110の走行及び検査についての指示を行う。また、キャリア部150と本体部110との連結や切り離しについても、作業者が操作部194を使った操作で指示を行う。
【0031】
コントローラ190は、本例の検査装置100を制御するための専用の機器を用意してもよいが、例えば市販のタブレット端末にプログラムを実装することで、コントローラ190として機能するようにしてもよい。
なお、本体部110とキャリア部150とコントローラ190は、それぞれが内蔵したバッテリ(不図示)から供給される電源で作動する。
【0032】
[3.本体部とキャリア部の連結機構の説明]
図3及び
図4は、本体部110とキャリア部150とが連結した状態を示す。
本体部110とキャリア部150とが連結した状態では、キャリア部150の2本のアーム171,172が直立状態となる。このとき、本体部110とキャリア部150との相対位置が適正である場合、
図4に示すように、アーム171,172の先端側171b,172bが、本体部110側の連結用孔132,133に挿入される。そして、フック形状の先端側171b,172bが、本体部110の連結用孔132,133に嵌り、キャリア部150が本体部110と連結状態になる。
このように連結した状態でキャリア部150が飛行を行うことで、本体部110が搬送される。
【0033】
連結を解除する場合には、アーム171,172の先端側171b,172bが、本体部110側の連結用孔132,133から離れて、水平状態(
図1に示す状態)になる。この連結が解除された状態のとき、キャリア部150は単独で飛行する。
【0034】
図5のフローチャートは、キャリア部150が本体部110と連結する際の動作例を示す。
まず、キャリア部150は、浮上飛行を行い、本体部110の真上の近傍まで移動する。このとき、キャリア部150自身の判断、又はコントローラ190からの指示に基づいて、キャリア部150が飛行位置の調整を行う(ステップS11)。そして、連結制御部173は、キャリア部150の下側カメラ182が撮影した画像から本体部110の上面の基準用マーカー131の位置が適正か否かの判断を行う(ステップS12)。
【0035】
ステップS12の判断で適正でないと判断した場合、ステップS11に戻り、キャリア部150は自身の飛行位置の調整を行う。また、ステップS12で基準用マーカー131の位置が適正であると判断したとき、連結制御部173は、アーム171,172を回動させる指示を行い、連結動作を実行させる(ステップS13)。その後、キャリア部150は、浮上飛行などを行い、連結した状態の本体部110を決められた位置に搬送する(ステップS14)。
【0036】
[4.検査動作の例]
図6は、検査装置100を使用して、4本の架空電線11〜14の検査を行う例を示す。
この例では、4台の本体部110a,110b,110c,110dを用意する。
最初にキャリア部150は、本体部110aを連結した状態で、矢印F1で示すように、架空電線11の真上に飛行し、架空電線11の上に本体部110aを載せる。このときキャリア部150は、上側カメラ181や下側カメラ182で周囲を撮影しながら、架空電線11の上に各プーリ111〜113が載る位置となるように位置合わせを行う。そして、キャリア部150は本体部110aを切り離し、矢印F2で示すように、地上の本体部110bが並べられた箇所に飛行する。なお、本体部110a側では、キャリア部150から切り離される直前に、クランププーリ114,115によるクランプ作業が行われる。
【0037】
その後、矢印F3,F4,F5,F6,F7で示すように、キャリア部150は、本体部110bの架空電線12への搬送、本体部110cの架空電線13への搬送、本体部110dの架空電線14への搬送を順に行う。
【0038】
4本の架空電線11〜14に載せられた4台の本体部110a,110b,110c,110dは、コントローラ190からの指示に基づいて、個別に架空電線11〜14の上を走行する走行処理を行い、各架空電線11〜14の検査を行う。
【0039】
ところで、架空電線11〜14には、懸垂碍子やスペーサなどの設備が設置されている。これらの設備のうち、高さが低い設備あるいは大きさが小さい設備に関しては、本体部110a〜110dのプーリ111,112と対になるクランププーリ114,115との間隔を調整しながら乗り越えて行く機構にすることが出来る。一方、プーリ111,112とクランププーリ114,115との間隔の調整では乗り越えられない設備の場合には、本体部110a〜110dが架空電線11〜14の上を走行する上で障害物となる。このため、障害物を越える際に、キャリア部150は、飛行により各本体部110a〜110dを搬送する。
例えば、
図6に示すように、架空電線12の上の本体部110bが、碍子15に近づいたとき、キャリア部150は、本体部110bの真上まで飛行し、この本体部110bに連結する連結処理を行う。そして、キャリア部150は、矢印F11で示すように、碍子15を乗り越えた位置まで本体部110bを移動させる。
キャリア部150は、このような障害物を乗り越える作業を、それぞれの本体部110a,110b,110c,110dに対して行う。なお、上述したプーリ111,112とクランププーリ114,115との間隔の調整で障害物を乗り越える機構は、一例であり、障害物を乗り越えるための別の機構を本体部150が備えてもよい。
【0040】
そして、本体部110a〜110dによる各架空電線11〜14の検査が終了した後、キャリア部150は、本体部110a〜110dを架空電線11〜14から順に降ろす作業を行う。
このように検査作業が行われることで、キャリア部150は、本体部110を架空電線に載せる際や降ろす際、あるいは、本体部110が架空電線上の障害物を通過する際だけ浮上飛行を行えば良く、短時間の浮上飛行でよい。したがって、キャリア部150は、比較的小容量のバッテリによる駆動で、短時間の浮上飛行を行えば良く、キャリア部150が長時間の連続飛行を行うための大きなバッテリや外部の給電手段を備える必要がない。
また、本体部110は、内蔵されたバッテリによる駆動で走行するため、架空電線が活線状態,非活線状態のいずれであっても検査ができるようになる。
【0041】
さらに、架空電線の上を走行する本体部110は、キャリア部150が別体であるため、非常に小型で軽量に構成することができ、本体部110が走行する際の駆動電力を削減することができ、バッテリによる本体部110の長時間駆動が可能になる。また、本体部110が軽量であることは、架空電線の上を走行する際に、架空電線に与える負担が少なく、本体部110が走行する際に、本体部110の重みで架空電線が垂れ下がる可能性が低く、良好な検査が行える。
【0042】
なお、
図6の例では、架空電線11〜14の数だけ本体部110a〜110dを用意した例とした。これに対して、本体部110は1台として、その本体部110がキャリア部150による搬送で架空電線11〜14を順に移動して、1本ずつ順に検査を行うようにしてもよい。あるいは、キャリア部150についても複数台用意して、複数の本体部110を同時に搬送できるようにしてもよい。
【0043】
また、本体部110とは別の構成の本体部を用意して、その別の構成の本体部に、本体部110が備えるセンサ126とは異なる検査を行うセンサ(例えば渦電流式センサによる電線の内部の状態を検査するセンサ)などを備えてもよい。そして、キャリア部150は、本体部110と別の構成の本体部との双方を、架空電線11に順次載せて、順次各本体部で架空電線11の検査を行うようにしてもよい。あるいは、架空電線11の検査内容に応じて、キャリア部150が本体部110と別の構成の本体部とを交換して、様々な項目の検査を行うようにしてもよい。
【0044】
[5.走行状態の例]
図6で説明した例では、本体部110が架空電線11〜14の上を走行する際には、キャリア部150が離れた状態とした。これに対して、本体部110が架空電線11〜14の上を走行する際にも、キャリア部150が連結された状態のままとしてもよい。
この場合、キャリア部150が連結された本体部110が架空電線11〜14の上を走行する際には、キャリア部150の飛行による浮上力が、本体部110の走行をアシストするようにしてもよい。
【0045】
例えば、
図7に示すように、鉄塔に保持された架空電線11は、鉄塔に近づく程、上りの傾斜角度θaが大きな角度になる。このような場合、本体部110はセンサ126が傾斜角度を検出する。そして、その検出した傾斜角度θaが、予め決められた閾値を越えたとき、本体部110の走行制御部143は、プーリ駆動部144の駆動力M1だけによる本体部110の走行が困難であると判断し、キャリア部150にアシストを指示する。
【0046】
アシストの指示を受信したキャリア部150は、浮上飛行を開始し、浮上飛行による力M2を発生させる。したがって、本体部110には、プーリ駆動部144の駆動力M1に浮上飛行による力M2が加わり、本体部110が傾斜した架空電線11の上を走行するのに十分な力が得られる。したがって、傾斜した架空電線であっても、良好に検査ができるようになる。
【0047】
[6.変形例]
なお、
図1〜
図6に示す検査装置100は、本体部110が1本の架空電線の上を走行するようにした。これに対して、本発明は、複数本の架空電線の上を走行する本体部を備えた検査装置に適用してもよい。
図8は、平行な2本の架空電線11,12の上に載せられて自走する本体部210を備えた検査装置200の構成例を示す。検査装置200が備えるキャリア部150は、
図1に示すキャリア部150と同じ構成である。
【0048】
本体部210は、4個の車輪211〜214を備え、車輪211,213が一方の架空電線11の上に載せられ、車輪212,214が他方の架空電線12の上に載せられる。各車輪211〜214は、本体部210内の駆動部による駆動で回転する。
また、本体部210は、架空電線の状態の撮影や周囲の撮影を行う複数のカメラ221,222,223や、架空電線の状態や走行距離(走行位置)を計測するセンサ(不図示)を備える。本体部210の上面には、基準用マーカー231と、連結用孔232,233とが配置されている。
【0049】
そして、キャリア部150を本体部210に連結する際には、キャリア部150のアーム171,172を連結用孔232,233に挿入する。この連結時の位置合わせは、キャリア部150側の下側カメラ182が撮影した画像から、基準用マーカー231の位置を検出することで行われる。
【0050】
この
図8に示すような複数本の架空電線11,12の上に載せられて走行する本体部210は、キャリア部150による浮上飛行で搬送を行うことができ、
図1に示す本体部110を使用した場合と同様の効果が得られる。なお、
図8に示す本体部210の場合、架空電線に取り付けられた比較的小さな障害物を乗り越えるための機構を設けるようにしてもよい。例えば、本体部210の重量バランスの変更により、本体部210の前方の車輪211,212が浮き上がる状態と、後方の車輪213,214が浮き上がる状態とが、選択的に設定可能な乗り越え機構を設けて、障害物を乗り越えるようにしてもよい。
また、
図8に示す本体部210の代わりに、3本以上の複数本の架空電線の上を走行する本体部としてもよい。
【0051】
また、キャリア部150が本体部110又は210に連結を行う際に、相互の位置が適正か否かの判断は、
図5のフローチャートの例では、キャリア部150が自動的に行うようにした。これに対して、コントローラ190を操作している作業者が、キャリア部150の下側カメラ182が撮影した画像の表示を見ながら、コントローラ190から連結の指示を行うようにしてもよい。
【0052】
また、キャリア部150が本体部110又は210に連結する際には、本体部110,210に基準用マーカーを設け、キャリア部150がカメラ182でマーカーを撮影して、位置合わせを行うようにした。これに対して、キャリア部150側が基準用マーカーを備えて、本体部110のカメラ123,223がキャリア部150を撮影した画像から位置合わせを行うようにしてもよい。あるいは、キャリア部150と本体部110,210の双方が、相互に位置を確認するようにしてもよい。
また、基準用マーカーを使用して位置合わせを行うのは一例であり、その他の構成で位置検出用の基準部が得られるようにしてもよい。例えば、キャリア部150のカメラ182が、本体部110の連結用孔132,133を撮影して、その連結用孔132,133の位置を基準にして位置合わせを行うようにしてもよい。
あるいは、本体部110の上面に配置された基準用マーカーの代わりに、本体部110から発せられる磁力や発信信号を基準部として利用してもよい。
【0053】
また、連結時に可動する部材(
図1でのアーム171,172)は、キャリア部150側にだけ設けたが、本体部110,210側にも連結時に可動する部材を設けて、連結状態が確実にロックされるようにしてもよい。あるいは、本体部110,210側だけが可動して連結動作を行うようにしてもよい。
【0054】
さらに、
図1などに示したアーム171,172を使用して連結を行う構成は、連結機構部の一例を示すものであり、その他の構成で、キャリア部150と本体部110,210とが連結を行う構成としてもよい。例えば、キャリア部150と本体部110,210のいずれか一方に電磁石を設けて、磁力による吸着でキャリア部150と本体部110,210とが連結される構成としてもよい。
また、
図3に示す例では、キャリア部150が本体部110を吊り下げるように連結する状態としたが、キャリア部150の上側に本体部110を載せるようにしてもよい。
【0055】
また、本体部110は、バッテリを内蔵するようにしたが、本体部110が、活線状態の架空電線から受電する受電部を設けるようにして、その受電した電力で本体部110が走行や検査を行うようにしてもよい。
【0056】
また、上述した実施の形態例では、検査装置100,200が架空電線を自走して架空電線の検査を行うようにしたが、キャリア部150と本体部110,210とを切り離さずに連結した状態で飛行しながら検査用のカメラ123〜125などで架空電線を撮影して、その撮影画像から架空電線の状態を検査することもできる。
【0057】
また、上述した実施の形態例では、検査装置100,200として、架空電線の検査を行うようにした。これに対して、検査装置100,200は、架空電線以外のケーブルや、橋梁などの各種構造物に設置されたワイヤーなどの検査を行うようにしてもよい。
【0058】
また、上述した実施の形態例の本体部110やキャリア部150の外形形状は、一例を示したものであり、その他の形状としてもよい。例えば、キャリア部150は、4個のロータ151〜154を備えた構成としたが、その他の個数のロータを配置してもよい。あるいは、ロータ以外の構成で浮上を行う飛行部を備えてもよい。
【0059】
さらに、本発明は上述した実施の形態例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために装置の構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、
図2などの図面に示す信号の流れのラインは説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも装置として必要な全てのラインを示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。