(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の調理器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1はこの発明の第1実施形態の調理器の一例としての加熱調理器の扉閉鎖時の概略正面図を示し、
図2は上記加熱調理器の扉開放時の概略正面図を示している。
【0016】
この第1実施形態の加熱調理器は、
図1,
図2に示すように、直方体形状の本体ケーシング1と、この本体ケーシング1内に設けられ、前側に開口部2aを有する収容部の一例としての加熱庫2と、加熱庫2の開口部2aを開閉する扉3とを備えている。
【0017】
上記本体ケーシング1の上側かつ後側に、吹出口5aを有する排気ダクト5を設けている。また、本体ケーシング1の前面の下部に露受容器6を着脱可能に取り付けている。この露受容器6は、扉3の下側に位置し、扉3の後面(加熱庫2側の表面)や本体ケーシング1の前板55からの水滴を受けることができるようになっている。また、本体ケーシング1の前面の下部には、給水タンク26も着脱可能に取り付けられている。
【0018】
上記扉3は、本体ケーシング1の前面側に下側の辺を軸に回動可能に取り付けられている。この扉3の前面(加熱庫2とは反対側の表面)には、耐熱性を有する透明な外ガラス7が設けられている。また、扉3は、外ガラス7の上側に位置するハンドル8と、外ガラス7の右側に設けられた操作パネル9とを有している。
【0019】
上記操作パネル9は、カラー液晶表示部10およびボタン群11を有している。このボタン群11は、途中で加熱を止めるときなどに押す取り消しキー12と、加熱を開始するときに押すあたためスタートキー13とを含んでいる。また、操作パネル9には、スマートフォンなどからの赤外線を受ける赤外線受光部14が設けられている。
【0020】
上記加熱庫2内には被加熱物15が収容される。また、加熱庫2内への金属製の調理トレイ91,92(
図3に示す)の出し入れが可能になっている。加熱庫2の左側部2b,右側部2cの内面には、調理トレイ91を支持する上棚受け16A,16Bが設けられている。また、加熱庫2の右側部2c,左側部2bの内面には、上棚受け16A,16Bよりも下側に位置するように、調理トレイ92を支持する下棚受け17A,17Bが設けられている。
【0021】
図3は、上記加熱調理器の主要部の構成を説明するための模式図である。この
図3では、加熱庫2を左側から見た状態が示されている。なお、
図3において、
図1,
図2と同一の構成部には、同一参照番号を付している。
【0022】
上記加熱調理器は、循環ダクト18と、循環ファン19と、上ヒータ20と、中ヒータ21と、下ヒータ22と、循環ダンパ23と、チューブポンプ25と、給水タンク26および蒸気発生装置70を備えている。この上ヒータ20、中ヒータ21および下ヒータ22は、加熱部の一例であって、それぞれ、例えばシーズヒータから成っている。なお、チューブポンプ25はポンプの一例であり、駆動方向によって給水動作と排水動作とを切り替え可能なポンプであればよい。
【0023】
上記加熱庫2の上部2eは、水平方向に対して傾斜する傾斜部2fを介して加熱庫2の後部2dと連なっている。この傾斜部2fに、循環ファン19と対向するように複数の吸込口27を設けている(
図2参照)。また、加熱庫2の上部2eに上吹出口28を複数設けている。また、加熱庫2の後部2dに、第1後吹出口29、第2後吹出口30および第3後吹出口31を、それぞれ、複数設けている(
図2参照)。なお、
図3では、複数の吸込口27のうちの1個だけを示している。また、
図3では、第1後吹出口29、第2後吹出口30および第3後吹出口31は各1個だけを示している。
【0024】
上記循環ダクト18は、吸込口27、上吹出口28および第1〜第3後吹出口29〜31を介して加熱庫2内と連通している。この循環ダクト18は、加熱庫2の上側から後側に亘って設けられて、逆L字形状を呈するように延在している。また、循環ダクト18の左右方向の幅は、加熱庫2の左右方向の幅より狭く設定されている。
【0025】
上記循環ファン19は、遠心ファンであって、循環ファン用モータ56によって駆動される。この循環ファン用モータ56が循環ファン19を駆動すると、加熱庫2内の空気や飽和蒸気(以下、「空気など」と言う)は、複数の吸込口27から循環ダクト18内に吸い込まれ、循環ファン19の径方向外側に吹き出す。より詳しくは、循環ファン19の上側では、空気などは、循環ファン19から斜め上方に流れた後、後方から前方に向かって流れる。一方、循環ファン19の下側では、空気などは、循環ファン19から斜め下方に流れた後、上方から下方に向かって流れる。なお、上記空気などは熱媒体の一例である。
【0026】
上記循環ダクト18内かつ循環ファン19の外側近傍に庫内温度センサ76(
図7に示す)を配置している。この庫内温度センサ76により、加熱庫2内から吸込口27を介して吸い込まれた熱媒体の温度すなわち庫内温度を検出する。
【0027】
上記上ヒータ20は、循環ダクト18内に配置され、加熱庫2の上部2eに対向している。この上ヒータ20は、上吹出口28へ流れる空気などを加熱する。
【0028】
上記中ヒータ21は、環状に形成され、循環ファン19を取り囲んでいる。この中ヒータ21は、循環ファン19から上ヒータ20に向かう空気などを加熱したり、循環ファン19から下ヒータ22に向かう空気などを加熱したりする。
【0029】
上記下ヒータ22は、循環ダクト18内に配置され、加熱庫2の後部2dに対向している。この下ヒータ22は、第2,第3後吹出口30,31へ流れる空気などを加熱する。
【0030】
上記循環ダンパ23は、循環ダクト18内かつ中ヒータ21と下ヒータ22との間に回動可能に設けられている。この循環ダンパ23の回動は循環ダンパ用モータ59(
図7に示す)によって行われる。
【0031】
また、蒸気発生装置70は、上側開口を有する金属製の蒸気発生容器71と、その蒸気発生容器71の上側開口を覆う耐熱性樹脂(例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂)からなる蓋部72と、蒸気発生容器71の底部71aに鋳込まれたシーズヒータから成る蒸気発生用ヒータ73とを有する。この蒸気発生容器71の底部71a上には給水タンク26からの水が溜まり、熱源の一例としての蒸気発生用ヒータ73が蒸気発生容器71を介して上記水を加熱する。そして、蒸気発生用ヒータ73による加熱で発生した飽和蒸気は、樹脂製の蒸気チューブ35と金属製の蒸気管36とを流れて、複数の蒸気供給口37を介して加熱庫2内に供給される(
図2参照)。なお、
図3では、複数の蒸気供給口37のうちの1個だけを示している。
【0032】
また、上記加熱庫2内の飽和蒸気は、循環ファン19により上ヒータ20、中ヒータ21および下ヒータ22に送られ、上ヒータ20、中ヒータ21および下ヒータ22で加熱することにより、100℃以上の過熱蒸気となる。
【0033】
また、上記蓋部72には、一対の電極棒75a,75bから成る水位センサ75が取り付けられている。この電極棒75a,75bの間が導通状態になったか否かに基づいて、蒸気発生容器71の底部71a上の水位が所定水位になったか否かが判定される。
【0034】
上記チューブポンプ25は、シリコンゴム等からなる弾性変形可能な給排水チューブ40をローラ(図示せず)でしごいて、そのローラの駆動方向によって、給水タンク26内の水を蒸気発生装置70に流したり、蒸気発生装置70内の水を給水タンク26に流したりする。この給排水チューブ40は、給水経路の一例である。
【0035】
上記給水タンク26は、給水タンク本体41および連通管42を有する。この連通管42の一端部が給水タンク本体41内に位置する一方、連通管42の他端部が給水タンク26外に位置する。給水タンク26がタンクカバー43内に収容されると、連通管42の他端部がタンクジョイント部44を介して給排水チューブ40に接続される。すなわち、給水タンク本体41内が連通管42などを介して蒸気発生装置70内と連通する。
【0036】
上記チューブポンプ25と給水タンク26と給排水チューブ40とタンクカバー43とタンクジョイント部44で給水装置を構成している。
【0037】
図4は上記加熱調理器の給気ユニット100を含む構成を説明するための模式図を示している。この
図4でも、
図3と同様に、加熱庫2を左側方から見た状態が示されている。なお、
図4において、
図3と同一の構成部には、同一参照番号を付している。
【0038】
また、上記加熱庫2の傾斜部2fに、給気ダンパ51で開閉される複数の給気口50を設けている(
図2参照)。この複数の給気口50と給気ファン54を給気通路101を介して接続している。また、給気通路101の給気口50近傍から分岐する第1冷却通路102に冷却ダンパ52を設けている。例えば、給気ファン54はシロッコファンからなる。
【0039】
また、上記加熱庫2の上部2eに設けられた凹部310に赤外線センサユニット300を配置している。
【0040】
上記給気ファン54は、循環ファン用モータ56(
図3に示す)と赤外線センサユニット300を冷却するための冷却ファンを兼ねている。また、上記給気ダンパ51は、給気口開閉部の一例である。また、冷却ダンパ52は、冷却通路開閉部の一例である。上記給気ダンパ51(給気口開閉部)と冷却ダンパ52(冷却通路開閉部)で切換機構を構成している。
【0041】
図4の下側の円部分に赤外線センサユニット300の構成を示す模式図を示している。上記赤外線センサユニット300は、
図4に示すように、加熱庫2の上部2eに設けられた凹部310に軸方向が前後方向かつ水平方向に取り付けられた筒状ハウジング301と、その筒状ハウジング301内に回動可能に支持された円筒状のセンサ保持部302と、そのセンサ保持部302に保持された赤外線センサ303と、筒状ハウジング301の前面側の一端に取り付けられ、センサ保持部302を駆動する赤外線センサ用モータ304とを有する。この実施形態では、赤外線センサ303は、縦8×横8の64領域の温度を検出するエリアセンサを用いたが、赤外線センサはこれに限らず、センサ部が直線状に並んだラインセンサでもよい。
【0042】
この赤外線センサユニット300は、赤外線センサ用モータ304により円筒状のセンサ保持部302を回動させることにより、加熱庫2内に向かって赤外線センサ303の検出面を向けると共に、赤外線センサ303の検出面に垂直な軸を、本体ケーシング1の左右方向かつ垂直平面に沿って所定の角度範囲(例えば20度)内で回動させる(
図5A〜
図5D参照)。
【0043】
図4では、給気ダンパ51が開いた状態で給気ファン54からの空気が複数の給気口50を介して加熱庫2内に供給される。このとき、冷却ダンパ52により第1冷却通路102を閉じている。また、加熱庫2内の余剰な空気などが、自然に、自然排気口45から第4風通路204へ流れ出る。
【0044】
次に、給気ダンパ51が閉じて複数の給気口50が閉鎖され、冷却ダンパ52により第1冷却通路102を開くと、給気ファン54からの空気の一部が、給気通路101と第1冷却通路102を介して循環ファン用モータ56(
図3に示す)に供給される。
【0045】
さらに、給気ダンパ51を閉じることにより、給気ダンパ51近傍に設けられた第2冷却通路103が開いて、給気ファン54からの空気の残りが天面側に配置された赤外線センサユニット300に供給される。上記給気通路101と第1冷却通路102および第2冷却通路103で、循環ファン用モータ56(
図3に示す)と赤外線センサ303を冷却するための冷却通路を構成している。
【0046】
また、
図5A〜
図5Dは上記加熱調理器の赤外線センサ303の動作を説明するための模式図を示している。
【0047】
図5A,
図5Bは上段に載置された調理トレイ91上の被加熱物の温度を検出するときの赤外線センサユニット300の赤外線センサ303(
図4に示す)による温度検出範囲を示している。
図5Aに示す温度検出範囲は、正面視において調理トレイ91上の左側領域であり、
図5Bに示す温度検出範囲は、正面視において調理トレイ91上の右側領域である。赤外線センサ用モータ304により赤外線センサ303を有する円筒状のセンサ保持部302を回動させて、赤外線センサ303の検出面を左右方向に振る。なお、この実施形態では、赤外線センサ303の温度検出範囲は、
図5Aに示す左側領域と、
図5Bに示す右側領域と、左側領域と右側領域との間の中央領域の3つの領域に分けられているが、4以上の複数の領域に分けてもよい。
【0048】
また、
図5C,
図5Dは加熱庫2の底面上の被加熱物の温度を検出するときの赤外線センサユニット300の赤外線センサ303(
図4に示す)による温度検出範囲を示している。
図5Cに示す温度検出範囲は、正面視において加熱庫2の底面上の左側領域であり、
図5Dに示す温度検出範囲は、正面視において加熱庫2の底面上の右側領域である。なお、この実施形態では、
図5A,
図5Bと同様に、赤外線センサ303の温度検出範囲は、
図5Cに示す左側領域と、
図5Dに示す右側領域と、左側領域と右側領域との間の中央領域の3つの領域に分けられているが、4以上の複数の領域に分けてもよい。
【0049】
また、
図6は、上記加熱調理器の排気ユニット200を含む構成を説明するための模式図を示している。この
図6でも、
図3と同様に、加熱庫2を左側方から見た状態が示されている。なお、
図6において、201は第1風通路、202は第2風通路、203は第3風通路、207は希釈エリア部である。
【0050】
上記加熱庫2の後部2dの下端部に自然排気口45を設けている(
図2参照)。この自然排気口45は、排気ユニット200(
図8に示す)の第4風通路204などを介して排気ダクト5に連通している。加熱庫2内の空気などが余剰になると、その余剰な空気などが、自然排気口45から第4風通路204へ自然に流れ出る。また、排気ファン47からの吹出空気の一部を、第3風通路203を介して本体ケーシング1(
図1に示す)内の前面側に供給する。
【0051】
また、上記加熱庫2の傾斜部2fに、排気ダンパ49で開閉される複数の強制排気口48を設けている(
図2参照)。この強制排気口48は、排気ユニット200(
図8に示す)を介して排気ダクト5に連通している。
【0052】
また、上記排気ユニット200に湿度センサ53を取り付けている。この湿度センサ53は、第2風通路202を流れる排気に含まれる蒸気の量を示す信号を制御装置80(
図7に示す)へ送出する。
【0053】
図7は上記加熱調理器の制御ブロック図を示している。
【0054】
上記加熱調理器は、マイクロコンピュータと入出力回路などからなる制御装置80を備えている。この制御装置80には、上ヒータ20,中ヒータ21,下ヒータ22,蒸気発生用ヒータ73,循環ファン用モータ56,排気ファン用モータ57,給気ファン用モータ58,循環ダンパ用モータ59,排気ダンパ用モータ60,給気ダンパ用モータ61,冷却ダンパ用モータ62,操作パネル9,湿度センサ53,庫内温度センサ76,水位センサ75,チューブポンプ25,マグネトロン4,赤外線センサ303,赤外線センサ用モータ304などが接続されている。上記マグネトロン4は、加熱部の一例である。
【0055】
上記庫内温度センサ76は、循環ファン19近傍に配置されて、循環ダクト18内の温度を検出する。この庫内温度センサ76により検出される循環ダクト18内の温度は、循環ファン19の駆動により吸込口27を介して吸い込まれた加熱庫2内の雰囲気の温度すなわち庫内温度と略同じとなる。
【0056】
また、上記制御装置80は、蒸気発生装置70を制御する蒸気制御部80aと、被加熱物の重量を推定する重量推定部80bと、上ヒータ20,中ヒータ21,下ヒータ22を制御するヒータ制御部80cと、循環ファン19(
図3に示す)と給気ファン54(
図4に示す)と排気ファン47(
図6に示す)を制御するファン制御部80dを有する。
【0057】
上記制御装置80は、調理開始時に蒸気制御部80aにより蒸気発生装置70を制御して、蒸気発生装置70から所定量の蒸気を加熱庫2内に供給した後に蒸気発生装置70を停止する。次に、ファン制御部80dにより循環ファン19を回転させて、加熱庫2内の空気や蒸気が複数の吸込口27から循環ダクト18内に吸い込まれ、循環ファン19の径方向外側に吹き出すことにより、加熱庫2内を攪拌する。そして、蒸気発生装置70の停止後の加熱庫2内の底面上に載置された被加熱物の温度を赤外線センサ303により検出し、その加熱庫2内の被加熱物の温度の変化に基づいて、重量推定部80bにより被加熱物の重量を推定する。
【0058】
上記制御装置80は、操作パネル9,湿度センサ53,庫内温度センサ76,水位センサ75,赤外線センサ303などからの信号に基づいて、上ヒータ20,中ヒータ21,下ヒータ22,蒸気発生用ヒータ73,循環ファン用モータ56,排気ファン用モータ57,給気ファン用モータ58,循環ダンパ用モータ59,排気ダンパ用モータ60,給気ダンパ用モータ61,冷却ダンパ用モータ62,チューブポンプ25,マグネトロン4,赤外線センサ用モータ304などを制御する。
【0059】
図8は本体ケーシング1(
図1に示す)の上面と両側面を覆う上面板1aと裏面板(図示せず)を取り外した加熱調理器を後方かつ斜め上方から見た斜視図を示している。
図8において、
図1〜
図7と同一の構成部には、同一参照番号を付している。
【0060】
図8に示すように、加熱庫2の後側かつ左側(
図8では右側)に給気ユニット100を設けている。この給気ユニット100は、下側に配置された給気ファン54と、その給気ファン54から上方に向かって延在する給気通路101と、給気通路101の上側から分岐して、加熱庫2の後側上部の中央に位置する循環ファン用モータ56に向かって延在する第1冷却通路102を有している。詳しくは、給気ユニット100は、給気ファン54から上方に逆L字形状を呈するように延在している。
【0061】
また、加熱庫2の後側かつ右側(
図8では左側)に排気ユニット200を設けている。この排気ユニット200は、排気ユニット用カバー220を含むハウジング210と、ハウジング210の下側に配置された排気ファン47とを有する。
【0062】
上記排気ユニット200の上部の右側方(
図8では左側)に排気ダンパ用モータ60を配置している。この排気ダンパ用モータ60により、排気ユニット200内の上部に設けられた排気ダンパ49(
図6に示す)を開閉する。
【0063】
上記加熱庫2の上部2eに、仕切板312を前後方向に立設している。この仕切板312によって、給気ダンパ51(
図4に示す)近傍に設けられた第2冷却通路103(
図4に示す)から赤外線センサユニット300の領域に流れる冷却風が本体ケーシング1内の左側面に流れないように遮っている。
【0064】
上記構成の加熱調理器において、調理開始時に蒸気制御部80a(
図7に示す)により蒸気発生装置70を制御して、蒸気発生装置70から所定量の蒸気を供給した後に蒸気発生装置70を停止した状態で、加熱庫2内の被加熱物の温度を赤外線センサ303により検出し、その被加熱物の温度の変化に基づいて、重量推定部80b(
図7に示す)により被加熱物の重量を推定する。
【0065】
この実施形態では、蒸気制御部80aにより蒸気発生用ヒータ73(
図7に示す)を30秒間オンする。
【0066】
上記蒸気発生装置70の停止直後は、加熱庫2内に供給された蒸気の温度が赤外線センサ303により検出され、時間の経過に伴って蒸気が被加熱物表面に結露することで赤外線センサ303により検出される被加熱物の温度が低下する。このときの被加熱物の温度低下の傾向は、被加熱物の重量に応じて変化し、被加熱物の重量が重いほど、被加熱物の表面に結露が多くなって赤外線センサ303により検出される被加熱物の温度低下が大きくなる。このような被加熱物の重量と被加熱物の温度変化との相関関係を利用することにより、重量推定部80bにより被加熱物の重量を推定することができる。
【0067】
なお、この第1実施形態では、蒸気発生装置70の停止後の被加熱物の温度の変化に基づいて、重量推定部80bにより被加熱物の重量を推定したが、蒸気発生装置70を停止してから所定時間経過後の被加熱物の温度に基づいて被加熱物の重量を推定してもよい。
【0068】
また、蒸気発生装置70から所定量の蒸気の供給後に蒸気発生装置70を停止した状態で、ファン制御部80dにより循環ファン19(
図3に示す)を制御して、循環ファン19により加熱庫2内に充満した蒸気を攪拌する。これによって、加熱庫2内の蒸気の分布が均一になり、被加熱物の表面への結露にムラがなくなるので、被加熱物の重量に応じた被加熱物の温度変化が正確に表れ、被加熱物の重量をより正確に推定できる。
【0069】
なお、加熱庫2内の雰囲気を攪拌するファンは、循環ファン19に限らず、給気ファンなどの他のファンでもよい。なお、蒸気の供給中から循環ファンを制御して、蒸気を撹拌してもよいし、蒸気の供給中のみ、蒸気を撹拌してもよい。
【0070】
また、上記加熱庫2内の複数箇所(この第1実施形態では64箇所)の温度を検出するエリアセンサを赤外線センサ303として用いることによって、被加熱物の温度変化が正確に把握でき、被加熱物の重量をより正確に推定できる。
【0071】
図9,
図10は、冷凍の薄切り肉100g,200gのサンプルを解凍する実験を行った結果の一例である。この実験では、加熱庫2の底面上かつ中央に冷凍の薄切り肉を載置し、赤外線センサ303の温度検出範囲は、加熱庫2の底面の中央領域とした。
【0072】
図9は薄切り肉100gを収容した加熱庫2内に所定量の水蒸気を供給したときの赤外線センサ303(
図4に示す)の検出温度[℃]を示し、
図10は薄切り肉200gを収容した加熱庫2内に所定量の水蒸気を供給したときの赤外線センサ303の検出温度[℃]を示している。
【0073】
また、
図9,
図10の上側には、3つのサンプルについて、蒸気発生装置70からの蒸気を供給する前の初期の検出温度を示し、
図9,
図10の下側には、各サンプルについて、蒸気発生装置70の蒸気の供給を停止から90秒後の検出温度を示している。
【0074】
ここで、赤外線センサ303により64領域(縦8×横8)の温度[℃]を検出しており、
図9に示す中央付近の太線で囲まれた4つの領域が薄切り肉の温度を判定している領域であり、
図10に示す中央付近の太線で囲まれた6つの領域が薄切り肉の温度を判定している領域である。
【0075】
図9,
図10から明らかなように、薄切り肉100gと200gでは、蒸気発生装置70から蒸気を供給する前の初期の検出温度に大きな差はないが、蒸気発生装置70の停止から90秒後の赤外線センサ303の検出温度は、薄切り肉100gよりも薄切り肉200gのサンプルの方が低くなっていることが分かる。
【0076】
このような特性を用いることによって、重量推定部80bは、蒸気発生装置70からの蒸気を供給する前の初期の検出温度と、蒸気発生装置70の停止から90秒後の検出温度との温度差△tに基づいて、冷凍の薄切り肉の重量を推定することが可能になる。
【0077】
なお、重量推定部80bによる被加熱物の重量の推定方法は、これに限らず、蒸気発生装置70の停止から所定時間後の検出温度に基づいて、被加熱物の重量を推定してもよい。
【0078】
上記第1実施形態では、被加熱物として冷凍食品の重量を推定したが、食品表面への結露による温度低下を利用して食品の重量を推定するので、冷蔵食品の重量を推定したり、常温の食品を推定したりすることも可能である。
【0079】
〔第2実施形態〕
また、この発明の第2実施形態の加熱調理器は、制御装置80の動作を除いて第1実施形態の加熱調理器と同一の構成をしており、
図1〜
図8を援用する。
【0080】
この第2実施形態の加熱調理器では、調理開始時に蒸気発生装置70から供給する蒸気が加熱庫2内に充満するように、上記所定量を設定しているので、蒸気発生装置70の停止直後に加熱庫2内に十分に蒸気が充満することで、被加熱物への結露が促進され、被加熱物の温度変化が正確に把握できる。
【0081】
上記第2実施形態の加熱調理器は、第1実施形態の加熱調理器と同様の効果を有する。
【0082】
〔第3実施形態〕
また、この発明の第3実施形態の加熱調理器は、制御装置80の動作を除いて第1実施形態の加熱調理器と同一の構成をしており、
図1〜
図8を援用する。
【0083】
この第3実施形態の加熱調理器では、重量推定部80bにより被加熱物の重量を推定した後に行う加熱調理であってかつ蒸気発生装置70または加熱部(マグネトロン4,上ヒータ20,中ヒータ21,下ヒータ22)の少なくとも一方を用いた加熱調理において、制御装置80によって、重量推定部80bにより推定された被加熱物の重量に基づいて加熱シーケンスを制御する。これによって、被加熱物の重量に応じて適切な蒸気量(または加熱出力)や加熱時間を設定することができ、仕上がりのよい加熱調理が可能になる。
【0084】
上記第3実施形態の加熱調理器は、第1実施形態の加熱調理器と同様の効果を有する。
【0085】
〔第4実施形態〕
図11はこの発明の第4実施形態の加熱調理器を備えた加熱調理システムの概略構成図を示している。この第4実施形態の加熱調理器は、制御装置80の動作を除いて第1実施形態の加熱調理器と同一の構成をしており、
図1〜
図8を援用する。
【0086】
上記加熱調理システムは、加熱調理器1100と、この加熱調理器1100と通信する家族伝言板サーバ1400と、加熱調理器1100や家族伝言板サーバ1400などと通信する管理サーバ1500と、家族伝言板サーバ1400,管理サーバ1500などと通信する情報端末の一例としての複数のスマートフォン1300とを備える。なお、加熱調理システムは、情報端末が1台であってもよい。また、この加熱調理システムは、インターネット網Nを介して情報提供サーバ(図示せず)から天気などの情報の提供を受ける。
【0087】
上記家族伝言板サーバ1400,管理サーバ1500は、クラウドコンピューティングシステムを構成している。なお、家族伝言板サーバ1400,管理サーバ1500を1つのサーバで実現してもよい。
【0088】
上記加熱調理器1100は、無線アクセスポイント1200およびインターネット網Nを介して家族伝言板サーバ1400,管理サーバ1500と通信を行う無線通信モジュール1120を備える。このインターネット網Nは、通信ネットワークの一例である。無線通信モジュール1120が直接インターネット網Nに接続されるようにしてもよい。
【0089】
上記無線通信モジュール1120は、屋内の無線アクセスポイント1200との間で無線LANによる通信を行う。より詳しくは、無線通信モジュール1120は、通信規格の一例としての無線LANの規格であるWi-Fi(登録商標)を用い、無線アクセスポイント1200を介して、屋外の家族伝言板サーバ1400や管理サーバ1500に情報を送信したり受信したりする。
【0090】
上記スマートフォン1300は、個人の活動情報を測定したり処理したりする機能を備えた機器であり、家族を構成する各人が携帯するなどして、スマートフォン1300からの一日または半日などの活動情報を管理サーバ1500を介して加熱調理器1100で受信して処理し、処理されたデータに基づいて適切な料理メニューを提案する。ここで、調理メニーの提案は、カラー液晶表示部10(
図1に示す)により表示してもよいし、音声により提案してもよい。
【0091】
上記活動情報には、消費カロリーと活動環境温度が含まれている。例えば、万歩計(登録商標)などから算出される消費カロリー情報に加えて、環境温度条件を加味することで、より正確な活動情報が得られる。ここで、例えばスマートフォン1300は、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標);携帯情報機器向けの無線通信技術)などにより万歩計と通信を行う。
【0092】
また、個人の活動情報としては、一定期間の活動情報もしくは一定期間の活動情報とその日半日の活動情報に基づいて、一日の消費カロリーを予測し、その予測情報に基づいて調理メニューを提案する。
【0093】
この加熱調理器において提案する調理メニューとしては、予め設定された各個人の標準摂取カロリーに対して、予測された消費カロリーが多いか少ないかに応じて提案するカロリーコントール調理メニューや、猛暑の中での活動であるときは熱中症対策として提案する塩分コントロール調理メニューなどがある。
【0094】
従来、人間は動くこと(運動)によってエネルギーを消費し、その消費エネルギーは食事によって供給(摂取)されて、毎日の生活を営んでいる。身体を健康に維持するためには、エネルギー(カロリー)の供給と消費のバランス、1日の食事(エネルギー)配分、必要栄養素の摂取が欠かせない。一般的に、基礎代謝や日常のさまざまな動きで消費される活動カロリーよりも、 飲食による摂取カロリーが多いと肥満などの原因になると言われている。
【0095】
しかし、家族を構成する各個人の活動量は千差万別であり、例えば主婦が自分以外の家族の活動を把握して、各個人または構成家族に対応したメニューを提供することは非常に難しかった。
【0096】
これに対して、上記第4実施形態の加熱調理器は、家族を構成する各個人の活動や目的に見合った調理メニューを提案することで、家族の健康および毎日の献立を考える手助けとなる。
【0097】
上記第1〜第4実施形態では、加熱部として上ヒータ20,中ヒータ21,下ヒータ22を用いた加熱調理器について説明したが、加熱部を用いた加熱調理器に限らず、この発明は、加熱を伴わない調理を行う調理器に適用してもよい。
【0098】
また、上記第1〜第4実施形態では、多眼型の赤外線センサ(エリアセンサ)を用いたが、単眼型の赤外線センサを用いて被加熱物の温度を検出してもよいし、複数の検出部が1列に配列された赤外線センサ(ラインセンサ)を用いて被加熱物の温度を検出してもよい。
【0099】
この発明の加熱調理器では、オーブンレンジなどにおいて、過熱蒸気または飽和蒸気を用いることによって、ヘルシーな調理を行うことができる。例えば、この発明の加熱調理器では、温度が100℃以上の過熱蒸気または飽和蒸気を食品表面に供給し、食品表面に付着した過熱蒸気または飽和蒸気が凝縮して大量の凝縮潜熱を食品に与えるので、食品に熱を効率よく伝えることができる。また、凝縮水が食品表面に付着して塩分や油分が凝縮水と共に滴下することにより、食品中の塩分や油分を低減できる。さらに、加熱庫内は過熱蒸気または飽和蒸気が充満して低酸素状態となることにより、食品の酸化を抑制した調理が可能となる。ここで、低酸素状態とは、加熱庫内において酸素の体積%が10%以下(例えば0.5〜3%)である状態を指す。
【0100】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記第1〜第4実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記第1〜第4実施形態で記載した内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【0101】
この発明および実施形態をまとめると、次のようになる。
【0102】
この発明の調理器は、
被加熱物を収容するための収容部2と、
上記収容部2内に供給する蒸気を発生する蒸気発生装置70と、
上記収容部2内の上記被加熱物の温度を検出する赤外線センサ303と、
上記蒸気発生装置70を制御する制御装置80と
を備え、
上記制御装置80は、
上記蒸気発生装置70から蒸気を上記収容部2内に供給するように、上記蒸気発生装置70を制御する蒸気制御部80aと、
上記蒸気制御部80aにより制御された上記蒸気発生装置70から所定量の蒸気を上記収容部2内に供給した後に上記蒸気発生装置70を停止した状態で、上記赤外線センサ303により検出された上記収容部2内の上記被加熱物の温度変化または温度に基づいて、上記被加熱物の重量を推定する重量推定部80bと
を有することを特徴とする。
【0103】
上記構成によれば、蒸気制御部80aにより蒸気発生装置70を制御して、蒸気発生装置70から所定量の蒸気を供給した後に蒸気発生装置70を停止した状態で、収容部2内の被加熱物の温度を赤外線センサ303により検出し、その収容部2内の被加熱物の温度の変化に基づいて、重量推定部80bにより被加熱物の重量を推定する。
【0104】
例えば、上記蒸気発生装置70の停止直後は、収容部2内に供給された蒸気の温度が赤外線センサ303により検出され、時間の経過に伴って蒸気が被加熱物表面に結露することで赤外線センサ303により検出される被加熱物の温度が低下する。このときの被加熱物の温度低下の傾向は、被加熱物の重量に応じて変化し、被加熱物の重量が重いほど、被加熱物表面に結露が多くなって赤外線センサ303により検出される被加熱物の温度低下が大きくなる。このような被加熱物の重量と被加熱物の温度変化との相関関係を利用することにより、被加熱物の温度変化または温度に基づいて、重量推定部80bにより被加熱物の重量を推定することができる。
【0105】
したがって、ユーザーが入力することなく被調理物の正確な重量に基づいて仕上がりのよい調理ができ、利便性を向上できる。
【0106】
また、一実施形態の調理器では、
上記収容部2内の気体を攪拌させるためのファン19を備え、
上記制御装置80は、
上記蒸気制御部80aにより制御された上記蒸気発生装置70から上記所定量の蒸気を上記収容部2内に供給した後に上記蒸気発生装置70を停止した状態で、上記ファン19により上記収容部2内の気体を攪拌するように、上記ファン19を制御するファン制御部80dを有する。
【0107】
上記実施形態によれば、調理開始時に蒸気制御部80aにより制御された蒸気発生装置70から所定量の蒸気を収容部2内に供給した後に蒸気発生装置70を停止して、その蒸気発生装置70を停止した状態で、ファン制御部80dによりファン19を制御して、ファン19により収容部2内に充満した蒸気を攪拌することによって、収容部2内の蒸気の分布が均一になり、被加熱物の表面への結露にムラがなくなるので、被加熱物の重量に応じた被加熱物の温度変化が正確に表れ、被加熱物の重量をより正確に推定できる。
【0108】
また、一実施形態の調理器では、
上記赤外線センサ303は、上記収容部2内の複数箇所の温度を検出するエリアセンサである。
【0109】
上記実施形態によれば、収容部2内の複数箇所の温度を検出するエリアセンサを赤外線センサ303として用いることによって、被加熱物の温度変化が正確に把握でき、被加熱物の重量をより正確に推定できる。
【0110】
また、一実施形態の調理器では、
上記蒸気発生装置70から上記収容部2内に供給する蒸気の上記所定量は、上記収容部2内に蒸気が充満するように設定されている。
【0111】
上記実施形態によれば、調理開始時に蒸気発生装置70から供給する蒸気が収容部2内に充満するように、上記所定量を設定しているので、蒸気発生装置70の停止直後に収容部2内に十分に蒸気が充満することで、被加熱物への結露が促進され、被加熱物の温度変化が正確に把握できる。
【0112】
また、一実施形態の調理器では、
上記収容部2内の上記被加熱物を加熱する加熱部(4,20,21,22)を備え、
上記制御装置80は、
上記重量推定部80bにより上記被加熱物の重量を推定した後に行う加熱調理であってかつ上記蒸気発生装置70または上記加熱部(4,20,21,22)の少なくとも一方を用いた加熱調理において、上記重量推定部80bにより推定された上記被加熱物の重量に基づいて加熱シーケンスを制御する。
【0113】
上記実施形態によれば、重量推定部80bにより被加熱物の重量を推定した後に行う加熱調理であってかつ蒸気発生装置70または加熱部(4,20,21,22)の少なくとも一方を用いた加熱調理において、制御装置80によって、重量推定部80bにより推定された被加熱物の重量に基づいて加熱シーケンスを制御する。これによって、例えば、被加熱物の重量に応じて適切な蒸気量(または加熱出力)や加熱時間を設定することができ、仕上がりのよい加熱調理が可能になる。