(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393644
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】電磁誘導式位置検出器及び電磁誘導式位置検出方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20180910BHJP
G01D 5/244 20060101ALI20180910BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20180910BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
G01D5/20 110E
G01D5/244 F
G01D5/245 110Q
G01B7/00 101E
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-64001(P2015-64001)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-183896(P2016-183896A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】315017775
【氏名又は名称】三菱重工工作機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】石井 浩
【審査官】
吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−271112(JP,A)
【文献】
実開昭63−93504(JP,U)
【文献】
特開2003−247862(JP,A)
【文献】
特開2010−145086(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/195424(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定ピッチpで各々が形成されると共に、交流電流を各々に供給することにより各々に磁束が発生する第1の1次側平面コイル、第2の1次側平面コイル及び第3の1次側平面コイルを有し、前記第1の1次側平面コイルに対し、前記第2の1次側平面コイルの位置をp/3シフトして配置し、前記第3の1次側平面コイルの位置を2p/3シフトして配置した1次側板部材と、
前記第1、前記第2及び前記第3の1次側平面コイルに対向して配置され、前記所定ピッチpで形成されると共に、各々の前記磁束による電磁誘導により誘起電圧が誘起される2次側平面コイルを有する2次側板部材と、
前記誘起電圧に基づいて、前記2次側板部材に対する前記1次側板部材の位置を検出する検出手段とを有する
ことを特徴とする電磁誘導式位置検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁誘導式位置検出器において、
前記検出手段は、
Iを交流電流の大きさ、ωを交流電流の角周波数、tを時刻、αを励振位置、K(g)を前記第1、第2及び第3の1次側平面コイルと前記2次側平面コイルとのギャップgに依存する結合係数、Xを前記位置とするとき、
前記第1の1次側平面コイルにIcos(2πα/p)sin(ωt)の第1の交流電流を供給し、前記第2の1次側平面コイルにIcos(2πα/p+2π/3)sin(ωt)の第2の交流電流を供給し、前記第3の1次側平面コイルにIcos(2πα/p−2π/3)sin(ωt)の第3の交流電流を供給し、
前記第1、第2及び第3の交流電流の供給により各々発生する前記磁束により誘起される誘起電圧V=(3/2)K(g)Isin(2π(X−α)/p)sin(ωt)に基づき、前記位置Xに対し、前記誘起電圧V=0となる前記励振位置αを求め、当該励振位置αを前記位置Xとして検出する
ことを特徴とする電磁誘導式位置検出器。
【請求項3】
所定ピッチpで各々が形成されると共に、交流電流を各々に供給することにより各々に磁束が発生する第1の1次側平面コイル、第2の1次側平面コイル及び第3の1次側平面コイルを有し、前記第1の1次側平面コイルに対し、前記第2の1次側平面コイルの位置をp/3シフトして配置し、前記第3の1次側平面コイルの位置を2p/3シフトして配置した1次側板部材と、
前記第1、前記第2及び前記第3の1次側平面コイルに対向して配置され、前記所定ピッチpで形成されると共に、各々の前記磁束による電磁誘導により誘起電圧が誘起される2次側平面コイルを有する2次側板部材とを有し、
前記誘起電圧に基づいて、前記2次側板部材に対する前記1次側板部材の位置を検出する電磁誘導式位置検出方法において、
Iを交流電流の大きさ、ωを交流電流の角周波数、tを時刻、αを励振位置、K(g)を前記第1、第2及び第3の1次側平面コイルと前記2次側平面コイルとのギャップgに依存する結合係数、Xを前記位置とするとき、
前記第1の1次側平面コイルにIcos(2πα/p)sin(ωt)の第1の交流電流を供給し、前記第2の1次側平面コイルにIcos(2πα/p+2π/3)sin(ωt)の第2の交流電流を供給し、前記第3の1次側平面コイルにIcos(2πα/p−2π/3)sin(ωt)の第3の交流電流を供給し、
前記第1、第2及び第3の交流電流の供給により各々発生する前記磁束により誘起される誘起電圧V=(3/2)K(g)Isin(2π(X−α)/p)sin(ωt)に基づき、前記位置Xに対し、前記誘起電圧V=0となる前記励振位置αを求め、当該励振位置αを前記位置Xとして検出する
ことを特徴とする電磁誘導式位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導により検出対象の位置を検出する電磁誘導式位置検出器及び電磁誘導式位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導式位置検出器であるインダクトシン方式のスケールは、工作機械、自動車、ロボットなどの各種機械の位置検出部に適用される。インダクトシン方式のスケールには、リニア形のリニアスケールとロータリ形のロータリスケールがあり、リニアスケールは、例えば、工作機械の直線移動軸などの直線的な移動部に設置されて、当該移動部の直線的な移動位置を検出するものであり、ロータリスケールは、例えば、工作機械の回転軸などの回転部に設置されて、当該回転部の回転位置(回転角度)を検出するものである。
【0003】
インダクトシン方式において、リニアスケールとロータリスケールは、何れも、平行に向かい合わせに配置したコイルパターンの電磁誘導により位置を検出するものである。この検出原理について、
図3、
図4を参照して説明する。なお、
図3は、従来のリニアスケールのスライダとスケールを並べて示す図であり、
図4は、
図3に示したリニアスケールのスライダとスケールの電磁結合度を示す図である。なお、
図3、
図4には、リニアスケールでの検出原理を説明する図を示しているが、ロータリスケールの原理もこれと同様であり、ロータリスケールのステータとロータが、リニアスケールのスライダとスケールに各々対応している。
【0004】
図3に示すように、リニアスケールは、1次側板部材となるスライダ10と、2次側板部材となるスケール20とを有している。リニアスケールにおいて、スライダ10は、第1の1次側平面コイルとなる第1スライダコイル11aと、第2の1次側平面コイルとなる第2スライダコイル11bとを有している。又、スケール20は、2次側平面コイルとなるスケールコイル21を有している。これらのコイル11a、11b、21は、同じピッチpとなるように、つづら折り状に折り返され且つ全体が直線状となるように形成されている。
【0005】
スライダ10(第1スライダコイル11a及び第2スライダコイル11b)と、スケール20(スケールコイル21)は、これらの間に所定のギャップを保持した状態で平行に対向して配置されている。又、
図3に示すように、第1スライダコイル11aと第2スライダコイル11bは、互いに重なり合わない隣接する位置に配置されており、スケールコイル21に対し、第1スライダコイル11aの位置を合わせたとき、第2スライダコイル11bの位置はずれており、p/4シフトして配置されている。つまり、第1スライダコイル11aに対しても、第2スライダコイル11bはp/4シフトして配置されている。
【0006】
このリニアスケールでは、第1スライダコイル11aと第2スライダコイル11bに励振電流(交流電流)を各々供給すると、第1スライダコイル11aと第2スライダコイル11bに磁束が各々発生し、これらの各々の磁束による電磁誘導により、スケールコイル21に誘起電圧が誘起され、スライダ10の移動により、第1スライダコイル11a及び第2スライダコイル11bとスケールコイル21との相対的な位置関係の変化に応じて、
図4に示すように、第1スライダコイル11a及び第2スライダコイル11bとスケールコイル21との電磁結合度が周期的に変化する。
【0007】
例えば、スライダ10のスケール20に対する相対的な位置をXとすると、スライダ10が移動した位置Xに応じて、第1スライダコイル11aの結合度は[cos(2πX/p)]で変化し、第2スライダコイル11bの結合度は[sin(2πX/p)]で変化する。このため、スケールコイル21には周期的に変化する誘起電圧が発生する。
【0008】
上述した誘起電圧に基づいて、位置Xを求めることができ、インダクトシン方式では、以下の方法を用いて、位置Xを求めている。具体的には、下記式(1)に示すような第1励振電流Iaを第1スライダコイル11aに流し、下記式(2)に示すような第2励振電流Ibを第2スライダコイル11bに流すと、第1スライダコイル11a及び第2スライダコイル11bとスケールコイル21との間の電磁誘導により、スケールコイル21には下記式(3)に示すような誘起電圧Vが発生する。
【0009】
Ia=−Isin(2πα/p)sin(ωt) ・・・ (1)
Ib=+Icos(2πα/p)sin(ωt) ・・・ (2)
【0010】
V=K(g)I{−sin(2πα/p)cos(2πX/p)+cos(2πα/p)sin(2πX/p)}sin(ωt)
=K(g)Isin(2π(X−α)/p)sin(ωt) ・・・ (3)
【0011】
ここで、「I」は励振電流(交流電流)の大きさ、「ω」は励振電流の角周波数であり、「t」は時刻であり、「α」は励振位置である。又、「K(g)」は、第1スライダコイル11a及び第2スライダコイル11bとスケールコイル21とのギャップgに依存する結合係数であり、「X」は位置である。なお、「p」は、スケールコイル21の1ピッチの長さであるが、ロータリスケールの場合には1ピッチの角度となる。
【0012】
上記式(3)において、位置Xに対して励振位置αを変化させて、V=0となるαを求めることで、α=Xが位置として検出されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3366855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
現実のリニアスケールにおいては、
図3に示す第1スライダコイル11a、第2スライダコイル11bからスケールコイル21以外の配線部分(例えば、配線部分22)へ、直接電磁干渉(1次2次干渉と言う)が発生する問題がある。その干渉電圧をVeとすると、第1スライダコイル11aに流す第1励振電流Iaと第2スライダコイル11bに流す第2励振電流Ibの和に比例し、以下の式(4)で表すことができる。このVeは検出誤差の大きな要因の1つである。
【0015】
Ve∝Ia+Ib=I{−sin(2πα/p)+cos(2πα/p)}sin(ωt) ・・・ (4)
【0016】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、1次2次干渉をキャンセルして、検出誤差を低減することができる電磁誘導式位置検出器及び電磁誘導式位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決する第1の発明に係る電磁誘導式位置検出器は、
所定ピッチpで各々が形成されると共に、交流電流を各々に供給することにより各々に磁束が発生する第1の1次側平面コイル、第2の1次側平面コイル及び第3の1次側平面コイルを有し、前記第1の1次側平面コイルに対し、前記第2の1次側平面コイルの位置をp/3シフトして配置し、前記第3の1次側平面コイルの位置を2p/3シフトして配置した1次側板部材と、
前記第1、前記第2及び前記第3の1次側平面コイルに対向して配置され、前記所定ピッチpで形成されると共に、各々の前記磁束による電磁誘導により誘起電圧が誘起される2次側平面コイルを有する2次側板部材と、
前記誘起電圧に基づいて、前記2次側板部材に対する前記1次側板部材の位置を検出する検出手段とを有する
ことを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決する第2の発明に係る電磁誘導式位置検出器は、
上記第1の発明に記載の電磁誘導式位置検出器において、
前記検出手段は、
Iを交流電流の大きさ、ωを交流電流の角周波数、tを時刻、αを励振位置、K(g)を前記第1、第2及び第3の1次側平面コイルと前記2次側平面コイルとのギャップgに依存する結合係数、Xを前記位置とするとき、
前記第1の1次側平面コイルにIcos(2πα/p)sin(ωt)の第1の交流電流を供給し、前記第2の1次側平面コイルにIcos(2πα/p+2π/3)sin(ωt)の第2の交流電流を供給し、前記第3の1次側平面コイルにIcos(2πα/p−2π/3)sin(ωt)の第3の交流電流を供給し、
前記第1、第2及び第3の交流電流の供給により各々発生する前記磁束により誘起される誘起電圧V=(3/2)K(g)Isin(2π(X−α)/p)sin(ωt)に基づき、前記位置Xに対し、前記誘起電圧V=0となる前記励振位置αを求め、当該励振位置αを前記位置Xとして検出する
ことを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決する第3の発明に係る電磁誘導式位置検出方法は、
所定ピッチpで各々が形成されると共に、交流電流を各々に供給することにより各々に磁束が発生する第1の1次側平面コイル、第2の1次側平面コイル及び第3の1次側平面コイルを有し、前記第1の1次側平面コイルに対し、前記第2の1次側平面コイルの位置をp/3シフトして配置し、前記第3の1次側平面コイルの位置を2p/3シフトして配置した1次側板部材と、
前記第1、前記第2及び前記第3の1次側平面コイルに対向して配置され、前記所定ピッチpで形成されると共に、各々の前記磁束による電磁誘導により誘起電圧が誘起される2次側平面コイルを有する2次側板部材とを有し、
前記誘起電圧に基づいて、前記2次側板部材に対する前記1次側板部材の位置を検出する電磁誘導式位置検出方法において、
Iを交流電流の大きさ、ωを交流電流の角周波数、tを時刻、αを励振位置、K(g)を前記第1、第2及び第3の1次側平面コイルと前記2次側平面コイルとのギャップgに依存する結合係数、Xを前記位置とするとき、
前記第1の1次側平面コイルにIcos(2πα/p)sin(ωt)の第1の交流電流を供給し、前記第2の1次側平面コイルにIcos(2πα/p+2π/3)sin(ωt)の第2の交流電流を供給し、前記第3の1次側平面コイルにIcos(2πα/p−2π/3)sin(ωt)の第3の交流電流を供給し、
前記第1、第2及び第3の交流電流の供給により各々発生する前記磁束により誘起される誘起電圧V=(3/2)K(g)Isin(2π(X−α)/p)sin(ωt)に基づき、前記位置Xに対し、前記誘起電圧V=0となる前記励振位置αを求め、当該励振位置αを前記位置Xとして検出する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、1次2次干渉による干渉電圧が0になるので、1次2次干渉をキャンセルして、検出誤差を低減する電磁誘導式位置検出器及び電磁誘導式位置検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る電磁誘導式位置検出器の実施形態の一例として、リニアスケールのスライダとスケールを並べて示す構成図である。
【
図2】
図1に示したリニアスケールのスライダとスケールの電磁結合度を示すグラフである。
【
図3】従来の電磁誘導式位置検出器であるリニアスケールのスライダとスケールを並べて示す構成図である。
【
図4】
図3に示したリニアスケールのスライダとスケールの電磁結合度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1及び
図2を参照して、本発明に係る電磁誘導式位置検出器及び電磁誘導式位置検出方法の実施形態を説明する。なお、ここでは、電磁誘導式位置検出器として、リニアスケールを例にとって説明を行うが、本発明は、ロータリスケールにも適用可能である。
【0023】
[実施例1]
図1は、本実施例のリニアスケールのスライダとスケールを並べて示す構成図である。又、
図2は、
図1に示した本実施例のリニアスケールのスライダとスケールの電磁結合度を示すグラフである。まず、
図1を参照して、本実施例のリニアスケールの構成を説明する。
【0024】
図1に示す本実施例のリニアスケールにおいて、スケール20、スケールコイル21の構成は、
図3に示した従来のリニアスケールと同等の構成であるが、スライダ10の構成が従来とは相違する。従って、ここでは、重複する説明は省略し、相違する構成について以下に説明する。
【0025】
本実施例において、スライダ10には、3つのコイルパターンを設けている。具体的には、第1の1次側平面コイルとなる第1スライダコイル11aと、第2の1次側平面コイルとなる第2スライダコイル11bと、第3の1次側平面コイルとなる第3スライダコイル11cとを設けている。これらのスライダコイル11a〜11cも、スケールコイル21の1ピッチpと同じピッチとなるように、つづら折り状に折り返され且つ全体が直線状となるように各々形成されている。
【0026】
そして、
図1に示すように、第1スライダコイル11aと第2スライダコイル11bは、互いに重なり合わない隣接する位置に配置され、第1スライダコイル11bと第2スライダコイル11cも、互いに重なり合わない隣接する位置に配置されており、スケールコイル21に対し、第1スライダコイル11aの位置を合わせたとき、第2スライダコイル11b及び第3スライダコイル11cの位置はずれており、各々、p/3及び2p/3シフトして配置されている。つまり、第1スライダコイル11aに対しても、第2スライダコイル11bはp/3シフトして配置され、第3スライダコイル11cは2p/3シフトして配置されている。
【0027】
このリニアスケールでも、スライダコイル11a〜11cに励振電流(交流電流)を各々供給すると、スライダコイル11a〜11cに磁束が各々発生し、これらの各々の磁束による電磁誘導により、スケールコイル21に誘起電圧が誘起される。そして、スライダ10の移動により、スライダコイル11a〜11cとスケールコイル21との相対的な位置関係の変化に応じて、
図2に示すように、スライダコイル11a〜11cとスケールコイル21との電磁結合度が周期的に変化する。
【0028】
例えば、スライダ10のスケール20に対する相対的な位置をXとすると、スライダ10が移動した位置Xに応じて、第1スライダコイル11aの結合度は[sin(2πX/p)]で変化し、第2スライダコイル11bの結合度は[sin(2πX/p+2π/3)]で変化し、第3スライダコイル11cの結合度は[sin(2πX/p−2π/3)]で変化する。このため、スケールコイル21には周期的に変化する誘起電圧が発生する。
【0029】
そして、本実施例では、下記式(5)に示すような第1励振電流Ia(第1の交流電流)を第1スライダコイル11aに流し、下記式(6)に示すような第2励振電流Ib(第2の交流電流)を第2スライダコイル11bに流し、下記式(7)に示すような第3励振電流Ic(第3の交流電流)を第3スライダコイル11cに流している。このような電流を流すと、スライダコイル11a〜11cとスケールコイル21との間の電磁誘導により、スケールコイル21には下記式(8)に示すような誘起電圧Vが発生する。
【0030】
Ia=Icos(2πα/p)sin(ωt) ・・・ (5)
Ib=Icos(2πα/p+2π/3)sin(ωt) ・・・ (6)
Ic=Icos(2πα/p−2π/3)sin(ωt) ・・・ (7)
【0031】
V=K(g)I{sin(2πX/p)cos(2πα/p)
+sin(2πX/p+2π/3)cos(2πα/p+2π/3)
+sin(2πX/p−2π/3)cos(2πα/p−2π/3)}sin(ωt)
=K(g)I{sin(2πX/p)cos(2πα/p)
+sin(2πX/p)cos(2π/3)cos(2πα/p+2π/3)
+cos(2πX/p)sin(2π/3)cos(2πα/p+2π/3)
+sin(2πX/p)cos(2π/3)cos(2πα/p−2π/3)
−cos(2πX/p)sin(2π/3)cos(2πα/p−2π/3)}sin(ωt)
=K(g)I{sin(2πX/p)cos(2πα/p)
+(−1/2)sin(2πX/p)cos(2πα/p+2π/3)
+(√3/2)cos(2πX/p)cos(2πα/p+2π/3)
+(−1/2)sin(2πX/p)cos(2πα/p−2π/3)
−(√3/2)cos(2πX/p)cos(2πα/p−2π/3)}sin(ωt)
=K(g)I{sin(2πX/p)cos(2πα/p)
+(−1/2)sin(2πX/p)cos(2πα/p)cos(2π/3)
−(−1/2)sin(2πX/p)sin(2πα/p)sin(2π/3)
+(√3/2)cos(2πX/p)cos(2πα/p)cos(2π/3)
−(√3/2)cos(2πX/p)sin(2πα/p)sin(2π/3)
+(−1/2)sin(2πX/p)cos(2πα/p)cos(2π/3)
+(−1/2)sin(2πX/p)sin(2πα/p)sin(2π/3)
−(√3/2)cos(2πX/p)cos(2πα/p)cos(2π/3)
−(√3/2)cos(2πX/p)sin(2πα/p)sin(2π/3)}sin(ωt)
=K(g)I{sin(2πX/p)cos(2πα/p)
+(−1/2)sin(2πX/p)cos(2πα/p)(−1/2)
−(−1/2)sin(2πX/p)sin(2πα/p)(√3/2)
+(√3/2)cos(2πX/p)cos(2πα/p)(−1/2)
−(√3/2)cos(2πX/p)sin(2πα/p)(√3/2)
+(−1/2)sin(2πX/p)cos(2πα/p)(−1/2)
+(−1/2)sin(2πX/p)sin(2πα/p)(√3/2)
−(√3/2)cos(2πX/p)cos(2πα/p)(−1/2)
−(√3/2)cos(2πX/p)sin(2πα/p)(√3/2)}sin(ωt)
=K(g)I{(3/2)sin(2πX/p)cos(2πα/p)
−(3/2)cos(2πX/p)sin(2πα/p)}sin(ωt)
=(3/2)K(g)I{sin(2πX/p)cos(2πα/p)−cos(2πX/p)sin(2πα/p)}sin(ωt)
=(3/2)K(g)Isin(2π(X−α)/p)sin(ωt) ・・ (8)
【0032】
ここでも、「I」は励振電流(交流電流)の大きさ、「ω」は励振電流の角周波数であり、「t」は時刻であり、「α」は励振位置である。又、「K(g)」は、スライダコイル11a〜11cとスケールコイル21とのギャップgに依存する結合係数であり、「X」は位置である。なお、「p」は、スケールコイル21の1ピッチの長さであるが、ロータリスケールの場合には1ピッチの角度となる。
【0033】
上記式(8)において、位置Xに対して励振位置αを変化させて、V=0となるαを求めることで、α=Xが位置として検出されることになる。以上の検出は、検出装置30(検出手段)を用いて行えば良い。この検出装置30は、励振電流Ia〜Icをスライダコイル11a〜11cに各々供給する電流供給部、スケールコイル21に誘起される誘起電圧Vを検出する電圧検出部、上述した演算を行って、位置Xを求める演算部等を有している。
【0034】
上述した構成において、1次2次干渉の干渉電圧Veは、第1スライダコイル11aに流す第1励振電流Iaと第2スライダコイル11bに流す第2励振電流Ibと第3スライダコイル11cに流す第1励振電流Icとの和に比例するので、これを計算すると、以下の式(9)に示すように、0となる。つまり、1次2次干渉をキャンセルすることができ、その結果、検出誤差を低減することができる。
【0035】
Ve∝Ia+Ib+Ic=I{cos(2πα/p)+cos(2πα/p+2π/3)+cos(2πα/p−2π/3)}sin(ωt)
=I{cos(2πα/p)+cos(2πα/p)cos(2π/3)−sin(2πα/p)sin(2π/3)+cos(2πα/p)cos(2π/3)+sin(2πα/p)sin(2π/3)}sin(ωt)
=I{cos(2πα/p)+2cos(2πα/p)cos(2π/3)}sin(ωt)
=I{cos(2πα/p)+2cos(2πα/p)(−1/2)}sin(ωt)
=0 ・・・ (9)
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、スケール、エンコーダ、磁気センサ、電磁センサなどに適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 スライダ
11a 第1スライダコイル
11b 第2スライダコイル
11c 第3スライダコイル
20 スケール
21 スケールコイル
30 検出装置