特許第6393646号(P6393646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車東日本株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6393646-複合加工プレス型 図000002
  • 特許6393646-複合加工プレス型 図000003
  • 特許6393646-複合加工プレス型 図000004
  • 特許6393646-複合加工プレス型 図000005
  • 特許6393646-複合加工プレス型 図000006
  • 特許6393646-複合加工プレス型 図000007
  • 特許6393646-複合加工プレス型 図000008
  • 特許6393646-複合加工プレス型 図000009
  • 特許6393646-複合加工プレス型 図000010
  • 特許6393646-複合加工プレス型 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393646
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】複合加工プレス型
(51)【国際特許分類】
   B21D 37/08 20060101AFI20180910BHJP
   B21D 22/02 20060101ALI20180910BHJP
   B21D 24/04 20060101ALI20180910BHJP
   B21D 24/14 20060101ALI20180910BHJP
   B21D 24/08 20060101ALI20180910BHJP
   B21D 24/16 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   B21D37/08
   B21D22/02 C
   B21D24/04 A
   B21D24/14
   B21D24/08
   B21D24/16 A
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-68609(P2015-68609)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-187816(P2016-187816A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2017年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
(72)【発明者】
【氏名】安島 優
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−192751(JP,A)
【文献】 実開昭60−126221(JP,U)
【文献】 特開2013−035002(JP,A)
【文献】 実開昭54−101586(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0018277(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/08
B21D 22/02
B21D 24/04
B21D 24/08
B21D 24/14
B21D 24/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機械のスライドに対して着脱自在に固定される上型、前記プレス機械のボルスターに対して着脱自在に固定される下型で構成され、被プレス材に対して1回のプレスストロークで、絞り加工と、せん断加工と、曲げ加工及び/又は穴抜加工とをこの順に行って所定形状の製品にする複合加工プレス型であって、
前記上型は、
当該上型に、前記プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置されると共に、前記下型方向に移動する距離が制限されるように組み込まれ、前記絞り加工のためにパンチが一体化されたパッドと、
前記パッドの外周を覆うように当該上型に固定され、前記せん断加工のために、前記被プレス材に前記製品の輪郭線を打ち抜く形状で形成された打ち抜き刃と、
前記パッド内を前記プレスストローク方向で往復動可能な状態で当該上型に固定され、前記曲げ加工及び/又は前記穴抜加工のために、その加工数に応じて設けられたプレス刃と、
前記プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置されると共に、前記下型方向に移動する距離が制限されるように組み込まれ、前記打ち抜き刃の外周を覆うように設けられた上ブランクホルダと、
前記パッドの上方及び前記上ブランクホルダの上方に配置され、下側に傾斜した傾斜カム面が形成され且つ水平方向で往復動可能な状態で前記上型に組み込まれた第1のスライダカムと、
前記パッドの上部に設けられ、前記第1のスライダカムの前記傾斜カム面に面接触する傾斜した傾斜カム面が形成された第1のドライバカムと、
前記第1のスライダカムの前記傾斜カム面が形成された内側面とは逆側となる外側面に設けられ、突出形状で傾斜した傾斜カム面を有する凸部が形成された第2のスライダカムと、
前記プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置されると共に、前記下型方向に移動する距離が制限されるように組み込まれ、前記第2のスライダカムの前記凸部が有する前記傾斜カム面に面接触するように切欠形状で傾斜した傾斜カム面を有する凹部が形成された第2のドライバカムと、
前記パッドを前記下型方向に付勢する第1の付勢手段と、
前記上ブランクホルダを前記下型方向に付勢する第2の付勢手段と、
前記第2のドライバカムを前記下型方向に付勢する第3の付勢手段と、を備え、
前記下型は、
前記パッドに対向配置され、前記上型の下降時における前記プレスストロークに応じて前記パンチと協働して前記被プレス材に前記絞り加工を施すダイが一体化されたポンチと、
前記プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置されると共に前記被プレス材が所定位置に載置され、前記上型の下降時における前記プレスストローク量に応じて前記上ブランクホルダと協働して前記被プレス材の周縁部を加圧拘束する下ブランクホルダと、
前記下ブランクホルダを、前記上型方向に付勢すると共に、当該下ブランクホルダが前記上ブランクホルダと協働して前記被プレス材の前記周縁部を加圧拘束した後に、前記パンチ及び前記ダイが協働して前記絞り加工を開始する位置に静止させる第4の付勢手段と、を備え
前記上型が上死点に位置している場合には、前記パッドの前記パンチの下端と前記上ブランクホルダの下端とが水平方向で実質的に一致し、前記打ち抜き刃及び前記プレス刃の先端が前記パッドの前記パンチ以外の下端及び前記上ブランクホルダの下端より上方に位置し、
前記第2のドライバカムの下端と、当該第2のドライバカムの下端と対向配置される前記下型の上端とは、前記絞り加工が完了すると、プレスストローク方向において当接されるように構成され、これら両端が当接された後に前記上型を下降させると、前記第2のドライバカムの前記凹部が有する前記傾斜カム面上を前記第2のスライダカムの前記凸部が有する前記傾斜カム面が摺動するように、当該第2のドライバカムの当該凹部と当該第2のスライダカムの当該凸部とが構成されていることを特徴とする複合加工プレス型。
【請求項2】
前記第2のスライダカムの前記凸部は、当該凸部の前記傾斜カム面の下側端部から下方に向かって前記プレスストローク方向に沿って延出する直線カム面を有し、
前記第2のドライバカムの前記凹部は、当該凹部の前記傾斜カム面の上側端部から上方に向かって前記プレスストローク方向に沿って延出し、前記凸部の前記直線カム面と当接させることで、前記第1のスライダカムの前記上ブランクホルダ方向への水平移動を規制する直線カム面を有することを特徴とする請求項1記載の複合加工プレス型。
【請求項3】
前記打ち抜き刃の先端は、前記プレスストローク方向において、前記絞り加工が完了すると前記せん断加工を開始するような位置に配置され、前記プレス刃の先端は、前記プレスストローク方向において、前記せん断加工が完了すると前記曲げ加工及び/又は前記穴抜加工を開始するような位置に配置され、
前記下型は、前記絞り加工が完了すると、前記プレスストローク方向において、前記第2のドライバカムの下端に当接する凸部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の複合加工プレス型。
【請求項4】
前記パッドの外側側面には、前記上型内に水平に突出した状態で設けられたサイドピンに掛止される凹部が形成され、前記上ブランクホルダの外側側面には、前記上型内に水平に突出した状態で設けられたサイドピンに掛止される凹部が形成され、前記第2のドライバカムの外側側面には、前記上型内に水平に突出した状態で設けられたサイドピンに掛止される凹部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の複合加工プレス型。
【請求項5】
前記第1の付勢手段、前記第2の付勢手段、前記第3の付勢手段及び前記第4の付勢手段は、それぞれ付勢対象をロッドの先端に固定するピストン形シリンダである請求項1乃至請求項4のうち何れか1項に記載の複合加工プレス型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なるプレス加工を1つのプレス型で行うことが可能な複合加工プレス型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の異なるプレス加工を1つのプレス装置で行うことが可能な多段プレス装置や複合加工プレス型が開示されている。
多段プレス装置は、上型と下型とからなるプレス型を3つ、鉛直方向に並べて配置している。また、高い加圧力を付与するために、最上段の上型を上下動させるメインシリンダと、最上段の上型を上下動させるダブルトグル機構を駆動するトグルシリンダとを有している(例えば、特許文献1参照。)。
この多段プレス装置によれば、メインシリンダだけでなく、ダブルトグル機構を駆動するトグルシリンダによっても加圧力を付与することができるので、各プレス型の型締め力を大きくすることができる。
【0003】
複合加工プレス型は、下型に、その上部に一体に固定され、上型の下降移動によりワークを保持するピアスダイと、下型の上部にスライド移動可能に設けられ、上型の下降移動によりピアス加工方向に移動して、ピアスダイとの協働によりワークの一方のフランジ部にピアス加工を施すピアスパンチと、下型の上部にスライド移動可能に設けられ、上型の下降移動により退避位置からワークの他方のフランジ部に対向するインバース加工位置に移動されるインバースダイとを有する。また、上型に、その下部にスライド移動可能に設けられ、上型の下降移動によりワークの他方のフランジ部をインバースダイに押接してインバース曲げ加工を施すインバース曲げ刃を有する(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
この複合加工プレス型によれば、下型に一体に固定されているピアスダイにワークを保持し、その保持状態で一方のフランジ部にピアス加工を施し、他方のフランジ部にインバース加工を施すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−92965号公報
【特許文献2】特開2003−230921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、背景技術に記載した多段プレス装置では、3つのプレス型を鉛直方向に並べて配置する専用設備が必要になるので、設備の大型化を招き、設備投資が増加する難点があった。また、3個のプレス型を鉛直方向に一度に閉じることにより3つの被成形体を一度にプレス成形する技術しか開示されていないので、1つのプレス型を使用して被プレス材に対して1回のプレスストロークで、絞り加工と、せん断加工と、曲げ加工及び/又は穴抜加工とをこの順に行って所定形状の製品にする技術は開示されていなかった。
【0007】
また、背景技術に記載した複合加工プレス型では、1つのプレス型を使用してピアス加工とフランジ曲げ加工とを、ワークに対して1回のプレスストロークで施すことができるが、絞り加工と、せん断加工と、曲げ加工及び/又は穴抜加工とをこの順に行って所定形状の製品にする技術は開示されていなかった。また、この複合加工プレス型の構造では、ピアス加工及びフランジ曲げ加工の何れもカムのスライドによって施していることから、上型に加わる加圧力がカムのスライドによって分散するので、高い加圧力が必要な絞り加工には不向きであった。
【0008】
本発明は、このような従来の難点を解消するためになされたもので、1つのプレス型を使用して被プレス材に対して1回のプレスストロークで、絞り加工と、せん断加工と、曲げ加工及び/又は穴抜加工とをこの順に行って所定形状の製品にすることができる複合加工プレス型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成する本発明の第1の態様である複合加工プレス型は、プレス機械のスライドに対して着脱自在に固定される上型、プレス機械のボルスターに対して着脱自在に固定される下型で構成され、被プレス材に対して1回のプレスストロークで、絞り加工と、せん断加工と、曲げ加工及び/又は穴抜加工とをこの順に行って所定形状の製品にするものである。
【0010】
上型は、パッドと、打ち抜き刃と、プレス刃と、上ブランクホルダと、第1のスライダカムと、第1のドライバカムと、第2のスライダカムと、第2のドライバカムと、第1の付勢手段と、第2の付勢手段と、第3の付勢手段とを備えたものである。
【0011】
パッドは、当該上型に、プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置されると共に、下型方向に移動する距離が制限されるように組み込まれ、絞り加工のためにパンチが一体化されたものである。
打ち抜き刃は、パッドの外周を覆うように当該上型に固定され、せん断加工のために、被プレス材に製品の輪郭線を打ち抜く形状で形成されたものである。
プレス刃は、パッド内をプレスストローク方向で往復動可能な状態で当該上型に固定され、曲げ加工及び/又は穴抜加工のために、その加工数に応じて設けられたものである。
上ブランクホルダは、プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置されると共に、下型方向に移動する距離が制限されるように組み込まれ、打ち抜き刃の外周を覆うように設けられたものである。
第1のスライダカムは、パッドの上方及び上ブランクホルダの上方に配置され、下側に傾斜した傾斜カム面が形成され且つ水平方向で往復動可能な状態で上型に組み込まれたものである。
第1のドライバカムは、パッドの上部に設けられ、第1のスライダカムの傾斜カム面に面接触する傾斜した傾斜カム面が形成されたものである。
第2のスライダカムは、第1のスライダカムの傾斜カム面が形成された内側面とは逆側となる外側面に設けられ、突出形状で傾斜した傾斜カム面を有する凸部が形成されたものである。
第2のドライバカムは、プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置されると共に、下型方向に移動する距離が制限されるように組み込まれ、第2のスライダカムの凸部が有する傾斜カム面に面接触するように切欠形状で傾斜した傾斜カム面を有する凹部が形成されたものである。
【0012】
第1の付勢手段は、パッドを下型方向に付勢するものである。第2の付勢手段は、上ブランクホルダを下型方向に付勢するものである。第3の付勢手段は、第2のドライバカムを下型方向に付勢するものである。
【0013】
下型は、ポンチと、下ブランクホルダと、第4の付勢手段とを備えたものである。
ポンチは、パッドに対向配置され、上型の下降時におけるプレスストローク量に応じてパンチと協働して被プレス材に絞り加工を施すダイが一体化されたものである。なお、本明細書において、「協働」とは他の部分と協同して動くことを意味する。
下ブランクホルダは、プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置されると共に被プレス材が所定位置に載置され、上型の下降時におけるプレスストローク量に応じて上ブランクホルダと協働して被プレス材の周縁部を加圧拘束するものである。
第4の付勢手段は、下ブランクホルダを、上型方向に付勢すると共に、当該下ブランクホルダが上ブランクホルダと協働して被プレス材の周縁部を加圧拘束した後に、パンチ及びダイが協働して絞り加工を開始する位置に静止させるものである。
【0014】
このような第1の態様である複合加工プレス型によれば、上型が上死点に位置している場合には、パッドのパンチの下端と上ブランクホルダの下端とが水平方向で実質的に一致し、打ち抜き刃及びプレス刃の先端がパッドのパンチ以外の下端及び上ブランクホルダの下端より上方に位置し、第2のドライバカムの下端と、この第2のドライバカムの下端と対向配置される下型の上端とが、絞り加工が完了すると、プレスストローク方向において当接し、その後、第2のドライバカムの凹部が有する傾斜カム面上を第2のスライダカムの凸部が有する傾斜カム面が摺動するように各部を構成すれば、被プレス材に対して1回のプレスストロークで、絞り加工と、せん断加工と、曲げ加工及び/又は穴抜加工とをこの順に行って所定形状の製品にすることができるようになる。なお、本明細書において、「当接」とはあてた状態で接触させることを意味する。また、本明細書において、「摺動」とは接触状態ですり動かすことを意味する。
【0015】
即ち、このように各部を配設させて、被プレス材をプレス加工するために、上死点に位置している上型を下降させると、まず、上型に設けられた上ブランクホルダの下端と、下型に設けられた下ブランクホルダの上端とが、下ブランクホルダの所定位置に載置された被プレス材の周縁部を加圧拘束すると共に、上型に設けられたパッドのパンチが被プレス材に当接する。
【0016】
引き続き上型を下降させると、パッドのパンチと、下型に設けられたポンチのダイとが協働して被プレス材に絞り加工を施す。この際、第1のスライダカムは、第2のドライバカムの下端と、この第2のドライバカムの下端と対向配置される下型の上端とが当接した後に、第2のドライバカムの凹部が有する傾斜カム面上を第2のスライダカムの凸部が有する傾斜カム面が摺動するように、第2のドライバカムの凹部と第2のスライダカムの凸部とが構成されていることにより、絞り加工が完了するまでは水平方向においてその位置で固定されているので、上型に加わる加圧力がカムのスライドによって分散することなくパッドのパンチに伝達することができる。したがって、被プレス材に対して適切に絞り加工を施すことができる。
【0017】
さらに、上型を下降させると、パッドはポンチによって上方へ押し込まれるが、この時点においては、第2のドライバカムの凹部が有する傾斜カム面上を第2のスライダカムの凸部が有する傾斜カム面が摺動するので、第1のスライダカムは上ブランクホルダ方向へ水平移動できるようになる。第1のスライダカムが上ブランクホルダ方向へ水平移動すると、パッドの上部に設けられた第1のドライバカムの傾斜カム面上を第1のスライダカムの傾斜カム面が摺動することになるので、上型は下降することができる。したがって、打ち抜き刃によって被プレス材にせん断加工を施すことができ、さらに、プレス刃によって曲げ加工及び/又は穴抜き加工を施すことができる。
【0018】
本発明の第2の態様は第1の態様である複合加工プレス型において、第2のスライダカムの凸部は、直線カム面を有するものである。
直線カム面は、当該凸部の傾斜カム面の下側端部から下方に向かってプレスストローク方向に沿って延出するものである。
【0019】
第2のドライバカムの凹部は、直線カム面を有するものである。
直線カム面は、当該凹部の傾斜カム面の上側端部から上方に向かってプレスストローク方向に沿って延出し、凸部の直線カム面と当接させることで、第1のスライダカムの上ブランクホルダ方向への水平移動を規制するものである。
【0020】
このような第2の態様である複合加工プレス型によれば、第2のドライバカムの凹部が有する直線カム面上で第2のスライダカムの凸部が有する直線カム面を摺動させている間は、絞り加工を完了するまでは第1のスライダカムの上ブランクホルダ方向への水平移動を規制することができる。
【0021】
本発明の第3の態様は第1の態様又は第2の態様である複合加工プレス型において、打ち抜き刃の先端は、プレスストローク方向において、絞り加工が完了するとせん断加工を開始するような位置に配置されているものである。
プレス刃の先端は、プレスストローク方向において、せん断加工が完了すると曲げ加工及び/又は穴抜加工を開始するような位置に配置されているものである。
下型は、絞り加工が完了すると、プレスストローク方向において、第2のドライバカムの下端に当接する凸部が形成されているものである。
【0022】
このような第3の態様である複合加工プレス型によれば、絞り加工が完了すると、上型が下降中に第2のドライバカムはプレスストローク方向において強制的に停止させられることから、第2のドライバカム及び第2のスライダカムのカム作用により第1のスライダカムが上ブランクホルダ方向へ水平移動することで、上型は引き続き下降することができる。したがって、プレスストローク方向において、絞り加工が完了するとせん断加工を開始するような位置に打ち抜き刃の先端が配置され、プレスストローク方向において、せん断加工が完了すると曲げ加工及び/又は穴抜加工を開始するような位置にプレス刃の先端が配置されているので、絞り加工と、せん断加工と、曲げ加工及び/又は穴抜加工とをこの順に行うことができる。
【0023】
本発明の第4の態様は第1の態様乃至第3の態様のうち何れか1つの態様である複合加工プレス型において、パッドの外側側面には、上型内に水平に突出した状態で設けられたサイドピンに掛止される凹部が形成されているものである。なお、本明細書において、「掛止」とは掛けるに必要な機構をもったものを、引っ掛けて留めることを意味する。
上ブランクホルダの外側側面には、上型内に水平に突出した状態で設けられたサイドピンに掛止される凹部が形成されているものである。
第2のドライバカムの外側側面には、上型内に水平に突出した状態で設けられたサイドピンに掛止される凹部が形成されているものである。
【0024】
このような第4の態様である複合加工プレス型によれば、上ブランクホルダ、パッド及び第2のドライバカムの下型方向に移動する距離を制限することができる。
【0025】
本発明の第5の態様は第1の態様乃至第4の態様のうち何れか1つの態様である複合加工プレス型において、第1の付勢手段、第2の付勢手段、第3の付勢手段及び第4の付勢手段は、それぞれ付勢対象をロッドの先端に固定するピストン形シリンダである。
【0026】
このような第5の態様である複合加工プレス型によれば、プレス型内に設置するスペースの小さい箇所でも設置できるので、複雑な構造のプレス型にも適用できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の複合加工プレス型によれば、1つのプレス型を使用して被プレス材に対して1回のプレスストロークで、絞り加工と、せん断加工と、曲げ加工及び/又は穴抜加工とをこの順に行って所定形状の製品にすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の複合加工プレス型の好ましい実施の形態例を示す簡易断面図で、上型が上死点で静止している図である。
図2図1の複合加工プレス型の第1のスライダカム及び第2のドライバカムの掛止機構を示す簡易断面図である。
図3図1の複合加工プレス型のパッド及び上ブランクホルダの掛止機構を示す簡易断面図である。
図4図1の複合加工プレス型が、絞り加工を開始する状態を示す簡易断面図である。
図5図1の複合加工プレス型が、絞り加工中の状態を示す簡易断面図である。
図6図1の複合加工プレス型が、絞り加工を完了した状態を示す簡易断面図である。
図7図1の複合加工プレス型が、せん断加工を完了した状態を示す簡易断面図である。
図8図1の複合加工プレス型が、曲げ加工及び穴抜加工を完了した状態を示す簡易断面図である。
図9図1の複合加工プレス型が、上型を上死点に戻す状態を示す簡易断面図である。
図10図1の複合加工プレス型の上型が、上死点に戻った状態を示す簡易断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の複合加工プレス型を実施するための形態例について、図面を参照して説明する。本発明の複合加工プレス型は、プレス機械のスライドに対して着脱自在に固定される上型、プレス機械のボルスターに対して着脱自在に固定される下型で構成され、被プレス材に対して1回のプレスストロークで、絞り加工と、せん断加工と、曲げ加工及び穴抜加工とをこの順に行って所定形状の製品にするものである。
【0030】
このようなプレス加工を施す複合加工プレス型は図1に示すように、上型2は、パッド21と、打ち抜き刃22と、プレス刃と、上ブランクホルダ24と、第1のスライダカム25と、第1のドライバカム26と、第2のスライダカム27と、第2のドライバカム28と、第1の付勢手段201と、第2の付勢手段202と、第3の付勢手段203とを備えている。また、下型3は、ポンチ31と、下ブランクホルダ32と、第4の付勢手段301とを備えている。
【0031】
なお、下ブランクホルダ32の所定位置に載置される被プレス材Wに対して均等に加圧力を加えられるように、パッド21には後述する第1のドライバカム26が図1において、左右対称に設けられているので、1回のプレスストロークでそれぞれの第1のドライバカム26と共に動作する第1のスライダカム25、第2のスライダカム27、第2のドライバカム28もそれぞれ設けられるが、両側の機構とも同じ動作をするので、同じ部品に同一符号を付している。また、上ブランクホルダ24及び下ブランクホルダ32は、後述するように協動して下ブランクホルダ32の所定位置に載置される被プレス材Wの周縁部を加圧拘束するものなので、それぞれ1つの部材である。
【0032】
まず、上型2の各部品について説明する。
パッド21は、当該上型2に、プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置されると共に、下型方向に移動する距離が制限されるように組み込まれ、絞り加工のためにパンチ21aが一体化されている。このパッド21は、プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置するために、上型2に固定されている第1の付勢手段201によって下型方向に付勢されている。この第1の付勢手段201は、パッド21に対して付勢力より強い上方への加圧力が加わると収縮する機能を有している。したがって、パッド21は、プレスストローク方向で往復動させることができる。また、パッド21は、下型方向に移動する距離が制限されるように組み込むために、例えば、外側側面21bには、上型内に下方に向かって突設した凸部2aに対して水平に突出した状態で設けられたサイドピン204に掛止される凹部21cが形成されている(図2参照。)。この凹部21cは、プレスストローク方向において、後述するポンチ31に一体化されたダイ31aと協働して被プレス材Wに絞り加工を施すことができるような長さで形成されている。
【0033】
打ち抜き刃22は、パッド21の外周を覆うように当該上型2に固定され、せん断加工のために、被プレス材Wに製品の輪郭線を打ち抜く形状で形成されている。
【0034】
プレス刃は、パッド21内をプレスストローク方向で往復動可能な状態で当該上型2に固定され、曲げ加工及び穴抜加工のために、その加工数に応じて設けられている。なお、図1においては、打ち抜き刃22に曲げ加工用のプレス刃22aが一体化されているが、打ち抜き刃22とは別に、曲げ用プレス刃や穴抜用プレス刃を所定形状の製品に応じて選択的に設けてもよい。
【0035】
上ブランクホルダ24は、プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置されると共に、下型方向に移動する距離が制限されるように組み込まれ、打ち抜き刃22の外周を覆うように設けられている。この上ブランクホルダ24は、プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置するために、例えば、後述する第2のドライバカム28の内側側面28aにスライドプレート205を介して摺動可能に面接触するように配置されている。このスライドプレート205は、上ブランクホルダ24に固定されている。
【0036】
また、上ブランクホルダ24は、下型方向に移動する距離が制限されるように組み込むために、例えば、外側側面24aには、上型2の内側側面2bから水平に突出した状態で設けられたサイドピン206に掛止される凹部24bが形成されている(図2参照。)。この凹部24bは、プレスストローク方向において、後述する下ブランクホルダ32と協働して被プレス材Wの周縁部を加圧拘束することができるような長さで形成されている。
【0037】
さらに、上ブランクホルダ24は、上型2に固定されている第2の付勢手段202によって下型方向に付勢されている。この第2の付勢手段202は、上ブランクホルダ24に対して付勢力より強い上方への加圧力が加わると収縮する機能を有している。したがって、上ブランクホルダ24は、プレスストローク方向で往復動させることができる。
【0038】
第1のスライダカム25は、パッド21の上方及び上ブランクホルダ24の上方に配置され、下側に傾斜した傾斜カム面25aが形成され且つ水平方向で往復動可能な状態で上型2に組み込まれている。この第1のスライダカム25は、水平方向で往復動可能な状態で上型2に組み込むために、例えば、上型2の底部面2cにスライドプレート207を介して摺動可能に面接触するように配置されている。この際、第1のスライダカム25が落下しないように、第1のスライダカム25の上部の所定位置に水平方向に突出した凸部25bを、上型2の底部面2cにボルト等の螺合手段23によって固定するが、当該第1のスライダカム25が水平方向で往復動可能な状態になるように調整する(図3参照。)。なお、スライドプレート207は、第1のスライダカム25に固定されている。
【0039】
第1のドライバカム26は、パッド21の上部に設けられ、第1のスライダカム25の傾斜カム面25aに面接触する傾斜した傾斜カム面26aが形成されている。この第1のドライバカム26の傾斜カム面26aは、第1のスライダカム25の傾斜カム面25aにスライドプレート208を介して摺動可能に面接触するように配置されている。このスライドプレート208は、第1のスライダカム25に固定されている。
【0040】
第2のスライダカム27は、第1のスライダカム25の傾斜カム面25aが形成された内側面とは逆側となる当該第1のスライダカム25の外側面に設けられ、突出形状で傾斜した傾斜カム面27a1を有する凸部27aが形成されている。この凸部27aは、当該凸部27aの傾斜カム面27a1の下側端部から下方に向かってプレスストローク方向に沿って延出する直線カム面27a2と、直線カム面27a2の下側端部からパッド21に向かって水平な状態で延出する直線面27a3とを有している。
【0041】
第2のドライバカム28は、プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置されると共に、下型方向に移動する距離が制限されるように組み込まれ、第2のスライダカム27の凸部27aが有する傾斜カム面27a1に面接触するように切欠形状で傾斜した傾斜カム面28b1を有する凹部28bが形成されている。
【0042】
この凹部28bは、当該凹部28bの傾斜カム面28b1の上側端部から上方に向かってプレスストローク方向に沿って延出し、第2のスライダカム27の凸部27aの直線カム面27a2と当接させることで、第1のスライダカム25の上ブランクホルダ方向への水平移動を規制する直線カム面28b2と、当該凹部28bの傾斜カム面28b1の下側端部から下方に向かってプレスストローク方向に沿って延出する第1の直線面28b3と、第1の直線面28b3の下側端部からパッド21に向かって水平な状態で延出し、第2のスライダカム27の凸部27aの直線面27a3と当接させることで、第1のスライダカム25の上ブランクホルダ方向への水平移動を規制する第2の直線面28b4とを有している。
【0043】
この第2のドライバカム28は、プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置するために、例えば、上型2の内側側面2bにスライドプレート209を介して摺動可能に面接触するように配置されている。このスライドプレート209は、第2のドライバカム28に固定されている。
【0044】
また、第2のドライバカム28は、プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置するために、上型2に固定されている第3の付勢手段203によって下型方向に付勢されている。この第3の付勢手段203は、第2のドライバカム28に対して付勢力より強い上方への加圧力が加わると収縮する機能を有している。したがって、第2のドライバカム28は、プレスストローク方向で往復動させることができる。
【0045】
さらに、第2のドライバカム28は、下型方向に移動する距離が制限されるように組み込むために、例えば、外側側面28cには、上型2の内側側面2bから第2のドライバカム方向に向かって水平に突出した状態で設けられたサイドピン210に掛止される凹部28dが形成されている(図3参照。)。
【0046】
なお、第2のスライダカム27の凸部27aと第2のドライバカム28の凹部28bとは、型耐久性を向上させるために、かじりや摩耗を防ぐためのPVD硬化処理等の表面処理することが好ましいので、この部位を入れ子にすることで、プレス型の製造コストを下げることができる。
【0047】
なお、この上型2において、打ち抜き刃22の先端は、プレスストローク方向において、絞り加工が完了するとせん断加工を開始するような位置に配置されている。また、プレス刃の先端は、プレスストローク方向において、せん断加工が完了すると曲げ加工及び/又は穴抜加工を開始するような位置に配置されている。
【0048】
次に、下型3の各部品について説明する。
ポンチ31は、パッド21に対向配置され、上型2の下降時におけるプレスストローク量に応じてパンチ21aと協働して被プレス材Wに絞り加工を施すダイ31aが一体化されている。
【0049】
下ブランクホルダ32は、プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置されると共に被プレス材Wが所定位置に載置され、上型2の下降時におけるプレスストローク量に応じて上ブランクホルダ24と協働して被プレス材Wの周縁部を加圧拘束するものである。この下ブランクホルダ32は、プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置するために、例えば、下型3の内側側面3aにスライドプレート302を介して摺動可能に面接触するように配置されている。このスライドプレート302は、どちらかの部位に固定されている。
【0050】
また、下ブランクホルダ32は、プレスストローク方向で往復動可能な状態で配置するために、下型3に固定されている第4の付勢手段301によって上型方向に付勢されている。この第4の付勢手段301は、下ブランクホルダ32に対して付勢力より強い下方への加圧力が加わると収縮する機能を有している。したがって、下ブランクホルダ32は、プレスストローク方向で往復動させることができる。この第4の付勢手段301は、下ブランクホルダ32が上ブランクホルダ24と協働して被プレス材Wの周縁部を加圧拘束した後に、当該下ブランクホルダ32をパンチ21a及びダイ31aが協働して絞り加工を開始する位置に静止させるものである。
【0051】
さらに、下型3は、絞り加工が完了すると、プレスストローク方向において、第2のドライバカム28の下端に当接する凸部3bが形成されている。
【0052】
上述したような第1の付勢手段201、第2の付勢手段202、第3の付勢手段及203び第4の付勢手段301として、それぞれ圧縮コイルばねやピストン形シリンダが採用できるが、プレス型の構造上、設置スペースが限られている場合にはピストン形シリンダ、特に、ホース配管や付帯設備が不要になる窒素ガスシリンダが好ましい。ピストン形シリンダは、シリンダ本体が上型2や下型3に固定され、付勢対象をロッドの先端に固定することで、付勢対象を付勢することができる。
【0053】
なお、このように構成された複合加工プレス型1は、上型2と下型3とを正しく嵌め合わせるためにガイドピン及びブッシュが組み込まれている(図示せず。)。
【0054】
このように構成された複合加工プレス型1による絞り加工と、せん断加工と、曲げ加工及び/又は穴抜加工とをこの順に行って所定形状の製品にする動作について、図1図4図5図6図7図8図9図10を参照しながら説明する。
【0055】
なお、上型2が上死点に位置している場合には、パッド21のパンチ21aの下端と上ブランクホルダ24の下端とが水平方向で実質的に一致し、打ち抜き刃22及びプレス刃の先端がパッド21のパンチ21a以外の下端及び上ブランクホルダ24の下端より上方に位置するものとする。
【0056】
また、第2のドライバカム28の下端と、この第2のドライバカム28の下端と対向配置される下型3の凸部3bとが、絞り加工が完了すると、プレスストローク方向において当接し、その後、第2のドライバカム28の凹部28bが有する傾斜カム面28b1上を第2のスライダカム27の凸部27aが有する傾斜カム面27a1が摺動するものとする。
【0057】
このように各部が配設された複合加工プレス型1は、被プレス材Wをプレス加工するために、図1示すように、上死点に位置している上型2を下降させると、まず、図4に示すように、上型2に設けられた上ブランクホルダ24の下端と、下型3に設けられた下ブランクホルダ32の上端とが、下ブランクホルダ32の所定位置に載置された被プレス材Wの周縁部を加圧拘束すると共に、上型2に設けられたパッド21のパンチ21aが被プレス材Wに当接する。
【0058】
引き続き上型2を下降させると、図5図6に示すように、パッド21のパンチ21aと、下型3に設けられたポンチ31のダイ31aとが協働して被プレス材Wに絞り加工を施す。この際、第1のスライダカム25は、第2のドライバカム2の下端と、この第2のドライバカム2の下端と対向配置される下型3の凸部3bとが当接した後に、第2のドライバカム2の凹部28bが有する傾斜カム28b1面上を第2のスライダカム27の凸部27aが有する傾斜カム面27a1が摺動するように、第2のドライバカム28の凹部28bと第2のスライダカム27の凸部27aとが構成されていることにより、絞り加工が完了するまでは水平方向においてその位置で固定されているので、上型2に加わる加圧力がカムのスライドによって分散することなくパッド21のパンチ21aに伝達することができる。したがって、被プレス材Wに対して適切に絞り加工を施すことができる。


【0059】
さらに、上型2を下降させると、図7に示すように、パッド21はポンチ31によって上方へ押し込まれるが、この時点においては、第2のドライバカム28の凹部28bが有する傾斜カム面28b1上を第2のスライダカム27の凸部27aが有する傾斜カム面27a1が摺動するので、第1のスライダカム25は上ブランクホルダ方向へ水平移動できるようになる。第1のスライダカム25が上ブランクホルダ方向へ水平移動すると、パッド21の上部に設けられた第1のドライバカム26の傾斜カム面26a上を第1のスライダカム25の傾斜カム面25aが摺動することになるので、上型2は下降することができる。したがって、図8に示すように、打ち抜き刃22によって被プレス材Wにせん断加工を施すことができ、さらに、プレス刃によって曲げ加工や穴抜き加工を施すことができる。
【0060】
プレス刃によって曲げ加工や穴抜き加工が完了後、図9に示すように、上型2が図8に示すような下死点から上昇を開始すると、パッド21はポンチ31から離反するので、パッド21は第1の付勢手段201の付勢力によってプレス開始前の元位置に戻され(図2参照。)、上ブランクホルダ24は下ブランクホルダ32から離反するので、上ブランクホルダ24は第2の付勢手段202の付勢力、及び下ブランクホルダ32は第4の付勢手段301の付勢力によって、それぞれプレス開始前の元位置に戻され、第2のドライバカム28は下型3に形成された凸部3bから離反するので、第2のドライバカム28は第3の付勢手段203の付勢力によってプレス開始前の元位置に戻される。
【0061】
そして、図10に示すように、この状態を維持して上型2が上死点に戻ることで複合加工プレス型1によるプレス加工の1サイクルが終了する。
【0062】
このように、複合加工プレス型1は、被プレス材Wに対して1回のプレスストロークで、絞り加工と、せん断加工と、曲げ加工及び/又は穴抜加工とをこの順に行って所定形状の製品にすることができるようになる。したがって、絞り加工と、せん断加工と、曲げ加工及び/又は穴抜加工とを、1つのプレス型で行うことが可能になるので、型費を下げることができ、また、型段取り工数を減らすことができると共に、型置き場のスペースを減らすことができる。
【0063】
なお、上述した実施例においては、パッド21、上ブランクホルダ24、及び第2のドライバカム28は、下型方向に移動する距離が制限されるように組み込むために、それぞれサイドピン204、サイドピン206及びサイドピン210を使用していたが、これに限らず、下型方向に移動する距離が制限されるように組み込むことができれば、ストリッパボルトでもよい。このストリッパボルトは、上型2にプレスストローク方向において胴体部が往復動可能に配置されると共に頭部によって下型方向に移動する距離が制限される。このストリッパボルトのねじ部で、パッド21、上ブランクホルダ24、及び第2のドライバカム28を固定することで、パッド21、上ブランクホルダ24、及び第2のドライバカム28は、下型方向に移動する距離を制限することができる。
【0064】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0065】
1……複合加工プレス型

2……上型
21……パッド
21a……パンチ
21b……外側側面
22……打ち抜き刃
24……上ブランクホルダ
24a……外側側面
24b……凹部
25……第1のスライダカム
25a……傾斜カム面
26……第1のドライバカム
26a……傾斜カム面
27……第2のスライダカム
27a……凸部
27a1……傾斜カム面
27a2……直線カム面
28……第2のドライバカム
28b……凹部
28b1……傾斜カム面
28b2……直線カム面
28c……外側側面
28d……凹部
201……第1の付勢手段
202……第2の付勢手段
203……第3の付勢手段
204、206、210……サイドピン

3……下型
3b……凸部
31……ポンチ
31a……ダイ
32……下ブランクホルダ
301……第4の付勢手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10