(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記出力を取得するステップは、波長依存散乱、吸収、および前記サンプルの異方性の少なくとも1つを含む前記光学的特性を示す出力を取得することを含み、前記光学的特性は前記サンプルの動脈パルスを用いることなく判定されたものであることを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
前記時間の関数として前記サンプルを特性化する波長依存物質パラメータを求めるステップは、前記求められたインパルス応答を使用することによって推定されている平均波長依存経路長に基づいて、前記サンプルを特性化する波長依存物質パラメータを求め、
前記サンプル内の前記少なくとも1つの送信機と前記少なくとも1つの受信機の間の直線経路とは異なる前記平均波長依存経路を散乱させる
ステップを含む、請求項1に記載の判定方法。
(i)前記重み関数によって重み付けされている、前記計算されたインパルス応答、および(ii)前記基準データに基づいて前記サンプルを特性化する前記波長依存物質パラメータを改変するステップをさらに含む、請求項4に記載の判定方法。
少なくとも1つの波長依存物質パラメータを求めるステップは、前記サンプルの酸化のレベル、および、前記サンプル中の選択される種の濃度のうちの1つまたは複数を求めるステップを含み、
さらに、異なる波長で、それぞれ対応するEMWを互いに直交する第一と第二励起シーケンスで変調することを含んでいる、請求項1に記載の判定方法。
前記インパルス応答を求めるステップは、出力に基づいて前記サンプルのインパルス応答を求めるステップを含み、前記出力は、前記少なくとも1つの送信機および前記少なくとも1つの受信機によって形成される対の時間依存特性であり、前記対は、前記少なくとも1つの送信機によって生成される、それぞれ対応する励起シーケンスパルス系列によって前記システムの前記データ処理ユニットにおいて識別され、
第一波長における第一の励起シーケンスパルス系列は、第二波長における第二励起シーケンスパルス系列と直交していることを特徴とする、請求項1に記載の判定方法。
前記物質パラメータを時間の関数として表す曲線の異なる部分に基づいて前記少なくとも1つの送信機と前記少なくとも1つの受信機との間に位置する前記サンプルの断面にわたって前記求められた物質パラメータの空間マップを形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の判定方法。
前記生体サンプルの表面に沿って1つ以上の送信機と1つ以上の受信機の少なくとも1つを再配置するステップをさらに含んで、前記再配置するステップの結果として生成される前記生体サンプルの構造を表現する画像に基づいて前記前記少なくとも1つの波長依存物質パラメータを求めるステップの局在化を強化することを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書全体を通じて「1つの実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」、「関連実施形態(a related embodiment)」または類似の文言が参照されている場合、これは、「実施形態(embodiment)」が参照されているものに関連して記載されている特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。本開示のいかなる部分も、それ自体で、および/または図面との関連において、本発明のすべての特徴の完全な説明を提供するようには意図されていない。
【0020】
図面において、同様の符号は可能な限り、同じまたは類似の要素を表す。いかなる単一の図面も、本発明のすべての特徴の完全な説明を支持するようには意図されていない。言い換えれば、所与の図面は、本発明の特徴の、概してすべてではなく、概して一部のみを説明するものであり、図面を単純にするために、提示され得る特定のビューまたはすべての特徴のすべての要素を含むとは限らない。本発明は、本発明の特定の特徴の1つまたは複数なしに実践される可能性があり得る。一実施形態の特定の詳細は、必ずしも、そのような実施形態を記載しているあらゆる図面に示されていない場合があるが、本明細書の文脈が別途必要としない限り、図面内にこの詳細が存在することが暗示され得る。1つまたは複数のさらなる実施形態において、本発明の記載されている単一の特徴、構造、または特性は、任意の適切な様式で組み合わされてもよい。
【0021】
さらに、処理の流れを示す概略流れ図が含まれている場合、処理ステップまたは特定の方法が行われる順序は、図示されている対応するステップの順序に厳密に従う場合もあるし、従わない場合もある。
【0022】
特許請求の範囲または本開示に添付されている節に記載されているものとしての本発明は、本開示全体に鑑みて評価されるように意図されている。本発明は酸素濃度計デバイスの例に関連して説明され得るが、一般に本発明の範囲は、概して、電磁放射を生成し、任意選択的に検出するデバイスを包含することは理解されたい。
【0023】
動脈血および組織酸素飽和度の評価は、たとえば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような急性の心血管の不全の監視、診断、および処置、または極端な場合には瀉血にとって重要であることが分かってきている。さらに、生理的変化が発生している時間記録が、潜在的な心血管の悪化を示す。動脈血および組織酸素飽和度の定性的な監視を可能にする技法は存在するが、現在の医業は、初期の心血管イベントまたは身体外傷から医療施設への到着を通じての心血管状態の悪化を定量的に監視するためのツールを欠いていると考えられる。最近の理論的展開においては、極端に大型のデバイスを用いることなく精度を改善するための方法として、多波長酸素濃度計の潜在的な利点が指摘されている。上述した市販の多波長技法の欠点に加えて、商用の酸素濃度計が動作する波長の決定はある程度任意であり、実際の使用によって証明されているように、結果として患者から取得されるスペクトルデータが混同してしまう。結果として、生体情報のデータ処理および取り出しが不必要に複雑になる。それゆえ、現在使用されている方法は、定量的には準最適である。
【0024】
患者の動脈血酸素飽和度を継続的に監視するために、パルス酸素測定法が一般的に使用されている。「パルス」は、心周期の間に組織中の動脈血の時間変動量に由来する。一般的なパルス酸素測定センサは、血液灌流組織を通じて散乱し、かつ/または透過される光を測定するために、光検出器と、2つ以上の波長において光を生成する光源とを利用する。波長選択は、従来は、動脈酸素飽和度(SaO
2、SpO
2)の変化に対する感度を重要視しており、放射される波長の少なくとも1つは、酸化ヘモグロビン(すなわち、O
2Hb)の吸収係数が、脱酸素化ヘモグロビン(すなわち、HHb)の吸収係数と著しく異なるスペクトル領域内に入るように選択される。パルス酸素測定法のための複数の光源に一般的に実践される選択の1つの例は、2つの発光ダイオード(LED)を使用することであり、一方が約660nmを中心とするスペクトルを有する光を生成し、第2のLEDが約900nmを中心とするスペクトルを有する光を生成する。
【0025】
異常ヘモグロビン(すなわち、MetHbおよびCOHb)のような、動脈血中の他の分析物を測定することも可能であり、各分析物につき少なくとも1つの波長が追加される。
【0026】
酸素濃度計は、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)を採用している場合がある。従来の端部放射(面内としても既知である)レーザデバイスから発せられる光ビームは通常、断面が楕円形であり、非点収差的であることが多い。端部放射レーザからのビームの発散の角度は大きく(30度×10度程度)、それによって、光ファイバに結合する効率が低減する。対照的に、VCSELデバイスは、より制約された光路を提供するために成形された開口を使用し、その結果として、ビームは断面が円形になり、ビームを一般的に約10度の角度で、概してより小さく発散するようにするのに十分な直径になる。VCSELの動作特性は、本明細書においてはこれ以上詳細には説明しない。
【0027】
図1Aは、測定プローブモジュール110を概略的に示し、レーザダイオードがプローブの一体部品になっている。プローブモジュール110は、任意選択的に、空間的に所定のパターンまたはアレイに構成されている1つまたは複数のVCSEL120を含む。本発明のVCSEL120の各々は、選択された波長を実質的に中心とする光ビームを生成する。プローブモジュール110は、レーザダイオード(複数の場合もあり)120から放射される光を受け取り検出するように構成されている光検出器130をも含む。光検出器130は、たとえば、光電子倍増管(PMT)、アバランシェフォトダイオード、PINダイオードのような任意の適切な検出器構成要素のうちの少なくとも1つを含んでもよく、特定の事例においては、そのような検出器のアレイを含んでもよい。プローブモジュール110は、プローブをモニタ(図示せず)と相互接続するケーブル(図示せず)を用いてプローブモジュール110と動作可能に協働するように適合されているコネクタ(図示せず)をも含む。プローブモジュール110は、患者の灌流組織140(たとえば、例示のみを目的として指として示されている)に並置されて示されている。プローブモジュール110は、送信モードにおいて動作するように適合されている(レーザダイオード120のアレイが指140の一方の側にあり、光検出器130が指140の他方の側にある)。代替的に、プローブは、反射または後方散乱モード(ここで、要素120および130は、灌流組織140の同じ側に位置付けられる)において動作するように適合されてもよい。レーザダイオード120のアレイは、マウント160によって定位置に保持される拡散器150を含んでもよい。光出力の拡散は、レーザダイオード発光デバイス120のアレイによって生成される光部分166が空間的に集中されず、誤って患者の眼に再配向された場合に有害な影響を引き起こす可能性がないことを確実にするためのものである。光部分166が細動脈床170を通過するときの経路長の変化は、血液分析物の濃度を求めるのに使用される性能指数である。アレイ120内のレーザダイオードの間隔が近くなる結果として、レーザダイオードによって生成される複数の光ビームが、細動脈床170を通る実質的に共通の経路を渡ることになり、これによって、測定の精度が改善する。
【0028】
図1Bを参照すると、プローブモジュール110が患者の組織170(一例としてのみ上腕180として示されている)に並置されており、複数の光検出器130が、上腕180の同じ表面に沿って所定の配列(たとえば、アレイ(正方形または矩形)、三角形、および五角形)に配列されている。光源120からそれぞれ光検出器130、131、および132への光の伝播によって決定される光学経路184、185、および186は、組織170および、場合によっては細動脈床の大きく異なる深さにわたる場合がある。光検出器は、概して、互いから所定の距離に位置付けられ得る。この場合、組織170を通じて伝播するパルス波は、空間的に離れている光検出器130、131、および132によって別個の検出可能である。これらの検出器によって受け取られる光と関連付けられるパルスベースの分析物組成データの時間差が、たとえば、心拍出量、および、心拍出量の心拍間の変化のような、患者の状態の様々な特性を判定するのに使用される。プローブが配置される身体位置は用途に応じて異なってもよい。
【0029】
一般的に、複数の放射器の間でのスペクトル分布の重なりを回避し、ヘモグロビン吸光スペクトル分布曲線に関して所与の放射器のスペクトル帯域幅の精密な協働を可能にするために、酸素濃度計内の放射器として単色光源を使用することが望ましいことが諒解される。特に、LED帯域幅の半値全幅(FWHM)値は一般的に、少なくとも数十ナノメートルを超える。対照的に、VCSELの帯域幅のFWHMは、約1nmである。加えて、LEDは一般的に、これらの光源の従来の用途は所定の波長(複数の場合もあり)において動作することを必要とする定量的測定システムではなくディスプレイ技術にあるため、対応する帯域幅の中心波長を厳密に品質制御することなく製造される。
【0030】
別の例として、他の用途においては実質的に同一であると推定され得る、LED間での中心波長、帯域幅、およびスペクトル曲線の形状の動作変動は、後述するもののような用途においては大きく異なる場合がある。この目的のために、
図2は、理想化されたLEDのスペクトル210の一例を示す。曲線は、600nmを中心とする対称な帯域幅を有する。第2の曲線215は、製造時のLEDの公称600nmを中心とするスペクトルの測定値に対応する。LED作製プロセスが不完全であると、その結果として、曲線215のスペクトル帯域が理想化された曲線210のものと比較して赤方偏移し、加えて、明白に700nmを上回るスペクトル出力を呈することになる。スペクトル放射曲線215の尾端217は、灌流組織からの受信信号に対する測定可能な効果を有し得る。スペクトル放射曲線215の尾部217の大きさおよび範囲は、通常の中心波長の信号出力と比較して予測、測定、および形状するのが困難である。第3のLEDに対応するまた別のスペクトル曲線220は、そのスペクトルは公称600nm波長を中心とするが、対応する中心波長に対するスペクトル出力の非対称性を示す。LEDとは対照的に、VCSELは、中心波長と帯域幅の両方に関して予測可能かつ反復可能なスペクトル出力で製造することができる。
【0031】
別の複雑性要因は、LEDがプローブモジュール内に搭載され、患者の皮膚に並置されることである。それゆえ、LEDはプローブモジュールの動作中に著しい温度変動を受け、これによって、LEDによる波長出力が変化させられる場合がある。この効果は、LEDアレイにわたって動的な変動を導入し、測定可能なエラー源を生じる可能性がある。最後に、もう1つのエラー源は、いわゆる「静脈プレフィルタリング」であり、LEDのスペクトル出力が、静脈および血液の非拍動動脈成分によって生成される波長の範囲にわたって不均一かつ予測不可能に減衰される。そのような光の減衰は、血液の酸素飽和度および光の波長の関数であり、被験者ごとに変化し、本質的に一時的であり、所与の1人の患者の中で、また複数の患者にわたって変化する。動脈血流は、パルス酸素濃度計読み値が取られる患者の四肢の中で非常に変化しやすい。血液の動脈成分と静脈成分との間の酸素飽和度の差は1パーセント未満ほどの小ささから、25パーセントを超えるまでになり得る。光源のスペクトル帯域幅が大きくなると、このエラー源からの可能性のあるエラーがより大きくなる。エラー源は、そのLED、および、読み取りを実行するためにLEDを患者の付属肢に配置する方法に固有のものである。
【0032】
したがって、パルスオキシメータの光源(または光源の組合せ)が動作すべき複数の動作波長の選択は、非常に重要なものとなる。この目的のために、
図3Aは、4つの血液分析物(酸素ヘモグロビンOxyHb、デオキシヘモグロビンDeoxyHb、;carboxyhemoglobin、COHb、およびメトヘモグロビンMethHb)と、8つの波長(610nm、620nm、630m、660nm、700nm、730nm、805nm,および905nm)の概略的な指示と、市販の病院用の酸素測定システムに採用されている8つのLEDにそれぞれ対応する8つのスペクトル分布(まとめて300とラベリングされている)に関するスペクトル分布曲線を示すグラフを提示する。LEDの光出力のスペクトルが大きく重なっている(おそらく610nm、620nm、630m、660nm、700nm、730nm、805nm、および905nmを中心として)結果として、取得されるデータのスペクトルが混合しており、これはせいぜい、背景雑音を低減するための信号加算平均に寄与することしかできないことが諒解される。事実、後述する方法およびアルゴリズムによって確立されるように、複数のヘモグロビン種を同定および特性化するためのデータの実際に有意な大部分を取得するには、上述の8つの波長から選択される4つのみの波長にある光ビームで十分である。
図3Bは、
図3Aのセット300からの4つのスペクトル分布320のそのような選択を示す。異なる波長において動作するいくつかの異なる光源を使用することによって取得されるデータを使用することによって、ユーザは、複数の生化学種を表す解を得ることが可能になる。
【0033】
本発明の実施形態を説明する特定の例が、光学分光学、より具体的には、血液サンプルの酸素測定、定量的酸素測定、またはパルス酸素測定への応用によって下記に提示されているが、本発明の実施形態は、異なる分析物(たとえば、分子またはタンパク質)を同定および/または測定するために、他の媒質(たとえば、気体または液体)とともに使用することができる。本発明のアルゴリズムの特定の実施態様が行列方程式を使用して説明されるが、1つまたは複数の分析物の判定のための連続方程式を使用することも、本発明の範囲内にある。同様に、VCSEL(複数の場合もあり)は、たとえば、端部放射半導体レーザ、または発光ダイオードのような、他の光源に置き換えてもよい。その上、本発明の実施形態は、必ずしも光波ではなく、たとえば、無線波または音響波のような異なる波を使用することによって実施されてもよい。
【0034】
試験用サンプルが生体組織および/または血液を含む場合、本発明の一実施形態に従って選択されている波長にある光によって判定されるサンプルの特性は様々である。これらの特性は、たとえば、機能的または機能不全のヘモグロビン、グルコース、脂質、タンパク質、発色団、気体(酸素または二酸化炭素の割合など)、水の濃度、およびpHレベルを含む。測定され得る他の特性は、正常または異常細胞計数および正常または異常タンパク質レベルを含む。本発明の範囲は、挙げられている生体組織または限定された特性には限定されない。本発明の範囲は、生体および非生体サンプル中に存在するものとしての、全般的な物質成分の相対レベルおよび定量量の測定をも含む。
【0035】
微分処理を可能にする本発明の一実施形態は、たとえば、血液酸素飽和度レベル、血糖値、血液タンパク質レベル、血中脂質レベル、体内総水分量、中心血液量、蛍光生体分子または色素の濃度、1回呼吸気量、心拍出量、および心拍出量の心拍間の変化のうちの1つまたは複数も提供し得る。波放射源の位置、角度、強度、位相、および波長の時間ベースの変化を含めることによって、サンプルプロービング波は変更することができる。たとえば、サンプルの1つまたは複数の特性の定量的測定を可能にするために較正量の一酸化炭素(CO)を導入することによって、サンプルも変更することができる。本発明の範囲は、濃度の時間変動性を判定することができるように、経時的に測定値を記録することも含む。このデータの集合から導出される特性は、心拍、心拍変動、ストーク量、ストーク量変動、および類似の特性を含む。
【0036】
本発明によるアルゴリズムを実施することによって、デオキシヘモグロビン(不飽和化した形態のヘモグロビン)、ならびに、機能不全のメトヘモグロビン、スルフヘモグロビン、およびカルボキシヘモグロビン(後者は高環境濃度の一酸化炭素への曝露に関係する)酸素飽和ヘモグロビン(酸素ヘモグロビン)を伴う化学平衡に見られる様々なヘモグロビン種の最適な光学的検出だけでなく、任意の所与の時点における血液中の各種の相対的な割合の判定の実施可能性も促進する。この目的のために、
図3Aに示すもののような複数のヘモグロビン種の吸光係数のスペクトル分布を表す曲線(さらに吸収曲線として参照される)のセット。当然のことながら、光学的に取得されるスペクトルデータから複数の種を解決するには、ある連立方程式を解かなければならない。一例として、4つのヘモグロビン種の場合、少なくとも4つの独立した式が必要とされる。これらの式を導出するために、血液サンプルのスペクトル特性の少なくとも4つの線形的に独立した光学測定値を組み込むのに少なくとも4セットの係数が必要とされ、それゆえ、少なくとも4つの異なる光学波長が必要とされる。有意なヘモグロビン測定を実行することができる光学波長は、約450nm〜約1000nmの範囲内にある。
図3Cは、ヘモグロビン種の吸収曲線(特に、吸光係数のスペクトル依存性の曲線)の例を示し、最低の雑音対信号比(NSR)、または代替的に、最高の信号対雑音比(SNR)を有する4つの同定されたヘモグロビン種を解決することに関して最適である光学波長(図示のように、611nm、650nm、673nmおよび857nm)を特定する。異なる吸収曲線および分光デバイスの動作の関連波長の選択が異なるNSRに対応することになることが諒解される。
【0037】
4つのヘモグロビン種(たとえば、酸素ヘモグロビン、デオキシヘモグロビン、メトヘモグロビン、およびスルフヘモグロビン)の吸収曲線を分析することによって、任意の所与の種が、ある狭い範囲の周波数においては高い吸収性能指数を規定し、異なる狭い範囲の周波数に置いてははるかに低い吸収性能指数を規定し得ることが分かる。4つすべてのヘモグロビン種の相対または絶対量を同時に測定および解決するために、理想的には、4つの未知の波長変数を有する4つの線形的に独立した式を選択しなければならない。波長の選択を最適化するための1つの方法は、4つすべての測定値の最低のNSRをもたらすために、これらの式を可能な限り互いに線形的に独立させることである。それゆえ、4つの光学波長は、それぞれ対応する吸収曲線が、これらの波長において可能な限り互いから異なる大きさを有するように選択されるべきである。波長は、分析物との、電磁放射(EMR)または電磁波(EMW)の各相互作用がキャプチャされるように選択されるべきである。すべての成分が特定の波長にあるEMRまたはEMWに対して透過性である場合、EMRまたはEMWは、サンプルとの相互作用が非常に小さい。いずれの分析物も所与の波長において実質的に不透過性である場合、検出器によって受信される信号レベルは測定するのが困難になる。線形独立性と分析物とのエネルギーの相互作用との組合せの改善は、連立方程式における変動の伝播を改善することによって得られる。これは下記に詳細に(特に、式(29〜39)を参照して)実験されている。
【0038】
Ward CheneyおよびDavid Kincaid(Numerical Mathematics & Computing,7th Ed.,Brooks Cole;April 27,2012)によれば、行列演算のために、演算の出力に対する、入力内のエラーの伝達の尺度をもたらす「条件」を計算することが可能である。1の条件数を有するシステムは良条件であると考えられ、計算されたより高い条件数は、システムAx=bを解くにあたって次第に悪条件となるシステムを示す。線形システムがAの要素の擾乱、またはbの成分の擾乱の影響を受けやすい場合、この事実は、大きい条件数を有するAに反映される。
【0039】
図3Aにおいて、8波長ソリューションの条件数は30.5であると計算されており、
図3Bにおいて、条件数は33.1であり、
図3Cにおいて、最適に選択された波長によって、条件数は19.8であると計算されており、条件数が大きくなるほど、システムはより悪条件になった。
図3Bにおいて、波長の選択は
図3Aに含まれている波長の選択に制約されたことに留意されたい。
図3Bにおける条件数は
図3Aよりも高いが、エラーの伝播を含む他の性能指数は大きく改善されている。条件数はここでは、1つの可能性のある性能指数を示すために使用されている。波長選択の制約がなければ、
図3Cの条件数は、
図3Aまたは
図3Bのものと比較して改善されることに留意されたい。
【0040】
本発明の見解によれば、パルスオキシメータまたは光学分光計に使用するためのVCSELの動作波長の選択は、たとえば、混合行列の条件または変動伝播に限定されない費用関数手法に基づいて、メリット(または費用)関数を形成することによって実行される。費用関数の制約パラメータのいくらかは、(i)VCSELまたは他の構成要素の製造可能性、(ii)光源出力の帯域幅またはスペクトル範囲、(iii)帯域幅が実質的に中心とする中心波長、(iv)動作中心周波数のわずかな変化を伴う急速な精度の変化をもたらす遷移領域、(v)異なる周波数の光が媒質中を渡る差分経路長または平均経路〈δ〉、(vi)たとえば、媒質中の生理的に関連する変化と関連付けられる経路長の統計分布から導出される光学経路長エラー、および(vii)分析物吸収方程式による波長特有のペナルティ係数を含み得る。本発明のアルゴリズムによれば、考案される費用関数の全体が、物質成分のスペクトル依存特性を測定するためのパルスオキシメータ、またはより一般的に分光器の動作波長を規定するプロセスを最適化するために、同時にこれらの制約(および必要とされ得る追加の制約)を適用する。
【0041】
「製造可能性」制約パラメータは、選択された波長において動作するVCSELが製造され得る容易さ、または可能性の高さがどれだけかを規定する。費用関数全体の計算において、選択された波長が製造可能性制約限界に入らない場合、重み付けまたはスケーリング(たとえば、式(40)を参照して下記に説明するような)が実行される。
【0042】
「帯域幅」制約パラメータは、急激な遷移領域の分離における有効性を試験するために、所望の帯域幅の変動を計上し、実際の光源プロファイルの任意選択の入力を可能にするための仮説的なVCSELもしくはLEDまたはさらには白色光源のシミュレーションを促進する。
【0043】
「中心周波数」制約パラメータは、所与の光源の性能に対する製造公差の影響の試験を促進する。特定のタイプのスペクトル分布が中心波長の大きな変動を有する場合、このパラメータは、所望の中心周波数に対する製造中心周波数の関数としての解におけるエラーを最小限に抑えるための制約として含まれ得る。
【0044】
「遷移領域」制約パラメータは、波長の選択が、その波長の周辺において、酸素濃度計の動作と関連付けられる吸収曲線が急激に変化している(それによって、取得されるデータの処理に変動性が導入されている)ようなものであり得るという認識を考慮する。
【0045】
「差分経路長」制約パラメータは、光学散乱係数の波長依存性を計上し、これは、光学経路長が光源によって異なることを意味する。従来の酸素濃度計において、経路長は等しいと仮定され、そのため、考慮される部分ではなかった。しかしながら、低酸素飽和度を特徴とする事例においては、光学経路長が異なる結果として、酸素飽和度の推定が不満足なものになる可能性がある。したがって、本発明のアルゴリズムは、異なる波長における光学データ取得に対応する経路長の差を考慮に入れる。
【0046】
「相互作用」制約パラメータは、サンプルまたはサンプルの物質成分の差分的に過剰な透過性および差分的に過剰な不透過性を計上し、それによって、EM波のサンプルとの相互作用が最小になる(透過性)か、または検出ユニットによって受信される信号が最小レベルになる(不透過性)のいずれかである。
【0047】
解のエラーを最小限の抑えるための方法は、提案されるアルゴリズムを利用する。そのような方法は、焼きなまし法、勾配降下法(最急降下法としても既知である)、および線形計画法を含む。加えて、または代替的に、モンテカルロ法を使用するフルフォワードおよび逆モデルのような制約が、所望のシステム最適化に応じて任意選択的に方法に含まれるか、または代替的に方法から外されてもよく、それによって、生理的変数の測定の包括的解釈がもたらされる。たとえば、特定の分析物に対応する制約またはペナルティは、その分析物が媒質中に存在しない場合は、費用関数全体の中に含まれる必要はない。
【0048】
したがって、
図3Cに示すように、「ペナルティ」としてラベリングされている曲線は、費用関数のサブセット、すなわち、波長選択の決定を最適化するための本発明によるアルゴリズム的プロセスに組み込まれるスケーリングファクタを表す。この「ペナルティ」関数は、たとえば、ある波長にあるレーザ(特に、VCSEL)が、他の波長にあるレーザよりも製造しやすいという検討事項を表す。後述するように、「ペナルティ」関数を使用することで、ペナルティ関数またはペナルティ性能指数を最小限に抑えるように最適なレーザ波長の選択をシフトすることによって、アルゴリズムが効率的に変更される。最適化アルゴリズムがペナルティ曲線を含むことなく実行された場合、最適化プロセスは、ペナルティ曲線を考慮することなく選択されるものとはかなり異なる場合がある最適な波長にたどり着く。たとえば、新規のレーザ製造手法のために、ペナルティ曲線の形状が変化する場合があり、新規の最適化の結果は、更新/変更されたペナルティ曲線を用いるアルゴリズムを行使することによって決定され得る。有効な解が、製造に特に費用がかかるレーザを使用することを必要とする場合、アルゴリズムは対応する波長を選択し、「費用」閾値が、所与の設計予算を前提とすると実現可能でないと判定する。光源に対する製造制約を超える他の要素、たとえば、システムの受光部を含む選択される光検出器の変動する波長における相対的光応答性、またはそれに対する製造制約を含む、問題の記述に追加の検討事項が組み込まれ得る。
【0049】
血液の2つの個別の要素(本明細書においては発色団とも称されるヘモグロビン種)を分離するのに使用される波長選択プロセスは概して、1つまたは複数の波長における測定値が、1つまたは複数の発色団をスペクトル的に分離するために必要とされるという経験的観測に基づく。この観測は、1つまたは複数の発色団によるプロービング光の吸収を表す測定光信号のスペクトル混合が最小になることを保証するための根拠として役立つ。対象の発色団の数が増大すると、波長依存連立方程式を解くのに必要とされる波長の最小数も増大する。対象の波長の制限されたサブセットについて2つを超える発色団を規定することは計算的に解決困難であることが、公開されている科学文献においてすでに文書化されており、本質的に解は準最適なものになる。しかしながら、本発明の見解によれば、酸素濃度計の波長の選択のためのアルゴリズムは、少なくとも所定の性能指数を最小化することに基づいて最適解(最適に規定された波長において動作するレーザ源、または代替的に、市販されており、最適化アルゴリズムによって規定されるものに近い波長において動作するレーザ源に対応する)を提供する。所定の性能指数の一例が、測定値から解への変動伝播によってもたらされる。アルゴリズムは、解の一部として固定された特定の波長を使用する近最適解または束縛解を特定するのに使用され得る。この手法は、固定波長にある所与のVCSELセットが市販されており、新たな波長が相当の費用増大をもってしか利用できない場合に使用するのが有利であり得る。アルゴリズムは、付加的に、最適な波長セットを特定するのに使用することができ、これはその後、最適なセットからの波長に対応する中心波長において動作するVCSELを特別に設計および製造するプロセスを推進する。
【0050】
特定の用途に使用される、好ましくは分光デバイスがそこにおいて動作すべきである波長の選択を考慮するとき、測定されるべきサンプルの物質成分を考慮することが必要である。本明細書においては交絡する可能性のある成分と称される、これらの物質成分のいくつかは、その存在がサンプルの測定値(複数の場合もあり)と関連付けられるスペクトルに影響を及ぼすことになるサンプルの物質成分であり、その存在が、サンプルを通じて伝播される信号のレベル、および、信号のサンプルとの相互作用のレベルのうちの少なくとも1つに影響を及ぼすことになる。そのような考慮は、条件数とは対照的な変動伝播を使用することを必要とする。
図3Dの曲線360は、クロロホルム中のビリルビンが約240〜約700ナノメートルの範囲にわたってスペクトル的に変化するといの吸光係数を示す。(ビリルビンは正常なヘム異化の黄色の崩壊産物である。ヘムはヘモグロビン中に見られ、赤血球の主要成分である。ビリルビンは胆汁および尿中で排泄される。)
【0051】
減光曲線360の膝状の部分によって経験的に判定され得るように、測定媒質の物質成分としてのビリルビンは、530nm未満では530nmより大きい波長よりも大きい吸光係数を有する。この特性は、交絡する可能性のある分析物によって利用可能であるトレードオフの一部を示す。分析物の濃度が対象の分析物の測定値に影響を与えるほど十分に高い場合、交絡する分析物のこの範囲の可能性のある濃度によって導入されるエラーは、測定のスペクトル依存費用として導入され得る。これによって、所与の交絡する分析物がほとんどまたはまったく測定値に影響を与えないスペクトル領域に位置する波長を選択するために分光デバイスの動作の最適な波長(複数の場合もあり)を決定するためのアルゴリズムがもたらされることになる。代替的に、さらなる波長(サンプルの交絡する物質成分を計上するためのもの)がアルゴリズムに追加され得、交絡する物質成分の濃度が他の分析物判定から抽出され得る。
【0052】
これらの2つの選択(干渉に関する費用曲線の提供、またはさらなる波長の追加)は相互排他的ではない。さらなる波長が必要でないときに両方がアルゴリズムに対する入力として使用される場合、アルゴリズムによる出力としての、生成される波長のうちの2つは同一になることが、経験的に分かっている。そのような最適化は、性能指数として変動伝播を使用する結果である。
図3A、
図3Bおよび
図3Cの説明において示されたように、適切に選択されたより少数の波長が、デバイスを利用する運用費用を表す性能指数の局所最適化に基づいて、デバイスの性能を改善する。
【0053】
光学非侵襲的検知方法は、ヘモグロビン種に加えて、さらなる医療的に重要な、生理的および生化学的変数の検出を促進する。一例として、
図4は、1350nm〜1850nmの近IR範囲内の血糖、タンパク質、および脂質の吸収曲線を示すグラフを提示する。このグラフに示すスペクトル分布400の中心周波数は、対象の物質成分(すなわち、タンパク質、脂質、およびグルコース)の差のある吸収特性はそれ自体をより長い波長で提示するため、
図3A、
図3B、および
図3Cに示すものよりも長い。対照用に、水の吸収曲線が
図4に与えられている。それゆえ、初歩の適切な動作波長、血液中のグルコース、脂質、正常および異常タンパク質、ならびに自然分析物、ならびに人工物質(たとえば、いくつかの化学タグ、マーカ、または色素)の検出および測定が達成され得ると予測される。
図4に示すように測定される物質成分に加えて、測定することができる他の物質成分は、正常または異常細胞計数を含む。最後に、発色団の割合、気体(酸素または二酸化炭素など)の割合、割合水、およびpHレベルのような他の濃度も測定することができる。上述の物質成分は、臨床パラメータとして、場合によっては疾病マーカ(たとえば、糖尿病)として重要である。
【0054】
波長読み値(1371nm、1597nm、1679nm、および1707nmなど)をマーキングされている垂直実線は、本発明の最適化アルゴリズムを使用することによる上述の種の検出のために選択される光の4つの動作スペクトル分布に対応する中心波長を表す。VCSELのFWHM値が1nm程度であるとき、グラフ内のこれらの垂直線の幅はおおよそ、VCSELの光のスペクトル分布を表す。他方、鈴形状の曲線400(そのピークは実質的に垂直実線を中心とする)は、比較すると、同じ波長を中心とするLEDの広帯域スペクトル分布を示す。各LEDのFWHM値は50〜100nm程度、またはVCSELの少なくとも50倍である。
【0055】
これらの波長、または、本明細書に記載する制約に適合するように決定された波長のセットの使用、すなわち、主要な物質成分の最適または近最適な分離は、非侵襲的血糖値検出器として使用することができる。複数の検出器130について説明した技法が使用され得る。
【0056】
非散乱吸収媒質
均質で損失の多い非散乱媒体を光量子が通過するとき、光量子は、渡った距離δに関してバルク媒質(BM)の減衰係数μ
a(λ)に従って減衰され、光の放射照度は、ランベルト・ベールの指数法則に従って変化し、光子が距離Δδにわたって吸収される確率は、Δδμ
a(λ)であり、減衰相互作用l
t(λ)の間の平均自由行路は
【数1】
によって与えられる。C
iとして示される媒質の個々の減衰成分または発色団が、バルク媒質の特性の代わりに考慮され、バルク媒質の特性は、すべてのN個の独立した減衰発色団の総和として表現することができる。
【数2】
(1)
【0057】
光の透過を、非散乱媒質を含む個々の減衰成分[C
i]の濃度の関数としてより容易に定式化することを可能にするために、μ
a(λ)は、モル吸光またはモル減衰係数ε(λ
j)[M
-1m
-1]に置き換えられることが多い。この置換のために、所与の発色団iについて、減衰A(光学濃度ODを単位とする)および透過系数Tは、以下のように関係付けられる。
【数3】
(2)
【数4】
(3)
【0058】
したがって、
【数5】
(4)
かつ
【数6】
(5)。
【0059】
光学濃度係数Aが複数の波長j=1…Mにおいて測定される場合、以下のようにベクトルおよび行列表記で表現される。
【数7】
(6)
および
A=ε[C]δ (7)。
【0060】
式(7)は、測定値のバイアスGおよび雑音Nを計上するように書きなおすことができ、結果として、以下のようになる。
A=ε[C]δ+G+N (8)
【0061】
既知のモル吸光係数セット、光学濃度の測定値を所与として、また非散乱媒質は均質であると仮定すると、式(7)は以下によって与えられる。
【数8】
(9)
【0062】
散乱非吸収媒質
非吸収媒質において、光強度は、光子が渡る距離δに関して散乱係数μ
s(λj)に従ってバリスティック経路に沿って低減される。光子が散乱されることなく距離Δδを通過する確率はΔδμ
s(λ
j)であり、したがって以下のようになる。
【数9】
(10)
【0063】
光の散乱は異方性であり得、そのような散乱の方向性は、単位なしの係数gによって記述される。極角φ(0≦φ≦π)および方位角ψ(0≦ψ≦2π)を使用することによって、gは以下のように計算することができる。
【数10】
(11)
【0064】
式中、入射光の方向(入射する光子の単位ベクトル)rと散乱される光子の単位ベクトルr’との間に画定される角度φにおいて光子が散乱される確率であるp(φ)は、Henyev−Greenstein関数によって以下のように近似される。
【数11】
(12)
【0065】
散乱データは、たとえば、積分球を使用することによって取得され、その後、逆モンテカルロシミュレーションの結果と相関され得る。g=1であるとき、光は完全に前方散乱されると考えられ、g=−1であるとき、光は完全に後方散乱されると考えられる。
【0066】
散乱吸収媒質
媒質の散乱および吸収の両方の特性を計上するために、光子と媒質との間の総相互作用係数は、以下のように表現することができる。
μ
t(λ
j)=μ
a(λ
j)+μ
s(λ
j) (13)
【0067】
単位なしのアルベド係数aは以下のように定義され、
【数12】
(14)
そのような媒質における散乱の確率は以下のように表現される。
【数13】
(15)
【0068】
吸収媒質における光散乱の異方性は、以下のような低減した散乱係数を導入することによって計上され、
μ’
s(λ
j)=μ
s(λ
j)(1−g)(16)
低減した総相互作用係数は以下のようになる。
μ’
t(λ
j)=μ
a(λ
j)+μ’
s(λ
j)(17)
【0069】
g≧0であるとき、前方散乱の可能性は増大し、それによって、進行経路に沿った光の明白な減衰は低減することが、従来通り認識される。この従来の見方は、所与の点に達するために個々の光量子がとった経路に関する情報を考慮に入れておらず、全光束のみを計上しており、すなわち、〈δ〉≠δである。それゆえ、そのような従来の手法は、濃度の推定にエラーを引き起こす。特に、〈δ〉>>δであるとき、濃度は過大評価されることになる。したがって、経路長δは、散乱、および、光の幾何学的経路δによって計上されていない光の有効経路〈δ〉を計上するために、スカラー定数を乗算され得る。
【0070】
散乱媒質はいわゆる拡散レジームを規定し、ここで、波長λ
jの連続波等方性点光源から外方に伝播する光の定常状態フルエンス率Φが、拡散近似の有効減衰係数が定義される一般的な拡散方程式を使用して、無限媒質において半径の関数、すなわち、Φ(r)として以下のようにモデル化され得る。
【数14】
(18)
【0071】
従来のモデルと本明細書において提案されている手法との間のこれらの差を所与として、送信機と受信機との間でとられるEM波の経路長に関する情報が、導出される特性測定値の精度を改善するのに有益であることが分かる。
【0072】
酸素測定法:検討事項
血液サンプルの主要な発色団は、機能的ヘモグロビン、オキシヘモグロビン(O
2Hb)およびデオキシヘモグロビン(Hb)、ならびに機能不全のヘモグロビン(すなわち、異常ヘモグロビンまたは機能不全のヘモグロビン)、カルボキシヘモグロビン(COHb)、メトヘモグロビン(MetHb)、グリコシル化ヘモグロビン(GHb/Hb A
1c)、およびスルフヘモグロビン(SulfHb)を含む。[Hb]の合計濃度は[tHb]によって表現され、これは、以下の式によるすべての分画のすべての総和である。
[tHb]=[O
2Hb]+[Hb]+[COHb]+[MetHb]+[SulfHb](21)
【0073】
機能的ヘモグロビンの総和は以下の式によって与えられる。
[pHb]=[O
2Hb]+[Hb](22)
【0074】
酸素飽和度は以下のように定義され、
【数15】
(23)
オキシヘモグロビン分画は以下のように定義される。
【数16】
(24)
【0075】
2波長等吸収酸素測定法
O
2HbおよびHbが有意な濃度中に存在するただ2つの機能的ヘモグロビン種であると仮定される場合、S
O2を推定するのに必要とされる波長は2つだけである。2つの波長λ
1およびλ
2は、λ
1については対応するε(λ
1,O
2Hb)がε(λ
1,Hb)から最大限に異なるように、かつ、λ
2が等吸収点である、すなわち、ε(λ
2,O
2Hb)がε(λ
2,Hb)に正確に等しくなるように選択され得る。それによって、解を必要とする2つの一次方程式から成る連立方程式は以下のようになる。
【数17】
(25)
【0076】
吸光係数が分かっており、減衰(光学濃度)値が経験的に求められているものと仮定される。したがって、2つの選択波長における光学濃度値の比は以下のようになり、
【数18】
(26)
それゆえ、酸素飽和度比は以下の式から求められる。
【数19】
(27)
【0077】
一般的な2波長酸素測定法
上記で提示した派生は、吸収点がλの1つに対して選択されるときの連立方程式の解を実証している。一般的に、吸収点を使用することの背後にある主要な理由の1つは、そのような解が、大きな計算量を必要としないものに単純化されることである。しかしながら、一般的に、上記の一次式(25)が単純に、既知の固有の混合係数εを有する2つの重畳信号の非混合行列とみなされる場合、任意のλ
1およびλ
2は、必ずしも吸収波長点であるとは限らない、酸素飽和度値を推定するように選択され得る。実際、2つの独立した波長λ
1およびλ
2(またはそれぞれλ
1およびλ
2を中心とする重なり合わないスペクトル帯域幅)について、式(7)は以下のように書きなおすことができる。
【数20】
(28)
【0078】
この場合、この係数行列は、相互に直交し、ユニタリであるε係数の混合を定義する。対応する雑音増幅および変動伝播は以下のように与えられる。
【0079】
雑音増幅について、
【数21】
(29a)
かつ
[g(λ
1),g(λ
2)]=[1,1](29b)。
【0080】
変動伝播について、
【数22】
(30a)
かつ
[σ(λ
1),σ(λ
2)]=[1,1](30b)。
【0081】
対照的に重なり合う2つのスペクトル帯域幅については性能指数を定義する必要があり、これは、λ
1およびλ
2ならびに振幅を最適に選択するために、そのようなスペクトル混合/重なりを考慮に入れる。本発明の一実施形態によれば、スペクトル的に重なり合う事例についての2つの波長の選択は、雑音増幅および/または変動伝播の技法を決定することを含む。たとえば、数係数が、線形的に独立ではなく、それゆえ、1よりも大きい条件数を有し、情報の混合を結果としてもたらすように選択されることによって、A(λ
1)がこの時点でO
2HbおよびHbからの信号成分を含むため、解はより複雑になる。同様に、この時点でA(λ
2)はO
2HbおよびHbからの信号成分を含み、一方で、A(λ
1)はO
2Hb単独からの信号成分を含むべきであり、A(λ
2)はHb単独からの信号成分を含むべきである。この質の落ちたまたは不純な状況は、それによって、混合行列または非混合行列として記述される。以下の式に対応するスペクトル的に重なり合う帯域幅の場合、
【数23】
(31)
雑音増幅は、混合ベクトルの直交性が低くなるにつれて増大すると観測される。
【0082】
ここで、変動伝播式は、そうでなければ雑音増幅によって予測されない、混合ベクトルの直交性の低減およびε感度の低減を計上すべきである。変動伝播において、各波長において取得されるデータと関連付けられる所与の光源−検出器距離について、光と分析物との間の相互作用が少なくなるため、ε感度の任意の低減がSNRの他に依存しない低減が引き起こす。しかしながら、ε、すなわち相互作用ペナルティは、雑音増幅によって観測されず、2つの技法の間の非常に重要な差異である。この差があるため、雑音増幅は、変動伝播技法と比較してあまり好ましくない技法である。
【0083】
ここで、上記の例について、相互作用は以下のように実証される。
【0084】
雑音増幅について、
【数24】
(32a)
かつ
[g(λ
1),g(λ
2)]=[1.1135,1.1135](32b)。
【0085】
変動伝播について、
【数25】
(33a)
かつ
【数26】
(33b)。
【0086】
上記の定式化は、絶対波長依存ε感度を計上しておらず、それゆえ、より一般的な形式の雑音増幅および変動伝播パラメータが必要とされ得、当業者は、分析物に適用される追加の制約を理解し得る。雑音増幅手法とは異なり、酸素飽和度レベルS
O2の推定に変動伝播技法を使用することは、ε感度の直交性および波長の各々におけるεの相対感度の両方に依存する。信号が実質的にスペクトル的に混合されないときに最適解が生じ(式(28)に対応する)、結果として2つの他に依存しない式および相対ε感度がもたらされ、それらの各々は1に等しい。雑音増幅および変動伝播技法は実験において所与の発色団セットに対して選択されるべき最適なλjの普遍推定値を提供するため、これは重要である。これらの手法の両方が、特定の用途向けにさらに適合され得ることに、当業者は気づくであろう。
【0087】
多波長酸素測定法
本発明の実施形態によれば、上述の方法は、多波長酸素測定法(3つ以上の動作波長を採用する)の事例にさらに拡張される。別の手法は、式(31、32a、32b、33a、および33b)を参照して説明したものとの類推によって、式(7)のような式の全行列を解くことを含み得る。動作波長の数が増大すると、全体的な変動も増大することが諒解される。下記に示す例において、2つのみの種(オキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビン)の判定に5つの動作波長λ
1〜λ
5が使用される。
【数27】
(34)
【0088】
したがって、この例において、雑音増幅について、
【数28】
(35a)
かつ
[g(λ
1),g(λ
2)]=[1.2155,1.2155](35b)。
【0089】
変動伝播について、
【数29】
(36a)
かつ
[σ(λ
1),σ(λ
2)]=[1.8787,2.5257](36b)。
【0090】
多波長酸素測定法において選択される波長が、直交性および混合方程式の分析物感度を改善するように最適化されることが重要である。補助波長を加えるだけで、結果もたらされるS
O2の推定値におけるSNRが低減する効果があり得る。さらに、本発明によれば、さらなる(補助)波長の選択は、測定されるべき発色団(血液の要素)の数に応じて行われる。具体的には、2つの発色団(たとえば、O
2HbおよびHb)の判定のために選択される複数の波長は、5発色団酸素測定のために選択される同じ数の波長と異なる場合がある。本発明の見解に従って複数の波長を選択する結果として、機能的ヘモグロビンの濃度の推定における雑音指数に悪影響を及ぼすことなく、たとえば、異常ヘモグロビンの検出、およびパルスオキシメータまたは分光計デバイスの感度を改善することが可能になる。1つの特定の例において、
【数30】
(37a)
であり、ここで、式37aは、対象の5つの例示的な物質成分(O
2Hb、Hb、COHb、MetHb、およびrHb)を使用する特定の例について式7から導出される。例示的な吸光係数が与えられ、以下のようになる。
【数31】
(37b)
【0091】
同様に、式9に示すように、送信される各波長の減衰を所与として対象の物質成分の濃度を導出することが可能であることも望ましい。式37aに対する行列演算を使用して、モル吸光係数ε(λ
i,C
i)、波長の減衰A(λ
i)、および渡った距離δ
Ciから各物質成分の濃度を導出することができることが示される。この形態の式はバルク媒質と関連付けられる距離を使用するための式37cに示されている。
【数32】
(37c)
【0092】
式37dは、式37bにおいてすでに示した、反転した例示的な吸光係数を使用した同じ式(37c)を示す。
【数33】
(37d)
【0093】
式37bを参照すると、ノイズも考慮に入れるべきである。雑音増幅について、
【0094】
【数34】
(38a)
かつ
[g(λ
1),g(λ
2)]=[1.3546,1.3440](38b)。
【0095】
変動伝播について、
【数35】
(39a)
かつ
[σ(λ
1),σ(λ
2)]=[2.0936,2.7927](39b)。
【0096】
重み関数またはパラメータ
式(7)の派生を所与として、たとえば、雑音ペナルティを組み込む費用関数を表す二次元(2D)またはベクトル(1D)行列Wによって、さらなる波長特有のペナルティまたは重み付け係数が組み込まれ得ることが諒解される。酸素濃度計のスペクトルチャネル(すなわち、動作波長および関連付けられるスペクトル帯域幅)が独立している(重なり合っていない)とき、Wは喉頭行列W
Iである。代替的に、W=W
sep行列が、(動作波長がさらに離れて分離されると、分離を、δの差の増大または差分経路長係数〈δ〉に関係付ける)波長分離と関連付けられるペナルティを含み得る。また別の実施態様において、代替的なまたはさらなるW=W
cost重み付け行列が、特定の波長において動作する光源の製造の複雑度または費用についてのペナルティを含み得る。さらに、そのような重み付け係数のすべてまたは少なくとも一部は、波長選択の最適化をより実際的にするために連続して使用され得る。したがって、重み付け関数を組み込むために、一般行列式(7)は、たとえば、
[g(λ
1)W(λ
1),g(λ
2)W(λ
2)]および[σ(λ
1)W(λ
1),σ(λ
2)W(λ
2)](40a)
から、
[g(λ
1)W
IW
cost(λ
1),g(λ
2)W
IW
cost(λ
2)](40b)
および
[σ(λ
1)W
IW
cost(λ
1),σ(λ
2)W
IW
cost(λ
2)](40c)
へと書きなおすことができる。
【0097】
パルス酸素測定法
本発明の1つの実施態様によれば、パルス酸素測定データ取得の「パルス」性(たとえば、(i)動脈パルス波の存在および/またはパラメータならびに(ii)対象を通過する光に対する組織の伝達関数の効果の時系列のサンプリングを含む、測定されている組織と関連付けられる時間的点広がり関数など)を考慮に入れた酸素測定データ処理方法は、組織による光減衰の時間依存性を判定する。たとえば、2つの選択された動作波長/帯域幅が重なり合わない場合、式(7)は、組織および静脈の構成要因を明示的に含むように拡張され得る。
【数36】
(41)
【0098】
この例において、また、さらに以下のように表現される式(41)の時間導関数を考慮すると、
【数37】
(42)
以下の仮定が成される、すなわち、
(i)所与の発色団について、時間とともに変化しないままである(そのような発色団の)吸収スペクトルの一部分は、上記の時間導関数によってゼロに設定され、
(ii)光が渡る有効距離は実質的にすべての発色団について同じであり、Δ〈δ〉または動脈パルスによって引き起こされる距離の変化に等しく、
(iii)2つの発色団のみが考慮されている(この例のみに固有の任意選択の仮定である)。
式からの動脈パルス波に起因する経路長の変化の相殺は、たとえば、2つの異なる波長に対応する式(39)の比を規定することによって達成される。
【数38】
(43a)
【数39】
(43b)
【0099】
パルス酸素測定法の酸素飽和度レベルの解は、これらの仮定の下に以下のように求めることができる。
【数40】
(44)
【0100】
パルス酸素測定法の解(44)と標準的な酸素測定法の解(27)との間の類似性を所与として、標準的な酸素測定法に最適であるように選択された波長は、パルス酸素測定法にも最適であり得ることを、当業者は諒解することができる。
【0101】
定性的かつ定量的なパルス酸素測定法
定性的パルス酸素測定法と定量的酸素測定法との間の主な差は、A)パルス酸素測定法は、最初に波長特有の光学経路長の比が単一であると仮定して、または代替的に、比の因子が既知であると仮定してオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンとの比を測定し、したがって、連立方程式から未知の変数が除去されること、B)パルス酸素測定法は、パルス酸素測定法によって測定される波長特有の時間変動動脈パルスが、動脈を通る光の経路長の増大によって引き起こされると仮定すること、C)パルス酸素測定法は、異なる波長における時変信号の比が、デバイスを飽和度に対して較正するための侵襲的血液気体測定値(すなわち、患者から取り出される血液のサンプルの酸素飽和度の医療研究室測定による)に、または、オキシヘモグロビンと、オキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンを組み合わせた量との比[すなわち、オキシヘモグロビン/(オキシヘモグロビン+デオキシヘモグロビン)]に線形的にまたは低次数多項式によって関係付けられること、D)パルス酸素測定法は、無効なベール・ランベルトの法則に依拠すること、E)定量的酸素測定法は、光源と光検出器との間で散乱されることのないベール・ランベルトの法則の既知の不正確な直接の光学経路の仮定ではなく、光が、光源から濃度勾配をもって拡散すると仮定すること、F)定量的酸素測定法は、光学経路長を幾何形状、またはベール・ランベルトの法則によって仮定される最短経路長から、幾何学的経路よりも大きい平均経路長に変更する組織中の散乱を計上するよう試行すること、ならびに、G)定量的酸素測定法は、動脈パルスに依拠せず、代わりに、オキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンの濃度に直接関係する、特定の波長における吸収を測定することである。
【0102】
組織中、光源から検出器まで光が従う経路は、最小の幾何学的経路に直に沿っているのではない。そうではなく、光はかなり散乱されており、結果として正味の経路長は幾何学的経路長よりも長くなる。加えて、正味の経路長は波長特有である。関連技術のアルゴリズム、たとえば、Ayogi他(Int’l Anesthesia Res.Soc.,v.105,No.6,December 2007)参照、において、波長の光学経路長因子は同様であると仮定されており、それらを除算することが可能になっている。加えて、差分経路長因子は身体構造、たとえば、指対頭皮または耳の耳介に特有であり、一方で、通常の身体構造の変動、たとえば、指の太さは、差分経路長因子をかなり不正確なものにする。実際には、正確に同じであるべき、すべての波長ならびに患者に対する配置および患者の身体構造にとって経路長が同じであることの必要性の可能性は低く、それゆえ、各波長について実際の光学経路長を測定することが有利である。
【0103】
行列方程式を解くためのアルゴリズムの例
焼きなまし法
1つの実施態様において、焼きなまし法と称される技法が、波長の最適な選択を判定するのに使用される。焼きなまし法(SA)は、広い探索空間内の所与の関数の大域的最適解に対して、良好な近似をおくための一般的なメタヒューリスティクスである。波長選択タスクについて、焼きなまし法は、網羅的列挙よりも扱いやすい。この方法の名称は、金属学における焼きなまし、すなわち、材料を、両方ともその熱力学的自由エネルギーに依存する材料の属性である、その結晶のサイズを増大させ、それらの欠陥を低減するために、加熱し制御しながら冷却することを含む技法に由来する。材料の加熱および冷却は、温度および熱力学的自由エネルギーの両方に影響を及ぼす。
図5の流れ図に示すように、この解空間において、温度は、解空間の連続した探査の間の「解を並べ替える」510において選択される変化の推定範囲と、「より不良な」解が「選択P(E
OLD、E
NEW、Temp)を評価する」515において選択されることになる可能性Pとの両方について類似である。金属学の熱力学的自由エネルギーに対して類似であることは、波長の選択を評価するのに使用される性能指数E
WAVESETである。冷却は、焼きなましアルゴリズムにおいては、アルゴリズムが解空間を探索するときにより不良な解を許容する確率を徐々に低減することとして実施される。より不良な解を許容することは、それによって、大域的最適解よりも不良である局所最適解にとらわれることが回避されるため、このヒューリスティクスの基本特性である。
【0104】
図5を参照すると、焼きなまし最適化アルゴリズムは、様々なデータ構造を初期化し505、これは、解(波長の選択)の開始点、解の価値E
WAVESETを計算するための式、良好さの現在の値E
OLD(ここでは解のエネルギーと称され、ここで、エネルギーは最小化されることを所望される)、および現在の「温度」(Temp)を設定することを含む。一般性を損なうことなくさらなる初期化が行われてもよい。選択される解は、可能性のある解からランダムに並べ替えられる(波長の選択が更新される)。並べ替えの範囲は、計算の「温度」の使用によって管理され、上記「温度」は連続した実行の過程にわたって低減することになり、それによって、後述するように、試験されるべき可能性のある解の範囲が経時的に段階的に更新(たとえば、低減)される。並べ替えられた各解が評価される515とき、目的関数E
WAVESETがより良好な数(並べ替えられた解の状態の「エネルギー」が以前の状態を下回る場合に生じる)をもたらす場合、確率P(E
OLD,E
NEW,Temp)によって、現在の状態が並べ替えられた状態を反映するように更新される、ステップ520。このステップから進んで、このエネルギーレベルにおける並べ替えが完了したか否かを判定するための評価が実行される。限定ではないが、特定の「温度」段階と関連付けられるカウント、または、最後に選択された数の評価実行にわたる変化の評価を含む、いくつかの技法が、この評価に使用されてもよい。この「温度」においてそれ以上実行されるべき並べ替えがない場合、「温度」が更新される530。それ以上実行されるべき「温度」選択がない場合、すなわち、計算が完了した場合535、結果が返され540、アルゴリズムは終了する545。評価535がそのように決定した場合、計算は510において継続することになり、新たな「温度」においてさらなる並べ替えが生成される。
【0105】
「選択P(E
OLD、E
NEW、Temp)を評価する」515の特性は、温度(Temp)が低減するとE
OLDおよびE
NEWのうちの低い方の可能性が選択されることになるようなものである。上述のように、目的関数E
WAVESET(λ
1,…,λ
N)は、選択される波長(λ
1,…,λ
N)に基づく。分光測定グラフを通じた波長選択の処理によって、受信信号から物質組成への使用されるべき変換行列が求められる。このように形成された行列は変動伝播について評価され、この結果は、選択される波長および波長間の関係に関係付けられる様々な費用関数によって重み付けされる。この演算によって、特定の波長選択についての性能指数がもたらされる。式40a〜40cを参照されたい。
【0106】
図6を参照すると、ステップ545において焼きなまし法によって選択される状態が最適な選択であることを検証することが有利である。選択された状態が最適であることの確度は、
図5に示す流れ(ステップ500〜545)の複数回の試行を実行することによって増大し得ることが分かっている。焼きなまし法の解の検証は、ステップ655において「温度冷却」プロファイルを選択すること、および、この「温度プロファイル」について複数のタスクを実行することを含む。これらのタスクはステップ660において分配され、ステップ665においてその結果が集約される。ステップ670において判定されるものとして、複数回の実行に基づいて集約された結果が実質的に同じである場合、最適な選択が返された680確度は高く、ステップ690においてアルゴリズムは終了する。ステップ670において実行された比較に基づいて、複数回の実行からの結果が異なる場合、「より遅い冷却を選択する」675が、「タスクを分配する」660において以前に使用されたものよりも遅い冷却プロファイルを手配する。ステップ660〜670を参照して説明したタスクを評価する動作は、ステップ670において実行される比較に基づいて解の群が収束するまで反復される。
【0107】
デバイスを利用する部分的なまたは全体的な運用費用を表し、評価に使用される波長(複数の場合もあり)および重み付け関数(または制約パラメータ)の選択は、有限または離散変数および連続型変数を含み得る。解状態における波長のランダム摂動は、当該技術分野において既知である、限定ではないが、勾配降下(すなわち、最後に変化が結果を改善した場合、同じ方向にさらなる変化を行う)および統計的サンプリングを含む、いくつかの技法によって増強され得る。
【0108】
さらなるアルゴリズム
Stephen BoydおよびLieven Vandenberghe(Convex Optimization,Cambridge University Press;March 8,2004)によって説明されているような凸最適化、ならびに、R.Fletcher(Practical Methods of Optimization,Wiley,1987)によって説明されている線形プログラミングが、上述したような定量化問題に対する改善された解を求めるのに使用することができる2つのさらなるクラスの技法である。
【0109】
構造、システム、および方法
構造、システム、および方法(本明細書のいてはまとめて技法と称される)の組合せが、雑音が存在する中での測定値の精度を改善し、測定システムの(たとえば、非常に小さい成分割合の測定に関する)感度を増大させ、異なる物質成分を区別し、時間および位置にわたる測定サンプルの物質構成の変化を判別する機能を提供および改善するために、使用され得る。行われるべき測定における変動は、多くの原因に由来する可能性があり、下記に確認される様々な原因の組合せに対処するために技法の組合せが必要とされる。
【0110】
測定信号変動および劣化の原因
測定中の信号変動または精度の劣化の原因は、サンプルの不均質性、交絡する物質の存在、電子雑音、電子機器および光学機器の非線形性、環境放射、信号経路の変動を含むランダム性、変換点における量子化、非常に低い信号レベルにおける量子効果、サンプル内の蛍光発光、および非線形的成分相互作用を含む。これらの各々は後述するが、このリストは網羅的であると考えられるべきではない。
【0111】
サンプルの不均質性。測定されているサンプルの不均質性は、サンプルを通じて放射がとる経路に応じて、測定結果に変動を引き起こす。サンプルが完全に均質でない場合、組成の変動は、測定値の雑音要素であると考えられ得る。機械的な、またはサンプル応答の細粒度時間特性を使用した評価測定値の空間位置特定を、そのような不均質性によって生じる雑音を制限するのに使用することができる。多数の測定値にわたる結果の平均化が、この問題を部分的に軽減するが、これは、診断に有用である、時間および空間にわたる変動に関する正確な情報であることが多い。この理由から、後述する技法のいくつかが有益に利用される。
【0112】
図7を参照すると、腕700が、2つの断面
図710(面J−J’に沿ってとられている)および720(面I−I’に沿ってとられている)とともに概略的に示されており、710は、手首近くにとられた断面の表記であり、720は、肘に周辺における断面の表記である。
図7は、本発明による分光デバイスの一実施形態が人間と並置されるときに使用されるサンプルの異成分からなる構成を示すように意図されている。サンプルの異なる部分が、サンプルを通るときの信号を別様に変化させる。骨構造730は、2つの断面
図710および720にも示されている。断面図は、明瞭にするために主図面には示されていない筋組織740を含む。サンプル全体を通じた組織の変化を示し、静脈および動脈のサイズが、それらが互いに近接するときに変化することを示すために、主要な静脈系750および動脈系770が概略的に示されている。この理由から、対象の組織の応答を位置特定するように構成されている測定値が良好な結果をもたらす。腱の位置の表記も断面図に示されている。
【0113】
交絡する物質。組織サンプル中の特定の物質成分の濃度が対象になり得るが、対象の物質成分の測定値と交絡し得るサンプルのさらなる成分が存在する可能性を評価することも重要である。特定の交絡成分は濃度または分布が変動し得る。可能性のある交絡物質は分光学的にアクティブである、すなわち、異なる波長における信号の伝播に対するそれらの影響が変動する。上記の
図3Dを参照して提示されているビリルビンの説明が、可能性のある交絡物質および可能性のある交絡物質のいくつかの適切な処置の一例を与える。
【0114】
電子雑音。絶対零度を上回る温度において動作するように設計されている電子システムは、システムの構成要素の各々における熱雑音の生成の影響を受けやすい。さらなるタイプの雑音(たとえば、散弾雑音または1/f雑音など)の特性はほとんど、デバイスタイプおよび/または製造品質、ならびに、コンダクタンス揺らぎのような半導体欠陥に依存する。測定システムにおいて、雑音は送信機、検出器、およびデコーダの前後に導入される、有用な情報信号のエラーまたは望ましくないランダム外乱である。雑音は、自然の、および時として人為的な発生源からの、望ましくないまたは憂慮すべきエネルギーの総和である。雑音がいくつかの相関のない発生源によって引き起こされる場合、中心極限定理(「大数の法則」としても既知である)が、雑音は統計的に「正常な」またはガウス分布を呈することを提示している。これは、いくつかの技法(後述)が、ノイズフロア未満からの非常に正確な測定値を抽出するために使用され得ることを意味する。そのような抽出の品質は、異なる雑音源が互いと相関しない場合、または、それらが相関され、識別可能な様態で相関する場合に劇的に改善される。
【0115】
電子機器および光学機器の非線形性。測定システムに非線形性が存在する場合、および、複数の異なる非線形性条件下で複数の異なる測定が実行される場合、線形変換に基づく、上述のような行列手法に基づくアルゴリズムは、エラーのある結果を生じる場合がある。入力信号レベルが4つの異なるシステム出力信号レベルと比較されている
図8Aを参照すると、線形信号810は、その値がその入力信号の2倍である線形出力を表す。同様に、線形出力815は入力信号との1対1関係を示しており、線形出力820は、入力の1/2のレベルの信号を示している。非線形データ系列は、低いが増大している利得領域825、高利得領域826、高出力だが増分が非常に低い利得領域827を有する。
【0116】
1つの波長におけるEMWからの信号が825に類似のレジームにおいて動作しているステージに遭遇し、一方で、第2の波長にあるEMWが826に類似のレジームにおいて動作している場合、第2の波長における信号レベルの相対差は、第1の波長におけるそれと比較すると、過剰になる。
【0117】
組み合わせる前の線形化が正確な結果にとって重要である。電子機器および光学機器の非線形性によって生じる場合がある不正確さを回避するために較正および補償回路ならびに較正された範囲選択回路が使用され得る。
【0118】
環境放射。測定されているサンプルを照射する環境放射があることが多い。環境放射の影響を測定プローブから区別するための技法を使用しなければならない。加えて、周囲放射が受信機の入力に過負荷をかける場合、このタスクはより困難になる。
【0119】
SNR改善技法
信号精度改善技法は、すでに説明された、分光測定に使用される波長の選択の改善を含む。信号精度改善技法は、限定ではないが、送信される放射をパルシングすること、オンおよびオフシーケンスに多様性を与えること、送信される放射と測定されているサンプルからの受信信号との間の相関を実行すること、測定を反復すること、測定されているサンプルの位置を特定するために様々な技法を使用すること、さらなる受信機を使用すること、様々な技法によって生成されるインパルス応答の変動を使用すること、アルゴリズムに従ってインパルス応答の特定の部分を選択すること、ならびに、送信機からサンプルへの、および、サンプルから受信機への経路を変更するために物理的構造物を使用することを含む、後述する技法をも含む。
【0120】
多くの通信および測定システムの設計は、送信信号(通信システムの場合)または測定値(多くの他のシステムの場合)が、距離伝播、環境内の雑音、および多くの他の要因に起因して劣化する場合があるということを考慮に入れなければならない。しかしながら、信号経路の出力端または測定システムの検出器において出現する「信号」は、様々な統計処理手法を使用することによって改善することができる(すなわち、検出データのSNRを増大することができる)。受信信号の相対的な強度の増大は、「信号処理利得」または単純に「処理利得」と称され、エンドツーエンドシステムのSNRを大きく改善することができる。
【0121】
1つの実施形態において、励起シーケンスの「0」および「1」のシーケンスは、システムの送信側にあるアルゴリズムに従って動作するシステムの適切なハードウェア構成要素によって生成され、したがって、システムによって、および/またはシステム内で定義される。システムの受信側では、受信信号が、電気的な「1」および「0」のストリームに変換され、「デジタル相互相関器」に通され得、これは、マッチングする事前に記憶されたパターンを通った0および1を概念的に移動させる(すなわち、時間に対するスライディングウィンドウ)。2つの信号パターンが後処理ユニットに送達され、後処理ユニットにおいて整列するか、または、互いに一致することが分かると、「デジタル相関器」は、送信パターンとその事前に記憶されたパターンとの間に「一致」を発見したと応答し、「一致信号」を生成する。「一致信号」の振幅は、相関手法を使用することからの「処理利得」の測度であり、一般的に、1および0のパターンが長くなるほど、「一致信号」の振幅は強くなる。送信パターンが相互相関器に記憶されているパターンと異なる場合、システムによって「一致」は報告されない。
【0122】
この手法の利点は、受信信号が、信号経路の「ノイズフロア」を大きく下回るように提供され得ることである。
図8Bを参照すると、拡張励起シーケンスまたは信号が、様々な間隔における遷移を有するシーケンスが生成されるように、0値および2値のエッジの多い連結から構築され得ることが分かる。この励起シーケンスは、雑音に埋め込まれるか、または隠され得る。
図8Bを参照すると、励起シーケンスの振幅は、雑音対信号比(NSR)が、上から2行めの3つのグラフでは34:1のレベル、上から3行めのグラフでは68:1のレベル、および上から4行めの3つのグラフでは136:1のレベルに達するように減衰される。
図8Bのグラフの中央列の4つのグラフは、ゼロ平均4σガウス雑音源によって加えられた励起信号のバーストを示す。右端列の4つのグラフは、雑音の多い信号との励起シーケンス信号の相互相関を実行した結果を示す。10,000ビット励起シーケンス信号の存在は、たとえ送信信号が雑音レベルの1/34、1/68、またはさらには1/136のレベルにおいて背景雑音に埋もれてしまっても、雑音から回復される。励起シーケンス信号が長くなるほど、回復される信号の潜在的なSNRは高くなり、適切に選択された2000ビット励起シーケンスは1000ビットシーケンスよりも高いSNRを有する、などである。特に、相互相関器は任意選択的に、経過時間の速度ももたらし得、基準タイム「チック」がある場合、相関器は、回復される信号の強度だけでなく、時間的に一致がいつ発生したのかも示すことになる。以下のパラグラフにおいて、この相互相関手法がどのように利用され得るかをより詳細に説明する。説明された酸素測定用途について、装着式酸素濃度計が、小さく小型コイン電池によって給電されるべきである場合、相互相関器は、カスタム設計集積回路として実装されることが有益である。
【0123】
図8Cを参照すると、経時的な信号振幅の一連のグラフが示されている。グラフ885は分光システムによって測定されているサンプルのインパルス応答を表す。このインパルス応答は、
図8Cの図解の残りの部分に使用されている。グラフ886は、システムに対する理想化された単一チップ入力パルスを表す。「チップ時間」という用語は、個別の時間量子化励起シーケンスが1つのレベルから別のレベルへと変化するための機会の間の継続時間を指す。このコンテキストにおける「チップ」という用語は、2つの連続する変化の機会の間の時間の間の信号を指す。グラフ886の水平軸は、チップ境界におけるチェックマークを有する。特に、この図解は、5つの時間単位のチップ期間を特徴とする分光システムを示すため、チェックマークは、0、5、10、15、20、25および30に等しい時間にナンバリングされており、各チェックマークの間にある期間がチップと称される。それゆえ、単一チップパルス886は、低いレベルにある振幅を有し、その後、チップ境界において高振幅へと遷移し、次のチップ境界において低振幅へと遷移する信号である。
【0124】
図8Cのグラフは例示のみを目的として提供されており、振幅は必要に応じて、1の高レベルおよび0の低レベルに正規化される。システムインパルス応答885を所与として、単一チップパルス入力886に対するシステムの応答は、グラフ887によって表される。このパルス応答887は、下記のグラフ890、894、および895によって表される波形の視覚的基準として使用することができる。本発明の一実施態様は、励起シーケンス888の形態の一連のチップを生成する。特に、図示のような励起シーケンス888は、2進数シーケンス{1,0,0,0,0,0,1,1,0,1,1,0,1,0,1,0,0,0,0,1}によって表すこともできる。グラフ889はインパルス応答885および励起シーケンス(入力)888によるシステムの応答または出力を表す。この信号はもはや2値信号ではなく、アナログ信号、または連続的に変化する信号として考えるのが最良である。励起シーケンスをベースラインとして扱い、そのベースラインの範囲と出力889との経時的な相関を発見するのに使用することができる様々な回路および数学演算がある。1つのそのような方法は、時間オフセットゼロにおける相関値を提供するための2つの信号のドット積、すなわち、時間Δtの値を発見するためにΔtによって時間遅延される出力889および励起シーケンス888のドット積を求めることである。グラフ890は、システムの入力とシステムの出力との相関である結果を表す。雑音のない相関890が、パルス応答887に対して実質的に理想的である。887に対する入力として使用される単一チップパルスは時刻0ではなく時刻5において開始するため、グラフ887および890は異なるように見える。
【0125】
測定システムに雑音が導入されると、雑音は出力の一部になる。システムへの制御された入力の影響を測定するとき、雑音の影響は低減されなければならない。雑音が存在するときでさえ測定値をより正確なものにするためのいくつかの技法が、本開示において説明される。グラフ892は、ローカルスケールの励起シーケンス888を表す。信号レベルと比較して+25dBのガウス雑音が、グラフ線891によって表される公称最大エンベロープおよびグラフ線893によって表される公称最小エンベロープを有する出力信号に加えられている。グラフ894は、長さ2
14−1の入力励起シーケンスに基づく雑音の多い出力に対する相関動作の結果を表し、一方、グラフ895は、長さ2
18−1の入力励起シーケンスに基づく雑音の多い出力に対する相関動作の結果を表す。
【0126】
図8Dを参照すると、
図8Cからのグラフ885が、図示のように構成されているサンプルのインパルス応答として経時的に発現される波形の説明のコンテキストにおいて示されている。図面の下側部分は、一定距離離れて配置された送信機832および受信機835と並置されているサンプル容量830を含む。時刻0においてエネルギーインパルスがサンプルに注入されるとき、時刻0において、受信機において検出可能な結果の出力はない。送信機832から受信機835へと弾道的に進行する放射は、バリスティックまたは直線経路841を進行することになる。グラフ840の第1の間隔において示されているように、入力エネルギーのその部分が出力に到達するまで、受信振幅は0である。時点841において、最短経路841に沿ってサンプルを進行する放射が受信機をアクティブにし、受信エネルギーにスパイクを生じる(横座標に沿って測定される約4単位にあるグラフ885のスパイクによって示されている)。いくらかの放射は表面に近いサンプルを通る経路に従い、これは、実質的に領域842内にあるままであるため、短い経路に従う。この放射は、グラフ領域842における経時的な上昇に関与する。サンプル物質の特性に応じて、拡散、吸収、反射、およびこれらの効果の異方性特徴に関して、より多くのまたはより少ない放射が長い経路と比較して短い経路に従うことになる。より長い経路はサンプル内へさらに貫入し、EM放射が受信機に達するのにより長い時間がかかり、統計的に、経時的に、残りの放射の多くは、受信機によって検出されずに吸収されるか、またはサンプルを出るかのいずれかであるため、受信機によって検出可能でない。843、844、845によって示される領域の連続的な深さ、および、サンプル846の大部分は、それらの領域に対応するグラフ885の時間内に受信されるエネルギーの貫入の可能性を示す。対応が正確であるというのは誤解を招くが、そうではない。しかしながら、異なる経路レジームに対応するための異なる遅延、および、レジームが特性化される場合、これらの特性化の結果は、後の測定を通知するのに使用され得る。本発明の実施形態は、経路の遅延群の測定値を分離し、これらの遅延群の差分特性化を実行するための細粒度の機能を有利に使用するシステムを含む。
【0127】
全般的に使用されている用語「インパルス応答」は、ゼロ時間において注入されるエネルギーの単位サイズのバーストに対するシステムの応答であるが、本明細書における実施形態は、それらのチップ長パルスに対する応答によってより正確に説明され得る。このチップ長矩形パルスは、一般的な概念的インパルス応答の継続時間よりも長い場合があり、その場合、そのパルスは時限階段関数、またはより単純に、パルスと同様である。交互に、チップ時間は、インパルス応答の検出可能な継続時間よりも相当に短い場合があり、チップパルスはこのとき、インパルスにより緊密に類似する。入力パルスの形状および継続時間は、時間的に実際のパルス応答と畳み込まれること、ならびに、受信および量子化されるものがパルス応答であることを、当業者は認識しよう。説明されている様々なシステム内に具現化される様々な雑音低減技法に基づいて、精度および分解能を大きく改善されて測定され得るパルス応答は、さらにより細粒度の情報を提供するために有用に畳み込みを解かれ得る。本明細書における使用は用語の数学的解釈に厳密に適合するものではないが、本明細書において使用される場合、「インパルス応答」という用語は、単一チップ幅パルスの入力に対する、測定されているシステムの抽出された応答を包含する。収集されたデータは量子化され時間的に制限されているが、これはインパルス、「チップ」、ステップ、およびパルス応答の組合せをキャプチャするため、その用語が本明細書において使用されている。付加的に、複数のλ
iからの受信インパルス応答を組み合わせた計算結果を説明するインパルス応答が使用される。
【0128】
本明細書において使用される場合、濃度は、特定の物質成分または分析物の量である。これは、割合であってもよく、または、たとえば、体積が求められる場合は、絶対値が計算されてもよい。
【0129】
LEDではなくレーザ(VCSEL)を利用するさらなる理由は、VCSELがLEDよりも速くパルシングされ得ることであり、これは、長い励起シーケンスが送信されるべきであるときに有用であり、経路長のより正確な測定を可能にする。
【0130】
物質成分の特性を測定するためのシステムの例
図9Aを参照すると、1つまたは複数の物質成分の1つまたは複数の特性を測定するためのシステムは、プローブ915(たとえば、1つまたは複数の波長における光の形態の)を形成する送信機900を含む。プローブは物質成分920と相互作用するように方向付けられ、その結果として、プローブの特性または特徴は、そのような相互作用を反映し、変更されたプローブを形成するように変化され、変化の固有の性質は、分析物の特性に依存する。変更されたプローブ925の存在は、受信機930によって検出される。変更されたプローブ925を表し、受信機930によって取得されたデータは、データ量子化器によって下記に説明するように量子化され、その後、量子化データは計算ユニット940によって、判明した特性945を生成するように処理される。
【0131】
図9Bを参照すると、システムは、送信機が励起シーケンス生成器を用いて駆動されるようにすることによって、送信機900および受信機930を使用して取得された測定値から信号対雑音比を増大させるように増強され得る。この場合、異なる波長における光(プローブ)の成分の各々は、対応する固有の励起シーケンスによって変調される。この実施形態において、受信機930は、データ量子化器935を通じて、少なくとも相関回路955および集約回路960の部分から構成される計算ユニット940へと信号を供給する。この実施形態において、各相関器はその動作に対する入力として、受信信号、および、直接接続965を通る偏光されていない規定の励起パルスシーケンス950の両方を有する。相関器は、受信信号とプローブとの相互相関を実行するために、この励起シーケンスを有益に参照することができる。そのような相関手順の実施態様の例を、下記に説明する。
図9Cを参照すると、相関を促進し、それによって信号対雑音比を増大させ、かつ/または動きアーティファクトを低減するために複数の励起シーケンスを送受信するように適合されている、さらなるシステムが示されている。送信信号は、拡散媒質または分子ダイ970であってもよい物質成分と相互作用するように方向付けられる。プローブは、1つまたは複数の波長にある光を含み、各波長にある光部分は、対応する固有の励起シーケンスによって変調される。複数の相関器が、変更されたプローブ975の複数の波長の同時処理を可能にするのに使用され得る。
【0132】
マイクロミラーを使用したサンプリング点(複数の場合もあり)の位置の制御
光源を用いて測定を行うにあたって、光が測定されるべきサンプルと接触する位置を厳密な許容範囲で制御することが望ましいことが多い。そのような測定を利用する1つの用途は、デジタルビデオディスク(DVD)またはblu−rayディスク(BD)のような光ディスクドライブ状の読み取り/書き込み機構である。現行の技術水準は、サーボ制御を有するウォーム駆動を使用してレーザを位置決めする。そのようなシステムの利点は、レーザの位置が、ねじ、モータ、および制御システムによって限定された精度で連続的に可変であることである。一方で、欠点は、サンプル位置に対してレーザを正確に位置決めするために相当量のハードウェア、時間遅延、およびエネルギー(質量を動かすための)が必要となることである。
【0133】
別の例示的な用途は、統一商品コード(UPC)スキャナである。1つの実施態様において、レーザ光は、単一の回転ミラーを使用してUPCにわたって走査される。別の実施態様において、レーザ光は、ホログラムを使用してUPCにわたって走査される。本明細書において説明されている発明とは異なり、UPCへの光の入射角は制御されず、光源からサンプルへ、またはサンプルから受信機への距離も制御されない。
【0134】
ウォーム駆動に対する、本明細書において説明されている発明の利点は、レーザビームを測定されるサンプル位置に位置付けるために必要とするハードウェアがより少なく、時間が少なく、エネルギーがより低いことである。関連する利点は、機械部分が単純であること、および、装置のサイズが低減されることに起因して、信頼性が増大することである。UPCスキャナとは異なり、本明細書において説明されている発明は、サンプルに対する距離および入射角を同時に制御する。距離および入射角の制御はUPCスキャナにとって必要ではないが、他のサンプリング用途には必要である。
【0135】
図10Aを参照すると、各々が少なくとも3つの(傾斜左1081、非傾斜1082、および傾斜右1083)位置の間で制御可能にそうされる、可能性として限定ではないが、微小電気機械システム(MEMS)に含まれるものとしてのマイクロミラー1080を使用することによって、光学経路、および、それによって、プローブ1015と物質成分1020との間の相互作用が動作中に変更されることが可能になる。ミラーは
図10Aにおいてはアレイパターンで示されているが、他のパターンが見込まれるため、これは例示にすぎない。送信機1000は、限定ではないが、レーザ、VCSEL、またはLEDのような任意の光源であってもよい。受信機1030は、限定ではないが、フォトダイオード、PINダイオード(特定のタイプのフォトダイオード)、光電子倍増管、または電荷結合素子(CCD))であってもよい。送信機は、マイクロミラーアレイ1080の面に平行に波を放射する。マイクロミラーアレイ1080内で精密な位置にある1つまたは複数のマイクロミラーは、非傾斜1082位置から、プローブ1015を測定されるべき物質成分1020に向けて方向付ける傾斜1081位置に移動される。一実施形態において、変更されたプローブ1025は、1つの方向において傾斜1081している少なくとも1つのマイクロミラーおよび反対方向において傾斜1083している少なくとも1つのマイクロミラーによって受信機1030に対して方向付けられる。
【0136】
図10Bは、
図10Aに示す実施形態に対する拡張を示す。この実施形態においては1080a、1080bおよび1080cの3つのマイクロミラーがある。マイクロミラーアレイ1080bおよび1080cは寸法が1×N個のミラーである。加えて、この2つのアレイはマイクロミラーアレイ1080aの面に直交している。送信機1000は、マイクロミラーアレイ1080bに平行に光を送信し、光は、光をマイクロミラーアレイ1080aの1行にわたってマイクロミラーアレイ1080aに平行に方向付ける傾斜ミラー1081b(アレイ内のN個の可能性のあるマイクロミラーのうちの1つ)から反射される。その点において、装置は
図10Aに示すように機能し、光は物質成分と相互作用して、マイクロミラー1083から反射される。
図10Aとは異なり、その後、光はマイクロミラーアレイ1080cにおいてマイクロミラー1081cから反射される。マイクロミラー1081cによって反射された光はその後、受信機1030によって受信される。本発明によって、マイクロミラーアレイ1080a上の各行は、物質成分の二次元領域をサンプリングするのに使用され得る。マイクロミラーアレイ1080aは、各行が前のものからずれて示されている(すなわち、互い違いの行)。行を互い違いにすることは、例示にすぎない。行はまた、1つが他方の上になり、それゆえ互い違いにならなくてもよい。
【0137】
図10Cは、光が物質成分1020から受信機1030へと反射される点1040からの距離を精密に制御することに関する本発明の有効性を示す。示されている例について、2つのミラーが距離を制御するのに使用され、アレイは一次元である(すなわち、ミラーの行は1つしかない)。第1のミラーは1081によって示すように傾斜されており、第2のミラーは1083によって示すように傾斜されている。点1040から受信機1030までの距離(すなわち、d)が式45によって示される。物質成分1020およびマイクロミラーアレイが平行であるという単純化する過程を使用して、2つの傾斜したミラーの右にあるミラーが傾斜され、前の2つの傾斜したミラーが非傾斜位置に置かれると、距離は式46に示すものになる。したがって、距離は2つの隣接するミラーの間の距離だけ低減する。式は式47に一般化され、式中、Nは図面に示す位置の右にあるミラーの数である。この単純化された式は、物質成分がマイクロミラーアレイに平行であること、および、確度α(および、それゆえθ)が一定であることに依存することに留意されたい。マイクロミラーの利点の1つは、傾斜の角度が反復可能であり、ミラー同士で一貫していることである。
d=x
2−x
1+h(45)
d=x
2−x
1+h−x
3(46)
【数41】
(47)
【0138】
精密に離間されたマイクロミラーのアレイを有することの利点は、プローブが物質成分によって散乱される「点」から受信機までの距離を精細な分解能で選択することが可能であることである。この距離を最適化することによって、測定されるべき所望の点が位置特定され得、結果もたらされる測定値が改善され得る。加えて、物質成分が、所望される特性を有する物質成分の領域を迅速に位置特定するために、(1つまたは複数のマイクロミラーのうちのいずれが傾斜されるかを変更することによって)走査され得る。
【0139】
他の利点は、(
図10Cに示すものとして)y方向におけるばらつきの保証を含む。yが増大する場合、Nx
3は、総距離「d」を一定に保つために増大され得る。
【0140】
上記のパラグラフは、プローブ1015が物質成分1020から反射し、変更されたプローブ1025を生成する単一の点がある単純化する仮定を利用した。しかしながら、対象の多くの物質成分は光を単純に反射せず、加えて、光を吸収し、屈折させ、散乱させる。それゆえ、物質成分と相互作用した光に由来する単一の光線はなく、複数の光線が、物質成分が光と相互作用するときに物質成分によって散乱される。この見解が、このデバイスを動作させるための他の有用な代替形態をもたらす。
図10Dは、単一の傾斜ミラー1081を示しており、受信機1030が、非傾斜ミラー1082のうちの1つまたは複数から反射された光を受信する。
図10Eは、送信された光が1つまたは複数の非傾斜ミラー1082から反射され、物質成分と相互作用し、傾斜ミラー1083に散乱し戻され、受信機1030へと反射される、相補的な動作を示す。
【0141】
いくつかの物質成分は光を拡散させる。この光のいくらかはアクティブであるように意図されていないマイクロミラーの部分においてサンプルを出る。非組織経路を通じて受信機に達する拡散光の量を低減するために、障壁が導入され得る。
図10Fは、そのような障壁1040がどのように使用され得るかを示す。たとえ障壁が物質成分と接触していたとしても、光は物質成分を通じて進行し、障壁の右手側で出るため、依然として受信機へと進行することができる。代替的な障壁技法を
図10Gに示す。この場合、マイクロミラーの列が障壁として使用される。光を反射するマイクロミラー1081と反対方向に1つまたは複数のマイクロミラー1083を傾斜させることによって、マイクロミラー1083の左から受信機1030へと通過することが可能にされる光が少なくなる。一方で、以前に示したように、1083のマイクロミラーは光の受信機に向けて右に反射する。
【0142】
図10Gは、二次元マイクロミラーアレイの第2の次元の動作を示す。傾斜マイクロミラー1081は、送信される光の部分(プローブ1015)を選択するのに使用される。このように、寸法が送信光波の幅よりも小さいミラーによって、送信機によって生成されるものよりも小さい波がプローブのために反射される。反対方向に傾斜されたマイクロミラー1083は、マイクロマイクロミラー1081を通り過ぎる光を閉じ込めるのに使用される。光を閉じ込める機構の別の可能な用途は、そうでなければ有用な機能を果たさないことになる光からエネルギーを捕集することである。
【0143】
図10Hに示すような、列が互い違いになったマイクロミラーを使用することによって、マイクロミラー間のものよりも精細な粒度の距離が達成され得る。この場合、互い違いにする距離は、ある列内の1つのミラーの中心線から同じ列内の隣のミラーまでの距離よりも小さい。
図10Hは複数の送信機1000および複数の受信機1030をも導入する。複数の送信機の1つの用途は、複数の波長が、必要に応じて同時に送信されることを可能にすることである。本発明の利点の1つは、各波長が必要に応じて、受信機までの固有の距離を有することである。サンプルから受信機までの複数の距離の選択を促進するために複数の受信機が使用され得る。最後に、各受信機は、光の特定の波長、または波長範囲に専用にすることもできる。これは、信号の分離、および、送信されている波長に特に適したもののうちのものとして、2つ以上の種類の受信機の選択を補助するのに有用であり得る。
【0144】
図10Iは、六角形形状を有するミラーを使用したマイクロミラーパターンを示す。このパターンは、傾斜1081したミラーの間を通る光の量を最小限に抑えることによって、反射光の量を最大化するのを助ける。
【0145】
図10Jは、対角パターンを使用したマイクロミラーアレイを示す。今日製造されているマイクロミラーは、対角線にわたる旋回軸を有することが多い。
【0146】
図10Kは、光ディスク1090(スピンドルのための孔1092をも示す)を読み出しまたは書き込みするのに使用するための本発明の応用形態を示す。この例のトラック1091は、単一行のマイクロミラーと整列される。
図10Bに示すマイクロミラーアレイを使用することによって、マイクロミラーアレイ1080a内のすべての行が、光線を光ディスク1090上のトラックと整列させるのに必要なものして使用されることが可能になる。すべてではないにせよ、現在製造されているほとんどの光ディスクはらせん状のトラックを使用する。本発明とともに、らせん状のトラックのトラッキングを促進するためのいくつかの技法が使用され得る。1つのそのような技法は、光ディスクドライブに一般的に使用されているような、サーボ制御を有するウォーム駆動である。しかしながら、この応用形態においては、必要とされる動きの範囲が、一般的に光ディスドライブレーザアセンブリにおけるものよりもはるかに少ない。別の技法は、送信側および受信側の両方においてミラーの傾斜の角度を調整することによって、マイクロミラーを通したトラッキングを可能にすることである。本発明のさらなる利点は、トラック間の距離が分かっていることによって、1つのトラックが位置特定されると、任意の他のトラックを見つけるのに必要なミラー位置が分かり、迅速に変更することができることである。
【0147】
図10A〜
図10Kをすべて参照すると、各々が、傾斜したミラーの角度が一定である実施態様を説明している。複数の角度、および、さらには連続的に変化する角度を可能にすることに、明らかな利点がある。たとえば、連続的に変化する角度は、単一の角度を有するミラーの離散的な位置ではなく、連続した位置をサンプリングするために使用され得る。
【0148】
プローブまたは変更されたプローブの経路内にマイクロミラーを使用することによって、受信信号を低減することができる。この技法は、様々な符号化技法および本明細書において説明されている後処理技法を利用することによって実際にはより有用にすることができる。
【0149】
シーケンス生成器および励起シーケンス
線形フィードバックシフトレジスタ。励起シーケンス生成器がプログラム可能線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)として実装され得、LFSRの複数の内部レジスタに対して異なる設定を行うことによって、複数の異なる励起シーケンスが生成されることになる。複数の異なるパターンを生成するようにLFSRを設計するいくつかの方法があり、そのパターンは反復のない非常に長いものになり得、トランジスタレベルの実施態様は複雑ではなく、それほどトランジスタ数が多い回路にはならない。一実施形態において、
図15Aを参照すると、シフトレジスタ1500はシフトされた出力1510を生成する。この出力1510はシンドロームロジック1515に「フィードバック」される。シンドロームロジックは、構成レジスタ1520に基づいて、シフトレジスタの構成されている要素に出力1510を提供し、出力は、シフトされているビット値によって、クロックパルス1505によってトリガされるとシフトレジスタの次の要素に記憶され得るようにそのビット値を変更するために、排他的OR演算される。任意選択的に、構成レジスタ1520は、新たな値を書き込まれ得、上記値は、限定ではないが、たとえば、値ソース、プロセッサ(図示せず)データバスから供給される。書き込み制御信号1530を切り替えることによって、構成レジスタ1520は、値バス1525において供給される値に更新するようにされる。
【0150】
このLFSR設計には「開始パルス」出力信号線1540が組み込まれており、これは、任意選択的に、シーケンスの時間的境界を決定するために受信機および相関器回路内で使用され得る。シーケンス境界の通信は、任意選択的に、後述するように受信機内の自動利得制御に使用され得る。シーケンス開始信号1540は、いくつかの方法で生成され得ることが認識される。図示されている実施形態において、パターンマッチング回路1535が使用される。
【0151】
図15Bを参照すると、例示的なLFSRの詳細が示されており、シフトレジスタ要素1555が、入力を受信し、その入力をラッチ内の記憶要素に伝播し、出力において記憶位置の内容を提供するデジタルラッチとして示されている。入力はデジタル信号指定クロック1505の立ち上がりエッジにおいて内部記憶位置に伝播される。シフトレジスタ内の左端の要素は、構成レジスタ1565の左端の要素からその入力をとる。この論理は、シフトレジスタの各要素を更新するのに必要とされる論理に対応するグループに編成される。各々が構成レジスタ要素1565、AND論理ゲート1570、排他的OR(XOR)論理ゲート1545、およびシフトレジスタ記憶ラッチ1555から成るものの集合は、入力クロック1505が切り替わるたびごとにシフトレジスタを更新するのに使用されるシンドロームロジック1515を含む。各連続(左から右へとトラバースする)シフトレジスタ要素はXOR論理ゲート1545の出力からその入力をとる。XORゲート1545の2つの入力は、シフトレジスタ1555の前の要素およびAND論理ゲート1570の出力である。このANDゲート1570に対する入力は、このビットグループに対応する構成レジスタの要素およびシフトレジスタ1510の出力の値である。この論理は、適切な構成値によって構成されると、反復パターンにある論理1および0の決定論的シーケンスを提供することになることが諒解される。
図15Bを参照すると、図面の中心は4つの省略パターン、すなわち、「...」が含まれており、これらのパターンはこの慣習に精通している者によって、省略パターンのいずれかの側に無限数の要素の反復が存在することを示すために使用される。より少数の反復パターンによってより大きな構造を示すこの慣習は、少なくとも
図15B、
図17B、
図17E、
図18B、および
図19を含む図解のいくつかにおいて使用されている。
【0152】
雑音ベースの生成。
図16を参照すると、励起シーケンス生成のさらなる実施形態が示されている。
図16Aは、限定ではないが、マイクロホン、逆バイアスダイオード接合、大気雑音の受信機、または他の時間変動プロセスのような雑音生成器1600の使用を示す。雑音生成器1600の出力は、ローパスフィルタ1610に供給される。ローパスフィルタは、比較器回路1620の一方の入力として平均値基準を提供する。比較器回路1620の他方の入力は雑音生成器1600から直接来る。諒解されるように、雑音生成器の瞬時値は、ローパスフィルタ1610によって提供されるより長期の平均を時折上回る場合があり、その時点において、比較器1620の出力1630は、論理1の極致に駆動されることになる。他のときは、雑音生成器の瞬時値はより長期の平均を下回ることになり、比較器1620の出力は他方の極致、すなわち論理0へと駆動されることになる。この回路を使用して、アナログ時変信号は2値信号に変換され得る。
【0153】
記憶ベースの生成。規定の励起シーケンスの生成に使用され得る技法は、シーケンスの事前決定、および、
図16Bに示すようなアドレス指定可能記憶構成要素1640内にそのシーケンスの要素を記憶することである。励起シーケンスは、カウンタ1650によってメモリデバイスのアドレス線を駆動することによって生成され得る。連続したメモリ位置がメモリの出力に提示され、励起シーケンス1630を含む値のシーケンスが生成される。変形形態として、複数のレーザを同時に駆動することを可能にする実施形態におけるように、2つ以上のシーケンスが必要とされる場合、多ビット幅メモリが使用され得、各ビットインデックスが、別個のレーザを駆動するのに使用される。較正シーケンスが測定シーケンスと異なるとき、複数のシーケンスにアクセスすることができることが、利点を呈し得る。この場合、1つのメモリアドレスグループを通じて循環し、その後、構成値へと変更することによって、別のメモリ位置グループを通じて循環するために、構成レジスタと連携してカウンタが使用され得る。
【0154】
図16Cを参照すると、メモリインターフェースユニット1670を通じてメモリユニット1660に接続されており、メモリからの命令をフェッチしてそれらの命令を復号1680および実行するプロセッサ1690が、記憶されているプログラムまたはアルゴリズムを実行し、論理信号1630を出力することが可能であるメモリ位置に書き込むことによってプログラム制御の下で励起シーケンスを生成し得る。
【0155】
励起シーケンスは時間的に何度も反復し、ビット遷移が送信されない場合、各シーケンス間には任意選択的に短い継続時間がある。この平穏時を生成するための別の方法は、規定の励起シーケンスの終わりにゼロの固定セットを含めることである。励起シーケンス生成器からの出力は、レーザドライバ回路に供給され、レーザドライバ回路は、励起シーケンスをレーザに対して変調する。レーザドライバおよびレーザ光源自体は、測定デバイスのこの実施形態のアナログ部分である。一実施形態においてオン/オフキーイング変調が使用され得るか、または別の実施形態においてレーザ光が明るい光から暗い光へと、また戻るように変調されるが、励起シーケンスの各瞬間が送信されている限り完全に消滅しないか、のいずれかである。
【0156】
分光分析に有用な相関器の例
パルス酸素測定のための2値デジタル相関器。
図17Aを参照して、分光分析に使用するためのデジタル相関器を製造するための技法が説明される。これらの技法は、本明細書において説明されているさらなる用途にも使用することができる。SNRを大きく改善する相関実施形態は、有利には、集積回路の形態で実装され得、それによって、相関器は、携帯装着式装置の一部として機能することが可能になる。血液酸素飽和度の、絶対測度ではなく相対測度であるパルス酸素測定の場合、組織を通る光の経路長を測定する必要はない。
【0157】
分光分析のための相関器の一実施形態は、相関を検出するために2値受信信号を使用する多数のデジタル回路を含む。
【0158】
回路の受信側では、組織を通過した後のレーザ光が、いずれもが光信号をアナログ時変電気信号へと変換する、P−I−N(PIN)ダイオード、アバランシェダイオード、または光電子倍増管のようなソリッドステート光検出器930に衝突する。この信号はその後、アナログ増幅器段1710に供給され、その増幅定数は以下のように閉ループ式に変更される、すなわち、励起シーケンス生成器からの開始パルスがコントローラ1700に、いつパルストレインが開始することになるかを通知し、次の開始パルス1540によって示されるものとしての励起シーケンスの終了までに、相関器1730が相関「一致」1736を生成しなかった場合、パルストレインの次の受信のために、増幅定数が増大されることになる。この増大は、相関器が相関一致を示すか、または増福愛知数がその最大値になるかのいずれかまで、繰り返し継続することになる。自動増幅段1710の出力にある閾値検出器1720は、光検出器からのアナログ電子信号を2値パルストレインに変化するのに必要であるが、ここでも、これは既知の回路である。
【0159】
相関器デジタル回路1720は、励起シーケンス生成器を駆動するものと同じクロックパルストレイン1505によってクロック制御される。
【0160】
図17Bを参照すると、デジタル相関器の要素は、励起シーケンスの所定のビットパターンを保持するためのラッチ1750(レジスタにグループ化される)と、パルストレイン、すなわち、クロックサイクル1505によるクロックサイクルがそれを通じて伝播されるフリップフロップ1740の線形系列、受信パルストレイン内の伝播ビットが静的励起シーケンス保持レジスタ内の1または0に一致するか否かを検出する(完全な一致が特定されるためには、励起シーケンス全体にわたって1のビットは1のビットに一致しなければならず、0のビットは0のビットに一致しなければならない)XNORゲート1745のグループとから構成される。XNORゲートの各々の出力は、2値加算器1765に供給され、加算器は、各クロックパルスに対する合計値を生成する。完全な一致が発生すると、2値加算器は、一致が発生したこと、および、時間的にいつ一致が発生したかを規定する大きい2値出力値を生成することになる。平均して、半分のみのビットが各クロックサイクル中にパターンに一致することになる。しかしながら、整列、すなわち、すべての励起シーケンスビットにわたって同時に一致が発生するときに対応するクロックサイクルの間、2値加算器1765の出力は最大値になり、その予測される大きさは既知であり、サンプル損失によってスケーリングされる
【0161】
本明細書において使用される場合、「XNORゲート」は、入力が一致するときは出力が1になり、それ以外では0になる特性を有する2入力1出力回路である。本明細書において使用される場合、「2値加算器」という用語は、N個の入力および[log2(N+1)]個の出力を有する回路であり、それによって、ともにとられる出力が、1である入力のカウントである2値数を表す。2値加算器の一例は、10個の入力I
0〜I
9、および、4[log2(10+1)]個の出力O
0、O
1、O
2、およびO
3を有する回路である。入力I
0...I
9が、たとえば、{0,1,1,1,0,0,0,0,0,0}であるとき、出力O
0...O
3は、3の値を表す{1,1,0,0}になる。たとえば、{0,0,0,1,1,1,0,0,0,0}、{0,0,0,0,0,0,0,1,1,1}、または{0,1,0,1,0,0,0,1,0,0}の入力パターンによって、同じ出力が生成されることになる。
【0162】
図17Aを参照すると、相関器に対する入力は、増幅器1710の出力と利得基準電圧1715との間の比較である。比較器1720が2つの値を比較し、
図16Aの雑音解決回路と同様に、相関器に供給するための2値出力1735を生成する。
【0163】
図17Bを参照すると、比較対象となるべき励起シーケンスの基準を保持するレジスタ要素1750が、新たな値によって更新され得る。新たな値はNビットデータバス1760によって提示され、書き込みパルス1755が切り替わるときに励起シーケンスレジスタビット1750に記憶されることになる。このように、複数の基準シーケンスを有する回路が使用され得る。
【0164】
励起シーケンス生成器から供給を受ける、慎重に設計されたデジタル相関器は、雑音の中に深く埋め込まれ、レーザ光の吸収および散乱に起因して劣化したレーザ生成光信号を検出することができる。受信および処理システムは、相関器が励起シーケンスビットストリームを得るまで、または、AGC増幅器が上限に達するまで、その利得が段階的に制御されるフロントエンド利得制御段を有する。
図17Aのコントローラ1700は、それにわたって信号が検出され得る範囲を決定するために
図17Cのプロセスに従うことになる。一般性を損なうことなく、むしろ使用されるアルゴリズムの理解を促進するために、以下の変数が使用される。Gは、増幅器の利得、または、比較器1720への入力として使用される基準信号の電圧である。Cは、一致する相関要素のカウントである。これは、2値加算器1735の出力である。C
maxは、2つの開始パルスの間に観測されるCの最大値であり、それゆえ、1つの励起シーケンスの間の最高の相関レベルである。Tは、送信信号が検出されたという高い可能性を表すように選択される、Cの閾値である。G
minは、C
max>Tの値が観測されているGの最小値である。G
maxは、C
max>Tの値が観測されているGの最大値である。Vは、測定出力の数値であり、関数f、たとえば、限定ではないが、2つの測定値G
minおよびG
maxの平均によって生成される。この表記に従って、アルゴリズムは開始し1770、Gをその最低値に初期化し1772、G
min、G
max、およびC
maxの、それぞれ最大値、最小値、および最小値への初期化1774に進む。初期化されると、アルゴリズムは開始パルス1776を待つ。開始パルスが発生した後、アルゴリズムはCの値を観測し、次の開始パルス1780が観測される前に、観測されたCの値の最大値を記録する。
【0165】
開始パルス1780が観測された後、C
maxが閾値Tと比較される1782。C
max>Tである場合、G
minおよびG
maxは、G
min:=min(G
min,G)およびG
max:=max(G
max,G)によって更新される1784。その後、Gはステップ1786によって増大され、その後、Gの最後の値に対して試験される1788。GがGの最後の値よりも大きくない場合、プロセスは1774から継続する。Gの最後の値が評価された場合、アルゴリズムはVをG
minおよびG
maxの関数として計算し1790、終了する1792。
【0166】
検出された信号の値Vは、たとえば、限定ではないが、測定値および基準行列の行列操作によって、測定されるべきパラメータの値を求めるのに使用され得る。行列乗算は、電子プロセッサを使用してよく理解されている手段によって実行され得る。加えて、
図19を参照すると、測定値のセットが、2値コード化入力1900として、計算された特性に対応する各出力1950に対して1つの、加算器1940に供給する出力1930を有する乗算器回路1920のアレイに供給され得る。この形態または類似の構成の構造を使用して、測定されるべき特性の数値を計算するために、固定回路はプログラム可能でない構造に構成され得る。別個の非線形性を除去することは、要素1900において、索表、範囲再スケーリング、制限警告、および、
図17Aに関連して説明されているような利得調整技法の少なくとも1つによって実行することもできる。この変換要素は、入力の使用の範囲が測定経路に非線形性を与える場合に含まれることが有用である。
【0167】
結果を定量化するために、受信信号の減衰が最初に測定されるべきである。そのような測定は、励起シーケンスを送信すること、減衰シーケンスを受信すること、および、受信値を時間的に相関させることを含む。
図11に示すもののようなデバイスが、そのような目的に使用される。受信信号の減衰が導出されると、たとえば、式37cおよび37dが、物質成分における特性の連結を計算するのに使用され得る。
図19に示す装置は、重み付け係数を蒸散した測度および総和がステートフルな演算である(すなわち、前のタイムスライスからの値が計算を実行するのに利用可能である)と仮定するそのような数学演算を実行するのに適切な回路である。これらの計算における「重み」は、光学経路(または渡る距離)および吸光係数のような波特性を指す。シストリックアレイのような他の固定化色も、そのような計算を実行するのに適切である。処理のリアルタイム制約および速度に応じて、デジタル信号処理に使用されるもの(DSP)のようなプログラム可能プロセッサまたはさらには汎用プロセッサも、必要な計算を実行することができる。
【0168】
式37cおよび37dに加えて、計算にバイアスおよび雑音(式8参照)を導入することが、定量化可能な(相対的または定性的に対して)結果を達成するのに一般的に必要とされることが理解される。たとえば、較正動作が、バイアスおよび雑音に使用されるべき値を導出する1つの手段である。
【0169】
受信信号と送信信号とを相関させる方法が、それら2つの間の時間的遅延、および、それによって、送信から受信までの遅延が既知の量であると判定することを可能にする。加えて、
図9Bおよび
図9Cの接続965のような、送信機から受信機への接続が、同期に使用され得る。結果として、2つ以上の送信機から受信される信号の間の時間的差分も既知の量であり、それによって、信号は時間的に相関され得る。
【0170】
Nビットデジタル相関器。パルスオキシメータに非常に適切である(また、コンパクトかつ低電力の実施態様を可能にし、そのため、使用には有利である)が、2値比較を用いる上述の実施形態は、長い励起シーケンスを使用することによって可能にされる処理SNR利得の多くを諦めている。これは、比較器1720における1と0との間の区別が単一点であることに起因する。多くの分光分析用途にとって、さらなる信号区別を提供することは有用である。
図17Aと同様であるが2つの重大な変化がある代替的な
図17Dを参照すると、Nビットデジタル相関器が示されている。比較器1720は、Nビットアナログ−デジタル変換器(ADC)1721に置き換えられている。ここで、増幅器は任意選択的に、利得基準ブロック1716から、利得のための入力をとる。
【0171】
図17Eを参照すると、ADC1721のNビット幅出力が、最初の2×Nビット幅遅延線レジスタ1742への入力1735として使用される。入力はレジスタ1742のビットのうちのN個に供給され、入力1735は、否定ブロック1736にも供給される。否定ブロック1736の出力は、遅延線レジスタの他のNビットに供給する。クロックパルス1505に基づいて、1つの遅延線レジスタ1742内の値が、各クロックパルス中に行われるステップによって、1つのレジスタから次のステップへ、そして終わりまで渡ることになる。
【0172】
励起シーケンスレジスタビット1750に応答して、遅延線レジスタの出力のNビットが各マルチプレクサ1747によって選択される。1に設定される励起シーケンスレジスタビットは、ADCの時間遅延値を選択することになり、励起シーケンスレジスタ内の0のビットは、否定される時間遅延値を選択することになる。任意の所与の時間サイクルにおいて、すべてのマルチプレクサの出力が、コントローラに対する出力を生成するために、1767においてともに加算されることになる。記憶されている励起シーケンスがMビット長である場合、数値バスの最低端からのビットが落とされない場合に出力1747の合計は、log
2(M)+Nビット幅になる。
【0173】
一般性を損なうことなく、否定ブロック1736は、各遅延線レジスタ1742の後にデータ経路内に置かれ得、このとき、遅延線レジスタは2Nビットではなく、Nビットの損なわれた幅を有し得ることが諒解される。加えて、同じ目標を達成する動作のトポロジの他の再編成が適用され得る。この原理は、アナログ実施形態およびハイブリッド実施形態において下記に実証される。
【0174】
アナログ遅延線路相関器A。定量的分光分析を実行することが所望される場合、組織中の放射の光学経路長の速度が必要とされる。たとえば、靭帯のサンプルの測定を行うにあたって、経路長は2〜3cm程度に短くなり得、光は、真空中の光の速度の約0.2〜0.3倍(または、200〜500ps/inch程度)の速度において弾道媒質内を進行するため、5〜10psの範囲内の非常に精細な時間分解能が、有用であるのに十分な精度で光学経路長を解決するのに必要とされる(光学経路長の測度が相対値ではなく絶対読み取り酸素測定値をもたらす理由に関する、本明細書内の他の箇所における説明を参照)。受信および相関処理チェーンのいくつかの実施形態が、本明細書において説明されているように特定されている。
【0175】
図18Aおよび
図18Bを参照すると、実施形態は、進行波増幅器の概念、すなわち、様々な高出力増幅器、たとえば、衛星通信システムに対して少なくとも1950年以来既知であり、実践されてきたが、本明細書において説明されているような、本コンテキスト(分光分析)にも構造(2つの個別の方法で入力を様々な部分要素に変化させる)にも適用されていない概念に基づく。進行波増幅器の設計は、設計が進行波増幅器に類似しているだけで、実際にはそうではないという程度まで、本明細書において相当に変更されている。従来の進行波増幅器においては、アナログ入力信号が、一定の間隔で「タップ」される伝送線路に沿って伝播され、または「進行」し、「タップ」は個別の増幅器の連続チェーンの入力に供給する。アナログ信号が「供給」伝送線路に沿って伝播するとき、入力波の電圧変化が、各連続増幅器の入力を駆動するのに使用され、増幅器は、電流の「スラグ」を第2の「出力」伝送線路に注入する。したがって、出力伝送線路内の信号は、重ね合わせの原理によって個々の増幅器によって増幅され、それによって、出力伝送線路の端部に、入力信号の強く増幅されたコピーが出現する。これが、従来の進行波増幅器の説明である。本発明に関して、従来の増幅器に対する設計変更が下記に説明され、この新規の変更が、前に説明した「デジタル相関器」とは対照的な「アナログ相関器」としてのコンセプトワークを成す。この設計の必要性は、組織中の光学経路長の測度をもたらすことになる、励起シーケンスが送信されたときと比較した、受信チェーンにおける励起シーケンスパターンの発生に関する高レベルのタイミング精度に対する要件に左右される。
【0176】
アナログ信号処理に基づく相関器は、進行波増幅器に対する改良およびその拡張として開発され得る。
図18Aを参照すると、光パルストレインは増幅器1810によって、光パルストレインを表す時変アナログ信号1812に変換され、これはその後、入力伝送線路1825を下って伝播され、伝送線路は一定の間隔で「タップ」され、各「タップ」における時変電圧は、アナログ増幅器1830の一方の入力に供給される。アナログ増幅器は、励起シーケンスレジスタビット1750および乗算器1830と協働して、デジタル相関器、すなわち、XNOR1745またはマルチプレクサ1750におけるものと同じ回路機能を実施する。各アナログ乗算器1855からの時変出力電流が電流加算接合部1860に供給され、励起シーケンスパターンが入力伝送線路を下って伝播しているときにある点において、記憶されている励起シーケンスコードと、伝播している励起シーケンスコードが1対1で整列する場合、電流加算接合部の出力1840は、最大非ゼロ値のみを有する。
図18Aに示す実施形態において、コントローラ1800は増幅器1810の利得制御部1815に入力を提供する。乗算器の第2の入力は励起シーケンスレジスタビット1750である。
【0177】
図18Bを参照すると、入来するアナログ励起シーケンスパルストレインは、増幅1810され、(上述のように)入力伝送線路1812を下って伝播することを可能にされている。励起シーケンス内の各パルスが、増幅器1850および乗算器1830を通過するとき、その増幅器は乗算器出力によって、任意選択的にレジスタ1855を通じて電流加算接合部に、または電流加算接合部セットのうちの1つに供給される電流のスラグを生成する。この選択は、実施態様によって使用される特定の技術の実際的な問題である。加算接合部が大きいダイナミックレンジを有する場合、必要とされる加算接合部はより少なくなり、必要とされるカスケードステップの数はより少なくなる。加算接合部はチェーンに沿ったすべての増幅器からの電流スラグのすべてを合計する。入力伝送線路に沿った各増幅器/乗算器は実際、アナログ形態において、デジタル相関器について説明されたXNORゲート構造を再現しており、それによって、記憶されているパターンビットと伝播している励起シーケンスビットとの間で一致する「1」と「0」が統計的に0対0、および1対1で整列する。図示されている増幅器および乗算器は、当該技術分野において既知の技法を使用して様々な技術において組み合わされ得ることが諒解される。
【0178】
逆に、伝播している波面内の0と整列した記憶されているパターン内の1、または、伝播している波面内の1と整列した記憶されているパターン内の0は、所与の増幅器からの無相関出力振幅を生成することになり、加算接合部に対して正または負の寄与を行う。瞬間的に、加算接合部からの出力は、記憶されている基準と伝播波形との間で整列する0のビットの数、および、同じように整列する1のビットの数に応じて高くなるか、または低くなる。これはアナログ回路であるため、加算接合部からの最大出力は、伝播しているコードビットが記憶されているコードビットと整列するときにのみ生じ、この時点において、加算接合部からの出力は最大値になる。
【0179】
光学経路長は酸素飽和度の定量的計算を可能にするため、光学経路長、および、したがって伝播時間は、絶対読み値酸素濃度計において非常に重要である。数cmだけの経路長に必要とされる時間分解能を達成するために、10〜20ps範囲内の時間分解能が達成される必要がある。一実施形態において、この分解能を達成するために、酸素濃度計回路基板上に基準長の電気伝送線路(限定ではないが、ある長さのストリップ線路またはマイクロストリップなど)を使用し、これは、既知の伝播遅延を有して設計されている、一方の端部にあるレーザと、他方の端部にある光検出器および分析回路との両方を含み、この遅延は「判断基準」遅延である。その後、判断基準遅延と、受信機端部における励起シーケンスの復号からの測定遅延とを比較する。
【0180】
この基準手法の第1の実施形態において、
図15Aからの電気的「開始パルス」1540が、レーザを駆動するものと同じ回路によって生成され、基準遅延線路を下って処理回路へと伝播し、処理回路における開始パルスの立ち上がりエッジが、それに対してアナログ相関器回路の出力が比較される時間基準として使用される。既知の長さの基準遅延線路に沿った伝播遅延は、回路基板が製造される材料を制御することによって短くされるため、開始パルスの立ち上がりエッジがアナログ相関器回路内の「時刻0」点を生成し、それによって、アナログ相関器の出力が開始パルスの立ち上がりエッジに関連し、遅延の期間は既知であるため、開始パルスの到達と相関器の出力との間の時間差が、遅延線路の既知の継続時間に加えられ得る。このとき、これによって、正確な光学経路遅延、および、したがって光学経路長の正確な測定値がもたらされる。
【0181】
アナログ相関器回路は、入来信号の非常に速いエッジレートにさらされるとき、非常に速い出力立ち上がり時間を呈しなければならないという意味で、非常に「速い」トランジスタを利用しなければならない。トランジスタが速い入力立ち上がり時間を維持することができない場合(そして事実、励起シーケンスパルスの立ち上がり時間も速くない場合)、システムの高度に正確な時間分解能を達成することは不可能になる。幸運なことに、立ち上がり時間が非常に速いトランジスタは、いくつかの最新の集積回路技術から利用可能である。
【0182】
アナログ相関器は、酸素濃度計回路基板状の基準遅延線路を下って送信される「開始パルス」を受信する。基準遅延線路の時間遅延は、プリント回路基板作製時に生成され、その後、実験室機器を用いて正確に測定され得るため、遅延は良好に特性化され、組織を通るおおよその光学経路遅延よりも短くなる(または長くなる)ように構成され得る。開始パルスは、アナログ相関器の動作を開始するのに使用され、その後、相関器からの識別時間が、基準遅延線路の既知の遅延時間に加えられ得る。光学経路の総伝播時間が分かっていることによって、物理経路長が正確に求められ得、その後、絶対酸素飽和度値をもたらすために酸素測定式に利用され得る。相関器実施態様は、速い励起シーケンス立ち上がり時間を確保するために非常に速いトランジスタを利用しなければならない。いくつかの異なる実施態様が実現可能であることが理解され、その1つの例が、非常に速い「クロック制御式カウンタ」であり、これは、遅延線路からの基準信号の到達によって「開始」され、相関器のパルス出力によって「停止」され、それによって、カウンタ内の「カウント」の数が、測定されている媒質を通るプローブ光の伝播遅延の直接の時間測度をもたらす。
【0183】
アナログ相関器の有益な増強として、開始パルスを送信するのではなく、アナログ相関器の複製が、励起シーケンス生成器から直接フィードされる。2つのアナログ相関器回路が並列に動作される。相関器回路の1つは上述のようにアナログ光−電気パルストレインを処理する。第2の相関器は、基準遅延線路を下って到達した電気的励起シーケンスパルストレインを処理する。両方の相関器における励起シーケンス保持レジスタが、同じ励起シーケンスパルストレインをロードされる。したがって、一方の相関器において一致が生じた場合、他方の相関器においても一致が生じることになる。しかしながら、回路基板材料内の伝播遅延は、組織中の光信号の伝播よりも短くなるように設計され得るため、2つの相関器はわずかに異なる時刻において一致を検出することになる。したがって、組織中の伝播遅延、および、したがって光学経路長の推定値を生成するために、基準線路内の測定遅延が、検出時刻における2つのアナログ相関器間の差に加えられ得る。
【0184】
異なる波長における光学経路長が実質的に互いから異なることが分かった場合、各波長に対して「トレーニング」サイクルが使用され得る。すなわち、実際の測定サイクルを開始する前に、各個々のVCSELがその固有の励起シーケンスコードを送信している間に、基準遅延線路を下って開始パルスを通すことによって、各波長が「経路長較正」される必要があり得、すべてのVCSELがそうしたとき、かつ個々の経路長が測定されて回路内に記憶されたとき、すべてのVCSELが物質成分種測定を行うために送信を開始することができる。
【0185】
ハイブリッド相関器。
図11を参照すると、光源が測定対象を照射するときの1つまたは複数の単一波長光源の送信と吸収との間の比較を可能にするために使用される1つまたは複数の波長の振幅を求めるための一実施形態が示されている。
図11は、この測定値を収集するのに使用され得るブロック構造の混合信号機構を提示している。可変遅延線路1160を調整することによって、図示されている機構は、一連の測定を行うことが可能であり、各測定値は、測定対象を通る光の特定の遅延に対応する。
【0186】
励起シーケンス生成器1100からのコード化データストリーム(0および1)が、ドライバ1110によって、光源1120、好ましい実施形態においてはVCSELを変調するのに使用される。VCSELは測定対象1130に結合されており(光が皮膚を照らす)、センサ1140が(たとえば、限定ではないが、光検出器)が光を検出し、その出力が増幅1150されて、時変アナログ信号が生成される。この時変信号1170に、コード化データストリームが時間遅延されたものを乗算することによって、相関機能955が実行される。この乗算信号は加算1180され、結果が出力1190においてキャプチャされて、他の時間遅延によって生成される他の値、および、光の任意選択のさらなる波長を変調するのに使用される励起シーケンスとの相関の結果と組み合わせて処理される。
【0187】
コード化データストリームは出力まで2つの経路をとり、一方は可変遅延線路1160を通る単純な時間遅延であり、他方は、測定されるべき物質を通る光学経路である。2つの経路は乗算器1170において組み合わされる。乗算器1170は、遅延線路1160からの励起シーケンスの1が、乗算器1170が増幅器1150からのアナログ信号を加算増幅器1180に通すようにするように構成される。交互に、遅延線路からの0が、乗算器が増幅器1150からのアナログ信号の符号を、その信号が加算増幅器1180に通す前に反転させるようにする。この乗算の結果は、加算増幅器1180の出力1190が増幅されたアナログ信号の相関された部分を有し、アナログ信号の無相関部分が経時的に0に向かって平均するようにものになる。
【0188】
図12を参照すると、この乗算を実行するための代表的な回路が示されている。デジタル/アナログ混合のためにFET1230、1235およびバイポーラトランジスタ1250の組合せを使用するギルバートセル乗算器が示されており、差動アナログ入力1210、1215、デジタル入力1225の賛辞が、協働して、出力1260、1265において、アナログ入力の区分的なものまたは反転したものを生成する。
【0189】
乗算器は、遅延線路からの1が、乗算器が増幅器からのアナログ信号を加算増幅器に通すようにし、遅延線路からの0が、増幅器からのアナログ信号を加算増幅器に通す前にその信号の符号を反転させるように構成される。
【0190】
比較のために、システムの相関される応答と、基準との比を生成することが有用である。2つの基準が、本発明のバージョンによって提供され得る。信号を通すか、またはVCSELドライバ回路の入力を接地するためのスイッチを使用して、スイッチが入力を接地しているとき、VCSELが一定の輝度で駆動されている間に測定が行われ得る。また有益には、VCSELドライバは、乗算器において使用されるものとは異なる励起シーケンス入力によって駆動され得る。この手法は、時変信号であるが、検出回路に相関されない信号によってVCSELを駆動することになる。これによって、励起シーケンス相関の処理利得によって低減された雑音に対応する、加算増幅器における出力が生成されることになる。
【0191】
遅延に、測定期間あたり1つの複数の値が使用されるとき、複数回の測定が行われ得る。加算増幅器の対応する測定出力と組み合わされる、使用される特定の遅延値のセットは、測定対象を特性化するのに使用され得る点のセットを提供する。測定システムの光学レッグのインパルス応答はおおよそ、「光子束が時刻0においてサンプルに向けて放たれた場合、それらがセンサに達するにはどれだけの時間がかかるか?」という問いへの回答として説明することができる。各光子はサンプルを通る特定の経路をとり、1度しか出現しないが、サンプルを通じた可能性のある遷移回数の各々において光子の集合の集約エネルギーを予測するのに使用することができる確率密度関数がある。
図13の参照すると、このインパルス応答の例が示されている。時刻0から最初の光子がセンサに現れる時刻までの幾何学的経路長と関連付けられる弾道輸送遅延がある。いずれの光子も、この最小遷移遅延の前にセンサに達することはできない。放射器からセンサへの直線遷移と関連付けられる時刻にスパイク1330がある。観測されるエネルギーの残りの部分に対するこのスパイクの高さが、物質成分および物質への結合の特性である。物質が均質な拡散体である場合、観測されるインパルスは図示されているように現れ、経路は平均の周りに分散される。この例について、組織応答を表すためにガンマ状の分布が選択されている。しかしながら、一般的に、組織応答は、異なる分布によって表されてもよい。
【0192】
インパルス応答をプロットすることは測定対象を評価するのに必須のステップではないが、収集された値のプロットは、それらの値と、測定対象の特性インパルス応答(すなわち、点広がり関数)との間の対応を示すことができる。
【0193】
図14に示すように、物質のインパルス応答が
図13に示すものに類似している場合、様々な遅延線路設定に対応する測定点が、インパルス応答上にあることになる。
【0194】
他の箇所において説明されている、複数の相対的に直交するコード化シーケンスに基づいて、複数の混合器によって各入力波長に対する測定値を生成するためにセンサ出力が同時に処理され得る。これらの測定を同時に実行することができることによって、複数の波長を比較するときに動きに基づく不正確性を有利になくすことができる。
【0195】
異成分から成る測定サンプルにおいて、インパルス応答は単純なガンマ関数ではない場合がある。遅延が長くなるほど、光子のサンプルへの貫入は深くなる。サンプルの構成は深さとともに変化し得るため、一定範囲の深さにわたって複数の波長の相対的な吸収を得ることによって、測定サンプルの特性において利点が与えられる。
【0196】
各々がVCSELドライバ入力からの基準の時間遅延励起シーケンス入力を供給される、複数の混合器/相関器は、波長吸収係数間の比を得るために同時に作動され得、それによって、物質サンプル特性化が可能になる。2つのインパルス応答が示されている
図14に示すように、概念上2つの異なる波長について、A
1は、遅延Aにおいて波長1について測定された信号であり、A
2は、遅延Aにおいて波長2について測定された信号である。同様に、B
1およびB
2は遅延Bに対応し、C
1およびC
2は遅延Cに対応する。多様な遅延から構成される2つの曲線は、互いに単純にスケーリングされたものではなく、以下のようになる。
【数42】
(48)
【0197】
この結果は、様々な成分濃度が経路長によって変化するように計算され得るということである。
【0198】
各々が異なるVCSELドライバの入力として使用される時間遅延励起シーケンスを供給される、複数の混合器が、波長吸収係数間の比を得るために同時に作動され得、遅延は、各々が測定サンプル中の概念上の「深さ」に対応する複数の比を提供する相関に使用される。これによって、複数の特性の変動を測定するための選択可能な部位のセットが与えられる。
【0199】
アナログ遅延相関器B。
図20Aを参照すると、交互に加算増幅器1180と呼ばれるリセット可能積分増幅器2000が、例示的な実施形態の概略表現として示されている。この構成要素の機能は、時間にわたって等しい重みで、その入力2001のアナログ信号レベルを収集し、出力2008として経時的な積分値を提供することである。この積分値は以下のようになる。
【数43】
(49)
【0200】
この回路は、動作のためのエネルギーを提供するための電力源2006および接地源2005に接続されている演算増幅器2003を使用して作成される。演算増幅器は2つの入力、すなわち、反転入力2002および非反転入力2004を有する。入力2001は演算増幅器2003の反転入力2002に接続されている。演算増幅器2007は、積分増幅器サブシステムシステム2000の出力2008と、フィードバックキャパシタ2009上の端子およびリセット電界効果トランジスタ(FET)2011のソース/ドレインとの両方に供給する。フィードバックキャパシタ2009およびリセット電界効果トランジスタ(FET)2011のドレイン/ソースの他の端子は、演算増幅器2003の反転入力2002に接続されている。RESETピン2010がアサートされないとき、フィードバックキャパシタは演算増幅器入力を出力から分離し、積分電荷を蓄積し、経時的な積分関数を与える。リセット入力2010がアサートされるとき、FET2011は伝導し、フィードバックキャパシタ2009が迅速に放電することが可能になる。演算増幅器2003の出力2007およびフィードバックキャパシタの両方の端子は、入力端子2001の瞬時電圧レベルを受ける。積分増幅器サブシステム2000は、
図20Bの概略図において、アナログ遅延相関器Bの一部として使用されている。
【0201】
図18Aおよび
図18Bに関連して説明されたソリューションから区別されるこの回路において、アナログ受信信号1810内に一連の遅延1812を有するのではなく、代わりに、この実施態様においては、入力信号2016は、同じ遅延2015を提供し、各バッファ2020に同時に供給される平衡接続によって複製され、それによって、入力2016のタイミングが同一のコピーが各乗算器2025に提示される。上記乗算器は、混合器回路2025内のアナログ入力1210としてバッファ2020出力を有する
図12の例示的なギルバート混合器として実装され得る。当該技術分野において既知の他の混合器および乗算器が使用されてもよい。乗算器2025のデジタル入力は、励起シーケンスパルス系列によって生成される信号の精密に時間イメージされたものである基準信号から導出される。この信号はバッファ2030における入力であり、制御可能時間遅延要素2040を通じて複数のマルチプレクサの各々に分配される。図面において、これらの遅延要素はカスケード形式に接続されて示されている。時間遅延要素に対する入力は交互に、並列に、または並列およびカスケードの組合せで接続されてもよい。励起シーケンスにカスケード接続遅延を使用することの利点は、信号が、マルチプレクサの出力2026において導出される信号に任意のさらなる雑音を注入することなく各遅延段において再生成することができる2値全幅信号であることである。各グループの要素に対する基準としての役割を果たす励起シーケンスパルス系列は、各グループに対するインパルス応答中の所望の点に対応するように、時間遅延される。測定値のこの系列または集合の結果は、
図8C、
図8Dおよび
図8E、
図13、
図14、
図24Aおよび
図24B、および
図28に示すインパルス応答において表されているものである。この値の生成は、可変遅延線路の設定に基づいて、
図11に示す回路によって全インパルス応答曲線に沿った単一の時点に対して実行される。
【0202】
各乗算器出力2026は、リセット可能積分増幅器2000に対する入力である。積分増幅器2050の出力は、アナログ−デジタル変換器(A/D)2055に対する入力を提供する。リセット入力2010、および、アナログ−デジタル変換器2055上のクロック三角形によって示されているサンプル入力は、抽出相関信号レベルをサンプリングし、値をデジタル形式2060に変換し、データラッチ2070に対するクロック信号供給に応答して、値を出力レジスタ2070内にラッチするように演算される。レジスタ2070内にラッチされた値は、減衰の逆の代用である、すなわち、これは受信信号強度である。レジスタ内にラッチされた値は、量子化からの雑音、システムに対する雑音として、より高精度の測定を提供するために読み出され、時間にわたって平均され得、励起シーケンスが十分に長い場合、相関雑音は低減され続ける。この理由から、本発明の一実施態様は、最終的に達成されるものよりも少ないビットの精度を有するA/D、および非常に長い励起シーケンスを使用し、励起シーケンスの過程の間に受信信号強度を複数回サンプリングし、それによって、利用可能なSNRをA/Dの範囲を超えて増大させる。全相関器サブシステム2075は
図21に示すより大きいシステムに組み込まれ得る。
【0203】
図20Cを参照して、
図20Bの装置をシステム内に構成するのに使用される制御信号の相対的なタイミングが説明される。制御信号は、積分リセット入力2010、ラッチ2055上のA/Dサンプルクロック、および2070のデータレジスタラッチクロックを含む。これらは
図20Cの相対的なタイミング図に示されている。上から下へのタイミングトレースは、A/Dサンプルクロック2056およびデータレジスタラッチクロック2071であり、励起シーケンス反復期間が示されている。時間をx軸として使用して、制御信号の正に向かうエッジは、イベントがトリガされている時刻として指定される。トリガパルスの幅は、選択される特定の技術に依存する。設定およびホールドタイムの検証を含む以下の設計実践が必要とされ、仮定される。「S」字曲線、たとえば、タイミングアーク2056上のパルスからタイミングアーク2071上のパルスへ向かうものが、矢印の始まりとしてのトリガが次のイベント、すなわち、矢印の終わりにあるトリガの前に完了しなければならないことを示すのに使用される。たとえば、A/Dサンプル2056は、積分増幅器2011がリセットされる前、または、A/Dの出力にあるデータがラッチ2071される前に完了しなければならない。A/Dの出力にあるデータは、積分増幅器2011がリセットされる前にラッチ2071されなければならない。1つの実施形態において、複数のチャネルの減衰測定をトリガするシーケンスは同時であり、既知の完全な統計2080の励起シーケンスの始まりおよび終わりを示す送信機からトリガされる、すなわち、信号は、インパルス応答累積における「チップ」と「チップ」との界面が相殺されるように、平衡される。期間2081は相関サブシステムからデータをキャプチャするために必要とされるシーケンスを包含する。このシーケンスは、2083によって示される期間の間反復される。2082の省略によって表される、介在する時間において、このシーケンスは、測定の精度を改善するために多数回反復され得る。2082の反復を含む測定の全継続時間が、有利には、期間2084+期間2085にわたって反復しない励起シーケンスのセットによって包含される。
【0204】
複数の相関器から構成されるシステム
図21を参照すると、一実施形態において、相関器2075の集合が受信信号2016を共有して配列されている。しかしながら、各サブシステムは、それが量子化することになる伝播振幅に対応する励起シーケンス基準を有する。入力2030は各々、相関サブシステム2075に対して固有である。
図19において説明されているように、相関器の出力は、残差非線形性を有する場合がある。この図面における要素1900は、A(λ
i)の集合に対する相対的な線形性を回復するためのデジタルマッピング関数を、行列システム2100に提供する。その結果が、システムがそのために設計されている物質成分の濃度レベルの出力2120である。
【0205】
多次元測定
本明細書において開示されている技法は、単一点または一次元測定に厳密に限定されるものではない。むしろ、変調方式を変更することによって、組織の深さおよび光源と検出器との間の距離の関数としての、測定に関するさらなる情報が可能であり、それによって、結果として二次元測定がもたらされる。放射器および検出器の格子またはアレイを利用することによるこの概念の拡張によって、組織特性の真の3D測定がもたらされ得る。異なる複数の時点における測定の結果を取得する(たとえば、心臓サイクルを通じて、または、適切な信号変調方式の関数として)ことによって、測定値に時間的要素が加わり、その結果として4D測定(3つの空間次元および時間)がもたらされる。複数の波長において測定を実行することによって、さらなる第5のスペクトル次元がもたらされる。一次元生理学的モニタリングから五次元のモニタリングへと拡張することによって、本開示において提示されている本発明の実施形態の機能および範囲が大きく増強される。開示されている実施形態の用途は、たとえば、適切に選択されたスペクトルを有する光によって刺激されると同定され得る口腔がん、または光学技法によって非侵襲的にモニタリングすることができる異常タンパク質蓄積のような、重要であり依然として未解決の臨床的問題を含む。
【0206】
本発明の実施形態は、2つ以上の同時信号を送信、受信、および定量化するための方法を提供する。方法は、第1の波長において第1の位置から、第1の励起シーケンスに応答して第1の信号を送信すると同時に、第2の波長において第2の位置から、第2の励起シーケンスに応答して、上記第1の信号の送信と同時に第2の信号を送信することを含む。方法は、送信信号を集約信号として受信することと、集約信号と第1の励起シーケンスの時間制御表現と相関させること、および、付加的にまたは代替形態において、集約信号と第2の励起シーケンスの時間制御表現とを相関させることによって、集約信号を処理することとをさらに含む。第1の相関および第2の相関の各々の量子化結果(複数の場合もあり)が、たとえば、伝播媒質を通じた第1の信号および第2の信号の減衰および散乱の測度(複数の場合もあり)を提供する。媒質は、たとえば、弾道媒質、分子ダイ、有機体、および類似のスペクトル的に区別可能な物質のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0207】
その後、本発明のシステムが、受信信号成分の大きさの相対的および絶対的結果(たとえば、経時的な変動)に基づいて媒質特性化特性値を求めるのに使用される。媒質特性化パラメータは、たとえば、ヘモグロビン分析物濃度、血糖値、血液タンパク質レベル、血中脂質レベル、体内総水分量、中心血液量、心拍、心拍変動、蛍光生体分子の濃度、および蛍光色素の濃度を含む。
【0208】
励起シーケンスの組成の有用な変化は、可能性として、任意の他のシステム励起が無い状態で受信信号が較正され得る沈黙期の構成を有する沈黙期間を含み、様々な励起シーケンスの反復期間は異なり得、励起シーケンスは有益には最大エネルギーと最小エネルギーとの間の継続時間において実質的に平衡されるコードを含み得、励起コードは、疑似ランダム反復シーケンスに基づき得、励起シーケンスは実際のランダムプロセスに基づき得、励起シーケンスは記憶されているシーケンスから生成され得る。複数のチャネルの励起シーケンスは、有益には相対的に直交する、すなわち、励起信号のうちの1つと別の励起信号との長期的な相関は、システムの背景雑音に対する相関と実質的に異ならない。反復パターンを有する励起シーケンスが生成された場合、異なるパターン長または継続時間を使用することによって雑音低減のためにより長いベースラインを提供することが有益であり得る。相対的に互いに素である継続時間は、より長い独立シーケンスを生成することになり、それによって、受信および相関された結果から任意の相互導入雑音が低減される。励起シーケンスがクロック制御プロセスによってデジタルに生成される、すなわち、シーケンスが、固定セットのレベルを含むシーケンスによって表され得、出力レベルが固定時間ベースでクロック信号の倍数である期間において変化する場合、励起シーケンスのレベルの変化は、測定されているサンプルの少なくとも公称インパルス応答によって時間的に分離され得るが、本明細書において説明されている混合および相関技法によって、励起シーケンスのレベルの変化を分離する期間は、測定されているサンプルの公称インパルス応答時間よりも大幅に短いものでもあり得、依然として測定されているサンプルの特性の正確な定量化を可能にする。
【0209】
送信機もしくは受信機、またはその両方が、特性化されるべきサンプルに並置され得、上記サンプルは、送信機と受信機との間の信号を変化させる。遷移中の信号は、弾道媒質、分子ダイ、有機体、および類似のスペクトル的に区別可能な物質のうちの少なくとも1つによって変化され得る。励起シーケンスの時間制御表現は、可変遅延要素を通過した励起シーケンスに応答して生成され得る。この方法は、受信処理が遅延を走査すること、または一定間隔にわたって遅延要素を調整し、それによって介在する物質のインパルス応答の表現を提供することを含むシステムにおいて使用され得る。遅延要素は、対象の測定に対応する所定の遅延において設定されることもできる。遅延要素の設定は、各相関プロセスに使用される遅延を同期させるように達成され得るか、または、複数の相関プロセスの時間制御遅延が、互いから独立して走査または設定され得る。交互に、同様に構築されている乗算器および積分器が、各々可変遅延の励起信号に接続され得る。この場合、インパルス応答の複数の値が同時に生成され得る。送信デバイスは、有用には、たとえば、アンテナ、レーザ、VCSEL、LED、または類似のデバイスであってもよい。受信機の検出器は、有用には、たとえば、アンテナ、PINダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子倍増管、または類似のデバイスであってもよい。相関器は、有用には、たとえば、その後ろに加算増幅器があり、その後ろにアナログ−デジタル変換器がある混合器、励起シーケンスの表現、ローパスフィルタ、アナログ−デジタル変換器、ならびに閾値検出器およびカウンタと相互接続されている遅延要素、アナログ遅延線路相関器、または類似の回路を含んでもよい。集約信号相関器を処理するための論理ユニットは、有用には、たとえば、プログラム可能デバイス、ソフトウェアによってプログラムされたデバイス、固定(非プログラム可能)論理ユニット、アナログ回路要素、またはそのような要素の組合せを含んでもよい。
【0210】
本発明の実施形態は、各々が、固有の波長において、または個別の位置から、励起シーケンスに応答してその信号を送信する2つ以上の送信機を備える装置を含んでもよく、上記送信は、時折1つまたは複数の他の送信機と同時に行われる。上記装置は、いくつかまたはすべての送信信号を受信するための受信機と、受信集約信号を処理するための論理ユニットとをも備え、一方、個別の相関器が、各送信信号に応答して受信された部分を量子化するために使用され、上記集約信号は、データシーケンスを生成するために励起シーケンスの時間制御コピーと相関され、データシーケンスは対象の送信信号に対応して固有に量子化される。励起シーケンスの時間制御表現は、交互に、元の励起シーケンスを、タンプ遅延線路または他の類似の技法のような較正時間遅延要素に通すことによって生成され得るか、または、送信機アセンブリから受信される較正パルスに基づいて、受信機において独立して作成され得る。
【0211】
細粒度インパルス応答の利用
細粒度インパルス応答を利用することによって、いくつかのシステムにおいて測定値の確度を増大させることが可能になる。多送信機、多受信機、およびマイクロミラーベースの位置特定制御技法に加えて、本発明の一実施形態は、特性化されているサンプルの特徴の空間位置特定の精度を増大させるために、細粒度インパルス応答に含まれる時間遅延(および、したがって放射経路長)に関する情報を使用することを含む。細粒度インパルス応答に基づくデータ処理は、インパルス応答の受信データに含まれる対象の詳細のコントラストを増大させることができる。このコントラスト増大は、後述するように、分析をサンプル中の対象の領域またはレジームに狭めるために、インパルス応答の細粒度の詳細を使用する。確度の改善によって、測定のより高い精度、および、適切に較正することによって、より高い正確度がもたらされる。精度が高くなることによって、翻って、物質成分および/またはそれらの特性の間でより精細な区別を行うことが促進される。
【0212】
上述のように、分光デバイスの動作の波長の最適な選択を利用することによって、振幅測定(
図20Bの2070参照)の結果に基づいて物質特性Z(
図21の2110参照)を判定する計算における変動伝播が改善される。
【0213】
本発明の見解によれば、組織を特性化するパラメータ(たとえば、酸化ヘモグロビン、またはグルコース、または特定のタンパク質のような特定の種の濃度、または、大動脈圧のような生理学的パラメータ)の測定値を表すデータの分析は、そのようなデータが関係する組織の部分を動的かつ空間的に位置特定するように実行される。そのような空間位置特定は、対象のパラメータを表し、組織のインパルス応答を計上することによって得られる曲線の部分を分析することによって達成される。特に、
図8Cおよび
図8Dをさらに参照して、組織のインパルス応答曲線の異なる部分は、EMWが送信機から組織を通じて受信機に達するためにとっている異なる経路と関連付けられるが、それを通じてEMWが伝播される組織の領域にわたって積分されたインパルス応答曲線は、(無論、波長特有の)EMWのための組織断面経路長にわたる平均と関連付けられる。
【0214】
組織は、少なくとも1つの送信機によるEMW(複数の波長にある)のインパルスによって励起され、組織のインパルス応答は、選択された光学的特性(たとえば、吸収、散乱、光学異方性)に関して、少なくとも1つの受信機によって測定される。式(37c)を参照すると、そのような測定によって、[A(λ
i)]として示される波長依存波面パラメータが生成される。モル吸光係数[ε(λ
i,C
i)]のような所定の特性を使用し、組織を通るEMWの経路長[δ
Ci]を推定して、種(物質成分)の濃度[MC(λ
i)]がその後、測定インパルス応答曲線に基づいて計算される。
図24Aは、本発明の方法の一例を示す。図示されているように、(サンプルを通じて送信される信号の減衰を表すデータに基づいて求められる)組織サンプルのインパルス応答の使用が行われる。左にある3つのグラフ(2401、2402、および2405)は、検出器において受信され、特定の波長および/またはサンプルに対する送信機の位置と関連付けられているものとしての信号の時間依存振幅に対応するインパルス応答曲線を表す。振幅2401、2402、2405は、送信機において使用される、それぞれ対応する固有の励起シーケンスパルス系列と関連付けられ、対応する信号の送信の瞬間後に経過した時間の関数として記録される。すなわち、グラフの各々の横座標は、特定の信号が送信機から受信機へと伝播するのにかかる継続時間を表す。システムの相関器によって生成される出力の振幅が単一パルスの結果である場合、単一パルスは、その期間にわたって分散し、統計的に反復可能に測定可能であるのに十分なエネルギーを有しなければならない。本発明の一実施形態においては、多くのパルスが、様々な上述した相関回路の1つによってともに集約される。しかしながら、送信パルス系列内のパルスの極性が正規化される(上記の例においては乗算器、マルチプレクサ、または排他的ORゲートによって)限り他の技法が使用されてもよく、各パルスに対応する時間遅延は、その系列からの異なるパルスの間での相関を可能にするために、送信時刻に基づいて正規化される。この時間遅延は、パルスの伝播の経路の長さに直接関係し、遷移速度に間接的に関係する。たとえば、
図3Cの減光曲線に示す値は(1/[濃度*距離])の単位にあり、これは、濃度を求めるには、距離因子(公称的にはデルタ遅延)および減衰、または受信電力/送信電力が必要であることを意味する。曲線2401、2402、および2405をさらに参照すると、それぞれ対応する復号励起シーケンス(λ
i)2411、2412、および2415に対する選択された「インパルス応答デルタ時間」における振幅の値が、2420(式37C参照)として示されている演算に対応するデータ処理ステップに使用される。
【0215】
各時間ステップにおける本発明のシステムからの出力は、物質成分濃度を表す一連の値である。これらの値は、時間依存様式でともに集約されると、それぞれ、成分濃度1、成分濃度2、および成分濃度Nに関するインパルス応答を表す、
図24Aのグラフ2421、2422および2425によって示される。データ収集および対応する測定が複数の波長において同様に実行されることを示すために、
図24Aにおいて省略が使用されている。
【0216】
(データに関して)λiを参照すると、参照される群は、波長によって区別される相関インパルス応答と、送信機または受信機位置によって区別される相関インパルス応答の両方を含んでいた。これらの様々なλiのすべてが各々、それらを光源励起パルスシーケンスの時間制御表現と相関させることによって受信信号から抽出される。
【0217】
細粒度インパルス応答データによって可能にされるさらなる改善は、波長に依存する伝播の拡散変動速度に基づいてλiのインパルス応答の線形結合を調整する可能性である。サンプル物質のこの特性は、分光デバイスの動作の波長の最適な選択を参照して上述された。この情報が利用可能である場合、これは、インパルス応答の瞬間的な物質特性を生成するとき、特定の各分析物について、波長に基づいてインパルス応答からとられるサンプルを適切に時間シフトすることによって、
図24Aにおいて説明されているプロセスを変更することによって使用され得る。
【0218】
たとえば、
図24Bを参照して、グラフ2441は、物質成分1に特有の波長λ
1に適切な時間シフトを表す。物質成分1の濃度の出力における「インパルス応答時間差分」を表す所望の時間パラメータ2436は、グラフ2441上のインデックス2451として、調整時間差分2461を生成するのに使用される。調整時間差分は、入力を行列計算2420に提供するためにグラフ2401上でインデックス2411を付けるのに使用される。
【0219】
同様に、グラフ2442...2445は、物質成分1に特有の波長λ_2...λ_Nに適切な時間シフトを表す。所望の濃度出力インパルス応答時間差分2436が、グラフ2442...2445上のインデックス2452...2455として、調整時間差分2462...2465を生成するのに使用される。これらの調整時間差分は、入力を行列計算2420に提供するためにグラフ2402...2405上でインデックス2412...2415を付けるのに使用される。
【0220】
これは単一の時間シフトとして示されているが、入力はまた、より多くの点を考慮に入れた、重み付け加算、補間、および、行列演算2420に対する入力を選択する他の類似の方法の可能性を提供する、波長インパルス応答の関数であってもよいことが諒解されよう。加えて、
図24Bにおいて2430とラベリングされている[δ
BM]
-1が、特定の各データサンプルの経路長を計上するのに使用されることに留意されたい。上述のように、これは、経路が受ける増大した励起に対するスケーリングであり得、これはまた、サンプルの異成分から成る構成の得られた知識によって増強され得る。この知識は、たとえば、フィードバックを提供し、レベル、チップの周波数、および励起シーケンス特性を変更することによって送信または受信される信号を最適化し、より大きい視野を提供し、送信機および受信機の実効密度を増大させるためにマイクロミラーを組み合わせて使用した外部/独立分析の結果から、上述のマイクロミラーアレイを使用することによるサンプルのサンプリングされた測定、ならびに、上述の技法から得られ得る。すべての情報は、面内の1つまたは複数のミラーを用いるまたは用いない単一の送信機および受信機からの信号に含まれている。さらなる有用な情報が、送信機および受信機の数を増大させることによって、または、前述のマイクロミラーアレイによって為され得るように、それらの実効密度を増大させることによって得られる。
【0221】
心拍間1回心拍出量および心拍出量の判定のための実施形態(複数の場合もあり)の使用
心臓に障害をもつ患者(たとえば、心臓弁が損傷した患者、または心臓発作もしくは冠動脈疾患を有する患者、または非常な愛煙家など)における心拍出量の大きさは、健康および疾病の重要な測度である。心拍出量の単位は、心臓によって圧送される血液の「リットル毎分」である。より精細な粒度で、心拍出量は、「心拍間1回拍出量」と称される、各心拍の間に圧送される血液の個々の量から構成され、「1回」は、1回の心拍、または、心臓の左心室の収縮である。往時、病院ベースの超音波システムが現れる前は、心拍間1回拍出量を測定する信頼性のある方法はなく、X線ベースの技法は1回拍出量を測定することはできたが、わずかな医療センターしかその機能を有しておらず、(危険度の高い手術を実行する)心臓カテーテル法研究所およびスタッフが必要とされていた。現代の超音波システムは、高度に訓練された超音波検査技師によって使用される場合、心拍間1回拍出量を推定することができる。これは費用のかかる試験であるが、その費用は、心臓カテーテル法研究所の費用よりも少ない。
【0222】
「Continuous Determination of Beat−to−Beat Stroke Volume From Aortic Pressure Pulses in the Dog」(Circulation Research,39(1):15−24,July 1976)において、Bourgeois,M.J.、B.K.Gilbert、G.von Bernuth、およびE.H.Woodは、中心胸部大動脈内の心拍間脈圧波に基づいて心拍間1回拍出量(および、したがって心拍出量)を計算するための方法を提案している。提案されている方法は、少なくとも2つの疑問を生じた。第1に、その方法によれば、大動脈圧波は、大腿動脈を通じて挿入され、大動脈へと進んだカテーテルを用いて測定されなければならなかった。そのような手術は、特化された病院内環境が利用可能であることを必要とする。第2に、臨床的価値のあるものであるために、計算は、心拍ごとに「リアルタイム」で実行されなければならなかったが、これは、この原稿において報告されている研究時点のメインフレームコンピュータさえ超えるものだった。したがって、提案されている方法は、一般的な臨床診療においてはまったく実行されなかった。
【0223】
本明細書において説明されているシステムの酸素測定態様を利用する、Bourgeouis他の研究に対する重要な拡張が、測定対象の心拍間1回拍出量の正確な非侵襲的測定を提供するのに使用され得る。説明される分光計は、センサの送信機と受信機との間の血液成分濃度のほぼ瞬時の変化の測定値を提供し、この情報の波形は、大動脈圧パルス輪郭に対する「代理」波形として使用される。この代理波形の品質は、物質成分濃度曲線のサブセットがサンプルの間隔および深さ領域から選択される場合にさらに改善され、これによって、最大の変動、または、酸素欠乏成分ではなく、酸素含有成分が提供される。この飽和波形のソースの選択によって、静脈ではなく動脈の変化の測定が可能になる。末梢動脈は大動脈から供給を受けるため、皮膚表面に近い動脈(静脈ではない)に対応するソースを選択することによって、大動脈圧パルスのより良好な代理がもたらされ、大動脈圧パルスは、大動脈の挙動が「減衰」したものである。この局所分解能および選択基準を使用して、システムは、患者の自由生活環境においてリアルタイムで、心拍間1回心拍出量、および、したがって、心拍出量を計算する。結果もたらされる情報は、その心臓機能が損なわれている患者を治療している心臓専門医に利点をもたらす。さらに、前に説明された励起シーケンス符号化を用いてまたは用いずに、ともに時間的に関連付けられた複数の取り調べ部位(すなわち、複数の光検出器)を使用することによって、心血管状態、たとえば、血液量減少の検出に関連付けられる、血流および心拍出量の変化の検出が可能になる。これらの変数の値の任意の変化がその後、心血管状態の悪化または不安定性を予測し得る。
【0224】
本発明によって、酸素飽和度の瞬時変化を測定し、代理大動脈圧パルス波形を生成し、したがって1回心拍出量および心拍出量を計算するための理想的な測定部位を同定および/または位置特定するための機能が提供される。
【0225】
波長の最適な選択を使用し、サンプルにチャレンジを導入し、選択された可能性のある相対的に直交する選択送信機励起シーケンスを使用して有益に測定される特性は、限定ではないが、様々なヘモグロビン分析物濃度および説明されている時間ベースの変動、ならびに、血糖値、血液タンパク質レベル、血中脂質レベル、体内総水分量、中心血液量、蛍光生体分子または色素の濃度、1回呼吸気量、心拍間1回心拍出量、および心拍間1回心拍出量の変動を含む。
【0226】
他の箇所において説明されている、複数の相対的に直交するコード化シーケンスに基づいて、複数の相関器によって各入力波長に対する測定値を生成するためにセンサ出力が同時に処理され得る。これらの測定を同時に実行することができることによって、複数の波長を比較するときに動きに基づく不正確性を有利になくすことができる。
【0227】
チャレンジベースの測定
組織を特性化する対象の分析物は、生理学的パラメータを含み、そのうちのいくつか(たとえば、中心血液量または組織中の総水分量)は直接測定することができない。そのような生理学的パラメータを間接的に測定するために開発された診断技法は、血液および組織中に導入される「トレーサ」の希釈に基づく。たとえば、トレーサは、動脈もしくは静脈に注入され、経口投与され、または吸入され(たとえば、一酸化炭素のような小量の気体の形態で)、血液サンプルがその後、内部のトレーサの割合を定量化するために分析される。トレーサは、様々なin vitro(研究所)またはin vivo(人間の中)手段を通じて、しかしこのコンテキストでは分光分析によって、それらの検出を促進するように選択される。使用されているいくつかのトレーサは、一酸化炭素、および蛍光色素を含み、そのうちのいくつかは市販されており、患者において安全に臨床応用するために試験されたか、またはされているところである。使用されるトレーサ、および測定の精度に応じて、様々な生理的変数が測定され得る。
【0228】
対象の他の物質特性は、様々な生理的分析物または代謝産物と関連付けられる。これらの代謝産物のサブセットは、代謝されている(すなわち、in vivo生化学過程を通じて分解(broken down)または分解(degraded)されている、投与された薬物(上述のような)に応答して通常の生化学過程を通じてin vivoで形成される化学的誘導体である。化学物質は、均一な特性を有する物質成分である。均一な特性を所与として、化学物質は、その固有の分光的特徴を判定するために分光分析によって分析され得る。本出願の他の箇所において説明されている技法を使用して、特定の波長(複数の場合もあり)が、対象の薬物と関連付けられる代謝産物を最良に同定するように選択される。このように代謝産物は「トレーサ」として使用される。
【0229】
本開示の目的のために、「チャレンジ」という用語は、物質と関連付けられるパラメータ(たとえば、血液量および薬物取り込み)に対する代理として後に測定されるべき物質(たとえば、血液)内に導入される物質を表すのに使用される。チャレンジの例は、限定ではないが、微量気体および薬物を含む。そののような薬物は、直接および/またはそれらの関連付けられる代謝産物(複数の場合もあり)を通じて検出され得る。チャレンジを所与として、物質パラメータの分析に使用されるプロセスが、
図22の流れ図に示されている。プロセスはステップ2200および2210において、サンプルのベースライン測定によって開始する。サンプル特性のベースラインが確立されると、ステップ2220においてチャレンジが導入され(たとえば、注入、吸入、または経口投与を通じて)、その後、ステップ2230において、そのように変更されたサンプルが、代表的なデータを取得するために測定される。このデータ収集プロセスは、ステップ2240において、ステップ2250における対象の特性値の計算を可能にするのに十分な(外部的に定義された規則によって測定されるものとして)データが収集されるまで継続する。この時点で、プロセスは完了する(終了2260)。
【0230】
チャレンジによって引き起こされる、サンプルの物質成分の特性を定量化するための、今日使用されている技法は、精度、侵襲性、および時として、望ましくない副作用の程度が変動する。臨床応用において必要とされているものは、臨床要件に十分な精度で、非侵襲的に、患者に対する副作用が最小限であるようにそのような量を測定するための手段である。本出願の他の箇所において説明されている、最適なEM波長を選択し、波形(複数の場合もあり)を送信し、サンプルと相互作用した後に波形(複数の場合もあり)を受信し、結果を定量化するための技法は、それらが他の特性の検出に適用可能であるのと同様に、チャレンジベースのプロセスにも適用可能である。
【0231】
大幅におよび非自明的に改善されるチャレンジベースの特性測定技法の事例として、全血量の測定が、使用事例を変更するために本発明によって提供されるさらなる精度によって増強され得る。経時的な血液量の変化の測定の支持は、治療の優先順位決定において相当に有益なものである。一酸化炭素(CO)が、酸素よりも選択的にヘモグロビンに結合するため、全血量の測定のための検出可能なトレーサとして使用される。
【0232】
BurgeおよびSkinnerは、「Determination of hemoglobin mass and blood volume with CO:evaluation and application of a method」(Journal of Applied Physiology,vol.79,pp.623−631,August 1,1995)において、測定された一定分量のCOを投与する前および投与の10分後のカルボキシヘモグロビン濃度測度を用いて、その一定分量を被験者に導入することによって全血量を測定することを記載している。彼らの方法は、彼らの報告に示されており、本明細書において
図23に示されている装置を使用した。C.J.Gore,W.G.Hopkins,and C.M.Burge「Errors of measurement for blood volume parameters:a meta−analysis」(Journal of Applied Physiology,vol.99,pp.1745−1758,November 1,2005)において、他の技法と比較したこの技法の有効性が、いくつかの研究のメタ分析によって論証された。この技法の精度は0.8%の範囲内であるが、そのような精度を達成するには、COを、COに結合されているヘモグロビンの割合を6.5パーセントポイントだけ(またはおおよそその程度)上昇させるのに十分な量で導入することを必要とする。血液中のCO濃度の危険な限界は≦15%であり、血液中のCOの半減期は、純粋な酸素による50分から正常な被験者における2〜8時間まで変化するため、複数の検出可能な一定分量を使用することは、現在の技術を使用して短期間内では可能ではないことが理解される。Gore 2005によれば、そのような大きい一定分量を使用する背景には2つの理由があり、第1に、より少ない量を送達することは、送達量の誤りを招きやすい場合があり、第2に、現在の外部読み取り血液ガスモニタは0.1%までの精度しか提供しない。
【0233】
本発明の方法およびシステムによって提供される増大した精度によって、有効で信頼性のある結果を提供するのにはるかに少ない一定分量が使用され得る。CO一定分量の定期的な投与が一定期間にわたって安全であるように十分低い一定分量を使用することによって、たとえば、被験者の健康を損なうことなく、中心血液量に対する有効なモニタが提供される。システムを通じたCOの速い分散速度のレートを所与として、増分検出が十分に高感度であることを条件として、10分ごとの頻度でさらなる一定分量を与えることが可能になる。
【0234】
蛍光発光
局所麻酔は多くの事例において、麻薬性鎮痛剤の副作用を回避するにあたっての疼痛管理の優れた手段である。術後疼痛管理には神経ブロックが一般的に使用され、また、全身麻酔を回避することが望ましい場合には一次麻酔が使用される。この応用形態において局所麻酔を使用することによって、意識に影響を及ぼすことなく一定領域を疼痛に対して無反応にし、合併症の検出および患者の回復を速める。しかしながら、神経ブロックを実行するとき、手術部位に対する神経伝導を阻害するために相対的に多い薬剤投与量が必要とされ得る。例として、必要とされる注入量は、20〜40ccの範囲内であることが多い。不都合なことに、動脈に注入される1cc程度の少ない局所麻酔は発作を引き起こす可能性があり、大量の血管内局所麻酔注入によって心臓の伝導系が遮断され、心停止および死に至る可能性がある。中毒性のある麻酔汚染の発現を照明する症状は、舌の無感覚、立ちくらみならびに視覚および聴覚の障害を含み、7.5mcg/ml未満の濃度で発生する可能性がある。10,000例の手術のうち約5例において、血管内局所麻酔によって引き起こされる重篤な合併症を報告されているが、数千の局所ブロックが毎日行われている。
【0235】
患者をこの問題から保護するために、麻酔専門医にとって利用可能なツールは非常に少ない。1つの既知の方法は、局所麻酔の「試験完了」と標識されたエピネフリンを含む。注入中、医師は故意でない血管内注入を示す心拍または血圧の増大を注意してみる。不都合なことに、この方法は非常に信頼性が低い。ベータブロッカを服用しているか、またはペースメーカを装着している患者は、エピネフリンに反応しない場合がある。小児では、アドレナリンに対する身体の反応を変え、局所麻酔が血管内であるか否かを判定することを困難にする全身麻酔下でブロックが行われることが多い。硬膜外麻酔中のエピネフリンマーカは、妊娠中の女性の中の胎児への血流を低減することによって合併症を引き起こす可能性がある。それゆえ、血管内局所麻酔の正確かつ早期の警告を提供するための改善されたシステムおよび方法が依然として、引き続き必要とされている。
【0236】
本発明の1つの実施形態は、赤外光を吸収する色素で標識された局所麻酔を受けている患者をモニタリングするために分光計を動作させるための方法である。この方法は、(1)蛍光色素で標識された麻酔を受けている(または受けた)患者に光パルスを与えることと、(2)患者によって放射された光を検出し、検出された光を表す出力を提供することと、(3)色素標識麻酔の存在を表す情報を導出するために出力を処理することと、(4)蛍光発光を表す情報に応じて、色素標識麻酔の存在を表す情報を表示することとを含む。
【0237】
インパルス応答を生成するにあたって上述した機構を使用することによって増強されたそのような方法を適用する結果は有利であることが諒解される。蛍光活性の遅延性に起因して、蛍光発光をトリガする波長のいずれかについてのインパルス応答曲線は尾部を延長されることになる。
図28は、蛍光色素がない(曲線2810)、および、蛍光色素が存在する(曲線2820)、組織のインパルス応答を示す。インパルス応答を利用する分光計を動作させるための方法を使用することは、測定の感度を増大させるという点において、ピークまたはバルク相関にわたって有利である。
【0238】
位置特定
図1Cを参照すると、1回心拍出量の改善された測定が、本発明の一実施形態に基づいて可能にされ得る。
図1Aは、センサ160が指に並置されている一実施形態を示す。これは、抹消測定と称されることが多く、多くの用途にとって適切である。しかしながら、心臓活動の測定を考慮するとき、指におけるパルス波の測定は、循環系のインピーダンスに強く影響される。(位置140において測定されるときの)パルス波の波形は、後述する
図25の曲線2530に形状が緊密に類似しており、不確定の雑音がさらに、心臓中心の測定値に存在する可能性がある。それゆえ、分光デバイスの身体に対する代替的な配置を確保することが有利である。
図1Bは、
図1Aと比較してより心臓の近くに配置されているセンサを示す。
【0239】
図1Cは、人の頭部、首、肩、および動脈循環系の一部のスケッチされた側面
図190を含む。首193は、ちょうど肩関節において、少なくとも1つの主冠動脈、頸動脈191に近接している。この図解におけるセンサ145は、頸動脈191中の血流に起因する濃度特性を緊密にモニタリングするように構成されている事例である。本発明の一実施態様の要素がともに利用されるとき(少なくとも送信機(複数の場合もあり)110、ならびに受信機(複数の場合もあり)130、131、および132を含む)、分光システムは、まとめてセンサ145と称される。
【0240】
図25を参照すると、グラフ2500、2510、2520、および2530は、経時的な血管内の血圧の変化を示す。心臓収縮期は、左心室が大動脈弁を通じて上行大動脈へと血液を放出している全体の心臓サイクルの一部である。心臓拡張期は、左心室が左心房によって補充されており、大動脈弁が閉じられ、左心室から大動脈へと血液が流れていない心臓サイクルの部分であるが、心臓拡張期の間、血液は大動脈から動脈血管系へ、その後細動脈、および、身体組織の中深くの毛細血管内へと流れ続ける。心臓収縮期の間、血液は上記のように末梢動脈内にも流れているが、この主要な効果は、大動脈が左心室によって部分的に補充されることである。
【0241】
グラフ2500を参照すると、点(時刻=t
D,圧力=P
D)は、心臓に関して指定される位置点における測度としての、ちょうど心臓収縮期の放出段階が始まるときの、心臓拡張期の終わり2501における最小の圧力を表している。心臓収縮期は継続し、2502においてピーク圧力P
Sを達成する。左心室収縮が終わり、大動脈弁が閉じると、大動脈圧は、2503における極小値へと低減し始め、その後、2504においてわずかに圧力は増大する(切痕または重複切痕と称される)。重複切痕は、大動脈弁が閉じるときに、上行大動脈、大動脈弓、および下行胸部を進行するパルス波反射によって引き起こされる。
図25の2505において重複切痕が現れた後の時点において、大動脈弁が完全に閉じられ、血液が大動脈から流れ出るにつれて大動脈圧は低減し、これが、可能な限り多くの圧力を動脈樹内に維持するための弾性容器として機能する。段階2505は、時定数τによる指数関数的減衰によって特性化され得ることが分かっている(「Continuous Determination of Beat−to−Beat Stroke Volume From Aortic Pressure Pulses in the Dog」(Circulation Research,39(1):15−24,July 1976)において、Bourgeois,M.J.、B.K.Gilbert、G.von Bernuth、およびE.H.Wood)。各心臓サイクルの心臓拡張期の間に求めることができるこの時定数は、心拍出量の計算に使用される。示されている拍動は2506において終わり、大動脈弁が開くと、次の心臓収縮期が始まる。
【0242】
圧力波は、圧力波グラフ2500が測定された点よりも、心臓から徐々に遠くなるように位置する、身体にわたるさらなる点において測定されるため、対応する時間依存パルス波(2510、2520および2530として示す)は、循環系のインピーダンスに起因して弱くなる。対応するパルス波のピークは概して低減され、定常状態圧は増大し、曲線の指数関数的減衰部分も影響を受ける。グラフ2530(説明されているものの中で心臓から最も離れた点において行われる測定から取得される)において、たとえば、パルス波の反射が2531として見て取れ、新収縮期の始まりにある平滑化遅延が、2532として見て取れる。これらのグラフは健康な閉塞していない循環系に対応するパルス波の減衰および拡大を表しており、センサを実現可能な限り中心大動脈の近くに配置する動作上の利点を示すのに使用されることが理解される。
【0243】
Bourgeois他は、中心大動脈における心拍間パルス圧波の測定値、およびそれに基づくその後の計算から、心拍間1回拍出量(および、したがって、心拍出量)を計算するための方法を提案している。
図26のグラフ(Bourgeouis他の
図1に対応する)は、「大動脈圧パルスから個々の心拍間1回拍出量を求めるための方法」を示す。実線の曲線は、中心胸部大動脈からの正常な圧力パルスを表す。圧力パルスの心臓収縮期の上の破線の曲線は、結果として圧力増分ΔP
ESをもたらす仮説的大動脈圧輪郭を表し、これは、すべての末梢血管が心臓収縮期の間に閉じられ、それによって心臓収縮期の排出が妨げられる場合に発生する。定常状態の事例における心臓拡張期の排出に等しい圧力は、(P
ES−P
D)である。全拍出量に等しい圧力ΔPsvはこれらの値の総和である。K
Aは、比例定数である。(Bourgeouis他から引用。)
【0244】
1回拍出量(SV)を計算するために、以下の演算が実行される。
SV=K
AΔP
SV(50)
【数44】
(51)
【数45】
(52)
【0245】
前述したように、時定数τが、測定値が得られた後に計算され得る。他の定数K
Aは、1回心拍出量の絶対読み値が必要とされる場合に、較正段階と、その後に続く所望の測定を必要とするか、または、経時的な1回拍出量の変化飲みが所望される場合は、一定のままであることができる。圧力値はその後、測定値から得られる。
【0246】
K
Aに関して、Bourgeois 1976は、1セットの実験に対して「実験の開始時に実行された心拍出量の第1の標識希釈測定に基づく」単一の較正のみを使用する。これは、「1回拍出量のすべての後続の判定に使用された」。測定の結果は、この継続時間にわたって、この実験の条件下で「K
A値の相対的な普遍性」を実証した。この普遍性は「短い実験中に測定されたデータセット全体から、および、延長した継続時間のものから計算された標準偏差の数値的類似性によって暗示される」。それゆえ、1回心拍出量の絶対読み値を必要とする多くの用途にとって十分な精度を生成するには、測定の前の単一のK
Aで十分である。
【0247】
加えて、動脈パルスが伝播するとき、より高い圧力において、動脈断面積は(大動脈壁の弾性および寝室収縮の強度に応じて)わずかに増大する。動脈断面積の増大は、翻って、特有のオキシヘモグロビンを通ってサンプルを渡るEMWの送信を促進する。インパルス応答はそのような細粒度で測定されるため(
図8E参照)、血管拡張に対応する、付随する全体的な減衰の増大が測定されることになる。結果として、心臓収縮期の間、心臓拡張期の間より大きい割合で、光学経路(光源と検出器との間)に寄与する物質成分によって引き起こされるインパルス応答のその部分の幅が増大することになる。本例において、そのような物質成分は場合血液。したがって、インパルス応答のピーク濃度と、インパルス応答の曲線の下の面積の両方が増大することになる。大動脈の幅の増大は無論、動脈壁の弾性に依存し、そのような弾性は、
図25のグラフ2500の点2501と2502との間の上昇率から推定される。心臓サイクル全体を通じた実効光学経路長の変化とともに変化するステップ関数の部分からの寄与を増強することによって、圧力の代理として測定値が改善する。
【0248】
したがって、本発明の酸素測定システムは、酸素飽和度の瞬時変化、および、代理大動脈圧パルス波形の生成の測定のために最適な部位または位置の特定を可能にし、それに基づいて、1回心拍出量および心拍出量の計算が実行される。同様に、他のパルス波形が全身を通じて測定されていもよい。
【0249】
測定値は前述の生理的変数に制約されない。同様の技法を使用して他の生理的変数が測定されてもよい。サンプリング周波数が増大することによって、遷移時間、および、それゆえ血液の速度も、リアルタイムで推定され得る。
【0250】
個々の戻り信号の形状(
図8D参照)は、中心大動脈血管に関するさらなる情報、たとえば、それらの弾性を測定するのに使用され得る。血管の形状および形状の変化のこの分析は、収縮850および拡張851の両方の血管を示す
図8Eに示されている。収縮した血管850は細い破線で輪郭を描かれており、拡張した血管851は太い破線で輪郭を描かれている。収縮した血管850によって戻された信号の時間依存振幅は、グラフにおいて線852として、拡張した血管851については線853として示されている。この図面からの主要な所見は、欠陥のサイズが検出信号を表す曲線の幅と曲線の下の面積の両方に影響することである。このグラフから、本発明の一実施形態に従って、血管のインパルス応答の波形の形状の測定によって、血管のサイズの変化およびその弾性の判定が可能になることが分かる。
【0251】
前に暗示されていたように、また本発明の1つの実施形態によれば、基本器具ブロックは、送信機および単一の検出器によって形成される「送受信機対」を含む。インパルス応答はそのような送受信機対について導出される。少なくとも、送信機が単一の波長において動作するとき、このインパルス応答の導出によって、光が組織を通って進行する、平均の、波長特有の経路長の推定が可能になる。(これは、真のインパルス応答の重心、すなわち、較正に対応する。)加えて、散乱、吸収、および組織の異方性を含む、組織の基本光学特性が抽出され得る。これらのデータは単一の波長においてある時点において収集されるデータを表す。更なるデータが収集されると、単純な様式で、時間の関数として、時間による組織の生理的または光学的パラメータの変化が求められ得る(たとえば、パルス圧力波の変化、たとえば
図26参照)。1つのさらなる結果は、時間および生理学の関数として、原因となっている組織の変化を特性化することができるようになっていることである(たとえば、
図8E参照)。本発明の一実施形態によれば、組織を特性化するパラメータが、組織の測定インパルス応答に基づいて求められるそのようなパラメータが所定のまたは集計されている周波数減衰特性を使用することによって粗く空間的にマッピングされると(
図8D参照)、空間的に位置特定される。
【0252】
複数の光波長を利用し、組織のスペクトル依存インパルス応答を求め、組織を特性化するパラメータのスペクトル依存性を求めることによってさらに測定を拡張することによって、たとえば、一時点における、対の送信機と受信機との間に伝播するEMW内の波長と同じだけ多くの種の濃度の推定が可能になる。時間的に分離した複数の測定を実行することによる、組織パラメータのスペクトル依存性の判定を拡張することによって、パラメータの空間位置特定が可能になる。(
図8D参照)
【0253】
組織パラメータの空間位置特定を可能にするための方法の次の論理的拡張は、単一の送信機、および、送信機から別様に離間された複数の受信機を使用することである。各新規の送受信機対について、すべての前のステップが行われる。複数の重なり合ったまたは空間的にシフトされているインパルス応答に基づいて判定される組織パラメータの位置特定の結果として、
図8Dにおけるサンプリングの密度が増大し、対象の特定の解剖学的構造を参照する、原因となっている組織の画像の形成が可能になる。方法のまた次の基本的な拡張は、複数の動作波長および複数の分離において複数の送受信機において求められるインパルス応答に基づいて組織パラメータ(複数の場合もあり)の空間的分布を導出することであり、時間および空間を通じて推定される組織パラメータの包括的な空間的に密度の濃いマップが可能になる。
【0254】
再び
図8Dおよび
図24Aを参照すると、所与の物質特性曲線(本発明の実施形態に従って、測定または判定されたインパルス応答曲線に基づいて導出される物質成分の濃度または生理的パラメータを表す曲線など)の異なる部分が、それを通じてEMWが送信機から受信機へと伝播する組織の空間的に異なる部分と関連付けられることが諒解される。異なった解釈をすると、測定されたインパルス応答曲線と、そのようなインパルス応答曲線に基づいて計算された物質パラメータ曲線の両方において、組織のある領域の空間位置がコード化される。計算された物質パラメータ曲線の異なる複数の部分を分析することによって、そのようなパラメータは、組織にわたって空間的にマッピングされ(それゆえ、組織の所与の部分に位置特定され)得る。この場合、組織を特性化する求められているパラメータの値に関する決定は、動的に位置特定される空間ベースで行われる。たとえば、
図24Aの濃度曲線2421、2422〜2425の前部を考慮することによって、それぞれ対応する物質種の濃度が、EMWを最小量だけ遅延させた組織の領域において規定され、一方で、曲線2421、2422〜2425の尾部は、EMWを最も遅延させた組織の部分に関係する対応する濃度値の情報を含む。時間にわたって積分されたインパルス応答および対応する積分濃度曲線は、所与の物質パラメータの、組織にわたって空間的に平均された濃度と関連付けられる。
【0255】
図27を参照すると、インパルス応答を使用することによってサンプルの領域に空間的に位置特定されているサンプルの測定に関する本発明の一実施形態は、ステップ2700において開始され、ステップ2710において、時間導出シーケンスを生成するために、複数の波長λiの各々について、または対象の各時点において、インパルス応答(IR)(t)が測定される。時間導出信号の一例は、サンプルのシーケンス[S
T1,...,S
TN]から圧力波代理の輪郭を導出することであり、各S
Tは概念的に、時刻Txをベースとするインパルス応答の特定の測定値
【数46】
の積分
【数47】
から構成される。(結果もたらされる時間導出シーケンスは公称的に、
図25のグラフ2500によって表される形態に類似する)。
【0256】
次のステップは、対象の物質成分の特性を表すインパルス応答値(t)を求めるために、インパルス応答(t)と、サンプリングされたλ
i値とを組み合わせることである。
【0257】
そのように求められたインパルス応答(t)から、ステップ2730において、個々のサンプルの値を合計する2720ことによって、バルク特性を表す値が形成される。その後、導出された時間ベースのシーケンスが2740において形成される。たとえば、圧力波代理に対応するこのシーケンスは、組織断面にわたって平均された、局所ではない、バルク特性値2730に基づく。この結果は、たとえば、
図25のグラフ2500と同様であり得る。そのグラフ表現を例示として使用して、プロセスは、ステップ2750において、対象の時点(MVT
1-N)の特定に進む。この場合に、測定曲線の極大値の詳細が対象である場合、
図25の曲線2500上の点に対応し、2501、2502、2503、2504および2506としてラベリングされているデータ値が、時間導出特性値の変曲点として特定され得る対象の点である可能性が高い。他方、時間的な精度を達成することが目標である場合、これらの対象の点を取り囲むデータのローカル群が選択され得る。
【0258】
特定の時点が選択されると、最高の変動を呈するインパルス応答遅延時間値、または、言い換えると、対象の導出される時間ベース特性の領域の間の最高のコントラストを提供するものを求めるためにデータ分析が実行され得る2760。これは、ステップ2760において、MVT
1-Nにおいてサンプリングされたインパルス応答からより大きい相互変動のレジームを選択することとしても説明され得る。そのように得られた情報から、ステップ2770において、インパルス応答時間範囲にわたって重み付け関数W(t)を生成する。重み付け関数をインパルス応答(t)λ
iとともに使用して、ステップ2780において、正確な特性値が∫IR(t)*W(t)dtとして求められ得る。最後に、正確な導出された時間ベースの信号(正確な圧力波など)が、ステップ2790において、正確な特性値に基づいて求められ得る。これによって、重み付け関数を生成するプロセスが完了する。
【0259】
重み付け関数は、求められると、後続の測定のために再使用され得る。限定ではないが、サンプルの動きを含む多くのイベントが、重み付け関数を再計算する必要性を引き起こすことになる。
【0260】
本発明の実施態様は、上述したシステムの動作のステップを実行するために有形メモリに記憶されている命令によって制御されるプロセッサを利用することができる。メモリは、制御ソフトウェアまたは他の命令およびデータを記憶するのに適した、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリもしくは任意の他のメモリ、またはそれらの組合せであってもよい。代替的な実施形態において、開示されているシステムおよび方法は、コンピュータシステムとともに使用するためのコンピュータプログラム製品として実装されてもよい。そのような実施態様は、コンピュータ可読媒体(たとえば、ディスケット、CD−ROM、ROM、または固定ディスク)のような有形持続性媒体上に固定されるか、または、インターフェースデバイス(媒体を介してネットワークに接続されている通信アダプタなど)を介して、コンピュータシステム送信可能であるかのいずれかである、一連のコンピュータ命令を含む。本発明の方法の実行中に実行される命令のいくつかは、流れ図および/またはブロック図を参照して説明されている。フローチャートまたはブロック図の各ブロックのすべてもしくは一部分またはブロックの組合せの機能、動作、判断などは、コンピュータプログラム命令、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェアまたはそれらの組合せとして実装されてもよいことを、当業者は容易に諒解するはずである。加えて、本発明はプログラムコードのようなソフトウェアにおいて具現化され得るが、本発明を実施するのに必要な機能は、任意選択的にまたは代替的に、その一部または全体を、組合せ論理、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)もしくは他のハードウェア、またはハードウェア、ソフトウェアおよび/もしくはファームウェアコンポーネントの何らかの組合せのような、ファームウェアおよび/またはハードウェアコンポーネントを使用して具現化されてもよい。
【0261】
本発明は、上記で提示された実施形態例を通じて説明されているが、本明細書において開示されている本発明の概念から逸脱することなく、示されている実施形態に対する修正、およびその変更を行うことができることを当業者は理解しよう。さらに、開示されている態様、またはこれらの態様の部分は、上記にリストされていない方法で組み合わされてもよい。したがって、本発明は、開示されている実施形態(複数の場合もあり)に限定されているものと考えられるべきではない。