(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393761
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】ポリアミド成形組成物、それから得られる成形部品、およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20180910BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20180910BHJP
C08L 61/06 20060101ALI20180910BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20180910BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L67/00
C08L61/06
C08K7/14
B29C45/00
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-539328(P2016-539328)
(86)(22)【出願日】2013年12月17日
(65)【公表番号】特表2017-500405(P2017-500405A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】CN2013089630
(87)【国際公開番号】WO2015089720
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2016年11月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, チュン
(72)【発明者】
【氏名】イム, モクグン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヘヨン
【審査官】
三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−256564(JP,A)
【文献】
特開2011−174608(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0170985(US,A1)
【文献】
特開2012−051953(JP,A)
【文献】
特開平07−053862(JP,A)
【文献】
特開2013−155279(JP,A)
【文献】
特開平07−018186(JP,A)
【文献】
特開2005−350581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
a)30.0〜40.0重量%の量の少なくとも1つの半結晶性ポリアミドと;
b)8.0〜10.0重量%の量の少なくとも1つの熱可塑性ポリエステルと;
c)2.0〜2.5重量%の量の少なくとも1つのノボラック樹脂と;
d)40.0〜50.0重量%の量の充填材としての少なくとも1つのフラットガラス繊維と
を含む組成物。
【請求項2】
前記半結晶性ポリアミドが、120ml/gよりも低い粘度数を有する高流動性ポリアミドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記半結晶性ポリアミドが、105ml/gよりも低い粘度数を有する高流動性ポリアミドである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記半結晶性ポリアミドが、ポリアミド 6、ポリアミド 6,6、ポリアミド 6,10、ポリアミド 11、ポリアミド 12、ポリアミド 6,12、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記半結晶性ポリアミドが、ポリアミド 6,6である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリエステルが、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリエステルが、PETである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ノボラック樹脂が、1未満のアルデヒド対フェノールのモル比でフェノール化合物とアルデヒドとの縮合によって調製される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
e)非晶質ポリアミドをさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
f)着色剤、潤滑剤、光および/または熱安定剤、難燃剤、可塑剤、核形成剤、触媒、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
e)前記非晶質ポリアミドを、前記組成物の総重量に対して1.0〜4.0重量%の量で含む、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
e)前記非晶質ポリアミドを、前記組成物の総重量に対して1.0〜3.0重量%の量で含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物の射出成形によって製造される成形部品。
【請求項14】
電気および電子装置のハウジングまたはハウジング部品を製造するための請求項13に記載の成形部品の使用。
【請求項15】
携帯電話用のハウジングを製造するための請求項14に記載の成形部品の使用。
【請求項16】
請求項13に記載の成形部品を含む電気および電子装置のハウジングまたはハウジング部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの半結晶性ポリアミドと、少なくとも1つの熱可塑性ポリエステルと、少なくとも1つのノボラック樹脂と、充填材としての少なくとも1つのフラットガラス繊維とを含むポリアミド成形組成物に、それから得られる成形部品に、およびそれらの使用に関する。本発明による成形部品は有利には、電気および電子装置のハウジングまたはハウジング部品、好ましくは携帯電話用ハウジングを製造するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、非常に広範囲の用途向けのエンジニアリングプラスチックとして頻繁に使用されているポリマーの1つである。
【0003】
ポリアミド成形組成物は、かなりの商業的関心のあるものであり、一般に射出成形によって、電気および電子装置のハウジングまたはハウジング部品、例えば携帯電話用のハウジングを製造するために使用され得る。
【0004】
電気および電子装置のハウジングまたはハウジング部品などの、特定の用途向けには、軽量、高い剛性、低い反り、優れた表面品質、および射出成形中の最小ひずみなどの特性を示すことができるポリアミド組成物が必要とされる。
【0005】
一般に、ポリアミドは、吸湿性を有し、したがって射出成形プロセス中に過度の水分によって劣化することになろう。さらに、当分野では、ノボラック樹脂がポリアミド組成物中の含水率を低下させ、こうしてこのポリアミド組成物を使用して製造された物品の寸法安定性を増加させために使用できることはよく知られている。例えば、米国特許出願公開第2010/0227962 A1号明細書は、ポリアミド組成物のレオロジー挙動を高めるためのノボラック樹脂の使用、ノボラック樹脂を含むそのようなポリアミド組成物、およびまた、とりわけ射出成形によって、成型部品を製造するためのその使用を開示している。この関連で、しかし、ノボラック樹脂は、ポリアミド組成物の機械的特性、例えば、引張/曲げ弾性率、引張/曲げ応力、衝撃強度などを低下させるという欠点を有する。それ故、同時に有利な機械的特性を維持しながら含水率を低下させることができる、ノボラック樹脂を含むポリアミド組成物が、この技術分野で現在不足している。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、組成物であって、
a)少なくとも1つの半結晶性ポリアミドと;
b)少なくとも1つの熱可塑性ポリエステルと;
c)少なくとも1つのノボラック樹脂と;
d)充填材としての少なくとも1つのフラットガラス繊維と
を含む組成物に関する。
【0007】
本発明の本質的な特徴の1つは、充填材として標準ガラス繊維の代わりにフラットガラス繊維を使用することにある。含水率を低下させる優れた能力ならびに満足のいく機械的特性の両方が、ポリアミド組成物での、上に列挙された原料、すなわち、熱可塑性ポリエステルと、ノボラック樹脂と充填材としてのフラットガラス繊維との併用によって達成できることがまた予想外にも見いだされた。
【0008】
さらに、ある種の実施形態によれば、ノボラック樹脂に加えて、例えば、商品名Selar(登録商標)で市場に出されているものなどの、非晶質ポリアミドの使用が、ノボラック樹脂のみを含むポリアミド組成物と比べて機械的特性を悪化させることなしにポリアミド組成物のレオロジー挙動をさらに高めることを可能にすることが本発明者らによって意外にも見いだされた。
【0009】
本発明において、用語「ポリアミド」は、式(I)または式(II)[繰り返し単位(R
PA)]:
式(I):−NH−R
1−CO−
式(II):−NH−R
2−NH−CO−R
3−CO−
(式中:
− 出現ごとに互いに等しいかもしくは異なる、R
1は、1〜17個の炭素原子を有する二価炭化水素基であり;
− 出現ごとに互いに等しいかもしくは異なる、R
2は、1〜18個の炭素原子を有する二価炭化水素基であり;
− 出現ごとに互いに等しいかもしくは異なる、R
3は、1〜16個の炭素原子を有する二価炭化水素基である)
のいずれかに従う繰り返し単位を含むポリアミドを特に意味することを意図する。
【0010】
本発明組成物のポリアミドは好ましくは、脂肪族ポリアミドである、すなわち、R
1、R
2およびR
3は脂肪族基である。
【0011】
ポリアミドの繰り返し単位(R
PA)はとりわけ、(1)β−ラクタム、5−アミノ−ペンタン酸、ε−カプロラクタム、9−アミノノナン酸、10−アミノデカン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸の1つの重縮合反応および/または(2)シュウ酸(HOOC−COOH)、マロン酸(HOOC−CH
2−COOH)、コハク酸[HOOC−(CH
2)
2−COOH]、グルタル酸[HOOC−(CH
2)
3−COOH]、アジピン酸[HOOC−(CH
2)
4−COOH]、2,4,4−トリメチル−アジピン酸[HOOC−CH(CH
3)CH
2−C(CH
3)
2−CH
2−COOH]、ピメリン酸[HOOC−(CH
2)
5−COOH]、スベリン酸[HOOC−(CH
2)
6−COOH]、アゼライン酸[HOOC−(CH
2)
7−COOH]、セバシン酸[HOOC−(CH
2)
8−COOH]、ウンデカン二酸[HOOC−(CH
2)
9−COOH]、ドデカン二酸[HOOC−(CH
2)
10−COOH]、テトラデカン二酸[HOOC−(CH
2)
12−COOH]、オクダデカン二酸[HOOC−(CH
2)
16−COOH]の少なくとも1つと、1,4−ジアミノ−1,1−ジメチルブタン、1,4−ジアミノ−1−エチルブタン、1,4−ジアミノ−1,2−ジメチルブタン、1,4−ジアミノ−1,3−ジメチルブタン、1,4−ジアミノ−1,4−ジメチルブタン、1,4−ジアミノ−2,3−ジメチルブタン、1,2−ジアミノ−1−ブチルエタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノ−オクタン、1,6−ジアミノ−2,5−ジメチルヘキサン、1,6−ジアミノ−2,4−ジメチルヘキサン、1,6−ジアミノ−3,3−ジメチルヘキサン、1,6−ジアミノ−2,2−ジメチルヘキサン、1,9−ジアミノノナン、1,6−ジアミノ−2,2,4−トリメチルヘキサン、1,6−ジアミノ−2,4,4−トリメチルヘキサン、1,7−ジアミノ−2,3−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−2,4−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−2,5−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−2,2−ジメチルヘプタン、1,10−ジアミノデカン、1.8−ジアミノ−1,3−ジメチルオクタン、1,8−ジアミノ−1,4−ジメチルオクタン、1.8−ジアミノ−2,4−ジメチルオクタン、1,8−ジアミノ−3,4−ジメチルオクタン、1.8−ジアミノ−4,5−ジメチルオクタン、1.8−ジアミノ−2,2−ジメチルオクタン、1.8−ジアミノ−3,3−ジメチルオクタン、1,8−ジアミノ−4,4−ジメチルオクタン、1,6−ジアミノ−2,4−ジエチルヘキサン、1,9−ジアミノ−5−メチルノナン、1,11−ジアミノウンデカン、および1,12−ジアミノドデカンなどの、ジアミンの少なくとも1つとの重縮合反応によってとりわけ得ることができる。
【0012】
ポリアミドの例示的な繰り返し単位(R
PA)はとりわけ:
(i)−NH−(CH
2)
5−CO−、すなわち、ε−カプロラクタムの重縮合反応によってとりわけ得ることができる繰り返し単位;
(ii)−NH−(CH
2)
8−CO−、すなわち、9−アミノノナン酸の重縮合反応によってとりわけ得ることができる繰り返し単位;
(iii)−NH−(CH
2)
9−CO−、すなわち、10−アミノデカン酸の重縮合反応によってとりわけ得ることができる繰り返し単位;
(iv)−NH−(CH
2)
10−CO−、すなわち、11−アミノウンデカン酸の重縮合反応によってとりわけ得ることができる繰り返し単位;
(v)−NH−(CH
2)
11−CO−、すなわち、ラウロラクタムの重縮合反応によってとりわけ得ることができる繰り返し単位;
(vi)−NH−(CH
2)
6−NH−CO−(CH
2)
4−CO−、すなわち、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との重縮合反応によってとりわけ得ることができる繰り返し単位;
(vii)−NH−(CH
2)
6−NH−CO−(CH
2)
8−CO−、すなわち、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との重縮合反応によってとりわけ得ることができる繰り返し単位;
(viii)−NH−(CH
2)
6−NH−CO−(CH
2)
10−CO−、すなわち、ヘキサメチレンジアミンとドデカン酸との重縮合反応によってとりわけ得ることができる繰り返し単位;
(ix)−NH−(CH
2)
10−NH−CO−(CH
2)
10−CO−、すなわち、デカメチレンジアミンとドデカン酸との重縮合反応によってとりわけ得ることができる繰り返し単位;
(x)−NH−(CH
2)
6−NH−CO−(CH
2)
7−CO−、すなわち、ヘキサメチレンジアミンとアゼライン酸(別名ノナン二酸として知られる)との重縮合反応によってとりわけ得ることができる繰り返し単位;
(xi)−NH−(CH
2)
12−NH−CO−(CH
2)
10−CO−、すなわち、ドデカメチレンジアミンとドデカン酸との重縮合反応によってとりわけ得ることができる繰り返し単位;
(xii)−NH−(CH
2)
10−NH−CO−(CH
2)
8−CO−、すなわち、デカメチレンジアミンとセバシン酸との重縮合反応によってとりわけ得ることができる繰り返し単位;
(k)−NH−(CH
2)
4−NH−CO−(CH
2)
4−CO−、すなわち、1,4−ブタンジアミンとアジピン酸との重縮合反応によってとりわけ得ることができる繰り返し単位;
(kk)−NH−(CH
2)
4−NH−CO−(CH
2)
8−CO−、すなわち、1,4−ブタンジアミンとセバシン酸との重縮合反応によってとりわけ得ることができる繰り返し単位
である。
【0013】
好ましくは、ポリアミドは、上に詳述されたような、繰り返し単位(R
PA)から本質的になり、末端鎖、欠陥および他の不規則性が、ポリアミドの特性に影響を及ぼすことなく、ポリアミド鎖中に存在できることが理解される。
【0014】
ポリアミドの繰り返し単位(R
PA)は、すべて同じタイプのものであり得るか、2つ以上のタイプのものであり得る、すなわち、ポリアミド(PA)はホモポリアミドまたはコポリアミドであり得る。
【0015】
本発明において、用語「半結晶性ポリアミド」は、骨格中に結晶化可能な部分と非晶質部分とを含むポリアミドを特に意味することを意図する、すなわち、非晶質ポリマー材料は、ランダムにもつれた鎖を含有し、結晶性材料は、ポリマー鎖が規則配列で詰まっているドメインを含有し、ここで、これらの結晶性ドメインは、非晶質ポリマーマトリックスに組み込まれている。本発明の半結晶性ポリアミドは、150℃超の融点および5J/g超の融解熱を有する。融点は、公知の方法、例えば、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定され得る。
【0016】
本発明においては、ISO 307に従って測定される120ml/gよりも低い粘度数を有する、高流動性ポリアミドが好ましい。ISO 307方法は、25℃で90重量%のギ酸中の0.005g/ml溶液としてポリアミドの粘度数を測定する。より好ましくは、a)少なくとも1つの半結晶性ポリアミドの粘度数は、105ml/gよりも低い。
【0017】
それによって提供される組成物に有利に使用することができるポリアミドの具体的な例はとりわけ、
− ポリアミド 6、ポリアミド 6,6、ポリアミド 6,10、ポリアミド 11、ポリアミド 12、ポリアミド 6,12、およびそれらの任意の組み合わせ
である。
【0018】
本発明の組成物で使用されるための特に好ましいポリアミドは、ポリアミド 6,6、最も好ましくは高流動性ポリアミド 6,6である。
【0019】
本発明において、少なくとも1つの半結晶性ポリアミドの量は、組成物の総重量に対して25.0〜50.0重量%である。好ましくは、少なくとも1つの半結晶性ポリアミドの量は、組成物の総重量に対して30.0〜40.0重量%である。
【0020】
本発明において、用語「熱可塑性ポリエステル」は、それらの主鎖中にエステル官能基を含有するタイプの熱可塑性ポリマーを、特に、意味することを意図する。熱可塑性ポリエステルの例は、ジカルボン酸もしくはその誘導体、またはその混合物とジオールもしくはその誘導体、またはそれらの混合物との縮合によって得られるホモポリマーまたはコポリマーを含み得る。
【0021】
ジカルボン酸の例は、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−、1,5−、2,6−もしくは2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、ジフェニルエーテル4,4’−ジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;およびそれらの誘導体を含んでもよいが、それらに限定されない。ある種の実施形態においては、前記誘導体は、アルキル、アルコキシまたはハロゲン基で置換されていてもよい。
【0022】
さらに、ジオールの例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの2〜20個の炭素原子を有する脂肪族グリコール;ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの400〜6000の分子量を有する長鎖のグリコール;およびそれらの誘導体を含んでもよいが、それらに限定されない。ある種の実施形態においては、前記誘導体は、アルキル、アルコキシまたはハロゲン基で置換されていてもよい。
【0023】
本発明の組成物に使用されるのに好適な熱可塑性ポリエステルの例は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレートコポリマー、ポリブチレンテレフタレート/アジペートコポリマー、ポリブチレンテレフタレート/セバケートコポリマー、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートコポリマー、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレートコポリマー、ポリエチレンテレフタレート/アジペートコポリマー、ポリエチレンテレフタレート/ナトリウム5−スルホイソフタレートコポリマー、ポリブチレンテレフタレート/ナトリウム5−スルホイソフタレートコポリマー、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどを含むが、それらに限定されない。PBTは、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとの重縮合によって、PETはテレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合によって製造され得るなどである。
【0024】
上述の熱可塑性ポリエステルに加えて、本発明の組成物で使用されるのに好適な熱可塑性ポリエステルの例は、共重合性モノマー、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフェニル酢酸、ナフチルグリコール酸などのヒドロキシカルボン酸;およびプロピオラクトン、ブチロラクトン、カプロラクトン、バレロラクトンなどのラクトンと共重合させられたポリエステルを含むが、それらに限定されない。
【0025】
本発明の一実施形態においては、熱可塑性ポリエステルはPETである。
【0026】
本発明において、少なくとも1つの熱可塑性ポリエステルの量は、組成物の総重量に対して5.0〜12.0重量%である。好ましくは、少なくとも1つの熱可塑性ポリエステルの量は、組成物の総重量に対して8.0〜10.0重量%である。
【0027】
本発明の用語「ノボラック樹脂」は、特にポリヒドロキシフェノール型の化合物、例えば、1未満のアルデヒド対フェノールのモル比でのフェノール化合物とアルデヒドまたはケトンとの縮合の生成物を意味することを意図する。縮合反応は通常、酸で触媒され、フェノール樹脂として、フェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、イソオクチルフェノールなどのアルキルフェノール、ニトロフェノール、フェニルフェノール、レゾルシノールもしくはビフェノールA、または任意の他の置換フェノールが挙げられてもよい。最も頻繁に使用されるアルデヒドはホルムアルデヒドであるが、アセトアルデヒド、パラ−ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキサルまたはフルフラールなどの他のアルデヒドが同様に使用されてもよい。さらに、アセトン、メチルエチルケトンまたはアセトフェノンがケトンとして使用されてもよい。
【0028】
本発明の組成物は、1つもしくは複数のタイプのノボラック樹脂を含んでもよい。
【0029】
本発明の具体的な実施形態においては、ノボラック樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合の生成物である。
【0030】
ノボラック樹脂の包括的構造は、次の通り:
(式中、
Rは、水素原子または炭化水素ベースの基であってもよく、
nは、1〜3であり、
mは、2〜15、好ましくは2〜10である)
表されてもよい。
【0031】
有利に使用することができる、ノボラック樹脂は、500〜3000、好ましくは800〜2000の分子量を有する。
【0032】
名前を挙げられてもよい、市販のノボラック樹脂には、Durez(登録商標)、Vulkadur(登録商標)およびRhenosin(登録商標)が含まれる。
【0033】
本発明において、少なくとも1つのノボラック樹脂の量は、組成物の総重量に対して1.0〜4.0重量%である。好ましくは、少なくとも1つのノボラック樹脂の量は、組成物の総重量に対して2.0〜2.5重量%である。
【0034】
本発明による組成物は、d)充填材としての少なくとも1つのフラットガラス繊維を含む。
【0035】
本発明において、用語「フラットガラス繊維」は、非円形の横断面を有するガラス繊維を特に意味することを意図する。本発明の組成物で充填材として使用されるのに好適なフラットガラス繊維は、楕円形セクション、縦長円形セクション、長方形セクション、半円形が長方形の両短い側面に連結しているセクション、および繭セクションなどの任意の非円形横断面を有してもよい。
【0036】
フラットガラス繊維の前記非円形横断面のアスペクト比(=長軸/短軸)は、有利には1.5〜10、好ましくは2.0〜6.0である。
【0037】
本明細書で記載されるアスペクト比は、フラットガラス繊維の横断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、フラットガラス繊維の非円形セクションを長方形で囲むことによって得られる画像を解析することによって測定することができる。アスペクト比は、A(=R
aの長さ)/B(=R
bの長さ)(ここで、AおよびBは、観察画像におけるフラットガラス繊維に外接した長方形の長い側面R
aおよび短い側面R
bの長さである)を計算することによって得られる。
【0038】
本発明の組成物のフラットガラス繊維を構成するガラスの種類は、特に限定されず、Eガラス、Tガラス、NEガラス、Cガラス、Sガラス、S2ガラスおよびRガラスなどを挙げることができる。
【0039】
本発明において、充填材としての少なくとも1つのフラットガラス繊維の量は、組成物の総重量に対して15.0〜55.0重量%である。好ましくは、充填材としての少なくとも1つのフラットガラス繊維の量は、組成物の総重量に対して40.0〜50.0重量%である。
【0040】
さらに、本発明による組成物は、e)少なくとも1つの非晶質ポリアミドを任意選択的に含んでもよい。
【0041】
本発明において、用語「非晶質ポリアミド」は、5J/g未満、好ましくは0J/gの融解熱を有する、すなわち、検出できる融点をまったく持たない、かつ秀でた透明性とO
2およびCO
2、水、溶媒などのガスに対する良好なバリア性とを示すポリアミドを特に意味することを意図する。非晶質ポリアミドは、結晶化の速度を遅らせ、こうして秀でた外観をもたらす。1,6−ヘキサメチレンジアミンと、イソフタル酸とテレフタル酸との共重合によって製造され得る、ポリアミド 6I/6Tが、本発明の組成物に最も有利に使用される。Selar(登録商標)ポリアミド 6I/6Tが、本発明の組成物で使用することができる、好適な市販の非晶質ポリアミドとして挙げられてもよい。
【0042】
本発明において、少なくとも1つの非晶質ポリアミドの量は、組成物の総重量に対して0〜4.0重量%、好ましくは0〜3.0重量%であってもよい。本発明の組成物中に含有される場合、非晶質ポリアミドの重量による濃度の範囲は、組成物の総重量に対して1.0〜4.0重量%、好ましくは1.0〜3.0重量%であってもよい。
【0043】
さらに、本発明による組成物は、f)少なくとも1つの添加剤を任意選択的に含んでもよい。有利に使用され得る、添加剤の例としては、着色剤、潤滑剤、光および/または熱安定剤、難燃剤、可塑剤、核形成剤、触媒、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0044】
本発明において、少なくとも1つの添加剤の量は、組成物の総重量に対して0〜4.0重量%、好ましくは0〜2.0重量%であってもよい。本発明の組成物中に含有される場合、添加剤の重量による濃度の範囲は、組成物の総重量に対して1.0〜4.0重量%、好ましくは1.5〜2.0重量%であってもよい。
【0045】
本発明の好ましい実施形態においては、組成物は、
a)少なくとも1つの半結晶性ポリアミド 35.0〜50.0重量%と;
b)少なくとも1つの熱可塑性ポリエステル 9.0〜10.0重量%と;
c)少なくとも1つのノボラック樹脂 2.0〜3.0重量%と;
d)充填材としての少なくとも1つのフラットガラス繊維 37〜50.0重量%と;
e)少なくとも1つの非晶質ポリアミド 1.0〜3.0重量%と;
f)少なくとも1つの添加剤 0.5〜2.0重量%と
を含み、
ここで、a)〜f)の総量は、組成物の100重量%である。
【0046】
ポリアミド組成物の調製のためには、これらの添加剤およびフラットガラス繊維は、フラットガラス繊維および添加剤にとって好適な従来の手段によって、例えば重合中にまたは溶融混合物としてのポリアミドに添加されてもよい。ノボラック樹脂は好ましくは、メカニカルミキサー中で溶融物としての、または固体としてのポリアミドに添加され、次に固体混合物は溶融させられてもよい。
【0047】
本発明の別の態様は、本組成物の射出成形によって製造される成形部品に関する。
【0048】
本発明のさらなる態様は、電気および電子装置のハウジングまたはハウジング部品、好ましくは携帯電話用のハウジングを製造するための成形部品の使用に関する。
【0049】
本発明による組成物は、射出成形による、射出/ブロー成形による、押出によるまたは押出/ブロー成形による、好ましくは射出成形による例えば物品の製造のための、原材料として使用されてもよい。ある実施形態によれば、ポリアミド組成物は、例えば二軸スクリュー押出機で、ロッドの形態に押し出され、次に切り刻まれて顆粒になる。成形部品は次に、前記顆粒を溶融させ、溶融した組成物を射出成形装置へ供給することによって製造される。
【0050】
本発明の他の詳細または利点は、以下に示される実施例によってよりはっきりと明らかになるであろう。本発明は、本発明を実証することを意図するが、制限することを意図しない、以下の実施例によって明らかにされるであろう。
【実施例】
【0051】
実施例に使用される化学試薬は、次の通り特定される:
− ポリアミド 66:Solvay Polyamide&Intermediatesから入手可能なSTABAMID(登録商標)26FE1 K PA66;
− PET:Shanghai Hengyi Polyester Fiber Co.,Ltd.から入手可能なBright Fiber銘柄ポリエステルチップ;
− 標準ガラス繊維:日本電気硝子株式会社のECSO(登録商標)3T−289Hガラス繊維;
− フラットガラス繊維:Chongqing Polycomp International Corp.から入手可能な3:1のアスペクト比を有するECS301T;
− ノボラック:Sumitomo Bakelite Europe N.V.から入手可能なDurez(登録商標)28391−P;
− 非晶質ポリアミド:E.I.Dupontから商品名Selar(登録商標)で商業的に入手可能;
− 着色剤:RS Chemicalから入手可能なMB BLACK 7040N;
− 潤滑剤:Lion Chemtechから入手可能なEBS TRS2;および
− 熱安定剤:RS Chemicalから入手可能なMB HS30E。
【0052】
ポリアミド組成物は、i)プレミキシング後にガラス繊維を除く下の表1に示される成分をすべて、MEGAlabから入手可能な、W&P ZSK18の二軸スクリュー押出機のメインフィーダーによって、およびガラス繊維をサイドフィーダーによって供給すること、ii)成分をすべて押出機で混合すること、ならびにiii)その後混合物を押し出すことによって得られた。押出温度は、ノズルからホッパーまで280−280−280−270−270−242−200℃であり、処理量およびRPMはそれぞれ、10kg/時間および600であった。押出物を次に、室温にて水中で冷却した。
【0053】
調製された組成
物を、下の表1に詳述する。割合は、組成物中の重量百分率単位で示す。
【0054】
【0055】
これらの組成物の機械的特性を、順化前に、すなわち、「成形されたままの乾燥(d.a.m.)」条件下におよびまた順化後に測定した。結果、例えば、含水率、ならびに引張弾性率(TM)、破断点引張強度(TS)、および曲げ弾性率(FM)などの機械的特性を、下の表2および表3にまとめた。
【0056】
順化は、23℃の水中で23日間実施した。FMは、ISO 178に従って、TMおよび破断点TSは、ISO 527に従って測定した。
【0057】
【0058】
【0059】
表3の実験データから裏付けられるように、実施例3の含水率は、
比較例1および
比較例2のそれらと比べて著しく低かった。実施例3におけるようなノボラック樹脂とフラットガラス繊維との併用は、
比較例1および
比較例2と比べると順化後に機械的特性の高い保持をもたらすことがまた観察された。特に、実施例3については順化後の破断点TSは、たった約15.3%低下したのに対して、
比較例1および
比較例2については、それぞれ、約23.9%および約23.2%低下が観察された。
【0060】
さらに、フラットガラス繊維、ノボラックおよびSelar(登録商標)を含むが、PETを含むことさえなかった、組成物
比較例4は、順化後に比較的低い含水率および良好な機械的特性を示すことがまた分かった。