【実施例】
【0177】
(実施例1)黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖の調製。
この実施例には、様々なサイズ範囲の黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖の製造が記載されている。構造黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖反復単位は、
図1に示されている。本明細書に記載されている方法は、分子量が約20kDaから700kDaまでの範囲である血清型8莢膜多糖を製造するのに有効である。条件の適切な選択により、高分子量血清型8莢膜多糖を、分子量で50kDaから700kDaまでの範囲で単離および精製することができる。免疫原性組成物において使用するため、血清型8莢膜多糖を、分子量で70kDaから300kDaまでの範囲および多くの望ましい範囲で単離および精製することができる。生育特性および産生される莢膜の量に基づき、PFESA0005株またはPFESA0286株を、血清型8莢膜多糖を製造するために使用した。PFESA0005株またはPFESA0286株から単離された莢膜は、同一であることが分かった。
【0178】
血清型8莢膜多糖を製造するため、菌株を、主として炭素源(ラクトースかまたはスクロース)、窒素源としての加水分解された大豆粉、および微量金属からなる複合培地中で生育させた。菌株を、2〜5日にわたってバイオリアクター中で生育させた。
【0179】
高圧蒸気殺菌法の前に、試料を取り出し、培養液中のブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)のレベルをテストした。0.05%ポリソルベート80の存在下で、発酵におけるSEBの濃度は、15〜20ng/mlであった。以前の実験は、1時間にわたって培養液を高圧蒸気殺菌することが、TECRAキットについての検出限界未満である0.1ng/mlまでSEBのレベルを下げることを示した。
【0180】
透析濾過され、エタノール分画された多糖を、Q−Sepharose AECカラム上にロードし、上に記載されているNaClの直線グラジエントで溶離させた。画分を、血清型5多糖の存在についてはO−アセチルアッセイおよび二重免疫拡散テストならびにテイコ酸(TA)の存在についてはホスフェートアッセイにより分析した。血清型8多糖の存在は、画分35〜95において検出された(
図2A〜B)。
【0181】
テイコ酸による夾雑を軽減するため、画分35〜75をプールし、残留テイコ酸をメタ過ヨウ素酸ナトリウムで酸化し、diH
2Oに対する3K透析濾過によるその除去を可能にした。
【0182】
コンジュゲートの調製のために使用される血清型8莢膜多糖の精製は、細胞からの莢膜の遊離に影響を及ぼす高温および低pHに依存し多糖の分子量を下げる2つの異なる方法により行った。得られた分子量は、加水分解ステップの時間、温度およびpHに依存していた。
【0183】
血清型8莢膜多糖の特徴付けは、表1に明記されている技法を使用して行った。
【0184】
【表1】
【0185】
下に記載されている方法により製造される莢膜多糖は、タンパク質、核酸、ペプチドグリカンおよびテイコ酸夾雑物が低レベルの純粋な十分に特徴付けられた多糖をもたらす。
【0186】
第一の方法では、細胞からの莢膜多糖の遊離および分子量の低減に続いて、調製物を、酵素(例えば、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、リゾチームおよびプロテアーゼ)のカクテルで処理し、不純物を消化した。インキュベーション後、残留不純物を、エタノールの添加(最終濃度約25%)により沈殿させた。残留エタノールの除去後、莢膜多糖を含有する溶液を、陰イオン交換カラム(Q−Sepharose)上にロードし、直線塩グラジエントで溶離した。莢膜多糖を含有する画分をプールし、メタ過ヨウ素酸ナトリウムで処理した。この処理は、残留テイコ酸夾雑物の酸化的加水分解をもたらしたが、血清型8莢膜多糖には影響を及ぼさなかった。反応物を、エチレングリコールの添加によりクエンチした。材料を濃縮し、dH
2Oに対して透析濾過し、残留試薬および副成物を除去した。
【0187】
第二の方法を使用し、様々な細胞由来の不純物を消化するために酵素を使用することなく莢膜多糖を製造した。この方法では、細胞からの莢膜多糖の遊離および分子量の低減に続いて、加水分解された発酵ブロスを、精密濾過と、続く、限外濾過および透析濾過により清澄化した。溶液を、活性炭で処理し、不純物を除去した。炭素処理後、材料を、メタ過ヨウ素酸ナトリウムで処理して残留テイコ酸を酸化し、続いて、プロピレングリコールでクエンチした。材料を濃縮し、dH
2Oに対して透析濾過し、残留試薬および副成物を除去した。
【0188】
いずれかの方法を使用して製造された調製物は、タンパク質、核酸およびテイコ酸夾雑物が低レベルである純粋な莢膜多糖をもたらした。記載されている方法を使用し、加水分解の条件を変えることにより具体的範囲の望ましい高分子量多糖を製造することができる。本明細書に記載されている方法により得ることができる莢膜多糖の例は、下の表2に示されている。精製された血清型8莢膜多糖のバッチは、テイコ酸(TA)、ペプチドグリカンが無いことおよび低い残留タンパク質により示されるように高い純度を有していた。表2を参照されたい。より低い分子量の範囲は、20.4kDa〜65.1kDaに及び、精製された多糖は、高度にO−アセチル化されていた(約100%)。核酸夾雑のレベルは、低かった(0.12〜2.45%)。
【0189】
【表2】
【0190】
莢膜多糖の分子量選択:速度論的解析は、広範囲の分子量の莢膜多糖を本明細書に記載されている方法により生成することができることを示した。初めに、より大きな多糖が細菌細胞により産生され、続いて、望ましい分子量範囲が選択され、次いで、熱および加水分解ステップのpHおよび熱条件の操作により精製された。
【0191】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)発酵ブロスの熱処理は、発酵と莢膜多糖回収の間のプロセスステップである。このプロセスステップは、熱を使用して特定の期間にわたってpH調整されたブロスを処理する。低いpHにおける熱処理の目的は、細胞を死滅させ、エンテロトキシンを不活性化し、細胞に結合している多糖を遊離し、望ましいサイズに分子量を下げることであった。これらの目的の中で、分子量の低減は、このステップにおいて必要とされる処理時間という点で最も遅かった。したがって、他の目的は、考慮された処理時間内で必然的に達成された。
【0192】
熱処理:様々な分子量範囲の莢膜多糖を選択するためのpHおよび温度条件を決定した。15LのBiolafitte Fermenterをこれらの研究のために使用した。発酵ブロスを、蠕動ポンプにより発酵槽に移した。約200rpmの撹拌速度を使用し、ブロスpHを濃硫酸で調整した。次いで、ブロス温度を、設定レベルまで上げた。熱処理時間は、温度が設定ポイントに達すると直ぐに開始した。望ましい処理時間に達したら、ブロスを、室温まで冷却した。インプロセス試料を採取し、それぞれHPLCおよびSEC−MALLSシステムにより多糖濃度および分子量を決定した。分子量(MW)データを、速度論的解析で使用した。MWプロファイルを、pH3.5、4.0および5.0にて経時的に決定した。
図3Aを参照されたい。
【0193】
多糖の穏和な酸加水分解の速度論を、プロセスから得られた精製された血清型8莢膜多糖を使用して行った。精製された多糖溶液を、硫酸で実験にとって望ましいpHに調整した。溶液約1.5mLを、15mLの遠心分離管の各々に移した。管を、精密な温度制御システムを備えた油浴に入れた。管を、所定の時間間隔で取り出し、アイスバケット中でクエンチした。実験が終わったら、1M Tris緩衝液(pH7.5)のアリコートを試料に加え、pHをもとの約7に調整した。試料を、SEC−MALLSシステムにより分析した。MWデータを、速度論的解析で使用した。pH3.5におけるCP8のMWプロファイルに対する温度の効果を、経時的に決定した。
図3Bを参照されたい。
【0194】
結果
図3Aに示されているように、より低いpHは、多糖の分子量を下げるのにより有効であった。300kDaから600kDaの間の分子量は、15分から120分の間にわたって95℃にて5のpHを使用して生成させることができる。同様に、250kDaから450kDaの間の分子量は、15分から120分の間にわたって95℃にて4のpHを使用して生成させることができる。さらに、120kDaから450kDaの間の分子量は、15分から120分の間にわたって95℃にて3.5のpHを使用して生成させることができる。
【0195】
図3Bに示されているように、温度が高いほど、加水分解速度は速くなり、時間と共に製造される多糖の分子量の範囲は広がる。より低い温度の使用は、同じpHにて55℃対95℃で、より狭い範囲の多糖分子量を生じる。
【0196】
さらに、
図4は、穏和な酸(95℃にてpH3.5)加水分解についての精製されたCP8の分子量と処理時間との相関を示している。精製された多糖は、これまでに詳述された回収プロセスから得られる最終製品である。
図4にも示されているように、pH3.5における黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0005株の熱処理時間の増加は、より小分子量のCP8をもたらし、一方、pH3.5におけるより短い処理時間は、より高分子量のCP8をもたらした。血清型8莢膜多糖のサイズは、pH3.5における熱処理の時間の長さに応じて約80kDaから約220kDaまで範囲であった。低いpHにおける熱処理の時間と精製されたCP8のサイズの間の相関は、
図4に示されているように、特定の範囲の分子量を持つ精製された多糖を製造するのに必要とされる処理時間の推定を可能にした。
【0197】
上に示されているように、20kDaから500kDa超までの全範囲の分子量の血清型8莢膜多糖を製造、遊離および精製することができることに留意することは重要である。したがって、方法を使用し、表3に示されているように具体的範囲の望ましい高分子量莢膜多糖を製造することができる。ピーク分子量が87kDaから108kDaまでの範囲である比較的狭い範囲の分子量の製造された多糖は、本明細書に記載されている方法により得ることができる十分に特徴付けられた範囲の分子量に相当する。70kDaから300kDaまで、または70kDaから150kDaまでの範囲である特に有利な範囲の高分子量多糖は、莢膜多糖を担体分子またはタンパク質とコンジュゲートさせることにより免疫原性組成物を作製するのに有用である(表3を参照)。約80から120kDaまでの分子量範囲を有するCP8莢膜多糖を生成するのに使用される条件は、下記の通りである:300分にわたって95℃、pH3.5。
【0198】
【表3】
【0199】
(実施例2)血清型8莢膜多糖のCRM
197とのコンジュゲーション。
この実施例は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖−CRM
197コンジュゲートの製造において使用されるプロセスおよび特徴付けアッセイについて記載している。黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖をこの担体タンパク質とコンジュゲートさせるための異なるコンジュゲーション化学反応を開発した。例えば、PDPH(3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド)を使用するコンジュゲーションは、CPと担体タンパク質の間に共有チオエーテル結合をもたらす。代替方法として、CDI/CDT(1,1−カルボニルジイミダゾール/1,1−カルボイル−ジ−1,2,4−トリアゾール)を使用するコンジュゲーションは、CPと担体タンパク質の間に1炭素または0炭素リンカーをもたらす。
【0200】
PDPHコンジュゲーション化学反応による血清型8莢膜多糖のCRM
197とのコンジュゲーション。
PDPHコンジュゲーション化学反応は、多糖の活性化、チオール保護基の除去、活性化された多糖中間体の精製、CRM
197タンパク質の活性化および精製、ならびに活性化された構成成分のコンジュゲーションと、続く、精製を伴う多段階プロセスである。多糖へのリンカーを含有するチオール基およびCRM
197タンパク質担体へのハロアセチル基の導入後、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖を、チオエーテル結合を通じてタンパク質担体と結合させた。ブロモアセチル基は、アミノ基のブロモ酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルとの反応によりCRM
197タンパク質中に導入した。チオール化された多糖を生成するため、多糖中のN−アセチルマンノサミノウロン酸のカルボジイミドで活性化されたカルボキシレート基を、スルフヒドリル反応性ヒドラジドヘテロ二官能性リンカー3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド(PDPH)のヒドラジド基とカップリングさせた。PDPHチオール化多糖のチオールを、DTTによる還元により生成させ、Sephadex G25カラム上のSECにより精製し、活性化されたタンパク質のブロモアセチル基と反応させると、多糖と担体タンパク質の間の臭素置換により形成される共有チオエーテル結合が得られた。未反応のブロモアセチル基は、システアミン塩酸塩(2−アミノエタンチオール塩酸塩)で「キャップ」した。次いで、反応混合物を濃縮し、透析濾過した。残ったコンジュゲートしていないブロモアセチル基をシステアミン塩酸塩でキャップし、反応性ブロモアセチル基がコンジュゲーション後に残っていないことを保証した。これは、臭素の置換後にシステアミンのチオール末端とリシン残基上のアセチル基との間で共有結合を形成した。
【0201】
1.PDPHによる黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖のチオール化:多糖を、まず、PDPHによるチオール化により活性化した。多糖を、血清型8莢膜多糖については1:0.6:1.25の多糖:PDPH:EDAC重量比を維持しながら、新たに調製したPDPHストック溶液(DMSO中250mg/mL)、EDACストック溶液(diH
2O中90mg/mL)、およびMES緩衝液ストック溶液(0.5M、pH4.85)と混合し、最終溶液0.1M MES、ならびに2および4mg多糖/mLを作製した。この混合物を、室温にて1時間にわたってインキュベートし、次いで、4℃と8℃の間にて3500 MWCO透析装置を使用して4回、1000×体積の蒸留H
2Oに対して透析し、未反応のPDPHを除去した。PDPH結合型多糖は、0.2M DTTを使用して作製し、4℃と8℃の間にて3時間または一夜にわたって室温にてインキュベートした。過剰のDTTならびに反応の副成物を、Sephadex G25樹脂および移動相としての蒸留水を使用するSECにより活性化された糖から分離した。画分を、チオール基についてDTDPアッセイにより分析し、カラムの空隙体積近くで溶離されるチオール陽性画分をプールした。画分のプールを、PAHBAHおよびO−アセチルアッセイにより分析し、チオール基を含有する反復単位のモルパーセント(チオールのモル濃度/反復単位のモル濃度)として表される活性化度を決定した。活性化された多糖を凍結乾燥し、コンジュゲーションに必要とされるまで−25℃にて保存した。
【0202】
PDPHによる血清型8多糖チオール化の再現性の結果は、表4に示されている。血清型8多糖の活性化度は、10個の莢膜多糖反復単位当たり接続しているおおよそ1個のリンカー分子〜5個の反復単位当たり1個のリンカー分子に相当する12%〜16%の範囲であった。
【0203】
【表4】
【0204】
2.担体タンパク質活性化:別に、担体タンパク質を、ブロモアセチル化により活性化した。CRM
197を、10mMのリン酸緩衝された0.9%NaCl pH7(PBS)で5mg/mLまで希釈し、次いで、1Mストック溶液を使用して0.1M NaHCO
3 pH7.0を作製した。ブロモ酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(BAANS)を、20mg/mL DMSOのBAANSストック溶液を使用してCRM
197:BAANS比1:0.25(w:w)にて添加した。反応混合物を、1時間にわたって4と8℃の間にてインキュベートし、次いで、Sephadex G−25上のSECを使用して精製した。精製された活性化されたCRM
197を、ローリーアッセイにより分析してタンパク質濃度を決定し、次いで、5mg/mLまでPBSで希釈した。スクロースを、凍結防止剤として5%wt/volまで添加し、活性化されたタンパク質を凍結し、コンジュゲーションに必要とされるまで−25℃にて保存した。
【0205】
CRM
197のリシン残基のブロモアセチル化は、極めて一貫性があり、利用可能な39個のリシンから19〜25個のリシンの活性化をもたらした(表5を参照)。反応は、高収率の活性化されたタンパク質を生じた。
【0206】
【表5】
【0207】
3.カップリング反応:活性化された莢膜多糖および活性化された担体タンパク質を調製したら直ぐに、2つを、コンジュゲーション反応で混ぜ合わせた。凍結乾燥およびチオール化された多糖を、0.16MボレートpH8.95に溶かし、解凍したブロモアセチル化されたCRM
197および蒸留水と混合して最終溶液0.1Mボレート、CRM
197:多糖の1:1wt/wt比、および1mg/mL多糖を作製した。この混合物を、16から24時間の間にわたって室温にてインキュベートした。タンパク質上の未反応のブロモアセチル基を、0.1MボレートpH8.95に溶かしたシステアミンの135mg/mLストック溶液を使用して1:2(wt/wt)のCRM
197:システアミンの比にてシステアミン塩酸塩を添加することによりキャップし、室温にて4時間インキュベートした。莢膜多糖−CRM
197コンジュゲート(コンジュゲート)を、100Kポリエーテルスルホンウルトラフィルターを使用して0.9%NaClに対して50倍に透析濾過することにより精製した。
【0208】
PDPHによる血清型8莢膜多糖チオール化研究の再現性の結果は、多糖の活性化度が、10個の多糖反復単位当たり接続しているおおよそ1個のリンカー分子〜5個の反復単位当たり1個のリンカー分子に相当する12%〜16%の範囲であることを示した。
【0209】
CDI/CDTコンジュゲーション化学反応による血清型8莢膜多糖のCRM
197とのコンジュゲーション。
CDIおよびCDTは、多糖を、無水環境(DMSO)中で活性化し、利用可能なヒドロキシルとイミダゾールまたはトリアゾールカルバメート部分およびカルボン酸とアシルイミダゾールまたはアシルトリアゾール部分を形成する1段階コンジュゲーションプロセスを提供する。タンパク質担体の添加(DMSO中)は、リシンによるイミダゾールまたはトリアゾールの求核置換ならびにカルバメート結合(活性化されたヒドロキシルの場合)およびアミド結合(活性化されたカルボン酸の場合)の形成をもたらす。
【0210】
CDIとCDTコンジュゲーション化学反応は共に、サイズ排除クロマトグラフィーの画分における糖とタンパク質の存在、およびグリコアルデヒドでキャップされたまたはシステアミン塩酸塩でキャップされたコンジュゲートのアミノ酸分析により示される担体タンパク質と共有結合している血清型8莢膜多糖を生じた。
【0211】
多糖サイズが20kDa〜40kDaの範囲である莢膜血清型8についてのPDPHとCDI/CDTの両方の化学反応により調製されるコンジュゲートのいくつかのロットの調製の結果の要約は、下の表6に示されている。これらの2つのコンジュゲーション方法により生成されるコンジュゲートの遊離莢膜多糖、多糖タンパク質の比および収率に有意差はなかった。コンジュゲートしている血清型8莢膜多糖の抗原性は、コンジュゲートと天然多糖の間の同一性沈降素ラインにより示されるように、コンジュゲーションにより変わることはなかった。
【0212】
【表6】
【0213】
上に示されているように、本明細書に記載されている方法を使用し、具体的範囲の望ましい高分子量莢膜多糖を製造することができる。我々は、免疫原性組成物における使用のために濾過および精製することができる予め選択された範囲の高分子量血清型8莢膜多糖からコンジュゲートを調製することを目指した。表7は、血清型8莢膜多糖が約80kDaから120kDaまでの分子量の範囲であり、イミダゾールコンジュゲーション化学反応を利用した血清型8莢膜多糖コンジュゲートの分析を要約している。得られたコンジュゲートの分子量は、595kDaから1708kDaまでの範囲であった。CRM
197当たりのコンジュゲートしているリシン数は、最高で9個から最低で3個までの範囲であった。遊離莢膜多糖は、最高で6%から最低で2%までの範囲であった。
【0214】
【表7】
【0215】
両方のコンジュゲーション化学反応は、担体タンパク質と共有結合している血清型8莢膜多糖を生じる。これらの2つの方法により生成されるコンジュゲートの遊離莢膜多糖、血清型8莢膜多糖:タンパク質の比および収率に有意差はなかった。
【0216】
(実施例3)ワンポット対複合CDI/CDTプロセス。
上に記載されているように、本発明の免疫原性コンジュゲートを作製するための方法には、CDI(1,1−カルボニルジイミダゾール)、CDT(1,1−カルボイル−ジ−1,2,4−トリアゾール)またはPDPH(3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド)を伴うコンジュゲーション化学反応を使用する莢膜多糖の担体タンパク質との共有結合コンジュゲーションを伴う。CDI/CDTの使用は、莢膜多糖と担体タンパク質の間の1炭素または0炭素リンカーをもたらすが、PDPHの使用は、莢膜多糖と担体タンパク質の間の共有チオエーテル結合をもたらす。
【0217】
PDPHベースの方法は、多糖の活性化、多糖上のチオール保護基の除去、活性化された多糖中間体の精製、タンパク質単体の活性化および精製、ならびに活性化された構成成分のコンジュゲーションと、続く、精製を伴う多段階プロセスであった。この方法では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖を、0.1M MESなどの水溶液中でPDPHおよびカルボジイミドと反応させて、PDPH結合型多糖を生じさせた。PDPH結合型多糖を還元剤と反応させて、活性化された多糖を生じさせ、次いで、精製した。担体タンパク質を、水溶液中でブロモ酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応させて、活性化された担体タンパク質を生じさせ、次いで、精製した。次いで、精製された活性化された血清型8多糖を、精製された活性化された担体タンパク質と反応させて、血清型8多糖:担体タンパク質コンジュゲートを生じさせた。
【0218】
対照的に、CDIベースおよびCDTベースの方法は、莢膜多糖を、無水環境(すなわち、DMSO)中で活性化し、利用可能なヒドロキシルとイミダゾールまたはトリアゾールカルバメート部分およびカルボン酸とアシルイミダゾールまたはアシルトリアゾール部分を形成する1または2段階コンジュゲーションプロセスであった。タンパク質担体の添加(DMSO中)は、リシンによるイミダゾールまたはトリアゾールの求核置換ならびにカルバメート結合(活性化されたヒドロキシルの場合)およびアミド結合(活性化されたカルボン酸の場合)の形成をもたらす。したがって、2つのCDIベースのおよびCDTベースの方法:より複雑なプロセスおよびより簡単なワンポットプロセスを開発した。より複雑なプロセスでは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖を、イミダゾールまたはトリアゾールと混ぜ合わせ、凍結乾燥し、次いで、有機溶媒(DMSOなど)中でCDIまたはCDTと反応させて、活性化された血清型8多糖を生じさせた。活性化された血清型8多糖を精製し、次いで、有機溶媒中で担体タンパク質と反応させて、血清型8多糖−担体タンパク質コンジュゲートを生じさせた。ワンポットプロセスは、活性化された血清型8多糖を、担体タンパク質との反応に先立って精製しないことを除いては複合プロセスと同様であった。
【0219】
CDI/CDT複合プロセス。
多糖の活性化:血清型8多糖を、血清型8 1g当たり10gのトリアゾールと混合し、凍結乾燥した。得られたケーキを、2.0mg血清型8多糖/mLにてDMSOに溶かした。含水量を決定した。DMSO中で100mg/mLにて新たに調製したCDTのストック溶液を添加し、水と等しいモル量のCDTを達成した。代替方法として、添加されるCDTの量を調整し、より高いかより低い活性化度を達成した。これを、23℃にて30分保持した。
【0220】
活性化された血清型8多糖の精製:活性化された血清型8(ACP8)の溶液を、25体積の水の中に注ぎ、過剰のCDTを破壊した。これを、おおよそ1mg/cm
2にて10kDa PES膜上でその元の体積まで濃縮し、少なくとも10体積の水に対して透析濾過した。このステップは、4時間未満で終了した。透析濾過された材料を、元の血清型8多糖1g当たり10gのトリアゾールと混合し、凍結乾燥した。
【0221】
凍結乾燥されたCRMの調製:CRMを、少なくとも10体積の10kDa PES膜上で一定体積にて0.4%NaCl/5%スクロースに対して透析濾過した。タンパク質濃度を決定し、十分な透析濾過緩衝液を添加し、タンパク質濃度を5.0g/Lにすると、NaCl/CRMのw/w比=0.8が得られた。CRMを凍結乾燥した。
【0222】
コンジュゲーション:活性化された、透析濾過された血清型8多糖を、1mg/mLにてDMSOに溶かした。100mMにてボレート溶液を添加し、2%v/vを達成した。
【0223】
CRMを、2mg/mLにて再懸濁し、溶解が終了したら、ACP8溶液と混ぜ合わせた。これを、20時間にわたって23℃にて反応させた。
【0224】
コンジュゲート反応物を、24体積の5mMボレートpH9.0の中に注ぎ、1時間にわたって室温にて撹拌させた。次いで、0.5Mリン酸緩衝液、pH6.5でpH7.5に調整した。これを、5ミクロンフィルターに通して濾過し、約1mg/cm
2の負荷にて300kDa PES膜上で元の体積まで濃縮し、少なくとも10体積の水に対して透析濾過した。得られた濃縮物を、0.22ミクロンフィルターに通して濾過し、2℃〜8℃にて保存した。
【0225】
CDI/CDTワンポットプロセス。
CRM
197マトリックス交換:CRM
197を透析濾過し、おおよそ10mMホスフェート/80mM NaCl/15%スクロース、pH7のバルクマトリックスから5mMイミダゾール/0.72%NaCl/15mMオクチル−β−D−グルコシド、pH7へ交換した。交換は、コンジュゲーションに有害であり、コンジュゲーション中に運ばれる塩化ナトリウム含量を規定するホスフェートおよびスクロースの除去を可能にした。オクチル−β−D−グルコピラノシドは、無菌濾過後の粒子形成を防ぐために添加される。
【0226】
CRM
197のマトリックスを、おおよそ4mg/mLの保持液濃度にて10K MWCO PES膜を使用する10ダイアボリューム(diavolume)を通じての5mMイミダゾール/0.72%/15mMオクチル−β−D−グルコピラノシドpH7に対する平行流濾過により交換した。典型的な膜チャレンジは、2グラム/ft
2とし、マトリックス中の標的最終CRM
197濃度は、6mg/mLとした。CRM
197は、2℃〜8℃にて保存した。
【0227】
活性化/コンジュゲーション:黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖についての活性化/コンジュゲーションプロセスは、下記のステップからなった:1)CRM197のマトリックス交換;2)多糖の混ぜ合わせ;3)CRM
197および混ぜ合わせられた多糖のシェル凍結および凍結乾燥;4)凍結乾燥された多糖およびCRM
197の溶解;5)多糖の活性化;6)活性化された多糖のCRM
197とのコンジュゲーション;および7)コンジュゲートの精製(希釈、透析濾過、無菌濾過)。
【0228】
多糖を、多糖1g当たり10グラムの1,2,4−トリアゾール賦形剤と混ぜ合わせた。賦形剤を、多糖への動力として添加すると、周囲温度にて15分未満の混合の後に溶液が得られた。
【0229】
混ぜ合わせられた多糖およびCRM
197を、−75℃のエタノール浴を使用して別々にシェル凍結した。1Lのボトル当たりの体積は、おおよそ500mLとした。
【0230】
多糖溶解については、DMSOを、多糖の個々の凍結乾燥ボトルに添加すると懸濁液が得られ、次いで、加熱のための活性化/コンジュゲーション反応容器に移した。DMSOを添加して2g/L濃度を得た。懸濁液が、混合しながらおおよそ45℃に達すると、澄明な溶液が得られた。次いで、溶液を、23℃±2℃まで冷却した。
【0231】
CRM
197溶解については、DMSOを、CRM
197を含有する個々の凍結乾燥ボトルに添加すると懸濁液が得られ、次いで、混合のための第二の容器に移した。DMSOを添加して2g/L濃度を得た。澄明な溶液は、典型的には、15分未満で得られた。
【0232】
多糖/DMSO溶液を、カールフィッシャー分析のためにサンプリングし、水分含量を決定した。CDTを、DMSO中で100mg/mL溶液として調製し、決定された水分含量に基づいて添加した。CDT溶液の連続添加は、混合しながら23℃±2℃にて約5分かけて行った。反応を、23℃±2℃にて最低限30分にわたって進行させた。反応物をサンプリングし、活性化レベルを決定し(UV220/205nm)、次いで、100mMホウ酸ナトリウム、pH9を添加すると、1.5%水溶液が得られた。次いで、反応溶液を、23℃±2℃にて最低限30分にわたって撹拌した。
【0233】
活性化された多糖のCRM
197とのコンジュゲーションについては、DMSOを、0.8mg/mL反応濃度を標的にして添加した。次いで、DMSOに溶かされたCRM
197を、混合しながら、活性化された多糖溶液に添加した。反応物を、23℃±2℃にて最低限4時間にわたって撹拌した。
【0234】
反応溶液を、混合しながら5mM四ホウ酸ナトリウム、pH9の中にそれを添加することにより10×希釈し、残留活性化基を加水分解した。希釈された溶液を、5μmフィルターに通し、2g/Lの標的保持液濃度まで濃縮した。平行流濾過は、5mMスクシネート、pH7による20ダイアボリュームを通じて300K再生セルロース膜を使用して行った。典型的な膜チャレンジは、1グラム/ft
2とした。精製されたコンジュゲートを、0.22ミクロンフィルターに通し、2℃〜8℃にて保存した。
【0235】
(実施例4)ワンポットおよび複合コンジュゲーションプロセスを使用する血清型8莢膜多糖のコンジュゲーション。
この実施例は、予め選択された範囲の分子量の莢膜多糖を、ワンポットプロセスかまたは複合プロセスにおけるコンジュゲーションのために使用することができることを示している。初めに、より大きな多糖が細菌細胞により産生され、得られる精製された分子量範囲は、実施例1における加水分解プロセスのpHおよび熱により制御することができる(表3に示されている通り)。
【0236】
この実施例では、血清型8莢膜多糖が、約80kDaから約120kDaまでの分子量範囲である8個のバッチを選択し、コンジュゲーションは、血清型8莢膜多糖のための1,1−カルボニル−ジ−(1,2,4−トリアゾール)による活性化を使用して行った。表8を参照されたい。得られたコンジュゲートの分子量は、595kDaから1708kDaまでの範囲であった。CRM当たりのコンジュゲートしているリシン数は、最高で13個から最低で3個までの範囲であった。遊離糖は、最高で11%から最低で1%までの範囲であった。
【0237】
【表8】
【0238】
(実施例5)マウス菌血症モデルにおけるコンジュゲートしている天然および塩基処理血清型8莢膜多糖の評価。
機能的抗体応答の誘導についてのコンジュゲーション前の天然血清型8莢膜多糖上に存在するO−アセチル基の重要性を、莢膜多糖コンジュゲートについて評価した。血清型8莢膜多糖を、穏和な塩基性条件下で脱O−アセチル化すると、NMRとイオンクロマトグラフィー(IC)は共に、血清型8莢膜多糖脱O−Ac−CRM中にO−アセチル化がないことを裏付けた。CP8脱O−Ac−CRMコンジュゲートを、実施例2に記載されているPDPH化学反応による脱O−Ac CP8多糖のCRMとのコンジュゲーションにより調製した。
【0239】
血清型8莢膜多糖コンジュゲートは、予想外に、IC方法により測定できるアセチル基を示さなかった。このことは、コンジュゲーション中に血清型8莢膜多糖中のアセチル基の除去または改変を引き起こす他の黄色ブドウ球菌(S.aureus)莢膜多糖と比較して構造の差、O−アセチル化の部位に起因すると思われる。
【0240】
マウス菌血症モデルを使用し、CRM
197とコンジュゲートしている天然対塩基処理血清型8莢膜多糖の有効性を評価した。雌性BALB/cマウスの群(15/群)に、1mcg血清型8莢膜多糖脱O−Ac−CRMまたは1μg血清型8莢膜多糖O−Ac−CRMを0、3および6週目にワクチン接種した。ワクチンは、22mcg AlPO
4と共に製剤化した。動物に、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0003をチャレンジし、細菌を、3時間後に血液から数え上げた。データは、スチューデントt検定により決定されるように未処置の天然血清型8莢膜多糖で免疫化された動物の血液から回収された細菌cfuに統計的に有意な(p=0.0362)減少があることを示した(表9)。塩基処理血清型8莢膜多糖コンジュゲートで免疫化された動物では、血液から回収された細菌cfuは、生理食塩水対照群と同様であった。
【0241】
【表9】
【0242】
(実施例6)マウス菌血症モデルにおけるコンジュゲートしている天然および塩基処理血清型8莢膜多糖の評価。
血清型8莢膜多糖コンジュゲートを、腎盂腎炎モデルにおいてマウスを防御するそれらの能力について評価した。i.p.黄色ブドウ球菌(S.aureus)チャレンジを受けたマウスの血液における細菌数は、PBSで免疫化された対照と比較して有意に減少した。
【0243】
2つの研究を行い、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0268(8型)によるチャレンジ後の、前に記載されているマウス菌血症モデルにおけるCP8−CRM
197コンジュゲートの有効性を評価した。第一の研究(
図5)は、菌血症の有意な減少を示した(p=0.0308)。研究のため、6〜8週齢Swiss Websterマウスの群(n=30)を、0、2および4週目に両方とも100μg AlPO
4と共に製剤化された1μg血清型8莢膜多糖−CRM
197および生理食塩水による皮下注射により能動的に免疫化し、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0268(8型)を静脈内経路により6週目にチャレンジした。事前のチャレンジ実験を行い、3回のワクチン接種後に達するマウスの年齢におけるチャレンジ株の投与量を最適化した。生存研究の統計学的評価は、カプラン−マイヤー解析により行った。
【0244】
(実施例7)天然および化学的に改変された血清型8莢膜多糖コンジュゲートで免疫化されたマウスからの血清のオプソニン活性。
ワクチン接種研究からの血清型8莢膜多糖力価が高い選択されたマウス血清(n=5)を、PFESA0005株を使用してオプソニン活性について比較した。OPA結果(表10)は、天然の血清型8莢膜多糖のコンジュゲーションにより調製されたコンジュゲートのみが、マウスにおいてオプソニン抗体を誘発したことを示している。脱OAc血清型8莢膜多糖コンジュゲートは、マウスにおいて免疫原性であったが、誘発された抗体は、このアッセイにおいてオプソニン性でなかったことは注目に値する。OPA力価は、40%致死が観察された希釈度の逆数として報告される。
【0245】
【表10】
【0246】
(実施例8)血清型8コンジュゲート抗血清による黄色ブドウ球菌(S.aureus)株の致死は、天然血清型8莢膜多糖の添加により阻害されることがある。
致死の特異性を確認するため、オプソニン化貪食性アッセイを、本質的に上に記載されているように、天然血清型8莢膜多糖または関係のない肺炎球菌多糖(Pn14poly)の存在下で行った。
【0247】
結果(表11)は、反応混合物中の天然血清型8莢膜多糖の存在が、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0286(8型)のオプソニン化貪食性致死を阻害することを示した。これらの結果は、免疫血清によるオプソニン化貪食性致死が、莢膜特異的抗体により仲介されることを裏付けている。
【0248】
【表11】
【0249】
要約
すべてのコンジュゲーション化学反応は、担体タンパク質CRM
197と共有結合している血清型8莢膜多糖を生じた。これらの方法により生成されるコンジュゲートの遊離糖、血清型8莢膜多糖:タンパク質の比および収率に有意差はなかった。
【0250】
(実施例9)黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖の調製。
この実施例には、様々なサイズ範囲の黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖の製造が記載されている。黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖反復単位の構造は、
図6に示されている。本明細書に記載されている方法は、分子量が約20kDaから800kDaの範囲である血清型5莢膜多糖を製造するのに有効である。条件の適切な選択により、高分子量血清型5莢膜多糖を、分子量で50kDaから800kDaまでの範囲で単離および精製することができる。免疫原性組成物において使用するため、血清型5莢膜多糖を、分子量で70kDaから300kDaまで、70kDaから150kDaまでの範囲および多くの望ましい範囲で単離および精製することができる。生育特性および産生される莢膜の量に基づき、PFESA0266株を、血清型5莢膜多糖製造のために選択した。
【0251】
血清型5莢膜多糖を製造するため、PFESA0266株を、主として炭素源(ラクトースかまたはスクロース)、窒素源としての加水分解された大豆粉、および微量金属からなる複合培地中で生育させた。菌株を、2〜5日にわたってバイオリアクター中で生育させた。
【0252】
PFESA0266株の発酵は、上に詳述されているように行った。収集時に、培養液のOD
600は、7.38であった。培養液を、1時間にわたって高圧蒸気殺菌し、冷却した後、培養液を、上に記載されているように処理し、上清材料から細胞を分離した。濾過および濃縮された上清および細胞の各々おおよそ1Lを回収した。
【0253】
高圧蒸気殺菌法の前に、試料を取り出し、培養液中のブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)のレベルをテストした。0.05%ポリソルベート80の存在下で、発酵におけるSEBの濃度は、15〜20ng/mlであった。以前の実験は、1時間にわたって培養液を高圧蒸気殺菌することが、TECRAキットについての検出限界未満である0.1ng/mlまでSEBのレベルを下げることを示した。
【0254】
透析濾過され、エタノール分画された多糖を、Q−Sepharose AECカラム上にロードし、上に記載されているNaClの直線グラジエントで溶離させた。画分を、血清型5多糖の存在についてはO−アセチルアッセイおよび二重免疫拡散テストならびにテイコ酸の存在についてはホスフェートアッセイにより分析した。血清型5多糖の存在は、画分60〜105において検出された(
図7A〜B)。テイコ酸による夾雑を軽減するため、画分60〜85をプールし、残留テイコ酸をメタ過ヨウ素酸ナトリウムで酸化し、diH
2Oに対する3K透析濾過によるその除去を可能にした。
【0255】
コンジュゲートの調製のために使用される血清型5莢膜多糖の精製は、細胞からの莢膜の遊離に影響を及ぼす高温および低pHに依存し多糖の分子量を下げる2つの異なる方法により行った。得られた分子量は、加水分解ステップの時間、温度およびpHに依存していた。
【0256】
血清型5莢膜多糖の特徴付けは、表1、前掲書に明記されている技法を使用して行った。
【0257】
下に記載されている方法により製造される莢膜多糖は、タンパク質、核酸、ペプチドグリカンおよびテイコ酸夾雑物が低レベルの純粋な多糖をもたらす。
【0258】
第一の方法では、細胞からの莢膜多糖の遊離および分子量の低減に続いて、調製物を、酵素(例えば、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、リゾチームおよびプロテアーゼ)のカクテルで処理し、不純物を消化した。インキュベーション後、残留不純物を、エタノールの添加(最終濃度約25%)により沈殿させた。残留エタノールの除去後、莢膜多糖を含有する溶液を、陰イオン交換カラム(Q−Sepharose)上にロードし、直線塩グラジエントで溶離した。莢膜多糖を含有する画分をプールし、メタ過ヨウ素酸ナトリウムで処理した。この処理は、残留テイコ酸夾雑物の酸化的加水分解をもたらしたが、血清型5莢膜多糖には影響を及ぼさなかった。反応物を、エチレングリコールの添加によりクエンチした。材料を濃縮し、蒸留水(dH
2O)に対して透析濾過し、残留試薬および副成物を除去した。
【0259】
第二の方法を使用し、様々な細胞由来の不純物を消化するために酵素を使用することなく莢膜多糖を製造した。この方法では、細胞からの莢膜多糖の遊離および分子量の低減に続いて、加水分解された発酵ブロスを、精密濾過と、続く、限外濾過および透析濾過により清澄化した。溶液を、活性炭で処理し、不純物を除去した。炭素処理後、材料を、メタ過ヨウ素酸ナトリウムで処理して残留テイコ酸を酸化し、続いて、プロピレングリコールでクエンチした。材料を濃縮し、dH
2Oに対して透析濾過し、残留試薬および副成物を除去した。
【0260】
いずれかの方法を使用して製造された調製物は、タンパク質、核酸およびテイコ酸夾雑物が低レベルである純粋な莢膜多糖をもたらした。記載されている方法を使用し、加水分解の条件を操作することにより具体的範囲の望ましい高分子量多糖を製造することができる。
【0261】
本明細書に記載されている方法により得ることができる莢膜多糖の例は、下の表12に示されている。精製された血清型5莢膜多糖のバッチは、テイコ酸(TA)、ペプチドグリカンが無いことおよび低い残留タンパク質により示されるように高い純度を有していた。表12および13を参照されたい。分子量の範囲は、132.7kDa〜800kDaに及び、精製された多糖は、90%〜100%の範囲で高度にO−アセチル化されており、100%N−アセチル化されていた。血清型5莢膜多糖精製の収率は、39%〜63%であり、精製された血清型5莢膜多糖のサイズは、35kDaから65kDaまで変化した(表12を参照)。テイコ酸(TA)夾雑のレベルは、許容可能であり、残留タンパク質および核酸のレベルも、許容できる範囲であった。血清型5多糖のNMRスペクトルは、文献に報告されているものと一致した。
【0262】
【表12】
【0263】
【表13】
【0264】
莢膜多糖の分子量選択:速度論的解析は、広範囲の分子量の莢膜多糖を本明細書に記載されている方法により生成することができることを示した。初めに、より大きな多糖が細菌細胞により産生され、続いて、望ましい分子量範囲が選択され、次いで、熱および加水分解ステップのpHおよび熱条件の操作により精製された。
【0265】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)発酵ブロスの熱処理は、発酵と莢膜多糖回収の間のプロセスステップである。このプロセスステップは、熱を使用して特定の期間にわたってpH調整されたブロスを処理する。低いpHにおける熱処理の目的は、細胞を致死させ、エンテロトキシンを不活性化し、細胞に結合している多糖を遊離し、望ましいサイズに分子量を下げることであった。これらの目的の中で、分子量の低減は、このステップにおいて必要とされる処理時間という点で最も遅かった。したがって、他の目的は、考慮された処理時間内で必然的に達成された。
【0266】
熱処理:様々な分子量範囲の莢膜多糖を選択するためのpHおよび温度条件を決定した。15LのBiolafitte Fermenterをこれらの研究のために使用した。発酵ブロスを、蠕動ポンプにより発酵槽に移した。約200rpmの撹拌速度を使用し、ブロスpHを濃硫酸で調整した。次いで、ブロス温度を、設定レベルまで上げた。熱処理時間は、温度が設定ポイントに達すると直ぐに開始した。望ましい処理時間に達したら、ブロスを、室温まで冷却した。インプロセス試料を採取し、それぞれHPLCおよびSEC−MALLSシステムにより多糖濃度および分子量を決定した。分子量(MW)データを、速度論的解析で使用した。MWプロファイルを、pH3.5、4.0および5.0にて経時的に決定した。
図8Aを参照されたい。
【0267】
多糖の穏和な酸加水分解の速度論を、プロセスから得られた精製された血清型8莢膜多糖を使用して行った。精製された多糖溶液を、硫酸で実験にとって望ましいpHに調整した。溶液約1.5mLを、15mLの遠心分離管の各々に移した。管を、精密な温度制御システムを備えた油浴に入れた。管を、所定の時間間隔で取り出し、アイスバケット中でクエンチした。実験が終わったら、1M Tris緩衝液(pH7.5)のアリコートを試料に加え、pHをもとの約7に調整した。試料を、SEC−MALLSシステムにより分析した。MWデータを、速度論的解析で使用した。pH4.5におけるCP5のMWプロファイルに対する温度の効果を、経時的に決定した。
図8Bを参照されたい。
【0268】
結果
図8Aに示されているように、より低いpHは、多糖の分子量を下げるのにより有効であった。この実施例では、約300kDaから約600kDaの間の分子量の範囲は、15分から120分の間にわたって95℃にて5のpHを使用して生成することができる。
図8Aを参照されたい。同様に、15分から120分の間にわたって95℃にて4.5のpHを選択すると、200kDaから400kDaの間の多糖分子量範囲を得ることができる。さらに、15分から120分の間にわたって95℃にて4.0のpHを選択すると、120kDaから300kDaの間の多糖分子量範囲を得ることができる。
【0269】
図8Bに示されているように、温度が高いほど、加水分解速度は速くなり、時間と共に製造される多糖の分子量は広がる。別の方法で表すと、より低い温度の使用は、同じpHにて55℃対95℃で、より狭い範囲の多糖分子量を生じる。
【0270】
さらに、
図4は、穏和な酸(95℃にてpH4.5)加水分解についての精製された血清型5莢膜多糖の分子量と処理時間との相関を示している。精製された多糖は、これまでに詳述された回収プロセスから得られる最終製品である。
図4にも示されているように、pH4.5における黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266株の熱処理時間の増加は、より小分子量の血清型8莢膜多糖をもたらし、一方、pH4.5におけるより短い熱処理時間は、より高分子量の血清型5莢膜多糖をもたらした。血清型5莢膜多糖のサイズは、pH4.5における熱処理の時間の長さに応じて約90kDaから約220kDaまでの範囲であった。低いpHにおける熱処理の時間と精製された血清型5莢膜多糖のサイズの間の相関は、
図4に示されているように、特定の範囲の分子量を持つ精製された多糖を製造するのに必要とされる処理時間の推定を可能にする。
【0271】
上に示されているように、20kDaから500kDa超までの全範囲の分子量の血清型5莢膜多糖を製造、遊離および精製することができる。記載されている方法を使用し、表14に示されているように具体的範囲の望ましい高分子量莢膜多糖を製造することができる。ピーク分子量が63kDaから142kDaまでの範囲である比較的狭い範囲の分子量の製造された多糖は、本明細書に記載されている方法により得ることができる十分に特徴付けられた範囲の分子量に相当する。70kDaから300kDaまで、または70kDaから150kDaまでの範囲である特に有利な範囲の高分子量多糖は、莢膜多糖を担体分子またはタンパク質とコンジュゲートさせることにより免疫原性組成物を作製するのに有用である。約100から140kDaまでの分子量範囲を有するCP5莢膜多糖を生成するのに使用される条件は、下記の通りである:135分にわたって95℃、pH4.5。しかしながら、pH、温度、および時間の異なる組合せも、分子量範囲が約100〜140kDaのCP5分子を生成するであろう。
【0272】
【表14】
【0273】
(実施例10)血清型5莢膜多糖のCRM
197とのコンジュゲーション。
この実施例は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖−CRM
197コンジュゲートの製造において使用されるプロセスおよび特徴付けアッセイについて記載している。黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖をこの担体タンパク質とコンジュゲートさせるための異なるコンジュゲーション化学反応を開発した。例えば、PDPH(3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド)を使用するコンジュゲーションは、CPと担体タンパク質の間に共有チオエーテル結合をもたらし;一方、CDT(1,1−カルボイル−ジ−1,2,4−トリアゾール)を使用するコンジュゲーションは、莢膜多糖と担体タンパク質の間に1炭素または0炭素リンカーをもたらす。
【0274】
PDPHコンジュゲーション化学反応による血清型5莢膜多糖のCRM
197とのコンジュゲーション。
PDPHコンジュゲーション化学反応は、多糖の活性化、チオール保護基の除去、活性化された多糖中間体の精製、CRM
197タンパク質の活性化および精製、ならびに活性化された構成成分のコンジュゲーションと、続く、精製を伴う多段階プロセスである。多糖へのリンカーを含有するチオール基およびCRM
197タンパク質担体へのハロアセチル基の導入後、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖を、チオエーテル結合を通じてタンパク質担体と結合させた。ブロモアセチル基は、アミノ基のブロモ酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルとの反応によりCRM
197タンパク質中に導入した。チオール化された多糖を生成するため、多糖中のN−アセチルマンノサミノウロン酸のカルボジイミドで活性化されたカルボキシレート基を、スルフヒドリル反応性ヒドラジドヘテロ二官能性リンカー3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド(PDPH)のヒドラジド基とカップリングさせた。PDPHチオール化多糖のチオールを、DTTによる還元により生成させ、Sephadex G25カラム上のSECにより精製し、活性化されたタンパク質のブロモアセチル基と反応させると、多糖と担体タンパク質の間の臭素置換により形成される共有チオエーテル結合が得られた。未反応のブロモアセチル基は、システアミン塩酸塩(2−アミノエタンチオール塩酸塩)で「キャップ」した。次いで、反応混合物を濃縮し、透析濾過した。残ったコンジュゲートされていないブロモアセチル基をシステアミン塩酸塩でキャップし、反応性ブロモアセチル基がコンジュゲーション後に残っていないことを保証した。これは、臭素の置換後にシステアミンのチオール末端とリシン残基上のアセチル基との間に共有結合を形成した。
【0275】
1.PDPHによる黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖のチオール化:多糖を、まず、PDPHによるチオール化により活性化した。多糖を、血清型5莢膜多糖については1:5:3の莢膜多糖:PDPH:EDAC重量比を維持しながら、新たに調製したPDPHストック溶液(DMSO中250mg/mL)、EDACストック溶液(diH
2O中90mg/mL)、およびMES緩衝液ストック溶液(0.5M、pH4.85)と混合し、最終溶液0.1M MES、ならびに2mgおよび4mg多糖/mLを作製した。この混合物を、室温にて1時間にわたってインキュベートし、次いで、4℃と8℃の間にて3500 MWCO透析装置を使用して4回、1000×体積の蒸留H
2Oに対して透析し、未反応のPDPHを除去した。PDPH結合型多糖は、0.2M DTTを使用して作製し、4℃と8℃の間にて3時間または一夜にわたって室温にてインキュベートした。過剰のDTTならびに反応の副成物を、Sephadex G25樹脂および移動相としての蒸留水を使用するSECにより活性化された糖から分離した。画分を、チオール基についてDTDPアッセイにより分析し、カラムの空隙体積近くで溶離されるチオール陽性画分をプールした。画分のプールを、PAHBAHおよびO−アセチルアッセイにより分析し、チオール基を含有する反復単位のモルパーセント(チオールのモル濃度/反復単位のモル濃度)として表される活性化度を決定した。活性化された多糖を凍結乾燥し、コンジュゲーションに必要とされるまで−25℃にて保存した。
【0276】
PDPHによる血清型5多糖チオール化の再現性の結果は、表15に示されている。血清型5多糖の活性化度は、10個の莢膜多糖反復単位当たり接続しているおおよそ1個のリンカー分子〜5個の反復単位当たり1個のリンカー分子に相当する11%〜19%の範囲であった。
【0277】
【表15】
【0278】
2.担体タンパク質活性化:別に、担体タンパク質を、ブロモアセチル化により活性化した。CRM
197を、10mMのリン酸緩衝された0.9%NaCl pH7(PBS)で5mg/mLまで希釈し、次いで、1Mストック溶液を使用して0.1M NaHCO
3 pH7.0を作製した。ブロモ酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(BAANS)を、20mg/mL DMSOのBAANSストック溶液を使用してCRM
197:BAANS比1:0.25(w:w)にて添加した。この反応混合物を、1時間にわたって4℃と8℃の間にてインキュベートし、次いで、Sephadex G−25上のSECを使用して精製した。精製された活性化されたCRM
197を、ローリーアッセイにより分析してタンパク質濃度を決定し、次いで、5mg/mLまでPBSで希釈した。スクロースを、凍結防止剤として5%wt/volまで添加し、活性化されたタンパク質を凍結し、コンジュゲーションに必要とされるまで−25℃にて保存した。
【0279】
CRM
197のリシン残基のブロモアセチル化は、極めて一貫性があり、利用可能な39個のリシンから19〜25個のリシンの活性化をもたらした(表16を参照)。反応は、高収率の活性化されたタンパク質を生じた。
【0280】
【表16】
【0281】
3.カップリング反応:活性化された莢膜多糖および活性化された担体タンパク質を調製したら直ぐに、2つを、コンジュゲーション反応で混ぜ合わせた。凍結乾燥およびチオール化された多糖を、0.16MボレートpH8.95に溶かし、解凍したブロモアセチル化されたCRM
197および蒸留水と混合し、最終溶液0.1Mボレート、CRM
197:多糖の1:1wt/wt比、および2mg/mL血清型5莢膜多糖を作製した。この混合物を、16から24時間の間にわたって室温にてインキュベートした。タンパク質上の未反応のブロモアセチル基を、0.1MボレートpH8.95に溶かされたシステアミンの135mg/mLストック溶液を使用して1:2(wt/wt)のCRM
197:システアミンの比にてシステアミン塩酸塩を添加することによりキャップし、室温にて4時間にわたってインキュベートした。莢膜多糖−CRM
197コンジュゲート(コンジュゲート)を、100Kポリエーテルスルホンウルトラフィルターを使用して0.9%NaClに対して50倍の透析濾過をすることにより精製した。
【0282】
PDPHによる血清型5莢膜多糖チオール化研究の再現性の結果は、活性化度が、10個のCP反復単位当たり接続しているおおよそ1個のリンカー分子〜5個の反復単位当たり1個のリンカー分子に相当する11%〜19%の範囲であることを示した。
【0283】
CDTコンジュゲーション化学反応による血清型5莢膜多糖のCRM
197とのコンジュゲーション。
CDTは、多糖を、無水環境(DMSO)中で活性化し、利用可能なヒドロキシルとトリアゾールカルバメート部分およびカルボン酸とアシルイミダゾールまたはアシルトリアゾール部分を形成する1段階コンジュゲーションプロセスを提供する。タンパク質担体の添加(DMSO中)は、リシンによるトリアゾールの求核置換ならびにカルバメート結合(活性化されたヒドロキシルの場合)およびアミド結合(活性化されたカルボン酸の場合)の形成をもたらす。反応溶液は、平行流濾過による精製のために調製中に水溶液中に10倍希釈される。
【0284】
CDTコンジュゲーション化学反応は、サイズ排除クロマトグラフィーの画分における糖とタンパク質の存在により、およびグリコアルデヒドでキャップされたまたはシステアミン塩酸塩でキャップされたコンジュゲートのアミノ酸分析により示される担体タンパク質と共有結合している血清型5莢膜多糖を生じた。
【0285】
20kDa〜40kDaの範囲である血清型5莢膜多糖サイズについてのPDPHとCDTの両方の化学反応により調製されるコンジュゲートのいくつかのロットの調製の結果の要約は、下の表17に示されている。これらのコンジュゲーション化学反応により生成されるコンジュゲートの遊離莢膜多糖、多糖タンパク質の比および収率に有意差はなかった。コンジュゲートしている血清型5莢膜多糖の抗原性は、コンジュゲートと天然多糖の間の同一性沈降素ラインにより示されるように、コンジュゲーションにより変わることはなかった。
【0286】
【表17】
【0287】
上に示されているように、本明細書に記載されている方法を使用し、具体的範囲の望ましい高分子量莢膜多糖を製造することができる。我々は、免疫原性組成物における使用のために濾過および精製することができる予め選択された範囲の高分子量血清型5莢膜多糖からコンジュゲートを調製することを目指した。表18は、血清型5莢膜多糖が約92kDaから119kDaの分子量範囲であり、トリアゾール(CDT)で活性化された血清型5莢膜多糖コンジュゲートの分析を要約している。得られたコンジュゲートの分子量は、1533kDaから2656までの範囲であった。CRM
197当たりのコンジュゲートしているリシン数は、最高で22個から最低で15個までの範囲であった。遊離莢膜多糖は、最高で18%から最低で11%までの範囲であった。
【0288】
【表18】
【0289】
両方のコンジュゲーション化学反応は、担体タンパク質と共有結合している血清型5莢膜多糖を生じる。これらの2つの方法により生成されるコンジュゲートの遊離莢膜多糖、血清型5莢膜多糖:タンパク質の比および収率に有意差はなかった。
【0290】
(実施例11)複合対ワンポットCDTプロセス。
上に記載されているように、本発明の免疫原性コンジュゲートを作製するための方法には、CDT(1,1−カルボイル−ジ−1,2,4−トリアゾール)またはPDPH(3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド)を伴うコンジュゲーション化学反応を使用する莢膜多糖の担体タンパク質との共有結合コンジュゲーションを伴う。CDTの使用は、莢膜多糖と担体タンパク質の間の1炭素または0炭素リンカーをもたらすが、PDPHの使用は、莢膜多糖と担体タンパク質の間に共有チオエーテル結合を含有する5炭素リンカーをもたらす。
【0291】
PDPHベースの方法は、多糖の活性化、多糖上のチオール保護基の除去、活性化された多糖中間体の精製、タンパク質単体の活性化および精製、ならびに活性化された構成成分のコンジュゲーションと、続く、精製を伴う多段階プロセスであった。この方法では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖を、DMSOなどの有機溶媒中でPDPHおよびカルボジイミドと反応させて、PDPH結合型多糖を生じさせた。PDPH結合型多糖を還元剤と反応させて、活性化された多糖を生じさせ、次いで、精製した。担体タンパク質を、有機溶媒中でブロモ酢酸と反応させて、活性化された担体タンパク質を生じさせ、次いで、精製した。次いで、精製された活性化された血清型5多糖を、精製された活性化された担体タンパク質と反応させて、血清型5多糖:担体タンパク質コンジュゲートを生じさせた。
【0292】
対照的に、CDTベースの方法は、莢膜多糖を、無水環境(すなわち、DMSO)中で活性化し、利用可能なヒドロキシルとトリアゾールカルバメート部分およびカルボン酸とアシルイミダゾールまたはアシルトリアゾール部分を形成する1段階コンジュゲーションプロセスであった。タンパク質担体の添加(DMSO中)は、リシンによるイミダゾールまたはトリアゾールの求核置換ならびにカルバメート結合(活性化されたヒドロキシルの場合)およびアミド結合(活性化されたカルボン酸の場合)の形成につながり、それによって、コンジュゲーションが「ワンポット」で進行することを可能にする。したがって、2つのCDTベースの方法:より複雑なプロセスおよびより簡単なワンポットプロセスを開発した。より複雑なプロセスでは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖を、イミダゾールまたはトリアゾールと混ぜ合わせ、次いで、有機溶媒(DMSOなど)および約0.2%w/vの水の中でCDTと反応させて、活性化された血清型5多糖を生じさせた。活性化された血清型5多糖を精製し、次いで、有機溶媒中で担体タンパク質と反応させて、血清型5多糖:担体タンパク質コンジュゲートを生じさせた。ワンポットプロセスは、活性化された血清型5多糖を、担体タンパク質との反応の前に精製しないことを除いては複合プロセスと同様であった。
【0293】
CDT複合プロセス。
血清型5莢膜多糖の活性化:血清型5莢膜多糖を、血清型5莢膜多糖1g当たり10gのトリアゾールと混合し、凍結乾燥した。得られたケーキを、2.0mg血清型5莢膜多糖/mLにてDMSOに溶かした。含水量を決定し、0.2%に調整した。DMSO中で100mg/mLにて新たに調製したCDTのストック溶液を添加し、CP5の量と比較して20倍モル過剰量のCDTを達成した。代替方法として、添加されるCDTの量を調整し、より高いかより低い活性化度を達成した。これを、23℃にて30分保持した。
【0294】
活性化された血清型5莢膜多糖の精製:活性化された血清型5莢膜多糖(ACP5)の溶液を、25体積の水の中に注ぎ、過剰のCDTを破壊した。これを、おおよそ1mg/cm2にて10kDa PES膜上でその元の体積まで濃縮し、少なくとも10体積に対して水に対して透析濾過した。このステップは、4時間未満で終了した。透析濾過された材料を、元の血清型5多糖1g当たり10gのトリアゾールと混合し、凍結乾燥した。
【0295】
凍結乾燥されたCRMの調製:CRMを、少なくとも10体積に対して10kDa PES膜上で一定体積にて0.4%NaCl/5%スクロースに対して透析濾過した。タンパク質濃度を決定し、十分な透析濾過緩衝液を添加し、タンパク質濃度を5.0g/Lにすると、NaCl/CRMのw/w比=0.8が得られた。CRMを凍結乾燥した。
【0296】
コンジュゲーション:活性化された、透析濾過された血清型5莢膜多糖を、1mg/mLにてDMSOに溶かした。100mMにてボレート溶液を添加し、2%v/vを達成した。
【0297】
CRMを、2mg/mLにて再懸濁し、溶解が終了したら、ACP5溶液と混ぜ合わせた。これを、20時間にわたって4℃にて反応させた。
【0298】
コンジュゲート反応物を、24体積の5mMボレートpH9.0の中に注ぎ、1時間にわたって室温にて撹拌させた。次いで、0.5Mリン酸緩衝液、pH6.5でpH7.5に調整した。これを、5ミクロンフィルターに通して濾過し、約1mg/cm
2の負荷にて300kDa PES膜上で元の体積まで濃縮し、少なくとも10体積の水に対して透析濾過した。得られた濃縮物を、0.22ミクロンフィルターに通して濾過し、2℃〜8℃にて保存した。
【0299】
CDTワンポットプロセス。
CRM
197マトリックス交換:CRM
197を透析濾過し、おおよそ10mMホスフェート/80mM NaCl/15%スクロース、pH7から5mMイミダゾール/0.72%NaCl/15mMオクチル−β−D−グルコピラノシド、pH7へ交換した。交換は、コンジュゲーションに有害であり、コンジュゲーション中に運ばれる塩化ナトリウム含量を規定するホスフェートおよびスクロースの除去を可能にした。オクチル−β−D−グルコピラノシドは、無菌濾過後の粒子形成を防ぐために添加される。
【0300】
CRM
197のマトリックスを、おおよそ4mg/mLの保持液濃度にて10K MWCO PES膜を使用する10ダイアボリュームを通じての5mMイミダゾール/0.72%NaCl/15mMオクチル−β−D−グルコピラノシド、pH7に対する平行流濾過により交換した。典型的な膜チャレンジは、2グラム/ft2とし、マトリックス中の標的最終CRM
197濃度は、6mg/mLとした。CRM
197は、2℃〜8℃にて保存した。
【0301】
活性化/コンジュゲーション:黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖についての活性化/コンジュゲーションプロセスは、下記のステップからなった:1)多糖の混ぜ合わせ;2)CRM
197および混ぜ合わせられた多糖のシェル凍結および凍結乾燥;3)凍結乾燥された多糖およびCRM
197の溶解;4)多糖の活性化;5)活性化された多糖のCRM
197とのコンジュゲーション;および6)コンジュゲートの精製(希釈、透析濾過、無菌濾過)。
【0302】
多糖を、多糖1g当たり10グラムの1,2,4−トリアゾール賦形剤と混ぜ合わせた。賦形剤を、多糖へ粉末として添加すると、周囲温度にて15分未満の混合の後に溶液が得られた。
【0303】
混ぜ合わせられた多糖およびCRM
197を、−75℃のエタノール浴を使用して別々にシェル凍結した。1Lのボトル当たりの体積は、おおよそ500mLとした。
【0304】
多糖溶解については、DMSOを、多糖の個々の凍結乾燥ボトルに添加すると懸濁液が得られ、次いで、加熱のための活性化/コンジュゲーション反応容器に移した。DMSOを添加して2g/L濃度を得た。澄明な溶液は、5〜10分の混合後に得られた。
【0305】
CRM
197溶解については、DMSOを、CRM
197を含有する個々の凍結乾燥ボトルに添加すると懸濁液が得られ、次いで、混合のための第二の容器に移した。DMSOを添加して2g/L濃度を得た。澄明な溶液は、典型的には、15分未満の間に得られた。
【0306】
多糖/DMSO溶液を、カールフィッシャー分析のためにサンプリングし、水分含量を決定した。CDTを、DMSO中で100mg/mL溶液として調製し、5型多糖に5モル過剰にて添加した(複合プロセスは、20モル当量CDTを使用し、一方、ワンポットプロセスは、5モル当量のCDT:CP5を使用した)。CDT溶液の連続添加は、混合しながら23℃±2℃にて約5分かけて行った。反応を、23℃±2℃にて最低限30分にわたって進行させた。反応物をサンプリングし、活性化レベルを決定し(UV220/205nm)、次いで、100mMホウ酸ナトリウム、pH9を添加すると、1.5%水溶液が得られた。次いで、反応溶液を、23℃±2℃にて最低限30分にわたって撹拌した。
【0307】
活性化された多糖のCRM
197とのコンジュゲーションについては、DMSOを、0.55mg/mL反応濃度を標的にして添加した。次いで、DMSOに溶かされたCRM
197を、混合しながら、活性化された多糖溶液に添加した。反応物を、23℃±2℃にて最低限16時間にわたって撹拌した。
【0308】
反応溶液を、5mM四ホウ酸ナトリウム、pH8.6で10×希釈し、9±0.2の最終希釈pHを得た。溶液を、最低限4時間にわたって23℃±3℃にて撹拌した。希釈された溶液を、5μmフィルターに通し、2g/Lの標的保持液濃度まで濃縮した。平行流濾過は、5mMスクシネート、pH7による20ダイアボリュームを通じて300K再生セルロース膜を使用しておこなった。典型的な膜チャレンジは、1グラム/ft2とした。精製されたコンジュゲートを、0.22ミクロンフィルターに通し、2℃〜8℃にて保存した。
【0309】
(実施例12)ワンポットおよび複合コンジュゲーションプロセスを使用する血清型5莢膜多糖のコンジュゲーション。
この実施例は、予め選択された範囲の分子量の莢膜多糖を、ワンポットプロセスかまたは複合プロセスのコンジュゲーションに使用することができることを示している。初めに、より大きな多糖が細菌細胞により産生され、得られる精製された分子量範囲は、実施例9における加水分解プロセスのpHおよび熱により制御することができる。この実施例では、血清型5莢膜多糖が、約90kDaから約140kDaまでの分子量範囲である8個のバッチを選択し、コンジュゲーションは、上に記載されているワンポットプロセスかまたは複合プロセスでトリアゾール(CDT)による活性化を使用して行った。表19を参照されたい。得られたコンジュゲートの分子量は、1125kDaから2656kDaまでの範囲であった。CRM当たりのコンジュゲートしているリシン数は、最高で22個から最低で15個までの範囲であった。遊離糖は、最高で23%から最低で11%までの範囲であった。
【0310】
【表19】
【0311】
(実施例13)血清型5莢膜多糖コンジュゲートは、マウス腎盂腎炎モデルにおいて一貫して防御を示す。
血清型5莢膜多糖コンジュゲートを、それらが腎盂腎炎モデルにおいてマウスを防御する能力について評価した。i.p.黄色ブドウ球菌(S.aureus)チャレンジを受けているマウスの血液における細菌数は、PBSで免疫化された対照と比較して有意に減少した。
【0312】
すべての6つの個別研究は、免疫化された動物においてcfu/ml腎臓の有意な減少を示した(
図9)。これらの研究をメタ分析についてプールした場合、研究についての全有意性は、全体として0.0001未満まで増加した。データは、莢膜多糖コンジュゲートによる能動的ワクチン接種後に腎臓コロニー形成の一貫した減少を示した。
【0313】
(実施例14)異なるコンジュゲーション化学反応により調製される血清型5莢膜多糖コンジュゲートは、実験感染からマウスを防御する。
マウス腎盂腎炎モデルにおける能動的免疫化研究を、PDPH化学反応かまたはCDT化学反応により調製された血清型5莢膜多糖コンジュゲートで行った。莢膜多糖をCRM
197とコンジュゲートさせるための方法は、上に記載されている。結果は、両コンジュゲートが、偽免疫化された動物と比較してマウスにおけるコロニー形成を低減することを示した(表20)。
【0314】
【表20】
【0315】
(実施例15)血清型5莢膜多糖コンジュゲートの能動的免疫化は、ラット心内膜炎モデルにおいてラットを防御する。
4つの研究を、CP5−CRM
197PDPHコンジュゲートで行った。血清型5莢膜多糖コンジュゲートは、3つのうちの2つの実験において心臓と腎臓の両方で黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266によるチャレンジ後に回収されたCFUを有意に減少させた(表21)。第三の研究では、幾何平均力価(GMT)抗CP5力価は、3つの実験のうちで最も低かったが、前の実験よりわずかに低いに過ぎなかった。
【0316】
【表21】
【0317】
(実施例16)LMW CP5コンジュゲートワクチンと比較したマウスにおけるHMW CP5コンジュゲートワクチンの増強された免疫原性
マウス腎盂腎炎研究を行い、異なるCP5コンジュゲート製剤の免疫原性および有効性を評価した。2つの製剤を試験した:第一の製剤は、CRM197とコンジュゲートしている高分子量(HMW)CP5(おおよそ300kDa)からなった。第二の製剤は、CRM197とコンジュゲートしている低分子量(HMW)CP5(おおよそ25kDa)からなった。3つの投与量レベルをHMWワクチンについて試験した(1、0.1および0.01mcg)。LMWワクチンは、1mcgにて試験した。CRM197とコンジュゲートしている肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)由来の多糖コンジュゲートワクチン(PP5)からなる陰性対照群も包含した。多糖を、0、3、6週目に22mcg AlPO4と共に製剤化し、8週目に黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266をチャレンジした。腎臓を収集し、細菌コロニーを、チャレンジの48時間後に数えた。両ワクチンは、免疫応答を生成するのに有効であり、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266のCFUの減少は、HMWワクチンとLMWワクチンの両方の1μg群をワクチン接種されたマウスの腎臓から観察された。これは、より低いワクチン用量の有効性低下により示されるように用量依存的であった(
図10)。CFU読み出しは、HMWおよびLMWワクチンについての有効性の差を検出するのに十分敏感ではなかった。したがって、マウスの血清を、OPAにより試験した。OPA力価は、OPAアッセイにおいて黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266株の40%を致死させるのに必要とされる血清の希釈度として定義した。増強されたOPA力価は、LMW製剤と比較してHMWワクチンについて見られた(
図11)。
【0318】
(実施例17)高分子量多糖を含む莢膜多糖コンジュゲートは、低分子量多糖を含むコンジュゲートと比較して増強された免疫原性を示す。
非ヒト霊長類(NHP)研究を行い、異なる莢膜コンジュゲート製剤の免疫原性を評価した。2つの製剤を、2つの異なる用量レベル(2および20μg)にて試験した。第一の製剤は、CRM
197とコンジュゲートしている高分子量(HMW)多糖(おおよそ130kDa)を含有した。第二の製剤は、CRM
197とコンジュゲートしている低分子量(LMW)多糖(おおよそ25kDa)を含有した。5匹の霊長類の群に、単回のいずれかのワクチンをワクチン接種し、免疫力価を、ワクチン接種の前におよびワクチン接種の2週後にモニターした。OPA力価は、OPAアッセイにおいて黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266株の40%を致死させるのに必要とされる血清の希釈度として定義した。抗体力価も、ELISAによりモニターした。増強された活性は、LMWワクチンと比較してHMWワクチンについての抗体力価の10倍上昇により示されるように、LMW製剤と比較してHMWワクチンについて見られた(表22)。HMWワクチンを受けたNHPについてのOPAレスポンダー率もより高かった(40%と比較して80%)。
【0319】
【表22】
【0320】
(実施例18)多糖O−アセチル化は、血清型5莢膜多糖コンジュゲートに対する防御抗体応答の誘導にとって重要である。
血清型5莢膜多糖のO−アセチル化の重要性を評価するため、天然の莢膜多糖を脱O−アセチル化(dOAc)し、上で論じられているように、PDPHコンジュゲーション化学反応を使用してCRM
197(dOAc−CRM
197)とコンジュゲートさせた。dOAcCP−CRM
197コンジュゲートの有効性を、マウス腎盂腎炎モデルにおいてCP5−CRM
197と並行して比較した。
【0321】
O−アセチル基を欠くコンジュゲート(dOAc CP5−CRM)による免疫化は、腎臓における回収された細菌CFUを下げることができなかった。これらのデータ(表23)は、O−アセチル化が、CP5に対する機能的抗体の誘発にとって重要であることを示している。
【0322】
【表23】
【0323】
(実施例19)特異性が知られているモノクローナル抗体を使用するOPAによる血清型5莢膜多糖の機能的エピトープとしてのO−アセチル化の重要性の確認。
OAc+(CP5−7−1)、OAc+/−(CP5−5−1)およびOAc−(CP5−6−1)に対する特異性をもつ血清型5莢膜多糖モノクローナル抗体を、5型PFESA0266株に対するOP致死活性について評価した(表24)。血清型8莢膜多糖(CP8 OAc+に対して特異的なCP8−3−1)に対するモノクローナル抗体を、陰性対照として使用した。
【0324】
OAc特異的抗CP5 mAb CP5−7−1は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266の致死を仲介した(表24)。また、モノクローナル抗体CP5−5−1は、CP5 OAc+とCP5 OAc−の両方により共有されるエピトープを認識し、PFESA0266株の致死を仲介した。血清型5O−Ac莢膜多糖上に存在するエピトープに対して特異的なモノクローナル抗体は、PFESA0266株の致死を仲介しなかった。これらの結果は、血清型5莢膜多糖上のO−アセチルエピトープが、血清型5特異的抗体の機能的活性を誘発するのに必要であることを示している。
【0325】
抗体は、抗体が細菌を致死させることを示す動物有効性モデルまたはオプソニン化貪食性致死アッセイにおいて細菌を致死させることにより測定されて機能的であることを必要とする。機能的致死は、抗体単独の生成をモニターするが、有効性におけるO−アセチル化の重要性を示すことがないアッセイを使用して示されないことがある。
【0326】
【表24】
【0327】
(実施例20)増強された免疫原性は、非ヒト霊長類(NHP)において低分子量多糖と比較して高分子量多糖からなるCP5コンジュゲートについて観察される。
非ヒト霊長類(NHP)研究を行い、異なる莢膜コンジュゲート製剤の免疫原性を評価した。2つの製剤を、2つの異なる用量レベル(2および20μg)にて試験した。第一の製剤は、CRM197とコンジュゲートしている高分子量(HMW)多糖(おおよそ130kDa)からなった。第二の製剤は、CRM197とコンジュゲートしている低分子量(LMW)多糖(おおよそ25kDa)を含有した。5匹の霊長類の群に、単回投与のいずれかのワクチンをワクチン接種し、免疫力価を、ワクチン接種の前におよびワクチン接種の2週後にモニターした。OPA力価は、OPAアッセイにおいて黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266株の40%を致死させるのに必要とされる血清の希釈度として定義した。抗体力価も、ELISAによりモニターした。増強された活性は、LMW製剤と比較してHMWワクチンについて見られた(表25)。LMWワクチンと比較してHMWワクチンについては抗体力価の3〜10倍の上昇があった。HMWワクチンを受けたNHPについてのOPAレスポンダー率もより高かった(40%と比較して80%)。
【0328】
【表25】
【0329】
要約
本明細書に記載されている両コンジュゲーション化学反応は、担体タンパク質CRM197と共有結合している血清型5莢膜多糖を生じた。これらの2つの方法により生成されるコンジュゲートの遊離多糖、血清型5多糖:タンパク質の比および収率に有意差はなかった。
【0330】
本明細書に述べられているすべての刊行物および特許出願は、本発明が関連している当業者の技術水準を示す。すべての刊行物および特許出願は、あたかも各々の個別の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることを具体的および個別に示されているのと同程度に参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0331】
上述の発明について、理解の明確さのために例示および実施例によってある程度詳細に記載してきたが、ある種の変更および改変を、添付の特許請求の範囲内で実施することができる。