(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の固定火格子と複数の移動火格子を備え、被焼却物を搬送しつつ、前記被焼却物の焼却を行うストーカ炉の落差壁と移動火格子との間をシールするストーカ炉用シール装置であって、
その先端が前記移動火格子に接するように配置された前火格子と、
前記落差壁に固定され、前記前火格子の上面を支持する上面支持板と、前記上面支持板の下方に配置され、前記前火格子の底面を支持する底面支持板と、を有する支持部と、
前記前火格子を、前記前火格子が前記移動火格子の移動に伴い移動する向きと逆の向きに付勢するバネと、を有することを特徴とするストーカ炉用シール装置。
フィーダから被焼却物を供給し、複数の固定火格子と複数の移動火格子を備えた乾燥段、燃焼段、及び後燃焼段で、前記被焼却物を順次搬送しつつ、それぞれ乾燥、燃焼、及び後燃焼を行う順送式のストーカ炉であって、
前記乾燥段は、搬送方向下流側が下向きとなるように傾斜して配置され、
前記燃焼段は、前記乾燥段に接続され、前記搬送方向下流側が上向きとなるように傾斜して配置され、
前記後燃焼段は、前記燃焼段に接続され、前記搬送方向下流側が上向きとなるように傾斜して配置され、
前記前火格子を前記搬送方向下流側に押し出す方向に付勢された状態で、前記乾燥段と前記燃焼段との間の前記落差壁に、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のストーカ炉用シール装置を配置したことを特徴とするストーカ炉。
前記前火格子を搬送方向上流側に引き込む方向に付勢された状態で、前記フィーダと前記燃焼段との間の前記落差壁に、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のストーカ炉用シール装置を配置したことを特徴とする請求項4に記載のストーカ炉。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態〕
以下、本発明のストーカ炉用シール装置が配置されるストーカ炉について図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態のストーカ炉は、ごみ等の被焼却物燃焼用ストーカ炉であり、
図1に示すように、被焼却物Tを一時的に貯留するホッパ2と、被焼却物Tを燃焼させる焼却炉3と、焼却炉3に被焼却物Tを供給するフィーダ4と、焼却炉3の底部側に設けられたストーカ5(乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13の火格子15、16を含む)と、ストーカ5の下方に設けられた風箱6と、ストーカ5の落差壁27(第一落差壁)、28(第二落差壁)、29(第三落差壁)に設けられたシール装置30(ストーカ炉用シール装置)と、を備えている。
【0017】
フィーダ4は、ホッパ2を介して連続的にフィードテーブル7上に供給された被焼却物Tを焼却炉3内に押し出す。フィーダ4は、フィーダ駆動装置8によってフィードテーブル7上を所定のストロークで往復運動する。
風箱6は、送風機(図示せず)からの一次空気をストーカ5の各部に供給する。
焼却炉3は、ストーカ5の上方に設けられ、一次燃焼室と二次燃焼室からなる燃焼室9を有している。焼却炉3には、燃焼室9に二次空気を供給する送風機10が接続されている。
【0018】
ストーカ5は、火格子15、16を階段状に並べた燃焼装置である。被焼却物Tは、ストーカ5上で燃焼する。
以下、被焼却物Tが搬送される方向を搬送方向Dと呼ぶ。被焼却物Tは、ストーカ5上を搬送方向Dに搬送される。
図1、
図2、及び
図3において、左側が搬送方向上流側D1であり、右側が搬送方向下流側D2である。また、火格子15、16が取り付けられる面を据付面と呼び、乾燥段11、燃焼段12、又は後燃焼段13の上流側の端部(11b、12b、13b)を中心として、水平面と据付面とによって形成される角度をストーカ傾斜角(据付角度)と呼ぶ。据付面の搬送方向下流側D2が水平面より上向きの場合は、ストーカ傾斜角は正の値とし、据付面の搬送方向下流側D2が水平面より下向きの場合は、ストーカ傾斜角は負の値として、ここでは説明する。
【0019】
ストーカ5は、被焼却物Tの搬送方向上流側D1から順に、被焼却物Tを乾燥させる乾燥段11と、被焼却物Tを焼却する燃焼段12と、未燃分を完全に焼却(後燃焼)する後燃焼段13と、を有している。ストーカ5では、乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13で、被焼却物Tを順次搬送しつつ、それぞれ乾燥、燃焼、及び後燃焼を行う。
各々の段11、12、13は、複数の固定火格子15と、複数の移動火格子16と、を有している。
固定火格子15と移動火格子16とは、搬送方向Dで交互に配置されている。移動火格子16は、搬送方向Dに沿って往復運動する。移動火格子16の往復運動によってストーカ5上の被焼却物Tが搬送されるとともに攪拌される。即ち、被焼却物Tの下層部が動かされ、上層部と入れ替えられる。
【0020】
乾燥段11は、フィーダ4によって押し出されて焼却炉3内に落下した被焼却物Tを受け、被焼却物Tの水分を蒸発させるとともに一部熱分解する。燃焼段12は、下方の風箱6から供給される一次空気によって、乾燥段11で乾燥した被焼却物Tに着火させ、揮発分および固定炭素分を燃焼させる。後燃焼段13は、燃焼段12で十分に燃焼されずに通過してきた固定炭素分等の未燃分を完全に灰になるまで燃焼させる。
後燃焼段13の出口には、灰出し口17が設けられている。灰は、灰出し口17を通じて焼却炉3から排出される。
【0021】
乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13の各々は、移動火格子16を駆動する駆動機構18を有している。即ち、乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13は、複数の移動火格子16を駆動する駆動機構18をそれぞれ別個に有している。
【0022】
駆動機構18は、ストーカ5に設けられている梁19に取り付けられている。駆動機構18は、梁19に取り付けられている油圧シリンダ20と、油圧シリンダ20によって動作するアーム21と、アーム21の先端に接続されているビーム22と、を有している。ビーム22と移動火格子16とは、ブラケット23を介して接続されている。
【0023】
駆動機構18によれば、油圧シリンダ20のロッドの伸縮によって、アーム21が動作する。アーム21の動作に伴いストーカ5の据付面11a、12a、13aに沿って移動するように構成されているビーム22が移動し、ビーム22に接続されている移動火格子16が駆動する。
【0024】
駆動機構18は、油圧シリンダ20を用いているがこれに限ることはなく、例えば、油圧モータ、電動シリンダ、電導リニアモータ等を採用することができる。また、駆動機構18の形態は、上記した形態に限らず、移動火格子16を往復運動させることができれば、どのような形態のものでもよい。例えば、アーム21を配置せずに、ビーム22と油圧シリンダ20を直結して駆動してもよい。
【0025】
ストーカ炉1は、乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13における移動火格子16の駆動の速度を、互いに同じ速度または乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13の少なくとも一部で異なる速度とすることができる。
例えば、燃焼段12で十分に燃焼させることが求められる被焼却物Tが投入された場合に、燃焼段12の移動火格子16の駆動の速度を遅くして、燃焼段12上の被焼却物Tの搬送速度を遅くし、十分に燃焼させることができる。
【0026】
図2に示すように、固定火格子15及び移動火格子16は、乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13の据付面11a、12a、13aに対して搬送方向下流側D2が上向きとなるように傾斜して配置されている。また、火格子15、16は、火格子15、16の先端が搬送方向下流側D2を向くように配置されている。これにより、移動火格子16は、固定火格子15上の被焼却物Tを搬送方向下流側D2に送るように動作する。
【0027】
乾燥段11の移動火格子16の一部は、突起付火格子16Pである(他は、後述のノーマル火格子である)。
図2に示すように、乾燥段11の搬送方向Dの長さのうち、搬送方向下流側D2の端部から50%乃至80%の範囲R1の移動火格子16が突起付火格子16Pとなっている。突起付火格子16Pを使用することで、撹拌力を向上することができる。
固定火格子15は、先端の上面に突起のない火格子であり、この形状をノーマル火格子という。
【0028】
なお、本実施形態では、移動火格子16のみを突起付火格子16Pとしたが、これに限ることはなく、移動火格子16及び固定火格子15の両方を突起付火格子としてもよい。
また、突起付火格子16Pを設ける範囲も上述した範囲に限ることはなく、例えば、乾燥段11の全ての火格子を突起付火格子16Pとしてもよい。
さらに、被焼却物Tの性状や種類によっては、乾燥段におけるすべての火格子(固定火格子及び移動火格子)をノーマル火格子としてもよい。
【0029】
乾燥段11と同様に、燃焼段12の移動火格子16のうち、一部は、突起付火格子16Pである。具体的には、燃焼段12の搬送方向Dの長さのうち、搬送方向下流側D2の端部から50%乃至80%の範囲R2の移動火格子16が突起付火格子16Pとなっている。燃焼段12のその他の移動火格子16は、ノーマル火格子である。乾燥段11と同様に、被燃焼物Tの性状や種類によって、移動火格子16及び固定火格子15の両方を突起付火格子としてもよいし、すべての火格子(固定火格子及び移動火格子)をノーマル火格子としてもよい。
後燃焼段13の火格子は、
図2では移動火格子16及び固定火格子15はいずれも全てノーマル火格子として示しているが、乾燥段11及び燃焼段12と同様に、突起付火格子を採用してもよい。
【0030】
次に、乾燥段11、燃焼段12、及び後燃焼段13のストーカ傾斜角(据付角度)について説明する。
図2に示すように、本実施形態のストーカ5の乾燥段11は下向きに配置されている。すなわち、乾燥段11の据付面11aは、搬送方向下流側が低くなるように傾斜している。具体的には、乾燥段11の上流側の端部11bを中心とした水平面と据付面11aの搬送方向側の角度である乾燥段11のストーカ傾斜角θ1は、−15°(マイナス15度)から−25°(マイナス25度)の間の角度である。
【0031】
本実施形態のストーカ5の燃焼段12は上向きに配置されている。すなわち、燃焼段12の据付面12aは、搬送方向下流側が高くなるように傾斜している。具体的には、燃焼段12の上流側の端部12bを中心とした水平面と据付面12aの搬送方向側の角度である燃焼段12のストーカ傾斜角θ2は、+5°(プラス5度)から+15°(プラス15度)の間の角度である。
【0032】
本実施形態のストーカ5の後燃焼段13は上向きに配置されている。すなわち後燃焼段13の据付面13aは、搬送方向下流側が高くなるように傾斜している。具体的には、後燃焼段13の上流側の端部13bを中心とした水平面と据付面13aの搬送方向側の角度である後燃焼段13のストーカ傾斜角θ3は、+5°(プラス5度)から+15°(プラス15度)の間の角度である。
【0033】
フィードテーブル7と乾燥段11との間には、第一落差壁27(段差)が形成されている。ストーカ5は、第一落差壁27と移動火格子16との間をシールする第一シール装置30Aを有している。第一シール装置30Aは、乾燥段11の移動火格子16が移動した場合に、火格子以外からの燃焼空気の流入を防止する装置である。
【0034】
図3に示すように、第一シール装置30Aは、その先端(搬送方向下流側D2)が移動火格子16に接するように配置された前火格子31と、前火格子31をスライド可能に支持する支持部32と、前火格子31を、前火格子31が移動火格子16の移動に伴って移動する向きと逆の向きに付勢するバネ35(圧縮コイルバネ)と、前火格子31の移動方向を制限する移動方向制限部44と、を有している。
第一シール装置30Aは、前火格子31の水平面に対する角度が乾燥段11の据付面11aの角度に対応している。即ち、第一シール装置30Aの前火格子31は、搬送方向下流側D2が下向きとなるように配置されている。
前火格子31の移動方向は、搬送方向Dに沿う方向であるが、厳密には、搬送方向下流側D2が下向きとなるように傾斜している乾燥段11の据付面11aに沿う方向である。
【0035】
支持部32は、第一落差壁27に固定され、前火格子31の上面31aを支持する上面支持板33と、上面支持板33に固定され、前火格子31の下面31bを支持する底面支持板34と、を有している。
【0036】
前火格子31は、矩形板状をなし、先端に突起31cが設けられている前火格子本体37と、前火格子本体37の後端に接続されている軸状部材38と、を有している。軸状部材38の少なくとも一部には、雄ネジ溝が形成されている。
図3、及び
図4に示すように、前火格子本体37は、矩形状をなす板状の部材である。突起31cは、移動火格子16の背面16aに接触するように形成されている。突起31cは、焼却炉3の幅方向(
図1の紙面に直交する方向)に延在している。突起31cが幅方向にわたって移動火格子16に接触することによって、火格子以外からの燃焼空気の流入が防止される。
【0037】
上面支持板33は、前火格子31の上面31aを支持する板状部材である。上面支持板33と前火格子31とは、上面支持板33の下面33aと前火格子31の上面31aとが面接触するように配置されている。
上面支持板33は、搬送方向下流側D2が低くなるように傾斜して配置されている。上面支持板33の搬送方向上流側D1の端部には、前火格子31の軸状部材38を前火格子31の移動方向Mに沿って摺動自在に支持する第一軸支持部40が設けられている。本実施形態の第一軸支持部40は、上面支持板33を折り曲げることによって形成された第一軸支持板39に設けられた軸受である。
【0038】
底面支持板34は、前火格子31の下面31bを支持する板状部材である。底面支持板34と前火格子31とは、底面支持板34の上面34aと前火格子31の下面31bとが面接触するように配置されている。底面支持板34は、上面支持板33の主面と底面支持板34の主面とが平行となるように配置されている。
【0039】
底面支持板34は、底面支持板34の搬送方向上流側D1の端部を折り曲げることによって形成された第二軸支持板41を介して上面支持板33に固定されている。第二軸支持板41には、第一軸支持部40と協働して前火格子31の軸状部材38を支持する第二軸支持部42が設けられている。第二軸支持部42は、第二軸支持板41に設けられた軸受である。
【0040】
第一軸支持部40と第二軸支持部42とは、前火格子31の軸状部材38を、搬送方向Dに対応した一方向である方向Mであって、上面支持板33と底面支持板34の主面に平行な方向に沿うように支持する。換言すれば、軸状部材38は、第一軸支持部40及び第二軸支持部42に支持されることによって、方向Mに沿って延在する。
前火格子31は、上面支持板33及び底面支持板34によって方向Mに直交する方向の動きは制限されているが、軸状部材38の軸線方向の動きは制限されていない。
【0041】
移動方向制限部44は、前火格子31に形成された方向Mに沿って長い2つの貫通孔45と、貫通孔45に挿通され、支持部32に固定された2つのガイド部材46と、を有している。
図4に示すように、貫通孔45は、前火格子31の移動方向に沿うように形成された長孔である。ガイド部材46は、上面支持板33と底面支持板34との間を接続するように設けられた棒状の部材である。ガイド部材46は、例えば、ボルトによって形成することができる。
【0042】
バネ35は、軸状部材38の雄ネジ溝に螺合するナット47と第一軸支持板39との間に配置されている。バネ35の内側には、軸状部材38が挿通されている。バネ35の一端はナット47に固定されており、バネ35の他端は第一軸支持板39に固定されている。即ち、バネ35の弾性力は、ナット47及び第一軸支持板39に作用する。
【0043】
第一落差壁27のシール装置30Aのバネ35は、前火格子31を搬送方向上流側D1に引き込む方向に付勢する状態でバランスしている。この状態から、移動火格子16の搬送方向下流側D2への移動に伴って前火格子31が搬送方向下流側D2に移動すると、バネ35は延ばされる。バネ35がバランスした状態から延ばされることにより、前火格子31は、搬送方向上流側D1(前火格子31が移動火格子16の移動に伴い移動する向きと逆の向き)に付勢される。
【0044】
移動火格子16の搬送方向上流側D1への移動に伴って前火格子31が搬送方向上流側D1に移動すると、バネ35は縮まる。バネ35がバランスした状態から縮まることにより、前火格子31は、搬送方向下流側D2(前火格子31が移動火格子16の移動に伴い移動する向きと逆の向き)に付勢される。
【0045】
乾燥段11と燃焼段12との間には、第二落差壁28が形成されている。乾燥段11の搬送方向下流側の端部11cは、燃焼段12の搬送方向上流側の端部12bよりも鉛直方向に高くなるように形成されている。
第二落差壁28には、第二シール装置30Bが設けられている。
図5に示すように、第二シール装置30Bは、前火格子31の水平面に対する角度が燃焼段12の据付面12aの角度に対応している。即ち、第二シール装置30Bの前火格子31は、搬送方向下流側D2が上向きとなるように配置されている。
【0046】
第二シール装置30Bのバネ35は、前火格子31を搬送方向下流側D2に押し出す方向に付勢された状態でバランスしている。この状態から、移動火格子16の搬送方向下流側D2への移動に伴って前火格子31が搬送方向下流側D2に移動すると、バネ35は延ばされる。バネ35がバランスした状態から延ばされることにより、前火格子31は、搬送方向上流側D1(前火格子31が移動火格子16の移動に伴い移動する向きと逆の向き)に付勢される。
【0047】
移動火格子16の搬送方向上流側D1への移動に伴って前火格子31が搬送方向上流側D1に移動すると、バネ35は縮まる。バネ35がバランスした状態から縮まることにより、前火格子31は、搬送方向下流側D2(前火格子31が移動火格子16の移動に伴い移動する向きと逆の向き)に付勢される。
【0048】
同様に、燃焼段12と後燃焼段13との間には、第三落差壁29が形成されている。燃焼段12の搬送方向下流側の端部12cは、後燃焼段13の搬送方向上流側の端部13bよりも鉛直方向に高くなるように形成されている。
第三落差壁29には、第三シール装置30Cが設けられている。第三シール装置30Cの構成は、第二シール装置30Bと同様である。
【0049】
シール装置30を構成するバネ35は、ナット47の位置を変更することにより調整することができる。本実施形態のシール装置30は、ナット47を前火格子本体37に近づけることでバネ35を伸ばすことができる。
【0050】
また、燃焼段12の搬送方向下流側の端部12cと後燃焼段13の搬送方向下流側の端部13cとは、鉛直方向で実質的に同位置か、または、後燃焼段13の端部13cが燃焼段12の端部12cよりも上方に配置されている。本実施形態のストーカ炉1は、燃焼段12の搬送方向下流側の端部12cと後燃焼段13の搬送方向下流側の端部13cを、鉛直方向で同一の位置とした例である。
【0051】
次に、乾燥段11のストーカ傾斜角を−15°(マイナス15度)から−25°(マイナス25度)の間の角度とする理由について説明する。
乾燥段11の機能は、被焼却物Tの上方にある火炎からの輻射熱及び火格子下からの一次空気の顕熱により効率良く被焼却物T中の水分を乾燥させることである。
ここで、火炎からの輻射熱の方が、一次空気の顕熱に比べて乾燥への寄与度が高く、被焼却物Tの上層部の乾燥が進行しやすい。
このため、火格子による撹拌動作によって、被焼却物Tの下層部を上方へ動かし、上層部と入れ替えることで乾燥速度を向上させている。
しかし、撹拌動作を行っても、乾燥段11においては基本的に燃焼させるわけではないので、水分蒸発が十分に進むだけの長さの確保は必要となる。長さが長くなればなるほど装置が大型化しコストもかかるので、ストーカ長を可能な限り短くすることが求められる。
【0052】
ストーカ傾斜角の絶対値が被焼却物Tの安息角よりも大きいと、自重で崩れ、被焼却物Tの層が形成されないため、ストーカ5として成り立たない。一方、ストーカ傾斜角の絶対値を被焼却物Tの安息角より小さくしていくと、ストーカとして成り立つが、被焼却物Tの重力による移動(自重による移動)が減ってゆく。さらに、据付面が上向き、すなわちストーカ傾斜角が正の値(プラスの値)で傾斜している場合、重力は被焼却物Tを搬送方向から押し戻す方向に働く。
ストーカ5による被焼却物Tの搬送量が投入された被焼却物Tの量を下回ると、搬送限界となり処理不能となる。
【0053】
最適なストーカ傾斜角は、投入される被焼却物Tの量と被焼却物Tの含水率により異なる。ここでは、投入される被焼却物Tの量が多くかつ含水率が高い(水分量が多い)場合を、投入被焼却物負荷が大きい場合として説明を進める。逆に、投入される被焼却物Tの量が少なくかつ含水率が低い場合は、投入被焼却物負荷が小さい場合となる。
【0054】
図8は、横軸を乾燥段11のストーカ傾斜角、縦軸を乾燥段11の必要ストーカ長とし、投入被焼却物負荷が最も大きい場合(1)から順に、投入被焼却物負荷が最も小さい場合(4)まで、乾燥段11のストーカ傾斜角と乾燥段11の必要ストーカ長との関係をプロットした例を示すものである。
ここで、必要ストーカ長とは、投入される被焼却物Tの水分の95%が乾燥する距離である。横軸の「安息角」は、被焼却物Tの安息角を示すものである。
【0055】
図8のグラフに示すように、ストーカ傾斜角−30°が被焼却物Tの層を形成する限界である。この層形成限界のストーカ傾斜角に対して、ストーカ傾斜角が緩くなるに従って、必要ストーカ長は減少するが、ストーカ傾斜角が正の値に転じると、必要ストーカ長は、徐々に長くなる。これは、ストーカ傾斜角が正の値になると、据付面が上向きになり、搬送速度が遅くなる結果、被焼却物Tの層が厚くなり、下層部の被焼却物Tの乾燥が進行しにくくなるからである。
投入される被焼却物Tの負荷が最も大きい場合(1)から投入される被焼却物Tの負荷が最も小さい場合(4)までの4つのケースから、被焼却物Tがいかなる性状、量であっても適正に処理でき、かつ、ストーカ長を最も短くできる最適な乾燥段11のストーカ傾斜角は、−15°(マイナス15度)から−25°(マイナス25度)の間の角度が適正範囲であることが分かる。そして、最適値は−20°(マイナス20度)となる。
【0056】
次に、乾燥段11のストーカ傾斜角を上述のように適正範囲のものとした場合において、燃焼段12のストーカ傾斜角を+5°(プラス5度)乃至+15°(プラス15度)の間の角度にすることが適している理由について説明する。
燃焼段12の機能は、火炎からの輻射熱、自己燃焼熱により被焼却物Tの層の温度を維持し、揮発分の熱分解による可燃ガスの発生促進、熱分解後に残った固定炭素の燃焼を行うものである。
【0057】
ここで、揮発性可燃ガスの揮発に要する時間に比べて固定炭素の燃焼に要する時間の方が長いため、燃焼段12の必要ストーカ長は、固定炭素の燃焼に必要な時間によって決まる。
【0058】
図9は、乾燥段11のストーカ傾斜角を上述のように適正範囲のものとした場合において、横軸を燃焼段のストーカ傾斜角、縦軸を燃焼段の必要ストーカ長とし、投入被焼却物負荷が最も大きい場合(1)から順に、投入被焼却物負荷が最も小さい場合(4)まで、燃焼段のストーカ傾斜角と燃焼段の必要ストーカ長との関係をプロットしたものである。ここで、燃焼段の必要ストーカ長とは、可燃分の95%が揮発または燃焼する距離である。
【0059】
図9に示すように、ストーカ傾斜角−30°が被焼却物Tの層を形成する限界である。この層形成限界のストーカ傾斜角に対して、角度が緩くなるに従って、必要ストーカ長は減少する。搬送限界を考慮すると、ストーカ傾斜角の適正範囲は、
図9に示す一点鎖線で囲む範囲とすることができる。
【0060】
乾燥段11において投入被焼却物負荷が大きい場合であっても、乾燥段11はストーカ傾斜角が適正範囲であるため、ごみの含水率低減及び体積減少が促進される。このため、例えば乾燥段11で負荷が(1)に相当するものであっても燃焼段12では負荷は(3)、(4)に相当するものに変化するので、燃焼段12では、より大きなストーカ傾斜角を採用できるようになる。すなわち、燃焼段を上向きとすることができることで固定炭素の燃焼に必要な滞留時間の確保ができ、さらにストーカ長さを短くできる。
【0061】
図10は、横軸を燃焼段12のストーカ傾斜角、縦軸を乾燥段11と燃焼段12の両方で必要なストーカ長とし、投入される被焼却物Tの負荷が最も大きい場合(1)から順に、投入される被焼却物Tの負荷が最も小さい場合(4)まで、燃焼段12のストーカ傾斜角と乾燥段11と燃焼段12の両方で必要なストーカ長との関係をプロットしたものである。ここで、乾燥段11のストーカ傾斜角は最適値の−20°(マイナス20度)としている。
【0062】
図10に示すように、搬送限界を考慮すると、燃焼段12のストーカ傾斜角の適正範囲は、+8°(プラス8度)乃至+12°(プラス12度)の間の角度であることが分かる。また、乾燥段11のストーカ傾斜角が最適値の−20°(マイナス20度)の場合、燃焼段12のストーカ傾斜角の最適値は+10°(+10度)である。
乾燥段11と燃焼段12の必要ストーカ長は、各々のストーカ傾斜角を適正範囲、特に最適値とすることで可能な限り短いストーカ長とすることができるので、後燃焼段13まで含めても、比較的小さなサイズかつ低コストなストーカ炉とすることができる。
【0063】
乾燥段11が下向きに傾斜していることによって、どのような性状の被焼却物Tであっても燃焼段12まで滞りなく搬送することができ、かつ、燃焼段12及び後燃焼段13は上向きに傾斜していることによって、燃焼段12の下流に被焼却物Tが容易に滑り落ちたり、転がり落ちたりすることなく、十分に燃焼されて搬送される。
【0064】
即ち、滑りやすい素材又は転がりやすい形状の被焼却物Tの場合、乾燥段11を転がるなどして燃焼段12まで早期に搬送されるので、乾燥段11では十分に乾燥できない可能性がある。しかしながら、燃焼段12と後燃焼段13とが上向きに傾斜していため、乾燥段11を転がり落ちた被焼却物Tが燃焼段12と後燃焼段13をさらに転がり落ちることはなく、燃焼段12で必ず十分に乾燥、焼却がなされる。含水率が高い被焼却物Tは、乾燥段11に滞留することなく、乾燥されつつ燃焼段12へ搬送されるので、やはり同様に、燃焼段12で必ず十分に焼却される。
これにより、被焼却物Tの性状によらず被焼却物Tを連続投入でき、かつ、被焼却物Tの燃え残りを無くすることができる。
【0065】
また、後燃焼段13の搬送方向下流側の端部13cを、鉛直方向において、燃焼段12の搬送方向下流側の端部12cと実質的に同位置、または、燃焼段12の端部12cよりも上方に配置した。これにより、仮に乾燥段11を被焼却物Tが転がり落ちる等した場合においても、被焼却物Tが十分に燃焼されないまま後燃焼段13から排出されることを防止することができる。
【0066】
上記実施形態によれば、移動火格子16に引きずられてやや移動した前火格子31には、バネ35により移動火格子16の移動の向きと逆の向きに引っ張る力が作用する。このため、移動火格子16と前火格子31との間にごみの噛み込みが発生した場合においても、当該ごみを挟み込んでいる前火格子31を戻す力が作用する。
また、支持部32によって前火格子31の移動方向が制限されるため、前火格子31の移動を最小限に抑え、シール性の低下を抑制することができる。
【0067】
また、軸状部材38と軸支持部40、42によって前火格子31の移動方向が移動火格子と接する方向のみに制限されることで、前火格子31と移動火格子16との接触状態を向上させることができる。
また、貫通孔45とガイド部材46から構成される移動方向制限部44によって、前火格子31と移動火格子16との接触状態を更に向上させることができる。
【0068】
また、乾燥段11が上記の角度で下向き、燃焼段12、後燃焼段13が上記の角度で上向きのストーカ炉に、本発明のシール装置30を、付勢方向を上述のように「押し出す方向」と「引き込む方向」に適宜設定して配置することで、当該ストーカ炉のシール性を向上することができる。
【0069】
なお、シール装置30の軸状部材38と、軸支持部の構造は、上記した構造に限ることはない。例えば、
図6に示すように、軸状部材38Bを支持部32B(上面支持板33B)に固定し、円筒状の軸支持部40Bを前火格子本体37に固定してもよい。バネ35は、ナット47と、軸支持部40Bとを接続する。軸支持部40Bは、底面支持板34の第二軸支持板41に形成されている貫通孔41aの内周面を摺動可能である。
即ち、前火格子31を、前火格子31が移動火格子16の移動に伴い移動する向きと逆の向きに付勢できれば、どのような構成としてもよい。
また、シール装置30は本実施形態に限らず、落差壁の直下に板状の移動火格子が存在して往復運動するようなストーカ炉に効果的に適用可能であるが、本実施形態のようにストーカ各段の傾斜の向きが異なる場合は、同一の機構で対応できる分、機器コストが減るので、さらに好適である。
【0070】
〔変形例〕
以下、本発明のストーカ炉用シール装置が配置されるストーカ炉の変形例について図面を参照して詳細に説明する。なお、本変形例では、上述した実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
図7に示すように、ストーカ5の燃焼段12と後燃焼段13との間には段差(落差壁)がない。即ち、燃焼段12と後燃焼段13とは、連続的に接続されている。換言すれば、燃焼段12の搬送方向下流側の端部12cと後燃焼段13の搬送方向上流側の端部13bとが同じ高さになるように形成されている。
第二シール装置30Bは、乾燥段11と燃焼段12との間の第二落差壁28にのみ設けられている。
【0071】
本変形例によれば、仮に乾燥段11を転がり落ちた被焼却物Tの勢いが強く、燃焼段12をその勢いで通過したとしても、少なくとも後燃焼段13で停止し、後燃焼段13から排出されることはない。そして、後燃焼段13と燃焼段12が段差なく連続的に接続されていることにより、万一、後燃焼段13まで十分に燃焼されない被焼却物Tが転がる等して進んだとしても、自重により燃焼段12まで戻され、燃焼を行うことができる。すなわち、不完全に燃焼された被焼却物Tの排出を極力低減することができる。
本変形例においても、シール装置30を、付勢方向を上述のように「押し出す方向」と「引き込む方向」に適宜設定して配置することで、当該ストーカ炉のシール性を向上することができることは、実施例と同様である。
【0072】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、前火格子31を付勢する構成は、上記した構成に限ることはなく、例えば、圧縮コイルバネではなく引張コイルバネや皿バネを採用した構成としてもよい。
【解決手段】複数の固定火格子と複数の移動火格子16を備え、被焼却物を搬送しつつ、被焼却物の焼却を行うストーカ炉の落差壁27と移動火格子16との間をシールするストーカ炉用シール装置30であって、その先端31cが移動火格子16に接するように配置された前火格子31と、落差壁27に固定され、前火格子31の上面31aを支持する上面支持板33と、上面支持板33の下方に配置され、前火格子31の底面31bを支持する底面支持板34と、を有する支持部32と、前火格子31を、前火格子31が移動火格子16の移動に伴い移動する向きと逆の向きに付勢するバネ35と、を有するストーカ炉用シール装置を提供する。