(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(機能性セラミックス体100の構成)
機能性セラミックス体100の構成について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、機能性セラミックス体100の平面図である。
図2は、
図1のA−A断面図である。
図1では、第2層102の表面102Sが平面視されている。
図2では、第2層102の厚み方向に平行な断面が図示されている。
【0013】
機能性セラミックス体100は、セラミックスの電気的、熱的、化学的、磁気的、及び光学的特性のうち少なくとも1つの特性を利用した機能性セラミックス素子に利用することができる。機能性セラミックス素子としては、例えば、燃料電池、太陽電池、圧電/電歪素子、NOxセンサ、PM(Particulate Matter)センサ、PN(Particulate Number)センサ、セラミックスフィルタ、触媒担体、発光ダイオード、及び発熱体などが挙げられる。機能性セラミックス体100は、それ自体が機能性セラミックス素子として機能してもよいし、機能性セラミックス素子の一部を構成していてもよい。
【0014】
機能性セラミックス体100は、第1層101と第2層102とを備える。
【0015】
1.第1層101
本体部101は、板状又は層状に形成される。第1層101は、セラミックス及び/又は金属によって構成される。第1層101がセラミックスによって構成される場合、第1層101を構成するセラミックスとしては、構造用セラミックス及び機能性セラミックスのいずれも用いることができる。第1層101を構成するセラミックスは、第1層101に与えられる機能に応じて選択することができる。第1層101を構成するセラミックスの具体例としては、例えば、酸化物系セラミックス(アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、フェライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、コージライトなど)、窒化物系セラミックス(窒化アルミニウム、窒化ケイ素など)、炭化物系(炭化ケイ素など)などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0016】
第1層101が金属によって構成される場合、第1層101を構成する金属としては、機能性セラミックス素子における電気的接続のための部材(例えば、電極層、集電層及び端子など)に用いられる周知の材料を用いることができる。第1層101を構成する金属の具体例としては、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、鉄、コバルト、ランタン、ストロンチウム、マンガン、及びこれらから選択される少なくとも1種以上の元素を含む合金を用いることができるが、これに限られるものではない。
【0017】
また、第1層101がセラミックス及び金属(すなわち、いわゆるサーメット)によって構成される場合、第1層101を構成するサーメットは、上述した構造用セラミックス又は機能性セラミックスと上述した金属との混合物によって構成することができる。
【0018】
第1層101の平面形状及び平面サイズは特に制限されるものではなく、機能性セラミックス素子の形状や第1層101の機能及び強度などを考慮して設定することができる。本実施形態において、第1層101の平面形状は正方形であるが、長方形、円形、楕円形、三角形、五角以上の多角形、及びその他の形状であってもよい。
【0019】
第1層101の厚みは特に制限されるものではなく、第1層101の機能及び強度などを考慮して設定することができる。
【0020】
第1層101の気孔率は特に制限されるものではなく、第1層101の機能及び強度などを考慮して設定することができる。第1層101は、多孔質であってもよいし、緻密質であってもよい。
【0021】
2.第2層102
第2層102は、第1層101上に形成される。第2層102は、セラミックス及び/又は金属によって構成される。第2層102は、セラミックス材料及び/又は金属材料によって構成される成形体を焼成することによって形成される。成形体は、材料粉末をプレス成形することによって、材料粉末を含むスラリー又はペーストを塗布することによって、或いは、材料粉末を含むスラリーをテープ成形することによって作製することができるが、これに限られるものではない。
【0022】
第2層102がセラミックスによって構成される場合、第2層102を構成するセラミックスとしては、構造用セラミックス及び機能性セラミックスのいずれも用いることができる。第2層102を構成するセラミックスは、機能性セラミックス素子において第2層102に与えられる機能に応じて選択することができる。第2層102を構成するセラミックスは、第1層101を構成するセラミックスと同種材料であってもよいし、異種材料であってもよい。第2層102を構成するセラミックスの具体例は、上述した第1層101を構成するセラミックスの具体例と同様である。
【0023】
第2層102が金属によって構成される場合、第2層102を構成する金属は、第1層101を構成する金属と同種であってもよいし、異種であってもよい。第2層102を構成する金属の具体例は、上述した第1層101を構成する金属の具体例と同様である。
【0024】
また、第2層102がセラミックス及び金属(すなわち、いわゆるサーメット)によって構成される場合、第2層102を構成するサーメットは、第1層101を構成するサーメットと同種であってもよいし、異種であってもよい。第2層102を構成するサーメットの具体例は、上述した第1層101を構成するサーメットの具体例と同様である。
【0025】
第2層102の平面形状及び平面サイズは特に制限されるものではなく、機能性セラミックス素子の形状や第2層102の機能及び強度などを考慮して設定することができる。本実施形態において、第2層102平面形状は正方形であるが、長方形、円形、楕円形、三角形、五角以上の多角形、及びその他の形状であってもよい。また、本実施形態において、第2層102の平面形状は、第1層101の平面形状と同じであるが、第1層101の平面形状と異なっていてもよい。また、本実施形態において、第2層102の平面サイズは、第1層101の平面サイズよりも一回り小さいが、第1層101の平面サイズと同じであってもよいし、第1層101の平面サイズより大きくてもよい。
【0026】
第2層102の厚みは特に制限されるものではなく、第2層102の機能及び強度などを考慮して設定することができる。
【0027】
第2層102の気孔率は特に制限されるものではなく、第2層102の機能及び強度などを考慮して設定することができる。第2層102は、多孔質であってもよいし、緻密質であってもよい。
【0028】
第2層102は、本体部102aと凸部102bとを有する。
【0029】
本体部102aは、板状又は層状に形成される。本体部102aは、第2層102のうち第2層102の機能を主に担う部分である。例えば、第2層102が、電極層として機能する場合、電流は主に本体部102a内を流れる。
【0030】
凸部102bは、第1層101と反対側に向かって本体部102aから突出する。凸部102bは、本体部102aの表面102S上に形成されている。凸部102bは、例えば、スクリーン印刷法を用いて第2層102の成形体を形成する際に、部分的に印刷回数を増やすことによって形成することができる。
【0031】
このように、本体部102aの表面102Sに凸部102bを形成することによって、機能性セラミックス体100の成形体を焼成する際に第2層102の成形体を下向きにして凸部102bをセッターに当接させると、本体部102aをセッターから離すことができる。そのため、セッターの構成成分(以下、「セッター成分」という。)が本体部102aに拡散することを抑制できる。また、セッター成分が凸部102bに拡散したとしても、凸部102bの内部にセッター成分を集約することができる。その結果、セッター成分が、本体部102aが担う機能に悪影響を及ぼすことを抑制できる。なお、セッター成分は、セッターの構成材料によるものであるが、例えば、Al元素、Y元素、Zr元素などが挙げられる。
【0032】
さらに、凸部102bをセッターに当接させて本体部102aをセッターから離すことによって、本体部102aの構成成分(以下、「第2層成分」という。)がセッターに拡散して本体部102aに組成ズレが生じることを抑制できる。
【0033】
図1に示すように、凸部102bは、所定方向に沿って直線状に延びるように形成されている。ただし、凸部102bの平面形状はこれに限られるものではなく、例えば、曲線状、波線状、円形状、多角形状などであってもよい。
【0034】
また、
図1に示すように、凸部102bは、第2層102の中央からずれた位置に配置されている。ただし、凸部102bの位置はこれに限られるものではなく、第2層102の中央に配置されていてもよいし、第2層102の一端部に配置されていてもよい。特に、凸部102bが第2層102の外縁に配置されている場合には、本体部102aの中央部にセッター成分が拡散することを抑制できるため、本体部102aが担う機能に悪影響を及ぼすことをより抑制できる。
【0035】
凸部102bの断面形状は特に制限されないが、
図2に示すように、先端に向かってテーパ状であることが好ましい。これにより、凸部102bをセッターに当接させた状態で焼成する際に、凸部102bのうちセッターと当接する領域を狭くすることができる。そのため、凸部102bの先端が平坦である場合に比べて、セッター成分が凸部102bに拡散することをより抑制できる。
【0036】
なお、凸部102bは、第2層102の表面102Sに形成される微小な凹凸(いわゆる、テクスチャー)とは異なるものである。例えば、スクリーン印刷法を用いて第2層102を形成した場合、表面102Sには1μm〜3μm程度の凹凸が形成される場合があるが、凸部102bの高さHは、それら微小な凹凸よりも大きい。
【0037】
ここで、凸部102bの高さHに対する幅Wの比(W/H)は特に制限されないが、0.5以上とすることができる。凸部102bの高さHに対する幅Wの比は、1以上が好ましい。これにより、凸部102bをセッターに当接させた状態で焼成する際に、凸部102bにクラックが生じることを抑制できる。
【0038】
凸部102bの高さHは特に制限されないが、例えば5μm以上100μm以下とすることができる。凸部の高さHは、80μm以下が好ましい。これにより、凸部102bをセッターに当接させた状態で焼成する際に、凸部102bにクラックが生じることをより抑制できる。また、凸部の高さHは、8μm以上が好ましい。これにより、凸部102bをセッターに当接させた状態で焼成する際に、セッター成分が本体部102aにまで拡散することをより抑制できる。
【0039】
凸部102bの幅Hは特に制限されるものではなく、第2層102の幅Aに応じて適宜設定することができる。凸部102bの幅Wは、第2層102の幅Aの20%未満が好ましい。これにより、本体部102aの表面102Sにおいて凸部102bが占める面積が抑えられるため、本体部102aの機能性を確保することができる。例えば、後述するように、第2層102が燃料電池の電解質層に相当する場合に、電解質層の酸素イオン伝導性が確保されるため、燃料電池の初期出力を向上させることがきる。
【0040】
(機能性セラミックス体100の変形例)
1.変形例1
次に、機能性セラミックス体100の変形例1について説明する。
図3は、変形例1に係る機能性セラミックス体100aの断面図である。
【0041】
本変形例1に係る機能性セラミックス体100aでは、第1層101が、本体部101aと凸部101bとを有している。本体部101aは、板状又は層状に形成される。凸部101bは、本体部101a上に配置される。凸部101bは、第2層102側に突出している。第1層101の凸部101bは、第2層102の凸部102cの内側に位置している。
【0042】
凸部101bは、例えば、スクリーン印刷法を用いて本体部101aの成形体を形成する場合に、部分的に印刷回数を増やすことによって形成することができる。
【0043】
このような凸部101bを予め第1層101に形成しておくことによって、第1層101の凸部101bの形状に倣って第2層102の凸部102cを自然に形成することができる。従って、例えば、スクリーン印刷法で第2層102の成形体を形成する際に、部分的に印刷回数を増やすことなく凸部102cを形成することができる。
【0044】
2.変形例2
図4は、変形例2に係る機能性セラミックス体100bの断面図である。本変形例2に係る機能性セラミックス体100bでは、第2層102の幅Aが、第1層101の幅Bの1/4程度である。このように、第2層102が第1層101よりも相当小さい場合には、凸部102dをセッターに当接させた状態で焼成する際に、第1層101の一端部がセッターと当接することになる。そのため、第2層102の本体部102aへのセッター成分の拡散をより抑制できるとともに、セッターへの第2層成分の拡散をより抑制できる。
【0045】
3.変形例3
図5は、変形例3に係る機能性セラミックス体100cの平面図である。機能性セラミックス体100cは、機能性セラミックス体100と同様、第1層101と第2層102とを備える。ただし、第2層102は、平面形状が矩形環状の凸部102eを有する。凸部102eは、連続的な環状に形成されており、全体として矩形である。
【0046】
凸部102eは、平面視において閉じた領域を形成している。閉じた領域とは、第2層102の平面視において、凸部102eによって囲まれた領域である。このように、凸部102eで閉じた領域を形成することによって、凸部102eをセッターに当接させた状態で焼成する際に、凸部102eが高台として機能するため、焼成時の安定性を向上させることができる。
【0047】
また、本変形例3では、凸部102eが、第2層102の外縁に沿って配置されている。そのため、焼成時の安定性をより向上させることができる。ただし、凸部102eは、第2層102の外縁よりも内側に配置されていてもよい。
【0048】
4.変形例4
図6は、変形例4に係る機能性セラミックス体100dの平面図である。機能性セラミックス体100dは、機能性セラミックス体100と同様、第1層101と第2層102とを備える。ただし、第2層102は、平面形状がC字状の凸部102fを有する。凸部102fは、断続的な環状に形成されている。このように、第2層102の凸部は、少なくとも一部において繋がっていなくてもよい。
【0049】
5.変形例5
図7は、変形例5に係る機能性セラミックス体100eの平面図である。機能性セラミックス体100eは、機能性セラミックス体100と同様、第1層101と第2層102とを備える。ただし、第2層102は、平面形状が格子状の凸部102gを有する。このように、第2層102の凸部には、部分的に開口部が設けられていてもよい。
【0050】
6.変形例6
図8は、変形例6に係る機能性セラミックス体100fの平面図である。機能性セラミックス体100fは、機能性セラミックス体100と同様、第1層101と第2層102とを備える。ただし、第2層102は、点状の複数の凸部を含む凸部102hを有する。点状の凸部どうしは、互いに離れている。このように、第2層102の凸部は、複数の凸部の集合体であってもよい。
【0051】
(燃料電池の発電部への適用例)
上述した機能性セラミックス体100を燃料電池の発電部に適用した場合について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する発電部10では、「固体電解質層12」が「第1層101」に対応し、「バリア層13」が「第2層102」に対応している。
【0052】
図9は、発電部10の断面図である。発電部10は、燃料極11、固体電解質層12、バリア層13及び空気極14を備える。発電部10は、横縞型、縦縞型、燃料極支持型、電解質平板型及び円筒型などの様々な燃料電池に適用可能である。
【0053】
1.燃料極11
燃料極11は、燃料極集電層11aと燃料極活性層11bを有する。
【0054】
燃料極集電層11aは、燃料ガスを燃料極活性層11bまで透過させるための多孔性と、集電のための電子伝導性とを有する。燃料極集電層11aは、遷移金属とセラミックス材料によって構成することができる。遷移金属としては、Ni(ニッケル)が好適である。Ni(ニッケル)の少なくとも一部は、NiO(酸化ニッケル)の形態であってもよい。セラミックス材料としては、例えば8YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、Y
2O
3(イットリア)、CSZ(カルシウムジルコネート)などが挙げられる。
【0055】
燃料極集電層11aの気孔率は特に制限されないが、25%〜50%とすることができる。燃料極集電層11aの導電率は特に制限されないが、300S/cm以上とすることができる。燃料極集電層11aの厚みは特に制限されないが、燃料極集電層11aを支持基板として用いる場合には2mm〜10mmとすることができ、燃料極集電層11aを支持基板上に形成する場合には50μm〜500μmとすることができる。
【0056】
燃料極活性層11bは、燃料極集電層11aと固体電解質層12の間に配置される。燃料極活性層11bは、多孔性と電子伝導性と酸素イオン伝導性とを有する。燃料極活性層11bは、遷移金属とセラミックス材料によって構成することができる。遷移金属としては、Ni(ニッケル)が好適である。Ni(ニッケル)の少なくとも一部は、NiO(酸化ニッケル)の形態であってもよい。セラミックス材料としては、例えば8YSZやGDC(ガドリニウムドープセリア)などが挙げられる。
【0057】
燃料極活性層11bの気孔率は特に制限されないが、25%〜50%とすることができる。燃料極活性層11bの厚みは特に制限されないが、1μm〜30μmとすることができる。
【0058】
2.固体電解質層12
固体電解質層12は、燃料極11と空気極14の間に配置される。固体電解質層12は、燃料極11上に配置される。固体電解質層4は、空気極14から燃料極11へ酸素イオンを伝導させるためのイオン伝導性と、燃料極11に供給される燃料ガスと空気極14に供給される酸素含有ガスとのリークを防止するための緻密性とを有する。固体電解質層12は、緻密質なセラミックス材料によって構成することができる。セラミックス材料としては、例えば3YSZ、8YSZ、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)などが挙げられる。
【0059】
固体電解質層の気孔率は、20%以下とすることができ、10%以下であることが好ましい。固体電解質層12の厚さは特に制限されないが、1μm〜50μmとすることができる。
【0060】
3.バリア層13
バリア層13は、固体電解質層12と空気極14の間に配置される。バリア層13は、固体電解質層12上に配置される。バリア層13は、空気極14から固体電解質層12に元素が拡散することを抑制する。バリア層13は、元素拡散抑制機能を有する酸化物によって構成される。このような酸化物としては、例えばGDCやSDC(サマリウムドープセリア)などが挙げられる。
【0061】
バリア層13の気孔率は、20%以下とすることができ、10%以下であることが好ましい。反応防止膜13の厚さは特に制限されないが、1μm〜50μmとすることができる。
【0062】
4.バリア層13の凸部
バリア層13は、第1凸部131と第2凸部132を有する。
【0063】
第1凸部131は、燃料極11と反対側に向かって突出する。第1凸部131は、バリア層13の固体電解質層12とは反対側の表面13Sに形成される。バリア層13に第1凸部131を形成することによって、後述するバリア層13の焼成工程においてバリア層13がセッターと接触しにくくなるため、セッター成分が固体電解質層12に拡散することを抑制できるとともに、電解質成分がセッターに拡散して固体電解質層12に組成ズレが生じることを抑制できる。
【0064】
表面13S上における第1凸部131の位置は特に制限されるものではないが、表面13Sの中央から離れていることが好ましい。第1凸部131が、表面13Sの一端部に形成されている。これにより、バリア層13の焼成工程においてバリア層13の中央部がセッターと接触しにくくなるため、発電性能に影響を与えやすい固体電解質層12の中央部にセッター成分が拡散することを抑制しやすくなる。
【0065】
バリア層13の表面13Sを平面視した場合、第1凸部131は、表面13Sの一端辺に沿って短冊状に細長く形成されている。ただし、第1凸部131の平面形状は特に制限されるものではなく、例えば、円形状、矩形状、波線状などであってもよい。
【0066】
第1凸部131は、表面13Sに形成される微小な凹凸(いわゆる、テクスチャー)とは異なるものである。例えば、スクリーン印刷法によってバリア層13を形成する場合、表面13Sには1μm〜3μm程度の凹凸が形成されるが、第1凸部131の高さH1は表面13Sの凹凸よりも大きい。
【0067】
第2凸部132は、燃料極11と反対側に向かって突出する。第2凸部132は、バリア層13の表面13Sに形成される。バリア層13に第1凸部131だけでなく第2凸部132を形成することによって、バリア層13の焼成工程においてバリア層13がセッターと接触する領域をより狭くできるため、セッター成分が固体電解質層12に拡散することをより抑制できる。その結果、発電部10の発電性能が低下することをより抑制できる。
【0068】
表面13S上における第2凸部132の位置は特に制限されるものではないが、表面13Sの中央から離れていることが好ましく、第1凸部131から離れていることがより好ましい。これにより、バリア層13の焼成工程においてバリア層13の中央部がセッターとさらに接触しにくくなるため、発電部10の発電性能が低下することをさらに抑制できる。
【0069】
バリア層13の表面13Sを平面視した場合、第2凸部132は、表面13Sの他端辺に沿って短冊状に細長く形成されている。第2凸部132は、第1凸部131とは反対側に配置されている。ただし、第2凸部132の平面形状は特に制限されるものではなく、例えば、円形状、矩形状、波線状などであってもよい。第2凸部132は、表面13Sに形成される微小な凹凸とは異なるものである。
【0070】
ここで、第1凸部131の高さH1に対する幅W1の比(W1/H1)は、1以上が好ましい。同様に、第2凸部132の高さH2に対する幅W2の比(W2/H2)は特に制限されないが、1以上が好ましい。これにより、焼成時、各凸部131,132にクラックが生じることを抑制できる。
【0071】
また、各凸部131,132の高さH1,H2は、80μm以下が好ましい。これにより、焼成時、各凸部131,132にクラックが生じることをより抑制できる。また、各凸部131,132の高さH1,H2は、8μm以上が好ましい。これにより、焼成時、セッター成分がバリア層13の内部にまで拡散することをより抑制できる。
【0072】
また、第1凸部131の幅W1は、バリア層13の幅A1の20%未満が好ましい。同様に、第2凸部132の幅W2は、バリア層13の幅A1の20%未満が好ましい。これにより、バリア層13の機能性(酸素イオン伝導性)を確保することができる。
【0073】
なお、各凸部131,132の高さH1,H2は、互いに異なる値であってもよいし、各凸部131,132の幅W1,W2は、互いに異なる値であってもよい。
【0074】
本実施形態において、各凸部131,132は空気極14によって被覆されているが、これに限られるものではない。各凸部131,132の少なくとも一部は、空気極14から露出していてもよい。
【0075】
5.空気極14
空気極14は、空気極活性層14aと空気極集電層14bとを有する。
【0076】
空気極活性層14aは、バリア層13上に配置される。空気極活性層14aは、混合導電性を有する多孔質材料によって構成される。空気極活性層14aは、例えば、(La,Sr)(Co,Fe)O
3(LSCF、ランタンストロンチウムコバルトフェライト)、(La,Sr)FeO
3(LSF、ランタンストロンチウムフェライト)、La(Ni,Fe)O
3(LNF、ランタンニッケルフェライト)、(La,Sr)CoO
3(LSC、ランタンストロンチウムコバルタイト)などによって構成することができる。
【0077】
空気極活性層14aの気孔率は、20%以上とすることができ、30%以上であることが好ましい。空気極活性層14aの厚さは特に制限されないが、10〜100μmとすることができる。
【0078】
空気極集電層14bは、空気極活性層14a上に配置される。空気極集電層14bは、電子伝導性を有する多孔質材料によって構成される。空気極集電層14bは、例えば、LSCF、LSC、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)などによって構成することができる。空気極集電層14bの厚さは特に制限されないが、50μm〜500μmとすることができる。
【0079】
(発電部10の製造方法)
次に、発電部10の製造方法の一例について説明する。
【0080】
まず、金型プレス成形法で燃料極集電層用材料の粉末を成形することによって、燃料極集電層11aの成形体を形成する。次に、燃料極活性層用材料をペースト化して、燃料極集電層11aの成形体上にスクリーン印刷することによって、燃料極活性層11bの成形体を形成する。
【0081】
次に、固体電解質用材料をペースト化して、燃料極活性層11bの成形体上にスクリーン印刷することによって、固体電解質層12の成形体を形成する。
【0082】
次に、バリア層用材料をペースト化して、固体電解質層12の成形体上にスクリーン印刷することによって、バリア層13の成形体を形成する。この際、両端部における印刷回数を増やすことによって、第1凸部131及び第2凸部132の成形体を一体的に形成する。以上によって、燃料極集電層11a、燃料極活性層11b、固体電解質層12及びバリア層13それぞれの成形体が積層された積層体が形成される。
【0083】
次に、
図10に示すように、バリア層13の成形体を下向きにした状態で積層体をセッター30上に載置して焼成(1300〜1600℃、2〜20時間)する。この際、バリア層13のうち第1凸部131及び第2凸部132だけがセッター30と接触し、バリア層13の中央部分はセッター30から離れている。そのため、セッター30の構成成分は、第1凸部131及び第2凸部132だけに拡散し、バリア層13の中央部分には拡散しない。また、第1凸部131及び第2凸部132においてバリア層13は厚くなっているため、第1凸部131及び第2凸部132に拡散したセッター30の構成成分は、固体電解質層12まで到達しにくい。従って、固体電解質層12にセッター30の構成成分が拡散することを抑制できる。なお、セッター30には、アルミナ、ジルコニア及びイットリアなどによって構成される板状部材を用いることができる。
【0084】
次に、空気極材料をペースト化してバリア層13上にスクリーン印刷することによって、空気極14の成形体を形成する。次に、空気極14の成形体を焼成(900〜1100℃、1〜20時間)する。
【0085】
(燃料電池のインターコネクタ部への適用例)
上述した機能性セラミックス体100を燃料電池のインターコネクタ部に適用した場合について、図面を参照しながら説明する。以下に説明するインターコネクタ部20では、「中間層21」が「第1層101」に対応し、「インターコネクタ22」が「第2層102」に対応している。
【0086】
図11は、インターコネクタ部20の断面図である。
【0087】
インターコネクタ部20は、上述した燃料極集電層11a、中間層21及びインターコネクタ22を備える。インターコネクタ部20は、発電部10とともに横縞型、縦縞型、燃料極支持型、電解質平板型及び円筒型などの様々な燃料電池に適用可能である。
【0088】
1.中間層21
中間層21は、燃料極集電層11a上に配置される。中間層21は、燃料極集電層11aとインターコネクタ22の間に介挿されている。中間層21は、燃料極集電層11aとインターコネクタ22の間の全域に形成されているが、燃料極集電層11aとインターコネクタ22の間の一部の領域のみに形成されていてもよい。中間層21は、電子伝導性と緻密性を有する。中間層21を構成する材料としては、Y
2O
3、GDC、クロマイト系材料などを用いることができる。
【0089】
中間層21の気孔率は、20%以下とすることができ、10%以下であることが好ましい。中間層21の厚さは特に制限されないが、2μm〜20μmとすることができる。
【0090】
2.インターコネクタ22
インターコネクタ22は、中間層21上に配置される。インターコネクタ22は、電子伝導性と緻密性を有する。インターコネクタ22を構成する材料としては、例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)や(Sr,La)TiO
3(ストロンチウムチタネート)などを用いることができる。インターコネクタ22は、Ca,Mg,Al及びSrから選択される少なくとも1種類の元素を含んでいてもよい。
【0091】
インターコネクタ22の気孔率は、20%以下とすることができ、10%以下であることが好ましい。インターコネクタ22の厚さは特に制限されないが、10μm〜100μmとすることができる。
【0092】
3.インターコネクタ22の凸部
インターコネクタ22は、第1凸部221と第2凸部222を有する。
【0093】
第1凸部221は、燃料極集電部11aと反対側に向かって突出する。第1凸部221は、インターコネクタ22の燃料極集電層11aとは反対側の表面22Sに形成される。インターコネクタ22に第1凸部221を形成することによって、後述するインターコネクタ22の焼成工程においてインターコネクタ22がセッターと接触しにくくなるため、セッター成分がインターコネクタ22に拡散することを抑制できるとともに、インターコネクタ成分がセッターに拡散してインターコネクタ22に組成ズレが生じることを抑制できる。その結果、発電部10の発電性能が低下することを抑制できる。
【0094】
表面22S上における第1凸部221の位置は特に制限されるものではないが、表面22Sの中央から離れていることが好ましい。第1凸部221は、表面22Sの一端部に形成されている。これにより、インターコネクタ22の焼成工程においてインターコネクタ22の中央部がセッターと接触しにくくなるため、発電性能に影響を与えやすい燃料極集電層11aの中央部にセッター成分が拡散することを抑制しやすくなる。
【0095】
インターコネクタ22の表面22Sを平面視した場合、第1凸部221は、表面22Sの一端辺に沿って短冊状に細長く形成されている。ただし、第1凸部221の平面形状は特に制限されるものではなく、例えば、円形状、矩形状、波線状などであってもよい。
【0096】
第1凸部221は、表面22Sに形成される微小な凹凸(いわゆる、テクスチャー)とは異なるものである。例えば、スクリーン印刷法によってインターコネクタ22を形成する場合、表面22Sには1μm〜3μm程度の凹凸が形成されるが、第1凸部221の高さH3は表面22Sの凹凸よりも大きい。
【0097】
第2凸部222は、燃料極集電層11aと反対側に向かって突出する。第2凸部222は、インターコネクタ22の表面22Sに形成される。インターコネクタ22に第1凸部221だけでなく第2凸部222を形成することによって、インターコネクタ22の焼成工程においてインターコネクタ22がセッターと接触する領域をより狭くできるため、セッター成分がインターコネクタ22に拡散することをより抑制できる。その結果、発電部10の発電性能が低下することをより抑制できる。
【0098】
表面22S上における第2凸部222の位置は特に制限されるものではないが、表面22Sの中央から離れていることが好ましく、第1凸部221から離れていることがより好ましい。これにより、インターコネクタ22の焼成工程においてインターコネクタ22の中央部がセッターとさらに接触しにくくなるため、発電部10の発電性能が低下することをさらに抑制できる。
【0099】
本実施形態において、インターコネクタ22の表面22Sを平面視した場合、第2凸部222は、表面22Sの他端辺に沿って短冊状に細長く形成されている。第2凸部222は、第1凸部221とは反対側に配置されている。ただし、第2凸部222の平面形状は特に制限されるものではなく、例えば、円形状、矩形状、波線状などであってもよい。第2凸部222は、表面22Sに形成される微小な凹凸とは異なるものである。
【0100】
ここで、第1凸部221の高さH3に対する幅W3の比(W3/H3)は、1以上が好ましい。同様に、第2凸部222の高さH4に対する幅W4の比(W4/H4)は特に制限されないが、1以上が好ましい。これにより、焼成時、各凸部221,222にクラックが生じることを抑制できる。
【0101】
また、各凸部221,222の高さH3,H4は、80μm以下が好ましい。これにより、焼成時、各凸部221,222にクラックが生じることをより抑制できる。また、各凸部221,222の高さH1,H2は、8μm以上が好ましい。これにより、焼成時、セッター成分がインターコネクタ22の内部にまで拡散することをより抑制できる。
【0102】
また、第1凸部221の幅W3は、インターコネクタ22の幅A2の20%未満が好ましい。同様に、第2凸部132の幅W2は、インターコネクタ22の幅A2の20%未満が好ましい。これにより、インターコネクタ22の機能性(電気伝導性)を確保することができる。
【0103】
各凸部221,222の高さH3,H4は、互いに異なる値であってもよい。また、各凸部221,222の幅W3,W4は、互いに異なる値であってもよい。
【0104】
(インターコネクタ部20の製造方法)
次に、インターコネクタ部20の製造方法の一例について説明する。
【0105】
まず、金型プレス成形法で燃料極集電層用材料の粉末を成形することによって、燃料極集電層11aの成形体を形成する。
【0106】
次に、中間層材料をペースト化して、燃料極集電層11aの成形体上にスクリーン印刷することによって、中間層21の成形体を形成する。
【0107】
次に、インターコネクタ材料をペースト化して中間層21の成形体上にスクリーン印刷することによって、インターコネクタ22の成形体を形成する。この際、両端部における印刷回数を増やすことによって、第1凸部221及び第2凸部222の成形体を一体的に形成する。以上によって、燃料極集電層11a、中間層21及びインターコネクタ22それぞれの成形体が積層された積層体が形成される。
【0108】
次に、
図12に示すように、インターコネクタ22の成形体を下向きにして積層体をセッター30上に載置した状態で焼成(1300〜1600℃、2〜20時間)する。この際、インターコネクタ22のうち第1凸部221及び第2凸部222だけがセッター30と接触し、インターコネクタ22の中央部分はセッター30から離れている。そのため、セッター30の構成成分は、第1凸部221及び第2凸部222だけに拡散し、インターコネクタ22の中央部分には拡散しない。また、第1凸部221及び第2凸部222においてインターコネクタ22は厚くなっているため、第1凸部221及び第2凸部222に拡散したセッター30の構成成分は、燃料極集電層11aまで到達しにくい。従って、燃料極集電層11aにセッター30の構成成分が拡散することを抑制できる。
【0109】
(横縞型燃料電池への適用例1)
次に、機能性セラミックス体100がそれぞれ適用された発電部10及びインターコネクタ部20を横縞型燃料電池に適用した適用例1について、図面を参照しながら説明する。
【0110】
図13は、横縞型燃料電池1の断面図である。横縞型燃料電池1は、固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)である。横縞型燃料電池1は、支持基板2と、複数の発電部10と、複数のインターコネクタ部20とを備える。
【0111】
支持基板2は、扁平かつ一方向に長い板状に形成されている。支持基板2は、電気絶縁性の多孔質材料を主成分として含有する。支持基板2を構成する材料としては、MgO(酸化マグネシウム)、MgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)とMgO(酸化マグネシウム)の混合物、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)、8YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、Y
2O
3(イットリア)、CZO(カルシウムジルコネート)などの絶縁性セラミックスを用いることができる。
【0112】
支持基板2は、燃料ガスの改質反応を促す触媒として機能する遷移金属又は当該遷移金属の酸化物を含んでいてもよい。遷移金属としては、Ni(ニッケル)が好適である。支持基板2の厚さは特に制限されないが、1mm〜5mmとすることができる。支持基板2の気孔率は特に制限されないが、還元雰囲気において20%〜60%とすることができる。
【0113】
支持基板2の内部には、ガス流路2aが形成される。ガス流路2aは、支持基板2の長手方向に沿って延びる。発電時、ガス流路2aに流される燃料ガスは、支持基板2の内部を通過して発電部10の燃料極集電層11a及び燃料極活性層11bに供給される。ガス流路2aの本数は適宜設定可能である。
【0114】
支持基板2の第1主面2Sと第2主面2Tそれぞれには、発電部10とインターコネクタ部20が、長手方向において交互に配置されている。隣接する一組の発電部10とインターコネクタ部20は、燃料極集電層11aを共有している。
【0115】
各発電部10の固体電解質層12の両端部は、各発電部10の両側に配置された2つのインターコネクタ部20それぞれのインターコネクタ22に接続されている。このように、固体電解質層12とインターコネクタ22が連なることによって、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを防止するシール膜が形成されている。インターコネクタ22は、燃料極集電層11aを基準として、固体電解質層12やバリア層13と同じ側に位置する。
【0116】
各発電部10の空気極集電層14bは、燃料極集電層11aを共有していないインターコネクタ部20のインターコネクタ22に接続されている。各発電部10のバリア層13は、固体電解質層12上に配置される。各発電部10のバリア層13は、第1凸部131及び第2凸部132を有する。
【0117】
第1凸部131及び第2凸部132は、空気極14を除いた横縞型燃料電池1の構成部材のうち最も支持基板2から離れている。すなわち、第1凸部131及び第2凸部132は、支持基板2から最も高い位置に配置されている。従って、バリア層13を焼成する際には、第1凸部131及び第2凸部132だけがセッター30(
図10参照)と接触するため、インターコネクタ22にセッター30の構成成分が拡散することを抑制できる。
【0118】
なお、横縞型燃料電池1のインターコネクタ部20のインターコネクタ22には、第1凸部221及び第2凸部222が形成されていないが、第1凸部221及び第2凸部222の少なくとも一方が形成されていてもよい。
【0119】
(横縞型燃料電池への適用例2)
次に、機能性セラミックス体100がそれぞれ適用された発電部10及びインターコネクタ部20を横縞型燃料電池に適用した適用例2について、図面を参照しながら説明する。
【0120】
図14は、横縞型燃料電池1aの構成を示す断面図である。横縞型燃料電池1aは、固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)である。横縞型燃料電池1aは、支持基板2と、複数の発電部10と、複数のインターコネクタ部20とを備える。
【0121】
1.支持基板2
支持基板2は、扁平かつ一方向に長い板状に形成されている。支持基板2は、電気絶縁性の多孔質材料を主成分として含有する。支持基板2を構成する材料としては、MgO(酸化マグネシウム)、MgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)とMgO(酸化マグネシウム)の混合物、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)、8YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、Y
2O
3(イットリア)、CZO(カルシウムジルコネート)などの絶縁性セラミックスを用いることができる。
【0122】
支持基板2は、燃料ガスの改質反応を促す触媒として機能する遷移金属又は当該遷移金属の酸化物を含んでいてもよい。遷移金属としては、Ni(ニッケル)が好適である。支持基板2の厚さは特に制限されないが、1mm〜5mmとすることができる。支持基板2の気孔率は特に制限されないが、還元雰囲気において20%〜60%とすることができる。
【0123】
支持基板2の内部には、ガス流路2aが形成される。ガス流路2aは、支持基板2の長手方向に沿って延びる。発電時、ガス流路2aに流される燃料ガスは、支持基板2の内部を通過して発電部10の燃料極集電層11a及び燃料極活性層11bに供給される。ガス流路2aの本数は適宜設定可能である。
【0124】
支持基板2の第1主面2Sと第2主面2Tそれぞれには、発電部10とインターコネクタ部20が、長手方向において交互に配置されている。隣接する一組の発電部10とインターコネクタ部20は、燃料極集電層11aを共有している。
【0125】
2.発電部10
次に、横縞型燃料電池1aの発電部10について説明する。発電部10は、燃料極11、固体電解質層12、バリア層13及び空気極14を備える。
【0126】
燃料極11の燃料極集電層11aは、支持基板2の主面に形成された凹部2b内に配置される。燃料極集電層11aは、凹部2bに埋設されている。燃料極集電層11aは、凹部2bと同じ外形を有する。燃料極集電層11aの外表面は、支持基板2の主面と面一で連なっている。燃料極集電層11aの外表面は、支持基板2の主面とともに一平面を構成する。なお、燃料極集電層11aの外表面と支持基板2の主面との間には、50μm以下程度の段差が存在していてもよい。
【0127】
ただし、燃料極集電層11aは、凹部2bに埋設されていなくてもよい。燃料極集電層11aは、支持基板2の主面上に配置されていてもよい。
【0128】
燃料極11の燃料極活性層11bは、支持基板2の外部に配置される。燃料極活性層11bの大部分は、燃料極集電層11a上に配置される。燃料極活性層11bの一端部は、後述するシール層23上に配置される。
【0129】
燃料極活性層11bは、第1凸部111及び第2凸部112を有する。第1凸部111及び第2凸部112それぞれは、積層方向において燃料極集電層11aと反対側に向かって突出する。第1凸部111及び第2凸部112それぞれは、積層方向においてバリア層13側に向かって突出する。燃料極活性層11bの厚みは、第1凸部111及び第2凸部112において部分的に厚くなっている。
【0130】
燃料極活性層11bの第1凸部111及び第2凸部112は、燃料極活性層11bの外縁に位置する。燃料極活性層11bの第1凸部111は、バリア層13の第1凸部131の燃料極集電層11a側に位置する。燃料極活性層11bの第2凸部112は、バリア層13の第2凸部132の燃料極集電層11a側に位置する。従って、焼成時にセッター30の構成成分が、バリア層13の第1凸部131及び第2凸部132から拡散してきたとしても、燃料極活性層11bの第1凸部111及び第2凸部112に拡散成分を集積できるため、燃料極集電層11aにまで拡散成分が到達することを抑制できる。また、第1凸部111及び第2凸部112のアンカー効果によって、燃料極活性層11bと固体電解質層12との密着性を向上させることができる。
【0131】
固体電解質層12は、2つのシール層23の間に配置される。固体電解質層12は、燃料極活性層11bを覆う。固体電解質層12は、第1凸部121及び第2凸部122を有する。第1凸部121及び第2凸部122それぞれは、積層方向において燃料極11と反対側に向かって突出する。第1凸部121及び第2凸部122それぞれは、積層方向においてバリア層13側に向かって突出する。固体電解質層12は、全体的に略均等な厚みで形成されている。
【0132】
固体電解質層12の第1凸部121は、バリア層13の第1凸部131の燃料極集電層11a側に位置する。固体電解質層12の第1凸部121は、積層方向においてバリア層13の第1凸部131と燃料極活性層11bの第1凸部111の間に配置される。固体電解質層12の第2凸部122は、バリア層13の第2凸部132の燃料極集電層11a側に位置する。固体電解質層12の第2凸部122は、積層方向においてバリア層13の第2凸部132と燃料極活性層11bの第2凸部112の間に配置される。従って、焼成時にセッター30の構成成分が、バリア層13の第1凸部131及び第2凸部132から拡散してきたとしても、固体電解質層12の第1凸部121及び第2凸部122に拡散成分を集積できるため、燃料極集電層11aにまで拡散成分が到達することを抑制できる。また、第1凸部121及び第2凸部122のアンカー効果によって、固体電解質層12とバリア層13の密着性を向上させることができる。
【0133】
バリア層13は、2つのシール層23の間に配置される。バリア層13は、固体電解質層12を覆う。バリア層13は、第1凸部131及び第2凸部132を有する。バリア層13の第1凸部131は、燃料極活性層11bの第1凸部111を基準として、燃料極集電層11aの反対側に位置する。バリア層13の第2凸部132は、燃料極活性層11bの第2凸部112を基準として、燃料極集電層11aの反対側に位置する。
【0134】
空気極14の空気極活性層14aは、バリア層13上に形成される。空気極活性層14aは、第1凸部141及び第2凸部142を有する。空気極活性層14aの第1凸部141及び第2凸部142それぞれは、積層方向においてバリア層13と反対側に向かって突出する。
【0135】
空気極14の空気極集電層14bは、空気極活性層14a上に形成される。空気極集電層14bは、第1凸部143及び第2凸部144を有する。第1凸部143及び第2凸部144それぞれは、空気極活性層14aと反対側に向かって突出する。第2凸部144は、積層方向において空気極活性層14aの第2凸部142上に配置される。
【0136】
また、空気極集電層14bは、第3凸部145及び第4凸部146を有する。空気極集電層14bの第3凸部145及び第4凸部146それぞれは、インターコネクタ22と反対側に向かって突出する。第3凸部145は、積層方向においてインターコネクタ22の第1凸部221上に配置される。第4凸部146は、積層方向においてインターコネクタ22の第2凸部222上に配置される。
【0137】
3.インターコネクタ部20
次に、横縞型燃料電池1aのインターコネクタ部20について説明する。横縞型燃料電池1aのインターコネクタ部20は、中間層21、インターコネクタ22及びシール層23を備える。
【0138】
中間層21は、支持基板2の外部に配置される。中間層21は、燃料極集電層11a上に配置される。中間層21は、シール層23の内側に配置される。中間層21は、第1凸部211及び第2凸部212を有する。第1凸部211及び第2凸部212それぞれは、積層方向において燃料極集電層11aと反対側に向かって突出する。第1凸部211及び第2凸部212それぞれは、積層方向においてインターコネクタ22側に向かって突出する。中間層21は、第1凸部211及び第2凸部212において部分的に厚くなっている。
【0139】
中間層21の第1凸部211及び第2凸部212は、中間層21の外縁に位置する。中間層21の第1凸部211は、積層方向においてインターコネクタ22の第1凸部221の燃料極集電層11a側に位置する。中間層21の第2凸部212は、積層方向においてインターコネクタ22の第2凸部222の燃料極集電層11a側に位置する。従って、焼成時にセッター30の構成成分が、インターコネクタ22の第1凸部221及び第2凸部222から拡散してきたとしても、中間層21の第1凸部211及び第2凸部212に拡散成分を集積できるため、燃料極集電層11aにまで拡散成分が到達することを抑制できる。また、第1凸部211及び第2凸部212のアンカー効果によって、中間層21とインターコネクタ22の密着性を向上させることができる。
【0140】
中間層21は、インターコネクタ22に接続される凹面21Sを有する。凹面21Sは、第1凸部211と第2凸部212の間に形成される。凹面21Sの略中央部は、燃料極集電層11a側に凹んでいる。これにより、中間層21とインターコネクタ22とが平面どうしで接触する場合に比べて、中間層21とインターコネクタ22との接触面積を大きくすることができるため、中間層21とインターコネクタ22との界面における電気抵抗を低減することができる。
【0141】
シール層23は、燃料極集電層11a上に配置される。シール層23は、中間層21を取り囲む。本実施形態において、シール層23は、インターコネクタ22のうち燃料極集電層11a側の部分も取り囲んでいる。シール層23は、燃料極活性層11b、固体電解質層12及びバリア層13それぞれの一端部に接続される。
【0142】
シール層23は、電気絶縁性を有する。すなわち、シール層23は、電子伝導性を有していない。シール層23は、例えば、MgO(マグネシア)、CaZrO
3(カルシウムジルコネート)、Y
2O
3(イットリア)、又はMgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)などによって構成することができる。
【0143】
シール層23は、第1凸部231及び第2凸部232を有する。第1凸部231及び第2凸部232それぞれは、積層方向において燃料極11と反対側に向かって突出する。第1凸部231及び第2凸部232それぞれは、積層方向においてインターコネクタ22側に向かって突出する。本実施形態において、シール層23は、第1凸部231及び第2凸部232において部分的に厚くなっている。
【0144】
シール層23の第1凸部231は、インターコネクタ22の第1凸部221の燃料極集電層11a側に位置する。シール層23の第1凸部231は、積層方向においてインターコネクタ22の第1凸部221と中間層21の第1凸部211の間に配置される。シール層23の第2凸部232は、インターコネクタ22の第2凸部222の燃料極集電層11a側に位置する。シール層23の第2凸部232は、積層方向においてインターコネクタ22の第2凸部222と中間層21の第2凸部222の間に配置される。従って、焼成時にセッター30の構成成分が、インターコネクタ22の第1凸部221及び第2凸部222から拡散してきたとしても、シール層23の第1凸部231及び第2凸部232に拡散成分を集積できるため、燃料極集電層11aにまで拡散成分が到達することを抑制できる。また、第1凸部231及び第2凸部232のアンカー効果によって、シール層23とインターコネクタ22の密着性を向上させることができる。
【0145】
インターコネクタ22は、中間層21上に配置される。インターコネクタ22は、第1凸部221及び第2凸部222を有する。第1凸部221及び第2凸部222それぞれは、積層方向において燃料極集電層11aと反対側に向かって突出する。第1凸部221及び第2凸部222それぞれは、積層方向において空気極14側に向かって突出する。本実施形態において、インターコネクタ22は、中間層21の凹面21Sと接触する中央部において厚くなっている。そのため、燃料極側と空気極側との間でガスリークが発生することを抑制できる。
【0146】
インターコネクタ22の第1凸部221及び第2凸部222は、インターコネクタ22の外縁に位置する。インターコネクタ22の第1凸部221は、中間層21の第1凸部211を基準として、燃料極集電層11aの反対側に位置する。インターコネクタ22の第2凸部222は、中間層21の第2凸部212を基準として、燃料極集電層11aの反対側に位置する。従って、焼成時にセッター30の構成成分が、インターコネクタ22の第1凸部221及び第2凸部222に拡散したとしても、燃料極集電層11aにまで拡散成分が到達することを抑制できる。また、第1凸部221及び第2凸部222のアンカー効果によって、インターコネクタ22と空気極14の密着性を向上させることができる。
【0147】
なお、本実施形態において、インターコネクタ22の第1凸部221及び第2凸部222は、バリア層13の第1凸部131及び第2凸部132より高いが、バリア層13の第1凸部131及び第2凸部132と同じ高さであってもよいし、バリア層13の第1凸部131及び第2凸部132より低くてもよい。
【0148】
(縦縞型燃料電池3)
次に、機能性セラミックス体100がそれぞれ適用された発電部10及びインターコネクタ部20を縦縞型燃料電池に適用した適用例について、図面を参照しながら説明する。
【0149】
図15は、縦縞型燃料電池3の断面図である。縦縞型燃料電池3は、固体酸化物型燃料電池である。縦縞型燃料電池3は、一組の発電部10とインターコネクタ部20とによって構成される。一組の発電部10とインターコネクタ部20は、一つの燃料極集電層11aを共有している。燃料極集電層11aは、縦縞型燃料電池3の支持基板として機能している。
【0150】
燃料極集電層11aは、扁平な板状に形成されている。燃料極集電層11aの内部には、ガス流路2aが形成される。発電時、ガス流路2aに流される燃料ガスは、燃料極集電層11aの内部を通過して発電部10の燃料極活性層11bに供給される。ガス流路2aの本数は適宜設定可能である。
【0151】
燃料極集電層11aの第1主面11Sには、発電部10が配置されている。燃料極集電層11aの第2主面11Tには、インターコネクタ部20が配置されている。発電部10の固体電解質層12の両端部は、燃料極集電層11aの側面を覆うとともに、インターコネクタ部20のインターコネクタ22の両端部に連結している。このように、固体電解質層12とインターコネクタ22が連なることによって、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを防止するシール膜が形成されている。インターコネクタ22は、燃料極集電層11aを基準として、固体電解質層12やバリア層13と反対側に位置する。
【0152】
インターコネクタ22は、第1凸部221及び第2凸部222を有する。従って、インターコネクタ22を焼成する際には、第1凸部221及び第2凸部222だけがセッター30(
図12参照)と接触するため、インターコネクタ22及び燃料極集電層11aにセッター30の構成成分が拡散することを抑制できる。
【0153】
なお、縦縞型燃料電池3の発電部10のバリア層13には、第1凸部131及び第2凸部132が形成されていないが、第1凸部131及び第2凸部132の少なくとも一方が形成されていてもよい。
【0154】
(他の実施形態)
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形又は変更が可能である。
【0155】
上記実施形態では、本発明にかかる機能性セラミックス体100を横縞型燃料電池に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明にかかる機能性セラミックス体100は、縦縞型、燃料極支持型、電解質平板型及び円筒型などの様々な燃料電池に適用可能である。また、本発明にかかる機能性セラミックス体100は、固体酸化物型燃料電池のほか、固体酸化物型電解セルを含む固体酸化物型電気化学セルに適用可能である。
【実施例】
【0156】
以下において、本発明に係る「機能性セラミックス体」の一例として「燃料電池の発電部」の実施例について説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0157】
(サンプルNo.1〜17の作製)
以下のようにして、サンプルNo.1〜17に係る燃料電池の発電部を作製した。サンプルNo.1〜17の発電部は、
図16及び
図17に示すように、燃料極、電解質及び空気極を備える。サンプルNo.1〜17では、電解質と空気極のそれぞれに凸部が設けられているが、本実施例では、電解質の凸部による効果を確認するものとする。
【0158】
まず、NiOとY
2O
3の混合粉末を金型プレス成形することによって、燃料極の成形体を形成した。
【0159】
次に、GDC(ガドリニウムドープセリア)とYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を含むスラリーを燃料極の成形体上に塗布することによって、電解質層の本体部の成形体を形成した。続いて、同じスラリーを本体部の成形体上に短冊状に塗布することによって、凸部の成形体を形成した。この際、スラリーの塗布幅と塗布高さを調整することによって、表1に示す通り、凸部の幅Wと高さHを調整した。これにより、本体部と凸部とを有する電解質の成形体が形成された。
【0160】
次に、
図18に示すように、電解質の成形体を下向きにして電解質の一端部と凸部をセッターに当接させた状態で焼成(1400℃、2時間)することによって、燃料極と電解質を形成した。
【0161】
次に、LSCF(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)を含むスラリーを電解質上に塗布することによって、空気極の成形体を形成した。この際、空気極の一部が電解質の凸部に沿って盛り上がることによって、空気極にも凸部が形成された。
【0162】
次に、
図19に示すように、空気極の成形体を上向きにして空気極の一端部と凸部をセッターに当接させた状態で焼成(1000℃、1時間)することによって、空気極を形成した。空気極の成形体を上向きにしたのは、空気極から電解質へのセッター成分の拡散を抑制することによって、電解質の凸部によるセッター成分の拡散抑制効果を正確に評価するためである。
【0163】
サンプルNo.1〜17において、燃料極は長さ20mm、幅20mm、厚み1mmであり、電解質は長さ20mm、幅20mm(幅A)、厚み15μmであり、空気極は長さ18mm、幅18mm、厚み50μmであった。また、電解質の凸部の長さは18mmであり、幅Wと高さHは表1に示すとおりであった。
【0164】
(サンプルNo.18の作製)
電解質に凸部を形成しなかった以外は、サンプルNo.1〜17と同じ工程にてサンプルNo.18の発電部を作製した。従って、電解質は、表面の全体がセッターに接触した状態で焼成されている。
【0165】
(サンプルNo.19〜35の作製)
以下のようにして、サンプルNo.19〜35に係る燃料電池の発電部を作製した。サンプルNo.19〜35の発電部は、
図20及び
図21に示すように、燃料極、電解質及び空気極を備え、空気極に凸部が設けられている。
【0166】
まず、NiOとY
2O
3の混合粉末を金型プレス成形することによって、燃料極の成形体を形成した。
【0167】
次に、GDC(ガドリニウムドープセリア)とYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を含むスラリーを燃料極の成形体上に塗布することによって、電解質層の成形体を形成した。
【0168】
次に、
図22に示すように、燃料極の成形体を下向きにしてセッターに載置した状態で焼成(1400℃、2時間)することによって、燃料極と電解質を形成した。
【0169】
次に、LSCF(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)を含むスラリーを電解質上に短冊状に塗布することによって、空気極の本体部の成形体を形成した。続いて、同じスラリーを本体部の成形体上に短冊状に塗布することによって、凸部の成形体を形成した。この際、スラリーの塗布幅と塗布高さを調整することによって、表2に示す通り、凸部の幅Wと高さHを調整した。これにより、本体部と凸部とを有する空気極の成形体が形成された。
【0170】
次に、
図23に示すように、空気極の成形体を下向きにして空気極の凸部と電解質の一端部とをセッターに当接させた状態で焼成(1000℃、1時間)することによって、空気極を形成した。
【0171】
サンプルNo.19〜35において、燃料極は長さ100mm、幅100mm、厚み1mmであり、電解質は長さ100mm、幅100mm、厚み15μmであり、空気極は長さ90mm、幅20mm(幅A)、厚み50μmであった。また、空気極の凸部の長さは90mmであり、幅Wと高さHは表2に示すとおりであった。
【0172】
(サンプルNo.36の作製)
空気極に凸部を形成しなかった以外は、サンプルNo.19〜35と同じ工程にてサンプルNo.36の発電部を作製した。従って、空気極は、表面全体がセッターに接触した状態で焼成されている。
【0173】
(セッターからの元素拡散)
サンプルNo.1〜18について、SEMを用いたEDS法で電解質の本体部の断面を元素分析することによって、電解質の本体部におけるセッター成分(Al元素)の平均濃度を測定した。具体的には、厚み方向中央部の3視野(各視野は、10μm×10μm)の平均濃度を測定した。
【0174】
サンプルNo.19〜36について、サンプルNo.1〜18と同様に、SEMを用いたEDS法で空気極の本体部の断面を元素分析することによって、空気極の本体部におけるセッター成分(Al元素)の平均濃度を測定した。
【0175】
表1,2では、電解質又は空気極の本体部におけるAl元素の平均濃度が10000ppm以上のサンプルを×と評価し、平均濃度が1000ppm以上10000ppm未満のサンプルを○と評価し、平均濃度が1000ppm未満のサンプルを◎と評価した。
【0176】
(凸部におけるクラック)
サンプルNo.1〜17について、電解質の凸部の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することによって、凸部表面におけるクラックの有無を確認した。具体的には、無作為に選出した3箇所のSEM画像を取得して、長さ3μm以上のクラックの合計数を数えた。
【0177】
サンプルNo.19〜35について、空気極の凸部の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することによって、凸部表面におけるクラックの有無を確認した。具体的には、無作為に選出した3箇所のSEM画像を取得して、3μm以上のクラックの合計数を数えた。
【0178】
表1では、クラックの合計数が3個以上のサンプルを△と評価し、クラックの合計数が1個以上3個未満のサンプルを○と評価し、クラックが確認されなかったサンプルを◎と評価した。
【0179】
(発電部の出力測定)
サンプルNo.1〜17およびサンプルNo.19〜35について、酸化剤ガスを空気極に供給するとともに、燃料極に窒素ガスを供給しながら750℃まで昇温し、750℃に達した時点でアノードに水素ガスを供給することによって還元処理を3時間行った。続いて、酸化剤ガスの供給と水素ガスの供給を継続させながら、750℃における燃料電池の初期出力を測定した。
【0180】
表1では、初期出力が0.2W/cm
2以上のサンプルを○と評価し、初期出力が0.2W/cm
2未満のサンプルを△と評価した。
【0181】
【表1】
【表2】
【0182】
表1に示すように、電解質の凸部をセッターに当接させて焼成したサンプルNo.1〜17では、電解質の表面全体をセッターに接触させて焼成したサンプルNo.18に比べて、セッターから電解質の本体部への元素拡散を抑制することができた。これは、セッターと電解質との接触面積を狭くすることによって、セッター成分が電解質の本体部に拡散することを抑制できたためである。
【0183】
同様に、表2に示すように、空気極の凸部をセッターに当接させて焼成したサンプルNo.19〜35では、空気極の表面全体をセッターに接触させて焼成したサンプルNo.35に比べて、セッターから空気極の本体部への元素拡散を抑制することができた。これは、セッターと空気極との接触面積を狭くすることによって、セッター成分が空気極の本体部に拡散することを抑制できたためである。
【0184】
また、表1に示すように、電解質の凸部の高さHに対する幅Wの比(W/H)を1以上としたサンプルNo.1〜6,8,9,11〜13,15〜17では、凸部におけるクラックを抑制することができた。これは、凸部の形状が過剰に鋭利になることを抑えて、凸部の強度を確保できたためである。
【0185】
同様に、表2に示すように、空気極の凸部の高さHに対する幅Wの比(W/H)を1以上としたサンプルNo.19〜24,26,27,29〜31,33〜35では、凸部におけるクラックを抑制することができた。これは、凸部の形状が過剰に鋭利になることを抑制できたためである。
【0186】
また、表1に示すように、電解質の凸部の高さHを80μm以下としたサンプルNo.1〜13では、凸部におけるクラックをより抑制することができた。これは、凸部の形状が過剰に鋭利になることをより抑制できたためである。
【0187】
同様に、表2に示すように、空気極の凸部の高さHを80μm以下としたサンプルNo.19〜31では、凸部におけるクラックをより抑制することができた。これは、凸部の形状が過剰に鋭利になることをより抑制できたためである。
【0188】
また、表1に示すように、電解質の凸部の高さHを8μm以上としたサンプルNo.3〜17では、セッターから電解質の本体部への元素拡散をより抑制することができた。これは、電解質の高さを十分確保することによって、電解質の凸部から本体部への元素拡散をより抑制できたためである。
【0189】
同様に、表2に示すように、空気極の凸部の高さHを8μm以上としたサンプルNo.21〜35では、セッターから空気極の本体部への元素拡散をより抑制することができた。これは、空気極の高さを十分確保することによって、空気極の凸部から本体部への元素拡散をより抑制できたためである。
【0190】
また、表1に示すように、電解質の凸部の幅Wを本体部の全幅Aの20%未満としたサンプルNo.1〜5,7〜12,14〜16では、初期出力を向上させることができた。これは、電解質の表面において凸部が占める面積を抑えることによって、電解質の本体部の機能性(酸素イオン伝導性)を確保できたためである。
【0191】
同様に、表2に示すように、空気極の凸部の幅Wを本体部の全幅Aの20%未満としたサンプルNo.19〜23,25〜30,32〜34では、初期出力を向上させることができた。これは、空気極の表面において凸部が占める面積を抑えることによって、空気極の本体部の機能性(電気触媒性)を確保できたためである。
【解決手段】機能性セラミックス体100は、セラミックス及び/又は金属によって構成される第1層101と、第1層101上に形成され、セラミックス及び/又は金属によって構成される第2層102とを備える。第2層102は、第1層101と反対側に向かって突出する第1凸部102aを有する。