特許第6393857号(P6393857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6393857
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】新規四環式保護剤
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   C07F7/18 WCSP
【請求項の数】8
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2018-529317(P2018-529317)
(86)(22)【出願日】2018年2月26日
(86)【国際出願番号】JP2018006866
【審査請求日】2018年6月7日
(31)【優先権主張番号】特願2017-34295(P2017-34295)
(32)【優先日】2017年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-175471(P2017-175471)
(32)【優先日】2017年9月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 真也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】窪田 秀樹
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/029794(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01510522(EP,A1)
【文献】 特表2010−531317(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/038650(WO,A1)
【文献】 特許第6283774(JP,B2)
【文献】 特許第6283775(JP,B2)
【文献】 GUNDERSEN, Lise-Lotte, et al.,Acta Chemica Scandinavica,1989年,43,pp. 706-709,全文
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C07C
C07D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
(式中、Yはヒドロキシ基又はハロゲン原子を示し、Zは酸素原子、単結合又はメチレン基を示し、R1〜R13のうちの少なくとも1個は式(2)
【化2】
で表される基を示し、残余は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を示し;
14は炭素数1〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し;
XはO又はCONR15(ここでR15は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す)を示し;
Aは式(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)又は(13)
【化3】
(ここで、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し;R19は単結合又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、R20、R21及びR22はそれぞれ、炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す)
で表される基を示す)
で表される四環式化合物。
【請求項2】
Yがヒドロキシ基、塩素原子、又は臭素原子である請求項1記載の四環式化合物。
【請求項3】
Zが単結合である請求項1又は2記載の四環式化合物。
【請求項4】
1〜R13のうち少なくとも1個が式(2)で表される基であり、残余が水素原子又はハロゲン原子である請求項1〜3のいずれかに記載の四環式化合物。
【請求項5】
14が炭素数2〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である請求項1〜4のいずれかに記載の四環式化合物。
【請求項6】
14が炭素数6〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である請求項1〜5のいずれかに記載の四環式化合物。
【請求項7】
19が単結合又はメチレン基であり、R20、R21及びR22がメチレン基である請求項1〜6のいずれかに記載の四環式化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の四環式化合物からなるカルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基又はメルカプト基の保護剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基又はメルカプト基等の保護剤として有用な新規四環式化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチド合成や種々の化合物の合成において、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基やメルカプト基等の官能基を保護して反応させる必要が生じることがある。そのような保護基としては、簡便な方法により保護ができ、かつ穏和な条件で脱離できるものが望まれる。例えば、カルボキシ基の保護基としては、ベンジルエステル(Bn)、tert−ブチルエステル等が知られている。また、最近、ベンジルアルコール系化合物、トリチル系化合物、フルオレン系化合物が保護基として有用であることが報告されている(特許文献1、2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5929756号公報
【特許文献2】特許第5113118号公報
【特許文献3】国際公開第2010/104169号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の保護基で官能基を保護した化合物は、合成時に析出しやすい欠点があった。特にペプチド合成においては有機溶媒にも不溶になってしまうため、反応後の化合物の分離、精製が困難になることがしばしばであった。この分離、精製の困難性は、縮合反応が連続して行なわれるペプチド合成においては大きな問題であった。
【0005】
従って、本発明の課題は、官能基を保護した化合物の有機溶媒への溶解性を向上させることで、反応後の分離、精製を固体化又は不溶化することなく容易ならしめる保護基を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、四環式化合物の置換基について種々検討した結果、四環式化合物のベンゼン環にオキシアルキレン基を介し末端にトリアルキルシリルオキシ基を導入した新規化合物を開発した。本四環式化合物を用いて官能基を保護した化合物が有機溶媒中で析出しにくく、液−液相分離の操作により分離精製が容易であり、当該化合物が保護剤として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔8〕を提供するものである。
【0008】
〔1〕一般式(1)
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Yはヒドロキシ基又はハロゲン原子を示し、Zは酸素原子、硫黄原子、単結合又は炭素数1〜3の直鎖アルキレン基を示し、R1〜R13のうちの少なくとも1個は式(2)
【0011】
【化2】
【0012】
で表される基を示し、残余は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を示し;
14は炭素数1〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し;
XはO又はCONR15(ここでR15は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す)を示し;
Aは式(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)又は(13)
【0013】
【化3】
【0014】
(ここで、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し;R19は単結合又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、R20、R21及びR22はそれぞれ、炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す)
で表される基を示す)
で表される四環式化合物。
〔2〕Yがヒドロキシ基、塩素原子、又は臭素原子である〔1〕記載の四環式化合物。
〔3〕Zが単結合である〔1〕又は〔2〕記載の四環式化合物。
〔4〕R1〜R13のうち少なくとも1個が式(2)で表される基であり、残余が水素原子又はハロゲン原子である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の四環式化合物。
〔5〕R14が炭素数2〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の四環式化合物。
〔6〕R14が炭素数6〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の四環式化合物。
〔7〕R19が単結合又はメチレン基であり、R20、R21及びR22がメチレン基である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の四環式化合物。
〔8〕〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の四環式化合物からなるカルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基又はメルカプト基の保護剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明の四環式化合物(1)を用いて官能基を保護した化合物は、未保護のものに比べて液状になりやすく、また溶媒への溶解性が向上するため、液−液相分離等の操作により、縮合反応後の分離、精製が容易である。
医薬、農薬等様々な化学物質の製造工程において、原料や中間体の不溶化、固化が支障となっている場合、原料や中間体化合物に本発明の四環式化合物(1)を結合させることで、これらの溶解性を向上させ、これらの問題点を解決することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一般式(1)で表される本発明の四環式化合物は、R1〜R13の少なくとも1個が式(2)の構造を有する点に特徴がある。かかる構造を有することにより、この四環式化合物(1)を用いて保護した化合物が未保護のものに比べて液状になりやすく、また溶媒への溶解性が顕著に向上する。
【0017】
一般式(1)中、Yはヒドロキシ基又はハロゲン原子を示す。ここで、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子が挙げられる。
【0018】
Yとしては、ヒドロキシ基、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0019】
Zは、酸素原子、硫黄原子、単結合又は炭素数1〜3の直鎖アルキレン基を示す。炭素数1〜3の直鎖のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基が挙げられるが、このうち単結合が特に好ましい。
【0020】
本発明の四環式化合物は、R1〜R13のうち、少なくとも1個が式(2)で示される基を示すが、このうち2〜4個が式(2)で示される基であることが好ましい。
【0021】
残余は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基である。ここで、R1〜R13で示される残余のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、このうちフッ素原子、塩素原子が好ましい。さらに置換位置としては、オルト位が好ましい。残余の炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基等が挙げられ、このうちメトキシ基が好ましい。また、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等が挙げられ、このうちメチル基が好ましい。
【0022】
14は炭素数1〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。当該アルキレン基の炭素数は、本発明四環式化合物(1)を結合させた化合物の溶媒への溶解度を向上させる点から、2以上が好ましく、6以上がより好ましく、8以上がさらに好ましく、また16以下が好ましく、14以下がより好ましく、12以下がさらに好ましい。
当該アルキレン基のうち、炭素数2以上16以下の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が好ましく、炭素数6以上16以下の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基がより好ましく、炭素数8以上14以下の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基がさらに好ましく、炭素数8以上12以下の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基がさらに好ましい。当該アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ナノメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、テトラデカメチレン基等が挙げられる。
【0023】
XはO又はCONR15を示す。
ここでR15は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、水素原子が好ましい。
【0024】
Aは、式(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)又は(13)で示される基を示す。R16、R17及びR18は、同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。ここで炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。このうち、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基、tert−ブチル、イソプロピル基がさらに好ましい。
置換基を有していてもよいアリール基としては、炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、具体的には炭素数1〜3のアルキル基が置換してもよいフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。このうち、フェニル基がさらに好ましい。
【0025】
19は、単結合又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基が挙げられるが、このうち単結合が特に好ましい。
【0026】
20、R21及びR22は、それぞれ炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基が挙げられるが、メチレン基が特に好ましい。
【0027】
一般式(1)において、Yがヒドロキシ基、塩素原子又は臭素原子であり;Zが単結合であり;R1〜R13のうち少なくとも1個、好ましくは2〜4個が式(2)で示される基であり、残余が水素原子、塩素原子又はフッ素原子であり;R14が炭素数2〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり;R19が単結合又はメチレン基であり;R20、R21及びR22がメチレン基である化合物がより好ましい。
また、一般式(2)において、R14が炭素数6〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり;XはO又はCONHであり;Aは、式(3)又は(13)で示される基であり;R16、R17及びR18は、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基であり;R19は単結合であり;R20、R21及びR22はメチレン基である化合物がより好ましい。
【0028】
式(1)におけるY、Z、及びR1〜R13が置換した構造としては、例えば次の構造が好ましい。
【0029】
【化4】
【0030】
(式中、R1bは水素原子、ハロゲン原子を示し、Y、Z、A、X及びR14は前記と同じ)
【0031】
本発明の四環式化合物(1)としては、一例を挙げるならば次の(a)〜(j)が挙げられる。
【0032】
(a)TIPS2型−(M27)−O保護剤
【0033】
【化5】
【0034】
(式中、Yはヒドロキシ基又はハロゲン原子を示し、Zは酸素原子、硫黄原子、単結合又は炭素数1〜3の直鎖アルキレン基を示し、Raは水素原子又はハロゲン原子を示す。)
【0035】
(b)TIPS2型−(M45)−O保護剤
【0036】
【化6】
【0037】
(式中、Y、Z及びRaは(a)と同様である。)
【0038】
(c)TIPS2型−(M35)−O保護剤
【0039】
【化7】
【0040】
(式中、Y、Z及びRaは(a)と同様である。)
【0041】
(d)TIPS3型−(M27)(M5)−O保護剤
【0042】
【化8】
【0043】
(式中、Y、Z及びRaは(a)と同様である。)
【0044】
(e)TIPS3型−(M45)(M5)−O保護剤
【0045】
【化9】
【0046】
(式中、Y、Z及びRaは(a)と同様である。)
【0047】
(f)TIPS3型−(M5)−O保護剤
【0048】
【化10】
【0049】
(式中、Y、Z及びRaは(a)と同様である。)
【0050】
(g)TIPS4型−(M27)(M35)−O保護剤
【0051】
【化11】
【0052】
(式中、Y、Z及びRaは(a)と同様である。)
【0053】
(h)TIPS4型−(M45)(M35)−O保護剤
【0054】
【化12】
【0055】
(式中、Y、Z及びRaは(a)と同様である。)
【0056】
本発明の四環式化合物(1)は、例えば次の反応式に従って製造することができる。
【0057】
【化13】
【0058】
【化14】
【0059】
【化15】
【0060】
(式中、Halはハロゲン原子を示し、Zは酸素原子、硫黄原子、単結合又は炭素数1〜3の直鎖アルキレン基を示し、R1a〜R13aのうち少なくとも1個は水酸基を示し、残余は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を示し、R1c〜R13cのうち少なくとも1個は式(2)で表わされる基を示し、残余は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を示し、R1d〜R8dは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を示し、R1e〜R13eのうち少なくとも1個は−OTBS、−OTIPS、又は-OTBDPSを示し、残余は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を示し、MはMgBr又はLiを示す。)
【0061】
シリルオキシ化アルキルハライド(14)とハロゲン化アリール化合物(15)とを反応させて、シリルオキシ化アリール化合物(16)を得、次いで金属試薬と反応させて有機金属試薬(18)が得られる。有機金属試薬(18)とケトン化合物(20)を反応させ、式(21)の化合物を得、水酸基を有する四環式化合物(21)をハロゲン化することにより、式(24)の化合物が得られる。また、ハロゲン化アリール化合物(15)の水酸基をシリルエーテルで保護した後、金属試薬と反応させて有機金属試薬(19)を得、ケトン化合物(20)と反応させ、式(22)の化合物が得られる。次いで式(22)の化合物の保護基を脱保護して式(23)の化合物を得、シリルオキシ化アルキルハライド(14)と反応させ、式(21)の化合物が得られる。
シリルオキシ化アルキルハライド(14)とケトン化合物(25)とを反応させて、シリルオキシ化ケトン化合物(26)を得、次いで有機金属試薬(32)と反応させて、式(27)の化合物が得られる。また、水酸基を有する四環式化合物(27)をハロゲン化することにより、式(28)の化合物が得られる。また、ケトン化合物(25)の水酸基をシリルエーテルで保護した後、有機金属試薬(32)と反応させて、式(30)の化合物が得られる。次いで式(30)の化合物の保護基を脱保護して式(31)の化合物を得、シリルオキシ化アルキルハライド(14)と反応させ、式(27)の化合物が得られる。
ケトン化合物(29)を有機金属試薬(33)と反応させて、式(34)の化合物を得、式(34)の化合物の保護基を脱保護して式(35)の化合物が得られる。
次いでシリルオキシ化アルキルハライド(14)と反応させて、式(37)の化合物が得られる。また、水酸基を有する四環式化合物(37)をハロゲン化することにより、式(38)の化合物が得られる。また、ケトン化合物(26)を有機金属試薬(36)と反応させて、式(37)の化合物が得られる。
【0062】
原料であるシリルオキシ化アルキルハライド(14)は、例えばハロゲン化アルコールとシリル化剤とを塩基の存在下に反応させることにより製造することができる。化合物(14)中のハロゲン原子としては、臭素原子等が挙げられる。
また、式(15)の化合物から式(17)の化合物、及び、式(25)の化合物から式(29)の化合物を得る反応も、上記と同様に、アルコールとシリル化剤とを塩基の存在下に反応させることにより製造することができる。
【0063】
上記反応に用いられるシリル化剤としては、塩化トリイソプロピルシリル(TIPSCl)、臭化トリイソプロピルシリル、ヨウ化トリイソプロピルシリル、メタンスルホニルトリイソプロピルシリル、トリフルオロメタンスルホニルイソプロピルシリル、p−トルエンスルホニルトリイソプロピルシリル、tert−ブチルジフェニルクロロシラン(TBDPSCl)、tert−ブチルジメチルクロロシラン(TBSCl)等が挙げられる。
塩基としては、TEA、DIPEA、DBU、ジアザビシクロノネン(DBN)、DABCO、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、2,6−ルチジン、DMAP、LDA、NaOAc、MeONa、MeOK、リチウムヘキサメチルジシラジド(LHMDS)、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS)等の有機塩基、Na2CO3、NaHCO3、NaH、NaNH2、K2CO3、Cs2CO3等の無機塩基が挙げられる。
溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、N−メチルピロリドン等のラクタム類、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。
反応は、例えば0℃〜100℃で1時間〜24時間行えばよい。
【0064】
シリルオキシ化アルキルハライド(14)と式(15)の化合物との反応、シリルオキシ化アルキルハライド(14)と式(23)の化合物との反応、シリルオキシ化アルキルハライド(14)と式(25)の化合物との反応、シリルオキシ化アルキルハライド(14)と式(31)の化合物との反応、及び、シリルオキシ化アルキルハライド(14)と式(35)の化合物との反応は、塩基の存在下に行うのが好ましい。
【0065】
上記反応に用いられる塩基としては、TEA、DIPEA、DBU、DBN、DABCO、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、2,6−ルチジン、DMAP、LDA、NaOAc、MeONa、MeOK、リチウムヘキサメチルジシラジド(LHMDS)、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS)等の有機塩基、Na2CO3、NaHCO3、NaH、K2CO3、Cs2CO3等の無機塩基が挙げられる。
溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、CPME、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、DMF、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、N−メチルピロリドン等のラクタム類、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。
反応は、例えば40℃〜150℃で1時間〜24時間行えばよい。
【0066】
式(20)の化合物から式(21)の化合物、式(20)の化合物から式(22)の化合物、式(26)の化合物から式(27)の化合物、式(29)の化合物から式(30)の化合物、式(29)の化合物から式(34)の化合物、及び、式(26)の化合物から式(37)の化合物を得るには、有機金属試薬(18)、(19)、(32)、(33)又は(36)と反応させる手段が挙げられる。
有機金属試薬としては、ハロゲン化アリールから調製できるグリニャール試薬、若しくはリチウム試薬等が挙げられる。溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、CPME、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化水素類またはこれらの混合溶媒が挙げられる。反応は、例えば0℃〜100℃で1時間〜48時間行うのが好ましい。
【0067】
式(22)の化合物から式(23)の化合物、式(30)の化合物から式(31)の化合物、及び、式(34)の化合物から式(35)の化合物を得るには、脱保護剤を反応させる手段が挙げられる。
脱保護剤としては、TBAF(テトラブチルアンモニウムフルオリド)、フッ化ピリジン錯体、フッ化水素トリエチルアミン錯体、フッ化アンモニウム等が挙げられる。溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、CPME、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化水素類またはこれらの混合溶媒が挙げられる。反応は、例えば0℃〜80℃で1時間〜24時間行うのが好ましい。
【0068】
式(21)の化合物から式(24)の化合物、式(27)の化合物から式(28)の化合物、及び、式(37)の化合物から式(38)の化合物を得るには、例えばハロゲン化剤を反応させることにより製造することができる。式(24)、(28)、及び、(38)中のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
ハロゲン化剤としては、塩化チオニル/ピリジン、塩化アセチル、PCl3/DIPEA、NCS、HCl、臭化アセチル、PBr3/DIPEA、NBS、HBr等が挙げられる。
溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、CPME、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化水素類、ジメチルホルムアミド(DMF)またはこれらの混合溶媒が挙げられる。反応は、例えば0℃〜100℃で0.5時間〜48時間行えばよい。
【0069】
本発明の四環式化合物(1)は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基又はメルカプト基等の官能基の保護剤として使用できる。本発明の四環式化合物(1)でカルボキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基又はメルカプト基を保護された化合物は、液状性、溶媒に対する溶解性が高いという特徴を有する。従って、本発明の四環式化合物(1)を保護剤として用いて官能基を保護した化合物は、有機溶媒に溶解され易く、液−液相分離等の操作により分離精製が容易となる。また、本発明化合物で使用された保護基は、酸により容易に脱離することができる。
【0070】
本発明の四環式化合物(1)で保護できる化合物としては、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基又はメルカプト基を有する化合物であればよく、例えばアミノ酸、ペプチド、糖化合物、タンパク質、核酸化合物、その他種々の医薬品化合物、農薬化合物、その他、種々のポリマー、デンドリマー化合物等が挙げられる。
【0071】
本発明の四環式化合物(1)を保護剤として用いるペプチドの合成法は、例えば次の工程(1)〜(4)を含む製法である。このペプチド合成法は、各工程で得られる保護ペプチドの分離を液−液分離することができることから、工業的に有利である。
(1)本発明の四環式化合物(1)を、可溶性溶媒中、N−保護アミノ酸又はN−保護ペプチドのC末端カルボキシ基と縮合させて、本発明の四環式化合物(1)でC末端が保護されたN−保護C保護アミノ酸又はN−保護C−保護ペプチドを得る。若しくは、本発明の四環式化合物(1)を、可溶性溶媒中、N−保護アミノ酸又はN−保護ペプチドのC末端アミド基と反応させて、本発明の四環式化合物(1)でC末端が保護されたN−保護C保護アミノ酸又はN−保護C−保護ペプチドを得る。
(2)得られたN−保護C保護アミノ酸又はN−保護C−保護ペプチドのN末端の保護基を除去して、C−保護アミノ酸又はC−保護ペプチドを得る。
(3)得られたC−保護アミノ酸又はC−保護ペプチドのN末端に、N保護アミノ酸又はN−保護ペプチドを縮合させて、N−保護C−保護ペプチドを得る。
(4)得られたN−保護C−保護ペプチドのN末端の保護基及びC末端の保護基を除去して、目的のペプチドを得る。
【実施例】
【0072】
次に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0073】
実施例1
TIPS2−3−F−Ph-Flu−Clの合成
【0074】
【化16】
【0075】
(以下、Br−(CH211−OTIPS、TIPS2−Flu−C=O、TIPS2−3−F−Ph−Flu−OH、TIPS2−3−F−Ph−Flu−Clは式中の構造を示すこととする。)
【0076】
実施例(1−a):TIPS2−Flu−C=O
Br−(CH211−OTIPS 14.7g(36.1mmol)、2,7−ジヒドロキシ−9H−フルオレン−9−オン 3.19g(15.0mmol)、炭酸カリウム7.48g(54.1mmol)をDMF43.0mLに懸濁し、95℃に加熱し、3時間撹拌した。反応溶液を濾過し、濾物をヘプタン180mLで洗浄した。濾液を分液し、得られたヘプタン層にヘプタン86mLを加え、DMF43mLで2回、水43mLで1回、10%食塩水43mLで2回分液洗浄した。得られたヘプタン層に、ヘプタン43mLを加え、アセトニトリル43mLで2回分液洗浄した。ヘプタン層を減圧下で濃縮して、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=100:0→100:1→40:1→30:1→1:1)で精製し、TIPS2−Flu−C=O 12.3gを得た。
【0077】
1H−NMR(400MHz,Benzene−d6)δ1.02−1.18(m,42H),1.21−1.40(m,24H),1.41−1.51(m,4H),1.52−1.68(m,8H),3.52(t,4H),3.69(t,4H),6.86(dd,2H),6.95(d,2H),7.36(d,2H)
13C−NMR(100MHz,Benzene−d6)δ12.4(6C),18.4(12C),26.4(2C),26.4(2C),29.5(2C),29.8(2C),30.0(2C),30.0(4C),30.2(2C),33.5(2C),63.7(2C),68.3(2C),110.0(2C),120.8(2C),121.3(2C),136.7(2C),137.8(2C),160.1(2C),193.4ESIMS MNa+ 887.7
【0078】
実施例(1−b):TIPS2−3−F−Ph−Flu−OH
TIPS2−Flu−C=O 6.95g(8.0mmol)を無水THF40mLに溶解し、3−フルオロフェニルマグネシウムブロミドTHF溶液16.0mL(16.0mmol)をゆっくり添加し、45℃に加熱し、2時間撹拌した。反応溶液を5℃に冷却し、0.5N塩酸120mLで反応を停止し、ヘプタン240mLを添加し、分液洗浄した。得られたヘプタン層を0.5N塩酸120mLで1回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液120mLで1回、20%食塩水120mLで1回、アセトニトリル120mLで1回分液洗浄した。ヘプタン層を減圧下で濃縮して、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=90:0→40:1→30:1)で精製し、TIPS2−3−F−Ph−OH 7.63gを得た。
【0079】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ1.00−1.16(m,42H),1.20−1.35(m,24H),1.35−1.44(m,4H),1.53(quin.,4H),1.71(quin.,4H),2.59(s,1H),3.66(t,4H),3.87(td,4H),6.79(d,2H),6.85(dd,2H),6.91(td,1H),7.06(d,1H),7.14−7.23(m,2H),7.44(d,2H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3)δ12.1(6C),18.2(12C),25.9(2C),26.2(2C),29.4(2C),29.5(2C),29.6(2C),29.7(4C),29.8(2C),33.2(2C),63.6(2C),68.4(2C),83.1,111.0(2C),112.8(d,1C),114.1(d,1C),115.6(2C),120.2(2C),121.3,129.8(d,1C),132.3(2C),146.3(d,1C),151.5(2C),159.2(2C),162.9(d,1C)
ESIMS MH+ 961.8
【0080】
実施例(1−c):TIPS2−3−F−Ph−Flu−Cl
TIPS2−3−F−Ph−Flu−OH 289mg(0.30mmol)を無水ジクロロメタン6.0mLに溶解し、ピリジン0.60mL(7.43mmol)を添加し、塩化チオニル44uL(0.60mmol)を添加し、室温で30分間撹拌した。反応溶液にヘプタン60mLを添加し、アセトニトリル20mLで3回分液洗浄した。得られたヘプタン層を減圧下で濃縮し、TIPS2−3−F−Ph−Flu−Cl 239mgを得た。
【0081】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ1.02−1.15(m,42H),1.23−1.37(m,24H),1.38−1.48(m,4H),1.53(quin.,4H),1.74(quin.,4H),3.66(t,4H),3.85−3.96(m,4H),6.87(d,1H),6.89(s,3H),6.91−6.98(m,1H),7.16−7.25(m,3H),7.46(d,2H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3)δ12.2(6C),18.2(12C),26.0(2C),26.2(2C),29.4(2C),29.6(4C),29.7(4C),29.8(2C),33.2(2C),63.6(2C),68.5(2C),73.9,111.7(2C),114.1(d,1C),114.9(d,1C),115.8(2C),120.4(2C),122.3(d,1C),130.0(d,1H),131.6(2C),144.3(d,1C),150.3(2C),159.3(2C),162.8(d,1C)
ESIMS MNa+ 1001.6
【0082】
実施例2
TIPS2−3−F−Ph-Flu−Brの合成
【0083】
【化17】
【0084】
(以下、TIPS2−3−F−Ph−Flu−Brは式中の構造を示すこととする。)
【0085】
実施例(2−a):TIPS2−3−F−Ph−Flu−Br
TIPS2−3−F−Ph−Flu−OH 1.14g(1.20mmol)をクロロホルム6.0mLに溶解し、DIPEA 5.6mL(32.3mmol)を添加し、0℃に冷却し、PBr3205μL(2.16mmol)を滴下した後、室温で1時間撹拌した。反応溶液にヘプタン400mLを添加し、水40mLで分液洗浄した。得られたヘプタン層にヘプタン40mLを加え、アセトニトリル40mLで分液洗浄した。前記のヘプタンとアセトニトリルによる分液洗浄をさらに2回行った後、ヘプタン層を減圧下で濃縮し、TIPS2−3−F−Ph−Flu−Br 1.24gを得た。
ESIMS MH+ 1023.7
【0086】
実施例3
Fmoc−Leu−O−(TIPS2−3−F−Ph-Flu)の合成
【0087】
【化18】
【0088】
(以下、Fmoc−Leu−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)は式中の構造を示すこととする。)
【0089】
実施例(3−a):Fmoc−Leu−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)
TIPS2−3−F−Ph−Flu−Br 1.25g(1.22mmol)をクロロホルム11.0mLに溶解し、DIPEA 852μL(4.88mmol)、Fmoc−Leu−OH 1.72g(4.88mmol)を添加し、60℃に加熱し、1時間30分撹拌した。さらにDIPEA 852μL(4.88mmol)、Fmoc−Leu−OH 1.72g(4.88mmol)を添加し、60℃で18時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、減圧下で濃縮して、得られた残渣をヘプタン70mLに溶解し、アセトニトリル15mLで分液した。得られたヘプタン層にヘプタン5mLを加え、アセトニトリル15mLで分液した。前記のヘプタンとアセトニトリルによる分液をさらに1回行った後、ヘプタン層を減圧下で濃縮して、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=50:1→40:1→10:1→5:1)で精製し、Fmoc−Leu−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu) 126mgを得た。
【0090】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ0.91−1.15(m,48H),1.16−1.47(m,29H),1.47−1.82(m,10H),3.66(td,4H),3.72−3.95(m,4H),4.18(t,1H),4.34(d,2H),4.51−4.60(m,1H),5.12(d,1H),6.70−7.08(m,7H),7.17−7.24(m,3H),7.25−7.30(m,1H),7.37(t,2H),7.46−7.56(m,3H),7.74(d,2H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3)δ12.1(6C),18.2(12C),22.0,23.1,24.9,25.9(4C),26.2(2C),29.4(2C),29.6(2C),29.7(4C),29.8(2C),33.2(2C),42.1,47.2,52.8,63.6(2C),67.1,68.3(2C),88.8,110.7,111.0,112.5(d,1C),114.8(d,1C),115.3(2C),120.0(2C),120.3(2C),120.8,125.2(2C),127.1,127.2,127.8(2C),130.2(d,1C),133.0,133.3,141.3(2C),143.8,143.9,144.0,147.2(d,1C),156.0(2C),159.0(2C),162.9(d,1C),170.5
ESIMS MNa+ 1318.9
【0091】
実施例4
TIPS3−3−F−Ph−Flu−Clの合成
【0092】
【化19】
【0093】
(以下、3−F−5−OTBS−Ph−Flu−OH、3−F−5−OH−Ph−Flu−OH、Br−(CH210−CONH−C(CH2OTIPS)3、TIPS3−3−F−Ph−Flu−OH、TIPS3−3−F−Ph−Flu−Clは式中の構造を示すこととする。)
【0094】
実施例(4−a):3−F−5−OTBS−Ph−Flu−OH
1−bromo−3−[[(1,1−dimethylethyl)dimethylsilyl)oxy]−5−fluorobenzene 7.13g(23.4mmol)を無水THF46.8mLに溶解し、マグネシウム 681mg(28.0mmol)を添加し、反応容器内を窒素置換した後、1,2−ジブロモエタン 10uL(0.12mmol)を添加し、2時間還流した。反応溶液を50℃に冷却し、無水THF23.4mLに溶解したフルオレノン 3.17g(17.6mmol)を添加し、40分間還流した。反応溶液を室温に冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液100mLで反応を停止し、CPME150mLを加え、分液洗浄した。得られた有機層を20%食塩水100mLで1回分液洗浄した。有機層を減圧下で濃縮して、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=100:0→20:1)で精製し、3−F−5−OTBS−Ph−Flu−OH 6.75gを得た。
【0095】
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ0.04(s,6H),0.83(s,9H),6.36−6.39(m,1H),6.46(s,1H),6.50(dt,1H),6.69−6.74(m,1H),7.24−7.29(m,4H),7.35−7.42(m,2H),7.82(d,2H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3)δ−4.4(2C),18.3,25.8(3C)83.4,105.9(d,1C),106.5(d,1C),113.3,120.3(2C)124.8(2C),128.6(2C),129.5(2C),139.7(2C),146.4(d,1C),149.9(2C),156.8(d,1C),163.4(d,1C)
ESIMS MH+ 407.2
【0096】
実施例(4−b):3−F−5−OH−Ph−Flu−OH
3−F−5−OTBS−Ph−Flu−OH 5.11g(12.6mmol)をTHF31.5mLに溶解し、1.0MテトラブチルアンモニウムフロリドTHF溶液 18.9mL(18.9mmol)を添加し、室温で40分間撹拌した。反応溶液を0℃に冷却し、1N塩酸75mLで反応を停止し、酢酸エチル150mLを加え、分液洗浄した。得られた有機層を1N塩酸50mLで1回、20%食塩水50mLで1回分液洗浄した。有機層を減圧下で濃縮して、得られた残渣をジクロロメタン10mLに溶解し、ヘプタン200mLを加え、撹拌し、沈澱物を濾取した。このジクロロメタンとヘプタンによるスラリー洗浄をさらに一回行い、得られた沈澱物を減圧下で乾燥し、3−F−5−OH−Ph−Flu−OH 2.53gを得た。
【0097】
1H−NMR(400MHz,CD2Cl2)δ6.44(dt,1H),6.58−6.62(m,1H),6.66−6.71(m,1H),7.24−7.33(m,4H),7.37−7.43(m,2H),7.68−7.73(m,2H)
13C−NMR(100MHz,CD2Cl2)δ83.6,102.2(d,1C),105.3(d,1C),108.8(d,1C),120.7(2C),124.9(2C),128.9(2C),129.8(2C),140.0(2C),147.6(d,1C),150.0(2C),157.2(d,1C),163.9(d,1C)
ESIMS MH+ 293.2
【0098】
実施例(4−c):TIPS3−3−F−Ph−Flu−OH
3−F−5−OH−Ph−Flu−OH 1.14g(3.90mmol)、Br−(CH210−CONH−C(CH2OTIPS)3 2.51g(3.00mmol)、炭酸カリウム 1.24g(9.00mmol)をDMF15.0mLに懸濁し、95℃に加熱し、2時間30分撹拌した。反応溶液を室温に冷却し、酢酸エチル200mL、5%リン酸二水素カリウム水溶液200mLを添加し、分液洗浄した。得られた有機層を5%リン酸二水素カリウム水溶液50mLで3回、20%食塩水50mLで1回分液洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、得られた残渣をヘプタン250mLに溶解し、アセトニトリル50mLで3回分液洗浄した。ヘプタン層を減圧下で濃縮して、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル=30:1→5:1)で精製し、TIPS3−3−F−Ph−Flu−OH 1.33gを得た。
【0099】
1H−NMR(400MHz,CD2Cl2)δ1.00−1.15(m,63H),1.21−1.34(m,10H),1.34−1.44(m,2H),1.48−1.58(m,2H),1.70(quin.,2H),2.06(t,2H),2.66(s,1H),3.86(t,2H),4.04(s,6H),5.72(s,1H),6.47(dt,1H),6.59−6.64(m,1H),6.71(t,1H),7.25−7.33(m,4H),7.39(td,2H),7.70(d,2H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3)δ12.1(9C),18.1(18C),25.9,26.1,29.3,29.4,29.5(3C),29.6,37.9,61.3(3C),62.2,68.4,83.5,100.7(d,1C),104.9(d,1C),108.0,120.3(2C),124.8(2C),128.6(2C),129.4(2C),139.7(2C),146.6(d,1C),150.0(2C),160.4(d,1C),163.6(d,1C),172.6
ESIMS MH+ 1048.7
【0100】
実施例(4−d):TIPS3−3−F−Ph−Flu−Cl
TIPS3−3−F−Ph−Flu−OH 105mg(0.10mmol)を無水ジクロロメタン3.0mLに溶解し、ピリジン 200uL(2.48mmol)、塩化チオニル 29uL(0.40mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。反応溶液にヘプタン60mLを加え、アセトニトリル 30mLで分液洗浄した。得られたヘプタン層をアセトニトリル15mLで2回分液洗浄した。ヘプタン層を減圧下で濃縮し、TIPS3−3−F−Ph−Flu−Cl 80mgを得た。
【0101】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ0.98−1.15(m,63H),1.21−1.34(m,10H),1.34−1.44(m,2H),1.57(quin.,2H),1.72(quin.,2H),2.09(t,2H),3.85(t,2H),4.05(s,6H),5.75(s,1H),6.49(dt,1H),6.71(dt,1H),6.84(s,1H),7.30(t,1H),7.30(t,1H),7.39(t,1H),7.39(t,1H),7.44(d,2H),7.68(d,2H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3)δ12.0(9C),18.1(18C),25.9,26.1,29.2,29.3,29.5(3C),29.6,37.9,61.3(3C),62.2,68.5,74.1,101.2(d,1C),106.0(d,1C),109.6,120.4(2C),125.5(2C),128.8(2C),129.5(2C),138.9(2C),144.4(d,1C),148.9(2C),160.4(d,1C),163.5(d,1C),172.6
ESIMS MH+ 1066.7
【0102】
実施例5
ペプチド化合物に対する溶解度向上性能の確認
本発明における四環式保護剤で保護した化合物の溶解度を測定した結果を以下に示す。
モデルとして使用したペプチド:H−Phe−Leu−Gly−OH
H−Phe−Leu−Gly−OH、H−Phe−Leu−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)を合成し、25℃でCPME(シクロペンチルメチルエーテル)にそれぞれの化合物を飽和させ、その溶解度を測定した。
その結果、四環式保護剤の結合していないH−Phe−Leu−Gly−OHがCPMEに0.9mMしか溶解しないのに比べ、H−Phe−Leu−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)の溶解度は540mM以上と約600倍以上溶解度が向上した。この結果から、四環式保護剤で誘導体化することで、ペプチドの溶解度が著しく向上することが確認できた。なお、H−Phe−Leu−Gly−OHとH−Phe−Leu−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)は下記の構造を示す。
【0103】
【化20】
【0104】
実施例(5−a)
H−Phe−Leu−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)の合成
TIPS2−3−F−Ph−Flu−OH 15.25g(15.9mmol)をクロロホルム 76.3mLに溶解し、5℃に冷却し、DIPEA 74.3mL(427mmol)を添加し、PBr3 2.71mL(28.5mmol)を滴下した後、室温まで昇温し、1時間40分撹拌した。反応溶液を5℃に冷却した後、ヘプタン1017mLを添加し、水102mLで1回、アセトニトリル102mLで3回分液洗浄した。ヘプタン層を減圧下で濃縮し、TIPS2−3−F−Ph−Flu−Brを含む混合物を得た。
【0105】
得られた混合物をクロロホルム 142.9mLに溶解し、Fmoc−Gly−OH 28.29g(95.2mmol)、DIPEA 16.57mL(95.2mmol)を添加し、60℃に加熱し、16時間40分撹拌した。溶液を減圧下で濃縮し、得られた残渣をヘプタン854mLに溶解し、アセトニトリル186mLで分液洗浄した。得られたヘプタン層にヘプタン186mLを加え、アセトニトリル186mLで分液洗浄した。前記のヘプタンとアセトニトリルによる分液洗浄をさらに1回行った後、ヘプタン層を減圧下で濃縮して、Fmoc−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)を含む混合物を得た。なお、Fmoc−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)は下記の構造を示す。
【0106】
【化21】
【0107】
得られた混合物をCPME 123mLに溶解し、DBU 3.67mL(24.56mmol)を加え、室温で1時間40分撹拌した。さらにDBU 0.92mL(6.13mmol)を添加し、室温で20分撹拌した。Fmoc−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)の消失を確認後、5℃に冷却した後、4M CPME/HCl 7.90mL(31.6mmol)を滴下し、溶液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル:トリエチルアミン=100:10:1.1→50:50:1)で粗精製し、H−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)を含む混合物 2.17gを得た。なお、H−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)は下記の構造を示す。
【0108】
【化22】
【0109】
得られた混合物 2.17gをCPME 14.9mLに溶解し、DMF 6.4mL、Fmoc−Leu−OH 1.13g(3.21mmol)、DIPEA 1.48mL(8.52mmol)、(ヒドロキシイミノ)シアノ酢酸エチル(Oxyma) 0.46g(3.22mmol)、(1−シアノ−2−エトキシ−2−オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ−モルホリノ−カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU) 1.38g(3.21mmol)を加え、室温で50分撹拌した。H−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)の消失を確認後、2−(2−アミノエトキシ)エタノール 127μL(1.28mmol)を加え、室温で15分撹拌した。反応溶液にDMSO 21.3mLに溶解した3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム 4.58g(25.7mmol)を添加し、5℃に冷却した後、DMSO 2.1mL、DBU 2.50mL(17.0mmol)を加え、35分撹拌した。Fmoc−Leu−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)の消失を確認後、4M CPME/HCl 4.47mL(17.9mmol)を滴下し、室温まで昇温し、CPME 1.1mL、20%食塩水 60mL、10%炭酸ナトリウム水溶液 51mLを加え、分液洗浄した。得られた有機相にDMSO 0.6mL、DMF 0.6mL、50%リン酸水素二カリウム水溶液 20mLを加え、分液洗浄し、H−Leu−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)を含む混合液を得た。
なお、Fmoc−Leu−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)とH−Leu−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)は下記の構造を示す。
【0110】
【化23】
【0111】
得られた混合液に対し、DMF 8.8mL、Fmoc−Phe−OH 1.24g(3.21mmol)、DIPEA 1.48mL(8.52mmol)、Oxyma 0.45g(3.19mmol)、COMU 1.37g(3.20mmol)を加え、室温で50分撹拌した。H−Leu−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)の消失を確認後、溶液を減圧下で濃縮し、得られた残渣をヘプタン 72mLに溶解し、アセトニトリル 36mLで4回分液洗浄した。ヘプタン層を減圧下で濃縮し、得られた残渣を減圧下で乾燥し、Fmoc−Phe−Leu−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)2.06gを得た。
ESIMS MNa+ 1523.0
なお、Fmoc−Phe−Leu−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)は下記の構造を示す。
【0112】
【化24】
【0113】
Fmoc−Phe−Leu−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)1.15g(0.77mmol)をTHF 7.7mLに溶解し、DBU 0.23mL(1.53mmol)を加え、5℃に冷却し、25分撹拌した。Fmoc−Phe−Leu−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)の消失を確認後、4M CPME/HCl 0.36mL(1.46mmol)を滴下し、溶液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をヘプタン 52mLに溶解し、アセトニトリル 52mLで3回分液洗浄した。ヘプタン層を減圧下で濃縮し、得られた残渣にアセトニトリル 20mLを添加した。充分撹拌した後、デカンテーションにより油状物を分離した。このアセトニトリルによる洗浄、デカンテーションをさらに2回行い、油状物を得た。油状物を減圧下で乾燥し、H−Phe−Leu−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu) 0.69gを得た。
ESIMS MH+ 1279.1
【0114】
実施例(5−b)
H−Phe−Leu−Gly−OHの合成
H−Phe−Leu−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu) 70mg(0.055mmol)をジクロロメタン 1.04mLに溶解し、トリフルオロ酢酸 55μL(0.71mmol)を添加し、室温で1時間15分撹拌した。H−Phe−Leu−Gly−O−(TIPS2−3−F−Ph−Flu)の消失を確認後、溶液を減圧下で濃縮し、残渣にジイソプロピルエーテル7mLを滴下し、5℃に冷却し、充分撹拌した後、5℃、3000rpmで5分間遠心分離し、デカンテーションにより沈殿物を分離した。このジイソプロピルエーテルによるスラリー洗浄、遠心分離、デカンテーションをさらに3回行い、沈殿物を得た。沈澱物を減圧下で乾燥し、H−Phe−Leu−Gly−OH 15mgを得た。
ESIMS MH+ 336.1
【要約】
官能基を保護した化合物の有機溶媒への溶解性を向上させることで、反応後の分離、精製を固体化又は不溶化することなく容易ならしめる保護基の提供。
一般式(1)
(式中、Yはヒドロキシ基又はハロゲン原子を示し、Zは酸素原子、硫黄原子、単結合又は炭素数1〜3の直鎖アルキレン基を示し、R1〜R13のうちの少なくとも1個は式(2)
で表される基を示し、残余は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を示し;
14は炭素数1〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し;
XはO又はCONR15(ここでR15は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す)を示し;
Aは式(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)又は(13)で表される基を示す)
で表される四環式化合物。