特許第6393873号(P6393873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6393873
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/105 20060101AFI20180913BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20180913BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20180913BHJP
【FI】
   B22F3/105
   B22F3/16
   B33Y30/00
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-170283(P2017-170283)
(22)【出願日】2017年9月5日
【審査請求日】2017年9月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146087
【氏名又は名称】株式会社松浦機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】天谷 浩一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】緑川 哲史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光慶
(72)【発明者】
【氏名】清水 和浩
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/005497(WO,A1)
【文献】 特表2016−532781(JP,A)
【文献】 特開昭63−082223(JP,A)
【文献】 特開2017−007255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00− 8/00
B29C 64/00−64/40
B29C 67/00−67/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形タンク内にて上昇及び下降する造形テーブル、水平方向移動によって金属粉末を散布し、かつ当該金属粉末による積層を形成するスキージ、レーザービーム又は電子ビームの照射による焼結装置、工具の回転による切削装置を備えた三次元造形装置において、前記切削装置による切削を経た後に、造形タンクの外側に排出された金属粉末並びにヒューム、及び造形タンクを囲んだ状態にあるチャンバーの外側に前記積層を構成するに至らずに排出された金属粉末を、それぞれ粉末タンクの上側に位置しているふるい機まで搬送する搬送経路を設け、各搬送経路の入口に設けた金属粉末と反応しない不活性ガスに対するコンプレッサーによる圧入を行うこと及び/又は各搬送経路の末端に設けた前記不活性ガスに対する吸引装置による吸入を行うことによって前記不活性ガスの供給と、前記搬送経路における金属粉末及びヒュームの搬送とを一挙に実現している三次元造形装置。
【請求項2】
造形タンクから排出された前記金属粉末並びにヒュームが落下する落下パイプの下端及びチャンバーから排出された金属粉末が落下する落下パイプの下端と前記各搬送経路とが連通していることを特徴とする請求項1記載の三次元造形装置。
【請求項3】
造形タンク内に供給された不活性ガスの当該造形タンクにおける排出口が、各搬送経路の入口と連通することによって造形タンクが不活性ガスの供給装置に該当することを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項4】
造形タンクの上側に不活性ガスの排出口を設ける一方、当該造形タンクの下側に酸素の排出口を設けていることを特徴とする請求項記載の三次元造形装置。
【請求項5】
粉末タンク内に酸素濃度計を配置し、かつ当該酸素濃度計の酸素濃度に従って不活性ガスに対する供給量を調整する制御装置を設けていることを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項6】
各搬送経路を形成するパイプをアースに接続していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5の何れか一項に記載の三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキージの走行による金属粉末の積層、レーザービーム又は電子ビームの照射による焼結、工具の回転による切削というかく工程に基づく三次元造形装置において、造形後回収された金属粉末及びヒュームの搬送経路に不活性ガスを供給するという基本構成に立脚している三次元造形装置を技術分野としている。
【背景技術】
【0002】
金属粉末を素材とする三次元造形装置においては、上下動が可能であって、造形物を支持する造形テーブルを囲んだ状態にある造形タンク内に、窒素ガス、ネオンガス、アルゴンガスのような金属粉末と反応しない不活性ガスを供給することによって造形タンク内の酸素の濃度を低下させ、かつ金属粉末の酸化を抑制することは周知の技術常識に該当する。
【0003】
このような三次元造形装置において、造形テーブルを囲んだ状態にある造形タンクの外側に切削によって生じたヒューム及び金属粉末を回収し、更には造形タンクの周囲に配置され、かつ当該造形タンクを囲んだ状態にあるチャンバーの外側にて積層に至っていない金属粉末を排出しかつ回収した上でふるい機を介して粉末タンクに収納し、更に粉末供給装置に搬送することによって、金属粉末を再利用することもまた周知の技術的事項である。
【0004】
然るに、金属粉末が造形タンク及びチャンバーから排出された後、ふるい機に至るまでの搬送経路においては、搬送の対象である金属粉末が酸化し、当該金属粉末の再利用に支障が生ずる場合がある。
【0005】
しかも、チタン、アルミニウム等の可燃性金属粉末の搬送時においては、金属粉末が一挙に酸化することによって粉塵爆発を起こすというアクシデントが発生する場合があり、特に搬送経路のうち金属粉末がふるい機に落下する直前の最頂部に位置する段階では、金属粉末同士の衝突によって、このような爆発が発生し易い傾向にある。
【0006】
然るに、従来技術においては、造形タンクから回収されたヒューム及び金属粉末のふるい機に至る搬送経路、及びチャンバーから回収された金属粉末のふるい機に至る搬送経路において、金属粉末の酸化を抑制することについては技術的考慮が行われていない。
【0007】
例えば、特許文献1及び同2においては、ヒュームコレクタに窒素ガスを供給し、当該ヒュームコレクタから更に窒素ガスを回収することによって再利用する構成が開示されている(特許文献1の図1、2及び段落[0025]、特許文献2の図1、2及び段落[0030])。
【0008】
しかしながら、上記構成においては、ヒュームコレクタに至るまでのヒュームの搬送経路において窒素ガスを供給することについては開示及び示唆しておらず、ましてや金属粉末を再利用するための搬送経路において窒素ガスを供給することは、何ら開示及び示唆していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016−216773号公報
【特許文献2】特開2017−48408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、回収した金属粉末及びヒュームの搬送経路において、金属粉末の酸化、更には当該酸化が一挙に行われたことを原因とする粉塵爆発を抑制する三次元造形装置の構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、造形タンク内にて上昇及び下降する造形テーブル、水平方向移動によって金属粉末を散布し、かつ当該金属粉末による積層を形成するスキージ、レーザービーム又は電子ビームの照射による焼結装置、工具の回転による切削装置を備えた三次元造形装置において、前記切削装置による切削を経た後に、造形タンクの外側に排出された金属粉末並びにヒューム、及び造形タンクを囲んだ状態にあるチャンバーの外側に前記積層を構成するに至らずに排出された金属粉末を、それぞれ粉末タンクの上側に位置しているふるい機まで搬送する搬送経路を設け、各搬送経路の入口に設けた金属粉末と反応しない不活性ガスに対するコンプレッサーによる圧入を行うこと及び/又は各搬送経路の末端に設けた前記不活性ガスに対する吸引装置による吸入を行うことによって前記不活性ガスの供給と、前記搬送経路における金属粉末及びヒュームの搬送とを一挙に実現している三次元造形装置からなる。
【発明の効果】
【0012】
前記基本構成に立脚している本発明においては、回収した金属粉末の搬送経路内における酸化、更には一挙の酸化を原因とする粉塵爆発を抑制することによって、清浄化した金属粉末を安全な状態にて再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の構成を示す模式図である。
図2】実施例2の構成を示す模式図である。
図3】前記基本構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記基本構成においては、図3に示すように、造形タンク1の外側に切削工程を経た金属粉末及びヒュームを排出し、造形タンク1を囲んだ状態にあるチャンバー2の外部にて積層を形成していない金属粉末を当該チャンバー2の外側に排出している。
【0015】
このように、造形タンク1から排出された金属粉末並びにヒュームは、回収器21によって回収され、下端が搬送経路4に連通している落下パイプ14を経た上で、搬送経路4内に落下している。
【0016】
同様に、チャンバー2から排出された金属粉末は、回収器21によって回収され、下端が搬送経路4に連通している落下パイプ22を経た上で、何れも搬送経路4に落下している。
【0017】
そして、それぞれ搬送経路4に落下した金属粉末並びにヒューム、及び金属粉末は、何れも搬送経路4を経た上で、ふるい機5による選別によって金属粉末のみが造形タンク1に収納され、再利用されている。
【0018】
基本構成においては、図3に示すように、各搬送経路4の入口40、即ち搬送のスタート位置に、それぞれ不活性ガスの供給装置8を設けている。
【0019】
不活性ガスとしては、ネオン、アルゴンのような本来の不活性ガス、即ち狭義の趣旨の不活性ガスだけでなく、窒素ガスのような金属と反応しないという広義の趣旨の不活性ガスをも包摂している。
但し、経済コストを考慮し、殆どの三次元造形装置においては、窒素ガスが利用されている。
【0020】
このような不活性ガスの供給によって、金属粉末は、ヒュームと共に、又は単独にてふるい機5に至るまでの搬送経路4中における酸化を抑制され、清浄な金属粉末の再利用が可能となる。
しかも、チタン、アルミニウム等の可燃性金属粉末が一挙に酸化することによる粉塵爆発もまた抑制され、安全な状態による金属粉末の再利用も可能となる。
【0021】
金属粉末及びヒュームのふるい機5に至るまでの搬送を行うためには、必然的に気体の流動を必要不可欠とする。
【0022】
このような気体の流動を惹起するために、通常搬送経路4内における圧力差を発生させる構成、又は回転スクリューによる流動状態を発生させる構成が採用されている。
【0023】
前記基本構成においては、不活性ガスの供給装置8として、不活性ガスを圧入するコンプレッサー8を採用している
【0024】
このような基本構成においては、不活性ガスの供給と、当該不活性ガスの流動に基づく金属粉末及びヒュームの搬送とを一挙に実現することができる。
【0025】
金属粉末及びヒュームの搬送経路4内における搬送は、前記の圧入だけでなく、ヒューム及び金属粉末の搬送経路4の末端の位置に、当該搬送に必要な負圧を発生することによって不活性ガスの供給装置8と協働している吸引装置9によっても実現することができる。
【0026】
上記吸引は、前記圧入と協働する場合には、確実な搬送を実現し得るが、吸引の程度を大きく設定することによって、前記圧入と協働せずに、独自にて搬送を実現することできる。
【0027】
ふるい機5によって選別され、かつ造形タンク1内に収納された金属粉末は、更なる搬送経路4を介してスキージ32に対して、金属粉末を供給する粉末供給装置7に搬送されている。
【0028】
前記基本構成においては、図3に示すように、粉末タンク6から、スキージ32に対して金属粉末を供給する粉末供給装置7に搬送する搬送経路4を設け、当該搬送経路4と、前記吸引装置9とを連通することによって、吸引装置9から排出された不活性ガスの一部又は全部を、当該搬送経路4に供給することができる。
【0029】
このような搬送経路4の更なる設置によって、不活性ガスを極めて効率的に再利用することができる。
【0030】
前記基本構成においては、図3の点線に示すように、吸引装置9から排出された不活性ガスの一部又は全部を搬送経路4の入口40及び/又は搬送経路4の最も高い位置に戻しているフィードバック径路41を採用することができる。
尚、図3においては、搬送経路4の入口40及び搬送経路4の最も高い位置の双方に接続するフィードバック径路41の場合を示すが、これらの一方にのみ接続するフィードバック経路41もまた、当然採用可能である。
【0031】
各搬送経路4の入口40に戻す実施形態の場合には、不活性ガスの効率的な再利用を実現することができ、最も高い位置にフィードバックする実施形態の場合には、このような位置における可燃性金属粉末同士の衝突による粉塵爆発を効率的に抑制することができる。
【0032】
以下、実施例に従って説明する。
【実施例1】
【0033】
実施例1においては、図1に示すように、造形タンク1内に供給された不活性ガスの当該造形タンク1における排出口11が、各搬送経路4の入口40と連通することによって造形タンク1が不活性ガスの供給装置8に該当することを特徴としている。
【0034】
このような実施例1においては、チャンバー2内に供給した不活性ガスを回収した金属粉末及びヒュームの搬送経路4にて再利用しており、不活性ガスの効率的な再利用が可能となる。
【0035】
上記実施例1の場合には、造形タンク1の上側に不活性ガスの排出口11を設ける一方、当該造形タンク1の下側に酸素の排出口12を設けた場合には、造形タンク1内に侵入した酸素を効率的に分離することができ、造形タンク1から排出された不活性ガスにおいて、濃度の高い不活性ガスの再利用が可能となる。
【実施例2】
【0036】
実施例2においては、図2に示すように、粉末タンク6内に酸素濃度計61を配置し、かつ当該酸素濃度計61の酸素濃度に従って不活性ガスに対する供給量を調整する制御装置62を設置していることを特徴としている。
【0037】
このような実施例2においては、造形タンク1内の酸素濃度に応じて、各搬送経路4に供給する不活性ガスの濃度の量を調整することができ、金属粉末の供給量を適切な状態とすることができる。
【実施例3】
【0038】
実施例3においては、図3に示すように、各搬送経路4を形成する金属パイプをアースに接続していることを特徴としている。
【0039】
このような実施形態3においては、アースに接続されたパイプの電位をゼロとすることによって、各搬送経路4における金属粉末の帯電を防止し、かつ帯電に伴う金属粉末の酸化を更に一層抑制することができ、しかも金属粉塵の爆発によるアクシデントをも抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
このように、本発明は、造形タンク及びチャンバーから排出され回収された金属粉末の酸化を抑制した状態にて清浄化した金属粉末の再利用を可能としていることから、広範な構成による三次元造形装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 造形タンク
10 三次元造形物
11 造形タンクにおける上側排出口
12 造形タンクにおける下側排出口
13 回収器
14 落下パイプ
15 不活性ガスの排出口と搬送経路とを連通するパイプ
2 チャンバー
21 回収器
22 落下パイプ
31 造形テーブル
32 スキージ
4 搬送経路
40 搬送経路の入口
41 フィードバック径路
5 ふるい機
6 粉末タンク
61 酸素濃度計
62 制御装置
7 粉末供給装置
8 不活性ガスの供給装置及びコンプレッサー
9 吸引装置
【要約】
【課題】回収した金属粉末及びヒュームの搬送経路において、金属粉末の酸化、更には当該一挙の酸化を原因とする粉塵爆発を抑制する三次元造形装置の構成を提供すること。
【解決手段】造形テーブル31、スキージ32、焼結装置、切削装置を備えた三次元造形装置において、前記切削装置による切削を経た後に、造形タンク1の外側に排出された金属粉末並びにヒューム、及び造形タンク1を囲んだ状態にあるチャンバー2の外側に前記積層を構成するに至らずに排出された金属粉末を、それぞれ粉末タンク6の上側に位置しているふるい機5まで搬送する搬送経路4を設け、各搬送経路4の入口40に金属粉末と反応しない不活性ガスの供給装置を設けることによって、前記課題を達成する三次元造形装置。
【選択図】図3
図1
図2
図3