【実施例】
【0035】
1)細胞融合
ヒトクラウディン1発現プラスミドをBXSBマウス皮下に免疫し、血清中の抗体価上昇が観察された個体に対し、最終免疫(ブースティング)を行った。最終免疫後、動物からリンパ細胞を回収し、マウスミエローマ細胞(P3U1)と細胞融合を行った。融合後の細胞を96-well plate 10枚に播種し、培養培地1*にて13日間、37 ℃、5% CO
2下で培養した。
*培養培地1:D-MEM (Wako, 044-29765) + 10% FCS (Hyclone, Lot.FQF24009), 10% BM condimed H1 Hybridoma cloning supplement (Roche, 1088947), 1×HAT supplement (Invitrogen, 21060017), 50μg/mL Penicillin/Streptomycin (Invitrogen, 15140122), 4 mM L-Glutamine (Invitrogen, 25030081)
2)特異モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの樹立
培養後、全てのプレートウェルから培養上清を回収した。Hepatoma細胞(Huh7.5.1細胞、S7d6細胞)を用い、上記で回収した培養上清、及びPE標識抗マウスIgG抗体で染色し、フローサイトメーター(FCM)解析を行った。
【0036】
ここで、Huh7.5.1細胞は、高分化型ヒト肝癌由来細胞株であり、高いC型肝炎ウイルス(HCV)感染感受性を示す、57歳男性患者の肝癌より分離されたHuh7細胞の亜株である。まずHuh7細胞よりHCV複製能の高い株としてHuh7.5細胞が分離され、更にHuh7.5細胞にHCV複製システムを導入して樹立した細胞株(HCVレプリコン細胞株)からインターフェロンガンマ処理によりレプリコンを排除することでHuh7.5.1細胞は樹立された。また、S7d6細胞は、Huh7.5.1細胞由来のクラウディン1欠損細胞であり、別名S7-A細胞である。Huh7.5.1細胞にヒトCD81(pcDNA3.1-hCD81)を発現させた細胞にHCVを感染させ、生き残ってくる(HCVに感染しない)細胞として樹立されたものである。遺伝子発現解析を行った結果、クラウディン1の発現が特異的に欠損していることが明らかとなった。イムノブロット解析、細胞免疫染色、FCM解析、mRNA定量解析等によってもクラウディン1の欠損が確認されている。
【0037】
FCM解析にて、陽性を示すシフトが確認されたウエルから、それぞれハイブリドーマ細胞を回収し、各クローンに関し1.2 cells/wellで96-well plate 1枚に撒き、培養培地1*にて11日間、37 ℃、5% CO
2下で培養した。培養後、顕微鏡下でシングルコロニー形成の認められるウェルをプレートあたり20〜30選択し、そのハイブリドーマ培養上清を回収した。Hepatoma細胞(Huh7.5.1細胞、S7d6細胞)を用い、回収した培養上清、及びPE標識抗マウスIgG抗体で染色し、FCM解析を行った。
【0038】
FCM陽性の確認された4クローン分のプレートから、シフト強度が強く、且つ細胞数の多いウェルを各クローン3 wellずつ選択し、24-well plateに37 ℃、5% CO
2下で拡大し培養培地1*にて培養を行った。3日間培養後、全てのウェルを6-well plateに拡大し培養培地2*にて培養を行った。3日間培養後、培養上清を回収した。Hepatoma細胞(Huh7.5.1細胞、S7d6細胞)を用い、回収した培養上清、及びPE標識抗マウスIgG抗体で染色し、FCM解析を行った。
【0039】
この結果、全てのウェルにおいて、陽性を示すシフトが確認された。シフト強度が強く、且つ細胞数の多いウェルを各クローン1 wellずつ選択し、75 cm
2 Flaskに37 ℃、5% CO
2下で拡大し培養培地2*にて培養を行った。3〜5日間培養後、150 cm
2 -plateに拡大し培養培地2*にて培養を行った。5日間培養後、培養上清を回収した。Hepatoma細胞(Huh7.5.1細胞、S7d6細胞)を用い、回収した培養上清の一部、及びPE標識抗マウスIgG抗体で染色し、FCM解析を行った。この結果、
図1に示される合計4クローンにおいて、各クローンで複数の陽性を示すシフトが確認された(
図2)。
図2は、各抗体クローンの細胞表面への結合をFCMにより解析した結果である。ここで
図2において、右側の灰色で示されたエリアは、各ハイブリドーマ培養上清によるHuh7.5.1細胞(クラウディン1陽性細胞)の染色パターンであり、左側の塗りつぶされていないエリアは、各ハイブリドーマ培養上清によるS7d6細胞(クラウディン1陰性細胞)の染色パターンである。すべてのクローンはHuh7.5.1細胞(クラウディン1発現細胞)への高い結合性(陽性シフト)を示した。また、培養上清の一部を用いて、Mouse immunoglobulin isotyping ELISA kitを用いて培養上清中の抗体のクラス、サブクラス決定を行った。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
*培養培地2:D-MEM (Wako, 044-29765) + 10% FCS (Hyclone, Lot.FQF24009), 5% BM condimed H1 Hybridoma cloning supplement (Roche, 1088947), 1×HAT supplement (Invitrogen, 21060017), 50μg/mL Penicillin/Streptomycin (Invitrogen, 15140122), 4 mM L-Glutamine (Invitrogen, 25030081)
3)マウス抗クラウディン1モノクローナル抗体の各種クラウディンに対する結合性解析
ヒトクラウディン1(NP_066924.1)、ヒトクラウディン2(NP_001164563.1)、ヒトクラウディン4(NP_001296.1)、ヒトクラウディン5(NP_001124333.1)、ヒトクラウディン6(NP_067018.2)、ヒトクラウディン7(NP_001171952.1)、ヒトクラウディン9(NP_066192.1)発現HT1080細胞またはマウスクラウディン1(NP_057883.1)発現L細胞をトリプシン処理により回収した。5.0×10
5 cellsに対し、各抗体5μg/ mLを100 μL添加、撹拌後、氷上で1時間静置した。0.2% BSA-PBSにて1回洗浄後、1% BSA-PBSにて希釈したGoat anti-mouse IgG(H+L)-FITC抗体(ROCKLAND)を添加、撹拌後、氷上で遮光し30分静置した。0.2% BSA-PBSにて2回洗浄後、0.2% BSA-PBSにて終濃度5μg/mLとなるように希釈したPI(Miltenyi Biotec)を加え、FCM解析を行った。結果を
図3に示す。いずれの抗体クローンも、ヒトクラウディン2、ヒトクラウディン4、ヒトクラウディン5、ヒトクラウディン6、ヒトクラウディン7、ヒトクラウディン9には結合せず、ヒトクラウディン1に対して特異的に結合していた。また、マウスクラウディン1にも結合性を示さなかった。
【0041】
4)マウス抗体の認識領域配列解析
4−1)マウス抗クラウディン1抗体を用いたウエスタンブロッティング解析
Huh7.5.1-8細胞及びS7-A細胞をprotease inhibitor(SIGMA)及び 1% Triton-Xを含むPBSで懸濁、超音波処理することで細胞溶解液を調製した。ポリアクリルアミド電気泳動後、polyvinylidene fluoride(PVDF)膜に転写、PVDF膜を5% スキムミルク含有T-TBS中でブロッキング(室温、2時間)、一次抗体(Rabbit anti-クラウディン1(Invitrogen)、clone 2C1、3A2、5F2、7A5)、mouse anti-GAPDH antibody(abcam)を作用(室温、2時間)、その後二次抗体(Goat anti-rabbit IgG HRP conjugated(MilliporeあるいはJackson Immuno Research)もしくはGoat anti-mouse IgG HRP conjugated(MilliporeあるいはJackson Immuno Research)) 作用(室温、1時間)、十分に洗浄した後に、ECL Western Blotting Detection Reagents(GE Healthcare Bio-Sciences Corp)またはECL plus Western blotting detection system(GE Healthcare Bio-Sciences Corp)を添加し、Image Quant LAS 4010(GE Healthcare Bio-Sciences Corp)を用いるもしくはX線フィルムを感光させることで抗体認識バンドを検出した。結果を
図4に示す。クラウディン1を発現していないS7-A細胞の溶解液を用いた場合ではいずれの抗体でもバンドは検出されず、クラウディン1を発現しているHuh7.5.1-8細胞の溶解液を用いたところ、clone 2C1, 3A2, 5F2はいずれもクラウディン1と反応せず、clone 7A5のみクラウディン1との反応が観察された。このことから、clone 2C1, 3A2, 5F2はクラウディン1の立体構造を認識すること、clone 7A5は変性クラウディン1も認識することが示された。
【0042】
4−2)クラウディン1変異体に対する結合性解析
図5は、細胞外領域配列の相同性解析であり、ClustalW2を用いて、ヒトクラウディン1とマウスクラウディン1のアミノ酸配列の相同性を解析したものである。第一細胞外ループ中のエピトープは、QWRIYSYAGDNIVTAQAMYEGLWMSCVSQSTGQIQCKVFDSLLNLSSTLQATR(Gln Trp Arg Ile Tyr Ser Tyr Ala Gly Asp Asn Ile Val Thr Ala Gln Ala Met Tyr Glu Gly Leu Trp Met Ser Cys Val Ser Gln Ser Thr Gly Gln Ile Gln Cys Lys Val Phe Asp Ser Leu Leu Asn Leu Ser Ser Thr Leu Gln Ala Thr Arg)(配列番号1)であった。また、第二細胞外ループ中のエピトープは、QEFYDPMTPVNARYE(Gln Glu Phe Tyr Asp Pro Met Thr Pro Val Asn Ala Arg Tyr Glu)(配列番号2)であった。
【0043】
図6は、マウスクラウディン1とヒトクラウディン1の細胞外領域間で異なる5アミノ酸について解析した結果である。マウスクラウディン1、またはマウスクラウディン1の細胞外領域をヒト型アミノ酸に置換した変異体(K31R、I46M、N74S、L152M、I155V)発現HT1080細胞をトリプシン処理により回収した。5.0×10
5cellsに対し、各抗体5μg/mLを100μL添加し、3)と同様の操作でFCM解析を行った(
図6)。いずれのクローンもマウスクラウディン1発現細胞には結合せずヒト型アミノ酸置換マウスクラウディン1変異体(K31R、I46M、N74S、L152M、I155V)発現細胞には結合していた。以上の結果より、これら4クローンは、ヒトクラウディン1細胞外領域を特異的に認識していること、R31、M46、S74、M152、V155のアミノ酸の一部もしくは全て、あるいはこれらの残基によって影響を受ける高次構造が認識に関与していると考えられる。
【0044】
図7は、ウエスタンブロッティング解析結果である。4−1)と同様の方法で、各細胞の溶解液を調製しポリアクリルアミド電気泳動後、PVDF膜にタンパク質を転写し、各種一次抗体及び二次抗体を用いて、クラウディン1の検出を行った。Clone 7A5は、マウスクラウディン1には反応せず、ヒト型アミノ酸置換マウスクラウディン1変異体(K31R、I46M、N74S、L152M、I155V)に反応していたことから、clone 7A5の一次構造認識にもR31、M46、S74、M152、V155のアミノ酸の一部若しくは全てが関与していると推察される。尚、
図7のクラウディン1のバンド(矢印)下部に見えるバンドはRabbit anti-クラウディン1(Invitrogen)では観察されないことから非特異的なバンドであると考えられる。
【0045】
図8は、第一若しくは第二細胞外領域変異体を用いた解析結果である。ヒトクラウディン1、ヒトクラウディン1の第一細胞外領域のアミノ酸をマウス型に置換した変異体(R31K、M46I、S74N)、ヒトクラウディン1の第二細胞外領域のアミノ酸をマウス型に置換した変異体(M152L、V155I)を発現させた293T細胞を用いてFCM解析により結合性を解析した。Clone 2C1及びclone 3A2はヒトクラウディン1に比してヒトクラウディン1変異体1(R31K、M46I、S74N)、ヒトクラウディン1変異体2(M152L、V155I)に対する結合性は減弱していた。Clone 5F2はヒトクラウディン1に比してヒトクラウディン1変異体1(R31K、M46I、S74N)に対する結合性は減弱し、ヒトクラウディン1変異体2(M152L, V155I)に対する結合性は消失していた。Clone 7A5はヒトクラウディン1変異体1(R31K、M46I、S74N)に対する結合性はヒトクラウディン1と変わらず、ヒトクラウディン1変異体2(M152L, V155I)に対する結合性は消失していた。
【0046】
このことから、clone 2C1、clone 3A2及びclone 5F2の認識にはヒトクラウディン1の第一、第二細胞外領域双方が部分的に関与し、clone 5F2及びclone 7A5の認識にはヒトクラウディン1第二細胞外領域が必須であると推察された。
【0047】
図9A及び9Bは、第二細胞外領域の1アミノ酸変異体を用いた解析結果である。ヒトクラウディン1、ヒトクラウディン1の第二細胞外領域の各1アミノ酸をアラニンに置換した変異体を発現させた293T細胞を用いてFCM解析により結合性を解析した。Clone2C1はD150A変異体、M152A変異体、V155A変異体発現細胞で結合性の低下;clone3A2はD150A変異体、V155A変異体発現細胞で結合性の低下、M152A変異体発現細胞で結合性の消失;clone5F2はP151A変異体、V155A変異体、Y159A変異体発現細胞で結合性の低下、D150A変異体、M152A変異体発現細胞で結合性の消失;clone7A5はD150A変異体、M152A変異体発現細胞で結合性の消失が観察された。
【0048】
また、先に
図4で示したように、ウエスタンブロッティング解析でヒトクラウディン1のバンドが検出できるclone7A5については変性クラウディン1も認識できることがわかっている。そこで上記クラウディン1変異体発現細胞の溶解液を用い、clone7A5によるウエスタンブロッティング解析を行ったところ、D150A変異体, P151A変異体, M152A変異体ではバンドが見られなくなり、E147A変異体, T153A変異体, P154A変異体, V155A変異体, R158A変異体では有意にバンド強度が低下していた(
図10)。
【0049】
このことから、clone 2C1、clone 3A2のヒトクラウディン1の第二細胞外領域の認識にはD150、M152、V155およびこれらの残基によって構築される立体構造が関与していると言える。また、clone 5F2のヒトクラウディン1の第二細胞外領域の認識にはD150、P151、M152、V155、Y159およびこれらの残基によって構築される立体構造が関与していると考えられる。さらに、clone 7A5については、非変性ヒトクラウディン1の第二細胞外領域の認識にはD150、M152およびこれらの残基によって構築される立体構造が関与していること、変性ヒトクラウディン1の認識にはD150, P151, M152が必須でありE147, T153, P154, V155, R158も関与すると推察される。
【0050】
先行技術(Gastroenterology, 139, 953-964, 2010)はヒトクラウディン1第一細胞外領域のN末を認識していることから、いずれの抗体クローンも先行技術とは異なったエピトープを認識している。
【0051】
5)マウスクラウディン1抗体のin vitro HCV感染阻害活性解析(Cell-cultured HCV (HCVcc)を用いた解析)
培地には、10% fetal bovine serum (Cell Culture Bioscience, 171012 lot. 8E0582), non-essential amino acid (Hyclone SH30238.01)およびpenicillin/streptomycin(Wako, 168-23191)含有D-MEM(Wako, 044-29765)を用いた。
【0052】
コラーゲンタイプIコート48-well plate(Corning, NCO3548)にHuh7.5.1細胞を5 × 10
4 cells/500 μL/wellで播種し、37 ℃、1日間培養した。培地を除き、4種のクラウディン1精製抗体を0.1〜5μg含む培地(200μL)を添加し、室温 (25 ℃)で1時間培養した。
【0053】
その後、HCVcc(genotype 2a)(HCV coreタンパク質濃度として1.56 pmol/L, MOI:〜0.5に相当)を含む培地(200μL)を加え、室温 (25 ℃)で2時間感染させた。HCVを含む培地を除き、500μLの培地で3回細胞を洗浄後、各クラウディン1精製抗体を0.1〜5μg含む400μLの培地を加えて、4日間培養を行った。
【0054】
尚、HCVcc溶液は、Murakami Y. et al. Antiviral Res. 83, 112-117(2009)に従って調製し、当該濃度に培地で希釈して実験に供した。
【0055】
HCV coreタンパク質濃度をELISA法(Ortho Clinical Diagnostics, HCV抗原ELISAテスト 601002)により測定することで、培養上清中のHCV濃度を測定した。尚、測定法は添付マニュアルに準じた。
【0056】
図11は、マウス抗クラウディン1モノクローナル抗体(7A5)の結果である。Clone7A5の添加量に比例してHCV感染阻害効果が向上しており、10
-8g/0.4 mLで約50%の感染阻害活性がみられ、10
-6g/0.4 mL程度から飽和状態となった。また、
図12は、マウス抗クラウディン1モノクローナル抗体(2C1、3A2、5F2)の結果である。Clone 2C1, 3A2, 5F2も添加量依存的にHCV感染阻害活性を示し、10
-8〜10
-5g/0.4 mLで約50%の感染阻害活性がみられた。
【0057】
6)マウスクラウディン1抗体のin vivo HCV感染阻害試験
6−1)In vivo 感染阻害活性
ヒト肝臓キメラマウス(uPA-SCIDマウスにヒト肝細胞を移植したもの、PXBマウス)は株式会社フェニックスバイオより入手した。雄性、12〜16週齢、体重15 g以上、血中ヒトアルブミン7.0 mg/mL以上の個体を選択した。群編成では、体重及び血中ヒトアルブミン濃度の平均値を考慮してマウスを3群(各4匹)に振り分けた。
【0058】
Control抗体、clone 3A2またはclone 7A5を、マウスに腹腔内投与した。初回投与日をday0とし、抗体投与量はday0に30 mg/kg、day3に20 mg/kg、day7に10 mg/kg、day10に10 mg/kgとした。抗体投与液の希釈にはPBSを用いた。
【0059】
初回抗体投与の8時間後にマウスにイソフルラン麻酔を施し、生理食塩水で1.0×10
5copies/mLに調製したHCV(genotype 1b)100μLを眼窩静脈叢から接種した。
【0060】
Day0、day7、day14、day21、day28、day35、day42の採血液を用いて血清中HCVゲノムRNA量を測定した。採取した血清5μLからSepaGene RV-R(エーディア株式会社)を用いてRNA抽出を行い、RNAを1 mM DTT (Promega)と0.4 U/μL ribonuclease inhibitor(Takara Bio)を含む10μLのNuclease-free water(Life Technologies Corporation)に溶解した。PCR反応液は、溶解したRNA原液もしくは希釈したRNAを2.5μLとTaqMan EZ RT-PCR Core Reagents(Life Technologies Corporation)を用いて調製した。PCR反応と解析にはABI Prism 7500(Life Technologies Corporation)を用いた。RT-PCR反応は、50℃ 2分→60℃ 30分→95℃ 5分→(95℃ 20秒→62℃ 1分)の50サイクルで行った。
【0061】
下記表2は、In vivo HCV感染阻害活性を示すものである。HCV (genotype 1b)を投与したヒト肝キメラマウスを用いて、抗体のin vivo感染阻害活性を解析した。コントロール抗体、clone 3A2またはclone 7A5を投与したマウス血清を経日的に回収し、血清中HCV RNA量を測定することでHCV感染阻害活性を評価した。-は検出限界以下(PCR陰性)、+はウイルスが検出(PCR陽性)されたものの定量限界以下(4.0E+04 copies/mL未満)であることを示している。
【0062】
【表2】
【0063】
コントロール抗体投与群では、day28時点には全ての個体で血清中HCV量が約10
7 copies/mLを示し、HCV濃度はプラトーに達していた。一方、clone 3A2投与群ではday42時点で4匹中3匹、clone 7A5投与群では4匹中1匹でHCV RNAが検出されず、HCV RNAが検出された個体でもclone 7A5投与の2匹はウイルスの立ち上がりが有意に遅れていた。以上の結果から、in vivoにおいても抗クラウディン1抗体投与によるHCV感染阻害効果が認められた。尚、in vivoでの感染阻害活性のclone間の違いは、in vitroでのHCV感染阻害活性の違いと相関していた。
【0064】
6−2)マウスクラウディン1抗体投与による副作用解析
Day-7、day-3、day-1、day0(抗体投与日)、day3、day7、day10、day14、day21、day28、day35、day42に、マウスの一般状態を観察し、体重を計測した。尚、day0、day3、day7、day10は抗体投与前に計測を実施した。
【0065】
Day0、day3、day7、day10、day14、day21、day28、day35、day42に採血を行った。尚、day0、day3、day7、day10は抗体投与前に、マウスにイソフルラン麻酔を施し、眼窩静脈叢より採血した。
【0066】
day0、day7、day14、day21、day28、day35、day42の採血液を用いて血中ヒトアルブミン濃度を測定した。血液2μLを緩衝液(LX試薬栄研シリーズ共用緩衝液、栄研化学株式会社)と混合し、370g、3分間の遠心分離を行った後、ラテックス凝集免疫比濁法(LX試薬’栄研’Alb-II、栄研化学株式会社)を用いて、吸光マイクロプレートリーダー(Vmax、日本モレキュラーデバイス株式会社)で測定した。
【0067】
day0、day7、day14、day21の採血液を用いて血清中ALT及びAST活性を測定した。採取した血清10μLを生理食塩液で希釈し、POP・POD・ロイコ色素法(ピルビン酸オキシダーゼにより発生する過酸化水素とペルオキシダーゼによりジアリールイミダゾールロイコ色素を青色に発色)により、ドライケム3500(富士フィルム)を用いて測定した。
【0068】
結果を
図13〜
図16に示す。ここで
図13は、HCV (genotype 1b)を投与したヒト肝キメラマウスに各種抗体を投与した際の体重変化である。
図14は、HCV (genotype 1b)を投与したヒト肝キメラマウスに各種抗体を投与した際の血中のヒトアルブミン濃度である。
図15は、HCV (genotype 1b)を投与したヒト肝キメラマウスに各種抗体を投与した際のASTである。
図16は、HCV (genotype 1b)を投与したヒト肝キメラマウスに各種抗体を投与した際のALTである。
【0069】
抗クラウディン1抗体投与による一般状態の変化、体重減少、血中ヒトアルブミン濃度減少、AST、ALTの有意な増加などは認められなかったことから、clone 3A2及びclone 7A5は安全性及び有効性を兼ね備えた感染阻害分子であると考えられる。尚、clone 3A2投与群において、day7で1匹、他の個体より高いAST値を示した個体が存在したがday14、day21では低い値を示していたこと、uPA-SCIDマウスはもともと肝機能障害を示すマウスであることから、本変化は抗クラウディン1抗体投与に起因するものではないと言える。また、
図16においてALTの上昇傾向が観察されているが、一般的にヒト肝キメラマウスは肝障害誘発マウスであるためバックグラウンドとしてALTの上昇が認められることが知られており、本変化はこのバックグランドレベルの変動範囲に入るものであり、抗クラウディン1抗体投与に起因するものではない。
【0070】
7)ヒトIgG1キメラ抗体の作製
7−1)発現ベクター作製
各抗体クローンの可変部領域のVL領域およびVH領域のアミノ酸をコードする遺伝子をPCR法により増幅した。なお、VL遺伝子の上流にAgeIサイト、下流にBsiWIサイト、VH遺伝子の上流にEcoRIサイト、下流にNheIサイトを付加した。PCR産物を電気泳動により分離・精製した。
【0071】
増幅したVL遺伝子及びヒトIgG kappa鎖定常領域をもつクローニングベクターであるpFUSE2-CLIg-hk (Invivogen)をAgeI及びBsiWIで処理後、ライゲーションした。増幅したVH遺伝子及びヒトIgG1重鎖定常領域をもつクローニングベクターであるpFUSE-CHIg-hG1 (Invivogen)をEcoRI及びNheIで処理後、ライゲーションした。各ライゲーション産物をコンピテントセルDH-5αにトランスフォーメーションし、独立大腸菌クローンを培養、プラスミドDNAを回収後、シークエンスを確認し、pFUSE2-CLIg-hk-anti-クラウディン1及びpFUSE-CHIg-hG1-anti-クラウディン1を得た。
【0072】
7−2)ヒトIgG1キメラ抗体の精製
フラスコに5×10
5cells/mLに調製したCHO-S細胞を150 mL入れ、37 ℃、8% CO
2環境下で一晩培養した。作製した発現ベクター187.5μg(VL:VH=1:1)にOptiPRO SFMを加え3 mLに調製し撹拌した。別のエッペンにFreeStyleMAX Reagent (Invitrogen) 187.5μLとOptiPRO SFM 2812.5μLを加え転倒混和し、発現ベクターの溶液を加え、10分間常温静置した。CHO-S細胞の入ったフラスコに、本混合液を全量加えた。その後6日間、37 ℃、8% CO
2環境下で培養し、上清を回収した。
【0073】
回収した上清を100 g、5分間遠心にかけ、0.45μm filterを通した。HiTrap Protein G HP(GE Healthcare)をMilli Q 5 mLで 洗浄後、0.02 M リン酸バッファー10 mLでカラムの平衡化を行った。サンプルをカラムに通した後、0.02 M リン酸バッファー20 mLで洗浄、5 mLの0.1 M Glycine-HClで溶出した。溶出の際は、あらかじめエッペンに37.5μLの1 M Tris-HClを入れておいたものに0.5 mLずつ回収した。溶出後のサンプルはPD-10カラム(GE Healthcare)を用いてPBSにバッファー置換した。
【0074】
SDS-PAGEによりキメラ抗体の精製を確認した。また、吸光度法によりタンパク質濃度を測定した。
【0075】
結果を
図17に示す。ここで
図17は、SDS-PAGEによるヒトIgG1キメラ抗体の作製結果を示す図である。還元条件下のSDS-PAGEにより、ヒトIgG1キメラ抗体の精製産物の分子量が確認された。矢印は抗体重鎖(約50 kDa)もしくは軽鎖(約25 kDa)を示している。
【0076】
7−3)各種クラウディンに対する結合性解析
ヒトクラウディン1、ヒトクラウディン2、ヒトクラウディン3(NP_001297.1)、ヒトクラウディン4、ヒトクラウディン6、ヒトクラウディン7、ヒトクラウディン9発現HT1080細胞またはマウスクラウディン1発現L細胞をトリプシン処理により回収した。5.0×10
5cellsに対し、各抗体5μg/mLを100μL添加し、撹拌し氷上で1時間静置した。0.2% BSA-PBSにて1回洗浄後、1% BSA-PBSにて希釈したGoat anti-human IgG(H+L)-FITC抗体(Jackson Immuno Research)を添加、撹拌、氷上で遮光し30分静置した。0.2% BSA-PBSにて2回洗浄後、0.2% BSA-PBSにて終濃度5μg/mLとなるように希釈したPI (Miltenyi Biotec)を加え、FCM解析を行った。
【0077】
結果を
図18に示す。ここで
図18は、ヒトIgG1キメラ抗体のクラウディン結合特異性解析を示す図である。ヒトクラウディン1、ヒトクラウディン2、ヒトクラウディン3、ヒトクラウディン4、ヒトクラウディン6、ヒトクラウディン7、ヒトクラウディン9発現HT1080細胞及びマウスクラウディン1発現L細胞を用いたFCM解析により、いずれの抗体クローンも、ヒトクラウディン2、ヒトクラウディン3、ヒトクラウディン4、ヒトクラウディン6、ヒトクラウディン7、ヒトクラウディン9及びマウスクラウディン1発現細胞には結合性を示さず、ヒトクラウディン1発現細胞特異的に結合していたことから、それぞれのクローンのCDR領域がヒトクラウディン1結合に必須であることが示唆された。
【0078】
8)ヒトIgG1キメラ抗体のin vitro HCV感染阻害活性評価
8−1)Huh7.5.1-8細胞に対する結合性評価
Huh7.5.1-8細胞をトリプシン処理により回収した。5.0×10
5cells/sampleに対し、各抗体5μg/mLを100μL添加し、2)と同様の操作でFMC解析を行った。尚、2次抗体にはgoat anti-human IgG (H+L)-FITC を使用した。
【0079】
結果を
図19に示す。ここで
図19は、ヒトIgG1キメラ抗体のHuh7.5.1-8細胞に対する結合性解析を示す図である。Huh7.5.1-8細胞に対する結合性をFCM解析した結果、ヒトIgG1キメラクローンもHuh7.5.1-8細胞に結合していた。
【0080】
8−2)In vitro感染阻害実験(HCVccを用いた解析)
Huh7.5.1-8細胞を1×10
5cells/well/500μLで48-well plateに播種し、一晩培養した。抗クラウディン1マウス抗体、ヒトIgG1キメラ抗体を培地で各濃度に調製し、前培養していた細胞の培地を除いて200μL/wellの抗体溶液を加え、室温で30分静置した。なお、各抗体は0〜5μg/wellで作用させた。
【0081】
その後、HCVcc(genotype 2a)を50倍希釈したものをそれぞれ200μL/well添加し、室温で2時間培養した。血清を含まない培地500μL/wellで3回洗浄し、前処理の1/2の濃度にした抗体液400μLを加え、37 ℃で4日間培養した。
【0082】
培養上清を回収後、細胞をPBS 500μL/wellで3回洗浄し、Blood/Cultured Cell Total RNA Purification Mini Kit (FAVORGEN)を用いRNA抽出・精製を行い、滅菌水50μLで溶解し、-80℃で保存した。また、回収した培養上清150μLよりViral Nucleic Acid Extraction Kit(FAVORGEN)を用いてRNAを精製し、-80 ℃で保存した。尚、RNA濃度は、Nano Dropを用いて測定した、
精製したRNAを用いて、Taqman qRT-PCR法(試薬はRNA-direct Realtime PCR Master Mix(Toyobo)、機器はLightCycler (Roche))にてHCVゲノムRNA定量を行った。尚、反応は、表3の組成に準じて調整した反応溶液を使用した。
【0083】
【表3】
【0084】
尚、Sense Primerは5’-ACGGGGTTAATTATGCAACAGG-3’(配列番号13)であり、Anitisense Primerは5’-ACGGTGATGCAGGACAACAG-3’(配列番号14)であり、Taqman Probeは5’-[6-FAM]AGCAAGAAGATAGAAAAGGGGAAACCGGGTAG[TAMRA-6-FAM]-3’(配列番号15)であった。
【0085】
結果を
図20及び
図21に示す。ここで
図20は、HCVcc (genotype 2a)を用いたin vitro HCV感染阻害活性であり、細胞内のHCVゲノムRNAの定量結果である。
図21は、HCVcc (genotype 2a)を用いたin vitro HCV感染阻害活性であり、培養上清中のHCVゲノムRNAの定量結果である。データは抗体非添加群のHCV ゲノムRNAコピー数に対する割合(mean ± SD)で表記した(細胞内及び培養上清中ともにn=4)。ひし形がマウス抗体、四角がヒトIgG1キメラ抗体を示す。
【0086】
HCVcc感染系にて、ヒトIgG1キメラ抗体のHCV感染阻害活性を解析したところ、いずれのクローンも添加濃度依存的に細胞内及び培養上清中のHCV RNA量が低下しており、顕著な感染阻害作用が認められた(
図20,
図21)。尚、感染阻害活性は、マウス抗体と同様の傾向を示し、2C1=3A2>7A5>5F2の順であった。
【0087】
8−3)In vitro感染阻害活性(HCV pseudoparticles(HCVpp、genotype 1bおよび2a)を用いた解析)
Huh7.5.1-8細胞を1×10
5cells/well/500μLで48-well plateに播種し、一晩培養した。抗クラウディン1マウス抗体、ヒトIgG1キメラ抗体を培地で各濃度に調製し、前培養していた細胞の培地を除いて200μL/wellの抗体溶液を加え、室温で30分静置した。なお、各抗体は0〜5μg/wellで作用させた。
【0088】
HCVpp(genotype 1b(TH株)または2a(JFH-1株)、Microbe and Infection 15, 45-55 , 2013に従い調製)をそれぞれ200μL/well添加し、37 ℃で6時間培養した。血清を含まない培地500μL/wellで3回洗浄し、前処理の1/2の濃度にした抗体液400μLを加え、37 ℃で3日間培養した。
【0089】
培地を除去後、Lysis Buffer(Promega)を100μL/well加え、溶解液をエッペンに回収し、10,000 rpm、1分間遠心し、氷上に置いた。本上清10μLと発光基質(ピッカジーン)50μLを混ぜ、Luminescencer-PSNで測定を行った。
【0090】
結果を
図22及び
図23に示す。
図22は、HCVpp(genotype 1b)、
図23は、HCVpp(genotype 2a)を用いたin vitro HCV感染阻害活性を示す図である。データは抗体非添加群のルシフェラーゼ活性に対する割合(mean ± SD)で表記した(n=4)。ヒトIgG1キメラ抗体はgenotype 1b及び2a双方で、マウス抗体と同様の添加量依存的な感染阻害活性を示した。
【0091】
9)ヒトIgG4キメラ抗体の作製
9−1)発現ベクター作製
各抗体クローン(2C1、3A2)の可変部領域のVL領域およびVH領域のアミノ酸をコードする遺伝子をPCR法により増幅した。なお、VL遺伝子の上流にAgeIサイト、下流にBsiWIサイト、VH遺伝子の上流にEcoRIサイト、下流にNheIサイトを付加した。PCR産物を電気泳動により分離・精製した。
【0092】
増幅したVL遺伝子及びヒトIgG kappa鎖定常領域をもつクローニングベクターであるpFUSE2-CLIg-hk (Invivogen)をAgeI及びBsiWIで処理後、ライゲーションした。増幅したVH遺伝子及びヒトIgG4重鎖定常領域をもつクローニングベクターであるpFUSE-CHIg-hG4 (Invivogen)をEcoRI及びNheIで処理後、ライゲーションした。各ライゲーション産物をコンピテントセルDH-5αにトランスフォーメーションし、形成した独立大腸菌クローンを培養し、プラスミドDNAを回収した後、シークエンス解析によりpFUSE2-CLIg-hk-anti-クラウディン1及びpFUSE-CHIg-hG4-anti-クラウディン1を得た。
【0093】
9−2)ヒトIgG4キメラ抗体の精製
培養用6- wellプレートに2×10
5 cells/wellのCHO-K1細胞を播種し、37 ℃、5% CO
2環境下でサブコンフルエントになるまで培養した。作製した発現ベクター2μg(pFUSE2-CLIg-hk-anti-クラウディン1を1.2μg、pFUSE-CHIg-hG4-anti-クラウディン1を0.8μg)をOpti-MEM1 (GIBCO) 100μLとFuGENE(登録商標)HD Transfection Reagent (Roche) 4μLと混合し、15分間常温静置した。CHO細胞の培地を交換し、上記の混合液をウェルに全量加えた。その後、2日間、37 ℃、5% CO
2環境下で培養し、上清を回収した。
【0094】
9−3)ヒトIgG4キメラ抗体の結合性解析
ヒトクラウディン1発現HT1080細胞をトリプシン処理により回収した。5.0×10
5 cells/sampleに対し、ヒトIgG4キメラ抗体を含む培養上清を100μL添加し、撹拌し氷上で1時間静置した。0.2% BSA-PBSにて1回洗浄後、1% BSA-PBSにて希釈したGoat anti-human IgG(H+L)-FITC抗体(Jackson Immuno Research)を添加、撹拌、氷上で遮光、30分静置した。0.2% BSA-PBSにて2回洗浄後、0.2% BSA-PBSにて終濃度5μg/mLとなるように希釈したPI (Miltenyi Biotec)を加え、FCM解析を行った。
【0095】
結果を
図24に示す。ここで
図24は、ヒトIgG4キメラ抗体のクラウディン結合性解析を示す図である。ヒトクラウディン1発現HT1080細胞に対する結合性をFCM解析した。HCV感染阻害活性に優れた2C1及び3A2について、ヒトIgG4キメラ抗体を作製したところ、いずれのクローンもヒトクラウディン1に対する結合性を保持していた。
【0096】
9−4)In vitro感染阻害実験(HCVccを用いた解析)
Huh7.5.1-8細胞を1×10
5cells/well/500μLで48-well plateに播種し、一晩培養した。抗クラウディン1マウス抗体、ヒトIgG4キメラ抗体を培地で各濃度に調製し、前培養していた細胞の培地を除いて200μL/wellの抗体溶液を加え、室温で30分静置した。なお、各抗体は0〜5μg/wellで作用させ、8−2)と同様の方法でHCVcc感染阻害活性を解析した。
【0097】
結果を
図25及び
図26に示す。ここで
図25は、HCVcc (genotype 2a)を用いたin vitro HCV感染阻害活性であり、細胞内のHCVゲノムRNAの定量結果である。
図26は、HCVcc (genotype 2a)を用いたin vitro HCV感染阻害活性であり、培養上清中のHCVゲノムRNAの定量結果である。データは抗体非添加群のHCV ゲノムRNAコピー数に対する割合(mean ± SD)で表記した(細胞内及び培養上清中ともに抗体添加群はn=4、抗体未添加群はn=3)。ひし形がマウス抗体、四角がヒトIgG4キメラ抗体を示す。HCVcc感染系にて、ヒトIgG4キメラ抗体のHCV感染阻害活性を解析したところ、いずれのクローンも添加濃度依存的に細胞内及び培養上清中のHCV RNA量が低下しており、顕著な感染阻害作用が認められた(
図25,
図26)。
9−5)In vitro感染阻害活性(HCV pseudoparticles(HCVpp、genotype 1bおよび2a)を用いた解析)
Huh7.5.1-8細胞を1×10
5cells/well/500μLで48-well plateに播種し、一晩培養した。抗クラウディン1マウス抗体、ヒトIgG4キメラ抗体を培地で各濃度に調製し、前培養していた細胞の培地を除いて200μL/wellの抗体溶液を加え、室温で30分静置した。なお、各抗体は0〜5μg/wellで作用させ、8−3)と同様の方法でHCVpp感染阻害活性を解析した。
【0098】
結果を
図27及び
図28に示す。
図27は、HCVpp(genotype 1b)、
図28は、HCVpp(genotype 2a)を用いたin vitro HCV感染阻害活性を示す図である。データは抗体非添加群のルシフェラーゼ活性に対する割合(mean ± SD)で表記した(n=4)。ヒトIgG4キメラ抗体はgenotype 1b及び2a双方で、マウス抗体と同様の添加量依存的な感染阻害活性を示した。
【0099】
10)ヒトIgG4変異体キメラ抗体の作製
10−1)発現ベクター作製
IgG4は、重鎖定常領域内にある228番目のSerをProに置換することで生体内安定性が向上することが知られている(Immunology, 105, 9-19, 2002)。そこで、228番目のSerをProに置換するようにプライマーを設計し、pFUSE-CHIg-hG4 (Invivogen)を鋳型にNheIサイト及びBsrGIサイト間の682 bpをPCR法により増幅、PCR産物を電気泳動により分離後、精製した。尚、変異挿入部上流のプライマーにはNheIサイト、下流のプライマーにはBsrGIサイトを付加した。
【0100】
変異を挿入したPCR産物及びpFUSE-CHIg-hG4-anti-クラウディン1をNheI及びBsrGIで処理後、ライゲーションした。各ライゲーション産物をコンピテントセルDH-5αにトランスフォーメーションし、形成した独立大腸菌クローンを培養、プラスミドDNAを回収、シークエンスを確認し、pFUSE-CHIg-hG4mutant-anti-クラウディン1を得た。
【0101】
10−2)ヒトIgG4変異体キメラ抗体の精製
培養用6 wellプレートに2× 10
5 cells/wellのCHO-K1細胞を播種し、37 ℃、5% CO
2環境下でサブコンフルエントになるまで培養した。作製した発現ベクター2μg(pFUSE2-CLIg-hk-anti-クラウディン1を1.2μg、pFUSE-CHIg-hG4mutant-anti-クラウディン1を0.8μg)をOpti-MEM1 (GIBCO) 100μL及びFuGENE(登録商標)HD Transfection Reagent (Roche) 4μLと混合し、15分間常温静置した。CHO細胞の培地を交換し、上記の混合液をウェルに全量加えた。その後、2日間、37 ℃、5% CO
2環境下で培養し、上清を回収した。
【0102】
10−3)ヒトIgG4変異体キメラ抗体の結合性解析
ヒトクラウディン1発現HT1080細胞をトリプシン処理により回収した。5.0×10
5 cells/sampleに対し、ヒトIgG4変異体キメラ抗体を含む培養上清を100μL添加し、撹拌し氷上で1時間静置した。0.2% BSA-PBSにて1回洗浄後、1% BSA-PBSにて希釈したgoat anti-human IgG(H+L)-FITC抗体(Jackson Immuno Research)を添加、撹拌し氷上で遮光し30分静置した。0.2% BSA-PBSにて2回洗浄後、0.2% BSA-PBSにて終濃度5μg/mLとなるように希釈したPI (Miltenyi Biotec)を加え、FCM解析を行った。
【0103】
結果を
図29に示す。ここで
図29は、ヒトIgG4変異体キメラ抗体のクラウディン結合性解析を示す図である。ヒトクラウディン1発現HT1080細胞に対する結合性をFCM解析したところ、いずれのクローンもヒトクラウディン1に対する結合性を保持していた。マウス抗体、ヒトIgG1キメラ抗体、ヒトIgG4キメラ抗体の結果を踏まえると、本ヒトIgG4変異体キメラ抗体もHCV感染阻害活性を有していると考えられる。