(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された人工乳房のように、シリコーンゴム単層で構成された袋状部内にジェル材を封入して製作されたものは、外部から乳房外層部に力が加えられて人工乳房が変形した場合、不自然なシワを生じたり、人体に比べて不自然な硬さとなったりしやすかった。
【0008】
また、特許文献1に記載された人工乳房を人体の胸部に装着する場合には、粘着剤を介して装着するので、粘着剤を塗布するという作業が必要であった。
また、特許文献1に記載された人工乳房を取外すときには剥離剤を使用する必要があるうえに人工乳房の破損が起きやすく、さらに、シリコーンゴム層が胸部に接着して皮膚を覆ってしまうため、発汗が妨げられ、長時間、人工乳房を装用したときに苦痛を伴うおそれがある。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、不自然さを低減できると共に、装着および取外しが容易である人工乳房を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の人工乳房は、ゴムを有する第1のゴム層と、該第1のゴム層よりも軟らかい、かつ、同第1のゴム層の一方側に配置された、かつ、ゴムを有する第2のゴム層と、該第2のゴム層よりも軟らかい、かつ、同第2のゴム層の、前記第1のゴム層が配置された側とは反対側に配置された、かつ、軟性材料を有する柔軟層と、前記第1のゴム層と略同じ硬さを有し、かつ、前記柔軟層の、前記第2のゴム層が配置された側とは反対側に配置された、かつ、前記柔軟層に向けて窪んだ凹部が形成された、かつ、ゴムを有する第3のゴム層とを備える。
【0011】
ここで、ゴムを有する第1のゴム層と、第1のゴム層よりも軟らかい、かつ、第1のゴム層の一方側に配置された、かつ、ゴムを有する第2のゴム層と、第2のゴム層よりも軟らかい、かつ、第2のゴム層の、第1のゴム層が配置された側とは反対側に配置された、かつ、軟性材料を有する柔軟層とによって、段階的に軟らかくなっているので、外部から力を付与されても不自然なシワを生じにくく、軟らかさと型崩れし難い状態とを両立させることができる。
【0012】
また、第1のゴム層と略同じ硬さを有し、かつ、柔軟層の、第2のゴム層が配置された側とは反対側に配置された、かつ、柔軟層に向けて窪んだ凹部が形成された、かつ、ゴムを有する第3のゴム層によって、人体との間に空間を形成しやすくなり、装着中に蒸れにくくなると共に、吸着作用で人工乳房を装着することができる。
また、本発明の人工乳房を押して人体との間の空気を少し抜くことで、より人体との密着度を高めることができ、形状も小さくすることができる。
【0013】
また、本発明で言う「軟性材料」とは、超軟質のゴムよりも軟らかい材料を示す。
【0014】
また、上記の目的を達成するために、本発明の人工乳房は、ゴムを有する第1のゴム層と、該第1のゴム層よりも軟らかい、かつ、同第1のゴム層の一方側に配置された、かつ、ゴムを有する第2のゴム層と、該第2のゴム層よりも軟らかい、かつ、同第2のゴム層の、前記第1のゴム層が配置された側とは反対側に配置された、かつ、前記第2のゴム層に向けて窪んだ凹部が形成された、かつ、軟性材料を有する柔軟層と、前記第1のゴム層の縁部に配置された、かつ、ゴムを有する第3のゴム層とを備える。
【0015】
ここで、ゴムを有する第1のゴム層と、第1のゴム層よりも軟らかい、かつ、第1のゴム層の一方側に配置された、かつ、ゴムを有する第2のゴム層と、第2のゴム層よりも軟らかい、かつ、第2のゴム層の、第1のゴム層が配置された側とは反対側に配置された、かつ、軟性材料を有する柔軟層とによって、段階的に軟らかくなっているので、外部から力を付与されても不自然なシワを生じにくく、軟らかさと型崩れし難い状態とを両立させることができる。
【0016】
また、第2のゴム層に向けて窪んだ凹部が形成された柔軟層によって、人体との間に空間を形成しやすくなり、装着中に蒸れにくくなると共に、吸着作用で人工乳房を装着することができる。
また、本発明の人工乳房を押して人体との間の空気を少し抜くことで、より人体との密着度を高めることができ、形状も小さくすることができる。
【0017】
また、第1のゴム層の縁部に配置された、かつ、ゴムを有する第3のゴム層によって、人工乳房の周縁部と人体との装着を強化できる。
【0018】
また、本発明の人工乳房は、凹部に着脱可能に配置される、かつ、粘着性材料を有する粘着体を備えるものとすることができる。
【0019】
この場合、人体に対する接着力を向上でき、また、人体との間の空間を最小にして人工乳房の著しい変形を防止できる。
また、「粘着性材料」とは、粘着性を有し、軟性材料と同程度の軟らかさを有する材料を示す。
【0020】
さらに、本発明の人工乳房において、ゴムはシリコーンゴムであり、軟性材料および粘着性材料はシリコーンゲルであり、粘着体は、第1のゴム層、第2のゴム層、柔軟層および第3のゴム層よりも軟らかいものとすることができる。
【0021】
この場合、粘着体は、第1のゴム層、第2のゴム層、柔軟層および第3のゴム層よりも軟らかいので、外部からの作用に対し、さらに自然な感触が得られる。
【0022】
また、本発明の人工乳房において、第1のゴム層の縁部と第3のゴム層の縁部とが接着されて、第2のゴム層と柔軟層が第1のゴム層と第3のゴム層に覆われており、シリコーンゴムは、白金触媒硬化型であるものとすることができる。
【0023】
この場合、外側の層である、第1のゴム層と第3のゴム層が吸水性の少ない白金触媒硬化型のシリコーンゴムを有するので、胸部に接していたり、手で何度も触られたりしても、劣化し難い。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る人工乳房は、不自然さを低減できると共に、装着および取外しが容易である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用した人工乳房の第1の実施態様を示す概略断面図である。
【0027】
図1に示す本発明の人工乳房1は、シリコーンゴムを有する第1のシリコーンゴム層2を備える。
また、第1のシリコーンゴム層2は、人工乳房1の表面を構成する層であり、突起した乳頭部2Aが形成されている。
ここで、第1のシリコーンゴム層は、第1のゴム層の一例である。
【0028】
また、本発明の人工乳房1は、シリコーンゴムを有する第2のシリコーンゴム層3を備える。
また、第2のシリコーンゴム層3は、第1のシリコーンゴム層2よりも軟らかい。また、第2のシリコーンゴム層3は、第1のシリコーンゴム層2の一方側に配置されている。
ここで、第2のシリコーンゴム層は、第2のゴム層の一例である。
【0029】
また、本発明の人工乳房1は、シリコーンゲルを有する柔軟層4を備える。
また、柔軟層4は、第2のシリコーンゴム層3よりも軟らかい。また、柔軟層4は、第2のシリコーンゴム層3の、第1のシリコーンゴム層2が配置された側とは反対側に配置されている。
【0030】
ここで、シリコーンゲルは軟性材料の一例である。
また、柔軟層が第2のゴム層よりも軟らかいのであれば、必ずしも軟性材料はシリコーンゲルでなくてもよく、例えば、ゼラチン、寒天を用いることもできる。
【0031】
また、本発明の人工乳房1は、シリコーンゴムを有する第3のシリコーンゴム層5を備える。
また、第3のシリコーンゴム層5は、第1のシリコーンゴム層2と略同じ硬さを有する。
【0032】
また、第3のシリコーンゴム層5は、柔軟層4の、第2のシリコーンゴム層3が配置された側とは反対側に配置されている。
また、第3のシリコーンゴム層5には、柔軟層4に向けて窪んだ凹部6が形成されている。
また、第3のシリコーンゴム層5は粘着性を有する。
【0033】
また、
図1に示すように、第1のシリコーンゴム層2の縁部と第3のシリコーンゴム層5の縁部とが接着されており、第2のシリコーンゴム層3と柔軟層4が、第1のシリコーンゴム層2と第3のシリコーンゴム層5に覆われている。
【0034】
また、第1のシリコーンゴム層2と、第2のシリコーンゴム層3と、第3のシリコーンゴム層5それぞれのシリコーンゴムは、白金を触媒として硬化する白金触媒硬化型である。
従って、外側の層である、第1のシリコーンゴム層2や第3のシリコーンゴム層5が、手で何度も触られたり、胸部に接していたりしても劣化し難い。
【0035】
ここで、第1のゴム層、第2のゴム層および第3のゴム層を構成するゴムは、必ずしもシリコーンゴムでなくてもよい。例えば、シリコーンゴムとウレタンゴムを混合したゴムを使用することもできる。
【0036】
また、シリコーンゴムは必ずしも白金触媒硬化型でなくてもよいが、白金触媒硬化型であれば吸水性が少ないので、手で何度も触られたり、胸部に接していたりしても劣化し難い。よって好ましい。
【0037】
図2は、人体の胸部に装着された、本発明を適用した第1の実施態様の人工乳房を示す概略断面図である。
【0038】
本発明の人工乳房1を人体の胸部7に装着するときは、本発明の人工乳房1の第3のシリコーンゴム層5を胸部7に向けて、本発明の人工乳房1を押す。
このとき、本発明の人工乳房1を胸部7に装着するための粘着剤や接着剤などを、胸部7に塗布しない。
【0039】
すると、第3のシリコーンゴム層5には、柔軟層4に向けて窪んだ凹部6が形成されているので、吸着作用で本発明の人工乳房1を胸部7に装着することができる。
このとき、第3のシリコーンゴム層5と胸部7との間には、大きく隙間が形成されている。
【0040】
また、さらに本発明の人工乳房1を押すことで、胸部7との間の空気を少し抜き、より一層、胸部7との密着度を高めることができると共に、本発明の人工乳房1の大きさを小さくすることができる。
また、第3のシリコーンゴム層5は粘着性を有するので、第3のシリコーンゴム層5が胸部7と接触して、胸部7に対する本発明の人工乳房1の接着力を高めることができる。
【0041】
また、本発明の人工乳房1を取外すときは、例えば本発明の人工乳房1の縁部あたりを指で摘まみ、本発明の人工乳房1をやや圧縮して第3のシリコーンゴム層5と胸部7との間に空気を入れるようにしながら引き離す。
【0042】
また、第3のシリコーンゴム層5と胸部7との間には大きく隙間が形成されるので、胸部7と接触しないような領域例えば第3のシリコーンゴム層5の略中央領域は設けずに、柔軟層4を露出させることもできる。
【0043】
また、
図3は、人体の胸部に装着された、本発明を適用した第1の実施態様の変形例の人工乳房を示す概略断面図である。
【0044】
図3に示す本発明の第1の実施態様の変形例の人工乳房1は、
図1に示す本発明の人工乳房の例と異なり、粘着性を有する第3のシリコーンゴム層5が、柔軟層4の、第2のシリコーンゴム層3が配置された側とは反対側に配置されていない。
【0045】
すなわち、第3のシリコーンゴム層5は、
図3に示すように第1のシリコーンゴム層2の縁部に配置されている。このように第3のシリコーンゴム層5を第1のシリコーンゴム層2の縁部に配置することによって、本発明の人工乳房1の周縁部と胸部7との装着を強化できる。
【0046】
また、柔軟層4には、第2のシリコーンゴム層3に向けて凹部6が形成されている。
【0047】
図4は、本発明を適用した第2の実施態様の人工乳房を人体の胸部に装着するときの様子の一例を示す概略断面図である。また、
図5は、人体の胸部に装着された、本発明を適用した第2の実施態様の人工乳房を示す概略断面図である。
【0048】
図4に示す本発明の人工乳房1は、さらに凹部6に着脱可能に配置される、かつ、シリコーンゲルを有するシリコーンゲル粘着体8を備えるものである。
【0049】
すなわち、第1のシリコーンゴム層2、第2のシリコーンゴム層3、柔軟層4および第3のシリコーンゴム層5が、本発明の第2の実施態様の人工乳房1では、人工乳房本体を構成する。
【0050】
ここで、シリコーンゲルは粘着性材料の一例であり、シリコーンゲル粘着体は粘着体の一例である。
【0051】
また、粘着性材料としては、例えば、シリコーンゲルとシリコーンゴムの混合物を使用することもできる。この場合、シリコーンゲルとシリコーンゴムの重量比を変えることで、粘着体の硬度と接着力を調節することができる。
すなわち、シリコーンゴムの割合を多くするにつれ、硬度が高くなると共に接着力が低下し、シリコーンゲルの割合を多くするにつれ、硬度が低下すると共に接着力が高くなる。
【0052】
また、シリコーンゲル粘着体8は、第1のシリコーンゴム層2、第2のシリコーンゴム層3、柔軟層4および第3のシリコーンゴム層5よりも軟らかい。
【0053】
図4に示す本発明の人工乳房1は、シリコーンゲル粘着体8を備えているので、人体に対する接着力を向上でき、また、人体との間の空間を最小にして人工乳房の著しい変形を防止できる。
【0054】
また、シリコーンゲル粘着体8は、第1のシリコーンゴム層2、第2のシリコーンゴム層3、柔軟層4および第3のシリコーンゴム層5よりも軟らかいので、外部からの作用に対し、さらに自然な感触が得られる。
【0055】
また、シリコーンゲル粘着体8は着脱可能であるので、快適性を優先するときは凹部6に配置せずに本発明の人工乳房1を装着し、激しい運動を行なうときなど接着力を優先するときは凹部6に配置して本発明の人工乳房1を装着し、二つの状況に対応できる。
【0056】
また、シリコーンゲル粘着体8は着脱可能であるので、シリコーンゲル粘着体8の接着力が落ちた場合、あるいはシリコーンゲル粘着体8が汚損した場合には、シリコーンゲル粘着体8のみ交換することで、接着力の低下と汚損の問題を解決できる。
【0057】
また、シリコーンゲル粘着体8は着脱可能であるので、様々な大きさおよび重量のシリコーンゲル粘着体8を適用して、人工乳房全体の大きさと、形状と、重量の微調整が可能である。
【0058】
また、
図4に示すシリコーンゲル粘着体8は平坦な形状を有しているが、必ずしもこのような形状に限定されるものではなく、例えば球形とすることもできる。
【0059】
また、
図5に示すように、本発明の第2の実施態様の人工乳房1は、第3のシリコーンゴム層5と胸部7との間にシリコーンゲル粘着体8を挟んだ状態で、胸部7に装着される。
【0060】
また、本発明の第2の実施態様の人工乳房1を取外すときは、例えば本発明の人工乳房1の縁部あたりを指で摘まみ、本発明の人工乳房1をやや圧縮してシリコーンゲル粘着体8と胸部7との間に空気を入れるようにしながら引き離す。
【0061】
このとき、第3のシリコーンゴム層5とシリコーンゲル粘着体8との間の接着力の方が、シリコーンゲル粘着体8と皮膚すなわち胸部7との間の接着力よりも強いので、シリコーンゲル粘着体8を人工乳房本体と一緒に取外すことができる。
【0062】
[実施例1]
乳頭部を含む人工乳房の外形に対応した形状の窪みが設けられた第1の人工乳房形成用型に、人体乳房色の色料を少量混合した透明液状の2液型RTV(Room Temperature Vulcanizing=室温硬化)シリコーンゴム(ファクター2社製、商品名:VST−50)を注型した。そして、注型された2液型RTVシリコーンゴムに、触媒として白金を加えて室温〜70℃の温度範囲で加熱硬化させ、第1のシリコーンゴム層2とした。
【0063】
また、第1のシリコーンゴム層2の硬さをゴム硬度計「タイプAデュロメータ」で測定したところ、硬さは「31」であった。
【0064】
また、隆起部が形成された第2の人工乳房形成用型に、人体乳房色の色料を少量混合した透明液状の2液型RTVシリコーンゴム(ファクター2社製、商品名:VST−50)を注型した。そして、注型された2液型RTVシリコーンゴムに、触媒として白金を加えて室温〜70℃の温度範囲で加熱硬化させ、第3のシリコーンゴム層5とした。
また、第3のシリコーンゴム層5の硬さをゴム硬度計「タイプAデュロメータ」で測定したところ、硬さは「31」であった。
【0065】
次に、第1のシリコーンゴム層2上に透明液状の2液型RTVシリコーンゴム(ファクター2社製、商品名:VST−05)を注型した。そして、注型された2液型RTVシリコーンゴムに、触媒として白金を加えて室温〜70℃の温度範囲で加熱硬化させ、第2のシリコーンゴム層3とした。
【0066】
また、第2のシリコーンゴム層3の硬さをゴム硬度計「タイプOOデュロメータ」で測定したところ、硬さは「31」であった。
【0067】
ここで、タイプAデュロメータは、一般的な硬さを有するゴムの硬さを測定する際に使用される計器であり、タイプOOデュロメータは、超軟質ゴムの硬さを測定する際に使用される計器である。
すなわち、タイプAデュロメータで測定して得られた硬さ「31」を、タイプOOデュロメータで測定して得られる硬さに換算すると約「70」に相当し、第2のシリコーンゴム層3は第1のシリコーンゴム層2よりも軟らかいことを確認した。
【0068】
さらに、第2のシリコーンゴム層3上に透明液状の2液型RTVシリコーンゲル(モメンティブ社製、商品名:TSE3062)を注型した。そして、注型された2液型RTVシリコーンゲルを室温〜70℃の温度範囲で加熱硬化させ、柔軟層4とした。
【0069】
また、柔軟層4の硬さを針入度計で測定したところ、針入度は「55」であった。
ここで、針入度計は、超軟質ゴムよりもさらに軟らかいゲル状物質の硬さを測定する際に使用される計器である。また、針入度「55」は、木綿豆腐の針入度と略同じである。
【0070】
次に、第3のシリコーンゴム層5の縁部に、透明液状の2液型RTVシリコーンゴム(ファクター2社製、商品名:VST−50)を塗布し、第1の人工乳房形成用型と第2の人工乳房形成用型を重ね合わせ、第1のシリコーンゴム層2の縁部および第2のシリコーンゴム層3の縁部と、第3のシリコーンゴム層5の縁部とを接着させた。
【0071】
さらに、第1のシリコーンゴム層2、第2のシリコーンゴム層3、柔軟層4および第3のシリコーンゴム層5を、室温〜70℃の温度範囲で加熱硬化させた。
【0072】
そして、第1の人工乳房形成用型と第2の人工乳房形成用型を取外し、
図1に示す本発明の人工乳房1を得た。
【0073】
得られた本発明の人工乳房1に様々な角度から力を加えて変形させても不自然なシワは生じなかった。また、得られた本発明の人工乳房1は、人体に比べて不自然な硬さでもなかった。
【0074】
また、得られた本発明の人工乳房1を、粘着剤や接着剤などを用いずに人体の胸部7に装着した。また、粘着剤や接着剤などを用いずに装着しているので、装着している間も発汗が妨げられ難く、長時間装着していても、装着者は不快感を覚えなかった。
【0075】
[実施例2]
実施例1と同様にして、本発明の人工乳房1の人工乳房本体を得た。
また、第1の人工乳房形成用型の窪みよりも浅く、かつ、第2の人工乳房形成用型の隆起部に対応する形状の窪みが形成された第1の粘着体形成用型と、隆起部が形成された第2の粘着体形成用型との間に、液状のシリコーン混合物を注型した。
【0076】
ここで、シリコーン混合物は、第1のシリコーンゲル材料(冨田マテックス社製、商品名:GEL−GUM10)と第2のシリコーンゲル材料(冨田マテックス社製、商品名:GEL−GUM10)を重量比1:1で均一配合して得られたシリコーンゲル材料混合品と、透明液状の2液型RTVシリコーンゴム(ファクター2社製、商品名:VST−05)とを重量比10:1で混合して得られものである。
【0077】
そして、注型されたシリコーン混合物を室温〜70の温度範囲で加熱硬化させ、第1の粘着体形成用型と第2の粘着体形成用型を取外し、
図4に示すシリコーンゲル粘着体8を得た。
【0078】
また、人工乳房本体も、シリコーンゲルを加熱硬化して得られた柔軟層4を有しているが、第1のシリコーンゴム層2の縁部および第2のシリコーンゴム層3の縁部と、第3のシリコーンゴム層5の縁部とを接着させた後に、さらに第1のシリコーンゴム層2、第2のシリコーンゴム層3、柔軟層4および第3のシリコーンゴム層5を、室温〜70℃の温度範囲で加熱硬化させているので、シリコーンゲル粘着体8は、第1のシリコーンゴム層2、第2のシリコーンゴム層3、柔軟層4および第3のシリコーンゴム層5よりも軟らかい。
【0079】
得られた本発明の人工乳房1の人工乳房本体を、粘着剤や接着剤などを用いずに、得られたシリコーンゲル粘着体8を介して人体の胸部7に装着した。
【0080】
本発明の人工乳房1を装着した装着者は、装着中、激しい運動を行なったり、入浴したり、本発明の人工乳房1を圧迫したりしても、本発明の人工乳房1は移動することなく、装着されていた。
【0081】
以上のように、本発明の人工乳房は、ゴムを有する第1のゴム層と、第1のゴム層よりも軟らかい、かつ、第1のゴム層の一方側に配置された、かつ、ゴムを有する第2のゴム層と、第2のゴム層よりも軟らかい、かつ、第2のゴム層の、第1のゴム層が配置された側とは反対側に配置された、かつ、軟性材料を有する柔軟層を備えており、段階的に軟らかくなっているので、外部から力を付与されても不自然なシワを生じにくく、軟らかさと型崩れし難い状態とを両立させることができる。
【0082】
また、本発明の人工乳房は、第1のゴム層と略同じ硬さを有し、かつ、柔軟層の、第2のゴム層が配置された側とは反対側に配置された、かつ、柔軟層に向けて窪んだ凹部が形成された、かつ、ゴムを有する第3のゴム層を備えているので、人体との間に空間を形成しやすくなり、装着中に蒸れにくくなると共に、吸着作用で人工乳房を装着することができる。
【0083】
また、本発明の人工乳房の変形例では、第3のゴム層が第1のゴム層の縁部にのみ配置されており、代わりに第2のゴム層に向けて窪んだ凹部が柔軟層に形成されているので、人体との間に空間を形成しやすくなり、装着中に蒸れにくくなると共に、吸着作用で人工乳房を装着することができる。
【0084】
従って、本発明の人工乳房は、不自然さを低減できると共に、粘着剤や接着剤などを塗布することなく胸部に装着できるので、装着および取外しが容易である。
【0085】
また、粘着剤や接着剤などを塗布して人工乳房を装着すると、取外しが大変であるが、本発明の人工乳房は、粘着剤や接着剤などを塗布することなく胸部に装着できるので、一度装着しても、取外して再度装着し、簡単に何度でも装着位置を変更できる。
従って、装着者は、いつでも本発明の人工乳房の装着位置を変えられるという心のゆとりを持つことができる。