(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の車両用油圧制御装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1から実施例3に基づいて説明する。
【0010】
(実施例1)
まず、実施例1の車両用油圧制御装置の構成を、「ハイブリッド車両の全体システム構成」、「油圧制御回路の詳細構成」、「ポンプ切替制御処理構成」に分けて説明する。
【0011】
[ハイブリッド車両の全体システム構成]
図1は、実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両(車両の一例)を示す全体システム図である。以下、
図1に基づいて、実施例1のハイブリッド車両の全体システム構成を説明する。
【0012】
実施例1の車両用油圧制御装置は、
図1に示すハイブリッド車両に適用されている。このハイブリッド車両の駆動系は、エンジンEngと、第1クラッチCL1と、モータ/ジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、無段変速機CVTと、ファイナルギアFGと、左駆動輪LTと、右駆動輪RTと、を備えている。
【0013】
前記エンジンEngは、希薄燃焼可能であり、スロットルアクチュエータによる吸入空気量とインジェクタによる燃料噴射量と、点火プラグによる点火時期の制御により、エンジントルクが指令値と一致するように制御される。
【0014】
前記第1クラッチCL1は、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGとの間の位置に介装される。この第1クラッチCL1としては、例えば、ダイアフラムスプリングによる付勢力にて常時解放(ノーマルオープン)の乾式クラッチが用いられ、エンジンEngからモータ/ジェネレータMG間の完全締結/半締結/解放を行なう。この第1クラッチCL1が完全締結状態ならモータトルクとエンジントルクが第2クラッチCL2へと伝達され、解放状態ならモータトルクのみが第2クラッチCL2へと伝達される。なお、完全締結/半締結/解放の制御は、油圧アクチュエータに対するストローク制御にて行われる。
【0015】
前記モータ/ジェネレータMGは、走行駆動源となる交流同期モータ構造であり、発進時や走行時に駆動トルク制御や回転数制御を行うと共に、制動時や減速時に回生ブレーキ制御による車両運動エネルギーのバッテリBATへの回収を行なうものである。
【0016】
前記第2クラッチCL2は、モータ/ジェネレータMGと左右駆動輪LT,RTとの間に介装された摩擦締結要素である。この第2クラッチCL2は、ここでは油圧作動による湿式の多板摩擦クラッチから構成され、第2クラッチ油圧により完全締結/スリップ締結/解放が制御される。実施例1の第2クラッチCL2は、遊星ギアによる無段変速機CVTの前後進切替機構に設けられた前進クラッチFCと後退ブレーキRBを流用している。つまり、前進走行時には、前進クラッチFCが第2クラッチCL2とされ、後退走行時には、後退ブレーキRBが第2クラッチCL2とされる。
【0017】
前記無段変速機CVTは、プライマリプーリPriと、セカンダリプーリSecと、このプライマリプーリPriとセカンダリプーリSecの間に掛け渡されたプーリベルトVを有するベルト式無段変速機である。プライマリプーリPriとセカンダリプーリSecは、それぞれ油圧が供給されることでプーリベルトVを挟持しつつプーリ幅を変更し、プーリベルトVを挟持する面の径を変更して変速比(プーリ比)を自在に制御する。
【0018】
さらに、モータ/ジェネレータMGのモータ出力軸MGoutには、チェーンCHを介して機械式オイルポンプO/P(第1オイルポンプ)の入力ギアが接続されている。この機械式オイルポンプO/Pは、モータ/ジェネレータMGの回転駆動力によって駆動されて油圧供給を行うオイルポンプであり、例えばギアポンプやベーンポンプ等が用いられる。また、この機械式オイルポンプO/Pは、モータ/ジェネレータMGの回転方向に拘らず作動油の吐出が可能となっている。
【0019】
さらに、ここでは、油圧源として、モータ/ジェネレータMGとは別に設けられたサブモータS/M(電動モータ)の回転駆動力によって駆動されて油圧供給を行う電動オイルポンプM/O/P(第2オイルポンプ)が設けられている。
この電動オイルポンプM/O/Pは、三相交流モータ構造であり、回転数制御による作動油の吐出流量の制御が可能となっている。
【0020】
そして、この機械式オイルポンプO/Pと電動オイルポンプM/O/Pは、第1,第2クラッチCL1,CL2及び無段変速機CVTへ供給する作動油圧(制御圧)を作り出す油圧供給源OILとなっている。この油圧供給源OILでは、機械式オイルポンプO/Pからの吐出流量が十分であるときはサブモータS/Mを停止して電動オイルポンプM/O/Pを停止させる。また、機械式オイルポンプO/Pからの吐出流量が低下すると、サブモータS/Mを駆動して電動オイルポンプM/O/Pを駆動させ、この電動オイルポンプM/O/Pからも作動油を吐出させる。
【0021】
そして、このハイブリッド車両は、第1クラッチCL1とモータ/ジェネレータMGと第2クラッチCL2により1モータ・2クラッチの駆動システムが構成され、この駆動システムによる主な駆動態様として「EVモード」と「HEVモード」を有する。
前記「EVモード」は、第1クラッチCL1を解放し、第2クラッチCL2を締結してモータ/ジェネレータMGのみを駆動源に有する電気自動車モードである。
前記「HEVモード」は、第1,第2クラッチCL1,CL2を締結してエンジンEngとモータ/ジェネレータMGを駆動源に有するハイブリッド車モードである。
【0022】
実施例1のハイブリッド車両の制御系は、
図1に示すように、インバータINVと、バッテリBATと、統合コントローラ10と、変速機コントローラ11と、クラッチコントローラ12と、エンジンコントローラ13と、モータコントローラ14と、バッテリコントローラ15と、を備えている。
【0023】
前記インバータINVは、直流/交流の変換を行い、モータ/ジェネレータMGの駆動電流を生成する。また生成する駆動電流の位相を逆転することでモータ/ジェネレータMGの出力回転を反転する。
【0024】
前記バッテリBATは、充放電可能な二次電池であり、モータ/ジェネレータMGへの電力供給と、モータ/ジェネレータMGが回生した電力の充電を行う。
【0025】
前記統合コントローラ10は、バッテリ状態(ここでは、バッテリコントローラ15から入力)、アクセル開度(ここでは、アクセル開度センサ21により検出)、及び車速(ここでは、変速機出力回転数に同期した値、変速機出力回転数センサ22により検出)から運転者の要求駆動力に応じた目標駆動トルクを演算する。そして、その結果に基づき各アクチュエータ(モータ/ジェネレータMG、エンジンEng、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、無段変速機CVT)に対する指令値を演算し、各コントローラ11〜15へと送信する。
また、この統合コントローラ10は、機械式オイルポンプO/Pによる油圧供給から電動オイルポンプM/O/Pによる油圧供給へと切り替える際、電動オイルポンプM/O/Pの駆動制御を行う第2オイルポンプコントローラである。
【0026】
前記変速機コントローラ11は、統合コントローラ10からの変速指令を達成するように変速制御を行なう。この変速制御は、油圧制御回路100を介して供給されたライン圧PLを元圧として、無段変速機CVTのプライマリプーリPriと、セカンダリプーリSecに供給する油圧を制御することで行われる。
そして、ライン圧PLからプライマリプーリPriに供給する油圧と、セカンダリプーリSecに供給する油圧を作り出した際に生じた余剰圧は、第1クラッチCL1や第2クラッチCL2の冷却や潤滑に回される。
【0027】
前記クラッチコントローラ12は、第2クラッチ入力回転数(モータ回転数センサ23により検出)、第2クラッチ出力回転数(第2クラッチ出力回転数センサ24により検出)、クラッチ油温(作動油温センサ25により検出)を入力する。また、このクラッチコントローラ12は、統合コントローラ10からの第1クラッチ制御指令及び第2クラッチ制御指令を達成するように、第1クラッチ制御、第2クラッチ制御をそれぞれ行う。この第1クラッチ制御は、油圧制御回路100を介して供給されたライン圧PLを元圧として、第1クラッチCL1に供給される油圧を制御することで行われる。また、第2クラッチ制御は、油圧制御回路100を介して供給されたライン圧PLを元圧として、第2クラッチCL2に供給される油圧を制御することで行われる。
そして、ライン圧PLから第1クラッチCL1に供給される油圧と、第2クラッチCL2に供給される油圧を作り出した際に生じた余剰圧は、第1クラッチCL1や第2クラッチCL2の冷却や潤滑に回される。
【0028】
なお、無段変速機CVTのプライマリプーリPri、セカンダリプーリSec、第2クラッチCL2に対し、ライン圧PLを元圧とした制御油圧を供給する回路を、ここでは「変速機構用油圧系Sup」という。また、第2クラッチCL2の冷却や潤滑を行う回路を、ここでは「変速機構の冷却/潤滑系Lub」という(
図2参照)。
【0029】
前記エンジンコントローラ13は、エンジン回転数(エンジン回転数センサ26により検出)を入力すると共に、統合コントローラ10からの目標エンジントルクに対応したエンジントルク指令値を達成するようにエンジンEngのトルク制御を行なう。
【0030】
前記モータコントローラ14は、モータ回転数(モータ回転数センサ23により検出)を入力すると共に、統合コントローラ10からの目標モータトルクに対応したモータトルク指令値やモータ回転数指令値を達成するようにモータ/ジェネレータMGの制御を行なう。
【0031】
前記バッテリコントローラ15は、バッテリBATの充電状態を管理し、その情報を統合コントローラ10へと送信する。なお、バッテリBATの充電状態は、バッテリ電圧センサ15aが検出する電源電圧と、バッテリ温度センサ15bが検出するバッテリ温度とに基づいて演算される。
【0032】
[油圧制御回路の詳細構成]
図2は、実施例1のハイブリッド車両に備えられた油圧制御回路を示す油圧回路図である。以下、
図2に基づいて、実施例1の油圧制御回路の詳細構成を説明する。
【0033】
前記油圧制御回路100は、機械式オイルポンプO/Pと電動オイルポンプM/O/Pからなる油圧供給源OILの吐出圧をライン圧PLに調圧し、変速機構用油圧系Supに供給する。また、この油圧制御回路100では、変速機構用油圧系Supに油圧供給した際に生じた余剰圧を、変速機構の冷却/潤滑系Lubに供給する。さらに、この油圧制御回路100では、切替弁107を切り替えることで、電動オイルポンプM/O/Pから吐出された作動油を変速機構の冷却/潤滑系Lubに直接供給する。
すなわち、実施例1の油圧制御回路100は、
図2に示すように、機械式オイルポンプO/Pと、電動オイルポンプM/O/Pと、第1油路101と、第1フラッパー弁101aと、第2油路102と、第2フラッパー弁102aと、第3油路103と、ライン圧調圧弁104と、ライン圧油路105と、冷却系油路106と、切替弁107と、を有している。
【0034】
前記機械式オイルポンプO/Pは、吐出ポート110aに第1油路101が接続され、吸込ポート110bにストレーナ108に回収された作動油を吸い込む吸込回路109aが接続されている。そして、この機械式オイルポンプO/Pは、モータ/ジェネレータMGが回転駆動することで駆動し、吸込回路109aを介してストレーナ108から作動油を吸い込み、第1油路101へと作動油を吐出する。このときの吐出流量は、モータ/ジェネレータMGの回転数に依存する。
【0035】
前記電動オイルポンプM/O/Pは、吐出ポート111aに第2油路102が接続され、吸込ポート111bにストレーナ108に回収された作動油を吸い込む吸込回路109aが接続されている。そして、この電動オイルポンプM/O/Pは、サブモータS/Mが回転駆動することで駆動し、吸込回路109aを介してストレーナ108から作動油を吸い込み、第2油路102へと作動油を吐出する。
ここで、電動オイルポンプM/O/Pの吐出流量は、ポンプ回転数に依存する。つまり、電動オイルポンプM/O/Pが一回転することで、この電動オイルポンプM/O/Pから吐出する流量は決まっており、ポンプ回転数とポンプ吐出流量はある回転数(流量)までは比例関係になっている。
【0036】
前記第1油路101は、一端が機械式オイルポンプO/Pの吐出ポート110aに接続され、他端に第1フラッパー弁101aが設けられている。この第1油路101は、機械式オイルポンプO/Pから吐出された作動油が流れる油路であり、この第1油路101における油圧(以下、「第1油圧P1」という)が、いわゆる機械式オイルポンプO/Pから供給される油圧(第1オイルポンプ吐出圧)となる。この第1油路101は、第1フラッパー弁101aが開くと、第3油路103と連通する。
また、この第1油路101には、第1油圧P1を検出する第1圧力センサ27が設けられ、第1油圧P1を監視している。
【0037】
前記第2油路102は、一端が電動オイルポンプM/O/Pの吐出ポート111aに接続され、他端に第2フラッパー弁102aが設けられている。この第2油路102は、電動オイルポンプM/O/Pから吐出された作動油が流れる油路であり、この第2油路102における油圧(以下、「第2油圧P2」という)が、いわゆる電動オイルポンプM/O/Pから供給される油圧(第2オイルポンプ吐出圧)となる。この第2油路102は、第2フラッパー弁102aが開くと、第3油路103と連通する。
また、この第2油路102は、途中位置に切替弁107が介装されている。つまり、第2油路102は途中位置が分断され、一方が切替弁107の切替弁入力ポート107aに接続され、他方が切替弁107の切替弁出力ポート107bに接続されている。
さらに、この第2油路102には、第2油圧P2を検出する第2圧力センサ28と、圧力リーク弁28aとが設けられている。そして、第2圧力センサ28によって監視されている第2油圧P2が所定のリリーフ圧P
reに達したら、圧力リーク弁28aが開いて、第2油路102内の作動油をドレンするようになっている。
【0038】
前記第1フラッパー弁101aは、機械式オイルポンプO/P側への作動油の逆流を防止する弁であり、第1油圧P1が第3油路103における油圧(以下、「第3油圧P3」という)よりも大きくなったら開放する特性を有する。また、前記第2フラッパー弁102aは、電動オイルポンプM/O/P側への作動油の逆流を防止する弁であり、第2油圧P2が第3油圧P3よりも大きくなったら開放する特性を有する。
ここで、第3油圧P3の大きさは、第1油圧P1と第2油圧P2のうち高い方の油圧で決まる。つまり、この第1,第2フラッパー弁101a,102aは、第1油圧P1と第2油圧P2のうち高い方の油圧に対応した方が開き、他方が閉じる。これにより、第3油圧P3は、フラッパー弁が開いた方の油圧と同じ大きさになる。
【0039】
なお、第1,第2フラッパー弁101a,102aは、第1油圧P1と第2油圧P2の間に油圧差がないときには両方とも開く。そして、油圧差がない状態から、第1油圧P1と第2油圧P2のうちいずれか一方の油圧が高くなったら、この油圧差に基づいて、高い方の油圧に対応したフラッパー弁の開度が大きくなっていき、他方のフラッパー弁が次第に閉まっていく。
すなわち、この第1,第2フラッパー弁101a,102aは、第1油圧P1と第2油圧P2との油圧差に基づき、機械式オイルポンプO/Pからのオイル供給割合と、電動オイルポンプM/O/Pからのオイル供給割合とを調整する割合調整弁に相当する。
【0040】
前記第3油路103は、一端が二股に分かれており、二股に分かれたうちの一方が第1フラッパー弁101aに接続され、他方が第2フラッパー弁102aに接続され、第1油路101と第2油路102の双方からの作動油の流入を可能としている。そして、この第3油路103の他端は、ライン圧調圧弁104の入力ポート104aに接続されている。
すなわち、この第3油路103は、油圧供給源OIL(機械式オイルポンプO/P及び/又は電動オイルポンプM/O/P)から吐出された作動油が流れる油路であり、この第3油路103における油圧である第3油圧P3は、ライン圧調圧弁104によって調圧されるライン圧PLの元圧になる。
【0041】
前記ライン圧調圧弁104は、第3油圧P3を調圧して、変速機構用油圧系Supへ供給するライン圧PLを作り出す圧力調整弁である。
すなわち、このライン圧調圧弁104は、入力ポート104aに、第3油路103が接続され、出力ポート104bに、変速機構用油圧系Supに繋がるライン圧油路105が接続されている。そして、このライン圧調圧弁104では、統合コントローラ10からの指示値によってスプールを移動させ、第3油路103内の作動油を図示しないドレン回路に逃がすことで、ライン圧PLを調圧する。
なお、ライン圧油路105には、圧力調整弁105aが設けられ、ライン圧PLから変速機構用油圧系Supに必要な油圧を差し引いた余剰圧を、変速機構の冷却/潤滑系Lubに逃がすようになっている。
【0042】
前記冷却系油路106は、一端が切替弁107の冷却側ポート107cに接続され、他端が変速機構の冷却/潤滑系Lubに繋がり、切替弁107が冷却モードに切り替えられた際、電動オイルポンプM/O/Pから吐出された作動油を、変速機構の冷却/潤滑系Lubへ供給する。
なお、変速機構の冷却/潤滑系Lubにて使用された作動油は、ドレン回路109bを介してストレーナ108に回収される。
【0043】
前記切替弁107は、第2油路102に設けられ、統合コントローラ10からの切替指令に基づいて、電動オイルポンプM/O/Pから吐出された作動油を第3油路103へ供給させたり、電動オイルポンプM/O/Pから吐出された作動油を変速機構の冷却/潤滑系Lubへ供給させたりする。
すなわち、この切替弁107は、オン・オフソレノイドと切替バルブを有しており、切替弁入力ポート107aを切替弁出力ポート107bに連通させたとき、第2油路102が完全開通する。また、切替弁入力ポート107aを冷却側ポート107cに連通させたとき、第2油路102は冷却系油路106に切り替えられる。
【0044】
なお、前記変速機構用油圧系Supは、ライン圧油路105に設けられた変速機用調圧弁112aと、ライン圧油路105に設けられた第2クラッチ用調圧弁112bと、を有している。そして、変速機用調圧弁112aにより、ライン圧PLを元圧にしてプライマリプーリPriやセカンダリプーリSecに供給される油圧が調圧された上、プライマリプーリPriやセカンダリプーリSecに油圧供給がなされる。また、第2クラッチ用調圧弁112bにより、ライン圧PLを元圧にして前進クラッチFCや後退ブレーキRBに供給される油圧が調圧された上、前進クラッチFCや後退ブレーキRBに油圧供給がなされる。
【0045】
[ポンプ切替制御処理構成]
図3は、実施例1の統合コントローラにて実行されるポンプ切替制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、実施例1のポンプ切替制御処理構成を表す
図3の各ステップについて説明する。なお、このポンプ切替制御処理は、走行中であって機械式オイルポンプO/Pの回転数が十分に高い状態のとき、アクセルOFFとなりモータ/ジェネレータMGの回転数が低下して車速が下がり、さらに機械式オイルポンプO/Pの回転数も低下したことで開始される。つまり、ここでは走行中からのアクセルOFFをトリガに開始する。
【0046】
ステップS101では、第1油圧P1を検出し、ステップS102へ進む。ここで、第1油圧P1は、第1圧力センサ27によって検出する。
【0047】
ステップS102では、ステップS101での第1油圧P1の検出に続き、検出した第1油圧P1が予め設定したポンプ駆動閾値P
O/P以下であるか否かを判断する。YES(P1≦ポンプ駆動閾値P
O/P)の場合には、機械式オイルポンプO/Pからの作動油だけでは必要ライン圧PL
neを賄えなくなるとして、ステップS103へ進む。NO(P1>ポンプ駆動閾値P
O/P)の場合には、機械式オイルポンプO/Pからの作動油だけも必要ライン圧PL
neを賄えるとしてステップS101へ戻る。
ここで、「ポンプ駆動閾値P
O/P」とは、必要ライン圧PL
ne及び後述する平衡油圧P
baよりも大きい油圧値である。この「ポンプ駆動閾値P
O/P」は、低下していく第1油圧P1が平衡油圧P
baになるタイミングから、電動オイルポンプM/O/Pが駆動を開始して第2油圧P2が平衡油圧P
baになるまでに要する時間分遡った時点における第1油圧P1よりも大きい値に設定される。
また、「必要ライン圧PL
ne」とは、油圧供給源OILから油圧が供給される変速機構油圧系Sup及び変速機構の冷却/潤滑系Lubにおいて必要最低限の油圧である。なお、プライマリプーリPriやセカンダリプーリSecにおいて必要最低限の油圧とは、プライマリプーリPriやセカンダリプーリSecがスリップしない油圧である。また、第2クラッチCL2において必要最低限の油圧とは、締結される前進クラッチFCや後退ブレーキRBがスリップしない油圧である。また、変速機構の冷却/潤滑系Lubにおいて必要最低限の油圧とは、適切に第2クラッチCL2の冷却や潤滑を行うために必要な油圧である。そして、ここでは、これらの油圧を必要とする部分における各必要最低限の油圧のうち、最も高い油圧を「必要ライン圧PL
ne」として設定する。なお、必要最低限の値にばらつきによるマージンを加算した値を「必要ライン圧PL
ne」として設定してもよい。
【0048】
ステップS103では、ステップS102でのP1≦ポンプ駆動閾値P
O/Pとの判断に続き、サブモータS/Mを運転して電動オイルポンプM/O/Pの駆動を開始し、ステップS104へ進む。
【0049】
ステップS104では、ステップS103での電動オイルポンプM/O/Pの駆動開始に続き、電動オイルポンプM/O/Pを高速運転し、ステップS105へ進む。
このとき、第2フラッパー弁102aは閉じているため、電動オイルポンプM/O/Pから吐出された作動油は第2油路102内に貯留し、第2油圧P2は上昇していく。
【0050】
ステップS105では、ステップS104での電動オイルポンプM/O/Pの高速運転(第2油圧P2の上昇)に続き、第2油圧P2を検出し、ステップS106へ進む。ここで、第2油圧P2は、第2圧力センサ28によって検出する。
【0051】
ステップS106では、ステップS105での第2油圧P2の検出に続き、検出した第2油圧P2が予め設定した平衡油圧P
ba以上であるか否かを判断する。YES(P2≧平衡油圧P
ba)の場合には、第2油圧P2が目標に達したとしてステップS107へ進む。NO(P2<平衡油圧P
ba)の場合には、第2油圧P2が目標に達していないとしてステップS104へ戻る。
ここで、「平衡油圧P
ba」とは、必要ライン圧PL
neよりも大きい油圧値であり、ここでは必要ライン圧PL
neに対し、第1油圧P1と第2油圧P2を一致させた際に生じる油圧ばらつき分の補正値(実験等により求める)を加算した値である。
【0052】
ステップS107では、ステップS106でのP2≧平衡油圧P
baとの判断に続き、サブモータS/Mの出力を落として電動オイルポンプM/O/Pを微速運転し、ステップS108へ進む。
このとき、電動オイルポンプM/O/Pの吐出量が第2油圧P2と釣り合うように制御することで、第2油圧P2は平衡油圧P
baの状態で維持される。
【0053】
ステップS108では、ステップS107での電動オイルポンプM/O/Pの微速運転(第2油圧P2維持)に続き、第1油圧P1を検出し、ステップS109へ進む。
【0054】
ステップS109では、ステップS108での第1油圧P1の検出に続き、検出した第1油圧P1が平衡油圧P
ba以下であるか否かを判断する。YES(P1≦平衡油圧P
ba)の場合には、第1油圧P1と第2油圧P2とが一致したとしてステップS110へ進む。NO(P1>平衡油圧P
ba)の場合には、第1油圧P1と第2油圧P2とが一致していないとしてステップS107へ戻る。
【0055】
ステップS110では、ステップS109でのP1≦平衡油圧P
baとの判断に続き、第1油圧P1及び第2油圧P2をそれぞれ検出し、ステップS111へ進む。
【0056】
ステップS111では、ステップS110での第1,第2油圧P1,P2の検出に続き、サブモータS/Mの出力を落として電動オイルポンプM/O/Pの回転数を低下させ、第2油圧P2を漸減させていきステップS112へ進む。
このとき、第1油圧P1の低下に対し、第2油圧P2のばらつきを考慮したマージンを持たせた状態で第2油圧P2が低下していくように電動オイルポンプM/O/Pの回転数を制御する。つまり、第2油圧P2が、第1油圧P1よりも所定のマージン分高くなるように制御する。
【0057】
ステップS112では、ステップS111での電動オイルポンプM/O/Pの回転数低下に続き、第2油圧P2が必要ライン圧PL
neに達したか否かを判断する。YES(P2=必要ライン圧PL
ne)の場合には、ステップS113へ進む。NO(P2>必要ライン圧PL
ne)の場合には、ステップS110へ戻る。
【0058】
ステップS113では、ステップS112でのP2=必要ライン圧PL
neとの判断に続き、サブモータS/Mの出力を落として電動オイルポンプM/O/Pを微速運転し、エンドへ進む。このとき、電動オイルポンプM/O/Pの吐出量が必要ライン圧PL
neと釣り合うように制御することで、第2油圧P2は必要ライン圧PL
neの状態で維持される。
【0059】
次に、作用を説明する。まず、比較例の車両用油圧制御装置における構成と課題を説明し、続いて、実施例1の車両用油圧制御装置における作用を、「油圧源切り替え時の必要圧担保作用」と、「その他の特徴的作用」に分けて説明する。
【0060】
[比較例の車両用油圧制御装置における構成と課題]
図4は、比較例の制御装置において、油圧源を機械式オイルポンプから電動オイルポンプに切り替える際の第1油圧・第2油圧の各特性を示すタイムチャートである。以下、
図4に基づき、比較例の車両用油圧制御装置における構成と課題を説明する。
【0061】
エンジンや駆動モータといった走行駆動源によって駆動されて油圧供給を行う機械式オイルポンプと、走行駆動源とは別の電動モータによって駆動されて油圧供給を行う電動オイルポンプと、を備えた車両では、車速の低下等によって走行駆動源の回転数が低下すると、機械式オイルポンプの吐出流量が低下していく。これにより、機械式オイルポンプの吐出圧(第1油圧P1)が低下するため、電動オイルポンプを駆動させて、この電動オイルポンプの吐出圧(第2油圧P2)によって必要ライン圧を担保する必要がある。
【0062】
ここで、比較例の制御装置では、
図4に示すタイムチャートにおいて、時刻t
1以前にアクセル足離し等の操作が行われ、走行駆動源の回転数が低下すると、これに伴って機械式オイルポンプの吐出流量が低下し、第1油圧P1が低下していく。そして、時刻t
1時点において、第1油圧P1が所定のポンプ駆動閾値以下になったら、電動オイルポンプの駆動を開始して、第2油圧P2を立ち上げる。
【0063】
ここで、機械式オイルポンプから吐出された作動油が流れる第1油路には、第1フラッパー弁が設けられ、電動オイルポンプから吐出された作動油が流れる第2油路には、第2フラッパー弁が設けられている。そして、この第1,第2フラッパー弁によって、第1油路における油圧(第1油圧P1)と、第2油路における油圧(第2油圧P2)との油圧差に基づき、機械式オイルポンプからのオイル供給割合と、電動オイルポンプからのオイル供給割合とが調整される。
【0064】
つまり、時刻t
1時点では、第2油圧P2が立ち上がったばかりであり、第1油圧P1>第2油圧P2となっている。このため、第1フラッパー弁のみが開いており、第2フラッパー弁は閉じている。このとき、第2油圧P2は供給されず、ライン圧調圧弁に供給される油圧(第3油圧)は、第1油圧P1によって決まる。
【0065】
そして、時刻t
2時点において、第2油圧P2が必要ライン圧PL
neに達したら、電動オイルポンプを微速運転とし、第2油圧P2を必要ライン圧PL
neに維持する。つまり、第2油圧P2を必要ライン圧PL
neで待機させ、第1油圧P1が低下してくることを待つ。
なお、このとき、第1フラッパー弁は開放状態を継続する一方、第2フラッパー弁は第2油圧P2が必要ライン圧PL
neを上回った時に僅かに開閉する微開状態となる。しかし、第2油圧P2が維持されている間、第1油圧P1>第2油圧P2であるため、ライン圧調圧弁に供給される油圧(第3油圧)は、第1油圧P1によって決まる。
【0066】
時刻t
3時点において、第1油圧P1が必要ライン圧PL
neに達すると、第2油圧P2が必要ライン圧PL
neを維持しているため、第1油圧P1=第2油圧P2となり、第1,第2フラッパー弁の双方が開く。このとき、微開状態であった第2フラッパー弁が一気に開くことで、第2油圧P2は一時的に低下してしまう。
しかも、この時刻t
3時点で第2油圧P2が一時的に低下したことで、第2フラッパー弁が閉じ、第1フラッパー弁のみが開いた状態になる。しかし、第1油圧P1は低下し続ける。
そのため、ライン圧調圧弁に供給される油圧(第3油圧)は、必要ライン圧PL
neを下回った状態が継続し、ライン圧PLが一時的に低下することがある。そして、ライン圧PLが低下したことで、例えばクラッチやプーリといった動力伝達部材がスリップしてしまうおそれが生じる。
【0067】
なお、ライン圧調圧弁に供給される油圧(第3油圧)を上昇させるため、電動オイルポンプの流量を増加し、第2油圧P2の回復を図る。一方、第1油圧P1は低下し続ける。そのため、時刻t
4時点で第1油圧P1=第2油圧P2になり、第1フラッパー弁と第2フラッパー弁が再びともに開放する。しかし、このとき電動オイルポンプの流量が増加させられていることから、第2油圧P2が必要ライン圧PL
neを上回ってしまう。そして、第1フラッパー弁が閉じ、第2フラッパー弁が開くことになる。これにより、ライン圧調圧弁に供給される油圧(第3油圧)は、第2油圧P2によって決まる。
なお、ライン圧調圧弁に供給される油圧(第3油圧)が必要ライン圧PL
neを上回っても、ライン圧調圧弁によって適切にドレンされるため、ライン圧PLに問題は生じない。
【0068】
その後、ライン圧調圧弁に供給される油圧(第3油圧)を決める第2油圧P2が必要ライン圧PL
neを維持するように電動オイルポンプの流量が制御される一方、機械式オイルポンプはフリクションにより未だ回転している上、第1油路にはリリーフ弁が設けられていない。このため、第1フラッパー弁が閉まっていると、第1油圧P1が増大し、第1フラッパー弁が微開状態になる。つまり、第1フラッパー弁は、機械式オイルポンプの回転が停止するまで微開状態を維持する。
【0069】
このように、比較例の制御装置のように、油圧源を機械式オイルポンプから電動オイルポンプへと切り替える際、第2油圧P2を必要ライン圧PL
neで待機させた場合では、第1,第2フラッパー弁の状態によって、ライン圧調圧弁に供給される油圧(第3油圧)が必要ライン圧PL
neを下回り、ライン圧PLが一時的に低下することがある。これにより、動力伝達部材がスリップしてしまうおそれが生じる。
【0070】
[油圧源切り替え時の必要圧担保作用]
図5は、実施例1の制御装置において、油圧源を機械式オイルポンプから電動オイルポンプに切り替える際のアクセル開度・車速・機械式オイルポンプ回転数・電動オイルポンプ回転数・第1油圧・第2油圧・第3油圧の各特性を示すタイムチャートである。以下、
図5に基づき、実施例1の油圧源切り替え時の必要圧担保作用を説明する。
【0071】
車両走行中、走行駆動源であるモータ/ジェネレータMGによって回転駆動されている機械式オイルポンプO/Pによって必要ライン圧PL
neが賄われている状況では、第1フラッパー弁101aが開放し、第2フラッパー弁102aは閉鎖している。そのため、第3油圧P3は、第1油圧P1によって決まる。
このような状況下において、
図5に示す時刻t
11時点でアクセル足離し操作が行われると、モータ/ジェネレータMGの回転数が低下して車速は次第に低下していく。一方、モータ/ジェネレータMGの回転数が低下することで、機械式オイルポンプO/Pの回転数も低下して吐出流量が低下し、第1油圧P1も低下していく。この結果、第3油圧P3も低下する。
【0072】
時刻t
12時点において、第1油圧P1が予め設定したポンプ駆動閾値P
O/Pを下回ると、
図3に示すフローチャートにおいて、ステップS101→ステップS102→ステップS103→ステップS104へと進み、電動オイルポンプM/O/Pの駆動が開始されると共に、この電動オイルポンプM/O/Pが高速運転させられる。
このとき、第2フラッパー弁102aは閉じているため、第2油路102へ供給された作動油は貯留し、第2油圧P2が上昇していく。
【0073】
時刻t
13時点において、第2油圧P2が必要ライン圧PL
neよりも大きい油圧値である平衡油圧P
baに達したら、ステップS105→ステップS106→ステップS107へと進み、電動オイルポンプM/O/Pを微速運転に切り替え、第2油圧P2を平衡油圧P
baの状態で維持する。なお、このときも第1油圧P1>第2油圧P2であるため、第2フラッパー弁102aは閉鎖状態を維持し、第3油圧P3は第1油圧P1によって決まる。
【0074】
一方で、機械式オイルポンプO/Pの回転数は、車速低下に伴って低下し続け、時刻t
14時点で平衡油圧P
baに達する。これにより、第1油圧P1=第2油圧P2となり、第1,第2フラッパー弁101a,102aは、ともに開放状態になる。さらに、その後第1油圧P1は低下し続けるため、第3油圧P3の大きさは、第2油圧P2によって決まり、機械式オイルポンプO/Pによる油圧供給から電動オイルポンプM/O/Pによる油圧供給へと切り替わる。
【0075】
しかし、この時刻t
14以前では微開状態であった第2フラッパー弁102aが開放状態になったことで、第2油圧P2が一時的に低下し、第3油圧P3が低下することが考えられる。また、第1油圧P1は低下し続けるため、この第1油圧P1では第3油圧P3を上昇させることはできない。
しかしながら、実施例1では、第2油圧P2は必要ライン圧PL
neよりも大きい平衡油圧P
baであるため、この第2油圧P2が一時的に低下しても、第3油圧P3が必要ライン圧PL
neを下回ることを防止できる。
【0076】
しかも、電動オイルポンプM/O/Pは、第1油圧P1がポンプ駆動閾値P
O/Pを下回ったタイミングで駆動を開始しているが、この「ポンプ駆動閾値P
O/P」は、低下していく第1油圧P1が平衡油圧P
baになるタイミングから、電動オイルポンプM/O/Pが駆動を開始して第2油圧P2が平衡油圧P
baになるまでに要する時間分遡った時点における第1油圧P1よりも大きい値に設定されている。このため、第1油圧P1が平衡油圧P
baになる前に第2油圧P2を平衡油圧P
baまで上昇させておくことができる。
つまり、低下していく第1油圧P1と、上昇していく第2油圧P2とを、必要ライン圧PL
neよりも大きい油圧値(平衡油圧P
ba)で確実に一致させることができ、油圧源の切り替わりのタイミングで第3油圧P3が必要ライン圧PL
neを下回ることを防止することができる。これにより、例えば第2クラッチCL2やプライマリプーリPri等の動力伝達部材がスリップすることを防止できる。
【0077】
さらに、この実施例1では、時刻t
14時点において、第1油圧P1と第2油圧P2が平衡油圧P
baで一致したら、ステップS108→ステップS109→ステップS110→ステップS111へと進み、電動オイルポンプM/O/Pの回転数を低下させて、第2油圧P2を漸減させていく。しかもこのとき、第1油圧P1の低下に対し所定のマージンを持たせた状態で第2油圧P2が低下していくように電動オイルポンプM/O/Pの回転数を制御する。
これにより、時刻t
14以降では、第1油圧P1と第2油圧P2との油圧差が抑えられ、第1フラッパー弁101aと第2フラッパー弁102aとを共に開放状態にすることができる。この結果、時刻t
14時点で第2油圧P2の一時的な低下によって第3油圧P3が低下しても、速やかに回復すると共に、その後の第3油圧P3の大幅な変動を抑制しながら、電動オイルポンプM/O/Pの電力消費量を抑えることができる。
【0078】
なお、機械式オイルポンプO/Pによる油圧供給から電動オイルポンプM/O/Pによる油圧供給へと切り替わると同時に第2油圧P2を必要ライン圧PL
neまで急激に低下させれば、いわゆるアンダーシュートが発生し、第3油圧P3が必要ライン圧PL
neを下回るおそれがある。しかし、第2油圧P2を漸減させることで、第3油圧P3のアンダーシュートを防止して、ライン圧PLの低下を防止することができる。
【0079】
さらに、この実施例1では、第2油圧P2を漸減させる際、第1油圧P1よりも第2油圧P2が所定のマージン分高くなるように制御する。そのため、第2油圧P2がばらつき等により第1油圧P1より低くなり、第2フラッパー弁102aが急に閉じても、第3油圧P3が必要ライン圧PL
neを下回ることを防止することができる。
【0080】
そして、時刻t
15時点において、車速がゼロになったタイミングで第2油圧P2を必要ライン圧PL
neに一致させたら、ステップS112→ステップS113へと進んで、電動オイルポンプM/O/Pを微速運転に切り替えて、第2油圧P2を維持する。また、この時刻t
15時点において、いわゆるアイドリングストップ制御によりモータ/ジェネレータMGを停止し、これに伴って機械式オイルポンプO/Pの回転数はゼロになって、第1油圧P1はゼロになる。
【0081】
[その他の特徴的作用]
そして、この実施例1では、第1油圧P1と第2油圧P2を一致させる油圧値である平衡油圧P
baを、必要ライン圧PL
neに対し、第1油圧P1と第2油圧P2を一致させた際に生じる油圧ばらつき分の補正値(実験等により求める)を加算した値としている。
つまり、微開状態であった第2フラッパー弁102aが開放状態になったことで、第2油圧P2が一時的に低下して生じる第3油圧P3のばらつき分を、必要ライン圧PL
neに上乗せした値を平衡油圧P
baとして設定している。
そのため、第2油圧P2が不要に高くなることを抑えて、電動オイルポンプM/O/Pの電力消費量を抑制することができる。
【0082】
さらに、この実施例1では、ポンプ駆動閾値P
O/Pを、低下していく第1油圧P1が平衡油圧P
baになるタイミングから、電動オイルポンプM/O/Pが駆動を開始して第2油圧P2が平衡油圧P
baになるまでに要する時間分遡った時点における第1油圧P1よりも大きい値に設定している。すなわち、第2油圧P2が平衡油圧P
baに達してから第1油圧P1に一致するまでの間、この第2油圧P2を平衡油圧P
baに維持している。
これにより、第2油圧P2を平衡油圧P
baに維持させた状態で第1油圧P1と一致させることができ、平衡油圧P
ba未満の油圧値で第1油圧P1と第2油圧P2とが一致してしまうことを確実に防止することができる。この結果、第3油圧P3が必要ライン圧PL
neを下回ることを防ぐことができる。
【0083】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両用油圧制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0084】
(1) 走行駆動源(モータ/ジェネレータMG)によって駆動されて油圧供給を行う第1オイルポンプ(機械式オイルポンプO/P)と、
前記走行駆動源(モータ/ジェネレータMG)とは別の電動モータ(サブモータS/M)によって駆動されて油圧供給を行う第2オイルポンプ(電動オイルポンプM/O/P)と、
第1オイルポンプ吐出圧(第1油圧P1)と第2オイルポンプ吐出圧(第2油圧P2)との油圧差に基づき、前記第1オイルポンプ(機械式オイルポンプO/P)からのオイル供給割合と前記第2オイルポンプ(電動オイルポンプM/O/P)からのオイル供給割合とを調整する割合調整弁(第1フラッパー弁101a、第2フラッパー弁102a)と、
前記第1オイルポンプ吐出圧(第1油圧P1)の低下に伴って前記第1オイルポンプ(機械式オイルポンプO/P)による油圧供給から前記第2オイルポンプ(電動オイルポンプM/O/P)による油圧供給へと切り替える際、必要ライン圧PL
neより大きい所定の油圧値を平衡油圧P
baに設定し、前記平衡油圧P
baよりも大きい所定の油圧値をポンプ駆動閾値P
O/Pに設定し、前記第1オイルポンプ吐出圧(第1油圧P1)が前記ポンプ駆動閾値P
O/P以下になったとき、前記第2オイルポンプ(電動オイルポンプM/O/P)を駆動して前記第2オイルポンプ吐出圧(第2油圧P2)の上昇を開始し、前記第1オイルポンプ吐出圧(第1油圧P1)と前記第2オイルポンプ吐出圧(第2油圧P2)とを前記平衡油圧P
baで一致させる第2オイルポンプコントローラ(統合コントローラ10)と、
を備える構成とした。
これにより、機械式オイルポンプO/Pによる油圧供給から電動オイルポンプM/O/Pによる油圧供給へと切り替える際、油圧源からの油圧が必要ライン圧PL
neを下回ることを防止することができる。
【0085】
(2) 前記第2オイルポンプコントローラ(統合コントローラ10)は、前記第1オイルポンプ吐出圧(第1油圧P1)と前記第2オイルポンプ吐出圧(第2油圧P2)とが一致したとき、前記必要ライン圧PL
neに向かって前記第2オイルポンプ吐出圧(第2油圧P2)の漸減を開始する構成とした。
これにより、(1)の効果に加え、第3油圧P3のアンダーシュートを防止して、ライン圧PLの低下を防止することができる。
【0086】
(3) 前記第2オイルポンプコントローラ(統合コントローラ10)は、前記必要ライン圧PL
neに対して前記第1オイルポンプ吐出圧(第1油圧P1)と前記第2オイルポンプ吐出圧(第2油圧P2)とが一致した際に生じる油圧ばらつき分の補正値を加算した値を前記平衡油圧P
baとする構成とした。
これにより、(1)又は(2)の効果に加え、油圧源切り替え時に第2油圧P2が不要に高くなることを抑えて、電動オイルポンプM/O/Pの電力消費量を抑制することができる。
【0087】
(4) 前記第2オイルポンプコントローラ(統合コントローラ10)は、前記第2オイルポンプ吐出圧(第2油圧P2)が前記平衡油圧P
baに達してから前記第1オイルポンプ吐出圧(第1油圧P1)が一致するまでの間、前記第2オイルポンプ吐出圧(第2油圧P2)を前記平衡油圧P
baに維持する構成とした。
これにより、(3)の効果に加え、平衡油圧P
ba未満の油圧値で第1油圧P1と第2油圧P2が一致してしまうことを確実に防止し、第3油圧P3が必要ライン圧PL
neを下回ることを防止することができる。
【0088】
(実施例2)
実施例2は、第1油圧P1が低下していく際、この第1油圧P1に第2油圧P2が一致するまで、第2油圧P2を上昇させ続ける例である。
【0089】
図6は、実施例2の統合コントローラにて実行されるポンプ切替制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、実施例2のポンプ切替制御処理構成を表す
図6の各ステップについて説明する。なお、このポンプ切替制御処理は、走行中であって機械式オイルポンプO/Pの回転数が十分に高い状態のとき、アクセルOFFとなりモータ/ジェネレータMGの回転数が低下して車速が下がり、さらに機械式オイルポンプO/Pの回転数も低下したことで開始される。つまり、ここでは走行中からのアクセルOFFをトリガに開始する。
【0090】
ステップS201では、第1油圧P1を検出し、ステップS202へ進む。
【0091】
ステップS202では、ステップS201での第1油圧P1の検出に続き、検出した第1油圧P1が予め設定したポンプ駆動閾値P
O/P以下であるか否かを判断する。YES(P1≦ポンプ駆動閾値P
O/P)の場合には、機械式オイルポンプO/Pからの作動油だけでは必要ライン圧PL
neを賄えなくなるとして、ステップS203へ進む。NO(P1>ポンプ駆動閾値P
O/P)の場合には、機械式オイルポンプO/Pからの作動油だけでも必要ライン圧PL
neを賄えるとしてステップS201へ戻る。
ここで、「ポンプ駆動閾値P
O/P」とは、必要ライン圧PL
ne及び平衡油圧P
baよりも大きい油圧値である。この「ポンプ駆動閾値P
O/P」は、低下していく第1油圧P1が必要ライン圧PL
neよりも大きい所定の平衡油圧P
baになるタイミングから、電動オイルポンプM/O/Pが駆動を開始して第2油圧P2がこの平衡油圧P
baになるまでに要する時間分遡った時点における第1油圧P1に相当する値に設定される。
なお、「必要ライン圧PL
ne」については、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0092】
ステップS203では、ステップS202でのP1≦ポンプ駆動閾値P
O/Pとの判断に続き、サブモータS/Mを運転して電動オイルポンプM/O/Pの駆動を開始し、ステップS204へ進む。
【0093】
ステップS204では、ステップS203での電動オイルポンプM/O/Pの駆動開始に続き、電動オイルポンプM/O/Pを高速運転し、ステップS205へ進む。
このとき、第2フラッパー弁102aは閉じているため、電動オイルポンプM/O/Pから吐出された作動油は第2油路102内に貯留し、第2油圧P2は上昇していく。
【0094】
ステップS205では、ステップS204での電動オイルポンプM/O/Pの高速運転(第2油圧P2の上昇)に続き、第1油圧P1及び第2油圧P2をそれぞれ検出し、ステップS206へ進む。
【0095】
ステップS206では、ステップS205での第1,第2油圧P1,P2の検出に続き、検出した第2油圧P2が第1油圧P1以上であるか否かを判断する。YES(P2≧第1油圧P1)の場合には、第2油圧P2と第1油圧P1が一致したとしてステップS207へ進む。NO(P2<第1油圧P1)の場合には、第2油圧P2が第1油圧P1と一致していないとしてステップS204へ戻る。
【0096】
ステップS207では、ステップS206でのP2≧第1油圧P1との判断に続き、第1油圧P1及び第2油圧P2をそれぞれ検出し、ステップS208へ進む。
【0097】
ステップS208では、ステップS207での第1,第2油圧P1,P2の検出に続き、サブモータS/Mの出力を落として電動オイルポンプM/O/Pの回転数を低下させ、第2油圧P2を漸減させていきステップS209へ進む。
このとき、第1油圧P1の低下に対し、第2油圧P2のばらつきを考慮したマージンを持たせた状態で第2油圧P2が低下していくように電動オイルポンプM/O/Pの回転数を制御する。つまり、第2油圧P2が、第1油圧P1よりも所定のマージン分高くなるように制御する。
【0098】
ステップS209では、ステップS208での電動オイルポンプM/O/Pの回転数低下に続き、第2油圧P2が必要ライン圧PL
neに達したか否かを判断する。YES(P2=必要ライン圧PL
ne)の場合には、ステップS210へ進む。NO(P2>必要ライン圧PL
ne)の場合には、ステップS207へ戻る。
【0099】
ステップS210では、ステップS209でのP2=必要ライン圧PL
neとの判断に続き、サブモータS/Mの出力を落として電動オイルポンプM/O/Pを微速運転し、エンドへ進む。このとき、電動オイルポンプM/O/Pの吐出量が必要ライン圧PL
neと釣り合うように制御することで、第2油圧P2は必要ライン圧PL
neの状態で維持される。
【0100】
次に、実施例2の車両用油圧制御装置における作用を、
図7に示すタイムチャートに基づいて説明する。
【0101】
車両走行中、走行駆動源であるモータ/ジェネレータMGによって回転駆動されている機械式オイルポンプO/Pによって必要ライン圧PL
neが賄われている状況において、
図7に示す時刻t
21時点でアクセル足離し操作が行われると、モータ/ジェネレータMGの回転数が低下して車速は次第に低下する一方、機械式オイルポンプO/Pの回転数も低下して第1油圧P1も低下していく。この結果、第3油圧P3も低下する。
【0102】
時刻t
22時点において、第1油圧P1がポンプ駆動閾値P
O/Pを下回ると、
図6に示すフローチャートにおいて、ステップS201→ステップS202→ステップS203→ステップS204へと進み、電動オイルポンプM/O/Pが駆動を開始し、第2油圧P2が上昇していく。
【0103】
時刻t
23時点において、上昇している第2油圧P2が、次第に低下してきた第1油圧P1に一致したら、ステップS205→ステップS206→ステップS207→ステップS208へと進み、電動オイルポンプM/O/Pの回転数を低下させ、必要ライン圧PL
neに向けて第2油圧P2を漸減させていく。
【0104】
このように、実施例2では、電動オイルポンプM/O/Pを駆動する際、第2油圧P2が第1油圧P1に一致するまで、電動オイルポンプM/O/Pの高速運転を継続し、第2油圧P2を上昇させ続ける。
これにより、第2油圧P2が上昇している状態で、第1油圧P1を一致させることができる。この結果、第1油圧P1=第2油圧P2となることで、第2フラッパー弁102aが一気に開いて第2油圧P2が一時的に低下しても、この第2油圧P2の低下を抑制することができ、第3油圧P3の低下を抑えることができる。
【0105】
しかも、この実施例2では、「ポンプ駆動閾値P
O/P」を、低下していく第1油圧P1が必要ライン圧PL
neよりも大きい所定の平衡油圧P
baになるタイミングから、電動オイルポンプM/O/Pが駆動を開始して第2油圧P2が平衡油圧P
baになるまでに要する時間分遡った時点における第1油圧P1に相当する値に設定している。このため、第1油圧P1が必要ライン圧PL
neを下回る前に、第1油圧P1と第2油圧P2を一致させることができ、第3油圧P3が必要ライン圧PL
neよりも低下してしまうことを防止できる。
【0106】
すなわち、この実施例2では、以下に挙げる効果を奏することができる。
【0107】
(5) 前記第2オイルポンプコントローラ(統合コントローラ10)は、前記第2オイルポンプ吐出圧(第2油圧P2)の上昇を開始してから前記第1オイルポンプ吐出圧(第1油圧P1)に一致するまでの間、前記第2オイルポンプ吐出圧(第2油圧P2)を上昇させる構成とした。
これにより、第2油圧P2が上昇している状態で、第1油圧P1を一致させることができ、油圧源切り替え時の第2油圧P2の低下を抑制して、第3油圧P3の低下を抑えることができる。
【0108】
(実施例3)
実施例3は、第2油路に設けた圧力リーク弁が開放するリリーフ圧にて、第1油圧P1と第2油圧P2を一致させる例である。
【0109】
図8は、実施例3の統合コントローラにて実行されるポンプ切替制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、実施例3のポンプ切替制御処理構成を表す
図8の各ステップについて説明する。なお、このポンプ切替制御処理は、走行中であって機械式オイルポンプO/Pの回転数が十分に高い状態のとき、アクセルOFFとなりモータ/ジェネレータMGの回転数が低下して車速が下がり、さらに機械式オイルポンプO/Pの回転数も低下したことで開始される。つまり、ここでは走行中からのアクセルOFFをトリガに開始する。
【0110】
ステップS301では、第1油圧P1を検出し、ステップS302へ進む。
【0111】
ステップS302では、ステップS301での第1油圧P1の検出に続き、検出した第1油圧P1が予め設定したポンプ駆動閾値P
O/P以下であるか否かを判断する。YES(P1≦ポンプ駆動閾値P
O/P)の場合には、機械式オイルポンプO/Pからの作動油だけでは必要ライン圧PL
neを賄えなくなるとして、ステップS303へ進む。NO(P1>ポンプ駆動閾値P
O/P)の場合には、機械式オイルポンプO/Pからの作動油だけも必要ライン圧PL
neを賄えるとしてステップS301へ戻る。
ここで、「ポンプ駆動閾値P
O/P」とは、必要ライン圧PL
ne及びリリーフ圧P
reよりも大きい油圧値である。この「ポンプ駆動閾値P
O/P」は、低下していく第1油圧P1がリリーフ圧P
reになるタイミングから、電動オイルポンプM/O/Pが駆動を開始して第2油圧P2がリリーフ圧P
reになるまでに要する時間分遡った時点における第1油圧P1よりも大きい値に設定される。
なお、「必要ライン圧PL
ne」については、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0112】
ステップS303では、ステップS302でのP1≦ポンプ駆動閾値P
O/Pとの判断に続き、サブモータS/Mを運転して電動オイルポンプM/O/Pの駆動を開始し、ステップS304へ進む。
【0113】
ステップS304では、ステップS303での電動オイルポンプM/O/Pの駆動開始に続き、電動オイルポンプM/O/Pを高速運転し、ステップS305へ進む。
このとき、第2フラッパー弁102aは閉じているため、電動オイルポンプM/O/Pから吐出された作動油は第2油路102内に貯留し、第2油圧P2は上昇していく。
【0114】
ステップS305では、ステップS304での電動オイルポンプM/O/Pの高速運転(第2油圧P2の上昇)に続き、第2油圧P2を検出し、ステップS306へ進む。
【0115】
ステップS306では、ステップS305での第2油圧P2の検出に続き、検出した第2油圧P2がリリーフ圧P
re以上であるか否かを判断する。YES(P2≧リリーフ圧P
re)の場合には、第2油圧P2が目標に達したとしてステップS307へ進む。NO(P2<リリーフ圧P
re)の場合には、第2油圧P2が目標に達していないとしてステップS304へ戻る。
ここで、「リリーフ圧P
re」とは、必要ライン圧PL
neよりも大きい油圧値であり、電動オイルポンプM/O/Pの破損を防止するために設定した第2油圧P2の上限値である。
【0116】
ステップS307では、ステップS306でのP2≧リリーフ圧P
reとの判断に続き、サブモータS/Mの出力を落として電動オイルポンプM/O/Pを微速運転し、ステップS308へ進む。
このとき、電動オイルポンプM/O/Pの吐出量が第2油圧P2と釣り合うように制御することで、第2油圧P2はリリーフ圧P
reの状態で維持される。
【0117】
ステップS308では、ステップS307での電動オイルポンプM/O/Pの微速運転(第2油圧P2維持)に続き、第1油圧P1を検出し、ステップS309へ進む。
【0118】
ステップS309では、ステップS308での第1油圧P1の検出に続き、検出した第1油圧P1がリリーフ圧P
re以下であるか否かを判断する。YES(P1≦リリーフ圧P
re)の場合には、第1油圧P1と第2油圧P2とが一致したとしてステップS310へ進む。NO(P1>リリーフ圧P
re)の場合には、第1油圧P1と第2油圧P2とが一致していないとしてステップS307へ戻る。
【0119】
ステップS310では、ステップS309でのP1≦リリーフ圧P
reとの判断に続き、第1油圧P1及び第2油圧P2をそれぞれ検出し、ステップS311へ進む。
【0120】
ステップS311では、ステップS310での第1,第2油圧P1,P2の検出に続き、サブモータS/Mの出力を落として電動オイルポンプM/O/Pの回転数を低下させ、第2油圧P2を漸減させていきステップS312へ進む。
このとき、第1油圧P1の低下に対し、第2油圧P2のばらつきを考慮したマージンを持たせた状態で第2油圧P2が低下していくように電動オイルポンプM/O/Pの回転数を制御する。つまり、第2油圧P2が、第1油圧P1よりも所定のマージン分高くなるように制御する。
【0121】
ステップS312では、ステップS311での電動オイルポンプM/O/Pの回転数低下に続き、第2油圧P2が必要ライン圧PL
neに達したか否かを判断する。YES(P2=必要ライン圧PL
ne)の場合には、ステップS313へ進む。NO(P2>必要ライン圧PL
ne)の場合には、ステップS310へ戻る。
【0122】
ステップS313では、ステップS312でのP2=必要ライン圧PL
neとの判断に続き、サブモータS/Mの出力を落として電動オイルポンプM/O/Pを微速運転し、エンドへ進む。このとき、電動オイルポンプM/O/Pの吐出量が必要ライン圧PL
neと釣り合うように制御することで、第2油圧P2は必要ライン圧PL
neの状態で維持される。
【0123】
次に、実施例3の車両用油圧制御装置における作用を、
図9に示すタイムチャートに基づいて説明する。
【0124】
車両走行中、走行駆動源であるモータ/ジェネレータMGによって回転駆動されている機械式オイルポンプO/Pによって必要ライン圧PL
neが賄われている状況において、
図9に示す時刻t
31時点でアクセル足離し操作が行われると、モータ/ジェネレータMGの回転数が低下して車速は次第に低下する一方、機械式オイルポンプO/Pの回転数も低下して第1油圧P1も低下していく。この結果、第3油圧P3も低下する。
【0125】
時刻t
32時点において、第1油圧P1がポンプ駆動閾値P
O/Pを下回ると、
図8に示すフローチャートにおいて、ステップS301→ステップS302→ステップS303→ステップS304へと進み、電動オイルポンプM/O/Pが駆動を開始し、第2油圧P2が上昇していく。
【0126】
時刻t
33時点において、第2油圧P2がリリーフ圧P
reに達したら、ステップS305→ステップS306→ステップS307へと進み、電動オイルポンプM/O/Pを微速運転に切り替え、第2油圧P2をリリーフ圧P
reの状態で維持する。
一方、機械式オイルポンプO/Pの回転数は、車速の低下と共に低下し続け、時刻t
34時点でリリーフ圧P
reに達する。
【0127】
そして、リリーフ圧P
reに維持されている第2油圧P2と、次第に低下してきた第1油圧P1とが一致したら、ステップS308→ステップS309→ステップS310→ステップS311→ステップS312→ステップS313へと進み、電動オイルポンプM/O/Pの回転数を低下させ、必要ライン圧PL
neに向けて第2油圧P2を漸減させていく。
【0128】
このように、実施例3では、電動オイルポンプM/O/Pから吐出された作動油が流れる第2油路102に設けられた圧力リーク弁28aが開放されるリリーフ圧P
reにおいて、第1油圧P1と第2油圧P2とを一致させている。つまり、このリリーフ圧P
reを、第1油圧P1と第2油圧P2とが一致する「平衡油圧P
ba」としている。
【0129】
ここで、第1油圧P1の低下勾配は、車両の減速度に比例する。つまり急減速するほど第1油圧P1の低下勾配も大きくなって早く低下していく。したがって、急減速した場合、第1油圧P1=第2油圧P2になったときに生じる第3油圧P3の落ち込みが大きくなり、「平衡油圧P
ba」と「必要ライン圧PL
ne」との差異を抑えている場合では、第3油圧P3が必要ライン圧PL
neを下回るおそれがある。
これに対し、「平衡油圧P
ba」を「リリーフ圧P
re」とし、このリリーフ圧P
reにて第1油圧P1と第2油圧P2を一致させるようにすれば、油圧源の切り替わりのタイミングでの第2油圧P2を、非常に高い状態にしておくことができる。この結果、急減速状態で、第1油圧P1=第2油圧P2になったときの第3油圧P3の落ち込みが大きくても、第3油圧P3が必要ライン圧PL
neを下回ることを防止できる。
【0130】
さらに、この実施例3では、ポンプ駆動閾値P
O/Pを、低下していく第1油圧P1がリリーフ圧P
reになるタイミングから、電動オイルポンプM/O/Pが駆動を開始して第2油圧P2がリリーフ圧P
reになるまでに要する時間分遡った時点における第1油圧P1よりも大きい値に設定している。すなわち、第2油圧P2がリリーフ圧P
reに達してから第1油圧P1に一致するまでの間、この第2油圧P2をリリーフ圧P
reに維持している。
これにより、第2油圧P2をリリーフ圧P
reに維持させた状態で第1油圧P1と一致させることができ、リリーフ圧P
re未満の油圧値で第1油圧P1と第2油圧P2とが一致してしまうことを確実に防止することができる。この結果、急減速時であっても、第3油圧P3が必要ライン圧PL
neを下回ることを防ぐことができる。
【0131】
(6) 前記第2オイルポンプコントローラ(統合コントローラ10)は、前記第2オイルポンプ(電動オイルポンプM/O/P)の吐出油路(第2油路102)に設けられた圧力リーク弁28aが開放されるリリーフ圧P
reを前記平衡油圧P
baとする構成とした。
これにより、急減速時等の第1油圧P1からの油圧供給が停止した際の第3油圧P3の落ち込みが大きい場合であっても、第3油圧P3が必要ライン圧PL
neを下回ることを防止できる。
【0132】
以上、本発明の車両用油圧制御装置を実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0133】
実施例1では、第1油圧P1と第2油圧P2との油圧差に基づき、機械式オイルポンプO/Pからのオイル供給割合と、電動オイルポンプM/O/Pからのオイル供給割合とを調整する割合調整弁として、第1フラッパー弁101aと第2フラッパー弁102aとする例を示したが、これに限らない。
例えば、機械式オイルポンプO/Pから吐出された作動油が流れる第1油路101と、電動オイルポンプM/O/Pから吐出された作動油が流れる第2油路102とが合流する位置に設けられ、第1油圧P1と第2油圧P2の割合を制御してライン圧調圧弁104へと油圧供給する調圧弁であってもよい。
【0134】
また、実施例3では、第1油圧P1がリリーフ圧P
reになる前に、第2油圧P2をリリーフ圧P
reまで上昇させ、第2油圧P2をこのリリーフ圧P
reにて維持させておく例を示したが、これに限らない。第1油圧P1がリリーフ圧P
reまで低下するタイミングと、第2油圧P2がリリーフ圧P
reまで上昇するタイミングを合わせてもよい。つまり、ポンプ駆動閾値P
O/Pを、低下していく第1油圧P1がリリーフ圧P
reになるタイミングから、電動オイルポンプM/O/Pが駆動を開始して第2油圧P2がリリーフ圧P
reになるまでに要する時間分遡った時点の第1油圧P1に設定してもよい。
この場合では、第2油圧P2をリリーフ圧P
reにて維持させることがないため、電動オイルポンプM/O/Pにおける電力消費量を抑制することができる。
【0135】
そして、実施例1〜実施例3は、走行中のアクセル足離し操作をトリガにして制御を開始する例を示したが、これに限らない。例えば、停車直前に走行駆動源を自動停止する停車前アイドルストップ制御や、高車速において惰性走行を意図してアクセルペダル及びブレーキペダルが共に解放されている場合に走行駆動源を自動停止させる惰性走行制御をトリガにして、本制御を開始してもよい。
【0136】
また、実施例1では、本発明の車両用油圧制御装置をエンジンEngとモータ/ジェネレータMGを有するハイブリッド車両に適用する例を示したが、これに限らない。モータ/ジェネレータMGのみを搭載した電気自動車や、エンジンEngのみを搭載したエンジン車、さらにプラグインハイブリッド車や燃料電池車等であっても適用することができる。
【0137】
さらに、減速度や車速といった車両の状態等に応じて、「平衡油圧P
ba」をリリーフ圧P
reに設定したり、必要ライン圧PL
neに所定の補正分を上乗せした値に設定したりと適宜変更してもよい。これにより、車両状態に応じて、油圧源の切り替え時にライン圧PLが低下することを適切に防止することができる。