特許第6393923号(P6393923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393923
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】棒状物繰出容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/20 20060101AFI20180913BHJP
   A45D 40/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   A45D40/20 G
   A45D40/00 D
【請求項の数】1
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-138446(P2014-138446)
(22)【出願日】2014年7月4日
(65)【公開番号】特開2016-15984(P2016-15984A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 行一
【審査官】 大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−22984(JP,A)
【文献】 米国特許第7455467(US,B2)
【文献】 米国特許第3045593(US,A)
【文献】 特許第4620606(JP,B2)
【文献】 特開2014−14527(JP,A)
【文献】 特開2004−229705(JP,A)
【文献】 実開平2−75007(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/20
A45D 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に開口を備えると共に内周面に第1の雌螺子を備えた先筒と、前記先筒を相対回転可能に装着した容器本体と、前記先筒内に配置され棒状物が筒内に充填されたパイプ部材と、前記パイプ部材内を移動可能とされ前記棒状物を押し出すためのピストン及び外周面に第2の雄螺子が設けられた軸部を備える移動体と、前記先筒の前記第1の雌螺子と螺合し第1の螺合部を構成する第1の雄螺子を外周面に備えると共に、前記移動体の前記第2の雄螺子と螺合し第2の螺合部を構成する第2の雌螺子を内周面に備えた螺子部材と、を具備し、前記先筒と前記容器本体とを相対回転させると、前記第1の螺合部の螺合作用により前記螺子部材が前記パイプ部材を伴って前進又は後退する一方で、前記螺子部材及び前記パイプ部材が所定に前進すると、前記第2の螺合部の螺合作用により前記移動体が前進して前記棒状物を押し出し、前記先筒の前記開口から突出させるのを可能とする棒状物繰出容器であって、
前記パイプ部材の先端には、軸線方向前方に向かって延びる突起が周方向に沿って複数設けられ、
前記先筒の先端部には、その内周面に、軸線方向に延び前記パイプ部材の前記突起が進入する溝が周方向に沿って複数形成された溝形成区間が設けられ、
前記先筒において周方向に並ぶ前記溝同士の間の凸部の内径と前記パイプ部材の前記突起及び当該突起より後側の前記棒状物を収容する筒部の内径とは同じ大きさであり、
前記第1の螺合部の螺合作用により、前記パイプ部材の前記突起の先端は、前記溝形成区間内で前進又は後退することを特徴とする棒状物繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状物を繰り出し使用に供する棒状物繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器内に収容された棒状物(棒状体)を2個の螺合部を用いて2段階で繰り出し、容器先端の開口から出現させ使用に供する棒状物繰出容器として、以下の特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1に記載の棒状物繰出容器は、容器本体の先端側に先筒が相対回転可能に装着され、この先筒内に、内部に棒状物を摺動可能に収容したパイプ部材が収容され、容器本体と先筒とが繰り出し方向に相対回転されると、先ず、第1の螺合部の螺合作用が働き螺子部材が繰り出され前進することで、螺子部材と共にパイプ部材が前進し、螺子部材が先筒内の前進限に達し第1の螺合部の螺合作用が停止すると、第2の螺合部の螺合作用が働き移動体が繰り出され前進することで、パイプ部材内の棒状物が押し出され、棒状物が先筒の先端の開口から突出し使用に供することができる。また、容器本体と先筒とが繰り戻し方向に相対回転されると、第1の螺合部の螺合作用が働き螺子部材が前進限から繰り戻され後退することで、螺子部材と共にパイプ部材が後退し、棒状物が先筒の開口から先筒内に没入するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4620606号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記棒状物繰出容器にあって、パイプ部材の先端面から突出する棒状物を使用した後、容器本体と先筒とが繰り戻し方向に相対回転され、第1の螺合部の螺合作用によりパイプ部材が前進限から後退し、棒状物が先筒内に没入した状態では、先筒の前進限から後退したパイプ部材の先端面と当該前進限との間の領域は、パイプ部材が進退するための空間となっている。従って、パイプ部材が前進限から後退している状態では、パイプ部材の先端面から突出する棒状物は、上記空間において全周に亘って径方向から支えられていない状態にある。このため、容器に衝撃や振動が作用すると、パイプ部材の先端面から突出する棒状物が上記空間で振れて折れる虞がある。特に、棒状物が、粘度が柔らかく細径の場合には、折れる可能性が高くなる。
【0005】
そこで、本発明は、容器に衝撃や振動が作用しても棒状物の折れを防止できる棒状物繰出容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による棒状物繰出容器は、先端に開口を備えると共に内周面に第1の雌螺子を備えた先筒と、先筒を相対回転可能に装着した容器本体と、先筒内に配置され棒状物が筒部内に充填されたパイプ部材と、パイプ部材内を移動可能とされ棒状物を押し出すためのピストン及び外周面に第2の雄螺子が設けられた軸部を備える移動体と、先筒の第1の雌螺子と螺合し第1の螺合部を構成する第1の雄螺子を外周面に備えると共に、移動体の第2の雄螺子と螺合し第2の螺合部を構成する第2の雌螺子を内周面に備えた螺子部材と、を具備し、先筒と容器本体とを相対回転させると、第1の螺合部の螺合作用により螺子部材がパイプ部材を伴って前進又は後退する一方で、螺子部材及びパイプ部材が所定に前進すると、第2の螺合部の螺合作用により移動体が前進して棒状物を押し出し、先筒の開口から突出させるのを可能とする棒状物繰出容器であって、パイプ部材の先端には、軸線方向前方に向かって延びる突起が周方向に沿って複数設けられ、先筒の先端部には、その内周面に、軸線方向に延びパイプ部材の突起が進入する溝が周方向に沿って複数形成された溝形成区間が設けられ、先筒において周方向に並ぶ溝同士の間の凸部の内径とパイプ部材の突起及び当該突起より後側の棒状物を収容する筒部の内径とは同じ大きさであり、第1の螺合部の螺合作用により、パイプ部材の突起の先端は、溝形成区間内で前進又は後退することを特徴としている。
【0007】
このような棒状物繰出容器によれば、パイプ部材は、その先端に、軸線方向前方に向かって延びる突起を周方向に沿って複数備え、先筒は、その先端部の内周面に、軸線方向に延びパイプ部材の突起が進入する溝が周方向に沿って複数形成された溝形成区間を備え、先筒において周方向に並ぶ溝同士の間の凸部の内径とパイプ部材の突起及び当該突起より後側の棒状物を収容する筒部の内径とは同じ大きさとされると共に、パイプ部材の前進又は後退により、パイプ部材の突起の先端は、先筒の溝形成区間内で移動する構成のため、パイプ部材の突起の先端が先筒の溝の先端より後方に後退している状態でも(前進限より後退している状態でも)、パイプ部材の突起から突出する棒状物は、先筒の溝形成区間内の溝同士の間の凸部の内面により周方向に沿って複数箇所で支えられる。このため、容器に衝撃や振動が作用しても棒状物の折れを防止できる。
【発明の効果】
【0008】
このように本発明によれば、容器に衝撃や振動が作用しても、棒状物の折れを防止できる棒状物繰出容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る棒状物繰出容器を示す前方斜視図である。
図2図1に示す棒状物繰出容器の断面図であり初期状態を示す断面図である。
図3図2に示す棒状物繰出容器の要部の拡大断面図である。
図4図3において棒状物がない状態を示す断面図である。
図5図4の位置から45°回転し先筒に溝がある位置での断面図である。
図6図3に示す状態から使用者の回転操作により棒状物を押し出した棒状物押し出し状態を示す断面図である。
図7図6において棒状物がない状態を示す断面図である。
図8図7の位置から45°回転し先筒に溝がある位置での断面図である。
図9図6に示す状態から使用者の回転操作によりパイプ部材を繰り戻したパイプ部材繰り戻し状態を示す断面図である。
図10図9において棒状物がない状態を示す断面図である。
図11図10の位置から45°回転し先筒に溝がある位置での断面図である。
図12図2のXII-XII矢視図である。
図13図1図11中の先筒を示す側面図である。
図14図13のXIV-XIV矢視図である。
図15図14の位置から45°回転し先筒に溝がある位置での断面図である。
図16図2図11中の螺子部材を示す後方斜視図である。
図17図16に示す螺子部材の断面図である。
図18図17の位置から90°回転した位置での断面図である。
図19図2図11中のラチェットバネ部材を示す前方斜視図である。
図20図2図11中の移動体を示す前方斜視図である。
図21図2図11中のパイプ部材を示す前方斜視図である。
図22図21に示すパイプ部材の断面図である。
図23図16図18に示す螺子部材と図21及び図22に示すパイプ部材を連結した状態を示す前方斜視図である。
図24図23の断面図である。
図25図24の位置から90°回転した位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による棒状物繰出容器の好適な実施形態について図1図25を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る棒状物繰出容器を示す前方斜視図、図2図5は、棒状物繰出容器の初期状態を示す各断面図、図6図8は、図2図5に示す状態に続き第2の螺合部の螺合作用による棒状物押し出し状態を示す各断面図、図9図11は、図6図8に示す状態に続き第1の螺合部の螺合作用によるパイプ部材繰り戻し状態を示す各断面図、図12は、棒状物繰出容器の後部内を示す断面図、図13図15は、先筒を示す各図、図16図18は、螺子部材を示す各図、図19は、ラチェットバネ部材を示す前方斜視図、図20は、移動体を示す前方斜視図、図21及び図22は、パイプ部材を示す各図、図23図25は、パイプ部材及び螺子部材を連結した状態を示す各図である。
【0011】
なお、図2図11に示す棒状物繰出容器の断面図において、構造及び動作が理解しやすいように、初期状態を示す図2図5のうち、図4及び図5は棒状物がない状態を示すと共に、図4は先筒の溝がない位置での断面、図5は先筒の溝がある位置での断面をそれぞれ示し、棒状物押し出し状態を示す図6図8のうち、図7及び図8は棒状物がない状態を示すと共に、図7は先筒の溝がない位置での断面、図8は先筒の溝がある位置での断面をそれぞれ示し、パイプ部材繰り戻し状態を示す図9図11のうち、図10及び図11は棒状物がない状態を示すと共に、図10は先筒の溝がない位置での断面、図11は先筒の溝がある位置での断面をそれぞれ示している。
【0012】
ここで、本実施形態では、棒状物は棒状化粧料とされ、棒状物繰出容器は、棒状化粧料繰出容器とされている。そして、特に折れやすい棒状化粧料に対して本発明を適用するのが効果的であるとして、ここでは、棒状化粧料を、粘度が柔らかく細径の棒状化粧料としているが、本発明に適用可能な棒状化粧料であれば良い。
【0013】
図1に示すように、棒状物繰出容器としての棒状化粧料繰出容器100は、容器の後半部を形成する容器本体1と、容器の前半部を形成し容器本体1に相対回転可能且つ軸線方向移動不能に連結された先筒3とを外形構成として具備し、容器内に、図2に示すように、容器本体1と先筒3とが相対回転されると前進/後退する螺子部材5と、棒状化粧料Mを収容し螺子部材5の前進/後退に伴い前進/後退するパイプ部材4と、パイプ部材4内に嵌挿されて棒状化粧料Mの後端面に当接したピストン6xを先端に備え、螺子部材5の前進/後退に伴い前進/後退し螺子部材5及びパイプ部材4が前進限に達し容器本体1と先筒3とがさらに同方向に相対回転されると前進する移動体6と、螺子部材5を常時前側に付勢すると共に、螺子部材5及びパイプ部材4が前進限に達してからの容器本体1と先筒3との相対回転に従い螺子部材5との間でラチェット機能を発揮するラチェットバネ部材7と、螺子部材5の前進/後退を可能とする第1の螺合部8と、移動体6の移動を可能とする第2の螺合部9とを概略備えている。
【0014】
容器本体1は、図1及び図2に示すように、有底円筒状に構成され、図3に示すように、その先端側の内周面に、円環状を成し軸線方向に凸凹が並ぶ凸凹部1aを、先筒3を軸線方向に係合するためのものとして備えている。この容器本体1には、図2に示すように、その内周面に、底部から先端側に向かって長尺に延びる突条1fが、移動体6を回転方向に係合するためのものとして、周方向に沿って複数(ここでは4個)等配に並設されている(図12参照)。図3に示すように、突条1fの先端面1bは、ラチェットバネ部材7の後端面を当接させるための段差面である。また、容器本体1の先端面1bより前側の内周面には、軸線方向に延びる溝1cが、ラチェットバネ部材7を回転方向に係合するためのものとして、周方向に沿って複数等配に並設されている。
【0015】
先筒3は、図1及び図3に示すように、円筒状に構成され、軸線方向途中に、容器本体1の先端面が当接する鍔部3xを備える。図3に示すように、先筒3の鍔部3xより後側の部分は、容器本体1内に挿入される挿入部とされ、鍔部3xより前側の部分は、使用者による容器本体1と先筒3の相対回転時に把持される把持部とされる。図13図15に示すように、先筒3の挿入部の鍔部3x寄りの外周面には、容器本体1の凸凹部1aに軸線方向に係合される円環状の凹凸部3dを備える。
【0016】
図14及び図15に示すように、先筒3の軸線方向に貫通する筒孔は、先端の開口から先端近傍までが、棒状化粧料Mのみが進退する短尺の棒状化粧料孔3fとされる。この棒状化粧料孔3fの後端には、溝形成区間(詳しくは後述)Gが続き、この溝形成区間Gの後端から筒孔の後端までが棒状化粧料孔3fより大径とされ、パイプ部材4及び螺子部材5を収容すると共に、これらが移動する(前進/後退する)筒孔3gとされる。
【0017】
筒孔3gの軸線方向中程には、段差面3mが設けられ、この段差面3mより後側の筒孔の径が前側の筒孔の径より大とされている。段差面3mには、当該段差面3mから軸線方向前側に延びる溝3hが、パイプ部材4を回転方向に係合するためのものとして、周方向に沿って複数(ここでは4個)等配に並設されている。これらの溝3hは、パイプ部材4の突起4n(詳しくは後述)が、先筒3の先端側の溝3n(詳しくは後述)に正確に進入するように誘導する役目も担っている。そして、筒孔3gのうちの段差面3mより前側の筒孔が、専らパイプ部材4を収容し、筒孔3gのうちの段差面3mより後側の筒孔が、専ら螺子部材5を収容する。なお、溝3hを構成する先端3jを、パイプ部材4の前進限に対応する段差面としても良い。そして、先筒3の鍔部3xより後方の内周面には、第1の螺合部8の一方を構成する雌螺子(螺旋溝)3iが第1の雌螺子として軸線方向に沿って所定区間設けられている。
【0018】
筒孔3gの先端と棒状化粧料孔3fとの間には、前述した溝形成区間Gが設けられている。溝形成区間Gは、パイプ部材4の突起4n(詳しくは後述)が移動する区間に対応して設けられる。この溝形成区間Gは、周方向に沿って複数(ここでは4個)等配に並設されて軸線方向に延び、筒孔3gに連設された溝3nと、周方向に並ぶ溝3n,3n同士の間に形成され、棒状化粧料孔3fに連設された凸部3pと、を備える。
【0019】
筒孔3gと当該筒孔3gに連設される溝3nの内径は同一径となっており、棒状化粧料孔3fと当該棒状化粧料孔3fに連設される凸部3pの内径は同一径となっている。このように、先筒3にあっては、その先端部の内周面に、筒孔3gから前方に所定長延びる溝3nが、周方向に沿って複数離間して設けられる。そして、溝3nを構成する先端(段差面)3rが、パイプ部材4の前進限に対応する段差面とされている。
【0020】
このような構成を有する先筒3は、図3に示すように、その挿入部が、容器本体1の前側から内挿され、その鍔部3xが容器本体1の先端面に突き当てられ、その凹凸部3dが容器本体1の凸凹部1aに軸線方向に係合することで、容器本体1に回転可能且つ軸線方向移動不能に装着される。
【0021】
ラチェットバネ部材7は、図19に示すように、略円筒状に構成され、先端側のラチェット部7aと後端部7bとを連結する中間部分が、軸線方向に伸縮可能なバネ部7cとされている。バネ部7cは、ここでは、ラチェット部7a、後端部7bと一体成形された樹脂バネとされ、略螺旋状に構成される。
【0022】
ラチェット部7aの先端面には、螺子部材5とラチェット係合するラチェット歯7xが周方向に沿って複数並設されている。
【0023】
また、ラチェット部7aの外周面には、軸線方向に延びる突条7dが、容器本体1の溝1cに回転方向に係合するためのものとして、周方向に沿って複数(ここでは8個)等配に並設されている。また、後端部7bの外周面にも、軸線方向に延びる突条7eが、容器本体1の溝1cに回転方向に係合するためのものとして、周方向に沿って複数(ここでは4個)等配に並設されている。後端部7bの突条7eは、ラチェット部7aの突条7dの延長線上に配設されている。
【0024】
このような構成を有するラチェットバネ部材7は、図3に示すように、容器本体1の前側から内挿され、その後端面が容器本体1の突条1fの先端面1bに突き当てられ、そのラチェット部7aの突条7d及び後端部7bの突条7eが、容器本体1の溝1cに回転方向に係合することにより、容器本体1に同期回転可能且つそのバネ部7cが軸線方向に伸縮可能且つそのラチェット部7aが軸線方向に移動可能に装着されている。
【0025】
螺子部材5は、図16図18に示すように、略円筒状に構成され、軸線方向中程の外周面に、第1の螺合部8の他方を構成し先筒3の雌螺子3iに螺合する雄螺子(螺旋突起)5eを第1の雄螺子として備えている。また、螺子部材5の前側の内周面には、第2の螺合部9の一方を構成する雌螺子5jが第2の雌螺子として軸線方向に沿って所定区間設けられている。
【0026】
螺子部材5の後端部は、これより前側より拡径された拡径部5cとされ、この拡径部5cの後端面には、ラチェットバネ部材7のラチェット歯7xと周方向に噛み合うラチェット歯5xが周方向に沿って複数並設される。これらラチェット歯7x,5xの一方のラチェット歯は、他方のラチェット歯の一方向のみの回転を許容し、ここでは、一方のラチェット歯の繰り出し方向(前進)の回転は許容し、繰り戻し方向(後退)の回転は許容しないようになっている。
【0027】
また、螺子部材5の先端部には、内外を連通する小窓5aが一対、対向して開口されている。この小窓5aの前側の内周面には、軸線方向に向かって突出する係止凸部5bが、パイプ部材4を軸線方向に係合するためのものとして設けられる。
【0028】
このような構成を有する螺子部材5は、図3に示すように、容器本体1の前側から内挿され、その拡径部5cの先端面が先筒3の後端部に当接し押圧されることにより、ラチェット歯5xがラチェットバネ部材7のラチェット歯7xと噛み合うことで、ラチェットバネ部材7のバネ部7cを圧縮すると共に、その雄螺子5eが先筒3の雌螺子3iに螺合し第1の螺合部8が構成される。なお、拡径部5cの先端面が先筒3の後端部に当接することで、螺子部材5(パイプ部材4)の前進限に対応させても良い。
【0029】
移動体6は、先端のピストン6xと、このピストン6xの後端に位置し軸線方向に長尺な軸部6yと、を備える。軸部6yには、その先端部に、ピストン6xの後端に凹設された凹部6zに進入し当該ピストン6xを押し出すための押部6aが設けられている。また、軸部6yには、図20に示すように、押部6aの後端から軸線方向中程に亘って、その外周面に、第2の螺合部9の他方を構成し螺子部材5の雌螺子5jに螺合する雄螺子(螺旋突起)6bが第2の雄螺子として設けられる。また、移動体6の後端部には、軸線方向視において十字方向に延びる凸部6cが、容器本体1の突条1fに回転方向に係合するためのものとして設けられる。
【0030】
このような構成を有する移動体6は、図2及び図3に示すように、容器本体1、ラチェットバネ部材7、螺子部材5に内挿され、図12に示すように、その後端部の各凸部6cが、容器本体1の突条1f,1f同士の間に進入することにより、容器本体1に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着されると共に、図3に示すように、その雄螺子6bが螺子部材5の雌螺子5jに螺合し第2の螺合部9が構成される。この第2の螺合部9、前述した第1の螺合部8にあっては、第2の螺合部9のリードに比して第1の螺合部8のリードが大きくされている。
【0031】
パイプ部材4は、図3に示すように、略円筒状に構成され、その筒孔内に棒状化粧料Mが充填される。この棒状化粧料Mは、パイプ部材4にほぼ密接状態で摺動可能に収容される。図21及び図22に示すように、パイプ部材4の後端部には、円環状の凸部4aが、螺子部材5の小窓5a前の係止凸部5bに軸線方向に係合するためのものとして設けられる。また、パイプ部材4の凸部4aより前側の外周面には、溝4bが、パイプ部材4の移動時に先筒3の内周面に好適に摺接するためのOリング11を装着するものとして設けられる。溝4bを形成する前後の円環状の凸部4c,4dのうち、後側の凸部4dは、螺子部材5の先端面を突き当てて、その後端部寄りの凸部4aとの間に螺子部材5の先端部を軸線方向に挟持するものである。また、パイプ部材4の外周面であって前側の凸部4cには、当該凸部4cの前側の面から前方に所定長延びる突条4eが、先筒3の溝3hに進入し回転方向に係合するためのものとして、周方向に沿って複数(ここでは4個)等配に並設されている。
【0032】
また、パイプ部材4は、その先端に、軸線方向前方に向かって延びる突起4nが、先筒3の溝3nに進入するものとして、周方向に沿って複数(ここでは4個)等配に設けられている。従って、パイプ部材4の周方向の突起4n,4n同士の間の溝4pには、先筒3の凸部3pが進入するものとなる。そして、これらの突起4nは、パイプ部材の先端をそのまま前方へ延ばしたものであるから、突起4nの内径と当該突起4nより後側の部分の内径は同一径で棒状化粧料Mが摺動する径とされる。また、当該突起4nの内径と前述した先筒3の凸部3pの内径も同一径となっている。
【0033】
このような構成を有するパイプ部材4は、図23図25に示すように、その後端部が、螺子部材5の先端部に内挿され、その後側の凸部4dの後端面が螺子部材5の先端面に突き当てられ、その凸部4aが、螺子部材5の小窓5aに進入して係止凸部5bに軸線方向に係合する(図24参照)と共に、当該凸部4aと凸部4dとの間に、螺子部材5の先端部が挟持されることにより、パイプ部材4と螺子部材5が軸線方向に移動不能に装着される。
【0034】
また、螺子部材5を連結したパイプ部材4は、図3に示すように、先筒3の筒孔3gの後側から内挿され、その突条4eが、先筒3の溝3hに進入し回転方向に係合することにより、先筒3に回転不能且つ軸線方向移動可能に装着される。この状態で、パイプ部材4は、図5図10及び図11に示すように、その先端側の突起4nが、先筒3の溝3nに進入すると共に、その溝4pに、先筒3の凸部3pが進入した状態にある。このパイプ部材4の突起4nの先端4rは、前述した溝形成区間G内で移動する(前進又は後退する)ようになっている。また、図3に示すように、パイプ部材4の後端の筒内には、移動体6の先端のピストン6xが押部6aにより押され進入した状態にある。
【0035】
そして、初期状態においては、図3に示すように、螺子部材5は、第1の螺合部8による前進の螺合限に達すると共に、パイプ部材4は、前進限に位置した状態にある。具体的には、パイプ部材4は、図5に示すように、パイプ部材4の先端の突起4nの先端4rが、先筒3の溝3nの先端3rに突き当たった状態にある。なお、パイプ部材4の前進限の位置としては、パイプ部材4の後端側の突条4eの先端が、先筒3の溝3hの先端3jに突き当たった状態や、パイプ部材4の溝4pの後端4sが、先筒3の凸部3pの後端3sに突き当たった状態としても良い。
【0036】
この状態では、溝形成区間Gにおいて、パイプ部材4の突起4nと先筒3の溝3n、パイプ部材4の溝4pと先筒3の凸部3pは隙間なく密着し、パイプ部材4の突起4nと先筒3の凸部3pとは段差のない面一な面となっており、棒状化粧料Mが支障なく摺動できる面となっている。
【0037】
また、図3に示すように、移動体6のピストン6xは、その後端面が、パイプ部材4の後端面とほぼ面一となるようにパイプ部材4内に位置し、この状態で、棒状化粧料Mは、その先端面が、先筒3の先端の開口3t(棒状化粧料孔3fの先端)と面一となるように位置している。
【0038】
この棒状化粧料Mは、以下の方法で容器に充填される。具体的には、初期状態にある棒状化粧料繰出容器100を立てた状態で、先筒3の先端の開口3tを通して溶融化粧料を容器内に注入して当該開口3tまで満たす。
【0039】
このとき、前述したように、溝形成区間Gにおいて、パイプ部材4の突起4nと先筒3の溝3n、パイプ部材4の溝4pと先筒3の凸部3pは隙間なく密着しているため、筒内周面に隙間はなく、従って、溶融化粧料は筒内に綺麗に充填される。
【0040】
そして、溶融化粧料が冷却固化すると、ピストン6xにより後端が蓋されたパイプ部材4内及び先筒3の棒状化粧料孔3f内に棒状化粧料Mが充填される。また、既にできている棒状化粧料Mを、先筒3の先端の開口3tを通して嵌挿し充填するようにしても良い。
【0041】
このような構成を有する棒状化粧料繰出容器は、前述した図2及び図3に示す初期状態の棒状化粧料繰出容器100として使用者に購買される。
【0042】
この状態で、棒状化粧料Mは、図3図5に示すように、パイプ部材4の突起4nより後方の部分においては、パイプ部材4の内周面により全周で支えられ、棒状化粧料孔3fにおいては、当該棒状化粧料孔3fの内周面により全周で支えられ、溝形成区間Gにおいては、隙間なく密着するパイプ部材4の突起4nと先筒3の溝3n、及び、パイプ部材4の溝4pと先筒3の凸部3pにより構成される内周面により全周で支えられ、保護される。
【0043】
そして、使用者により容器本体1と先筒3とが繰り出し方向に相対回転され、例えば先筒3が把持され容器本体1が回転されると、容器本体1と、移動体6及びラチェットバネ部材7とが同期回転する。
【0044】
このとき、ラチェットバネ部材7のバネ部7cの付勢力により、ラチェット歯5x,7xは噛み合っているが、螺子部材5は第1の螺合部8による前進限に位置しそれ以上の前進が阻止された状態にあるため、使用者がさらに繰り出し方向の回転操作を続けると、螺子部材5の繰り出し方向への回転が阻止された状態で、容器本体1と同期回転するラチェットバネ部材7のラチェット歯7xが螺子部材5のラチェット歯5xに対して空転し、この空転に伴いカチカチというクリック音とクリック感が生じる。
【0045】
これと同時に、容器本体1と同期回転する移動体6が、繰り出し方向に回転し、回転が停止している螺子部材5との間で第2の螺合部9の螺合作用が働いて、図6図8に示すように、移動体6が前進し、ピストン6xによりパイプ部材4内の棒状化粧料Mが押し出される(図6参照)。このとき、第1の螺合部8のリードに比して第2の螺合部9のリードが小さくされているため、移動体6は第2の螺合部9の小さいリードに従いゆっくりと繰り出され棒状化粧料Mが適度にパイプ部材4から押し出されて適度に先筒3の開口3tから出現し使用状態にされる。この棒状化粧料Mを出現させる際の回転操作にあたっては、使用者には前述したクリック音及びクリック感が与えられるため、好適に棒状化粧料Mを繰り出すことができ、塗布に供することができる。
【0046】
塗布後に、使用者により容器本体1と先筒3とが繰り戻し方向に相対回転され、例えば先筒3が把持され容器本体1が回転されると、容器本体1と、移動体6及びラチェットバネ部材7とが同期回転する。ここで、ラチェット歯5x,7xは、前述したように一方のラチェット歯の繰り戻し方向の回転を許容しないため、螺子部材5とラチェットバネ部材7は一体となって繰り戻し方向へ回転する。これにより、螺子部材5と先筒3との間で第1の螺合部8の螺合作用が働いて、図9図11に示すように、螺子部材5がパイプ部材4を伴い後退し、棒状化粧料Mの先端が、先筒3の開口3tから没入するまで使用者による回転操作が続けられる(図9参照)。
【0047】
このとき、第2の螺合部9のリードに比して第1の螺合部8のリードが大きくされているため、螺子部材5及びパイプ部材4は、第1の螺合部8の大きいリードに従い素早く繰り戻される。
【0048】
この状態においては、パイプ部材4は前進限より後退し、棒状化粧料Mはパイプ部材4の突起4nの先端4rから前方へ突出した状態にある(図9参照)。
【0049】
このような状態にあるため、棒状化粧料Mは、図10及び図11に示すように、溝形成区間Gより後方の位置で突起4nが周方向に並設される位置においては、パイプ部材4の突起4nの内面により周方向に沿って複数箇所で支えられ、棒状化粧料孔3fにおいては、当該棒状化粧料孔3fの内周面により全周で支えられ、溝形成区間Gにおいて、突起4nの先端部及び当該突起4nの先端部に先筒3の凸部3pの後端部が隣接して周方向にラップする区間においては、突起4nの内面及び凸部3pの内面により全周で支えられ、溝形成区間Gにおいて、上記周方向にラップする区間より前側の部分では、先筒3の凸部3pの内面により周方向に沿って複数箇所で支えられ、保護される。このような保護の形態は、前述したように、螺子部材5及びパイプ部材4が前進限に達するまで、同じとされる。
【0050】
そして、棒状化粧料Mの先端が先筒3の開口3tから没入した状態において、回転操作を続行し続けると、第1の螺合部8の螺合作用により螺子部材5がさらに後退し、先筒3の雌螺子3iの後端から螺子部材5の雄螺子5eの先端が外れて螺合解除状態となるが、螺子部材5はラチェットバネ部材7のバネ部7cにより前方に付勢されているため、螺子部材5の雄螺子5eの先端は先筒3の雌螺子3iの後端に押し付けられ、直ちに螺合復帰することになる。
【0051】
そして、その後、使用者により容器本体1と先筒3とが繰り出し方向に相対回転され、例えば先筒3が把持され容器本体1が回転されると、ラチェット歯5x,7xは、ラチェットバネ部材7のバネ部7cの付勢力により強く噛み合い、螺子部材5とラチェットバネ部材7とは同期回転可能となっているため、容器本体1及び移動体6は、螺子部材5及びラチェットバネ部材7と同期回転する。これにより、第1の螺合部8の螺合作用が働いて螺子部材5がパイプ部材4及び移動体6を伴い前進し、螺子部材5が前進限に達することによりそれ以上の前進が阻止され第1の螺合部8の螺合作用が停止する。
【0052】
このとき、棒状化粧料Mの先端部が、先筒3の開口3tから所望量突出していた場合には、その状態で塗布に供する。一方、棒状化粧料Mの先端部が、先筒3の開口3tから所望量突出していない場合には、容器本体1と先筒3とをさらに繰り出し方向に相対回転し、これにより、前述したのと同様に、第2の螺合部9の螺合作用が働いて移動体6が前進し、棒状化粧料Mが所望量押し出され、塗布に供することができる。
【0053】
このように、本実施形態においては、パイプ部材4は、その先端に、軸線方向前方に向かって延びる突起4nを周方向に沿って複数備え、先筒3は、その先端部の内周面に、軸線方向に延びパイプ部材4の突起4nが進入する溝3nが周方向に沿って複数形成された溝形成区間Gを備え、先筒3において周方向に並ぶ溝3n,3n同士の間の凸部3pの内径とパイプ部材4の突起4n及び当該突起4nより後側の棒状化粧料Mを収容する筒部の内径とは同じ大きさとされると共に、パイプ部材4の前進又は後退により、パイプ部材4の突起4nの先端4rが、先筒3の溝形成区間G内で移動する構成のため、パイプ部材4の突起4nの先端4rが先筒3の溝3nの先端3rより後方に後退している状態でも(前進限より後退している状態でも)、パイプ部材4の突起4nから突出する棒状化粧料Mは、先筒3の溝形成区間G内の溝3n,3n同士の間の凸部3pの内面により周方向に沿って複数箇所で支えられることになり、棒状化粧料繰出容器100に衝撃や振動が作用しても棒状化粧料Mの折れを防止できる。
【0054】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好ましいとして、棒状物を棒状化粧料Mとした棒状化粧料繰出容器100に対する適用を述べているが、棒状物を例えば鉛筆等とした筆記具等の棒状物繰出容器に対しても勿論適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…容器本体、3…先筒、3i…第1の雌螺子、3n…先筒の溝、3p…先筒の凸部、3t…先筒の開口、4…パイプ部材、4n…パイプ部材の突起、4r…パイプ部材の突起の先端、5…螺子部材、5e…第1の雄螺子、5j…第2の雌螺子、6…移動体、6b…第2の雄螺子、6x…ピストン、6y…軸部、8…第1の螺合部、9…第2の螺合部、100…棒状化粧料繰出容器(棒状物繰出容器)、G…溝形成区間、M…棒状化粧料(棒状物)。
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