(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ドア内に設けられ、車体側のストライカと噛合することにより、前記ドアを全閉状態に保持可能なラッチ機構を有するラッチユニットと、前記ラッチ機構をリリース作動させて前記ストライカとの噛合状態を解除し、全閉状態にある前記ドアの開きを可能にするリリースアクチュエータユニットとを備える車両用ドア操作装置において、
前記リリースアクチュエータユニットは、
前記ドア内に着脱可能に取付けられたベースプレートと、
前記ベースプレートに設けられた正逆回転可能なモータと、
前記ベースプレートに枢軸により枢支され、前記モータの回転により初期位置からリリース位置まで回動したあと、前記初期位置に復帰する一連の動作を行う出力レバーと、
前記ベースプレートに枢支され、前記ラッチユニットに操作力伝達部材を介して連係されるとともに、前記出力レバーに係合手段をもって連係され、前記出力レバーの一連の動作に従動して、前記ラッチ機構をリリース作動させるリリース位置まで回動したあと、初期位置に復帰可能なリリースレバーと、
前記ベースプレートに可動可能に支持され、前記出力レバーが停止した場合、手動操作により前記係合手段を前記出力レバーと前記リリースレバーとの連係状態を解除する解除位置に移動させ、前記リリースレバーの前記初期位置への復帰を可能とするエマージェンシーレバーとを有し、
前記係合手段は、前記出力レバーと前記リリースレバーとのいずれか一方に設けられたガイド孔と、前記出力レバーと前記リリースレバーとのいずれか他方に設けられ、一端部が開口する係合溝と、前記ガイド孔と前記係合溝とに摺動可能に嵌合された連係ピンとを含み、
前記エマージェンシーレバーを手動操作により前記解除位置に移動させ、前記連係ピンを前記係合溝より離脱させることにより、前記出力レバーと前記リリースレバーとの連係状態を解除可能としたことを特徴とする車両用ドア操作装置。
前記エマージェンシーレバーを前記ベースプレートに支軸により回動可能に枢支するとともに、前記エマージェンシーレバーに前記ガイド孔と交差する方向を向き、かつ前記連係ピンが摺動可能に嵌合する長孔を設け、前記エマージェンシーレバーを手動操作により前記解除位置に移動させたとき、前記連係ピンが前記長孔に沿って移動することにより、前記リリースレバーの前記初期位置への復帰を可能としたことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア操作装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び2に記載されている電気式アクチュエータは、モータと、モータの回転軸に固着したウォームにより減速回転させられるウォームホイールと、このウォームホイールの回転駆動力を、ロッドやワイヤケーブル等を介してコントロールユニットのオープンレバーに伝達するリリースレバー(または出力レバー)とを備えている。
このようなモータ駆動方式のリリースアクチュエータにおいては、次のような耐久上の問題が発生することがある。
【0006】
例えば、ワンボックス型タクシー等のスライドドアにおいては、客が乗降する度にドアの開閉が頻繁に行われるため、リリースアクチュエータを作動させる頻度が、通常の自家用車両のスライドドアに設けられているリリースアクチュエータに比して極めて高い。そのため、長期間に亘ってリリースアクチュエータを繰り返し作動させると、モータブラシの磨滅による通電不良などの電気的な故障、またはモータロータの固着や駆動ギヤの破損等の機械的な故障により、モータが回転不能となることがある。
【0007】
このような故障が、例えば、コントロールユニットのオープンレバーをリリース作動させている途中、またはリリース作動後に初期位置まで復帰する途中に発生して、モータが回転不能となると、リリースアクチュエータのリリースレバーに連結されているコントロールユニットのオープンレバーが、リリース位置に作動させられたままの状態に拘束されてしまう。このようになると、オープンレバーに連係されたラッチユニットのラッチ機構が、ストライカとの係合が解除されたラッチ解除位置に保持されてしまうので、スライドドアを閉めても全閉状態に保持することができなくなる。
【0008】
このような事態が発生したときには、リリースアクチュエータを新規なものと交換しなければならないが、その前の緊急措置として、コントロールユニットのオープンレバーと、リリースアクチュエータのリリースレバーとを連結しているロッドまたはワイヤケーブルを外して、オープンレバーとリリースレバーとの連係状態を解除し、手動によりオープンレバーを初期位置(ラッチ機構がストライカと噛合可能な位置)まで作動させる必要があるが、この作業は、ドアの室内トリムを取り外して行われ、大がかりなものとなるので、リリースアクチュエータの故障現場において速やかに対処することができない。
【0009】
また、特許文献1に記載されているリリースアクチュエータは、コントロールユニットの大きなベースプレートに取付けられているので、リリースアクチュエータを新規なものと交換する際にも、ドアの室内トリムを取り外して行わなければならず、リリースアクチュエータをユニット毎取外して、簡単に交換することができないという問題もある。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑み、リリースアクチュエータのモータが回転不能となる緊急事態が発生しても、エマージェンシー機構により、リリース状態に停止しているリリースレバーを初期位置に復帰させて、ラッチ機構によりドアを全閉状態に保持うるようにするとともに、リリースアクチュエータを、ユニット毎容易に交換可能とした車両用ドア操作装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
第1の発明は、ドア内に設けられ、車体側のストライカと噛合することにより、前記ドアを全閉状態に保持可能なラッチ機構を有するラッチユニットと、前記ラッチ機構をリリース作動させて前記ストライカとの噛合状態を解除し、全閉状態にある前記ドアの開きを可能にするリリースアクチュエータユニットとを備える車両用ドア操作装置において、前記リリースアクチュエータユニットは、前記ドア内に着脱可能に取付けられたベースプレートと、前記ベースプレートに設けられた正逆回転可能なモータと、前記ベースプレートに枢軸により枢支され、前記モータの回転により初期位置からリリース位置まで回動したあと、前記初期位置に復帰する一連の動作を行う出力レバーと、前記ベースプレートに枢支され、前記ラッチユニットに操作力伝達部材を介して連係されるとともに、前記出力レバーに係合手段をもって連係され、前記出力レバーの一連の動作に従動して、前記ラッチ機構をリリース作動させるリリース位置まで回動したあと、初期位置に復帰可能なリリースレバーと、前記ベースプレートに可動可能に支持され、前記出力レバーが停止した場合、手動操作により前記係合手段を前記出力レバーと前記リリースレバーとの連係状態を解除する解除位置に移動させ、前記リリースレバーの前記初期位置への復帰を可能とするエマージェンシーレバーとを有し、
前記係合手段は、前記出力レバーと前記リリースレバーとのいずれか一方に設けられたガイド孔と、前記出力レバーと前記リリースレバーとのいずれか他方に設けられ、一端部が開口する係合溝と、前記ガイド孔と前記係合溝とに摺動可能に嵌合された連係ピンとを含み、前記エマージェンシーレバーを手動操作により前記解除位置に移動させ、前記連係ピンを前記係合溝より離脱させることにより、前記出力レバーと前記リリースレバーとの連係状態を解除可能としたことを特徴としている。
【0013】
第
2の発明は、上記第
1の発明において、前記エマージェンシーレバーを前記ベースプレートに支軸により回動可能に枢支するとともに、前記エマージェンシーレバーに前記ガイド孔と交差する方向を向き、かつ前記連係ピンが摺動可能に嵌合する長孔を設け、前記エマージェンシーレバーを手動操作により前記解除位置に移動させたとき、前記連係ピンが前記長孔に沿って移動することにより、前記リリースレバーの前記初期位置への復帰を可能としたことを特徴としている。
【0014】
第
3の発明は、上記第1
または第2の発明において、前記リリースアクチュエータユニットは、前記モータにより回転し、前記出力レバーを駆動可能な偏心カム部を有する駆動部材を有し、前記駆動部材における前記偏心カム部を、前記モータの非作動時において前記出力レバーの駆動端の回動軌跡から離間させることにより、前記リリースレバーが前記初期位置と前記リリース位置との間を自由に回動可能としたことを特徴としている。
【0015】
第4の発明は、ドア内に設けられ、車体側のストライカと噛合することにより、前記ドアを全閉状態に保持可能なラッチ機構を有するラッチユニットと、前記ラッチ機構をリリース作動させて前記ストライカとの噛合状態を解除し、全閉状態にある前記ドアの開きを可能にするリリースアクチュエータユニットと、前記ラッチ機構をリリース作動させる中継用のコントロールユニットとを備える車両用ドア操作装置において、前記リリースアクチュエータユニットは、前記ドア内に着脱可能に取付けられたベースプレートと、前記ベースプレートに設けられた正逆回転可能なモータと、前記ベースプレートに枢軸により枢支され、前記モータの回転により初期位置からリリース位置まで回動したあと、前記初期位置に復帰する一連の動作を行う出力レバーと、前記ベースプレートに枢支され、前記ラッチユニットに操作力伝達部材を介して連係されるとともに、前記出力レバーに係合手段をもって連係され、前記出力レバーの一連の動作に従動して、前記ラッチ機構をリリース作動させるリリース位置まで回動したあと、初期位置に復帰可能なリリースレバーと、前記ベースプレートに可動可能に支持され、前記出力レバーが停止した場合、手動操作により前記係合手段を前記出力レバーと前記リリースレバーとの連係状態を解除する解除位置に移動させ、前記リリースレバーの前記初期位置への復帰を可能とするエマージェンシーレバーとを有し、前記リリースアクチュエータユニットを前記コントロールユニットとは別体に設け、前記リリースアクチュエータユニットを単体で交換可能とし
、前記リリースレバーと前記コントロールユニットとの連係を解除し、前記ベースプレートを前記ドアのインナーパネルに固定するボルトを取外すことにより、前記リリースアクチュエータユニットを交換可能としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両用ドア操作装置によると、モータが回転不能となるなどして、出力レバーが初期位置からリリース位置まで回動したあと、初期位置に復帰する一連の動作が終了する途中段階において停止する緊急事態が発生しても、エマージェンシーレバーを手動操作により回動させて、出力レバーとリリースレバーとの連係状態を解除することにより、リリース作動状態にあるリリースレバーをリリース位置から初期位置に復帰させることが可能となる。従って、ラッチユニットのラッチ機構が、ストライカと噛合可能な状態となり、ドアを閉めた際にこれを全閉状態に保持可能となる。
また、例えば、リリースアクチュエータユニットの取付部と対応する部分のドアの室内トリムを予め開口しておき、この開口に設けたカバーを取り外すことによって、リリースアクチュエータユニットをベースプレート毎取外して、新規なものと容易に交換することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の車両用ドア操作装置を備えるワンボックスタイプのタクシー車両で、車体1の後席の側面に形成された乗降口1aには、スライドドア(以下、ドアと略称する)2が、乗降口1aの上部と下部に設けられたガイドレール3、4、及び車体1の後部の外側面に設けられたガイドレール5により、前後方向に移動可能に支持されている。
【0020】
ドア2は、車体1の後部のパネル内に設けられたドア開閉駆動ユニット6により、乗降口1aを閉じる全閉位置と、車体1の側面より若干外側方に移動しつつ、各ガイドレール3、4、5に案内されて後方にスライドし、乗降口1aを開放する全開位置との間を開閉駆動されるようになっている。
【0021】
ドア2内の前部と後部には、それぞれ、車体1の前部と後部に設けられた全閉用のストライカ(図示略)と噛合することにより、ドア2を全閉位置に保持するためのフロント全閉ラッチユニット7とリヤ全閉ラッチユニット8が設けられている。また、ドア2内の前下部には、車体1の後部に設けられた全開用のストライカ(図示略)と噛合することにより、ドア2を全開位置に保持するための全開ラッチユニット9が設けられている。リヤ全閉ラッチユニット8は、モータの駆動力をもって、ドア2を半ドア状態から全閉状態に強制的に移動させるクローザ(図示略)を備えている。フロント全閉ラッチユニット7及びリヤ全閉ラッチユニット8は、車体側の全閉用のストライカと噛合することにより、ドア2を全閉位置に保持するラッチ及びラッチに係合可能なラチェットよりなるラッチ機構(図示略)を備える公知の構造のものである。
【0022】
ドア2のアウタパネル2aの前部には、ドア2を車外側から開閉操作するためのアウトサイドハンドル10が設けられ、同じく車内側のインナパネル(図示略)には、ドア2を車内側から開閉操作するためのインサイドハンドル11が設けられている。
【0023】
インサイドハンドル11付近のドア2の内部には、アウトサイドハンドル10及びインサイドハンドル11による開扉操作力を、フロント全閉ラッチユニット7及びリヤ全閉ラッチユニット8のラッチ機構にそれぞれ伝達し、フロント全閉ラッチユニット7及びリヤ全閉ラッチユニット8のラッチ機構をリリース作動させてストライカとの噛合を解除することにより、ドア2の開きを可能とする中継用のコントロールユニット12と、このコントロールユニット12に設けられたドアラッチ解除用のオープンレバー(図示略)に、ロッドやワイヤケーブル等の操作力伝達部材13をもって連係された、リリースアクチュエータとしてのリリースアクチュエータユニット14が設けられている。なお、フロント全閉ラッチユニット7、リヤ全閉ラッチユニット8、コントロールユニット12及びリリースアクチュエータユニット14等は、本発明のドア操作装置に相当する。
【0024】
リリースアクチュエータユニット14が設けられている付近のドア2のインナパネル2b及びインナパネルに取り付けられる室内トリム(図示略)は、一部が開口され、その開口部2cに設けられたカバー(図示略)を取外すことにより、後述するように、リリースアクチュエータユニット14が故障したときの緊急事態に対処しうるようになっている。
【0025】
リリースアクチュエータユニット14は、コントロールユニット12に設けられたロック機構(図示略)がアンロック状態(アウトサイドハンドル10及びインサイドハンドル11の開操作によりドア2を開扉可能な状態)にあるとき、コントロールユニット12のオープンレバーをリリース位置(ラッチ解除位置)に作動させることにより、フロント全閉ラッチユニット7及びリヤ全閉ラッチユニット8のラッチ機構を自動的にリリース作動させ、ストライカとの噛合状態を解除してドア2の開きを可能にするものであり、運転席に設けたスイッチやワイヤレスのリモコンスイッチ等の操作により作動する。
【0026】
図2は、リリースアクチュエータユニット14を車内側より見た側面図、
図3は、同じく分解斜視図である。なお、以下においては、
図2の右方を「前方」、左方を「後方」、図面手前側を「車内側」、奥側を「車外側」としてそれぞれ説明する。
リリースアクチュエータユニット14は、ドア2内においてインナパネル2bに、ボルトSによりほぼ垂直に着脱可能に固定される4個の固定部151を有する側面視概ね方形をなす金属製のベースプレート15と、このベースプレート15の車内側の側面の中央部に固定される駆動ユニット16と、この駆動ユニット16の駆動力を出力する駆動部材17と、この駆動部材17により駆動される出力レバー18と、出力レバー18に、これと従動して回動するように連係されたリリースレバー19と、緊急時に出力レバー18とリリースレバー19との連係状態を解除するエマージェンシーレバー20とを備えている。
【0027】
駆動ユニット16は、回転軸線を斜め上下方向を向くように若干傾斜させた正逆回転可能なモータ21と、モータ21のケーシング211の下端に固定されたギヤケース22内に収容され、モータ21の斜め下方を向く回転軸(図示略)に固着されたウォーム23と、ギヤケース22内においてウォーム23と噛合することにより、車内外方向の軸線回りに正逆回転するウォームホイール24とを備えている。ギヤケース22における車外側の開口面と、駆動部材17の車内側の側面を覆うカバー25は、ベースプレート15の3箇所を車内側に切り起こして形成された3個の固定部152に、車内側から挿入したボルトSにより固定されている。
【0028】
駆動部材17は、側面視概ね扇状の偏心カム部171を備え、この偏心カム部171の外周面は、駆動部材17の回転中心を半径とする駆動カム面172となっている。
【0029】
図4(駆動ユニット16は図示略)及び
図8に示すように、ウォームホイール24の中心の車外方向を向く角形の出力軸241には、駆動部材17に形成された非円形の軸孔173が、圧入等により相対回転不能に嵌合されている。これにより、駆動部材17は、モータ21を例えば正回転させることにより、
図4に示す初期位置から
図5に示すリリース位置まで、反時計方向に所定の範囲回動させられる。
【0030】
ベースプレート15には、駆動部材17の初期位置を検出する初期位置検出用のリミットスイッチ26と、駆動部材17のリリース位置を検出するリリース位置検出用のリミットスイッチ27とが取り付けられ、両リミットスイッチ26、27は、図示しない制御装置に電気的に接続されている。駆動部材17が
図5に示すリリース位置まで回動し、駆動部材17の駆動カム面172の一端部が、リリース位置検出用のリミットスイッチ27の作動アーム271に接触してこれを押動すると、リミットスイッチ27がオンまたはオフとなって、モータ21が停止するように制御される。また、これとほぼ同時に、モータ21を逆回転させて、駆動部材17が
図4の初期位置に復帰するように制御される。駆動部材17が初期位置に復帰すると、駆動部材17の駆動カム面172の他端部が、初期位置検出用のリミットスイッチ26の作動アーム261に接触してこれを押動し、リミットスイッチ26をオフまたはオンすることにより、モータ21が停止する。従って、モータ21の非作動時には、駆動部材17は常に
図4に示す初期位置で停止している。
【0031】
図4及び
図8に示すように、出力レバー18の後方寄りの中間部には、車内外方向を向く枢軸28が貫通して取付けられ、この枢軸28の車内側の端部を、ベースプレート15の前端部に形成された車内方向に膨出する枢着部153に、かしめによって固定することにより、出力レバー18は、
図4に示す初期位置から
図5に示すリリース位置まで回動したあと、初期位置に復帰する一連の動作を行いうるように、枢軸28まわりに回動可能として枢支されている。
【0032】
枢軸28における出力レバー18の側面と当接する車内側のほぼ半分は、大径軸部281となっており、この大径軸部281には、ねじりコイルばね29が巻装されている。ねじりコイルばね29の一方の足片291は、大径軸部281の頭部に形成された係止溝282に、同じく他方の足片292は、出力レバー18における枢軸28よりも後方の上縁に突設された係止片181に、それぞれ係止されている。これにより、出力レバー18は、ねじりコイルばね29によって側面視反時計方向(初期位置方向)に付勢されている。
【0033】
出力レバー18の後端部のやや上方には、ウォームホイール24の出力軸241と平行をなす被駆動ピン30が、車内方向を向くように、かしめにより固着されている。駆動部材17が、
図4に示す初期位置から、
図5に示すリリース位置まで回動すると、被駆動ピン30が、駆動部材17の偏心カム部171の駆動カム面172に接触することにより、出力レバー18は、
図4に示す初期位置から、
図5に示すリリース位置まで、側面視時計方向に回動させられる。なお、
図8に示すように、被駆動ピン30には、駆動カム面172との摩擦抵抗を小さくするために、円筒形のカラー31が回転自在に嵌合されているが、このようなカラー31は省略してもよい。
【0034】
駆動部材17がモータ21の非作動時や復帰時において
図4に示す初期位置にあるときには、駆動部材17の偏心カム部171は、出力レバー18の駆動端であるカラー31と接触しないように、その回動軌跡から離間している。
【0035】
出力レバー18の前部には、長手方向を向くガイド孔182と、その前端に連続する、ガイド孔182よりも大径の欠円形孔183とが形成されている。ガイド孔182には、出力レバー18に対しリリースレバー19とエマージェンシーレバー20とを連動可能に連係するための車体1の内外方向を向く連係ピン32が、長手方向に移動可能として嵌合されている。この連係ピン32における車内側の頭部には、出力レバー18のガイド孔182よりも大径で、欠円形孔183よりも若干小径の外側拡径鍔部321が形成され、また、外側拡径鍔部321の内方には、外側拡径鍔部321、ガイド孔182及び欠円形孔183よりも大径の内側拡径鍔部322が、外側拡径鍔部321に対し出力レバー18の厚さ分だけ軸方向に離間させて形成されている。
【0036】
連係ピン32の外側拡径鍔部321を出力レバー18の欠円形孔183に挿通し、この状態で、連係ピン32をガイド孔182側にスライドさせると、
図8に示すように、出力レバー18におけるガイド孔182の部分が、連係ピン32の外側拡径鍔部321と内側拡径鍔部322の対向面によって挟持される。これにより、連係ピン32は、出力レバー18から抜け止めされるとともに、ガイド孔182に沿って出力レバー18の枢軸28と直交する方向(出力レバー18の長手方向)に移動可能となる。
【0037】
リリースレバー19における駆動部材17側である後下端部には、軸孔191が設けられ、この軸孔191を枢軸28に嵌合することにより、出力レバー18の車外側においてリリースレバー19の後下端部が、枢軸28により上下方向に回動可能に支持されている(
図8参照)。なお、枢軸28への軸孔191の嵌合作業は、枢軸28の端部をベースプレート15の枢着部153に固定する前に行われる。
【0038】
リリースレバー19における出力レバー18のガイド孔182と重合する部分、すなわちリリースレバー19の長手方向のほぼ中央下部には、長手方向を向くとともに、枢軸28の反対方向である先端部方向に向かって開口する係合溝192が形成されている。この係合溝192に連係ピン32を摺動可能に嵌合することにより、リリースレバー19は、
図4に示す初期位置から
図5に示すリリース位置(コントロールユニット12のオープンレバーを、ラッチ解除位置までリリース作動させる位置)まで回動したあと、初期位置に復帰しうるように、出力レバー18に従動して枢軸28を中心として回動しうるようになっている。なお、上述したように、駆動部材17が
図4に示す初期位置にあるとき、駆動部材17の偏心カム部171が、出力レバー18の駆動端の回動軌跡から離間するようにしてあるので、リリースレバー19は、出力レバー18と共に初期位置とリリース位置との間を自由に回動することができる。
【0039】
係合溝192の長さは、出力レバー18に設けた長孔182の長さよりも若干短くしてある。これにより、詳細は後述するが、エマージェンシーレバー20の操作により、長孔182と係合溝192とに嵌合されている連係ピン32が、長孔182に沿って前端部方向に移動したとき、連係ピン32がリリースレバー19の係合溝192から離脱して、出力レバー18とリリースレバー19との連係状態が解除されるようになる(
図6、
図9参照)。
【0040】
リリースレバー19の上縁の中央部に突設された係止片193と、ベースプレート15の前上部に折曲形成された車内方向を向く係止片154には、引っ張りコイルばね33の一端と他端がそれぞれ係止されている。この引っ張りコイルばね33により、出力レバー18とリリースレバー19は、コントロールユニット12のラッチ解除用レバーをリリース作動させる前の初期位置(
図2、
図4に示す位置)に付勢されている。なお、この状態においては、リリースレバー19の先端上部に取付けられたストッパラバー34が、ベースプレート15の前上部のストッパ部155に当接することにより、それ以上、反時計方向へ回動するのが規制されるようになっている。
【0041】
リリースレバー19の先端部には、一端部がコントロールユニット12のラッチ解除用レバーに連結された操作力伝達部材13の他端部を連結するための連結部材35の下端部が、回動可能かつ着脱可能に取り付けられている。
【0042】
エマージェンシーレバー20は、前方に凸状に湾曲する側面視概ね弓形をなし、上端部に形成された軸孔201に車内側から挿入した、拡径頭部を有する支軸36の先端部を、ベースプレート15の前上部に、かしめによって固定することにより、エマージェンシーレバー20は、ベースプレート15とリリースレバー19間において、枢軸28と平行をなす支軸36を中心として前後方向に回動しうるようになっている。
【0043】
エマージェンシーレバー20の下部の屈曲部には、出力レバー18のガイド孔182とほぼ直角に交差する方向の円弧状の長孔202が形成され、この長孔202には、リリースレバー19の係合溝192を貫通する連係ピン32の車外側の端部が摺動可能に嵌合されている(
図8参照)。これにより、エマージェンシーレバー20は、連係ピン32を介して出力レバー18とリリースレバー19に連係され、かつ連係ピン32が長孔202に沿って移動することにより、出力レバー18とリリースレバー19の初期位置からリリース位置までの移動が許容される。また、エマージェンシーレバー20が支軸36まわりに妄りに回動するのも防止される。
【0044】
エマージェンシーレバー20の下端には、これを手動で回動させる際の指掛け部203が、車内側に向かって屈曲形成されている。エマージェンシーレバー20の上端部とベースプレート15には、それぞれ、ねじりコイルばね37の一端と他端が係止され、このねじりコイルばね37より、エマージェンシーレバー20は、支軸36を中心として時計方向、すなわち
図4に示す非操作位置に付勢されている。
【0045】
次に、リリースアクチュエータユニット14の作用について説明する。
コントロールユニット12に設けられたロック機構がアンロック状態にあるとき、車両の運転席に設けたスイッチやワイヤレスのリモコンスイッチ等を操作して、リリースアクチュエータユニット14における駆動ユニット16のモータ21を例えば正回転させると、ウォームホイール24の出力軸241に連結された駆動部材17が、
図4に示す初期位置から反時計方向に回転する。
【0046】
すると、駆動部材17における偏心カム部171の回転方向の一端部が、リリース位置検出用のリミットスイッチ27の作動アーム271に接触してリミットスイッチ27が作動することにより、モータ21が停止し、駆動部材17は、
図5に示すリリース位置まで回動して停止する。
【0047】
駆動部材17が反時計方向に回動すると、その駆動カム面172が出力レバー18のカラー31に接触することにより、出力レバー18は、ねじりコイルばね29の付勢力に抗して、
図4の初期位置から
図5に示すリリース位置まで、枢軸28を中心として時計方向に回動させられる。
【0048】
出力レバー18がリリース位置まで時計方向に回動すると、出力レバー18に連係ピン32を介して連係されているリリースレバー19が、引っ張りコイルばね33の付勢力に抗して、
図4の初期位置から
図5に示すリリース位置まで、枢軸28を中心として時計方向に回動させられる。なお、この際、連係ピン32は、エマージェンシーレバー20の長孔202に沿って下方に移動するのみであるので、リリースレバー19がリリース位置まで時計方向に回動しても、エマージェンシーレバー20が支軸36まわりに回動することはない。
【0049】
リリースレバー19が
図5に示すリリース位置まで時計方向に回動すると、リリースレバー19の先端部に操作力伝達部材13を介して連係されているコントロールユニット12のオープンレバーが、初期位置からリリース位置に作動させられ、オープンレバーに連係されたフロント全閉ラッチユニット7及びリヤ全閉ラッチユニット8のラッチ機構を自動的にリリース作動させて、ストライカとの噛合状態を解除することにより、ドア2の開きが可能となる。なお、フロント全閉ラッチユニット7及びリヤ全閉ラッチユニット8のラッチ機構がラッチ解除され、リミットスイッチ27が作動すると、駆動ユニット16のモータ21が逆回転し、駆動部材17、出力レバー18及びリリースレバー19は、
図4に示す初期位置に自動的に復帰する。駆動部材17が初期位置まで回動すると、初期位置検出用のリミットスイッチ26が作動して、モータ21が停止する。
【0050】
以上は、リリースアクチュエータユニット14が正常状態で作動した場合であるが、例えば、電気的または機械的なトラブルによりリリースアクチュエータユニット14の駆動ユニット16が故障し、モータ21が回転不能になったときには、次のような緊急措置で対処することができる。
【0051】
例えば、リリースレバー19が
図5に示すリリース位置まで回動したところで、モータ21が回転不能となった場合には、コントロールユニット12のオープンレバーがリリース位置に作動させられた状態に拘束されてしまうため、オープンレバーに連係されたフロント全閉ラッチユニット7及びリヤ全閉ラッチユニット8のラッチ機構も、ラッチ解除位置に保持されたままの状態となる。このようになると、ドア2を閉めても、ラッチ機構がストライカと噛み合わなくなるので、ドア2を全閉状態に保持することができなくなる。
【0052】
このような緊急事態が発生したときには、
図6に示すように、エマージェンシー機構を構成するエマージェンシーレバー20の下端部の指掛け部203を、前方の矢印方向に押動し、エマージェンシーレバー20を支軸36まわりに反時計方向に回動させる。なお、この操作は、リリースアクチュエータユニット14の取付部付近のドア2の室内トリムに装着したカバーを取り外し、ドア2のインナパネルに予め設けておいた開口部より手を差し込んで行うことができる。
【0053】
エマージェンシーレバー20を反時計方向に回動させると、
図9の断面図にも示すように、エマージェンシーレバー20の係合溝192に係脱可能に係合している連係ピン32が、出力レバー18に設けたガイド孔182に沿って係合溝192と直交する方向(枢軸28と反対方向)に移動することにより、連係ピン32がリリースレバー19の係合溝192より離脱する。これにより、出力レバー18とリリースレバー19との連係状態が解除され、出力レバー18に対しリリースレバー19が従動しなくなる。
【0054】
出力レバー18とリリースレバー19との連係状態が解除されると、
図7に示すように、連係ピン32がエマージェンシーレバー20の長孔202に沿って移動することにより、リリースレバー19のみが、引っ張りコイルばね33の付勢力により反時計方向に回動させられ、
図4と同じ初期位置まで復帰させられる。これにより、リリース位置に拘束されていたコントロールユニット12のオープンレバーも、初期位置に復帰させられ、ラッチ解除位置に保持されていたフロント全閉ラッチユニット7及びリヤ全閉ラッチユニット8のラッチ機構が、ストライカと噛合可能な状態に復帰し、ドア2を閉めた際にこれを全閉状態に保持可能となる。
【0055】
従って、リリースアクチュエータユニット14の故障現場において、このような緊急事態に速やかに対処することができ、ドア2を全閉状態に保持した状態で、車両を修理工場等まで安全に走行させることができる。なお、故障したリリースアクチュエータユニット14を新規なものと交換する場合は、ドアの室内トリムに装着したカバーを外して、リリースレバー19に着脱可能に取付けた連結部材35を操作力伝達部材13と共に取外し、リリースレバー19とコントロールユニット12のオープンレバーとの連係状態を解除したのち、ベースプレート15をドア2のインナパネル2bに固定しているボルトSを取外すことにより、リリースアクチュエータユニット14を、ユニット毎一体的に交換することが可能となり、交換作業を容易に行うことができる。
【0056】
上記のような駆動ユニット6の故障は、出力レバー18が初期位置からリリース位置へ回動する途中や、リリース位置から初期位置に復帰する途中段階においてモータ21が作動不能となったときにも起こりうるが、この場合にも、上記と同様の緊急措置で対処することができる。また、上述したように、モータ21の非作動時において駆動部材17が初期位置にあるときには、駆動部材17の駆動カム部171は、出力レバー18の駆動端の回動軌跡から離間しているので、リースレバー19が
図4に示す初期位置にあるときに、モータ21が回転不能となった場合には、出力レバー18とリリースレバー19及びリリースレバー19に連係されたコントロールユニット12のオープンレバーは自由に回動することができる。従って、ドア2を閉めれば、フロント全閉ラッチユニット7及びリヤ全閉ラッチユニット8のラッチ機構はストライカと噛合するので、ドア2を全閉状態に保持することが可能となる。また、リリースレバー19を手動操作でリリース位置に回動操作すれば、全閉状態にあるドア2を開くことも可能となる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、本実施形態に対して、例えば次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
【0058】
(i)コントロールユニット12を備えていないドア操作装置に適用する。この際には、リリースレバー19を、フロント全閉ラッチユニット7及びリヤ全閉ラッチユニット8におけるラッチ解除用のオープンレバーに連係する。
(ii)駆動部材17をセクタギヤとし、このセクタギヤに、出力レバー18の駆動端に設けた歯部を噛合させて、セクタギヤにより出力レバー18を駆動するか、出力レバー18における駆動ユニット16側の端部にセクタギヤを形成し、このセクタギヤを、駆動ユニット16のウォームホイール24に噛合させて、出力レバー18をウォームホイール24により直接駆動する。
(iii)上記実施形態とは反対に、リリースレバー19側にガイド孔182を、出力レバー18側に係合溝192をそれぞれ設ける。
(iv)本発明のドア操作装置を、スライドドア2に代えて、車両のスイング式のサイドドアやバックドア等に適用する。