【0009】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。本説明では、DTN技術で用いられている文言を幾つか用いている。通知情報は、バンドルやメッセージ等と呼ばれている。環境情報は、遅延耐性ネットワークを構築する範囲内に存在する個々の情報機器やクラスタの位置、フェリー台数、地図や通行制限を情報、シンク位置、など、構築された遅延耐性ネットワークのコンディションに関する情報群である。環境情報は、時々刻々と変化する特性があり、様々な方法で現状に沿うように追加される。
個々の情報転送装置は、通知情報を転送する際に、通知情報を届ける宛先までの経路が確定していない場合にも一次記憶保持すると共に、記憶している通知情報を自他の情報転送装置間で交換可能になった際に交換(転送)する仕組みを有する。
また、情報転送装置は、他のノードと情報交換をするための移動戦略と自装置が担当する移動範囲とを逐次導出して、自装置で導出したルールに則り運用されるように動作する。
一部ないし全てのノードが本発明に係る動作を行なうことで、遅延耐性ネットワーク全体として伝達遅延をリアルタイムに最適化を図れる。
また、個々の情報転送装置は、自装置が担当する移動範囲を、総移動距離や総移動時間などを変数として、情報転送装置間で負荷を平坦化することにより決定する。
すなわち、遅延耐性通信でセグメント間を接続する際に必要となるコストを変数として、相互の全体コストの平坦化探索を行えばよい。例えば、2台の情報転送装置の何れかが担当するノードがあった場合、そのノードの通信範囲を踏まえ、担当した際の自他の移動距離や移動時間で小さい方が、該ノードを担当する範囲に加える処理を実行すればよい。
なお、個々の情報転送装置間は、平坦化に使用する情報を環境情報として都度最新情報を通知し合うことが望ましい。
換言すれば、自他の情報転送装置についてコスト値を互いに得られるように動作しあい、その値が等しくなるように互いが担当する範囲を調整すればよい。その上で、個々の情報転送装置は、受け持つ担当範囲を周回する経路を移動戦略として導出する。
例えば、個々のコストの算定はそれぞれの情報転送装置が行なって環境情報と共に算定結果の値を交換してもよいし、算定に用いる評価関数や関連情報を隣接情報転送装置との間で通知しあってもよい。また、他の機器を介して、評価関数や評価関数を用いて算定した値を情報転送装置間で交換してもよい。個々の情報転送装置は、任意のタイミングや任意の位置で、担当範囲と移動戦略に策定を行えばよい。
また、個々の情報転送装置は、所定の情報機器に通知情報を収集することと、他の情報転送装置によって通知情報が収集されている情報機器に通知情報を取得及び転送することを行うように動作させてもよい。また、他の情報転送装置と待ち合わせて通知情報を交換してもよい。
移動戦略には、個々の情報転送装置が他の情報転送装置の担当範囲内で収集された通知情報を情報交換により保持した後に、該通知情報を自装置が受け持つ担当範囲の所定の機器に集積する経路を含めてもよい。
また、移動戦略として、他の情報転送装置が通知情報及び環境情報を集積する所定の機器との通信可能圏に移動して収集されている情報を取得する経路を含めてもよい。また、所定間隔や所定時間に所定の機器との通信可能圏に移動する移動戦略としてもよい。
まず、本発明を説明するために、まず本発明が有効に機能する状況を
図1及び
図2を参照して説明する。
図1に示されたクラスタと記載された丸印は、情報発信源がひとつまたは複数ある場所を意味する。換言すれば、クラスタとして扱う機器の集合である。情報発信源は、携帯電話、パソコン、防災機器などいろいろ考えられる。フェリー型DTN端末と示された三角印は、記憶部を有して移動しながら各クラスタからの通知情報を収取・伝達する情報転送端末である。
個々のクラスタの通知情報は、フェリー型DTN端末自身がクラスタ内を移動して個々の情報発信源から収集/分配してもよいが、本説明では、個々のクラスタ内に通知情報を集約/分配する端末K
i(iはクラスタ番号)を有することを前提に記載する。
フェリー型DTN端末は、端末K
iから各クラスタの通知情報を取得すると共に、他のクラスタで集めた通知情報を端末K
iに転送する。
クラスタ内の様々な情報機器は他のクラスタから発信された通知情報を端末K
iから分配されることで適切に取得する。このクラスタ内での通信方法は任意であり、一般的な通信方式を用いて通信してもよいし、DTN方式を用いて通信してもよい。
このような仕組みで、災害時などの常時接続が不可能となった環境において、情報伝達を可能にするためにDTNノードを運用させる状況を考える。
上記状況において、N台のフェリー型DTN端末が存在した場合にどのようにフェリー型DTN端末が移動すれば伝達遅延の側面から効率的かを考える。
上記のような常時接続が不可能な状況で重視される一つの事柄は通知情報の伝達遅延である。伝達遅延とは、通知情報が発生してから、宛先に届くまでの時間である。すべての通知情報の平均伝達遅延が減るほど不自由のない情報伝達に近づく。したがって、効率的なフェリー型DTN端末の運用手法は、全体の平均伝達遅延を少なくしたフェリー型DTN端末の情報伝達手法と換言できる。
最も単純なフェリー型DTN端末の運用方法は、ランダムな運用である。しかし、ランダムな運用は偶然任せであり、すべての情報がかならず伝達されるという保証もない。また、特許文献1に記載されているように、転送する通知情報の量が多くなりすぎる問題もネットワーク規模により生じる。
そこで、発明者は、上記したように、一部ないし全てのノードが本発明に係る動作を行なうことで、ネットワーク全体としても伝達遅延をリアルタイムに最適化できる情報転送装置の運用方法を考案した。
この情報転送装置の運用方法をフェリー型DTN端末に適用して、優れた蓄積運搬形転送手法を提供する。
図2は、実施形態にかかるフェリー型DTN端末の概略的移動方法例を示している。
各フェリー型DTN端末は、自律分散的に自端末が担当するエリア(以後、セグメントと呼ぶ)を有し、各セグメント内の全クラスタの通知情報を収集するように移動計画を導出する。
図2に示した説明図では、簡略化して4セグメントで全体の遅延耐性ネットワークを構築している。当然、各セグメントを合わせると、全フェリー型DTN端末で担当する全エリアとなる。
以下では、個々のフェリー型DTN端末が導出する自セグメントに属させるクラスタ群の割り振り方法(担当するクラスタ群の決定方法)を説明する。なお、セグメント内でフェリー型DTN端末の移動経路上に1ないし複数のクラスタが連続的に分布する経路を導出する前提を踏まえれば、担当範囲の割り当てと各クラスタの割り当てとを関連付けられる。
個々のセグメント間の情報交換は各フェリー型DTN端末の蓄積運搬転送によって実行されるが、それだけではセグメント間の情報交換が効率化されない。そこで、セグメント内のクラスタのどれかを、セグメント内の情報の集約点として設定する。この情報の集約点となるクラスタを、シンク(ノード)と呼ぶ。
まず、フェリー型DTN端末は、自装置が担当するセグメント内のクラスタから発生する情報をシンクに集める。そのときの集め方はいろいろ考えられる。シンクを起点にし、他のクラスタを最短経路で巡ってシンクに戻るようなトラベリング・セールスマン問題の解を使って求めた経路に則して移動を行っても良いし、非特許文献1に示されるように、クラスタとシンクを行き来する方法でもよい。
また、
図2の矢印で結ばれたシンク間は、フェリー型DTN端末が情報交換に訪れることを意味している。換言すれば、各フェリー型DTN端末は矢印で結ばれたシンク間を移動経路上に含むことを示している。
このようなセグメント内の情報収集の方法をとれば、シンクには、所定時間間隔でセグメント内の通知情報が全て集まることになり、セグメント間の情報交換は、自他セグメントのシンクを通して実施することができる。
換言すれば、ある時間間隔で、フェリー型DTN端末は他のセグメントのシンクに移動して、他のセグメントで収集された通知情報を取得すると共に、自装置が運搬してきた通知情報を転送することにより、セグメント間の情報伝達が達せられる。なお、この際に、フェリー型DTN端末は、遅延耐性通信によって先方セグメントの環境情報(必要に応じて、先方セグメントを介した他のセグメントの環境情報)も取得すればよい。
また、セグメント間がネットワークで連結されていれば、徐々に各セグメント内外の情報伝達が促進され、各々が情報伝達を繰り返すことにより、全体として通知情報が行き渡る。ただし、自セグメントから遠いセグメントの情報はリアルタイム性が低下しており、情報取得時点で状況が変化している可能性がある。従って、近接セグメントとの間で交換した環境情報のみを使って、担当範囲の割り当てを適切に行う自立分散処理が有益ともいえる。本発明の一つの特長である。
なお、セグメント内のシンクは、必ずしも1ノードに限定する必要はない。
フェリー型DTN端末は、他のすべてのセグメントのシンクに移動する必要性は必ずしもなく、最低限、近隣する1セグメントのシンクと情報伝達を図れば、ある時間間隔では、通知情報の伝達確率(宛先の情報端末に届く確率)が1にできる。
すなわち、すべての通知情報が宛先の情報端末に必ず伝達されることとなり、ランダムにフェリー型DTN端末を移動させる手法などに比べて信頼性が担保できる。
本発明は
図2に示した移動ルーチンを基本として用いる。この移動ルーチンでは、伝達遅延をより良く減らせるセグメント分け(フェリー間の担当エリア分け)を導出処理する。
環境情報として全てのクラスタの情報が得られており、使用できるフェリー型DTN端末の数が明らかで変化しなければ、組み合わせ最適化問題として、この問題を解くことを行なっても良い。他方で、クラスタ数、フェリー型DTN端末台数が増えると指数関数的に計算時間が増えるという問題もある。
また、運用する際に、大災害下などですべての環境情報を一元化することが収集や管埋の点で難しいことも考えられる。
時々刻々と変化する現場の状況を反映する形で、クラスタとして扱われる担当避難所の正しい割り振り(救援隊本部などの新規の割り振りを含む)、フェリー間の情報共有のタイミングを設定する情報処理は、組み合わせ最適化問題では難しい側面が大きい。
そこで、本発明では、遅延耐性ネットワークを構築するにあたり、その運用シチュエーションにより合致する形態に見詰め直し、環境情報を一元化して問題を解く中央集権的なアプローチを見直す。
例え、各フェリー型DTN端末が近隣のフェリー型DTN端末とのみ情報交換ができるという過酷な状況でも、セグメントの割り当てを好適に行う方策として、自律分散型のアプローチを用いると共に、局所的に収集できた環境情報で周囲の機器と協調動作を個々のフェリー型DTN端末が実施する。その結果として、ネットワークを構築する範囲内に存在する分散したリソースを良好に運用できる遅延耐性ネットワークを提供する。
以下では、震災下を想定して実施形態を説明する。考案した手法の処理の流れは以下のように説明できる。
まず、手法を詳説する前に、前提条件を説明する。
大災害下での動作を考えると、端末を一元管理している部署がフェリー型DTN端末の被災後の配備計画を即座に立案実行することは難しいので、避難所などに予め配備されたフェリー型DTN端末を用いて通知情報の収集交換を進めることが適切だと考える。
車が避難所にあれば、車にフェリー型DTN端末を搭載して車で巡回することも可能であるし、自律運行する移動手段をフェリー型DTN端末が有しても良い。また、何もなければ人力でフェリー型DTN端末を運びながら通知情報を集めることになる。
フェリー型DTN端末が存在した場所からフェリー型DTN端末が通知情報を集めに回るというシナリオが最も現実的であるので、そのような状況を想定して本実施形態を説明する。また、シンクを設けると共に、フェリー型DTN端末が存在した場所にシンクを設けることとする。
このようなシナリオでは、フェリー型DTN端末は自装置が存在した場所にあるシンクに通知情報を収集蓄積ように動作する。シンクは、フェリー型DTN端末との間で通知情報や環境情報の交換を行なうと共に、周囲に存在する情報端末と情報の交換を行なってもよい。
当然、複数の情報端末ではなく単一の情報端末も以下の説明でのクラスタに成りうる。しかし、クラスタは避難所や集落レベルの大きさで複数の情報端末の集合であるとしてしまった方が現実的であるので、今回はその想定で説明する。
考案するセグメント(担当範囲)分けの第1ステップは初期範囲の設定である。上述したような状況では、他のクラスタの存在位置がどこにあるか、他のセグメントのシンクの存在位置がどこかがわからない。最もシンプルにセグメント割り当ての初期値を設定する方法としては、フェリー型DTN端末が、シンクを中心に自装置の無線伝搬半径を勘案しながら、抜けがないように周囲をサーチしつつ任意の周期でシンクに収集した通知情報等を蓄積する行動計画を立案して、クラスタの存在位置、隣接セグメントのシンク位置などを順次特定して環境情報を収集する、という方法が考えられる。
上記サーチを行いながら、任意の周期で自身のシンクに戻り、自装置が識別したクラスタの存在位置等の環境情報と収集した通知情報をシンクに送信して蓄積する。シンクに通知情報等を転送後、再度サーチおよび情報収集に出発する。この行動計画に加え、隣接セグメントのシンクを発見した段階で、隣接セグメントの環境状況(隣接セグメントのクラスタ位置、担当範囲)を得たり、隣接セグメント内で収集された通知情報の受付、蓄積している自セグメント内で収集した通知情報の転送を実施する。また、クラスタのように固定的でない動的に移動するノードについて、通信可能となった際に適宜、環境情報や通知情報の交換を行うこととすればよい。
このような行動計画に則った移動と通信を繰り返した結果として、周囲の領域が自装置と隣接セグメントにカバーされていることを確認した後に、初期値の設定が完了したとする。この際、自装置がサーチにより新たに発見した何れのセグメントに属していないクラスタを初期値とする。
このようなサーチの行動計画例の概略図を
図3に示す。
図3に示すように、フェリー型DTN端末は、通信エリアを考慮して漏れがないように巡回しながらサーチ済み範囲を拡張して行けばよい。この手法は一例であり、いくつものサーチの手法が考えられるので、そのどのやり方をとっても構わない。
移動を伴うこととなるサーチは、一般的に時間を要するので、予めクラスタに成りうる候補の位置情報等を登録しておき、その情報をフェリー型DTN端末が使用することとすれば、短時間で初期値を決定することができる。また、その情報をベースに探索する移動を行なえば比較的短時間でサーチを完了する。
この前提は、被災地での使用という場合には、妥当な前提で、避難所候補の場所のいくつかにフェリー型DTN端末を予め配備しておき、自治体全域の避難所候補の場所をインプットしておけばよいからである。また、予めフェリー型DTN端末の担当クラスタなどの初期値を設定しておくことも可能である。このような設定を予め登録することにより、サーチ時間を大幅に省くことができる。
ただし、フェリー型DTN端末は、配備された避難所自体が被災することもある。また、避難所候補が避難所として運用されない場合なども想定される。このような状況も踏まえれば、サーチを行なう必要性は高い。あるセグメントを担当するフェリー型DTN端末が消失や故障することをも想定して、隣接セグメントのシンクや自装置が担当するクラスタの有無をサーチにより識別して、隣接セグメント、クラスタの状況を識別し、次の処理に入るのが望ましい。
隣接セグメントを担当するフェリー型DTN端末やシンクがない場合(動作不良を含む)は、それを識別したフェリー型DTN端末がとりあえず隣接セグメントも含めて担当するという操作が必要である。予め設定された初期値を実行に移す時に、隣接セグメントを含めるように補正して、その分布などを初期値として用いる。
上述のようなサーチ方法で、初期値とする現在の周囲のクラスタ位置、隣接セグメントのシンク位置がわかれば、次のステップに進む。
非特許文献1にも記載されているように、単一セグメントにおいてクラスタの情報を集約しようとした場合、フェリー型DTN端末の総移動距離をできるだけ少なくすることが様々な観点から望まれる。
その際、待ち行列理論を勘案して移動戦略を練るか否かなどで移動の仕方は変わるが、どの移動方法を採用しても、使用する移動方法において総移動距離が最小になるような移動戦略を立案することが望ましい。総移動距離には、地図情報などを利用して通行可能な移動ルートを用いることが望ましい。
本発明では、フェリー型DTN端末が隣接セグメントのクラスタ情報を得た場合、各々のフェリー型DTN端末は、各クラスタが自セグメントのシンクと隣接セグメントのシンクの何れに近いかを計算し、各クラスタにとってよりコスト的に近いシンクがあるセグメントに所属するように、セグメント間でクラスタの交換を行う。これが第2のステップである。このセグメントの交換により、フェリー型DTN端末間で受け持ちコストを移動できる。
これにより、初期値として暫定的に設定されたクラスタとセグメントの帰属関係を、フェリー型DTN端末群の全消費コスト(移動距離や移動時間など)ができるだけ少なくなる方向にネットワークを再構築できる。
第2ステップまで実施すれば、一見、系全体の総移動距離や総移動時間ができるだけ少なく済ませられ網構造に成るように考えられるので、全体的な伝達遅延が小さくなる。しかし、幾つか問題が残る。
第2ステップまでの処理では例えば
図4のような状況が発生する。
図4の左側のセグメントのように、シンクとの距離が近いクラスタが周囲にたくさんあるシンクを持つフェリー型DTN端末は担当クラスタが多くなる。他方で、
図4の右側のセグメントのように、近隣にクラスタが少ないシンクを持つフェリー型DTN端末は担当クラスタが少なくなる。
これでは、担当クラスタをすべて回ることに必要なコストについて、フェリー型DTN端末間でアンバランスが発生する。このアンバランスが、結果的に、遅延耐性ネットワーク全体での平均伝達遅延をより効率化させることへの障害と成っている。例えば、総移動距離が長いセグメントに存在する通知情報の伝達遅延が増えてしまうからである。
したがって、第3のステップは、セグメント間の総移動距離や総移動時間などの消費コストをバランスさせる処理を行う。換言すれば、受け持ちリソースによるコストの平坦化を図る。合わせて移動経路を定める。これは自律分散的にセグメント間の負荷分散を行う問題と考えることができる。
この処理を第2ステップと共に動的に繰り返し行う。
セグメント間の負荷分散は、発明者がすでに考案済みの自律分散的負荷分散の方法を応用できる。第3ステップで用いることができる凸関数を用いた自律分散型負荷分散制御手法は後に説明する。
凸関数を用いた自律分散型負荷分散制御手法では、要素がフェリー型DTN端末となり、フェリー型DTN端末の負荷は、担当するセグメントの総移動距離または総移動時間などである。従って、評価関数の横軸は総移動距離または総移動時間とする。
以下の説明では、便宜上、横軸は総移動距離として設定したとする。縦軸はフェリー型DTN端末の性能で設定できる。換言すれば、ネットワークを構築するフェリー型DTN端末の性能差を評価関数(凸関数)の最大値差として設定値することにより、性能差をネットワーク構築に利用できる。そのいくつかの設定例は実施例で説明する。
設定された評価関数の微分値を等しくするように時々刻々と制御を実施することにより、いずれ評価関数の縦軸が系全体として最大となるように導出された各フェリー型DTN端末の消費コストが求められる。
このようにして求められた各フェリー型DTN端末の消費コストは、個々の端末が担当すべき受け持ちリソースによるコストとなる。例えば、シンクやクラスタ間を移動する総移動距離となる。この総移動距離から、割り当てられるべきクラスタ、即ちコストからセグメント範囲が定まる。
上記事例で説明したように、離散的に存在する多くのクラスタの帰属関係そのものがセグメント範囲であるので、負荷分散の計算を行って算出された総移動距離等のコストのバランス値を達成するように、隣接セグメント同士がクラスタのやり取りを実施する。
具体例では、総移動距離を減らすべきセグメント(フェリー型DTN端末)が、総移動距離を増やすべき隣接セグメントに、自身に所属するクラスタのうち好適なものを渡せばよい。渡すという意味はクラスタの帰属関係を変えること、つまり、担当を変えるということである。
このように、凸関数による負荷分散制御を用い、各フェリー型DTN端末が隣接フェリー型DTN端末とあるタイミングでクラスタの帰属関係を変えていき、評価関数から導かれる好適な総移動距離に全体としてバランスしていくことで、系全体として自律分散的に好適なセグメント割り当てを達成する。帰属関係を変えるタイミングは、隣接フェリー型DTN端末と環境情報のやり取りで決定することとしてもよいし、予め定まった間隔で揃えて実行してもよい。また、受け渡しを行なう2端末間で、相互に了承を得て変更を実行することとしてもよい。
ここまでが第3ステップである。
このように第1ステップから第3ステップまでの網全体の制御を移行して行くことで、第2ステップまででは偏った状況になってしまう状況(
図4参照)でも、全体として好適なクラスタの割り当てが実現される。
上記の説明では、理解を促すため、フェリー型DTN端末が隣接シンクへ移動する距離を、総移動距離に含めていない態様の説明を行った。クラスタが非常に多い時は、隣接シンクへ移動する距離を無視しても影響は少ない。より正確な負荷分散を網として行なう場合には、隣接シンクに移動するような細かな距離なども算定の基準とするコストに含めることが望ましい。
以上の動作をまとめた概略的な処理シーケンスを
図5に示す。
図5では、遅延耐性ネットワーク全体の処理フェーズの移行の様子を示している。以下処理が自立分散で行われる。
各々のフェリーは、初期範囲を設定処理すると共に、少なくとも隣接セグメントの環境情報を取得する(Step1)。この際に、個々のフェリーは、隣接セグメントに従属しているクラスタの位置などを得る。
各々のフェリーは、隣接フェリーとの間で配置済みのクラスタ(初期配置若しくはStep3で分け合った配置)の受け渡しをコストに基づき図る(Step2)。なお、この処理フェーズを設けることで、網全体としての最適化が早く達成できる。
各々のフェリーは、隣接フェリーとの間で負荷平坦化処理に基づいたセグメント受け渡しにより担当範囲を定め、且つ定まった担当範囲を効率よく周回するルートを導出する(Step3)。
その後、通知情報の交換を行いつつ、Step2とStep3の処理を時間経過や新たな環境情報の取得に伴い順次繰り返す。
本情報伝達手法を使用することにより、時々刻々と変化する現場の状況に見合った動的なセグメントの割り当てが可能となり、また割り当った範囲を個々で効率的に巡ることで、全体として伝達遅延の最小化が図れる。
換言すれば、リアルタイムに現場の状況に合わせて各情報転送装置の担当範囲を最適化して、全範囲的に伝達遅延をリアルタイムに最適化を図る遅延耐性ネットワークを提供できる。
ここで、第3ステップで使用できる発明者がすでに考案済みの自律分散的負荷分散手法を簡単に説明する。
[自律分散型負荷分散制御]
発明者は過去に、複数の要素を自律分散的に制御して、全体最適な負荷分散を実施する手法を考案している。要素は、サーバ、発電機など様々な負荷分散を図りたい対象である。本発明では、フェリー型DTN端末が要素にあたる。
考案した自律分散的負荷分散の手法では、まず要素それぞれに要素の性能見合いの評価関数を設定する。評価関数の概略を
図6に示す。横軸は、各要素の状態に関するパラメータであり、縦軸は、何らかの効率、利潤、要素の性能、要素の優先度などに関わる指標である。サーバの負荷分散の例であれば、横軸はサーバの処理負荷量などに相当し、縦軸は、効率や、性能などの指標を割り当てる。この評価関数を凸関数で表す。
凸関数を使用することも本制御手法のポイントである。なぜなら、効率をはじめとする多くのシステムの指標は
図6に示すような凸関数で表されるからである。
図6のような上に凸な関数を凹関数と呼び、下に凸な関数を凸関数と呼ぶこともあるが、ここでは、関数の性質上で区別する表現を採用し、凹関数も凸関数と表現することにする。
評価関数が凸関数である複数の要素を連携させて、全体で最適化(各要素の評価関数の値の総和が最大となる状態)する問題は、「凸計画問題」として知られている。この問題は、各要素の動作レベルにおける評価関数の微分値が等しい状況で最適化が達成されることが数学的に明らかにされている。発明者が考案した負荷分散手法は、この原理を応用している。評価関数として凸関数を使用した理由は、数学的に証明されていることにもある。
この原理を勘案し、各要素の状態変化(サーバのケースでは負荷)を例えば以下の方程式(1)に従い制御する。
ここで、K
1は状態変更のゲインに相当する係数である。kは要素iに隣接する要素の番号を意味する。
この制御を自律分散的に個々の要素が行なうことで、各要素は評価関数の微分値を等しくするように状態を変更するように動作する。これは、全体利潤を最大化するポイントに各要素の状態(負荷量)を制御するのと等価である。つまり、式(1)の制御により、評価関数の縦軸で設定された効率が系全体として最大化される。
隣接要素が複数個有る場合は、順次式(1)の制御を繰り返せばよい。この数式は一例であって、ポイントは、各要素に設定された評価関数の微分値を等しい状態にするように、各要素の状態を決めて変更させることである。
上記負荷分散手法は、動作していることにメリットがない要素を停止する判断にも使用できる。
まず、要素自身と、その要素に隣接するノードの評価関数間にある指標を定義する。
図6は両指標を説明するため説明図である。
負荷が0のときに、評価関数が負の値を取っている例を示しているが、これは起動によりコストが発生することを意味している。ノードの運用開始時に発生するコスト例えば人的リソースを割り当ててもよいし、初期サーチに係るコストをこの値に組み込んでも良い。サーバのレスポンスを最適化するようなときは、縦軸がレスポンス関連量となり、負荷0のところでも評価関数は正の値を採用する。処理フェーズが進み、付加的コストが最小になったぐらいから個々のノードの評価関数を初期値0に近い若しくは0とした評価関数に交換してもよい。
負荷0において、評価関数は数学的に正負どちらでもとることは可能であるが、負の値をとる手法を踏まえておけば、正の値をとる場合はその一部として解くことができる。したがって、以下では、負荷0において、評価関数が負の値をとる汎用的なケースを説明する。
ノードi(自装置)のゼロクロス点をλ
0,i、隣接ノードjの評価関数における、ノードiのゼロクロス点と同じ傾きの点をz
ij、隣接ノードjの現在の負荷をλ
jとする。したがって、z
ijは以下の式(2)で書くことができる。
そして、ここで以下の指標を定義する。
この指標は、現在の隣接ノードの負荷(総和)が、自身のゼロクロス点よりどれだけ大きいかを意味している。もしノードiが停止しているとして、ノードiを運用すべき条件は、運用することでノードiがゼロクロス点以上の負荷を担当する状況にあるかどうかとなる。
この判別閾値を守れば、運用により網全体に対する利益があり、ノードiを起動することに不利はない。指標S
iはそれを数値化したものである。隣接ノードがノードiのゼロクロス点における評価関数微分値と等価なz
ijよりどれだけ負荷を担当しているかを示すのが右辺第1項であり、それからゼロクロス点λ
0,iを引くことで(右辺第2項)、自身のゼロクロス点以上の負荷が周りに存在しているかを示す指標となっている。
S
iが0より大きければ、ノードiを起動したときにいずれかの隣接ノードが担当していた負荷(クラスタ)はノードiが担当することになり、かつノードiの担当負荷はゼロクロス点以上となる。逆に、S
iが0より小さければ、ノードiが隣接ノードの担当負荷を新たに担っても、ゼロクロス点以下となり、ノードiの運用により利益を損なう。
指標S
iは、値の正負を判断することでノードiを運用すべきか停止すべきかも判断できる。S
iが負の際には、その時点でノードiの負荷は評価関数が負の値をとる領域にあるということで、運用している各ノードは評価関数が0以下になった時点で停止させればよい。このように指標S
iを使用して要素の運用・停止の判断をすることができる。
以上が、指標S
iを用いたフェリーとなるノードの運用判別方法である。以下で示す実施例で説明するようにノードの性能が大きく異なる場合には、運用しないで他のフェリー端末に任せてしまっても大差ないこととなる。
次に、実施例を示して本発明を説明する。
実施例は、本発明の有効性を確認するために初期配置をランダムに割り当てて、凸関数による評価関数を用いて各セグメントを受け持つフェリーが自律分散制御により担当するクラスタを良好に組み替ええるか否かを検証した。
図8は、検証に用いたシンクとクラスタの配置におけるセグメント割り当てを示す。黒丸がシンクであり、白抜きの丸がクラスタである。シンクは9台であり、対応するフェリー型DTN端末も9台である。
図8に示した各ノードの配置は、結果が判り易いように、最適なセグメントに分散された状態で、個々のセグメントに4つのクラスタが所属する配置とした。
初期配置がランダムな状態からスタートして、適正なセグメント割り当て(クラスタ割り当て)になるならば、現実に生じる多くの多彩な初期状態でも上記本発明により自律分散的な適正セグメント割り当てが可能であると云えるものと考える。
また、実施例の各シンク(セグメント)の隣接関係は、
図9に示したネットワーク構造を有することとした。図中で線が繋がっているシンク間は隣接関係を有する。換言すれば、図中で線が繋がっているシンク間のみフェリーが行き来するように動作する。なお、図中の数字は、シンク(セグメント)の通し番号である。
【実施例1】
【0010】
各フェリー型DTN端末には、通信手段、記憶手段、遅延耐性通信手段、などと共に、
図10に示す制御部100が搭載されている。制御部100は、遅延耐性通信手段を兼ねてもよい。この制御部100は、セグメント内および隣接セグメントのシンクとの情報交換をするための移動方針(スケジュール)を決定する移動戦略策定部110と、情報転送装置が担当するセグメント範囲(担当するクラスタ)を自他のフェリー型DTN端末間で分担して自装置が受け持つ担当範囲を相互の平坦化探索処理により決定する移動範囲決定部120を含む。自律移動させる構成とすれば、移動戦略策定部110が移動手段を制御する。
本実施例では、各フェリー型DTN端末に搭載される移動戦略策定部110に、担当クラスタとシンクを順次行き来する移動戦略アルゴリズムを搭載した。つまり、ある担当クラスタを訪れるたびに、一度シンクに戻り、情報をシンクに溜めていく。担当クラスタすべての情報をシンクに集めたら、次に自装置の隣接セグメントのシンクすべてを訪れる。
本実施例では、周辺サーチと隣接セグメント間での通知情報と環境情報の交換に関する一連の動作を1ターンの動作とする。この一連の動作を行った後に、各ノードの移動範囲決定部120は個々に、隣接セグメントから環境情報として得た隣接セグメントのクラスタ配置情報や評価関数から算定された値などを用いて、クラスタの帰属関係の更新(セグメントの範囲の変更)を実施する。移動範囲決定部110のアルゴリズムは、上記実施形態で述べた方式を使用した。すなわち、
図5に示したシーケンスを個々の制御部100が逐次実行する。以後、ターンを周期的に繰り返していくことで、徐々に最適なセグメント割り当てを自律分散的に形成する。
移動範囲決定部120で使用できる評価関数を以下で説明する。
セグメント間の総移動距離または総移動距離がセグメントの割り当てにとって重要な指標とできることは上述したとおりである。したがって、検証では、評価関数の横軸として、各セグメント(フェリー型DTN端末の担当範囲)内のクラスタ巡回1ターン分に必要な総移動距離を取ることとした。
今回のセグメント内の移動戦略は、クラスタとシンクを往復する行動モデルを採用する。このため、あるセグメントにおけるシンクiとクラスタjの移動距離をD
ijとすると、以下の式で表されるλ
iが巡回1ターン分に必要な総移動距離となる。本実施例では、このλ
iを制御部100で使用する評価関数として設定する。
縦軸に関しては、以下の考えを適用した。
各フェリー型DTN端末のある単位時間当たりの移動距離は、通知情報を集配する処理能力といえる。例えば、1日で移動できる移動距離はフェリー型DTN端末の1日の情報収集処理能力と換言できる。もちろん移動距離に関係する要素(道路環境など)を関数等で反映させることが望ましい。
情報収集処理能力が高いフェリー型DTN端末は、クラスタとシンク間の距離がどれも似たようなものであれば、1日でより多くのクラスタの情報を集めることができるので、処理能力の高いフェリー型DTN端末ほど担当クラスタを多くすることが可能である。当然、現実的にはクラスタとシンク間の距離にばらつきがあるので、実際にクラスタの割り当てを導出する際にはクラスタとシンク間のそれぞれの距離を反映して行なう。
以下に負荷分散において使用する評価関数の理論について説明する。
待ち行列理論から、単位時間当たり平均λ
iのポアソン分布で負荷が到着し、単位時間当たり平均μ
maxのポアソン分布で負荷を処理できるとすると(M/M/1の待ち行列)、系全体のレスポンスが最小となる条件は以下で示せる。
式(5)の左辺は負荷量λ
iの1次関数であり、λ
iで積分すればλ
iの2次関数が得られる。2次関数は凸関数であることが知られているから、式(5)の左辺を積分した関数を各ノードの評価関数と考えるならば、式(5)の意味は凸関数である評価関数の微分値が各ノードで等しくなるときレスポンスが最小になることを意味している。
すなわち、式(5)の左辺をλ
iで積分した関数を各ノードの評価関数として設定し、上記凸関数を用いた自律分散制御を行なわせれば、定常状態で、系全体のレスポンスを最小にできる。μ
maxは処理能力に関するパラメータであり、この値によりノードの処理能力を記述できる。従って、各ノードは全て同じ性能である必要はなく、様々な性能のノードが混在している系でも自律分散制御を行なわせられる。
式(5)の左辺をλ
iで積分した場合、定数の自由度だけ解が不定になるので、今回は原点(0,0)を通る凸関数を各ノードの評価関数として設定する。評価関数は、μ
maxで一意に決まり、ピーク値がμ
max1.5/2でピーク位置が(μ
max,0)の2次関数となる。
図11に示した凸関数は、各フェリー型DTN端末に設定した評価関数である。上記説明のように、μ
maxは各フェリー型DTN端末の一日で移動できる距離を設定した。本実施例では、基本的な動作を確認するために、μ
maxはすべて同じとした。この場合、評価関数の微分値を等しくする制御は、評価関数の形が同じなので、すべてのセグメントの総移動距離を等しくする制御となる。
図12に本発明の制御手法によるセグメント割り当ての動作検証結果を示す。シンクとクラスタを結ぶ点線は帰属関係を表し、担当範囲を示している。
図示されたターン毎の変移から明らかなように、最適な状態のセグメント割り当てに順次バランスして変化している。結果、3ターンで初期状態から最適な状態のセグメント割り当てに変化したことが判る。
最適化されたセグメント割り当てにおける通知情報の伝達遅延を求めたところ、最適化された状態では、初期状態の数分の1程度の伝達遅延時間に収まっていた。
なお、最適化された状態からクラスタを任意の位置に追加すると、周囲の担当範囲に吸収された後、網全体に追加されたクラスタの存在が波及する。
以上より、本実施例では、自律分散的に各フェリー型DTN端末の担当セグメントを最適化が行なえることをシミュレーション解析により明らかにした。これにより、大規模災害下で、一元的に被災地全体の情報を得ることができない環境下でも、自律分散的(自己組織化的)に遅延耐性ネットワークを構築する新たな手法として有益であることが確信できた。
【実施例2】
【0011】
本実施例では、フェリー型DTN端末が同じ移動能力ではなく、異なる移動能力を持っているときにどのような振る舞いをするかについて検証した。フェリー型DTN端末の構成は、実施例1で示した構成と同一であり、使用する評価関数の設定が異なる。
本実施例でも
図8に示した実施例1と同様のシンクとクラスタの配置を使用した。本実施例では、セグメント2のフェリー型DTN端末の移動能力を他の端末より2倍に設定した。評価関数は、実施例1と同様な
図11に示した凸形状を使用したが、セグメント2を受け持つフェリー型DTN端末に設定した評価関数のμ
maxだけを、他の端末の2倍の値に設定した。これにより、セグメント2の担当クラスタが増えた状態で網がバランスすることと成る。
図13に本実施例での最終動作結果を示す。初期値の状態は、実施例1と同様の配置を使用した。
図13では、制御が完了した最終状態のみ示してあるが、セグメント2で担当するクラスタが結果的に2クラスタ増えている。この最終状態での通知情報の伝達遅延を求めたところ、実施例1の最終状態と同じセグメント分けをした場合に比べ、1割程度改善が見られた。
この結果からもセグメント2を担当するフェリー型DTN端末の処理能力が2倍に設定したことによる処理能力向上が全体に波及したことが判る。
すなわち、フェリー型DTN端末の移動能力が異なる場合では、セグメントの移動距離や移動時間を同じにするようにバランスするよりも、フェリー型DTN端末の移動能力を勘案したセグメント分けが、網全体に対して有効に伝達遅延の短縮に寄与させることができることを確認できた。
以上より、本実施例では、自律分散的に各フェリー型DTN端末の担当セグメントを最適化する本手法が端末毎の能力に基づいて適切に網に影響を与え得ることをシミュレーション解析により明らかにした。換言すれば、本発明は、フェリー型DTN端末の移動能力を考慮して好適なセグメント分けが可能となることを明らかにした。これにより、実際の被災地でフェリー型DTN端末の移動能力が均一にならない環境下でも、自律分散的(自己組織化的)に遅延耐性ネットワークを構築する新たな手法として有益であることが確信できた。
[発明の他の実施の形態]
実施例1及び実施例2では、フェリー型DTN端末の評価関数に、サーバの処理能力に基づく負荷分散用評価関数と同等の
図11に示したような凸関数を設定した。本発明で設定できる評価関数はこれだけにとどまらず、例えば、以下のような観点で作成された評価関数を用いて平坦化処理を行っても良い。
大規模災害下では、車に残っているガソリンの量に見合った移動距離を設定した方が良い可能性がある。そのような場合は、ガソリンの量と移動能力を関連づけて評価関数として設定してもよい。あるいは、近隣のクラスタと頻繁にコミュニケートしたい際に、任意若しくは所定の他のセグメントの受け持ちコスト(負荷)を分担したくないなどの特別な要望もあるかもしれない。そのような状況であれば、そのセグメントの評価関数の絶対値を意図的に他のセグメントの評価関数の絶対値より下げておく、または制御からマスクする(本発明の制御対象外とする)などの施策をとると、他のセグメントの受け持ちコスト(負荷)を分担しなくてもすむようになる。このように、本発明では、現場の状況に応じて、適宜評価関数を定量的、定性的に設定することが事後的にもできるので、個々の現場の状況に見合った全体ネットワークを逐次最適化しながら形成できる。
本発明の情報伝達方法は、遅延耐性ネットワークを構築する地域全体の環境情報が取得できないような場合でも、ローカルな個々の端末が保持する環境情報に従って自律分散動作することで全体をバランスさせ得る。他方、小規模な災害範囲などで全体の環境情報を取得できる場合に、各環境情報を収集した後に中央ノードで、本発明の分散処理の演算を実施することもできる。演算後に、各ノードに演算結果を配備すればよい。この配備は、遅延耐性ネットワークの環境情報として伝播させることで実現してもよいし、他の方法でも可能である。また、自律分散的に動作している各ノードに評価関数を新たに一括的に付与することにも使用できる。この際、伝播させる環境情報に切り替える時間を記入して、全体で一括して切り替わることが望ましい。
尚、情報転送装置の各部は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせを用いて実現すればよい。ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせた形態では、RAMに本遅延耐性通信方式用プログラムが展開され、プログラムに基づいて制御部(CPU)等のハードウェアを動作させることによって、各部を各種手段として実現する。また、このプログラムは、記録媒体に固定的に記録されて頒布されても良い。当該記録媒体に記録されたプログラムは、有線、無線、又は記録媒体そのものを介して、メモリに読込まれ、制御部等を動作させる。尚、記録媒体を例示すれば、オプティカルディスクや磁気ディスク、半導体メモリ装置、ハードディスクなどが挙げられる。
上記実施の形態を別の表現で説明すれば、遅延耐性ネットワークを構築する情報転送装置を、RAMに展開された本遅延耐性通信方式用プログラムに基づき、担当範囲を導出処理する制御手段や、移動戦略策定手段など、として制御部を動作させることで実現することが可能である。また、このプログラムに通信手段等の他の構成を動作させるアルゴリズムが含まれていてもかまわない。
また、上記に実施形態や実施例の説明で示したブロック構成は例示であり、分離併合、手順の入れ替えなどの変更は本発明の趣旨および説明される機能を満たせば自由であり、下記説明が本発明を限定するものではない。
以上説明したように、本発明を適用した情報転送装置によれば、リアルタイムに現場の状況に合わせて各情報転送装置の担当範囲を最適化して、全範囲的に伝達遅延をリアルタイムに最適化を図る遅延耐性ネットワークを提供できる。
すなわち、本発明によれば、遅延耐性通信方式に関して、リアルタイムに現場の状況に合わせて各情報転送装置の担当範囲を最適化して、全範囲的に伝達遅延をリアルタイムに最適化を図る遅延耐性ネットワークおよび情報伝達手法を提供できる。また、この遅延耐性ネットワークを構築する情報転送装置およびプログラムを提供できる。
結果、本発明を使用すれば、大震災直後においても避難所間で様々な情報を迅速に共有することができるようになり、「情報の空白」を早急に改善できる可能性が高くなる。
本発明を用いれば、大規模災害下のような既存ネットワークが機能しない状況で、遅延耐性ネットワークを運用する際に、一時的に情報を記憶できる情報転送端末を有効利用して、地域の情報伝達をより迅速化できる。その際、遅延耐性ネットワークの構築を周辺の情報端末から取れる環境情報だけを利用しても行い得るように動作して、全体としての最適化を効率よく進められる。
既存ネットワークインフラの強化と共に、本発明にかかる遅延耐性ネットワーク構築に備えることで、情報通信ネットワークの耐災害性をより強化できる。
この出願は、2013年3月13日に出願された日本出願特願2013−050770号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。