【実施例】
【0047】
1.フェライト粒子の作製
〔実施例1〕
酸化鉄(Fe
2O
3)、酸化ニッケル(NiO)、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化銅(CuO)をモル比で44.9:16.7:33.4:5.1の割合で計量し、混合した。水を加えて粉砕し固形分50重量%のスラリーを作製した。作製されたスラリーをスプレードライヤーで造粒し、分級して平均粒径5μmの造粒物を作製した。
【0048】
次に、得られた造粒物をプロパン:酸素=10Nm
3/hr:35Nm
3/hrの可燃性ガス燃焼炎中に流速約40m/secの条件で溶射を行うことによりフェライト化し、続いて、空気給気による気流に乗せて搬送することによって大気中で急冷した。このとき、造粒物を連続的に流動させながら溶射したため、溶射・急冷後の粒子は互いに結着することなく独立していた。続いて、冷却された粒子を気流の下流側に設けたフィルターによって捕集した。このとき、粒径が大きい粒子は、気流の途中で落下したため、フィルターによって捕集されなかった。次に、捕集された粒子について、分級によって粒径が2000nmを超える粗粉を除去し、フェライト粒子を得た。すなわち、得られたフェライト粒子は、最大粒径が2000nm以下であった。表1に製造条件を示す。
【0049】
〔実施例2〕
本実施例では、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化亜鉛及び酸化銅をモル比で45.6:12.3:35.4:6.8とした以外は、実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。
【0050】
〔比較例1〕
本比較例では、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化亜鉛及び酸化銅をモル比で43.22:6.17:43.69:6.64として混合した以外は、実施例1と全く同一にして造粒物を得た。続いて、本比較例で得られた造粒物を用いた以外は、実施例1と全く同一にしてフェライト粒子を作製した。
【0051】
〔比較例2〕
本比較例では、まず、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化亜鉛及び酸化銅をモル比で70.0:12.0:15.0:3.0として混合した以外は、実施例1と全く同一にして造粒物を得た。続いて、得られた造粒物を匣鉢に収容し、電気炉で1200℃、4時間、酸素濃度0体積%の窒素雰囲気下で焼成してフェライト化することにより、匣鉢の形状に即した塊となった焼成物を得た。得られた焼成物を大気中で急冷し、冷却された焼成物を乳鉢で磨砕することによって粉砕し、フェライト粒子を作製した。
【0052】
〔比較例3〕
本比較例では、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化亜鉛及び酸化銅をモル比で44.9:16.7:38.0:5.1として混合した以外は、実施例1と全く同一にして造粒物を得た。続いて、本比較例で得られた造粒物を用い、実施例1と全く同一にして溶射した後に、冷却された粒子を気流に乗せることなく直接捕集した(全て捕集した)以外は、実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。
【0053】
〔比較例4〕
本比較例では、酸化鉄及び二酸化マンガン(MnO
2)をモル比で80:20として混合した以外は、実施例1と全く同一にして造粒物を得た。続いて、本比較例で得られた造粒物を用いた以外は、実施例1と全く同一にしてフェライト粒子を作製した。
【0054】
〔比較例5〕
本比較例では、酸化鉄、二酸化マンガン、酸化マグネシウム(MgO)及び酸化ストロンチウム(SrO)をモル比で50:40:10:1.25として混合した以外は、実施例1と全く同一にして造粒物を得た。続いて、本比較例で得られた造粒物を用いた以外は、実施例1と全く同一にしてフェライト粒子を作製した。
【0055】
【表1】
【0056】
2.塗膜作成用インクの調製及び樹脂成形体の作製
実施例1〜2及び比較例1〜5で得られたフェライト粒子をフィラーとして含有する樹脂成形体を作製するために、まず、次のようにして、当該フェライト粒子を含有する樹脂組成物としての塗膜作成用インクを調製した。
【0057】
実施例1〜2及び比較例1〜5のフェライト粒子をエポキシ系樹脂と混合し、塗膜作成用インクを調製した。塗膜作成用インクの調製は、フェライト粒子65重量部と、エポキシ系樹脂を樹脂固形分換算で12重量部と、トルエン48重量部とを混合し、ホモジナイザーを用いて分散させることによって行った。
【0058】
次に、得られた塗膜作成用インクを用い、ベーカー式アプリケーター(SA−201、テスター産業株式会社)によって、基材としてのPETフィルム或いはガラス板上に塗膜を形成した。塗膜厚さは4mil(101.6μm)とし、塗膜幅は10cmとした。その後、溶媒を乾燥させ樹脂を硬化させることにより、樹脂成形体としての樹脂フィルムを得た。
【0059】
3.フェライト粒子の評価方法
得られた実施例1〜2及び比較例1〜5のフェライト粒子について、化学分析を行うと共に、粉体特性(結晶形態、粒子形状、平均粒径、BET比表面積、表面偏析元素)、磁気特性(飽和磁化、残留磁化)及び電気特性(体積抵抗率)を評価した。各測定方法は以下のとおりである。結果を表2に示す。体積抵抗率は印加電圧200V及び1000Vにおける値を示す。
【0060】
(化学分析)
フェライト粒子における金属成分の含有量は、次のようにして測定した。まず、フェライト粒子0.2gを秤量し、純水60mLに1Nの塩酸20mL及び1Nの硝酸20mLを加えたものを加熱し、フェライト粒子を完全溶解させた水溶液を調製した。得られた水溶液をICP分析装置(ICPS−1000IV、株式会社島津製作所)にセットし、フェライト粒子における金属成分の含有量を測定した。なお、表2中の「<0.01」という記載は、測定誤差であるか、又は、原料や製造工程等に由来する不可避的不純物として存在することを意味している。
【0061】
(結晶形態)
フェライト粒子の結晶形態は、走査透過電子顕微鏡HD−2700 Cs−corrected STEM(株式会社日立ハイテクノロジー製)を用いて観察した。加速電圧は200kVとした。
図1に、実施例1のフェライト粒子のSTEM観察による二次電子像(倍率20万倍)の画像を示す。
【0062】
(粒子形状)
フェライト粒子の形状は、透過型電子顕微鏡HF−2100 Cold−FE−TEM(株式会社日立ハイテクノロジー製)を用いて観察した。加速電圧は200kVとした。
図2に、実施例1のフェライト粒子のTEM像(倍率20万倍)の画像を示す。
【0063】
(平均粒径)
実施例1〜2及び比較例2〜3のフェライト粒子については、水平フェレ径を平均粒径とした。比較例1、4〜5のフェライト粒子については、体積平均粒径を平均粒径とした。
【0064】
(水平フェレ径)
得られたフェライト粒子について、走査型電子顕微鏡FE−SEM(SU−8020、株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用いて倍率20万倍で撮影した。このとき、フェライト粒子を100粒子以上カウント可能な視野において撮影した。撮影したSEM画像をスキャナーで読み込み、画像解析ソフト(Image−Pro PLUS、メディアサイバネティクス(MEDIA CYBERNETICS)社)を用いて画像解析を行った。得られた各粒子の画像についてマニュアル測定によって各粒子の水平フェレ径を測定し、平均粒径とした。
【0065】
(体積平均粒径)
得られたフェライト粒子10gを、分散媒としての水80mLと共にビーカーにいれ、分散剤としてのヘキサメタリン酸ナトリウムを2〜3滴添加した。次いで、得られた溶液に対して、超音波ホモジナイザー(UH−150、株式会社エスエムテー)によって、出力レベル4で20秒間発振させることにより、溶液中にフェライト粒子を分散させた。次に、ビーカー表面に生じた泡を取り除いた後、固液分離し、フェライト粒子を回収した。回収したフェライト粒子について、マイクロトラック粒度分析計(Model9320−X100、日機装株式会社)を用いて体積平均粒径を測定した。
【0066】
(BET比表面積)
BET比表面積の測定は、比表面積測定装置(Macsorb HM model−1208、株式会社マウンテック)を用いて行った。まず、得られたフェライト粒子約10gを薬包紙に載せ、真空乾燥機で脱気して真空度が−0.1MPa以下であることを確認した後に、200℃で2時間加熱することにより、フェライト粒子の表面に付着している水分を除去した。続いて、水分が除去されたフェライト粒子を当該装置専用の標準サンプルセルに約0.5〜4g入れ、精密天秤で正確に秤量した。続いて、秤量したフェライト粒子を当該装置の測定ポートにセットして測定した。測定は1点法で行った。測定雰囲気は、温度10〜30℃、相対湿度20〜80%(結露なし)であった。
【0067】
(表面偏析元素)
フェライト粒子を上述の走査透過電子顕微鏡によって観察した像(STEM像)に対し、エネルギー分散型X線分析(EDX)を行った。分析には、EDAX Octane T Ultra W(AMETEK社製)を用いた。
図3に、実施例1のフェライト粒子のEDX分析結果を示す。
【0068】
(磁気特性)
磁気特性の測定は、振動試料型磁気測定装置(VSM−C7−10A、東英工業株式会社)を用いて行った。まず、得られたフェライト粒子を内径5mm、高さ2mmのセルに充填し、上記装置にセットした。上記装置において、磁場を印加し、5K・1000/4π・A/mまで掃引した。次いで、印加磁場を減少させ、記録紙上にヒステリシスカーブを作成した。このカーブにおいて、印加磁場が5K・1000/4π・A/mであるときの磁化を飽和磁化とし、印加磁場が0K・1000/4π・A/mであるときの磁化を残留磁化とした。
【0069】
(粉体抵抗)
粉体抵抗の測定は次のように行った。まず、断面積が4cm
2のフッ素樹脂製のシリンダーに高さ4mmとなるように試料(フェライト粒子)を充填した後、両端に電極を取り付け、さらにその上から1kgの分銅を乗せた状態とした。続いて、ケースレー社製6517A型絶縁抵抗測定器を用いて、上記電極に測定電圧(200V及び1000V)を印加し60秒後の電気抵抗を測定し、体積抵抗率を算出した。
【0070】
(透磁率)
透磁率の測定は、アジレントテクノロジー社製E4991A型RFインピーダンス/マテリアル・アナライザ 16454A磁性材料測定電極を用いて行った。まず、フェライト粒子9gとバインダー樹脂(Kynar301F:ポリフッ化ビニリデン)1gとを100ccのポリエチレン製容器に収容し、100rpmのボールミルで30分間撹拌して混合した。撹拌終了後、得られた混合物0.6g程度を、内径4.5mm、外径13mmのダイスに充填し、プレス機で40MPaの圧力で1分間加圧した。得られた成形体を熱風乾燥機によって温度140℃で2時間加熱硬化させることにより、測定用サンプルを得た。そして、測定用サンプルを測定装置にセットする共に、事前に測定しておいた測定用サンプルの外径、内径、高さを測定装置に入力した。測定は、振幅100mVとし、周波数1MHz〜3GHzの範囲を対数スケールで掃引し、複素透磁率の実部μ’を測定した。但し、周波数2GHzを超える周波数帯域では測定冶具の影響が大きく測定不能であった。得られたグラフを
図4に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
4.塗膜作製用インク及び樹脂フィルムの評価方法
実施例1〜2及び比較例1〜3で得られたフェライト粒子を用いた塗膜作成用インク、及び、当該塗膜作成用インクを用いて形成された樹脂成形体について、次のように評価した。結果を表3に示す。
【0073】
(分散性)
実施例1〜2及び比較例1〜5で得られたフェライト粒子を用いた塗膜作成用インクについて、撹拌の際に均一に分散するまでに要した時間から、フェライト粒子の樹脂組成物に対する分散性を評価した。表2中の各記号の意味は以下のとおりである。尚、均一に分散されたか否かの判定は、目視によって行った。
○:均一に分散するまでの撹拌時間が5分間未満。
△:均一に分散するまでの撹拌時間が5分間以上30分間未満。
×:均一に分散するまでの撹拌時間が30分間以上。
【0074】
(表面平滑性)
上記塗膜作成用インクを用いて形成された樹脂成形体について、マイクロメーターを使用して膜厚を測定した。測定は、位置を変えて9回行った。そして、最大膜厚を最小膜厚との差(最大膜厚−最小膜厚)を算出し、その差から樹脂成形体の表面平滑性を評価した。表2中の各記号の意味は以下のとおりである。
○:最大膜厚−最小膜厚=10μm以下。
△:最大膜厚−最小膜厚=10〜20μm。
×:最大膜厚−最小膜厚=20μm以上。
【表3】
【0075】
5.フェライト粒子の評価結果
図1に示すように、実施例1のフェライト粒子は多面体状の粒子形状を備えることが明らかである。
図2に示すように、実施例1のフェライト粒子の内部に結晶粒界が観察されないことから、実施例1のフェライト粒子は単結晶体であることが明らかである。表1に示すように、実施例1のフェライト粒子は、平均粒径が1〜2000nmの範囲内であった。また、実施例2のフェライト粒子についても、実施例1のフェライト粒子と同様の結果が得られた。
【0076】
表2に示すとおり、実施例1〜2のフェライト粒子は、金属成分がFe、Ni、Zn及びCuからなり、Niの含有量が5〜10重量%の範囲内であり、Znの含有量が15〜30重量%の範囲内であり、Cuの含有量が1〜5重量%の範囲内であり、Feの含有量が25〜45重量%の範囲内であった。実施例1及び実施例2のフェライト粒子に含まれるMn及びSrは、原料や製造工程等に由来する不可避的不純物であると考えられる。なお、実施例1〜2のフェライト粒子は、上述した金属以外の金属成分については検出限界以下であった。
【0077】
また、実施例1〜2のフェライト粒子は、飽和磁化が20Am
2/kg以上、残留磁化が5Am
2/kg以下であり、印加電圧200V及び1000Vにおける体積抵抗率が1×10
7Ω・cm以上であった。従って、実施例1〜2のフェライト粒子は、飽和磁化が高く、且つ、低印加電圧〜高印加電圧の範囲に亘って高い電気抵抗を安定して得ることができ、さらに、残留磁化が低いことが明らかである。
【0078】
図3は、実施例1のフェライト粒子のEDX分析結果を示すグラフである。横軸は粒子外表面から内部に向かって掃引された電子線の移動距離(単位:μm)を示し、縦軸は酸素、鉄、ニッケル、銅及び亜鉛の強度を示している。
図3の横軸0.004μm付近で各線が立ち上がっていることから、横軸0.004μm付近がフェライト粒子の表面に相当すると考えられる。
図3に示すように、亜鉛を示す線は、横軸が0.004〜0.006μmの範囲で強度が極大値を示し、0.006μm以上では強度が低下している。この結果から、フェライト粒子の外表面の亜鉛含有量は内部よりも多く、フェライト粒子の外表面から深さ0.002μmまでの領域に亜鉛が偏析していることが明らかである。また、銅を示す線は、横軸が0.004〜0.006μmの範囲で強度が極大値を示し、0.006μm以上では強度が低下している。この結果から、フェライト粒子の外表面の銅含有量は内部よりも多く、フェライト粒子の外表面から深さ0.002μmまでの領域に銅が偏析していることが明らかである。実施例2のフェライト粒子についても、
図3と同様の結果が得られた。
【0079】
一方、比較例1のフェライト粒子は、実施例1〜2のフェライト粒子と同様に、平均粒径が1〜2000nmの単結晶体であり、且つ多面体状の粒子形状を備えることが確認された。また、比較例1のフェライト粒子は、実施例1〜2のフェライト粒子と比較して、飽和磁化が低く、印加電圧200Vでの体積抵抗率が低かった。これは、比較例1では、実施例1〜2と比較して、鉄の含有量が小さく亜鉛の含有量が大きいことが原因であると考えられる。
【0080】
比較例2のフェライト粒子は、多面体の粒子形状を備えるが、実施例1〜2のフェライト粒子とは異なり、平均粒径が0.24μmと大きい多結晶体であることが確認された。これは、比較例2では、電気炉による焼成を行ったためであると考えられる。
【0081】
比較例3のフェライト粒子は、単結晶体からなる粒子と多結晶体からなる粒子が混在しており、実施例1〜2のフェライト粒子と比較して、平均粒径が大きかった。これは、比較例3では、溶射・冷却されたフェライト粒子を全て捕集したために、粒径が大きい粒子まで含まれることとなり、平均粒径が大きくなったと考えられる。
【0082】
Mn系フェライト粒子である比較例4のフェライト粒子は、実施例1〜2のフェライト粒子と同様に、平均粒径が1〜2000nmの単結晶体であったが、粒子形状が真球状であった。また、比較例4のフェライト粒子は、実施例1〜2のフェライト粒子と比較して、残留磁化が高く、印加電圧200V及び1000Vでの体積抵抗率が低かった。
【0083】
Mn−Mg系フェライト粒子である比較例5のフェライト粒子は、実施例1〜2のフェライト粒子と同様に、平均粒径が1〜2000nmの単結晶体であったが、粒子形状が真球状であった。また、比較例5のフェライト粒子は、実施例1〜2のフェライト粒子と比較して、残留磁化が高く、印加電圧1000Vでの体積抵抗率が低かった。
【0084】
図4に、実施例1及び比較例1の複素透磁率の実部μ’の周波数依存性を示すグラフを示す。
図4から、実施例1のフェライト粒子は、複素透磁率の実部μ’の値自体は低いものの、周波数変動が小さく1MHz〜2GHzの周波数帯域でほぼ一定の値を示すことが明らかである。一方、比較例1のフェライト粒子は、実施例1のフェライト粒子と同様に周波数変動が小さいものの、複素透磁率の実部μ’の値が実施例1よりも低いことが明らかである。
【0085】
6.塗膜作製用インク及び樹脂成形体の評価結果
表3に示すとおり、実施例1〜2のフェライト粒子は、樹脂組成物に対する分散性に優れていた。よって、実施例1〜2のフェライト粒子は、樹脂成形体を製造する際に優れた生産性を確保することができると考えられる。実施例1〜2のフェライト粒子が分散性に優れるのは、平均粒径が小さく、且つ、残留磁化が低いためであると考えられる。また、実施例1〜2のフェライト粒子を含む塗膜作製用インクは、表面の凹凸が小さく表面平滑性に優れる樹脂成形体を形成することができた。
【0086】
一方、比較例2〜3のフェライト粒子は、平均粒径が大きいために、樹脂組成物に対する分散性が低く、分散するまでに長時間を要した。また、比較例2のフェライト粒子を含む塗膜作成用インクは、塗膜化することができず、樹脂成形体を形成できなかった。比較例3のフェライト粒子を含む塗膜作成用インクは、表面の凹凸が大きくいびつな樹脂成形体となった。
【0087】
比較例4〜5のフェライト粒子は、残留磁化が高いために、粒子同士が凝集しやすく、分散するまでに長時間を要した。比較例4〜5のフェライト粒子を含む塗膜作成用インクは、表面の凹凸が小さく表面平滑性に優れる樹脂成形体を形成することができた。しかしながら、比較例4〜5のフェライト粒子は、塗膜作成用インクを調製する際に長時間を要することから、樹脂成形体を製造する際の生産性が低いと考えられる。
【0088】
以上の結果から、実施例1〜2のフェライト粒子は、高い飽和磁化と高い電気抵抗とを両立して備えると共に、樹脂組成物に対する分散性が高いことが明らかである。そして、実施例1〜2のフェライト粒子は、樹脂成形体を構成したときに優れた表面平滑性を備える樹脂成形体を構成できることが明らかである。