【課題を解決するための手段】
【0008】
<解決>
【0009】
本発明の課題は本発明の独立請求項の特徴によって解決される。
【0010】
本発明のさらなる好適な実施形態は、従属請求項に開示される。
【0011】
<さらなる先行技術>
【0012】
特許文献3から支持体、中間環及び、研磨環を有する研磨盤が公知である。中間環は支持体及び/又は研削環と貼着される。支持体は鋼盤又は鋼環から成る。研磨環は主にCBN(CBN=kubisches Bornitrid:立方晶窒化ホウ素)又はダイヤモンドから成る。研磨環と高硬質の支持体の間に、好適にCFK(CFK=Carbon-faserverstaerkter Kunststoff:炭素繊維強化プラスチック)から成る中間環が配置されている。
【0013】
<本発明の記載>
【0014】
新しい方法は、複数の歯が配置されている、又は配置される歯支持体及び繊維強化材料から成るベース体を有する鋸刃の製造に役立つ。歯支持体は大きさが1つの工程段階で縮小される凹部を有する。歯支持体は鋸刃の基体を形成するためにベース体と、凹部が閉鎖され、歯支持体及びベース体が同じ温度のとき、歯支持体がベース体に引張応力をかけるように接続される。
【0015】
本発明はさらに歯支持体及びベース体を有する鋸刃に関する。歯支持体には複数の歯が配置されている。歯支持体は凹部を有する。ベース体は繊維強化材料から成り、それは鋸刃の基体の形成のための歯支持体の凹部の大きさの縮小の下で、凹部が閉鎖し、歯支持体及びベース体が同じ温度のとき、歯支持体がベース体に引張応力をかけるように、歯支持体と接続する。
【0016】
本発明はさらに、複数の歯が配置され1つの凹部を有する、細長く形成された歯支持体を有する鋸刃に関する。鋸刃はさらに、鋸刃の基体を形成するために、凹部が閉鎖するように歯支持体と接続する、繊維強化材料から成るベース体を有する。
【0017】
本発明はさらに帯鋸を有する帯鋸機に関する。帯鋸は、複数の歯が配置され凹部を有する細長く形成された歯支持体を具備する。帯鋸はさらに、帯鋸の基体の形成のため、凹部が閉鎖するように歯支持体と接続する、繊維強化材料から成るベース体を有する。帯鋸機はそれを介して帯鋸が案内され回転駆動する2つの車輪を有する。そのとき車輪間の間隔は、歯支持体及び帯鋸のベース体が同じ温度のとき、歯支持体がベース体に引張応力をかけるように調節可能に形成される。
【0018】
<定義>
【0019】
鋸刃:鋸刃は本出願書において、細長い帯鋸、弓鋸刃、丸鋸刃又は鋸刃の他の可能な設計と理解される。
【0020】
歯支持体:歯支持体は本出願書において、鋸刃の歯が配置されている鋸刃の部分であると理解される。この文脈でしばしば鋸刃の「基体」という言葉も使われる。しかし「歯支持体」という概念の方が、それに歯が配置されるが、それ自体が歯を意味することはできない鋸刃の部分だということをよりよく表現する。そのとき、ここでは歯支持体と歯の間の作用上及び材質上の区別の間の相違が留意される。作用上、歯はその歯ベースと共に歯の土台の領域で始まる。しかしこの歯ベースはしばしば歯支持体と同じ材料から成り、これと一体的に形成される。別の言い方をすると、この材料の一部が歯支持体の役割を、別の部分が歯ベースの、及びそれによって歯の役割を果たす。そのとき材質的分離は、歯支持体から遠く離れて歯先の領域で初めて生じる。
【0021】
歯支持体の凹部:歯支持体の凹部は、縁部が閉じた、又は縁部が開いた凹部、開口部、孔又は凹所と理解される。そのときこの凹部は少なくとも部分的にベース体によって閉鎖される。歯支持体が、即ち例えば中心開口部を有する環であるとき、凹部はこの領域で環のこの開口部であると理解される。
【0022】
<さらなる説明>
【0023】
特に金属から成る歯支持体及び繊維強化材料から成るベース体を有する新しいハイブリッド鋸刃の場合、即ち歯支持体は、その凹部の大きさが縮小する特殊な方法で処理される。そのとき歯支持体の凹部が少なくとも部分的にベース体によって閉鎖された、鋸刃の完成した状態で、歯支持体はベース体に引張応力をかける。
【0024】
引張応力は、鋸刃の形状に悪影響を与えずに所望の剛性値が達成されるように選択される。引張応力が低すぎる場合、全体的に十分な構造剛性を有する基体にはならない。引張応力が高すぎる場合、基体の望ましくない歪みが生じる。引張応力は鋸刃の固有周波数挙動を減少させ、つまりその自然周波数が、それが切断の際に外から作用する周波数と一致せず、それによって共鳴が生じないように変化される。
【0025】
ハイブリッド構造により様々な材料の利点が互いに特別な方法で組み合わされる。歯支持体には適合する方法によって歯が配置されることができる。ベース体の繊維強化材料は卓越した剛性値、低質量及び同時に非常に良好な減衰特性を提供する。高剛性及び改善された減衰特性は新しい鋸刃での切断の際、従来技術に比較して低振動が結果として生じ、それによってよりよい軸方向の振れ(ランアウト)或いは直進が結果として生じる。これによって切断された切断
材料の表面品質が改善し、鋸刃の歯の摩耗は減少し、それによってその寿命が延びる。振動の減少により切断力及び騒音放出も減少する。鋸刃の回転質量が減少することにより切断の際のエネルギーの必要量も低減される。
【0026】
凹部の大きさの縮小はベース体と歯支持体間の温度差を得るための選択的熱処理によってもたらされることができる。特に歯支持体は、その直径及び特に内径が縮小されるように冷却される。そのときそれによって凹部の直径、或いは大きさが縮小される。このような方法は冷延伸とも呼ばれる。そのとき歯支持体は−5℃よりも低い温度、特に約−10℃と−20℃の間に達するように冷却されることができる。冷却は例えば液体窒素によって行われることができる。この収縮した位置で歯支持体は、冷却及び再加温終了後にも、その最初の大きさまで拡張できないように機械的に固定される。
【0027】
その後続いて歯支持体が繊維強化材料から成るベース体と固定的に接続され、固定を解除されたとき、歯支持体は上昇する温度によって再び拡張し、そのときベース体に引張応力をかける。この引張応力は繊維強化材料から成るベース体の正確な作用の仕方にとって特に重要である。なぜなら、このような繊維強化材料は引張には好適だが、押し及び曲げ荷重はできないか、又は限定的にのみしかできないためである。即ち予め設定された引張応力によって、外から鋸刃に作用する圧力があるときも、ベース体にさらに引張応力がかかることが保証される。
【0028】
ベース体の製造のために特に、その場合繊維が真空下で樹脂と共に密閉金型に浸透される、いわゆるRTM方法(RTM=R
esin Transfer Moulding:樹脂トランスファー成形)が適用される。重合プロセスを開始するために触媒が必要となる。そのような触媒は例えば上昇した硬化温度である。この温度は例えば約80℃から130℃の範囲でありうる。
【0029】
歯支持体の冷却の際、これはRTM型の中か、又はRTM型の外で冷却される。冷却後、歯支持体はRTM型の中でその状態で固定されるため、その凹部の拡大は上昇する温度によって阻止される。続いてベース体は歯支持体と接続され、歯支持体が拡張できることはなくベース体のマトリックス材料の重合が行われることができる。マトリックス材料の硬化、それと共に完了する歯支持体とベース体間の固定的接続、及び歯支持体の固定の解除の後、これは拡張し、それによってベース体の所望の引張応力を提供する。
【0030】
しかし代替的又は付加的に、マトリックス材料の硬化も温度上昇を介してではなく、重合を促進する適応した化学物質の使用によって達成できる。この物質は例えば溶剤でありうる。
【0031】
マトリックス材料の硬化のさらなる可能性として、マイクロ波処理又は紫外線処理によるものがある。
【0032】
代替的又は付加的に、凹部の大きさは歯支持体の加圧によって生じることができる。ここで歯支持体は例えば偏心ねじ又は油圧によって最小限に変形される。このとき変形は特に約0.01mmと0.05mmの間、好適には約0.03mmでありうる。そのときマトリックス材料の硬化過程の間、歯支持体はこの位置に固定される。マトリックス材料の完全な硬化及び固定解除後、それは再び拡張し、ベース体に所望の引張応力をかける。
【0033】
繊維強化材料は強化繊維及びマトリックス材料を有することができ、そのとき繊維はスクリムとして、特に準等方性組織が成形されるように、マトリックス材料の中に配置される。強化繊維は金属繊維、炭素繊維及び/又はプラスチック繊維であることができ、及び/又はマトリックス材料はプラスチック、セラミック及び/又は金属を有することができる。好適な実施形態では、繊維強化材料はCFK(CFK=Carbon-faserverstaerkter Kunststoff:炭素繊維強化プラスチック)である。
【0034】
ベース体は、複数のスクリムの間に歯支持体の固定ウェブが配置され、スクリム及びマトリックスが固定ウェブの開口部を通して互いに接続するように歯支持体と接続する、複数のスクリムを有することができる。このような方法でベース体と歯支持体の間の力的及び形状的に正しい接続が達成される。互いに組み合わされる複数のスクリムによって準等方性を有する繊維が生じる。そのときスクリム中の繊維は好適には等しく、及び異なるスクリム中では様々に配向される。スクリムは即ち特に一定の角度で回動し、重ね合わされる。
【0035】
そのとき歯支持体は外部に厚い歯部及び内部に薄い固定部を有することができる。そのとき歯部の半径方向幅は例えば約20mmであることができ、厚さは約1.5mmから5mm、特に約2.25mmであることができる。固定部は同様に約20mmの半径方向幅を有することができ、例えば歯部の厚さが2.25mmのとき厚さ約0.8mmの固定部があるように、好適には両側に段が付いている。
【0036】
鋸刃は丸鋸刃として、及び歯支持体は環状に形成されることができる。この場合環状の歯支持体の直径は縮小され、歯支持体はベース体に半径方向に引張応力をかける。丸鋸刃の直径は例えば約100mmから3000mmの間でありうる。その厚さは例えば約1mmから50mmの間でありうる。
【0037】
鋸刃が丸鋸刃として形成されるとき、それは円周に分布して配置される複数の凹部を有する。そのときこの凹部のそれぞれに1つのベース体が配置される。このような方法で3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ又はそれ以上のベース体が歯支持体と接続されることができる。
【0038】
歯支持体はつまり特にスポークのように形成されることができ、そのときスポークは金属で成形され、それらの間に凹部が配置される。そのとき凹部は繊維強化材料によって閉鎖される。
【0039】
しかし鋸刃は帯鋸としても、及び歯支持体は細長く形成されることができる。帯鋸の高さ(「帯幅」とも呼ばれる)は例えば約20mmから500mmであることができる。その厚さは例えば約0.5mmから10mmでありうる。
【0040】
歯支持体はそれぞれ歯の一部を成形する突起部を有し、そのとき突起部にはそれぞれ1つのねじ接続によって支持される、突起部の材料よりも硬質な材料から成る差し込みが配置される。しかし差し込みは、溶接、はんだ付け、接着、圧着又は嵌入又はピン接続によって突起部と接続されることもできる。差し込みは例えば高速度鋼、超硬合金、多結晶ダイヤモンド、セラミック又は立方晶窒化ホウ素から成りうる。
【0041】
歯支持体は、歯支持体の材料よりも硬質な材料から成る固定体を有することができる。これにより即ち歯支持体は、歯の確実な固定の可能性を失うことなく、比較的軟質及び低コストの材料から製造されることができる。
【0042】
しかし歯支持体、歯ベース及び歯は一体的に1つの金属、好適には高速度鋼によって製造されることもできる。
【0043】
さらに、鋸刃の丸鋸刃としての実施形態の場合、円環状の歯支持体上に、歯ベース及び刃先を含む歯を成形する円弧セグメントが固定される可能性がある。
【0044】
新しいハイブリッド鋸刃は特に良好に薄い歯鋸に適応する。なぜなら鋸刃の微小な厚さにも関わらず繊維強化材料の有利な性質によって必要な剛性が提供されるからである。そのような薄い鋸刃は特に厚さ1mmから4mm、好適には2.25mm又は1.75mmのそれである。
【0045】
細長い帯鋸として形成された本発明の鋸刃の場合、所望の引張応力は帯鋸の帯鋸機への挿設後に始めて達成される。そのため帯鋸機は互いに対する間隔が調整可能な2つの車輪を有する。それは大抵車輪の1つが定常でありもう1つが水平方向に移動可能に形成されることによって行われる。これによって間隔及び帯鋸にかかる引張応力が調節される。これは例えば約300N/mm
2である。そのときこの引張応力は歯支持体から繊維強化材料から成るベース体にも伝達されるため、これの中に所望の引張応力が長手方向にもたらされる。
【0046】
本発明の有利な展開形態は、特許請求の範囲、明細書、および図面から明らかになる。明細書序文中に挙げられた特徴、および複数の特徴の組合せの利点は単に例示的なものであり、代替的又は累積的に効果を表してもよく、その際、これらの利点が本発明による実施形態によって必ずしも達成される必要はない。これによって、添付の請求項の主題が変更されることなく、出願時の出願書類および特許の開示内容に関しては次の通りである:さらなる特徴は、図面(特に複数の構造要素の図示された形状および相対寸法、ならびにそれらの相対配置および作用結合)から読み取れる。本発明の異なる実施形態の特徴、又は異なる請求項の特徴の組合せが同様に、請求項の選択された引用との逸脱も可能であり、当該組み合わせによって示唆される。このことは、別個の図面に示されているか、又はこれらの図面の説明に挙げられた特徴にも関する。これらの特徴は、異なる請求項の特徴と組み合わせることもできる。同様に、特許請求の範囲に記載された本発明の他の実施形態に係る特徴が省略されてもよい。
【0047】
請求項および明細書に挙げられた特徴は、その数に関して、まさにその数又は挙げられた数よりも大きい数が存在することと解されるべきである。その際に、「少なくとも」という副詞の明示的な使用は必要でない。すなわち、例えば凹部のことが問題である場合、これは、正確に1つの凹部、2つの凹部、又はそれ以上の凹部が存在し得ると解されるべきである。これらの特徴に別の特徴が補足されてもよいし、それぞれの鋸刃をなす特徴だけであってもよい。
【0048】
請求項に含まれる参照符号は、請求項により保護される対象の範囲を限定するものではない。これらの参照符号は、請求項を容易に理解する目的で用いられるにすぎない。
【0049】
以下、図に示された好ましい実施例をもとにして本発明を詳しく説明および記載する。