特許第6393965号(P6393965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393965
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】排水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20060101AFI20180913BHJP
   C02F 1/20 20060101ALI20180913BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20180913BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20180913BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20180913BHJP
   F23G 7/04 20060101ALN20180913BHJP
【FI】
   C02F1/28 DZAB
   C02F1/28 E
   C02F1/20 A
   B01J20/18 B
   B01J20/20 B
   B01J20/34 B
   B01J20/34 F
   C02F1/28 F
   B01J20/20 D
   !F23G7/04 601M
   !F23G7/04 603D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-170328(P2013-170328)
(22)【出願日】2013年8月20日
(65)【公開番号】特開2014-217833(P2014-217833A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年7月22日
(31)【優先権主張番号】特願2013-83906(P2013-83906)
(32)【優先日】2013年4月12日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 勉
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−130216(JP,A)
【文献】 特開2012−040479(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0096850(US,A1)
【文献】 特開2012−055821(JP,A)
【文献】 特開2012−035232(JP,A)
【文献】 特開平07−308660(JP,A)
【文献】 特開2005−046688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28
B01J 20/18
B01J 20/20
B01J 20/34
C02F 1/20
F23G 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物質を含有する排水から有機物質を除去することで前記排水を清浄化する排水処理システムであって、
有機物質を含有する処理水を接触させることで有機物質を吸着し、水蒸気を接触させることで吸着した有機物質を脱着する吸着素子を含み、前記吸着素子に有機物質を含有する排水を供給することで有機物質を前記吸着素子に吸着させて処理排水として排出し、前記吸着素子に水蒸気を供給することで吸着した有機物質を前記吸着素子から脱着させて、前記有機物質を含有する排水中の有機物質濃度よりも高濃度の脱着された有機物質と水蒸気とを含有する脱着ガスを排出する濃縮装置と、
前記濃縮装置に接続され、前記脱着ガスを導入することで前記脱着ガスに含有する有機物質を揮発除去し、曝気処理水を排出し、前記揮発除去した有機物質を含む曝気ガスを排出させる曝気装置と、
前記曝気装置から排出される有機物質を含む曝気ガスを燃焼して有機物質を酸化分解して清浄ガスを排出する燃焼装置を備え、
前記濃縮装置は、前記吸着素子の脱着処理が完了した部分を吸着処理を行なう部分に移行させるとともに、前記吸着素子の吸着処理が完了した部分を脱着処理を行なう部分に移行させることで連続的に処理水を処理可能な装置であり、かつ、吸着処理と脱着処理との間に、水蒸気を使用して前記吸着素子に付着した水分を除去して除去排水として排出する脱水処理を実行し、該除去排水を当該濃縮装置に再度供給させるとともに、前記脱水処理での前記吸着素子の水蒸気による加温後に前記脱着処理へ移行する装置である、
ことを特徴とする排水処理システム。
【請求項2】
前記吸着素子が、活性炭、活性炭素繊維およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1の部材を含んでいる請求項1に記載の排水処理システム。
【請求項3】
前記曝気装置において排出された曝気処理水が、前記濃縮装置に再度供給されるように構成された請求項1または2に記載の排水処理システム。
【請求項4】
前記濃縮装置から排出された脱着された有機物質と水蒸気を含有する脱着ガスが、液化凝縮され、濃縮水として前記曝気装置へ供給されるように構成された請求項1から3のいずれか1項に記載の排水処理システム。
【請求項5】
前記燃焼装置から排出される清浄ガスを熱交換し、前記濃縮装置に供給される水蒸気の温度を上げるように構成された請求項1から4のいずれか1項に記載の排水処理システム。
【請求項6】
前記燃焼装置から排出される清浄ガスを熱交換し、前記曝気装置に供給されるガスの温度を上げるように構成された請求項1から5のいずれか1項に記載の排水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物質を含有する排水から有機物質を除去することで当該排水を正常化する排水処理システムに関し、特に、各種工場や研究施設等から排出される有機物質を含有する産業排水から有機物質を効率的に除去することで当該産業排水を清浄化する排水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水中から有機物質の除去方法として、曝気装置が広く知られている。この処理方法は、排水へ空気などのガスを導入して排水と接触させ、さらに必要に応じて曝気装置内を加温させることで、排水中の有機物質を揮発させて排水中から除去させる装置である。
【0003】
曝気装置の有機物質除去の原理は、有機物質の沸点や蒸気圧などの物性によって除去効率が決定される。例えば一定の曝気風量および温度条件のもとでは、図1に示すように、曝気時間が長時間になる程(排水中の有機物質濃度が低くなる程)、排水中の有機物質濃度の低減率が低下することが知られている。したがって、高効率(例えば、99%以上の除去効率)に有機物質を除去させる場合や低濃度の有機物質含有排水から有機物質を除去させる場合、装置の大型化やランニングコストが増大する問題であった。
【0004】
一方、吸着材を用いて吸着による有機物質の除去(吸着工程)と吸着材の再生(脱着工程)を交互に行うことにより高効率で安定的に除去できる水処理装置が検討されている(例えば、特許文献1)。この水処理装置は、水の連続浄化を実現し、基本的には吸着材の交換が必要なく、有機物質を高効率で安定的に除去することができる。
【0005】
活性炭素繊維を吸着材として使用した場合、活性炭素繊維は吸着速度が速いので、特に上述の低濃度の有機物質含有排水処理においても高効率に有機物質を除去できる特性をもつことが一般的に知られている。また、前記水処理装置において、吸着除去された有機物質は、再生時に吸着材から脱離され、有機物質を含んだガス(脱着ガス)として排出され、燃焼装置で二次処理することで、有機物質が分解、無害化され排水処理が完結する(例えば、特許文献2)。
【0006】
燃焼装置の装置サイズやランニングコストは、一般的には被処理ガスが低風量で有機物質濃度が高濃度である程、小型で経済的な燃焼装置を提供できる。よって、前記水処理装置から排出される脱着ガスをより低風量化できれば、燃焼装置が小型化され、より効率的な排水処理システムを提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−55712号公報
【特許文献2】特開2006−55713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記技術の課題を背景になされたもので、有機物質を低コスト、高効率で安定的に除去できると共に、有機物質を含むガス風量を小さくして、燃焼装置をより小型化した排水処理システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、ついに本発明を完成するに到った。即ち本発明は、以下の通りである。
(1)有機物質を含有する排水から有機物質を除去することで前記排水を清浄化する排水処理システムであって、
有機物質を含有する処理水を接触させることで有機物質を吸着し、水蒸気を接触させることで吸着した有機物質を脱着する吸着素子を含み、前記吸着素子に有機物質を含有する排水を供給することで有機物質を前記吸着素子に吸着させて処理排水として排出し、前記吸着素子に水蒸気を供給することで吸着した有機物質を前記吸着素子から脱着させて、前記有機物質を含有する排水中の有機物質濃度よりも高濃度の脱着された有機物質と水蒸気を含有する脱着ガスを排出する濃縮装置と、
前記濃縮装置に接続され、前記脱着ガスを導入することで前記脱着ガスに含有する有機物質を揮発除去し、曝気処理水を排出し、前記揮発除去した有機物質を含む曝気ガスを排出させる曝気装置と、
前記曝気装置から排出される有機物質を含む曝気ガスを燃焼して有機物質を酸化分解して清浄ガスを排出する燃焼装置を備え、
前記濃縮装置は、前記吸着素子の脱着処理が完了した部分を吸着処理を行なう部分に移行させるとともに、前記吸着素子の吸着処理が完了した部分を脱着処理を行なう部分に移行させることで連続的に処理水を処理可能な装置である、
ことを特徴とする排水処理システム。
(2)前記濃縮装置は、前記吸着素子に付着した余剰の前記有機物質を含有する排水を除去して、これを除去排水として排出する(1)に記載の排水処理システム。
(3)前記吸着素子に付着した余剰の前記有機物質を含有する排水の除去に水蒸気を使用する(2)に記載の排水処理システム。
(4)前記濃縮装置から排出された除去排水が、前記濃縮装置に再度供給されるように構成された(2)または(3)に記載の排水処理システム。
(5)前記吸着素子が、活性炭、活性炭素繊維およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1の部材を含んでいる(1)から(4)のいずれかに記載の排水処理システム。(6)前記曝気装置において排出された曝気処理水が、前記濃縮装置に再度供給されるように構成された(1)から(5)のいずれかに記載の排水処理システム。
(7)前記濃縮装置から排出された脱着された有機物質と水蒸気を含有する脱着ガスが、液化凝縮され、濃縮水として前記曝気装置へ供給されるように構成された(1)から(6)のいずれかに記載の排水処理システム。
(8)前記燃焼装置から排出される清浄ガスを熱交換し、前記濃縮装置に供給される水蒸気の温度を上げるように構成された(1)から(7)のいずれかに記載の排水処理システム。
(9)前記燃焼装置から排出される清浄ガスを熱交換し、前記曝気装置に供給されるガスの温度を上げるように構成された(1)から(8)のいずれかに記載の排水処理システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明による排水処理システムは、濃縮装置にて、基本的に吸着材の交換の必要が無く、排水中の有機物質を高い効率で連続的に除去するとともに、排水を減容化および有機物質濃度の濃縮された水(濃縮水)を回収して、曝気処理させることで、低風量で効率良く有機物質を揮発させることができるので、燃焼装置をより小型化でき、低コストで効率的に排水処理ができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一定の曝気風量および温度条件における曝気時間に対する排水中の有機物質濃度の関係を表した図である。
図2】本発明の実施の形態における排水処理システムのシステム構成図の一例である。
図3】本発明の実施に使用できる濃縮装置の構成図の一例である。
図4】本発明の実施の形態における排水処理システムのシステム構成図の一例である。
図5】本発明の実施に使用できる燃焼装置の構成図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す図の実施の形態においては、同一または対応する部分については、適宜省略し、その説明についても繰り返さないことにする。
【0013】
図2は、本発明の実施の形態における排水処理システムのシステム構成図の1つである。図2に示すように、本実施の形態における排水処理システムは、濃縮装置100と、曝気装置200と、燃焼装置300とを主として備えている。
【0014】
濃縮装置100は、吸着素子としての吸着材111、121がそれぞれ収容された第1処理槽110および第2処理槽120を有している。吸着材111、121は、排水を接触させることで排水に含有される有機物質を吸着する。したがって、濃縮装置100においては、吸着材111、121に排水を供給することで有機物質が吸着材111、121によって吸着され、これにより排水が清浄化されて処理水として排出されることになる。吸着材111、121は、供給される排水よりも少ない量の水蒸気を接触させることで吸着した有機物質が脱着される。第1処理層110および第2処理層120から排出される脱着された有機物質と水蒸気を含有する脱着ガスは、凝縮器130を付帯させずに脱着ガスとして装置外に排出されるか、あるいは凝縮器130によって冷却凝縮されて、濃縮水として装置外へ排出される。以下、濃縮水を排出した場合で説明するが、脱着ガスの場合においても同様の装置構成で良い。
【0015】
第1処理槽110および第2処理槽120には、排水(原水)の供給ライン、処理水の排出ライン、水蒸気の供給ライン、濃縮水の排出ラインの配管が接続されており、各ラインにはバルブ等を用いて各処理槽に対して接続/非接続状態に切替えられる流路切替手段が接続された構成となっている。第1処理槽110と第2処理槽120とは、上述したバルブの開閉を操作することによって、交互に吸着槽および脱着槽として機能する。第1処理槽110が吸着槽として機能している場合には、第2処理槽120は脱着槽として機能する。具体的には、排水(原水)が第1処理槽110へ供給され、処理水が第1処理槽110から排出されるように流路が確保される場合は、第2処理槽120は水蒸気が供給され、濃縮水が第2処理槽120から排出される流路構成となる。本実施の形態における濃縮装置100においては、吸着槽と脱着槽とが経時的に交互に切り替わるように構成されている。
【0016】
濃縮装置100は、図3に示す装置構成とし、吸着槽から脱着槽に切替わった際に、吸着材111、121に付着する水分を除去(脱水)して除去排水として排出してから、水蒸気供給による脱着を開始する装置の方が好ましい。吸着材111、121の付着水を事前に除去してから水蒸気脱着を行う方が、濃縮水量を減容化でき濃縮倍率を高めることができるからである。付着水の除去手段は、自重抜き、圧縮空気・窒素・水蒸気などの高圧ガスでの高速パージ、真空ポンプなどを用いた吸引などの手段が使用できるが、水蒸気による高速パージが好ましい。付着水の除去手段を別途付帯する必要がなく、高効率に付着水を除去でき、加えて吸着槽が加温されるため、濃縮倍率および脱着効率が高まるからである。なお、脱水に使用した水蒸気は付着水と接触した際に液化凝縮され、除去排水の一部となる。
【0017】
また、除去排水は濃縮装置100に再度供給されるように構成される方が好ましい。除去排水を他の排水処理装置で別途処理する必要がなくなるからである。
【0018】
吸着材111、121は、活性炭、活性炭素繊維またはゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1の部材を含むことが好ましい。吸着材111、121としては、粒状、粒体状、ハニカム状等の活性炭やゼオライトが利用されるが、活性炭素繊維を利用することがより好ましい。活性炭素繊維は、表面にミクロ孔を有する繊維状構造を有しているため、水との接触効率が高く、特に水中の有機物質の吸着速度が速くなり、他の吸着材に比べて極めて高い吸着効率を実現できる部材である。
【0019】
吸着材111、121として利用可能な活性炭素繊維の物性は、特に限定されるものではないが、BET比表面積が700〜2000m/g、全細孔容積が0.4〜0.9cm/g、平均細孔径が17〜18Åのものが好ましい。これは、BET比表面積が700m/g未満、細孔容積が0.4m/g未満、平均細孔径が17Å未満のものでは、有機物質の吸着量が低くなるためであり、またBET比表面積が2000m/gを超え、全細孔容積が0.9m/gを超え、平均細孔径が18Åを超えるのものでは、細孔径が大きくなるため分子量の小さな物質等の吸着能力が低下したり、強度が弱くなったり、素材のコストが高くなって経済的に不利になったりするためである。
【0020】
濃縮装置の脱着媒体である水蒸気の蒸気圧、温度等は特に限定しないが、使用する吸着材の耐熱温度や物性などに応じて適宜設定すれば良い。ただし、濃縮装置に供給する排水の質量よりも少ない質量の水蒸気により脱着することが必要である。水蒸気の質量の方が多い場合、有機物質が濃縮されず、排水中の有機物質濃度よりも高濃度の有機物質を含有する濃縮水が得られない。
【0021】
曝気装置200は、濃縮装置100から排出された脱着ガス、あるいは濃縮水を処理するための装置であり、曝気槽210と曝気槽210へ気泡ガスを供給するガス供給器220を有している。濃縮水の場合は曝気槽210へ供給され、ガス供給器220から発生する気泡と接触し、濃縮水中の有機物質がガスへ移行することで揮発除去されて処理水と、有機物質を含んだ曝気ガスを排出する。脱着ガスの場合は、供給された脱着ガスが曝気槽210内の水と接触することで直接液化凝縮される。運転当初は、予め浄水や水道水などの水を曝気槽210内に貯めておくなどすれば良い。
【0022】
曝気装置200から排出された処理水は、濃縮装置の処理水と混合して排出させても良いが、図4に示す通り、濃縮装置100に再度供給されるように構成した方がより好ましい。上述記載の通り、高効率(例えば、99%以上の除去効率)に有機物質を除去させる場合は、曝気装置200の除去効率を高めるよりも、濃縮装置100にて吸着処理した方が効率的であるからである。曝気装置200の処理水は、濃縮装置100へ供給される排水と同等の有機物質濃度まで除去できる処理効率で良く、高除去効率に処理する必要はない。
【0023】
燃焼装置300は、曝気装置200から排出された曝気ガスを処理するための装置であり、熱交換器310と加熱炉320とを備えている。曝気ガスは熱交換器310にて熱交換により予熱され、加熱炉320にて所定温度にてガス中の有機物質を酸化分解することで清浄化された処理ガスを排出する。処理ガスは熱交換器310を通過して曝気ガスと熱交換された後、装置外へ排出される。
【0024】
燃焼装置300としては、特にその種類が限定されるものではないが、例えば曝気ガスを650〜800℃の高温で直接的に酸化分解させる直接燃焼装置や、白金触媒等を利用して曝気ガスを触媒酸化反応させて酸化分解する触媒燃焼装置、蓄熱体を利用して熱回収を行ないつつ経済的に直接酸化分解を行なう蓄熱式直接燃焼装置、白金触媒等と蓄熱体とを組み合わせて効率的に曝気ガスを触媒酸化反応させて酸化分解する蓄熱式触媒燃焼装置等を使用することが可能である。燃焼装置300を用いて曝気ガスを酸化分解させることにより、有機物質は完全に除去される。
【0025】
燃焼装置300としては、図5に示す通り、熱交換器310の後段に熱交換器330を接続させ、濃縮装置100へ供給する水蒸気と処理ガスを熱交換させる構成としても良い。熱交換によって、水蒸気の温度が上昇し、濃縮装置100における脱着効率が向上し、濃縮水の減容化、濃縮倍率が向上する。図示しないが、水蒸気の代わりに曝気装置へ供給するガスを熱交換器330にて熱交換しても良い。曝気効率が高まる効果が得られる。
【0026】
以上の図2から5に示す排水処理システムとすることにより、濃縮装置100は、排水から高効率に有機物質を除去するとともに、排水を濃縮して、曝気装置200や燃焼装置300の処理効率を向上する装置として機能するので、曝気装置200や燃焼装置300が大型化することやランニングコストが増大することを防止しつつ、高効率で安定的に排水を処理することが可能な排水処理システムとすることができる。
【0027】
以上において図2から図5で説明した本発明の実施の形態の特徴的な構成は、相互に組み合わせることが可能である。
【0028】
また、以上において説明した本発明の実施の形態においては、ポンプやファン等の流体搬送手段やストレージタンク等の流体貯留手段などの構成要素を特に示すことなく説明を行なったが、これら構成要素は必要に応じて適宜の位置に配置すればよい。
【0029】
このように、今回開示した上記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【実施例】
【0030】
評価は下記の方法によりおこなった。
(BET比表面積)
BET比表面積は、液体窒素の沸点(−195.8℃)雰囲気下、相対圧力0.0〜0.15の範囲で上昇させたときの試料への窒素吸着量を数点測定し、BETプロットにより試料単位質量あたりの表面積(m/g)を求めた。
(細孔容積)
細孔容積は、相対圧0.95における窒素ガスの気体吸着法により測定した。
(平均細孔径)
平均細孔径は、以下の式で求めた。
dp=40000Vp/S(ただし、dp:平均細孔径(Å))
Vp:細孔容積(cc/g)
S:BET比表面積(m/g)
(有機物質除去効果)
排水(原水)は1,4−ジオキサン400mg/L、イソプロピルアルコール(IPA)250mg/L含む水とした。500時間運転後の濃縮装置、曝気装置、燃焼装置の入出の1,4−ジオキサン、IPA濃度を測定し、各有機物質排出量を算出して除去効果を確認した。
(有機物質濃度評価)
各水およびガスをガスクロマトグラフ法により分析し測定した。
【0031】
[実施例1]
システムとしては、図4に示す実施の形態を使用した。
濃縮装置の吸着材として平均細孔径17.1Å、BET比表面積1650m/g、全細孔容積0.47m/gの活性炭素繊維を使用した130mmφで、厚み150mmの重量0.2kgの吸着素子を2個作成し、図4の濃縮装置に設置して、排水を処理水量20L/hになるように導入し、処理水を得た。
【0032】
次に、自重抜きで吸着材の付着水を除去(脱水)した後、除去水は原水へ返送した。次に0.2MPa、120℃の水蒸気を1.6kg/hで吸着材に供給し脱着を実施した。脱着に使用した水蒸気および吸着材から脱着された1,4−ジオキサン、IPAは濃縮水として回収した。吸着時間は20min、脱水時間は5min、脱着時間は15minとして切替サイクルとした。その際の処理水中の1,4−ジオキサン濃度は0.5mg/L以下、IPA濃度は0.5mg/L以下であり、1,4−ジオキサンおよびIPAの除去率は99.8%以上が可能であった。また、濃縮水は水量4.8L/hで約4.2倍に排水が濃縮された。
【0033】
有効曝気容量19Lの曝気装置に曝気温度60℃、風量48L/minの条件で、濃縮装置から排出された濃縮水を導入し、曝気処理水を得た。その際の出口濃度は、1,4−ジオキサン350mg/L以下、IPA100mg/L以下であった。曝気処理水は濃縮装置の原水へ返送した。使用蒸気量は表2に示す通り0.6kg/hであった。
【0034】
本実施例の濃縮装置により浄化された水は、500時間後でも99.8%以上の効率で1,4−ジオキサンおよびIPAの処理が可能であった。濃縮装置の濃縮水を曝気処理し、再度濃縮装置にて各有機物質を除去することで、低コスト、高効率で安定して処理ができた。
【0035】
次に、触媒として白金触媒0.1Lを設置した電気ヒーター式の触媒燃焼装置を用いて、上述の曝気ガスを風量48L/minで供給し、300℃に昇温した後、触媒に接触させ、曝気ガス中の有機物質を酸化分解させて、処理ガスを得た。運転開始500h後の処理ガス中の1,4−ジオキサン、アセトアルデヒドはそれぞれ0.1ppm以下であり、良好に処理できた。その際の電力は、表2に示す通り0.02kW以下であった。
【0036】
[実施例2]
システムとしては、図4に示す実施の形態を使用した。
濃縮装置の吸着材として平均細孔径17.1Å、BET比表面積1650m/g、全細孔容積0.47m/gの活性炭素繊維を使用した130mmφで、厚み150mmの重量0.2kgの吸着素子を2個作成し、図4の濃縮装置に設置して、排水を処理水量20L/hになるように導入し、処理水を得た。
【0037】
次に、水蒸気を供給して吸着材の付着水を除去(脱水)した後、除去水は原水へ返送した。次に0.2MPa、120℃の水蒸気を0.8kg/hで吸着材に供給し脱着を実施した。脱着に使用した水蒸気および吸着材から脱着された1,4−ジオキサン、IPAは濃縮水として回収した。吸着時間は20min、脱水時間は5min、脱着時間は15minとして切替サイクルとした。その際の処理水中の1,4−ジオキサン濃度は0.5mg/L以下、IPA濃度は0.5mg/L以下であり、1,4−ジオキサンおよびIPAの除去率は99.8%以上が可能であった。また、濃縮水は水量0.8L/h約25倍に排水が濃縮された。
【0038】
有効曝気容量5Lの曝気装置に曝気温度60℃、風量12L/minで、濃縮装置から排出された濃縮水を導入し、曝気処理水を得た。その際の出口濃度は、1,4−ジオキサン350mg/L以下、IPA100mg/L以下であった。曝気処理水は濃縮装置の原水へ返送した。使用蒸気量は表2に示す通り0.3kg/hであった。
【0039】
本実施例の濃縮装置により浄化された水は、500時間後でも99.8%以上の効率で1,4−ジオキサンおよびIPAの処理が可能であった。濃縮装置の濃縮水を曝気処理し、再度濃縮装置にて各有機物質を除去することで、低コスト、高効率で安定して処理ができた。
【0040】
次に、触媒として白金触媒0.1Lを設置した電気ヒーター式の触媒燃焼装置を用いて、曝気装置から排出された曝気ガスを風量24L/minで供給し、300℃に昇温した後、触媒に接触させ、曝気ガス中の有機物質を酸化分解させて、処理ガスを得た。運転開始500h後の処理ガス中の1,4−ジオキサン、アセトアルデヒドはそれぞれ0.1ppm以下であり、良好に処理できた。その際の電力は、表2に示す通り0.01kW以下であった。
【0041】
[比較例1]
有効曝気容量100Lの曝気装置に曝気温度95℃、風量250L/minの条件で、原水を導入し、曝気処理水を得た。その際の出口濃度は、表1に示す通り1,4−ジオキサン0.5mg/L以下、IPA0.5mg/L以下であった。使用蒸気量は表2に示す通り74kg/hであり、実施例1の120倍以上、実施例2の240倍以上必要であった。
【0042】
次に、触媒として白金触媒0.5Lを設置した電気ヒーター式の触媒燃焼装置を用いて、曝気装置から排出された曝気ガスを風量250L/minで供給し、300℃に昇温した後、触媒に接触させ、曝気ガス中の有機物質を酸化分解させて、処理ガスを得た。運転開始500h後の処理ガス中の1,4−ジオキサン、IPAそれぞれ0.1ppm以下であり、良好に処理できた。しかし、その際の電力は表2に示す通り0.26kWであり、実施例1の13倍以上、実施例2の26倍以上必要であった。
【0043】
[比較例2]
濃縮装置の吸着材として平均細孔径18.0Å、BET比表面積1500m/g、全細孔容積0.52m/gの粒状活性炭を使用した130mmφで、厚み150mmの重量0.6kgの吸着素子を2個作成し、図4に記載の濃縮装置と同様の構成の濃縮装置に設置して、排水を処理水量20L/hになるように導入し、処理水を得た。
【0044】
次に、自重抜きで吸着材の付着水を除去(脱水)した後、除去水は原水へ返送した。次に0.2MPa、120℃の水蒸気を7.2kg/hで吸着材に供給し脱着を実施した。水蒸気および吸着材から脱着された1,4−ジオキサン、IPAは30℃の冷却水を用いて凝縮器にて冷却凝縮され濃縮水を得た。吸着時間は20min、脱水時間は5min、脱着時間は15minとして切替サイクルとした。その際の処理水中の1,4−ジオキサン濃度は100mg/L、IPA濃度は120mg/Lであり、表1に示すように実施例1および2と比較して除去効率の低い結果となった。
【0045】
[比較例3]
濃縮装置の脱着媒体に風量600L/min、130℃の加熱空気を使用し、脱着された1,4-ジオキサンおよびIPAを含む空気を脱着ガスとして回収した。それ以外の濃縮装置の操作条件は実施例1と同一条件で排水処理を実施した。加熱空気は水蒸気による熱交換式のヒーターを使用したが、その際必要とした水蒸気量は2kg/hであった。
【0046】
本実施例の濃縮装置により浄化された水は、500時間後でも99.8%以上の効率で1,4−ジオキサンおよびIPAの処理が可能であった。
【0047】
次に、触媒として白金触媒0.9Lを設置した電気ヒーター式の触媒燃焼装置を用いて、濃縮装置から排出された脱着ガスを風量600L/minで供給し、300℃に昇温した後、触媒に接触させ、脱着ガス中の有機物質を酸化分解させて、処理ガスを得た。運転開始500h後の処理ガス中の1,4−ジオキサン、IPAはそれぞれ0.1ppm以下であり、良好に処理できた。しかし、その際の電気ヒーターに使用した電力は、表2に示す通り0.7kWと実施例1の35倍以上、実施例2の70倍以上の電力を必要とした。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【符号の説明】
【0050】
100:濃縮装置
110:第1処理槽
111:吸着材
120:第2処理槽
121:吸着材
130:凝縮器
200:曝気装置
210:曝気槽
220:ガス供給器
300:燃焼装置
310:熱交換器
320:加熱炉
330:熱交換器
図1
図2
図3
図4
図5