特許第6393969号(P6393969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

特許6393969二次電池用電極活物質の製造方法、二次電池用電極の製造方法
<>
  • 特許6393969-二次電池用電極活物質の製造方法、二次電池用電極の製造方法 図000003
  • 特許6393969-二次電池用電極活物質の製造方法、二次電池用電極の製造方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393969
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】二次電池用電極活物質の製造方法、二次電池用電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20180913BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20180913BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20180913BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20180913BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20180913BHJP
【FI】
   H01M4/48
   H01M4/38 Z
   H01M4/36 C
   H01M4/62 Z
   H01M4/139
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-204090(P2013-204090)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-69878(P2015-69878A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】栗原 均
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−178917(JP,A)
【文献】 特開2013−145669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性官能基を含むシランカップリング剤で表面処理されたSiO(但し、x=0〜1.5)の表面に、π共役系高分子を重合、被覆して被覆層を形成した被覆活物質を得る工程と、該被覆活物質を不活性ガス環境下で熱処理して前記被覆層を完全に炭化させた炭化物を形成する工程と、を含むことを特徴とする二次電池用電極活物質の製造方法。
【請求項2】
前記SiOの粒径(メジアン径:D50)が0.5μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項記載の二次電池用電極活物質の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の二次電池用電極活物質の製造方法によって得た二次電池用電極活物質と、バインダとを含む活物質層を、集電体の表面に形成する工程を含むことを特徴とする二次電池用電極の製造方法。
【請求項4】
前記バインダはアルギン酸塩であることを特徴とする請求項記載の二次電池用電極の製造方法。
【請求項5】
前記二次電池用電極活物質と、前記バインダとの混合物を前記集電体の表面に塗布し、その後、プレスおよび減圧乾燥によって前記活物質層を集電体の表面に形成したことを特徴とする請求項4記載の二次電池用電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用電極活物質、およびこれを用いた二次電池用電極に関するものであり、より詳細には、サイクル特性を向上させうる非水電解質二次電池用負極活物質に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油使用量や温室効果ガス削減、エネルギー基盤のさらなる多様化や効率化を目指し、繰り返し充放電可能な二次電池として、リチウム(Li)イオン二次電池に注目が集まっている。特に、電気自動車やハイブリッド電気自動車および燃料電池車への用途展開が見込まれている。電気自動車においては、走行距離の向上が要求され、今後、二次電池の高エネルギー密度化が一層要求されていくことになる。
【0003】
リチウムイオン二次電池の負極に注目すると、黒鉛電極が一般に用いられている。黒鉛の理論容量は、372mAhg(活物質)−1である。これに対し、黒鉛を上回る容量を示す活物質として、シリコン(Si)や錫(Sn)が近年注目されている。シリコンの理論容量は、4200mAhg(活物質)−1であり、Snは、990mAhg(活物質)−1である。一方、Siは、黒鉛の約11倍の容量を持っているために、Li吸蔵放出に伴う体積変化も大きくなる。Li吸蔵により体積が約4倍増加する。
【0004】
黒鉛と比べて、大容量を有する活物質を用いた電極は、充放電に伴う大きな体積変化から、電極の導電パスの切断や微粉化に伴う電極からの脱離、集電体と活物質層の剥離などのおそれがある。このことは、二次電池のサイクル特性を低下させる要因となる可能性がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、Si表面に、化学蒸着法により炭素を被覆することによって、該活物質の微粉化や電極の破壊を抑えることが可能とされるリチウム二次電池用負極材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−215887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された化学蒸着法による炭素被覆は、二次電池のサイクル特性の向上効果は認められるものの、依然として、十分なサイクル特性は得られておらず、更なるサイクル特性の向上が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、サイクル特性を向上させうる二次電池用電極活物質、二次電池用電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、二次電池のサイクル特性の更なる向上を狙い、鋭意検討を行なった結果、物質表面と被覆炭素層の結着を高めることで、サイクル特性が大きく向上することを見出した。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の二次電池用電極活物質の製造方法は、重合性官能基を含むシランカップリング剤で表面処理されたSiO(但し、x=0〜1.5)の表面に、π共役系高分子を重合、被覆して被覆層を形成した被覆活物質を得る工程と、該被覆活物質を不活性ガス環境下で熱処理して前記被覆層を完全に炭化させた炭化物を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
前記SiOの粒径(メジアン径:D50)が0.5μm以上10μm以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明の二次電池用電極の製造方法は、請求項1ないし3いずれか1項記載の二次電池用電極活物質の製造方法によって得た二次電池用電極活物質と、バインダを含む活物質層を、集電体の表面に形成する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
前記バインダはアルギン酸塩であることを特徴とする。
【0015】
前記二次電池用電極活物質と、前記バインダとの混合物を前記集電体の表面に塗布し、その後、プレスおよび圧縮乾燥によって前記活物質層を集電体の表面に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、サイクル特性の高い二次電池用電極を得ることが可能な二次電池用電極活物質の製造方法、およびサイクル特性に優れた二次電池用電極の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】二次電池の一例を示す断面図である。
図2】本発明の検証結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の二次電池用電極活物質、および二次電池用電極について説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0019】
以下の実施形態では、本発明の二次電池としてリチウムイオン二次電池を示し、二次電池用電極をリチウムイオン二次電池の負極に適用した例を示す。
図1は、本発明の二次電池用電極活物質を用いて形成した二次電池用電極を備えた二次電池の一例を示す断面図である。リチウムイオン二次電池(二次電池)10は、電解質層11と、この電解質層11の一面側と他面側にそれぞれ配された正極12、負極(二次電池用電極)13とを有している。なお、これら電解質層11、正極12、および負極13からなる積層体は、金属などの外装体(図示略)に収容されていればよい。
【0020】
正極12は、集電体15と、この集電体15の一面に形成された正極活物質層16とからなる。集電体15としては、二次電池用の正極集電体材料として従来用いられている材料を適宜採用すればよい。例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、鉄、ステンレス鋼(SUS)、チタン等が挙げられる。特に、電子伝導性、電池作動電位という観点から、アルミニウムが特に好ましい。こうした集電体15の一般的な厚さは、10〜30μm程度である。
【0021】
正極活物質層16を構成する正極活物質は、特にリチウムの吸蔵放出が可能な材料であれば限定されず、リチウムイオン二次電池に通常用いられる正極活物質を適宜採用することができる。具体的には、リチウム−マンガン複合酸化物(LiMnなど)、リチウム−ニッケル複合酸化物(LiNiOなど)、リチウム−コバルト複合酸化物(LiCoOなど)、リチウム−鉄複合酸化物(LiFeOなど)、リチウム−ニッケル−マンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.5など)、リチウム−ニッケル−コバルト複合酸化物(LiNi0.8Co0.2など)、リチウム−遷移金属リン酸化合物(LiFePOなど)、およびリチウム−遷移金属硫酸化合物(LiFe(SOなど)が挙げられる。これら正極活物質は、それぞれ単独で構成されても、あるいは2種以上の混合物の形態で構成されてもよい。
【0022】
負極(二次電池用電極)13は、集電体17と、この集電体17の一面に形成された負極活物質層18とからなる。集電体17としては、二次電池用の負極集電体材料として従来用いられている材料を適宜採用すればよい。例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、鉄、ステンレス鋼(SUS)、チタン等が挙げられる。特に、電子伝導性、電池作動電位という観点から、銅が特に好ましい。こうした集電体17の一般的な厚さは、10〜30μm程度である。
【0023】
負極活物質層18は、負極活物質(二次電池用電極活物質)、バインダ、導電助剤を含む。本発明の負極活物質(以下、活物質と称する場合がある)は、SiOであり、好ましくは、xは1.5以下であることが好ましい。xが1.5より多いと、十分なLiの吸蔵および放出量を確保することができない。また、該活物質のみならず、黒鉛も活物質として加えても良い。
【0024】
活物質の表面は、熱分解炭素により被覆されている。活物質には、あらかじめ、表面上を、アニリン基を含むシランカップリング剤により処理されている。シランカップリング剤は、下記式(1)で表され、アルコキシ基(X)と有機官能基(Y)よりなる。該活物質の表面を修飾するものは、下記式(1)で表されるシランカップリング剤の他に、シランカップリング剤同士で脱水縮合されるシロキサンでもよい。好ましくは、N−[3−(trimethoxysilyl)propyl]anilineを用いることができる。
−Si−Y ・・・(1)
Xは、メトキシ基もしくはエトキシ基、プロピルオキシ基よりなる。
Yは、−(CH−Y’で表される。
nは、0以上10以下で表され、Y’は、ビニル基やアリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、グリシドキシ基等の重合性官能基を含むものよりなる。好ましくは、アニリンが望ましい。
【0025】
活物質の重量に対するシランカップリング剤の処理量は、0.1重量%以上20重量%以下である。好ましくは、0.9重量%以上10重量%以下である。0.1重量%より少ないと、表面処理した効果が得られず、20重量%より多いと、未反応分が生じ、有効に利用されないシランカップリング剤が生じる。
【0026】
活物質へのシランカップリング剤処理は、以下のように行なわれる。
まず、アルコール溶媒中に、該活物質を加え、良く攪拌を行なう。望ましくは、2−イソプロピルアルコール溶媒を用い、超音波分散処理を行なう。得られた分散液に、シランカップリング剤を加え、水を滴下し、室温で一晩攪拌させる。反応終了後、洗浄しながら、ろ過し、乾燥させることでシランカップリング処理した活物質を得る。
【0027】
シランカップリング処理を行った活物質は、IRによって、表面修飾がなされたことを確認した。図2に、IRスペクトルを示す。図2において、aは、シランカップリング剤で処理していないSiO粒子のIRスペクトルであり、bは、シランカップリング剤で処理したSiO粒子のIRスペクトルを示している。シランカップリング剤は、重合性官能基としてアリル基を含むN−[3−(trimethoxysilyl)propyl]anilineを用いた。1500cm−1および1600cm−1付近に、シランカップリング剤由来のピークが確認された。
【0028】
活物質へのポリアニリンの被覆は以下のように行なわれる。
まず、分散安定剤であるポリビニルピロリドンを含む1.2N塩酸水溶液に、シランカップリング剤で処理された該活物質を加え、分散液を得る。この時、超音波分散を行なっても良い。続いて、酸化剤として、ペルオキソ二硫化アンモニウムを加え、良く攪拌を行い、アニリンを添加し、酸化重合を行なう。充分に反応を進行させた後、水を加え、反応を終了させる。洗浄しながら、ろ過し、乾燥させることでポリアニリン被覆活物質を得る。ただし、ポリアニリンの被覆量は限定されるものではない。
【0029】
予め、シランカップリング剤で処理した該活物質にポリアニリンを被覆することにより、ポリアニリン被覆層を活物質表面に均一にかつ強固に結着させることができる。特に、被覆する高分子が、π共役系高分子であることから、剛直であり、SiOxの充放電に伴う体積変化に耐え、電極の導電パスの切断や微粉化に伴う電極からの脱離、集電体と活物質層の剥離を抑制し、サイクル特性が向上する。
【0030】
ポリアニリン被覆活物質は、さらに熱処理により炭化処理される。不活性ガス環境下、500℃以上で一時間以上熱処理を行なうことで、炭化処理することができる。好ましくは、Arガス下、1時間処理することが好ましい。一部または完全に炭化処理することで、SiOx表面に空隙が生じ、被覆炭素層からSiOxへのLiイオンの拡散が十分に行なわれる。
【0031】
活物質の粒径は、D50(メジアン径:積算値が50%である粒度の直径であり、平均粒径を示す)が0.5μm以上10μm以下であることが望ましい。活物質の粒径(D50)が10μmより大きい場合、総活物質表面積あたりの電流が大きくなり、電極抵抗が増し、容量が低下する。一方、活物質の粒径(D50)が0.5μmより小さい場合、電極スラリを調液する工程で、該活物質が凝集しやすくなり、活物質が均一に分散したスラリを得ることが困難になり、電極抵抗が高くなり、容量が低下する虞がある。
【0032】
バインダは、従来の黒鉛電極に用いられるものであれば、特に限定されないが、例えば、CMCやアルギン酸塩、SBR、ポリイミド、ポリビニルアルコール、PVdF等が用いられる。好ましくは、アルギン酸塩が用いられる。また、バインダは、活物質重量に対し、3重量%以上40重量%以下であることが望ましい。3重量%より少ない場合、十分な結着ができない虞がある。40重量%より大きい場合、電極体積あたりの容量が大きく低下する虞がある。
【0033】
導電助剤は、例えば、カーボンブラックや天然黒鉛、人造黒鉛、さらには、酸化チタンや酸化ルテニウムなどの金属酸化物、金属ファイバーなどが使用できる。なかでもストラクチャー構造を呈するカーボンブラックが好ましく、特にその一種であるファーネスブラックやケッチェンブラック、アセチレンブラック(AB)が好ましく用いられる。なお、カーボンブラックとその他の導電剤、例えば、気相成長炭素繊維(VGCF(vapor−grown carbon fiver:登録商標))との混合系も好ましく用いることができる。
【0034】
電解質層11を構成する電解液の溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの低粘度の鎖状炭酸エステルと、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの高誘電率の環状炭酸エステル、γ‐ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、メチルアセテート、メチルプロピオネート、ビニレンカーボネート、ジメチルホルムアミド、スルホランおよびこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
【0035】
電解液に含まれる電解質は、特に制限がなく、例えば、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiI、LiAlCl等およびそれらの混合物等が挙げられる。好ましくは、LiBF、LiPFのうちの1種または2種以上を混合したリチウム塩がよい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、実施例により何ら限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
D50が6.6μmのSiO(大阪チタニウム社製)6.00gを2−イソプロピルアルコール30.00gに加えた。次に、N−[3−(trimethoxysilyl)propyl]aniline0.57gを加えて、攪拌した。続いて、水0.30gを滴下し、一晩攪拌した。その後、2−イソプロピルアルコールで洗浄しながら、ろ過を行なった。得られた粉体は、80℃で3時間、減圧乾燥を行なった。
【0038】
ポリビニルピロリドン(K−90、和光純薬工業、分子量40万)10gを1.2N塩酸水溶液500 mlに溶解させ、シランカップリング剤で処理した活物質6.00gを加えた。これに、ペルオキソ二硫化アンモニウム2.5g(0.011mol)を加えて、よく攪拌した。続いて、アニリン1g(0.011mol)を加え、室温で2時間攪拌を行なった。水500mlを加え、反応終了後、水:メタノール=1:1の洗浄溶液を用いて、洗浄しながらろ過を行なった。得られた粉体は、80℃で3時間、減圧乾燥を行なった。
【0039】
続いて、得られたポリアニリン被覆活物質は、Arガス下、500℃で1時間処理を行なった。
【0040】
熱処理した活物質4.46gとアセチレンブラック(AB)0.89gおよびVGCF(登録商標)0.89g、アルギン酸ナトリウム 0.89gを水52.86gに加え、ディスパでプレ分散し、該混合液をフィルミックスで本分散し、負極スラリを得た。
【0041】
得られたスラリを集電体に塗布した。集電体は、厚さ12μmの銅箔を使用した。スラリは、2.7mg/cmの目付量になるように、ドクターブレードにて塗布した。続いて、80℃で30分予備乾燥した。これを密度が、1.0g/cmになるようプレスを行ない、105℃5時間、減圧乾燥して負極(二次電池用電極)を得た。
【0042】
(実施例2)
D50が6.6μmのSiO(大阪チタニウム社製)6.00gを2−イソプロピルアルコール30.00gに加えた。次に、3−Methacryloxypropyltrimethoxysilane0.55gを加えて、攪拌した。続いて、水0.30gを滴下し、一晩攪拌した。その後、2−イソプロピルアルコールで洗浄しながら、ろ過を行なった。得られた粉体は、80℃で3時間、減圧乾燥を行なった。
【0043】
ポリビニルピロリドン(K−90、和光純薬工業、分子量40万)1gを水500mlに溶解させ、シランカップリング剤として3−Methacryloxypropyltrimethoxysilaneで処理した活物質6.00gを加えた。これに、三塩化鉄5.7g(0.045 mol)を加えて、よく攪拌した。続いて、ピロール0.67g(0.01mol)を加え、室温で15時間攪拌を行なった。水500mlを加え、反応終了後、水:メタノール=1:1の洗浄溶液を用いて、洗浄しながらろ過を行なった。得られた粉体は、80℃で3時間、減圧乾燥を行なった。
【0044】
続いて、得られたポリピロール被覆活物質は、Arガス下、500℃で1時間処理を行なった。
【0045】
熱処理した活物質4.46gとアセチレンブラック(AB)0.89gおよびVGCF(登録商標)0.89g、アルギン酸ナトリウム0.89gを水52.86gに加え、ディスパでプレ分散し、該混合液をフィルミックスで本分散し、負極スラリを得た。
【0046】
得られたスラリを集電体に塗布した。集電体は、厚さ12μmの銅箔を使用した。スラリは、4.4mg/cmの目付量になるように、ドクターブレードにて塗布した。続いて、80℃で30分予備乾燥した。これを密度が、1.0g/cmになるようプレスを行ない、105℃5時間、減圧乾燥して負極を得た。
【0047】
(比較例1)
実施例1のシランカップリング処理を行なわず、ポリアニリン被覆を行なった。
【0048】
ポリビニルピロリドン(K−90、和光純薬工業、分子量40万)10gを1.2 N塩酸水溶液500mlに溶解させ、D50の6.6μmのSiO(大阪チタニウム社製)6.00gを加えた。これに、ペルオキソ二硫化アンモニウム2.5 g(0.011mol)を加えて、よく攪拌した。続いて、アニリン1g(0.011mol)を加え、室温で2時間攪拌を行なった。水500mlを加え、反応終了後、水:メタノール=1:1の洗浄溶液を用いて、洗浄しながらろ過を行なった。得られた粉体は、80℃で3時間、減圧乾燥を行なった。
【0049】
続いて、得られたポリアニリン被覆活物質は、Arガス下、500℃で3時間処理を行なった。
【0050】
熱処理した活物質4.46gとアセチレンブラック(AB)0.89gおよびVGCF(登録商標)0.89g、アルギン酸ナトリウム0.89gを水52.86gに加え、ディスパでプレ分散し、該混合液をフィルミックスで本分散し、負極スラリを得た。
【0051】
得られたスラリを集電体に塗布した。集電体は、厚さ12μmの銅箔を使用した。スラリは、4.4mg/cmの目付量になるように、ドクターブレードにて塗布した。続いて、80℃で30分予備乾燥した。これを密度が、1.0g/cmになるようプレスを行ない、105℃5時間、減圧乾燥して負極を得た。
【0052】
(比較例2)
炭素被覆処理を行なわず、負極スラリを作製した。
【0053】
D50の6.6μmのSiO(大阪チタニウム社製)4.50gとアセチレンブラック(AB)0.89gおよびVGCF(登録商標)0.87g、アルギン酸ナトリウム0.89gを水52.94gに加え、ディスパでプレ分散し、該混合液をフィルミックスで本分散し、負極スラリを得た。
【0054】
得られたスラリを集電体に塗布した。集電体は、厚さ12μmの銅箔を使用した。スラリは、4.4mg/cmの目付量になるように、ドクターブレードにて塗布した。続いて、80℃で30分予備乾燥した。これを密度が、1.0g/cmになるようプレスを行ない、105℃5時間、減圧乾燥して負極を得た。
【0055】
(セル作製と評価)
得られた負極と、Li箔を正極としたコインセルを作製し、実施例1および比較例1、2の充放電評価を行なった。負極は、直径15mmの円板に打ち抜き、Li箔は、直径16mmの円板に打ち抜いて、評価を行なった。Li箔は、300μmの厚さとした。コインセルは、負極およびLi極、セパレータ(型番2200、セルガード社製)を基本構成とした。電解液は、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DMC)の3:7(v/v)の混合溶液に、LiPFを1Mとなるように加えたものを使用した。充放電は、0.01V〜1.5Vで100サイクル行なった。0.2C CC充電および1.0C CC放電で行なった。10サイクル目の放電容量を基準とし、100サイクル目の容量維持率を求めた。
【0056】
上述した実施例1、2と比較例1、2における、容量維持率の結果を検証例として表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示す結果によれば、実施例1、2のサイクル特性は、比較例1、2に比べて良好であり、本発明の二次電池用電極活物質を用いて二次電池用電極を形成することによって、サイクル特性が向上することを確認した。また、比較例1はほとんど比較例2と大差がなかった。シランカップリング剤による処理を行なわず、ポリアニリンを炭化した場合、被覆炭素層と活物質表面の結着が弱く、充放電に伴う活物質の体積変化によって、被覆炭素層が活物質表面から剥がれ、結果として、電極の導電パスの切断や微粉化に伴う電極からの脱離、集電体と活物質層の剥離などを抑制できなかったものと推測される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によって得られる二次電池用電極活物質を用いた二次電池用電極は、各種携帯用電子機器の電源、また、高エネルギー密度が求められる電気自動車などの駆動用蓄電池、さらに、ソーラーエネルギーや風力発電などの各種エネルギーの蓄電装置、あるいは家庭用電気器具の蓄電源などの電極に用いられる。
【符号の説明】
【0060】
10…リチウムイオン二次電池(二次電池)、11…電解質層、12…正極、13…負極、18…負極活物質層(活物質層)。
図1
図2