特許第6393970号(P6393970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6393970ハードコート組成物およびそれを塗工してなるハードコートフィルム、反射防止フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6393970
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ハードコート組成物およびそれを塗工してなるハードコートフィルム、反射防止フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/10 20150101AFI20180913BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20180913BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20180913BHJP
   G02B 1/16 20150101ALI20180913BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20180913BHJP
   C08F 20/30 20060101ALI20180913BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20180913BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20180913BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   G02B1/10
   G02B1/111
   G02B1/14
   G02B1/16
   C08J7/04 KCEZ
   C08F20/30
   C09D4/02
   B32B27/18 J
   B32B27/30 A
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-204169(P2013-204169)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-69058(P2015-69058A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 元気
(72)【発明者】
【氏名】中島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 泰佑
(72)【発明者】
【氏名】緒方 啓介
【審査官】 小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−079014(JP,A)
【文献】 特開2012−118305(JP,A)
【文献】 特開2013−154523(JP,A)
【文献】 特開2013−101330(JP,A)
【文献】 特開2006−309163(JP,A)
【文献】 特開2012−166521(JP,A)
【文献】 特開2012−230200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10 − 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム基材上に、ハードコート層と、低屈折率層とをこの順に積層した反射防止フィルムであって、
前記ハードコート層は、ハードコート組成物の硬化膜であって、
前記ハードコート組成物は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能モノマーと、重合開始剤と、溶剤と、導電性材料とを含み、
前記多官能モノマーのうち、少なくとも1種が下記一般式(5)で表されるビスフェノール系化合物であり、
前記ビスフェノール系化合物が、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレートであり、
前記導電性材料、四級アンモニウム塩材料であり、
前記低屈折率層は、低屈折率コーティング組成物の硬化膜であって、
前記低屈折率コーティング組成物は、多孔質シリカ微粒子と、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートと、重合開始剤と、溶剤とを含むことを特徴とする、反射防止フィルム。
【化3】
・・・(5)
(R、Rは独立に水素または1〜5のアルキル基、R、Rは独立に炭素数2〜4のアルキル基、R、Rは独立に水素またはメチル基を示す。n、mはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、n+mが2〜40の整数を示す。)
【請求項2】
前記低屈折率層表面における表面抵抗値が1.0×1011Ω/□以下であることを特徴とする、請求項に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
平均視感反射率が0.8%以下であることを特徴とする、請求項またはに記載の反射防止フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗膜を形成するのに適したハードコート組成物およびそれを塗布することにより得られるハードコートフィルム、反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にディスプレイは、室内外での使用を問わず、外光などが入射する環境下で使用される。この外光等の入射光は、ディスプレイ表面等において正反射され、それによる反射像が表示画像と混合することにより、画面表示品質を低下させてしまう。そのため、ディスプレイ表面やそれらに用いられる偏光板あるいは各種の光学レンズ、計器のカバー、窓ガラスなどに反射防止機能を付与することは必須であり、反射防止機能の高性能化が求められている。
【0003】
一般に反射防止機能は、表示面の表面に低屈折率層を形成することにより付与される。また、反射防止機能をより高性能化させるためには表示面の表面に中〜高屈折率層を1層以上形成し、最表面に低屈折率層を形成する方法が知られている。
【0004】
しかし、中〜高屈折率層を1層以上形成する方法は、低屈折率層のみを形成するよりも生産性およびコストの点で不利となる。
【0005】
ところで、反射防止フィルムにおいては、基材と反射防止層の間に、表面保護のためのハードコート層を形成することが一般的である。そこで、多層化によるコストアップを抑えつつ反射防止機能の高性能化を達成するために、ハードコート層の高屈折率化が考えられる。
【0006】
一般的に、ハードコート層の高屈折率化にはハードコート層中に金属酸化物微粒子を分散させる方法が知られている。(例えば特許文献1、特許文献2)
【0007】
しかし、この方法ではヘイズ値が高くなり、一般の有機系材料と比べてコストアップになってしまう。
【0008】
これに対し、フルオレン系、硫黄系などの高屈折率有機材料を用いてハードコートを形成する方法も提案されている。(例えば特許文献3、特許文献4)
【0009】
しかし、これらの材料では耐光性がディスプレイ用途には不十分であり、硫黄含有率の高い材料は周辺材料の腐食や硫黄臭の問題がある。
【0010】
また、ハードコートを高屈折とすると、基材との屈折率差が大きくなり、塗膜表面の反射光、及び塗膜とフィルム基材との界面の反射光が互いに干渉して干渉色を生じ、さらにハードコート層の塗工厚みにムラがあると生じる干渉縞と呼ばれる模様が生じやすくなり、視認性を低下させる問題がある。
【0011】
この干渉縞を改善するために、基材とハードコート層の間に凹凸を設けることによってハードコート層と基材との界面での光の反射を散乱させる技術(例えば、特許文献5)、基材とハードコート層間に中間層を設ける技術(例えば、特許文献6)、基材とハードコート層の屈折率差を少なくすることにより干渉縞を防止する技術(例えば、特許文献7)、塗液のレベリング性を向上させる技術(例えば、特許文献8)、低沸点溶剤と高沸点溶剤を混合させる方法(例えば、特許文献9)等が報告されている。
【0012】
また、このようなハードコートフィルム、反射防止フィルムには製造工程や保管中のフィルム屈曲によりハードコート層のひび割れやハードコート層とフィルム基材間の剥離が起きてしまうという問題がある。
【0013】
この耐屈曲性を高めるために、膜厚方向の塗膜組成を連続的に変化させる方法(例えば、特許文献10)等が報告されている。
【0014】
さらに、ハードコート層は透明フィルム基材との密着性が高いことも求められる。
【0015】
密着性を高めるためには、ハードコート層と透明フィルム基材との親和性を向上させるためにハードコート層を塗工する前に基材表面にコロナ処理、プラズマ処理、アルカリ処理、火焔処理等の物理処理を施す方法(例えば、特許文献11)、または両方の層に親和性のある中間層を設けるといった方法(例えば、特許文献12)等、特別な処理を必要とする方法が報告されている。
【0016】
また、この一般的にハードコート層は絶縁性が高いために帯電しやすく、ハードコート層を設けた製品表面への埃等の付着による汚れや、ディスプレイ製造工程において、帯電することにより障害が発生するといった問題を抱えている。
【0017】
そこで、帯電防止機能を付与するため、ハードコート層に導電剤を添加する方法(例えば、特許文献13)や、基材とハードコート層の間、もしくは、ハードコート層と反射防止層の間に帯電防止層を設ける方法(例えば、特許文献14)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2001−255403号公報
【特許文献2】特許第5019151号公報
【特許文献3】特開平9−3058号公報
【特許文献4】特開平11−12273号公報
【特許文献5】特開平08−197670号公報
【特許文献6】特開2000−111706号公報
【特許文献7】特開平07−151902号公報
【特許文献8】特開2012−068415号公報
【特許文献9】特開2003−277689号公報
【特許文献10】国際公開第2008/114627号
【特許文献11】特開2002−361769号公報
【特許文献12】特開平09−300549号公報
【特許文献13】特開2012−048261号公報
【特許文献14】特開2011−123513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、前記問題を解決するために高屈折率、優れた硬度、高透明性、帯電防止性、高耐屈曲性、高密着性を有し、全可視光線領域における干渉縞防止効果を有するハードコートフィルムを提供するのに適したハードコート組成物を提供することを目的とする。また、このハードコートフィルムを基材として用いることによって、従来よりも反射率を低減した高性能な反射防止機能付き反射防止フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る反射防止フィルムは、透明フィルム基材上に、ハードコート層と、低屈折率層とをこの順に積層した反射防止フィルムであって、前記ハードコート層は、ハードコート組成物の硬化膜であって、前記ハードコート組成物は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能モノマーと、重合開始剤と、溶剤と、導電性材料とを含み、前記多官能モノマーのうち、少なくとも1種が下記一般式(1)で表されるビスフェノール系化合物であり、前記ビスフェノール系化合物が、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレートであり、前記導電性材料、四級アンモニウム塩材料であり前記低屈折率層は、低屈折率コーティング組成物の硬化膜であって、前記低屈折率コーティング組成物は、多孔質シリカ微粒子と、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートと、重合開始剤と、溶剤とを含むことを特徴とする。
【化1】
・・・(1)
(R、Rは独立に水素または1〜5のアルキル基、R、Rは独立に炭素数2〜4のアルキル基、R、Rは独立に水素またはメチル基を示す。n、mはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、n+mが2〜40の整数を示す。)
【0024】
上記反射防止フィルムにおいては、低屈折率層表面における表面抵抗値が1.0×1011Ω/□以下であることが好ましい。
【0025】
上記反射防止フィルムおいては、平均視感反射率が0.8%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明のハードコート組成物を用いることによって、高屈折率、優れた硬度、高透明性、帯電防止性、高耐屈曲性、高密着性を有し、全可視光線領域における干渉縞防止効果を有するハードコートフィルムを作製することができる。また、このハードコートフィルムを基材として用いることによって、従来よりも反射率を低減した高性能な反射防止機能付き反射防止フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係るハードコートフィルムを示す断面図
図2】本発明に係る反射防止フィルムを示す断面図
図3】本発明に係る偏光板を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、本発明に係るハードコートフィルムについて説明する。図1に、本発明に係るハードコートフィルム10の断面図を示す。ハードコートフィルム10は、透明フィルム基材1と、透明フィルム基材1上に設けられるハードコート層2とを備える。
【0029】
透明フィルム基材1上に、本発明に係るハードコート組成物を用いてハードコート層2を形成することにより、高屈折率と、優れた硬度と、高透明性と、帯電防止性と、高耐屈曲性と、全可視光線領域における干渉縞の発生防止効果とを有するハードコートフィルム10を得ることができる。
【0030】
次に、本発明に係るハードコート組成物について説明する。
ハードコート組成物には、少なくとも1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能モノマーと、重合開始剤と、溶剤が含まれている。また、前記多官能モノマーのうち、少なくとも1種が下記一般式(2)で表されるビスフェノール系化合物である。
【化2】
・・・(2)
(R、Rは独立に水素または1〜5のアルキル基、R、Rは独立に炭素数2〜4のアルキル基、R、Rは独立に水素またはメチル基を示す。n、mはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、n+mが2〜40の整数を示す。)
【0031】
(多官能モノマー)
ハードコート組成物に用いられる、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有するビスフェノール系多官能モノマーとしては、例えば、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールBジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールBジアクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールBジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールEジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールEジアクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールEジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールFジアクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールFジアクリレート等を挙げることができる。ビスフェノール系多官能モノマーは、上記の中から、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上の混合物を用いてもよい。また、必要であれば多官能モノマー同士あるいは単官能モノマーと併用して共重合させたものを用いてもよい。
【0032】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。また、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基」と「メタクリロイル基」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタクリレート」の両方を示している。
【0033】
また、本発明のハードコート組成物には、ビスフェノール系以外の1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能モノマーを併用することができる。ビスフェノール系以外の多官能モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスβ−(メタ)アクリロイルオキシプロピネート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、2,3−ビス(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシメチル[2.2.1]ヘプタン、ポリ1,2−ブタジエンジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルヘキサン、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、10−デカンジオール(メタ)アクリレート、3,8−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルトリシクロ[5.2.10]デカン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、1,4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。多官能モノマーは、上記の中から、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上の混合物を用いてもよい。また、必要であれば多官能モノマー同士あるいは単官能モノマーと併用して共重合させたものを用いてもよい。
【0034】
(重合開始剤)
ハードコート組成物に用いられる重合開始剤は、モノマーの種類および重合処理の種類(電磁波照射、粒子線照射あるいは加熱)に応じて決定する。一般には、光重合開始剤または熱重合開始剤を使用する。光重合開始剤の単独使用または光重合開始剤と熱重合開始剤との併用が好ましい。
【0035】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。
【0036】
また、熱重合開始剤としては、例えば、無機過酸化物(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾニトリル化合物(アゾビスシアノ吉草酸ナトリウム等)、アゾアミジン化合物(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)塩酸塩等)、環状アゾアミジン化合物(2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等)、アゾアミド化合物(2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド等)、アゾ化合物(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等)および有機過酸化物(ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオクトエート等)等が挙げられる。
【0037】
(溶剤)
ハードコート組成物に用いられる溶剤としては例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、炭酸ジメチル、およびγ−ブチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ヘキサノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の2つ以上の官能基を持つ化合物、水等の中から、塗工適正等を考慮して適宜選択して使用することができる。
【0038】
(導電性材料)
ハードコート組成物に、導電性材料を添加してもよい。ハードコート組成物に導電性材料を添加することにより、帯電防止性能を付与することができる。導電性材料としては、四級アンモニウム塩、金属酸化物粒子、導電性高分子等を用いることができる。
【0039】
導電性材料として用いられる、四級アンモニウム塩は、−N+ X− の構造を示し、四級アンモニウムカチオン(−N)とアニオン(X)を備えることによりハードコート層に導電性を発現させる。このとき、X としては、例えば、Cl、Br、I、F、HSO、SO2−、NO、PO3−、HPO2−、HPO、SO、OH等を挙げることができる。また、四級アンモニウム塩としては、四級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料を好適に用いることができる。四級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料としては、例えば、四級アンモニウム塩(−N)を官能基として分子内に含む多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコールおよびアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を用いることができる。
【0040】
導電性材料として用いられる金属酸化物粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、リン含有酸化スズ(PTO)、スズ含有酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、アルミニウム含有酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモン含有酸化亜鉛及びインジウム含有酸化亜鉛から選択される1種又は2種以上の金属酸化物を主成分とする材料を用いることができる。
【0041】
導電性材料として用いられる導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンサルファイド、ポリ(1,6−ヘプタジイン)、ポリビフェニレン(ポリパラフェニレン)、ポリパラフィニレンスルフィド、ポリフェニルアセチレン、ポリ(2,5−チエニレン)およびこれらの誘導体から選ばれる1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0042】
また、ハードコート組成物には、添加剤として、防汚剤、表面調整剤、レベリング剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、光増感剤等を加えてもよい。
【0043】
また、ハードコート組成物には、電離放射線硬化型材料を加えてもよい。電離放射線硬化型材料としては、アクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコールおよびアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を用いることができる。また、これらの他にも、電離放射線硬化型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を用いることができる。
【0044】
(透明フィルム基材)
次に、透明フィルム基材1について説明する。
【0045】
透明フィルム基材1としては、種々の有機高分子からなるフィルムを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される基材が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものを用いることができる。
【0046】
なお、透明フィルム基材1の厚みは10μm以上300μm以下の範囲内にあることが好ましい。透明フィルム基材1の厚みが10μmより小さいと、透明フィルム基材1自体の強度が下がり、膜を塗工しても強度が得られない。一方、透明フィルム基材1の厚みが300μmより大きいと、ロールtoロールにて塗工した場合の扱いが困難となる。
【0047】
次に、ハードコート層2の形成方法について説明する。上記の材料を調製して得られるハードコート組成物を、透明フィルム基材1上に塗工し、塗膜を形成する。ハードコート組成物を透明フィルム基材1上に塗工する方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗工方法を採用することができる。
【0048】
ハードコート組成物を透明フィルム基材1上に塗工した後、透明フィルム基材1上に塗工されたハードコート組成物の塗膜を乾燥することにより、塗膜中の溶媒を除去する。このとき乾燥手段としては、加熱、送風、熱風等を用いることができる。
【0049】
塗膜を乾燥した後乾燥させた塗膜に対し、電離放射線を照射する、あるいは加熱をすることにより、ハードコート層2が形成される。電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。紫外線硬化の場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線硬化の場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。
【0050】
次に、本発明に係る反射防止フィルムについて説明する。図2に、ハードコートフィルム10を備えた反射防止フィルム20の断面図を示す。反射防止フィルム20は、ハードコートフィルム10と、ハードコート層2上に設けられた低屈折率層3とを備える。
【0051】
ハードコート層2上に、低屈折率コーティング組成物を用いて低屈折率層3を形成することにより、ハードコートフィルム10に反射防止機能を付与することができる。
【0052】
(低屈折率層)
次に、低屈折率コーティング組成物について説明する。低屈折率コーティング組成物は、少なくとも内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子と、バインダマトリックス形成材料とを含む。
【0053】
低屈折率コーティング組成物に用いる、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子は、屈折率が1.20〜1.44であればよく、特に限定されるものではない。有機珪素化合物から成るマトリックス中に、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子を添加することにより、低屈折率化が可能となる。また、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子は、内部に空気を含有しているために、それ自身の屈折率は、通常のシリカ(屈折率=1.46)と比較して低くなっている(屈折率=1.34〜1.44)。内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子は、多孔性シリカ微粒子の表面を有機珪素化合物等で被覆し、その細孔入口を閉塞して作製される。
【0054】
また、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子を、マトリックス中に添加した場合、シリカ微粒子は中空であるために、マトリックスがシリカ微粒子内部に浸漬することが無く、屈折率の上昇を防ぐことが出来る。内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子の平均粒径は、0.5nm以上200nm以下の範囲内であれはよい。内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子の平均粒径が200nmよりも大きくなると、低屈折率層の表面においてレイリー散乱によって光が散乱され、白っぽく見え、その透明性が低下する。また、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子の平均粒径が0.5nm未満であると、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子が凝集しやすくなってしまう。
【0055】
低屈折率コーティング組成物に加えられるバインダマトリックス形成材料としては、ケイ素アルコキシドの加水分解物を用いることができる。さらには、下記一般式(3)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物を用いることができる。
Si(OR4−x―y・・・(3)
ここで、R、Rは、同一または異なるアルキル基を示し、x、yは0≦x+y≦3を満たす整数である。
【0056】
一般式(1)で表されるケイ素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等を用いることができる。ケイ素アルコキシドの加水分解物は、一般式(1)で示されるケイ素アルコキシドを原料として得られるものであればよく、例えば塩酸にて加水分解することで得られるものである。
【0057】
さらには、低屈折率層3のバインダマトリックス形成材料としては、一般式(3)で表されるケイ素アルコキシドに、下記一般式(4)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物をさらに含有することにより反射防止フィルム20の低屈折率層3の表面に防汚性を付与することができ、さらに、低屈折率層3の屈折率をさらに低下することができる。
Si(OR4−z・・・(4)
ここで、Rはアルキル基、フルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基を示し、Rは、アルキル基を示し、zは1≦z≦3を満たす整数である。
【0058】
一般式(4)で示されるケイ素アルコキシドとしては、例えば、オクタデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0059】
また、バインダマトリックス形成材料として、電離放射線硬化型材料を用いることもできる。電離放射線硬化型材料としては、ハードコート組成物で挙げた電離放射線硬化型材料を用いることができる。また、低屈折率のフッ素系電離放射線硬化型材料を用いて、低屈折率層3を形成するにあっては、必ずしも低屈折率粒子を添加する必要はない。また、電離放射線硬化型材料を用いる場合にあっても、低屈折率層表面に防汚性を発現する材料を添加することが好ましい。なお、バインダマトリックス形成材料として、電離放射線硬化型材料を用い、紫外線を照射することにより低屈折率層を形成する場合には、低屈折率コーティング剤に光重合開始剤を加える。
【0060】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。
【0061】
また、低屈折率コーティング組成物には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えてもよい。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−ブチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、水等の中から、塗工適正等を考慮して適宜選択して使用することができる。
【0062】
また、低屈折率コーティング組成物には、添加剤として、防汚剤、表面調整剤、レベリング剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、光増感剤等を加えてもよい。
【0063】
次に、低屈折率層3の形成方法を説明する。バインダマトリックス形成材料として、ケイ素アルコキシドの加水分解物を用いた場合には、ケイ素アルコキシドの加水分解物と、低屈折率粒子とを含む低屈折率コーティング組成物を、ハードコート層2上に塗布し、塗膜を形成し、該塗膜に対し乾燥・加熱し、ケイ素アルコキシドの脱水縮合反応をおこなうことにより低屈折率層3を形成することができる。また、バインダマトリックス形成材料として、電離放射線硬化型材料を用いた場合には、電離放射線硬化型材料と低屈折率粒子とを含む低屈折率コーティング組成物を、ハードコート層2上に塗布し、塗膜を形成し、該塗膜に対し、必要に応じて乾燥を行い、その後、紫外線、電子線といった電離放射線を照射することにより、電離放射線硬化型材料の硬化反応を行うことにより、低屈折率層3を形成することができる。
【0064】
また、低屈折率層3の他の形成方法として、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーディング法、電気めっき法等の適宜な手段を採用してもよい。例えば、上記以外の反射防止塗料の塗膜、膜厚0.1μm程度のMgF等の極薄膜や金属蒸着膜、あるいはSiOやMgFの蒸着膜により形成してもよい。
【0065】
また、低屈折率層3の表面における表面抵抗値は、1.0×1011Ω/□以下であることが好ましい。ここで、表面抵抗を示す単位として、Ω/□を用いる。低屈折率層3の表面における表面抵抗値が1.0×1011 Ω/□より大きくなると、帯電防止機能が損なわれてしまい、反射防止フィルム20を用いたディスプレイの製造工程で埃などの汚れが付着しやすくなる。低屈折率層3の表面における表面抵抗値は、導電性材料の含有量により調整する。導電性材料の含有量が多すぎると、反射防止フィルム20の鉛筆硬度と、耐擦傷性とが損なわれ、またコスト面でも不利となる。
【0066】
また、反射防止フィルム20には、さらに他の層を積層してもよい。例えば、帯電防止層や防汚層などを積層してもよい。
【0067】
反射防止フィルム20は、ディスプレイ表面のディスプレイ前面板として好適に用いることができる。反射防止フィルム20は、他の部材と組み合わされてディスプレイ前面板として用いることができる。ディスプレイとしては、LCD、PDP、CRT、プロジェクションディスプレイ、ELディスプレイ等を挙げることができる。このとき、反射防止フィルム20の低屈折率層3形成面側が、観察側すなわちディスプレイ表面となるように設けられる。
【0068】
ディスプレイ前面板の一例として、1組の透明フィルム基材に挟持された偏光層を備える偏光板30を図3に示す。偏光板30は液晶ディスプレイに用いられる。反射防止フィルム20の、透明フィルム基材1のハードコート層2形成面とは反対側の面に、偏光層4と第2の透明フィルム基材5を、この順に備えることにより偏光板30とすることができる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例の形態に限定されるものではない。
【0070】
実施例および比較例において、下記の材料を用いて、反射防止フィルムを作製した。
【0071】
<透明フィルム基材>
厚み60μmのトリアセチルセルロースフィルムを用いた。
【0072】
(実施例1)
<ハードコート組成物>
・ビスフェノール系多官能モノマー(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(EO4mol)、大阪有機化学工業社製、商品名;ビスコート#700)50重量部
・多官能モノマー(共栄社化学社製、商品名;UA−306I)50重量部
・四級アンモニウム塩材料(共栄社化学製、商品名;ライトエステルDQ100)6重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名;LUCIRIN TPO)1重量部
・溶剤(アセトン)70重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル)30重量部
を混合攪拌してハードコート組成物を得た。
<ハードコート層の作製>
上記ハードコート組成物を透明基材上にワイヤーバーコーターにより塗布し、塗膜を形成し、25℃20秒の条件で室温乾燥をおこなった。その後、オーブンで60℃40秒の条件で乾燥をおこない、乾燥後、窒素雰囲気下、コンベア式紫外線硬化装置で露光量200mJ/cmで紫外線照射をおこなうことにより、透明基材上に厚さ5μmの電防止機能付きハードコート層を作製した。
<低屈折率コーティング組成物>
・多孔質シリカ微粒子分散液(平均粒子径75nm、固形分20%、溶剤:メチルイソブチルケトン)14.94重量部
・EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、商品名;DPEA−12)1.99重量部
・重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名;イルガキュア184)0.07重量部
・添加剤(GE東芝シリコーン社製、商品名;TSF4460)0.51重量部
・溶剤(メチルイソブチルケトン)82重量部
を混合攪拌して低屈折率コーティング組成物を得た。
<反射防止層の作製>
上記低屈折率コーティング塗液を上記で作製したハードコート層上にワイヤーバーコーターにより塗布し、塗膜を形成し、25℃20秒の条件で室温乾燥をおこなった。その後、オーブンで60℃40秒の条件で乾燥をおこない、乾燥後、窒素雰囲気下、コンベア式紫外線硬化装置で露光量240mJ/cmで紫外線照射をおこなうことにより、反射防止層を作製した。
【0073】
(実施例2)
<ハードコート組成物>
・ビスフェノール系多官能モノマー(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(EO4mol)、大阪有機化学工業社製、商品名;ビスコート#700)75重量部
・多官能モノマー(共栄社化学社製、商品名;UA−306I)25重量部
・四級アンモニウム塩材料(共栄社化学製、商品名;ライトエステルDQ100)6重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名;LUCIRIN TPO)1重量部
・溶剤(アセトン)70重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル)30重量部
を混合攪拌してハードコート組成物を得た。
<ハードコート層の作製>
実施例1と同様の操作を行い、ハードコート層を作製した。
<低屈折率コーティング組成物>
実施例1と同様の操作を行い、低屈折率コーティング組成物を得た。
<反射防止層の作製>
実施例1と同様の操作を行い、反射防止層を作製した。
【0074】
(実施例3)
<ハードコート組成物>
・ビスフェノール系多官能モノマー(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(EO4mol)、大阪有機化学工業社製、商品名;ビスコート#700)25重量部
・多官能モノマー(共栄社化学社製、商品名;UA−306I)75重量部
・四級アンモニウム塩材料(共栄社化学製、商品名;ライトエステルDQ100)6重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名;LUCIRIN TPO)1重量部
・溶剤(アセトン)70重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル)30重量部
を混合攪拌してハードコート組成物を得た。
<ハードコート層の作製>
実施例1と同様の操作を行い、ハードコート層を作製した。
<低屈折率コーティング組成物>
実施例1と同様の操作を行い、低屈折率コーティング組成物を得た。
<反射防止層の作製>
実施例1と同様の操作を行い、反射防止層を作製した。
【0075】
(実施例4)
<ハードコート組成物>
・ビスフェノール系多官能モノマー(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(EO3mol)、新中村化学工業社製、商品名;ABE−300)50重量部
・多官能モノマー(共栄社化学社製、商品名;UA−306I)50重量部
・四級アンモニウム塩材料(共栄社化学製、商品名;ライトエステルDQ100)6重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名;LUCIRIN TPO)1重量部
・溶剤(アセトン)70重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル)30重量部
を混合攪拌してハードコート組成物を得た。
<ハードコート層の作製>
実施例1と同様の操作を行い、ハードコート層を作製した。
<低屈折率コーティング組成物>
実施例1と同様の操作を行い、低屈折率コーティング組成物を得た。
<反射防止層の作製>
実施例1と同様の操作を行い、反射防止層を作製した。
【0076】
(実施例5)
<ハードコート組成物>
・ビスフェノール系多官能モノマー(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(EO10mol)、新中村化学工業社製、商品名;A−BPE−10)50重量部
・多官能モノマー(共栄社化学社製、商品名;UA−306I)50重量部
・四級アンモニウム塩材料(共栄社化学製、商品名;ライトエステルDQ100)6重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名;LUCIRIN TPO)1重量部
・溶剤(アセトン)70重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル)30重量部
を混合攪拌してハードコート組成物を得た。
<ハードコート層の作製>
実施例1と同様の操作を行い、ハードコート層を作製した。
<低屈折率コーティング組成物>
実施例1と同様の操作を行い、低屈折率コーティング組成物を得た。
<反射防止層の作製>
実施例1と同様の操作を行い、反射防止層を作製した。
【0077】
(比較例1)
<ハードコート組成物>
・多官能モノマー(共栄社化学社製、商品名;UA−306I)100重量部
・四級アンモニウム塩材料(共栄社化学製、商品名;ライトエステルDQ100)6重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名;LUCIRIN TPO)1重量部
・溶剤(アセトン)70重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル)30重量部
を混合攪拌してハードコート組成物を得た。
<ハードコート層の作製>
実施例1と同様の操作を行い、ハードコート層を作製した。
<低屈折率コーティング組成物>
実施例1と同様の操作を行い、低屈折率コーティング組成物を得た。
<反射防止層の作製>
実施例1と同様の操作を行い、反射防止層を作製した。
【0078】
(比較例2)
<ハードコート組成物>
・フルオレン系多官能モノマー(大阪ガスケミカル社製、商品名;オグソールH912)50重量部
・多官能モノマー(共栄社化学社製、商品名;UA−306I)50重量部
・四級アンモニウム塩材料(共栄社化学製、商品名;ライトエステルDQ100)6重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名;LUCIRIN TPO)1重量部
・溶剤(アセトン)70重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル)30重量部
を混合攪拌してハードコート組成物を得た。
<ハードコート層の作製>
実施例1と同様の操作を行い、ハードコート層を作製した。
<低屈折率コーティング組成物>
実施例1と同様の操作を行い、低屈折率コーティング組成物を得た。
<反射防止層の作製>
実施例1と同様の操作を行い、反射防止層を作製した。
【0079】
上記で作製した各反射防止フィルムの性能について、下記の方法に従って評価した。
【0080】
「分光反射率・平均視感反射率」
得られた反射防止フィルムの低屈折率層表面について、自動分光光度計(日立製作所社製、U−4100)を用い、入射角5°における分光反射率を測定した。また、得られた分光反射率曲線から平均視感反射率を求めた。なお、測定の際には透明基材であるトリアセチルセルロースフィルムのうち低屈折率層の形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処置をおこなった。
【0081】
「干渉縞観察」
上記で得られた反射防止フィルムについて、透明フィルム基材のハードコート層の形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布したのち、蛍光灯(三波長蛍光灯)直下で低屈折率層表面の干渉縞を目視にて確認した。目視にて確認した干渉縞は、以下の基準で評価した。
◎:干渉縞が認められない。
○:干渉縞がほとんど認められない。
△:干渉縞がわずかに認められる。
×:干渉縞が顕著に認められる。
【0082】
「耐屈曲性」
上記で得られた反射防止フィルムについて、JIS K5600−5−1に準拠し、試験を行った。
【0083】
「密着性」
上記で得られた反射防止フィルムについて、JIS K5600−5−6に準拠して、ハードコート層の残存数にて評価した。目視にて確認した評価を以下のように分類した。
○:剥離は確認されない。
△:20マス以下の剥離が確認できる。
×:20マス以上の剥離が確認できる。
【0084】
「鉛筆硬度」
上記で得られた反射防止フィルムについて、JIS K5600−5−4に準拠して、試験機法により500g荷重で評価した。
【0085】
「表面抵抗」
上記で得られた反射防止フィルムの低屈折率層表面について、JIS−K6911に準拠して高抵抗抵抗率計(ダイアインスツルメンツ社製、ハイレスターMCP−HT260)を用いて、表面抵抗を測定した。
【0086】
「耐光性」
上記で得られた反射防止フィルムへ紫外線フェードメーター(スガ試験機社製、U48AU)を用いて、紫外線カーボンアークを光源とした紫外線照射を低屈折率層側から100時間行った。紫外線照射前後にて、自動分光光度計(日立製作所社製、U−4100)を用いて透過分光スペクトルを測定した。黄変の有無を以下のように分類した。
○:紫外線照射による波長450nmの透過率低減が1%未満。
×:紫外線照射による波長450nmの透過率低減が1%以上。
【0087】
<評価結果>
表1に実施例1〜5および比較例1〜2の評価結果を示す。
【0088】
【表1】
【0089】
実施例1〜5のように、ハードコート組成物にビスフェノール系多官能モノマーを含むことでビスフェノール系多官能モノマーを含まない比較例1よりも平均視感反射率が低く、フルオレン系多官能モノマーを含む比較例2よりも耐光性に優れ、干渉縞の程度が軽く、高い屈曲性を有し、密着性、鉛筆硬度、表面抵抗の性能を悪化させない反射防止フィルムを得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の反射防止フィルムは、液晶ディスプレイ等の各種ディスプレイの光学物品の表面に用いられる反射防止フィルムとして利用できる。
【符号の説明】
【0091】
1 透明フィルム基材
2 ハードコート層
3 低屈折率層
4 偏光層
5 透明フィルム基材
10 ハードコートフィルム
20 反射防止フィルム
30 偏光板
図1
図2
図3