(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アンカー層は、前記シーラント層寄りの第一層と、前記バリア層寄りの第二層とを有し、前記第二層を形成する材料は、前記第一層を形成する材料よりも電解液耐性に優れる、請求項1に記載の二次電池用外装材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で用いられる薄膜は、電解液等に対する耐性が金属箔層に比べて劣る。そのため、電池セル形成後に電解液がシーラント層を透過してバリア層に達すると、バリア層がダメージを受ける結果、バリア機能が低下したり、基材層から剥離したりする等の不具合が発生する可能性があるという問題がある。
【0007】
上記事情を踏まえ、本発明は、金属箔層を用いない構成でありながら、バリア層におけるバリア機能の低下や基材層からの剥離等を起こしにくい二次電池用外装材および二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、基材層と、前記基材層の一方の面上に蒸着により形成されたバリア層と、熱融着可能な樹脂を含み、前記バリア層に接合されたシーラント層と、前記バリア層と前記シーラント層との間に設けられて前記バリア層と前記シーラント層との密着性を高め
、かつ電解液に対して耐性を発揮するアニオンポリマーまたはカチオンポリマーを含有するアンカー層と、
前記基材層のうち前記バリア層が形成された面と反対側の面に設けられ、カルシウム系化合物粒子、硫酸マグネシウム、または結晶水が除去されたハイドロタルサイト類を含有する水分吸収層とを備える二次電池用外装材である。
【0009】
前記アンカー層の厚みは、5nm以上70nm以下であってもよい。
また、前記アンカー層は、前記シーラント層寄りの第一層と、前記バリア層寄りの第二層とを有し、前記第二層を形成する材料は、前記第一層を形成する材料よりも電解液耐性に優れる構成としてもよい。
【0011】
本発明の第二の態様は、本発明の二次電池用外装材を備える二次電池である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二次電池用外装材および二次電池によれば、金属箔層を用いない構成でありながら、バリア層におけるバリア機能の低下や基材層からの剥離等を起こしにくいものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第一実施形態について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態の二次電池用外装材(以下、単に「外装材」と称する)1を示す断面図である。
外装材1は、
図1に示すように、基材層10と、熱融着可能なシーラント層20と、基材層10とシーラント層20との間に形成されたバリア層30と、バリア層30とシーラント層20とを接合する接着層40とを備えている。
【0015】
基材層10としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等からなるフィルムを用いることができる。基材層の厚さは適宜設定できるが、例えば、6〜40マイクロメートル(μm)が好ましく、10〜30μmがより好ましい。基材層10の厚さが下限値以上であれば、耐ピンホール性、絶縁性、成型性がより良好になる。基材層10の厚さが上限値以下であれば、成型加工により延伸された箇所の伸縮が押さえられ、成型加工後の形状を好適に維持することができる。
【0016】
シーラント層20は、外装材1を用いて電池セルを形成する際に、ヒートシールにより接合される層である。
シーラント層20の材料としては、熱融着可能な樹脂が用いられる。耐衝撃性および熱封緘性に優れる観点からは熱可塑性樹脂が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が好ましい。例えば、ポリプロピレンとしては、ホモ、ブロック、またはランダムポリプロピレン等が挙げられる。また、シーラント層20は単層で構成されてもよいし、複数の層を備えた多層構成であってもよい。シーラント層20の厚さは、20〜100μm程度が好ましい。シーラント層の厚さが20μm以上であれば優れたヒートシール性が得られやすく、100μm以下であればシール端面から電池内部に透過する水分量を低減しやすい。
【0017】
バリア層30は、金属あるいは金属酸化物等からなり、基材層10の一方の面上に蒸着により形成されている。バリア層30の材料としては、アルミニウム、酸化ケイ素、アルミナなどを用いることができる。
接着層40の材料としては、熱可塑性樹脂が好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂に無水マレイン酸等の酸をグラフト変性させた酸変性エラストマー樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体、ホモ、ブロックやランダムポリプロピレン、プロピレン−αオレフィン共重合体などが挙げられる。これらポリオレフィン樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。酸変性ポリオレフィン系樹脂は電解液耐性に優れており、フッ酸発生時でも接着樹脂の劣化による密着力低下を抑制しやすい。接着樹脂層30の厚さは1〜50μmが好ましく、5〜40μmがより好ましい。接着層40の厚さが1μm以上であれば、十分な接着強度が得られやすく、50μm以下であれば、シートシール面から電池内部に透過する水蒸気量を低減しやすい。
接着層40は、ドライラミネーションなどの手法で形成するのが好ましい。この場合は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等の主剤に、硬化剤として2官能以上の芳香族系または脂肪族系イソシアネート化合物を作用させる2液硬化型のウレタン系接着剤などを用いることもできる。
【0018】
図
1に示すように、バリア層30と接着層40との間には、アンカー層50が設けられている。アンカー層50は、バリア層30とシーラント層20との密着性を向上させるとともに、電解液等に対しても耐性を発揮し、シーラント層20および接着層40を透過してきた電解液等からバリア層30を保護する。アンカー層50の材料としては、アニオンポリマーまたはカチオンポリマー等を用いることができる。
アニオンポリマーとしては、カルボキシ基を有するポリマーが挙げられ、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸(あるいはその塩)、あるいはポリ(メタ)アクリル酸を主成分として共重合した共重合体が挙げられる。この共重合体の共重合成分としては、アルキル(メタ)アクリレート系モノマー(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等。);(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等。)、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド、(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等。)、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマー;(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシラン等のシラン含有モノマー;(メタ)アクリロキシプロピルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー等が挙げられる。
カチオンポリマーとしては、アミンを有するポリマーが挙げられ、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンあるいはこれらの誘導体、アミノフェノール等のカチオン性のポリマーが挙げられる。
なお、上記表記において、例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタアクリル酸を意味し、他の化合物についても同様である。
アンカー層50の厚みとしては、例えば5nm以上70nm以下程度が好ましい。
【0019】
上述のように構成された外装材1の製造手順の一例について示す。
まず、基材層10となる樹脂フィルムの一方の面に、蒸着によりバリア層30を形成する。続いて、アンカー層50の材料を含む塗工液を、バリア層30上に塗工する。乾燥後の塗工量は、5mg/m
2以上70mg/m
2以下が好ましい。5mg/m
2未満では塗工抜けが生じる可能性があり、アンカー層50の層形状が安定しない。また、70mg/m
2を超えると、塗工膜中で破壊が起きやすくなり、密着力が低減する可能性がある。塗工した塗工液を加熱して溶媒を除去すると、アンカー層50が完成する。
【0020】
アンカー層50の形成後、接着層40を用いたドライラミネーションやヒートラミネーション等によりアンカー層50上にシーラント層20を形成すると、外装材1が完成する。接着層40の材料は、接合方法により適宜選択する。
【0021】
完成した外装材1を2枚対向させる、あるいは1枚の外装材1をシーラント層20が対向するように折り返して、内部に発電要素や端子となるタブ部材等を配置し、周縁をヒートシールにより接合すると、外装材1を用いた二次電池セルが完成する。
【0022】
本実施形態の外装材1によれば、シーラント層20とバリア層30との間にアンカー層50が設けられているため、バリア層30を蒸着により形成しても、電解液の影響によりバリア層30が他の層から剥離する等の事態が好適に抑制される。その結果、長期の使用等にもよく耐える外装材とすることができる。
【0023】
本発明の第二実施形態について、
図2を参照して説明する。本実施形態の外装材61と上述の外装材1との異なるところは、アンカー層の構成である。なお、以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0024】
図2は、外装材61の断面図である。外装材61は、アンカー層50に代えて、第一層63と第二層64とを有する二層構造のアンカー層62を備えている。
第一層63および第二層64の材料としては、第一実施形態で挙げたアンカー層50の材料を適宜選択して用いることができる。例えば、ポリアクリル酸およびポリアリルアミンを第一層63および第二層64の材料として用いる場合、ポリアクリル酸はより電解液耐性に優れ、ポリアリルアミンはより密着性に優れているため、シーラント層20に近い第一層63をポリアリルアミンで形成し、バリア層30寄りの第二層64をポリアクリル酸で形成すると、電解液耐性および密着性の両方に優れたアンカー層62を構成することができるため好ましい。
なお、本発明において、「電解液耐性」とは、電池に用いられる電解液と水分とが反応することにより発生するフッ酸による腐食に対する耐性を指す。
【0025】
本実施形態の外装材61においても、第一実施形態の外装材1と同様に、電解液の影響によりバリア層30が他の層から剥離する等の事態を好適に抑制し、長期の使用等にもよく耐える外装材とすることができる。
【0026】
本発明の第三実施形態について、
図3を参照して説明する。本実施形態の外装材71と上述の各実施形態の外装材との異なるところは、水分吸収層を備える点である。
【0027】
図3は、外装材71の断面図である。基材層10のうち、バリア層30が形成された面と反対側の面には、水分を吸収する水分吸収層72が設けられている。水分吸収層72は、水分を吸収する材料を含有している。このような材料としては、カルシウム系化合物の粒子や、硫酸マグネシウム、焼成して結晶水を除去したハイドロタルサイト類などが挙げられる。
【0028】
外装材71を用いて電池セルを形成する場合、水分吸収層72が電池セルの外表面を構成する。電池セルの外部にあって外装材71に付着した水分等は水分吸収層72で吸収され、それ以上内部に進入することが抑制される。その結果、シーラント層20を透過してきた電解液等と水分との反応が防止され、バリア層30が好適に保護される。
【0029】
本実施形態では、基材層の一方の面に水分吸収層が設けられる例を説明したが、水分吸収層の形成位置はこれには限られず、電解液等と水分との接触を防ぐことが可能な位置であればどこでも構わない。例えば、基材層とバリア層との間や、バリア層とアンカー層との間に設けられてもよい。
さらに、水分吸収層を形成するのに代えて、アンカー層に水分吸収層の材料を含有させてもよい。第二実施形態のようにアンカー層を複数層構成とする場合は、そのいずれかの層にのみ水分吸収材料を含有させてもよい。
【0030】
本発明の外装材について、実施例および比較例を用いてさらに説明するが、本発明は、実施例の具体的内容にもとづいて何ら限定されるものではない。
【0031】
[使用材料]
実施例及び比較例における各層の材料および厚さを以下に示す。
(基材層)
基材A−1:PETフィルム(厚さ25μm)
(バリア層)
バリアB−1:酸化ケイ素(厚さ60nm)
(アンカー層)
アンカーC−1:ポリアリルアミン(厚さ20nm)
アンカーC−2:ポリアリルアミン(厚さ20nm)/ポリアクリル酸(厚さ20nm)
(接着層)
接着剤D−1:ポリエステルウレタン系接着剤
(シーラント層)
フィルムE−1:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ40μm)
(水分吸収層)
水分吸収F−1:炭酸カルシウム粒子含有アクリル層(厚さ5μm)
【0032】
[製造手順]
まず、基材層の一方の面にバリア層の材料を蒸着してバリア層を形成し、さらにバリア層上にアンカー層の材料を塗布してアンカー層を形成した。次に、アンカー層上に接着剤を塗布して接着層を形成し、接着層を介したドライラミネーションによりシーラント層となるフィルムを貼り合わせた。水分吸収層は、必要に応じて予めシーラント層となるフィルムに形成しておいた。
以上の手順により各例の外装材を製造した。
【0033】
[各例の構成]
実施例1から3、および比較例1の各層における材料は、以下の通りである。
実施例1 基材A−1、バリアB−1、アンカーC−1、接着剤D−1、フィルムE−1
実施例2 基材A−1、バリアB−1、アンカーC−2、接着剤D−1、フィルムE−1
実施例3 基材A−1、バリアB−1、アンカーC−1、接着剤D−1、フィルムE−1、水分吸収F−1
比較例1 基材A−1、バリアB−1、接着剤D−1、フィルムE−1
【0034】
各例の外装材について、以下の要領で電解液耐性および水分バリア性を評価した。
[電解液耐性評価]
各例の外装材を、100mm×15mmの長方形に切り出し、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/ジエチルカーボネート=1/1/1(質量比)に対し、LiPF
6(六フッ化リン酸リチウム)を1.5Mになるように調整して溶解した電解液中に浸漬し、所定時間放置した。その後、外装材を取り出し、基材層とシーラント層とのラミネート強度をT型剥離法により測定した。放置時間は、1日および7日の2種類設定した。評価は下記3段階とした。
×(poor):測定前に剥離を認める
○(good):測定前に剥離を認めず、ラミネート強度が3ニュートン(N)未満
◎(excellent):測定前に剥離を認めず、ラミネート強度が3ニュートン(N)以上
[水分バリア性評価]
水分バリア性評価は、実施例についてのみ行った。各例の外装材を2枚切り出してシーラント層を対向させ、内包サイズが100mm×45mmとなるように三辺をヒートシールにより接合した。開放された一辺からリチウム塩を含まない電解液を3g注入し、当該一辺をヒートシールして密閉した。その後、ヒートシール幅が5mmとなるように周縁をトリミングし、40℃90%RH(相対湿度)の環境に1日放置した。その後、内包された電解液中の含有水分量をカールフィッシャー水分計にて測定して透過水分量の値とし、これにもとづいて水分透過率を算出して水分バリア性の指標とした。
評価は下記3段階とした。
×(poor):水分透過率が10
-1g/m
2・day以上
○(good):水分透過率が10
-1g/m
2・day未満、10
-2g/m
2・day以上
◎(excellent):水分透過率が10
-2g/m
2・day以上未満
【0037】
比較例1においては、バリア層の剥離が確認されたが、実施例ではいずれもバリア層の剥離を認めなかった。
実施例2は特に電解液耐性に優れていた。実施例3は、実施例1および2に比べて水分バリア性に優れていた。
【0038】
以上、本発明の各実施形態および実施例について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成要素の組合せを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。