(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
作業対象物に直接または間接的に付され、前記作業対象物に対する1以上の作業工程をそれぞれ実行する1台以上の作業装置を制御する個別制御器において、前記作業工程の作業内容または前記作業対象物に関連する出荷前検査データへのアクセスを制限するアクセス制限方法であって、
サプライヤ側で作成および追記される、対応する種類の前記作業対象物に対する前記各作業工程の前記作業内容と前記出荷前検査データおよびその公開範囲とを記憶する記憶ステップと、
前記出荷前検査データへのアクセス要求を当該作業装置から無線受信した場合には、当該作業装置から無線受信した当該作業装置を識別するための固有識別情報に基づいて当該作業装置の種類を識別して、さらに前記公開範囲に基づいてアクセスを許可するか否かを判別するアクセス可否判定ステップと、
このアクセス可否判定ステップでアクセスを許可すると判別したときのみ前記出荷前検査データを当該作業装置へ無線送信する出荷前検査データ送信ステップと
を含むことを特徴とするアクセス制限方法。
【背景技術】
【0002】
従来の多品種生産においては、製品を品種毎に管理し、各品種の受注状態・受注予測を見て都度製造工程を組み替えながら生産を行ってきた。しかし、この方法では、生産したい品種が極端に多く、受注状態が不安定な場合や受注予測が立たないオンデマンド生産を行う(生産するものが1つ1つ異なる)場合に、装置の組み替えチューニングにかかる工数が極端に増加してしまう。
【0003】
そこで、ワークに付けた無線ICタグからそのタグ情報を読み取ることで製品の品種を識別し、生産ラインの装置などの作業プログラムを自動変更するようにした「無線PLCを用いた無線ICタグ利用多品種自動生産システム」が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来技術では、予め想定される全製品用のユーザプログラム、画像処理項目、チューニング用設定値などをPLC、画像センサ、ロボットに置いておき、工程の先頭で各製品の識別情報を取得することでラインを都度自動的にチューニングし直す必要がある。そのため、各装置が想定していない未知の製品が工程に流れてきたときはチューニングできない。
【0005】
そこで、無線ICタグで製品の品種を識別するだけでなく、実行すべき処理の内容も無線ICタグに記憶させるようにした「RFIDシステム及びRFIDタグ」も提案されている(特許文献2参照)。また、この特許文献2に記載のRFIDシステムでは、RFIDタグに対してその作業内容やテスト結果等の製品や部品に関する情報を順次書き込んでおり、RFIDタグに格納されているデータを参照することにより、そのRFIDタグの付されている部品あるいは製品の状態を管理する(特許文献2の明細書の段落0002参照)。つまり、検査データなどを、無線ICタグやRFIDに保存しているのである。
【0006】
しかしながら、安価な無線ICタグなどではメモリ容量が限られており、大量のデータをそのまま保存することは困難であった。かと言って、大容量タイプの無線ICタグなどを用いると大幅なコストアップを招いてしまう。
【0007】
そこで、検査データなどを無線ICタグの識別情報とのセットですべてサーバ上に保存するようにして、後工程などで無線ICタグの識別情報を用いてサーバにアクセスすることで、サーバ上に保存された検査データなどを参照できるようにした「製造管理システム及び水晶発振器」も提案されている(特許文献3参照)。
【0008】
一方、複数の製造業者が供給した製品またはサービスの情報が中央データベースに保持されるとともに、各製品などがRFIDなどの識別子を含んでおり、顧客がその識別子を読んで中央データベースにアクセスすることで各製品などの情報を得ることができる「情報システムおよびその方法」も提案されている(特許文献4参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
例えば、サプライヤから受け入れた製品の受入検査を行う場合、"サンプリング検査では必ずしも十分ではないため、"全品検査に相当する検査が必要となるが、この場合も装置の組み換え・チューニングにかかる工数が増加してしまう。それを極力抑えるために、サプライヤ側から個々の検査データを入手することで、サプライヤ側で行う出荷前検査と重複する受け入れ検査工程を省略したいというニーズがある。しかし、サプライヤ側から受入側に提供できる情報はセキュリティ面を考慮すると限定的なものとなってしまい、大幅な工程省略は行えていない。
【0011】
特許文献2〜4に記載されているような従来技術では、受入側での検査データ取得は容易だが、サプライヤ側からそれらの検査データに閲覧制限をかけるのは難しい。また、取得した検査データを使用する装置用プログラムを書くことも難しい。
【0012】
また、特許文献3、4に記載されているような従来技術では、各サプライヤと受入側の共有サーバにデータベースを構築する必要があり、取引相手・量が安定的でない多品種生産においては、設置・運用面で対応が難しい。
【0013】
従来技術のこのような課題に鑑み、本発明の目的は、出荷前検査データに対してサプライヤ側から閲覧制限をかけることができ、且つ受入側が取得・閲覧したデータを容易に装置用プログラム内で使用することができるとともに、取引相手・量が不安定であっても設置・運用が容易な検査データ交換を実現する作業工程管理システムおよびそれに用いられる個別制御器並びにアクセス制限方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の作業工程管理システムは、作業対象物に対して1以上の作業工程をそれぞれ実行する1台以上の作業装置と、前記作業対象物に直接または間接的に付されて前記作業装置を制御する個別制御器とを備える。
【0015】
前記各作業装置はそれぞれ、外部との無線通信を行うとともに固有識別情報も送信可能な作業装置側通信部と、前記作業工程を実行する作業部と、前記作業装置側通信部を介して前記作業工程の作業内容または前記作業対象物に関連する関連情報へのアクセス要求を送信するとともに、そのアクセス要求によって受信した受信結果と前記作業装置側通信部を介して受信した指令とに基づいて前記作業部による前記作業工程の実行を制御する作業装置側制御部とを備える。
【0016】
前記個別制御器は、対応する種類の前記作業対象物に対する前記各作業工程の前記作業内容と前記関連情報およびそのアクセス制限情報とを記憶する個別制御器側記憶部と、外部との無線通信を行う個別制御器側通信部と、前記作業装置のいずれかに対応する前記作業工程の前記作業内容を前記指令として前記個別制御器側通信部を介して当該作業装置に送信するとともに、前記関連情報への前記アクセス要求を前記個別制御器側通信部を介して当該作業装置から受信した場合には、当該作業装置から受信した前記固有識別情報に基づいて当該作業装置の種類を識別して、さらに前記アクセス制限情報に基づいてアクセスを許可するか否かを判別し、アクセスを許可すると判別したときのみ前記関連情報を前記個別制御器側通信部を介して当該作業装置へ送信する個別制御器側演算制御部とを備える。
【0017】
ここで、「作業」とは、「生産」や「製造」のみならず、「組立」、「検査」、「梱包」などを包含する上位概念である。「作業工程管理システム」としては、工場などでの生産管理システムや製造管理システムなどが挙げられるが、これらに限らない。「作業装置」としては、画像処理技術を用いた不良品判定装置や、不良品と判定された部品などを生産ライン上から取り除くP&P(Pick&Place)装置などが挙げられるが、これらに限らない。「関連情報」とは、前記作業工程の作業内容に関連する情報、または前記作業対象物自体に関連する情報である。前者の情報としては、例えば、検査で得られた実測値や検査結果に基づく良否判定などが挙げられるが、これらに限らない。また、後者の情報としては、例えば、前記作業対象物自体の価格が挙げられるが、これに限らない。
【0018】
また、前記アクセス制限情報は、前記個別制御器側記憶部に先に記憶される第1アクセス制限情報と、その後に前記個別制御器側記憶部に記憶されて前記第1アクセス制限情報によるアクセス制限範囲をさらに限定する第2アクセス制限情報とを含むことが好ましい。さらに、前記第1アクセス制限情報は書き換え禁止であることが好ましい。また、前記個別制御器側演算制御部において、前記アクセス制限情報に基づいてアクセスを許可するか否かを判別することは、例えば、ファンクションブロックを用いて実装してもよい。
【0019】
このような構成の作業工程管理システムによれば、例えば、作業工程の内容に関連する関連情報である出荷前検査データに対して、サプライヤ側から閲覧制限をかけることができ、且つ受入側が取得・閲覧したデータを容易に装置用プログラム内で使用することができるとともに、取引相手・量が不安定であっても設置・運用が容易な検査データ交換を実現することができる。
【0020】
また、本発明の作業工程管理システムに用いられる前記個別制御器自体も本発明の範疇である。
【0021】
あるいは、本発明のアクセス制限方法は、作業対象物に直接または間接的に付され、前記作業対象物に対する1以上の作業工程をそれぞれ実行する1台以上の作業装置を制御する個別制御器において、前記作業工程の作業内容または前記作業対象物に関連する関連情報へのアクセスを制限するアクセス制限方法であって、対応する種類の前記作業対象物に対する前記各作業工程の前記作業内容と前記関連情報およびそのアクセス制限情報とを記憶する記憶ステップと、前記関連情報へのアクセス要求を当該作業装置から無線受信した場合には、当該作業装置から無線受信した当該作業装置の固有識別情報に基づいて当該作業装置の種類を識別して、さらに前記アクセス制限情報に基づいてアクセスを許可するか否かを判別するアクセス可否判定ステップと、このアクセス可否判定ステップでアクセスを許可すると判別したときのみ前記関連情報を当該作業装置へ無線送信する関連情報送信ステップとを含むことを特徴とする。
【0022】
また、本発明のアクセス制限方法において、前記記憶ステップは、第1アクセス制限情報を先に記憶する第1記憶ステップと、その後に前記第1アクセス制限情報によるアクセス制限範囲をさらに限定する第2アクセス制限情報を記憶する第2記憶ステップとを含むことが好ましい。
【0023】
このような構成のアクセス制限方法によれば、例えば、作業工程の内容に関連する関連情報である出荷前検査データに対して、サプライヤ側から閲覧制限をかけることができ、且つ受入側が取得・閲覧したデータを容易に装置用プログラム内で使用することができるとともに、取引相手・量が不安定であっても設置・運用が容易な検査データ交換を実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の作業工程管理システムおよびそれに用いられる個別制御器並びにアクセス制限方法によれば、例えば、作業工程の内容に関連する関連情報である出荷前検査データに対して、サプライヤ側から閲覧制限をかけることができ、且つ受入側が取得・閲覧したデータを容易に装置用プログラム内で使用することができるとともに、取引相手・量が不安定であっても設置・運用が容易な検査データ交換を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る生産管理システム100の実施形態を図面を参照して説明する。なお、本発明は、工場などでの生産管理や製造管理だけでなく、より幅広い各種作業を管理するシステムなどに適用可能である。ここでは「作業」という用語を「生産」や「製造」などの上位概念として用いている。
【0027】
<生産管理システム100の概略構成>
図1は本発明の一実施形態に係る生産管理システム100の全体概観図である。この生産管理システム100は、生産ラインの一部であるコンベア3上を流れる各種部品・製品などの各ワーク2(作業対象物)に対して、1以上の生産工程や検査工程などの作業工程をそれぞれ実行する1台以上の作業装置10と、各ワーク2に取り付けられてそのワーク2の種類に応じた作業工程を実行させるように各作業装置10を制御するタグ型コントローラ20とを備えている。
【0028】
作業装置10としては、例えば、ワーク2の撮像結果に基づいてその形状やサイズを検出したり外観の異常の有無などを確認したりして不良品か否かを判定する画像処理装置10Aや、外部からの指令に従ってワーク2をベルトコンベア3上から取り除くP&P装置10Bなどが挙げられる。この他、組立装置、検査装置、梱包装置なども挙げられるが、これらに限らない。なお、特に区別が必要ない場合には、画像処理装置10AやP&P装置10Bなどを作業装置10と総称する。
【0029】
タグ型コントローラ20は、従来技術の無線ICタグやRFIDタグなどと同様に、各ワーク2に直接または間接的に取り付けられる。例えば、ワーク2が比較的大きければ、その側面などにタグ型コントローラ20を直接貼り付けてもよい。逆に、ワーク2が比較的小さければ、そのワーク2を収容する容器などにタグ型コントローラ20を取り付けてもよい。ワーク2の形状などによっては、そのワーク2を載置する台などにタグ型コントローラ20を取り付けることもあり得る。
【0030】
ユーザPC(パーソナルコンピュータ)1は無線通信用インターフェイスを備えており、必要に応じてタグ型コントローラ20との無線通信を行うが、詳細は後述する。
【0031】
コンベア3は、コンベア駆動用コントローラ4によって駆動開始・停止や駆動速度などが制御される。そのコンベア3上に乗った各ワーク2は、通常は一定速度で移動することになり、コンベア3に沿って配置された各作業装置10によって生産工程や検査工程などの作業工程が順に実行される。
【0032】
図2は生産管理システム100における各作業装置10に共通する基本構成の概略図である。この
図2に示すように、各作業装置10はそれぞれ、記憶部11と、作業部13と、通信部12と、制御部14とを備えている。
【0033】
記憶部11は、作業工程の作業内容および関連設定情報を記憶する。さらに、作業中の各種データや作業結果情報などを記憶してもよい。作業内容および関連設定情報などについて、例えば、画像処理装置10Aが扱うデータとしては、処理項目、真値データ(真値画像データ・形状情報・現在位置)、実画像データ、OK/NG判定結果などが挙げられるが、これらに限らない。また、P&P装置10Bが扱うデータとしては、このP&P装置10Bへの指令値が挙げられるが、これに限らない。
【0034】
通信部12は、無線送受信器およびアンテナなどを備えており、外部(例えば、タグ型コントローラ20)との無線通信を行う。
【0035】
なお、この通信部12自体で無線通信を行えることは不可欠ではない。例えば、有線のネットワーク通信のみを可能にするとともに無線ルータに接続し、この無線ルータを介することで外部との無線通信を行えるようにしてもよい。
【0036】
作業部13は、記憶部11に記憶された作業工程の作業内容および関連設定情報などに基づいて作業工程を実行する。
【0037】
制御部14は、通信部12を介して受信したコマンドなどに従って記憶部11に記憶された作業内容および関連設定情報の少なくとも一部を必要に応じて更新する。さらに、更新された作業内容および関連設定情報に基づいて作業部13による作業工程の実行を制御する。
【0038】
図3は生産管理システム100に用いられるタグ型コントローラ20の概略構成図である。この
図3に示すように、各タグ型コントローラ20はそれぞれ、記憶部21と、位置検出部23と、通信部22と、演算制御部24と、電源部25とを備えている。
【0039】
記憶部21は、タグ型コントローラ20が対応する種類のワーク2に対して各作業工程で作業装置10によって実行される作業内容および関連設定情報を記憶する。さらに、各作業装置10が配置されている位置も予め記憶させておく。
【0040】
通信部22は、無線送受信器およびアンテナなどを備えており、ユーザPC1などの外部との無線通信を行う。記憶部21に記憶する作業内容および関連設定情報などは、この通信部22を介してユーザPC1などの外部から受信される。
【0041】
位置検出部23は、コンベア3上の初期位置、移動速度および移動開始からの経過時間などに基づいてコンベア3上の現在位置を検出する。コンベア3上の移動速度などは、通信部22を介してコンベア駆動用コントローラ4から取得するようにしてもよい。
【0042】
演算制御部24は、作業装置10側の通信部12に、記憶部21に記憶されている当該作業装置10による作業工程の作業内容および関連設定情報にそれまでに実行した各作業工程の実行結果を反映したものを当該作業装置10へのコマンドとして通信部
22を介して送信する。さらに、通信部12から通信部22を介して受信した作業工程の実行結果を記憶部21に追加記憶させる。
【0043】
電源部25は、記憶部21、位置検出部23、通信部22および演算制御部24に給電する。この電源部25は、例えば、アクティブICタグと同様に、ボタン電池などであってもよい。しかし、可能であれば、電池残量の管理や電池交換の手間などを省けるように、外部から非接触電力伝送方式(例えば電磁誘導などを用いる)によって電力が供給されるようにすることが好ましい。電磁誘導を用いる場合であれば、例えばコンベア3の下部または周辺などに磁力発生装置を配置してもよい。
【0044】
さらに、外部から供給された電力を蓄えるとともに必要に応じて放電を行う蓄電池を備えるようにしてもよい。これにより、コンベア3に沿って磁力発生装置をくまなく配置しなくてもよくなるし、蓄電池への充電をコンベア3上以外の別の場所などで行うようにすることも可能となる。
【0045】
タグ型コントローラ20は、現時点では想定されるコスト面などから、生産ラインなどでの使用後にワーク2から取り外して回収して再利用することが好ましい。ただし、必ずしも回収・再利用しなくてもよい。例えば、現状の無線ICタグ並みにコストダウンが進めば、敢えて回収する必要性は低くなる。また、コストダウンとともに十分なコンパクト化が進めば、例えば、ワーク2に予め内蔵しておくようなシステム構成なども可能となる。
【0046】
<生産管理システム100によるねじ検査工程>
図4は生産管理システム100によるねじ検査工程のうち、サプライヤ側での「出荷前検査」から「出荷」までの流れの概略説明図である。この
図4において、各工程は左から右へと処理が行われる(後述する
図5、
図6についても同様)。
【0047】
●1 出荷前検査
まず、サプライヤの作業者がサプライヤ側PC1Sを用いて検査項目リストLTIおよび検査結果リストLTRを作成して(S401)、タグ型コントローラ20へ送信する。これらの検査項目リストLTIおよび検査結果リストLTRは、記憶部21に記憶される。
【0048】
ここで、検査項目リストLTIとは、ワーク2に対する検査項目およびその公開範囲を対にして必要に応じて列挙したものである。検査項目としては、例えば、検査対象であるワーク2の高さ、縦方向の長さ、および横方向の長さなどが挙げられるが、これらに限らない。"検査という名称に必ずしも限定されるわけではなく、後述するように「価格」なども検査項目となり得る。"この時点では、各検査項目の公開範囲は未入力(ヌル)でもよいし、この公開範囲が未入力の検査項目を公開禁止として扱ってもよい。検査結果リストLTRとは、検査項目およびその実測値を対にして列挙したものであり、各検査項目は検査項目リストLTIと同一である。この時点では、各検査項目の実測値は未入力(ヌル)である。また、検査項目リストLTIから公開範囲に何らかの範囲が入力されている検査項目およびその公開範囲を抽出したものと、これと同じ検査項目およびその実測値を検査結果リストLTRから抽出したものを合わせて情報提供リストLIPという。
【0049】
この情報提供リストLIPについては、例えば、サプライヤ側の部品などの設計データ(3次元CADなどのデータ)から算出することも可能である。また、想定される検査項目を標準化できれば、各検査項目の公開/非公開はフラグのみで指定可能となる。あるいは、検査項目のすべてではないものの少なくとも一部だけでも標準化できれば、それらの検査項目については公開/非公開をフラグで指定するとともに、他の検査項目のみを情報提供リストLIPに掲載すればよい。
【0050】
次に、ワーク2に取り付けられたタグ型コントローラ20に対して、サプライヤ側PC1Sからユーザプログラムなどの初期設定を行う(S402)。例えば、ユーザプログラム以外にも画像処理項目、初期座標、スレーブ座標、スレーブ設定情報などが挙げられるが、これらに限らない。
【0051】
タグ型コントローラ20が取り付けられたワーク2はコンベア3によって移動するが(この図では左から右へ)、タグ型コントローラ20は位置検出部23によってコンベア3上での現在位置を監視し続けている。高さ測定機器10Cに接近したことを検出すると、タグ型コントローラ20は高さ測定機器10Cにワーク2の高さを測定させるためのプログラムや関連設定情報などを送信する。
【0052】
こうして送信されたプログラムや関連設定情報などに従って高さ測定機器10Cはワーク2の高さを測定し、その測定結果をタグ型コントローラ20へ送信する(S411)。
【0053】
タグ型コントローラ20は、高さ測定機器10Cから送信されてきたワーク2の高さの測定結果(例えば11)を、検査結果リストLTRの該当欄へ追記する(S412)。
【0054】
なお、ワーク2の高さだけでなく、縦方向および横方向の各長さも測定できるように高さ測定機器10Cを構成してもよい。その場合、高さ測定機器10Cで測定されたワーク2の縦方向の長さ(○○)および横方向の長さ(△△)は、S411で高さとともにタグ型コントローラ20へ送信され、S412で検査結果リストLTRの各該当欄へそれぞれ追記される。
【0055】
●2 出荷(1/2)
サプライヤの作業者がサプライヤ側PC1Sを用いて情報提供リストLIPに対し、検査項目「価格」をそれぞれ追加することで、情報提供リストLIPを完成する(S421)。
【0056】
ここで、完成した情報提供リストLIPにおける検査項目「価格」の公開範囲としては、例えば、受入側の責任者PCを示す「P社(責者PC)」が設定される。検査項目「価格」の実測値としては、例えば「¥100」が設定される。検査項目「高さ」の公開範囲としては、例えば、受入側の画像処理装置10Aおよびロボット(例えばP&P装置10B)を示す「P社(画・ロ)」が設定されている。検査項目「高さ」の実測値は、上述したように「11」が入力されている。なお、別の情報提供リストLIPでは検査項目「高さ」の実測値に「9」が入力されていることからもわかるように、この検査項目「高さ」の実測値は各ワーク2の固有値である。
【0057】
次に、サプライヤ側PC1Sは、完成した情報提供リストLIPに基づいたファンクションブロックFBを生成し、ワーク2に取り付けられたタグ型コントローラ20へ送信する(S422)。
【0058】
図5は生産管理システム100によるねじ検査工程のうち、サプライヤ側での「出荷」から受入側での「受入」までの流れの概略説明図である。なお、この
図5の左側の一部は
図4の右側と重複しているので、その部分の詳しい説明は省略する。
【0059】
●3 出荷(2/2)
図4を参照して説明したように、サプライヤ側PC1Sによって情報提供リストLIPが完成される。情報提供リストLIPの検査項目リストLTIは受入側に公開されるが、検査結果リストLTRは非公開(暗号化)とされる。
【0060】
また、サプライヤ側PC1Sを用いてサプライヤによって作成されたワーク2の高さ情報を得るためのファンクションブロックFB(S422参照)も公開される。このファンクションブロックFBは、「高さ要求トリガ」および「DeviceID」を入力すると「高さ」が出力されるものである。
【0061】
「DeviceID」とは、例えば、産業用オープンネットワーク「EtherCAT(イーサキャット)」において、接続されたデバイスの識別用に、通信パケットの所定の場所に入れておくことが規定されているものである。具体的には、
VendorID :製造メーカー
ProductCode :製品名
RevisionCode:改訂番号
とすると、
VendorID+ProductCode+RevisionCode
が該当する。なお、EtherCATにおけるこれらの情報は公開されている。また、EtherCAT以外の通信プロトコルなどであっても、同様の仕組みが採用されていれば、「DeviceID」として利用できる。
【0062】
このような工程を経た後、ワーク2はタグ型コントローラ20が取り付けられたままでサプライヤから出荷され、受入側へと輸送される。
【0063】
●4 受入(1/2)
受入側ではまず、受入側PC1Rを用いて情報要求リストLIDを作成する。ここで、情報要求リストLIDとは、情報提供リストLIPに含まれていた各検査項目と、受入側が希望する各公開範囲をそれぞれ対にして列挙したものである。検査項目「価格」について受入側が希望する公開範囲としては、例えば、受入側の担当者の1人である「Aさん」が設定される。検査項目「高さ」について受入側が希望する公開範囲としては、例えば、受入側の画像処理装置10Aおよびロボット(例えばP&P装置10B)を示す「画・ロ」が設定される。
【0064】
次に、サプライヤから公開されているファンクションブロックFBを使用したユーザプログラムの作成を受入側PC1Rで行い、そのユーザプログラムをタグ型コントローラ20へ送信する(S501)。
【0065】
そのユーザプログラムでは、「高さ要求トリガ」および「DeviceID」がファンクションブロックFBに入力されると、情報提供リストLIPの検査項目リストLTIでの検査項目「高さ」の公開範囲と、情報要求リストLIDでの検査項目「高さ」の公開範囲とを照合し、情報提供リストLIP側の公開範囲に情報要求リストLIDの公開範囲が含まれるか否かが判定される。例えば、情報提供リストLIP側の公開範囲が「P社(画・ロ)」であり、情報要求リストLIDの公開範囲が「画・ロ」であれば、情報提供リストLIP側の公開範囲に情報要求リストLIDの公開範囲が含まれると判定される。そして、その場合は検査結果リストLTRを参照して、検査項目「高さ」に対応する実測値「11」がワーク2固有の高さとして出力される。
【0066】
図6は生産管理システム100によるねじ検査工程のうち、受入側での「受入」から「受入時検査」までの流れの概略説明図である。
【0067】
●5 受入(2/2)
受入側ではまず、受入時の検査工程を検討する(S601)。例えば、サプライヤ側から出荷前検査に関する情報が提供されることで、受入時検査で省略可能な工程を抽出する。
【0068】
その結果に基づいて、ワーク2に取り付けられたタグ型コントローラ20に対して、受入側PC1Rからユーザプログラムなどの初期設定を行う(S602)。例えば、ユーザプログラム以外にも画像処理項目、初期座標、スレーブ座標、スレーブ設定情報などが挙げられるが、これらに限らない。
【0069】
●6 受入時検査
タグ型コントローラ20が取り付けられたワーク2はコンベア3によって移動するが(この図では左から右へ)、タグ型コントローラ20は位置検出部23によってコンベア3上での現在位置を監視し続けており、タグ型コントローラ20から見ればスレーブとして機能する外観検査用の画像処理装置10Aとの接近判定を行う(S611)。
【0070】
画像処理装置10Aに十分接近したと判定すると、タグ型コントローラ20は画像処理装置10AからそのDeviceIDを取得する(S612)。
【0071】
そして、ファンクションブロックFBを使用したユーザプログラムを実行する(S613)。このユーザプログラムでは、情報提供リストLIP側の公開範囲が「P社(画・ロ)」であり、情報要求リストLIDの公開範囲が「画・ロ」であれば、情報提供リストLIP側の公開範囲に情報要求リストLIDの公開範囲が含まれると判定される。さらに、画像処理装置10Aは「画・ロ」に含まれているから、検査結果リストLTRを参照して、検査項目「高さ」に対応する実測値「11」がワーク2固有の高さとして出力される。
【0072】
こうして出力されたワーク2の高さとともに真値画像や画像処理項目を、タグ型コントローラ20が画像処理装置10Aへ送信する(S614)。
【0073】
画像処理装置10Aでは、タグ型コントローラ20から送信されてきたワーク2の高さ、真値画像や画像処理項目に基づいてワーク2の外観検査を実施する(S615)。このとき、ワーク2の高さが予め判明していることになるので、オートチューニング(ピント合わせ)時のワーク2と画像処理装置10Aの距離計算に有効に利用できる。
【0074】
その後、画像処理装置10Aは、画像処理による外観検査の結果(例えば「OK」)をタグ型コントローラ20に送信する(S616)。
【0075】
タグ型コントローラ20は、画像処理装置10Aから送信されてきた外観検査の結果を検査結果リストLTRの該当欄へ書き込む(S617)。
【0076】
次に、コンベア3によってワーク2がさらに移動して、P&P装置10Bに十分接近したと判定すると、タグ型コントローラ20はP&P装置10BからそのDeviceIDを取得する(S621)。
【0077】
そして、ファンクションブロックFBを使用したユーザプログラムを実行する(S622)。このユーザプログラムでは、情報提供リストLIP側の公開範囲が「P社(画・ロ)」であり、情報要求リストLIDの公開範囲が「画・ロ」であれば、情報提供リストLIP側の公開範囲に情報要求リストLIDの公開範囲が含まれると判定される。さらに、P&P装置10Bは「画・ロ」に含まれているから、検査結果リストLTRを参照して、検査項目「高さ」に対応する実測値「11」がワーク2固有の高さとして出力される。
【0078】
こうして出力されたワーク2の高さに基づいてタグ型コントローラ20はP&P装置10Bによるワーク2把持の最短経路計算などを行い、得られた結果を指令値としてP&P装置10Bに送信する(S623)。
【0079】
P&P装置10Bでは、タグ型コントローラ20から送信されてきた指令値に基づいてモーション演算などを実行し、ワーク2の選別動作を行う(S624)。このとき、ワーク2の高さが予め判明していることになるので、ワーク2の把持を最短経路で行うことができる。
【0080】
次に、コンベア3によってワーク2がさらに移動して、受入側作業者が使用しているディスプレイ機器10Dに接近したときに、ディスプレイ機器10Dからワーク2の高さ情報の参照要求があったとする(S631)。
【0081】
すると、タグ型コントローラ20はディスプレイ機器10DからそのDeviceIDを取得する(S632)。
【0082】
そして、ファンクションブロックFBを使用したユーザプログラムを実行する(S633)。このユーザプログラムでは、情報提供リストLIP側の公開範囲が「P社(画・ロ)」であり、情報要求リストLIDの公開範囲が「画・ロ」であれば、情報提供リストLIP側の公開範囲に情報要求リストLIDの公開範囲が含まれると判定される。
【0083】
しかし、ディスプレイ機器10Dは「画・ロ」に含まれていないから、照合時エラーが発生し、検査項目「高さ」に対応する実測値「11」すなわちワーク2の高さ情報は出力されず、ディスプレイ機器10Dには公開されない(S634)。
【0084】
つまり、ディスプレイ機器10Dの画面上にワーク2の高さの実測値が表示されることはなく、ワーク2の高さ情報は受入側作業者には秘匿される。
【0085】
なお、本発明は、その主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。