【実施例】
【0046】
以下に、実施例について説明する。ただし、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
光硬化性樹脂フィルム(光硬化性樹脂積層体)の性能は,以下の方法に従って評価した。
光硬化性樹脂フィルムの厚み方向の位相差Rthについては、分光エリプソメーターM220(日本分光社製)を使用して、光硬化性樹脂層(塗膜)が形成された基材(基板)の法線方向から45°傾けた方向よりリタデーションΔ(λ)を測定し、この値を用いて得られる3次元屈折率から、式(3)を用いてRthを算出した。尚、分光エリプソメーターの測定波長は590nmとした。
Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d ・・・式(3)
ここで、Nxは光硬化性樹脂層の平面内で定義したX方向の屈折率、NyはY方向の屈折率、Nzは厚み方向の屈折率である。また、NxはNx≧Nyとする遅相軸、dは光硬化性樹脂層の厚みである。
【0047】
引張り特性の試験は、光硬化性樹脂フィルムから100mm×15mmの短冊状のフィルムサンプルを形成し、島津製作所社製小型卓上試験機LSC−02/30を用い、測定開始時のチャック間距離を50mmとし、引張り速度5mm/minにて試験をおこなった。また、引張り伸度は式(4)を用いて算出した。
引張り伸度={(破断時の長さ)−(引張り前の初期長さ)}/引張り前の初期長さ
・・・式(4)
【0048】
<
参考例1>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UF−8001G(共栄社化学) 60.95 重量部
トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学)15.24 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cm
2の紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。尚、トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学)は上述の条件Aを満たさない樹脂である。この塗工フィルムの引張り強度は60N/mm
2、引張り伸度は50%で、位相差Rthは5となった。引張り特性が良好で、位相差の小さいフィルムを形成することができた。
【0049】
<
参考例2>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UA−122P(新中村化学工業) 76.19 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cm
2の紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。この塗工フィルムの引張り強度は72N/mm
2、引張り伸度は23%で、位相差Rthは6となった。引張り特性が良好で、位相差の小さいフィルムを形成することができた。
【0050】
<
参考例3>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UV−3520(日本合成化学工業) 76.19 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cm
2の紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。この塗工フィルムの引張り強度は75N/mm
2、引張り伸度は30%で、位相差Rthは5となった。引張り特性が良好で、位相差の小さいフィルムを形成することができた。
【0051】
<実施例4>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UV−3520(日本合成化学工業) 76.19 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚40μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cm
2の紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。この塗工フィルムの引張り強度は80N/mm
2、引張り伸度は40%で、位相差Rthは6となった。引張り特性が良好で、位相差の小さいフィルムを形成することができた。
【0052】
<実施例5>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UV−3520(日本合成化学工業) 76.19 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚70μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cm
2の紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。この塗工フィルムの引張り強度は87N/mm
2、引張り伸度は48%で、位相差Rthは8となった。引張り特性が良好で、位相差の小さいフィルムを形成することができた。
【0053】
<
参考例6>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UV−7000B(日本合成化学工業) 60.95 重量部
トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学)15.24 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cm
2の紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。この塗工フィルムの引張り強度は90N/mm
2、引張り伸度は15%で、位相差Rthは7となった。引張り特性が良好で、位相差の小さいフィルムを形成することができた。
【0054】
<
参考例7>
40μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UV−7000B(日本合成化学工業) 60.95 重量部
トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学)15.24 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cm
2の紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。この塗工フィルムの引張り強度は130N/mm
2、引張り伸度は19%で、位相差Rthは10となった。引張り特性が良好で、位相差の小さいフィルムを形成することができた。
【0055】
<比較例1>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UA−306H(共栄社化学) 60.95重量部
トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学)15.24 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.0重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cm
2の紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。尚、UA−306H(共栄社化学)は条件Aを満たさない樹脂である。この塗工フィルムの引張り強度は140N/mm
2、引張り伸度は1%で、位相差Rthは18となった。塗膜は割れやすく、位相差の大きいフィルムとなった。
【0056】
<比較例2>
40μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
AT600(共栄社化学) 60.95 重量部
トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学)15.24 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.0重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cm
2の紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。尚、AT600(共栄社化学)は条件Aを満たさない樹脂である。この塗工フィルムの引張り強度は145N/mm
2、引張り伸度は11%で、位相差Rthは30となった。塗膜は割れやすく、位相差の大きいフィルムとなった。
【0057】
<比較例3>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
AH600(共栄社化学) 60.95 重量部
トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学)15.24 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cm
2の紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。尚、AH600(共栄社化学)は条件Aを満たさない樹脂である。この塗工フィルムの引張り強度は110N/mm
2、引張り伸度は4%で、位相差Rthは16となった。塗膜は割れやすく、位相差の大きいフィルムとなった。
【0058】
<比較例4>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UV7000B(共栄社化学) 41.90 重量部
トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学)34.29 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.00 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚20μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cm
2の紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。この塗工フィルムの引張り強度は50N/mm
2、引張り伸度は5%で、位相差Rthは8となった。塗膜は切れやすく、位相差の小さいフィルムとなった。
【0059】
<比較例5>
20μm厚のトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
UV7000B(共栄社化学) 60.95 重量部
トリエチレングリコールジアクリレート(3EG−A)(共栄社化学) 15.24 重量部
イルガキュアー184(BASF) 3.81 重量部
メチルエチルケトン 20.0 重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚10μmになるように、塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cm
2の紫外線を照射し光硬化性樹脂層を形成した。この塗工フィルムの引張り強度は40N/mm
2、引張り伸度は15%で、位相差Rthは7となった。塗膜は切れやすく、位相差の小さいフィルムとなった。
【0060】
以上の実施例
4、実施例
5、参考例1〜参考例3、参考例6、参考例7及び比較例1〜比較例5の評価結果を表1にまとめて示す。
ここで、表1の項目である分子量は、樹脂名に記載された樹脂の分子量である。また、官能基数は、アクリロイル基またはメタクリロイル基の数である。また、重量%(樹脂比率)は、全紫外線硬化性樹脂に対する、樹脂名に記載された樹脂の重量比率である。
【0061】
【表1】
【0062】
表1より、上述の条件Aを満たすウレタンアクリレートを全紫外線硬化性樹脂中に60重量%以上含み、塗布膜厚が20μm以上
70μm以下の光硬化型樹脂塗布フィルムにおいては、引張り特性が良好(表1中の「○」)で、位相差も小さくなることがわかる。またそうでない場合は、割れが発生したり切れやすかったりして、引張り特性が良好でない(表1中の「×」)ことがわかる。
【0063】
本発明の光硬化性樹脂積層体(光硬化型樹脂フィルム)は、位相差が小さく、また、この光硬化性樹脂積層体を搭載した液晶ディスプレイにおいて視認性向上効果が期待される。また、光硬化性樹脂積層体の基材が薄くても引張り特性が良好で、製造プロセスにおける作業性の向上が期待できる。