(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整部は、一端が前記バネ受け部に固定されて外周面にネジが形成された軸部と、前記軸部の他端側に取り付けられた操作部とで構成されており、前記操作部をユーザが回転操作することにより、前記ペダルシャーシに対して前記バネ受け部の上下方向の位置を変化させることを特徴とする請求項1に記載のペダル装置。
前記反力発生バネは、コイルバネであって、第1のバネ定数を有する第1のバネ部と、前記第1のバネ定数よりも大きなバネ定数を有する第2のバネ部とが1本の連続するコイルとして一体的に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のペダル装置。
前記規定手段は、前記出力値が前記基準となる前記出力値よりも低い場合には、前記楽音制御処理を実行しないことを示す処理の程度が対応付けられており、前記出力値が前記基準となる前記出力値よりも高い場合には、前記楽音制御処理を実行することを示す処理の程度であって、前記出力値に応じて変化する処理の程度が対応付けられていることを特徴とする請求項5に記載の電子鍵盤楽器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1から
図12を参照しつつ、本発明に係る電子鍵盤楽器及び電子鍵盤楽器のペダル装置の一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0012】
本実施形態において、電子鍵盤楽器100(
図9参照)は、例えば電子ピアノやキーボード等である。
電子鍵盤楽器100は、
図1(a)から
図1(c)等に示すペダル装置1を備えている。
図1(a)から
図1(c)は、本実施形態におけるペダル装置の要部側断面図である。
図1(a)は、ペダルを踏み込んでいない状態を示し、
図1(b)は、ペダルを浅く踏み込んだ状態を示し、
図1(c)は、ペダルを最も深いところまで踏み込んだ状態を示している。
【0013】
ペダル装置1は、電子鍵盤楽器100で生成される楽音に各種の音響効果を与えるためのものである。
図1(a)から
図1(c)に示すように、ペダル装置1は、ペダル2、ペダルシャーシ3及び反力発生バネ4を備えている。
本実施形態では、ペダルシャーシ3の上にカバー部材5が取り付けられており、ペダルシャーシ3とカバー部材5とによりペダルケースが構成されている。
【0014】
本実施形態のペダル装置1に設けられているペダル2は、踏み込み操作に応じてダンパー効果を発生させるダンパーペダルである。
すなわち、アコースティックのピアノにおいてダンパーペダルを踏み込んだ場合に、弦の振動を止めているダンパーが開放されて、弦が共鳴する音響効果(以下これを「ダンパー効果」という)を生じるが、本実施形態のペダル2は、踏み込み操作に応じて、電子鍵盤楽器100に対し電気信号を出力することにより、こうしたアコースティックのピアノと同様のダンパー効果を電子鍵盤楽器100において疑似的に実現させるものである。
なお、ペダル装置1に設けられているペダルは1つに限定されない。例えば、アコースティックピアノと同様に、ダンパー効果を発生させるダンパーペダルの他、ソフトペダル、ソステヌートペダル等を備えていてもよい。
【0015】
ペダル2は、基端側(後方側、
図1(a)から
図1(c)において右側)に配置された基端部21がペダルシャーシ3の後部(
図1(a)から
図1(c)において右側)に設けられた後述するペダル支持部31に軸部材32を介して支持されている。
また、ペダル2は、その自由端側(先端側、
図1(a)から
図1(c)において左側)に配置された踏込部22がペダルケースの外部に突出するように設けられている。
ペダル2は、軸部材32の軸中心を回転中心として上下方向に回動可能となっており、外力が加わらない状態では付勢部材である反力発生バネ4によって上方に押し上げられた状態(例えば、
図1(a)に示す状態)となっているが、踏込部22を踏み込む踏み込み操作が行われると、ペダル2はこの反力発生バネ4の付勢力に抗して押し下げられて下方に回動する(
図1(b)及び
図1(c)に示す状態)。また、ペダル2は、踏み込み操作が停止されると、反力発生バネ4によって押し上げられて上方に回動し、再度元の位置(
図1(a)に示す位置)に復帰する。
【0016】
ペダル2は下面が開口した中空部材であり、ペダル2の下側面には、ペダル2が下方に押し下げられた際にペダルシャーシ3の下限ストッパ部33が突き当たり、ペダル2の下方における位置が規制されようになっている。
また、ペダル2の上側面は、ペダル2が上方に押し上げられた際にペダルシャーシ3の上限ストッパ部51に突き当たり、ペダル2の上方における位置が規制されるようになっている。
なお、ペダル2の構成は、ここに例示したものに限定されない。
【0017】
ペダルシャーシ3は、ペダル2を支持するものである。
ペダルシャーシ3の後部(
図1(a)から
図1(c)において右側)には、ペダル2を支持するペダル支持部31が設けられている。
本実施形態においてペダル支持部31は、ペダル2の基端部21の両側部にそれぞれ配置される一対の板状部材である。
一対のペダル支持部31には、間にペダル2の基端部21を挟み込んだ状態で軸部材32が挿通されるようになっている。これにより、ペダル2は、この軸部材32の軸中心を回転中心として上下方向(
図1(a)から
図1(c)において上下方向)に回動可能となっている。
なお、ペダルシャーシ3においてペダル2を上下方向に回動可能に支持する構成や、ペダル支持部31の形状、配置等はここで例示したものに限定されない。
【0018】
ペダルシャーシ3の前側(
図1(a)から
図1(c)において左側)の先端部には、ペダル2の後述する踏込部22を踏み込んだ際におけるペダル2の下限位置を規制する下限ストッパ部33が設けられている。
下限ストッパ部33は、ペダル2の踏込部22を踏み込んだ際に、ペダル2の裏面に突き当たり、ペダル2が下がり過ぎないように位置を規制する。
なお、下限ストッパ部33は、弾性部材等の緩衝部材により形成され、ペダル2が突き当てられた際の衝撃を吸収可能に構成されることが好ましい。
【0019】
またカバー部材5の前側(
図1(a)から
図1(c)において左側)の先端部であってペダルシャーシ3の下限ストッパ部33にほぼ対応する位置には、ペダル2が後述する反力発生バネ4により上方向に付勢された際にペダル2の上限位置を規制する上限ストッパ部51が設けられている。
上限ストッパ部51は、ペダル2が反力発生バネ4により上方向に付勢された際に、ペダル2の上面に突き当たり、ペダル2が上がり過ぎないように位置を規制する。
なお、上限ストッパ部51は、下限ストッパ部33と同様に、弾性部材等の緩衝部材により形成され、ペダル2が突き当てられた際の衝撃を吸収可能に構成されることが好ましい。
【0020】
反力発生バネ4は、一端側がペダルシャーシ3の上に固定され、他端側がペダル2の下側面に当接するように設けられている。
本実施形態における反力発生バネ4は、2段階のバネ定数を有し、ペダル2を上方に付勢しており、ペダル2の踏み込み操作に応じて第1の反力及び第2の反力の2段階の反力を発生させることが可能な反力発生手段である。
具体的には、反力発生バネ4は、
図1(a)から
図1(c)等に示すように、例えばピッチが広くバネ定数が小さいコイルバネである第1のバネ部41と、ピッチが狭くバネ定数が大きいコイルバネである第2のバネ部42とからなり、このようなバネ定数の異なる2つのバネ部41,42が1本の反力発生バネ4として一体的に形成されている。
第1のバネ部41及び第2のバネ部42の長さやバネ定数の差をどの程度に設定するかは、ダンパー効果を発生させるタイミング等との関係で適宜設定される。
【0021】
反力発生バネ4は、ペダル2を踏み込むに従い、
図1(b)及び
図1(c)に示すように、バネ定数の小さい第1のバネ部41から先に圧縮され、次にバネ定数の大きな第2のバネ部42が圧縮される。
ペダル2の踏み込み操作に応じて、まず第1のバネ部41が圧縮されると、第1の反力が発生する。そして、さらにペダル2を踏み込むことにより、第2のバネ部42が圧縮されると、第1の反力よりも大きな第2の反力が発生する。
【0022】
また、ペダル装置1は、ペダル2の踏み込み操作に応じて発生する反力を調整可能な反力調整手段6をさらに備えている。
本実施形態において、反力調整手段6は、コイルバネである反力調整用バネ61と、この反力調整用バネ61のピッチを調整する調整部62とで構成されている。
反力調整用バネ61は、一端側がペダルシャーシ3の上に設けられたバネ受け部63の上に固定されており、他端側がペダル2の下側面に当接するように設けられている。
また、調整部62は、一端がバネ受け部63に固定され、外周面にネジが形成された軸部621と、この軸部621の他端側に取り付けられた操作部622とで構成されており、操作部622をユーザが回転操作することにより、バネ受け部63の上下方向の位置(高さ)を調整するものである。
【0023】
図2(a)は、反力調整手段6により、ペダル2の踏み込み操作に応じて発生する反力を最も大きくした状態(すなわち、反力が「最強」の状態)を示し、
図2(b)は、反力調整手段6により、ペダル2の踏み込み操作に応じて発生する反力を最も小さくした状態(すなわち、反力が「最弱」の状態)を示している。
図2(a)に示すように、操作部622を回転操作させて軸部621を上方向に締めると、バネ受け部63が押し上げられ、反力調整用バネ61が押し縮められる。これにより反力調整用バネ61のバネ定数が大きくなり、それだけ踏み込んだ際の反力が大きくなって、ペダル2が重くなる。
他方、
図2(b)に示すように、操作部622を逆方向に回転操作させて軸部621を緩めると、バネ受け部63が下方に下がって反力調整用バネ61が伸長する。これにより反力調整用バネ61のバネ定数が小さくなり、踏み込んだ際の反力が小さくなって、ペダル2が軽くなる。
このように、本実施形態では、操作部622を回転操作させるだけで、ペダル2を踏み込んだ際の反力を簡易に調整することができる。このため、例えば、大人が演奏する場合であれば多少ペダルを重くし、子供が演奏する場合にはペダルを軽くして踏み込みやすくする等、ペダル2の踏み込み操作に応じて発生する反力を、演奏者の体格や力に応じて調整することが可能であり、踏み込み力の弱い子供等でもダンパー効果を生じさせる演奏を容易に行うことができる。
【0024】
また、ペダル装置1は、反力発生手段である反力発生バネ4により発生した第1の反力及び第2の反力を検出可能な検出手段として圧力センサ7を備えている。圧力センサ7は反力発生バネ4の下方に配置されている。
本実施形態の圧力センサ7は、例えばダイヤフラムの表面に感圧素子(例えばピエゾ素子)で構成される半導体歪みゲージを形成したものであり、外部からの力(本実施形態では、反力発生バネ4により発生する反力)によってダイヤフラムが変形することにより半導体歪みゲージに発生するピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化を電気信号に変換して出力させるものである。
【0025】
図3は、本実施形態におけるペダル装置1の要部回路構成を示す等価回路図である。
図3に示すように、圧力センサ7には、プルアップ抵抗71を介して電源部72が接続されている。
また、圧力センサ7は、電子鍵盤楽器100のCPU10(
図9参照)と接続されており、圧力センサ7による検出結果(反力発生バネ4により発生した第1の反力及び第2の反力に応じた電気抵抗値)はAD変換されて後述するCPU10に出力される。
なお、圧力センサ7は、反力発生バネ4により発生した第1の反力及び第2の反力を検出可能なものであればよく、上記構成に限定されない。例えば、固定極と可動極を対向させてコンデンサを形成し、外部からの力(圧力)によって可動極が変形することで発生する静電容量の変化を電気信号に変換して出力させる静電容量方式の圧力センサ等であってもよい。
【0026】
図4は、横軸にペダル2のストローク(踏み込み量)をとり、縦軸に反力発生バネ4及び反力調整用バネ61により生ずる反力をとったグラフである。
なお、
図4において「S1」とは反力発生バネ4を示し、「S2」とは反力調整用バネ61を示す。また、「S2最強」とは反力調整手段6において反力調整用バネ61を最大限押し縮めて反力が最大となる状態に調整した際に反力調整用バネ61自体から生じる反力を意味している。また、「S2最弱」とは反力調整手段6において反力調整用バネ61を最大限伸長させて反力が最小となる状態に調整した際に反力調整用バネ61自体から生じる反力を意味している。
また、
図4において「P1」は、反力発生手段である反力発生バネ4により発生した反力が第1の反力から第2の反力へと変化した時点(これを以下「変曲点」という。)
【0027】
反力調整用バネ61自体から生ずる反力は、反力を最強状態に調整したとき及び反力を最弱状態に調整したときともに、ペダル2のストローク(踏み込み量)が大きくなるに伴い(すなわち、ペダル2を深く踏み込む伴い)、直線的に大きくなる。
また、反力発生バネ4から生ずる反力も、ペダル2のストローク(踏み込み量)が大きくなるに伴って大きくなるが、バネ定数の大きな第2のバネ部42が押し縮められ始めたタイミングで反力発生バネ4により発生する反力が第1の反力から第2の反力へと変化し、この時点が、反力が大きく変化する「変曲点P1」となる。
【0028】
図5は、
図4と同様に、横軸にペダル2のストローク(踏み込み量)をとり、
図4に示す反力発生バネ4と反力調整用バネ61により生ずる反力とを合成した合成後の反力を縦軸にとったグラフである。
図5に示すように、反力発生バネ4と反力調整用バネ61により生ずる反力とを合成したした場合、反力調整手段6において反力が最大となる状態に調整した「S2最強」の場合、反力調整手段6において反力が最小となる状態に調整した「S2最弱」の場合ともに、反力発生バネ4により発生する反力が第1の反力から第2の反力へと変化した時点で大きく反力の値が変化している。
【0029】
図6は、横軸にペダル2のストローク(踏み込み量)をとり、反力発生バネ4と反力調整用バネ61により生ずる反力とを合成した合成後の反力を圧力センサ7によって検出した場合の検出結果(圧力センサ7の出力値)を縦軸にとったグラフである。
図6に示すように、反力発生バネ4等により発生する反力の「変曲点P1」に対応する時点において、圧力センサ7の出力値が大きく変化する出力値の変曲点(これを「変曲点P2」とする。)が現れる。
【0030】
図7は、横軸に圧力センサ7の出力値をとり、縦軸に圧力センサ7からCPU10に入力される入力値をとったグラフである。なお、本実施形態では、圧力センサ7からCPU10に入力される入力値として入力電圧値をとっている場合を例として以下説明するが、CPU10に入力される入力値は電圧値に限定されない。
図7に示すように、圧力センサ7からCPU10に入力される入力値は、圧力センサ7の出力値に対応して直線的に変化する。
【0031】
図8において実線で示すグラフは、横軸にペダル2のストローク(踏み込み量)をとり、縦軸に圧力センサ7からCPU10に入力される入力値をとったものである。
また、
図8において破線で示すグラフは、CPU10に入力される入力値に対応して発生させるダンパー効果のレベルを示すものである。
なお、「P3」は、CPU10に入力される入力値の「変曲点」を示しており、この「変曲点P3」は、圧力センサ7の出力値における「変曲点P2」と対応している。
図8における実線に示されるように、圧力センサ7の出力値が大きく変化する「変曲点P2」と同じタイミングで、CPU10に入力される入力値が大きく変化して「変曲点P3」が現れる。
【0032】
図9は、本実施形態における電子鍵盤楽器100の要部全体構成を示すブロック図である。
図9に示すように、電子鍵盤楽器100は、圧力センサ7を備えるペダル装置1の他、CPU10、ROM11、RAM12、表示部13、楽音出力部14、操作部15、鍵盤部16、I/F部17等を備えている。
ペダル装置1の圧力センサ7、CPU10、ROM11、RAM12、表示部13、楽音出力部14、操作部15、鍵盤部16、I/F部17等は、バス18を介して接続されている。
【0033】
表示部13は、LCDパネル等により構成され、CPU10から供給される表示制御信号に応じて、電子鍵盤楽器100各部の設定状態や動作状態等を表示させる。
楽音出力部14は、後述するROM11やRAM12に格納されている音源データにノイズ除去するフィルタリング処理等を施した後、出力増幅して図示しないスピーカから放音させるものである。
操作部15は、電源スイッチや音色選択スイッチ等、操作パネルに配設される各種スイッチを備え、操作されるスイッチ種に応じたスイッチイベントを発生させる。操作部15を操作することにより発生したスイッチイベントはCPU10に入力され、CPU10は、このスイッチイベントに基づき電子鍵盤楽器100各部の設定状態を制御したり、鍵盤部13から供給される演奏情報及びペダル装置1の圧力センサ7から入力された入力値(電気信号値)等に従った楽音パラメータ(例えば、発音指示コマンドや消音指示コマンド等)を生成する。
鍵盤部16は、押離鍵操作に応じて、キーオン/キーオフイベント、鍵番号及びベロシティ等の演奏情報を発生させるものである。
I/F部17は、例えば外部のマイクやスピーカ等を接続するためのインターフェースである。
RAM12は、CPU10のワークエリアとして用いられ、各種レジスタ・フラグデータ等を一時記憶する。
また、ROM11は、CPU10が実行する各種制御プログラムや制御データを記憶する。ROM11に記憶される各種制御プログラムとは、例えば後述のメインルーチン、押鍵検出処理、ダンパーペダル処理、発音処理等をCPU10に実行させるためのプログラムである。
また、ROM11には、各種音源データ(例えばピアノの音を発音させるための波形データやダンパー効果を発生させる場合に元のピアノの音等に重畳される音(共鳴音)の波形データ等)が記憶されている。
【0034】
さらに本実施形態では、CPU10が後述するダンパーペダル処理を行うために必要なデータテーブルがROM11に記憶されている。
図10は、本実施形態のROM11に記憶されているデータテーブルの一例を示す図である。
図10に示すように、ROM11には、ペダル装置1の圧力センサ7からの入力電圧値と変曲点の電圧値との電位差と、ダンパーデプスの設定値とを対応付けたテーブルが用意されている。
本実施形態では、
図10に示すように、MIDI規格に基づき、ダンパーデプス(すなわち、弦の共鳴の深さ)の程度が、「0」から「127」の128段階に設定されている。各ダンパーデプスの設定値は、それぞれ圧力センサ7からの入力電圧値と変曲点の電圧値との電位差と対応付けられており、電位差が大きくなるほど、ダンパーデプスの設定値も大きくなるようになっている。
なお、本実施形態では、ダンパーデプスの設定値をMIDI規格に基づいて割り当てているため、本実施形態の電子鍵盤楽器100を、MIDI規格を採用している各種の外部機器と接続した際、テーブルに対応付けられたダンパー効果のレベル(ダンパーデプスの設定値)を当該各種の外部機器において実現させることができる。
【0035】
なお、圧力センサ7からの入力電圧値と変曲点の電圧値との電位差とダンパーデプスの設定値(すなわち、ダンパーデプス値、ダンパー効果のレベル)との対応付けは、ここに例示したものに限定されない。
アコースティックのピアノにおいて、ダンパーペダルを踏み込んだ場合には、踏み込み当初は多少の遊びがあるためペダルが軽いが、ある程度踏み込んだところからダンパーを動かし始めるため、徐々にペダルが重くなっていく。そして、ダンパーが徐々に弦から離間していくことで、弦の共鳴の程度(深さ)が大きくなっていき、ある程度までペダルを深く踏み込むと、ダンパーが完全に外れ(開放され)、ダンパー効果は最大となる。そして、一旦ダンパーが完全に外れる位置までペダルを踏み込むと、それ以上はダンパー効果(弦の共鳴の程度(深さ))が変化しない。
このようなアコースティックのピアノにおけるペダルの踏み込みとダンパー効果のレベルとの関係をできる限り電子鍵盤楽器100において再現させるため、圧力センサ7からの入力電圧値と変曲点の電圧値との電位差とダンパーデプスの設定値(すなわち、ダンパー効果のレベル)との対応付けは、徐々にペダルが重くなっていく時点である変曲点を超えた辺り(
図8や
図10における「a」時点)から徐々にダンパー効果を生じさせて、違和感なく徐々にダンパー効果のレベルを上げていき、一定の電位差を超えたら(すなわち、ペダル2を一定以上踏み込んだら)それ以降はダンパー効果のレベルを変化させずに維持させるような対応関係となっていることが好ましい。
【0036】
CPU10は、操作部15、鍵盤部16、ペダル装置1等から入力される情報に従い、電子鍵盤楽器100各部について動作制御を行うものである。
特に、本実施形態では、CPU10は、検出手段による検出結果であるペダル装置1の圧力センサ7から入力される入力値(本実施形態では入力電圧値)に基づいて、ダンパーデプス値を決定して出力するダンパーデプス値出力手段として機能する。
ダンパーデプス値は、反力発生手段である反力発生バネ4により発生した反力が第1の反力から第2の反力へと変化する際に変曲点を有する。
ダンパーデプス値出力手段としてのCPU10は、反力発生手段である反力発生バネ4により発生した反力が第1の反力から第2の反力へと変化した変曲点(
図8において「変曲点P3」)を検出する。変曲点P3を超えていなければ、CPU10は、ダンパー効果を生じさせないと決定する。CPU10が変曲点を検出する手法は特に限定されないが、例えば、圧力センサ7から入力される入力電圧値の変化の傾きから、入力電圧値が大きく変化した時点を捉えることで変曲点を検出する。
また、CPU10は、反力発生バネ4により発生した反力が第1の反力から第2の反力へと変化した変曲点(変曲点P3)を超えたと判断したときには、さらに、上記のテーブルに基づいて、どの程度のダンパー効果を発生させるかを決定する。
CPU10による決定結果は、楽音出力部14に送られ、ダンパー効果を生じさせる場合には、楽音出力部14においてCPU10による決定結果に応じたダンパー効果に対応する音源が、もとのピアノ音源等に合成される。そして、当該合成音源に基づく楽音(すなわち、所定のダンパー効果が表現された楽音)がスピーカから出力される。
ている。
【0037】
圧力センサ7からの入力電圧と変曲点の電圧との電位差がないとき(
図10における「0」の時点)、すなわち、
図10及び
図8における「a」の時点から、一定の電位差を超えるまでの時点(
図10では「0.3」の時点)までは、ダンパーデプスの設定値が「0」となっており、CPU10は、ダンパーデプスの設定値を「0」と決定し、これをダンパー効果のレベルとして設定する。
そして、一定の電位差を超えた時点(
図10では「0.4」の時点、
図10及び
図8における「b」の時点)で、CPU10により、ダンパーデプス「22」が設定される。その後、ペダル2の踏み込みに伴って圧力センサ7からの入力電圧と変曲点の電圧との電位差が大きくなるに従い、ダンパーデプスの設定値も大きくなり、ダンパー効果のレベルが徐々に上がっていく。すなわち、アコースティックのピアノにおいて、ダンパーが徐々に弦から離間していく場合と同様、弦の共鳴の程度(深さ)が大きくなっていく状態が再現される。
そして、ある一定レベルを超えると、ダンパーデプスの設定値が最大(すなわち、
図10では「127」)となる。CPU10は、この時点(すなわち、
図10及び
図8における「c」の時点)以降は同じ「127」をダンパーデプスの設定値として設定し、ダンパー効果のレベルを変化させないように制御する。
アコースティックのピアノにおいて、ダンパーペダルを踏み込んでいく場合、ダンパーが完全に外れる(開放される)ところまでペダルを踏み込むと、それ以上ダンパー効果は変化しない。この点、本実施形態のように圧力センサ7からの入力電圧と変曲点の電圧との電位差が一定レベルを超えたときには、最大レベルのダンパー効果を維持させることにより、ダンパーが完全に外れた状態を疑似的に再現することができる。
【0038】
次に、
図11及び
図12を参照しつつ、本実施形態の電子鍵盤楽器100及びこれに設けられているペダル装置1の作用について説明する。
【0039】
まず、
図11に示すように、電子鍵盤楽器100のCPU10は、たとえば、RAM12に記憶されたデータのクリアを含むイニシャライズ処理を行う(ステップS1)。
イニシャライズ処理が終了すると、CPU10は、操作部15を構成する各スイッチの操作を検出し、検出された操作にしたがった処理を実行するスイッチ処理を実行する(ステップS2)。例えば、ダンパー効果のON/OFFを設定できる場合には、この設定状態もスイッチ処理において検出される。また、音色情報の切り替え・設定等がなされている場合には、このスイッチ処理において検出されたスイッチの状態にしたがって、必要な情報等がRAM12の所定の領域に格納される。
次に、CPU10は、鍵盤部16の各鍵のオン・オフ状態を検出する(ステップS3)。CPU10は、新たにオンされた鍵については、オン状態となった時刻を、RAM12に格納する。また、CPU10は、新たにオフ状態となったスイッチについても、オフ状態となった時刻をRAM12に格納する。
さらに、CPU10は、ダンパー効果の発生・不発生、及びダンパー効果を発生させる場合のダンパー効果のレベルを決定するダンパーペダル処理(ステップS4)を行う。
【0040】
ここで、
図12を参照しつつ、本実施形態におけるダンパーペダル処理(ステップS4)について詳細に説明する。
演奏者が、ペダル装置1のペダル2を踏み込んでいくと、まず反力発生バネ4の第1のバネ部41が押し縮められて第1の反力を生じる。さらにペダル2を深く踏み込んでいくと、第2のバネ部42が押し縮められて第2の反力を生じ、演奏者の足が感じるペダルの重さが次第に重くなっていく。
反力発生バネ4により発生した反力は、反力発生バネ4の下方に配置された反力検出手段である圧力センサ7によって検出され、検出結果が、CPU10に入力される。
図12に示すように、まず、CPU10は、ペダル装置1の圧力センサ7による検出結果である入力電圧値を取得する(ステップS21)。
そして、CPU10は、この入力電圧値が、変曲点の電圧値よりも高い電圧値であるか否かを判断する(ステップS22)。すなわち、CPU10は、入力電圧値が、
図8における「変曲点P3」の電圧値を超えているか否かを判断する。そして、入力電圧値が、変曲点の電圧値よりも高い電圧値でないと判断した場合(ステップS22;NO)には、CPU10は、ダンパー効果を発生させないと決定し、再度ステップS21に戻って判断処理を繰り返す。
【0041】
他方、入力電圧値が、変曲点の電圧値よりも高い電圧値であると判断した場合(ステップS22;YES)には、CPU10は、ROM11からテーブルを読み出して参照し、入力電圧値と変曲点の電圧値との電位差に基づいて、ダンパー効果を発生させるか否か及びダンパー効果を発生させる場合、発生させるダンパーデプスの設定値(ダンパー効果のレベル)を決定する(ステップS23)。そして、テーブルに基づいてダンパーデプスを設定し(ステップS24)、設定したダンパーデプスの設定値を楽音出力部14に出力する。
楽音出力部14は、CPU10により設定された値に対応する深さのダンパー効果をピアノ音源等に重畳し、スピーカ等から出力させる。
なお、このような圧力センサ7からの入力電圧値の取得からダンパーデプス値を設定するまでのダンパーペダル処理は、演奏終了まで繰り返される。
【0042】
本実施形態では、入力電圧値が、
図8における「変曲点P3」の電圧値を超えていても、この超えた時点(すなわち、
図8において「a」時点)から所定の電圧値(
図10では「0.4」)を超える時点(すなわち、
図8において「b」時点)までは、
図10に示すように、ダンパーデプスの設定値が「0」となっている。このため、
図8における「b」時点に至るまでは、CPU10は、ダンパーデプスの値を「0」と設定する。この結果、
図8における「b」時点に至るまでは、ダンパー効果は発生しない。これにより、アコースティックのピアノにおいて、ダンパーが多少外れ始めた程度ではダンパー効果が発生せず、さらにペダルを踏み込んだときに弦が開放されてダンパー効果が発生し始める状態を電子鍵盤楽器100において再現することができる。
【0043】
入力電圧値が、
図10における「0.4」を超えて、
図8における「b」時点に至ると、CPU10は、ダンパーデプスの値を「22」と設定する。CPU10によって設定された結果は、楽音出力部14に送られ、設定された値に対応する深さのダンパー効果がピアノ音源等に重畳されて、スピーカ等から出力される。
本実施形態では、
図8における「b」時点から、所定の電圧値(
図10では「25」)を超える時点(すなわち、
図8において「c」時点)までは、
図10に示すように、ダンパーデプスの設定値が徐々に大きくなっていく。CPU10は、圧力センサ7から入力電圧値を取得すると、テーブルによって入力電圧値と変曲点の電圧値との電位差と対応付けられたダンパーデプスの値をダンパー効果のレベルとして設定(決定)し、出力する。これにより、
図8における「c」時点までは、演奏者がペダル2を踏み込むにしたがって、スピーカから発音される楽音に大きなダンパー効果が付与される。
また、
図8における「c」時点を超えると、それ以降は、ダンパーデプスの設定値が最大のまま維持される。
【0044】
図11に戻って、ダンパー効果のレベルを設定するダンパーペダル処理(ステップS4)が完了すると、楽音出力部14から楽音を発生させる発音処理(ステップS5)が行われる。
例えば、ダンパー効果を発生させない場合には、鍵盤部16の各鍵のオン・オフ状態の検出結果に基づき設定された楽音波形データに基づく楽音がスピーカ等から出力される。
また、ダンパー効果を発生させる場合には、鍵盤部16の各鍵のオン・オフ状態の検出結果に基づき設定された楽音波形データに、ダンパーデプスの設定値に基づくダンパー効果の波形データ(共鳴音データ)を合成し、合成された波形データ(合成波形データ)に基づく楽音がスピーカ等から出力される。
また、演奏中に例えばパラメータ設定を変更する等の操作部15のスイッチ操作等が行われた場合には、適宜に操作によって入力された情報に基づくその他の処理が実行される(ステップS6)。
なお、CPU10は、電子鍵盤楽器100の電源がオフされるまでこれらステップS1からステップS6の各処理を繰り返し実行する。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、踏み込み操作に応じてダンパー効果を発生させるダンパーペダルを備えるペダル装置1に、2段階のバネ定数を有し、ペダル2を上方に付勢して踏み込み操作に応じて第1の反力及び第2の反力の2段階の反力を発生させることが可能な反力発生バネ4を備えている。これにより、ペダル2を踏み込んでいった際に、あるところまでは比較的ペダル2の踏み込みが軽く、あるところからペダル2の踏み込みが重くなる。
アコースティックのピアノの場合、ダンパーペダルは、ダンパーを実施に動かし始める時点から徐々にペダルの踏み込みが重くなっていくが、本実施形態のように、2段階の反力を発生させる反力発生バネ4を備えることで、このようなアコースティックのピアノにおいてダンパーペダルを操作したときに近い感覚を演奏者に与えることができる。
また、電子鍵盤楽器100は、反力発生手段である反力発生バネ4により発生した第1の反力及び第2の反力を検出可能な検出手段である圧力センサ7を備え、圧力センサ7による検出結果に基づいてダンパーデプス値決定手段であるCPU10がダンパー効果のレベルを決定する。このため、演奏者が足に感じるペダルの重さとダンパー効果の発生とをリンクさせることができ、ペダルの踏み込みのストローク(踏み込み量)によってダンパー効果を生じさせる場合よりも、アコースティックのピアノを演奏する場合に近いタイミングでのダンパー効果の発生を再現することができる。
また、上述のように、アコースティックのピアノの場合、ダンパーペダルは、ダンパーを実施に動かし始める時点から徐々にペダルの踏み込みが重くなり、ペダルが重くなる辺りから徐々にダンパーが弦から離間してダンパー効果が生じ始める。この点、本実施形態では、ダンパーデプス値決定手段であるCPU10は、反力発生バネ4により発生した反力が第1の反力からこれよりも大きい第2の反力へと変化した変曲点を検出して、これに基づいてダンパー効果の発生を制御している。これにより、アコースティックのピアノと同様に、ペダルの踏み込みが重くなってきたタイミングでダンパー効果を生じさせることができ、アコースティックのピアノを弾き慣れている演奏者にもダンパー効果が効き始めるタイミングが分かり易いとともに、より自然なダンパー効果の発生を実現することができる。
さらに、反力を生じさせる反力発生手段は、2段階のバネ定数を有する反力発生バネ4であるため、1つのバネで2段階の反力の発生を実現でき、部品点数を少なくして装置構成を簡易化することができる。
また、本実施形態では、検出手段が、反力を検出する圧力センサ7で構成されている。このため、ペダルの踏み込みに応じてボリュームを操作するような物理的機構を設ける場合と異なり、装置構成を簡易化できるとともに、ペダル2の踏み込みに伴う反力の変化をより正確にダンパー効果の発生とリンクさせて、アコースティックのピアノを演奏している場合と同様のタイミングでダンパー効果を生じさせることができる。
また、本実施形態の電子鍵盤楽器100は、踏み込み操作に応じて発生する反力を調整可能な反力調整手段を備えている。このため、複雑な設定変更や手間のかかる作業等を行うことなく、反力調整用の操作部622を操作してバネの伸縮を変えるだけで、ペダル2の踏み込み力の強い大人から、踏み込み力の弱い子供まで、容易に操作可能なダンパーペダルを実現することができる。
【0046】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0047】
例えば、本実施形態では、反力発生手段が2段階のバネ定数を有する反力発生バネ4である場合を例示したが、反力発生手段はばねに限定されない。弾性力の異なる弾性部材を連結して1部材としたものを反力発生手段として用いてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、検出手段が圧力センサ7である場合を例示したが、検出手段は、反力発生手段(反力発生バネ4)から発生する反力を検出可能なものであればよく、圧力センサに限定されない。
【0049】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
ペダルシャーシに上下方向に回動可能に支持され、踏み込み操作された際に下方に回動するペダルと、
前記ペダルを上方に付勢した踏み込み操作に応じて第1の反力及び第2の反力の2段階の反力を発生させることが可能な反力発生バネと、
を備えることを特徴とするペダル装置。
<請求項2>
前記反力発生バネは、2段階のバネ定数を有することを特徴とする請求項1に記載のペダル装置。
<請求項3>
踏み込み操作に応じて発生する反力を調整可能な反力調整手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のペダル装置。
<請求項4>
ペダルシャーシに上下方向に回動可能に支持され、踏み込み操作された際に下方に回動するペダルと、
前記ペダルを上方に付勢し、踏み込み操作に応じて第1の反力及び第2の反力の2段階の反力を発生させることが可能な反力発生手段と、
前記反力発生手段により発生した前記第1の反力及び第2の反力を検出可能な検出手段と、
前記検出手段による検出結果に基づいてダンパーデプス値を出力するダンパーデプス値出力手段と、
を備えていることを特徴とする電子鍵盤楽器。
<請求項5>
前記ダンパーデプス値は、前記反力発生手段により発生した反力が前記第1の反力から前記第2の反力へと変化する際に、変曲点を有することを特徴とする請求項4に記載の電子鍵盤楽器。
<請求項6>
前記反力発生手段は、2段階のバネ定数を有する反力発生バネであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の電子鍵盤楽器。
<請求項7>
前記検出手段は、前記反力発生手段により発生した反力を検出する圧力センサであることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の電子鍵盤楽器。
<請求項8>
踏み込み操作に応じて発生する反力を調整可能な反力調整手段をさらに備えていることを特徴とする請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の電子鍵盤楽器。