特許第6394033号(P6394033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6394033ブリスタ包装体用シートおよびブリスタ包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394033
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ブリスタ包装体用シートおよびブリスタ包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20180913BHJP
   A61J 1/03 20060101ALI20180913BHJP
   B65D 75/36 20060101ALI20180913BHJP
   B65D 83/04 20060101ALN20180913BHJP
【FI】
   B65D65/40 D
   A61J1/03 370
   B65D75/36
   !B65D83/04 D
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-78391(P2014-78391)
(22)【出願日】2014年4月7日
(65)【公開番号】特開2015-199503(P2015-199503A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 昌樹
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−059932(JP,A)
【文献】 特開2001−287277(JP,A)
【文献】 特開2000−007022(JP,A)
【文献】 特開2001−278337(JP,A)
【文献】 特開平10−166526(JP,A)
【文献】 特開2007−144741(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/075977(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B65D 75/36
B65D 83/04
C08J 5/18
A61J 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂に軟化剤がブレンドされた柔軟性プラスチックを含み、
前記ベース樹脂がプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であり、
前記軟化剤が、プロピレンナノ結晶構造制御型エラストマーおよびメタロセン触媒直鎖低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる、ブリスタ包装体用シート。
【請求項2】
前記軟化剤のブレンド量が、前記ベース樹脂100重量部に対し10重量部以上50重量部以下である、請求項1に記載のブリスタ包装体用シート。
【請求項3】
前記軟化剤が前記プロピレンナノ結晶構造制御型エラストマーであり、前記プロピレンナノ結晶構造制御型エラストマーの量が、前記ベース樹脂100重量部に対し10重量部以上45重量部以下である、請求項1に記載のブリスタ包装体用シート。
【請求項4】
前記柔軟性プラスチックの層と、前記柔軟性プラスチックの層に積層された機能性層とを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のブリスタ包装体用シート。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のブリスタ包装体用シートを用いたブリスタ包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリスタ包装体用シートおよびブリスタ包装体に関する。より具体的には、本発明は、誤飲対策が施されたブリスタ包装体用シートおよびブリスタ包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
固形剤包装用として一般に用いられているPTP(プレス・スルー・パック)包装体の誤飲事故により、食道異物症の増加が問題になっている。PTP包装体に主に用いられている硬質塩化ビニル製またはポリプロピレン製のシートは固いため、食道内に停滞したPTP包装体によって食道壁に穿孔が生じたり、摘出時にPTP包装体の角で食道壁を切って損傷したりする危険性がある。このため、PTP包装体の誤飲対策が求められている。
【0003】
たとえば、特開平9−215726号公報(特許文献1)には、PTP包装体用のシート自体を所定の曲げ弾性率を有するエラストマー樹脂で形成された誤飲対策用PTP包装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−215726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、人体組織の負傷の危険性を低減する新たなブリスタ包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
本発明のブリスタ包装体用シートは、ベース樹脂である熱可塑性樹脂に軟化剤がブレンドされた柔軟性プラスチックを含む。
これによって、ブリスタ包装体用シートに柔軟性を具備させることができる。したがって、ブリスタ包装体として形成された場合に、人体組織の負傷の危険性を低減することができる。これは、ブリスタ包装体が、誤飲事故が特に多い薬剤包装用PTP(プレス・スルー・パック)包装体である場合に、体内組織の負傷の危険性を低減できる点で特に有用である。
【0007】
なお、軟化剤は、ベース樹脂であり熱可塑性樹脂にブレンドされることにより、ベース樹脂の柔軟性を向上、またはガラス転移点および引張弾性率を低下させる特性を有する物質をいい、当該特性を発揮する機構は問わない。なお、ベース樹脂と軟化剤とは混合状態で共存し、互いに共有結合を形成するものではない。
【0008】
本発明において、ベース樹脂の引張弾性率(JIS K 7162)はたとえば100MPa以上1000MPa以下である。また、軟化剤の硬度は、ショア硬さ(またはデュロメータ硬さ)でA40以上、またはHDD10以上、またはD10以上である。軟化剤の硬度の範囲に属する上限は特に限定されるものではないが、たとえばショア硬さD85である。ベース樹脂の引張弾性率および軟化剤の硬度が上記下限値以上であることにより、ブリスタ包装体用シートの保形性が良好(たとえば、PTPとして製造された場合、PTPの端部を持った時に錠剤の重量でPTPが不所望に屈曲させられることがなく、従って取扱性が良好)である点で好ましい。さらに、ベース樹脂の引張弾性率および軟化剤の硬度が上記上限値以下であることにより、ブリスタ包装体用シートの柔軟性が良好であり、たとえば人体組織を負傷させる可能性を好ましく低減させることができる点で好ましい。
【0009】
(2)
軟化剤は、エステル系可塑剤、エラストマー、およびベース樹脂より軟質の熱可塑性樹脂からなる群から選ばれてよい。
これによって、ベース樹脂に好ましい柔軟性を容易に付与することができる。
【0010】
(3)
ベース樹脂は、ポリ塩化ビニル系樹脂およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選ばれてよい。
これによって、ブリスタ包装体用シートを、汎用性プラスチックを用いて構成することができるため、低コストで製造することができる。
【0011】
さらに、ベース樹脂にはエラストマーが含まれなくてよい。エラストマーでない樹脂を用いることによって、ベース樹脂にエラストマーを含む場合に比べ、軟質プラスチックに水蒸気バリア性などの他の機能を具備させやすい。
【0012】
(4)
ベース樹脂は、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であることが好ましい。
【0013】
これによって、通常水蒸気バリア性を低下させる作用がある軟化剤を含有していても、柔軟性プラスチックの水蒸気バリア機能を好ましく保つことが容易である。この場合、柔軟性プラスチックが、軟化剤がブレンドされたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の単層であっても、水蒸気バリア機能を好ましく保つことができる。このため、ブリスタ包装体用シートに柔軟性と水蒸気バリア性とを両立させることができる。したがって、ブリスタ包装体として形成された場合に、収容物を湿気から保護することもできる。したがってこの場合、ベース樹脂は、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を主成分(具体的には、ベース樹脂中、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体が50重量%超)として含むように構成されることが好ましい。
【0014】
本発明において、柔軟性プラスチックは、0.3mm厚の試験片を作成し、試験片をJIS−Z−0208に基づき、温度40℃、相対湿度90℃の条件下で試験した場合に、4.0g/m2・day・atm以下の水蒸気透過度を有することが好ましい。
【0015】
(5)
軟化剤のブレンド量は、ベース樹脂100重量部に対し0重量部超50重量部以下であることが好ましい。
【0016】
これによって、通常ブロッキング性を増加させる作用がある軟化剤を含有していても、柔軟性プラスチックのアンチブロッキング性を好ましく保つことができる。したがって、ブリスタ包装体用シートに柔軟性とアンチブロッキング性とを両立させることができる。このため、ブリスタ包装体として成形する工程において、シートの取扱性が良い。たとえば、包装工程において本発明のブリスタ包装体用シートをロールから繰り出す際に、シートの流れが良好である。
【0017】
(6)
上記(5)のブリスタ包装体用シートにおいて、ベース樹脂はポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
【0018】
これによって、ベース樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合に、より好ましい柔軟性とアンチブロッキング性とをより好ましく両立させることができる。
【0019】
(7)
軟化剤のブレンド量のうち、エラストマーの量がベース樹脂100重量部に対し0重量部以上45重量部以下であることが好ましい。
【0020】
これによって、エラストマーのブレンド量を少なくすることができ、低コスト化を図ることができる。また、通常水蒸気バリア性を低下させる作用が特に大きいエラストマーのブレンド量を少なくすることができるため、ブリスタ包装体用シートに柔軟性と水蒸気バリア性とを両立させることができる。
【0021】
(8)
本発明のブリスタ包装体用シートは、柔軟性プラスチックの層と、柔軟性プラスチックの層に積層された機能性層とを含んでよい。
【0022】
この場合、ブリスタ包装体用シートに、水蒸気バリア性その他のバリア性をより高められた状態で具備させることができる。
【0023】
(9)
本発明のブリスタ包装体用シートは、ベース樹脂である熱可塑性樹脂から構成されかつエラストマーおよび可塑剤のいずれも含まない樹脂で構成された柔軟性プラスチックを含むものであってもよい。
【0024】
上記(9)ブリスタ包装体用シートにおいては、ベース樹脂の引張弾性率(JIS K 7162)はたとえば100MPa以上800MPa以下である。ベース樹脂の引張弾性率が上記下限値以上であることは、ブリスタ包装体用シートの保形性が良好(たとえば、PTPとして製造された場合、PTPの端部を持った時に錠剤の重量でPTPが不所望に屈曲させられることがなく、従って取扱性が良好)である点で好ましい。さらに、ベース樹脂の引張弾性率が上記上限値以下であることは、ブリスタ包装体用シートの柔軟性が良好であり、たとえば人体組織を負傷させる可能性を好ましく低減させることができる点で好ましい。
【0025】
さらに、上記(9)ブリスタ包装体用シートにおいては、軟質プラスチックをエラストマーでない樹脂で構成することによって、エラストマーで構成する場合に比べ、軟質プラスチックに水蒸気バリア性などの他の機能を具備させやすい。たとえば、水蒸気バリア性(JIS Z 0208に基づき、温度40℃、相対湿度90℃の条件下で試験した場合の水蒸気透過度)が4.0g/m2・day・atm以下であることが好ましい。
【0026】
(10)
本発明のブリスタ包装体は、(1)から(9)に記載のブリスタ包装体用シートを用いて構成させる。
【0027】
これによって、本発明のブリスタ包装体による人体組織の負傷の危険性を低減することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によって、人体組織の負傷の危険性を低減する新たなブリスタ包装体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
本発明のブリスタ包装体用シートは、ベース樹脂である熱可塑性樹脂に軟化剤がブレンドされた柔軟性プラスチックを含む。ブリスタ包装体用シートは、柔軟性プラスチック単層構造を有してもよいし、柔軟性プラスチックの層を含む積層構造を有してもよい。
【0030】
柔軟性プラスチックは、ベース樹脂である熱可塑性樹脂と、軟化剤とを含む。
ベース樹脂の熱可塑性樹脂は、引張弾性率(JIS K 7162)がたとえば100MPa以上1100MPa以下である。当該引張弾性率は、具体的には、1100MPa、950MPa、800MPa、700MPa、650MPa、500MPa、400MPa、300MPa、200MPa、150MPa、100MPaであってよく、さらに、これらの数値のいずれか2つを上下限値とする範囲内であってもよい。上記下限値以上であることは、ブリスタ包装体用シートの保形性が良好である点で好ましく、上記上限値以下であることは、ブリスタ包装体用シートの柔軟性が良好である点で好ましい。
ベース樹脂の熱可塑性樹脂は、ポリ塩化ビニル系樹脂およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選ばれてよい。
【0031】
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルモノマーの単独重合体と、塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーと塩化ビニルモノマーとの共重合体と、を含む。さらに、ポリ塩化ビニル系樹脂は、ポリ塩化ビニルと柔軟性ポリマーとのグラフト共重合体であってもよい。これらの重合体は単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーとしては、たとえば、炭素数2以上16以下のα−オレフィン、炭素数2以上16以下の脂肪族カルボン酸のビニルエステル、炭素数2以上16以下のアルキルビニルエーテル、炭素数1以上16以下のアルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル;ハロゲン化ビニル、およびN−置換マレイミドが挙げられる。これらのモノマーは、単独で用いられていてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
ポリ塩化ビニルと柔軟性ポリマーとのグラフト共重合体は、塩化ビニルモノマーに柔軟性ポリマーを共重合させることによって得ることができる。このような柔軟性ポリマーとしては、炭素数1以上16以下のアルキル(メタ)アクリレート系ポリマーが挙げられる。
【0032】
ポリオレフィン系樹脂としては、たとえば炭素数2以上12以下、好ましくは2以上6以下のα−オレフィンの共重合体、または、炭素数2以上12以下、好ましくは2以上6以下のα−オレフィンの単独重合体と当該α−オレフィンの共重合体とのブレンド物であることが好ましい。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂が共重合体を含む場合、共重合様式としては、交互共重合、ランダム共重合およびブロック共重合を問わない。たとえば、エチレンモノマーまたはプロピレンモノマーと、他のα−オレフィンモノマーとのランダムおよび/またはブロック共重合体が挙げられる。さらに、共重合体としては、二元共重合体および三元共重合体などが挙げられる。共重合体中、他のα−オレフィンモノマー由来のモノマー単位が占める割合は、0.1重量%以上20.0重量%以下であってよい。これらの樹脂は、単独で、または複数種の組み合わせで用いることができる。
【0034】
本発明においては、ポリオレフィン系樹脂として、エチレンの共重合体、およびエチレンの単独重合体とエチレンの共重合体とのブレンド物(以下、ポリエチレン系樹脂と記載する)、ならびに、プロピレンの共重合体、およびプロピレンの単独重合体とプロピレンの共重合体とのブレンド物(以下、ポリプロピレン系樹脂と記載する)が好ましく挙げられる。単独重合体と共重合体のブレンド物としては、エチレンの単独重合体とポリプロピレンの共重合体とのブレンド物およびプロピレンの単独重合体とエチレンの共重合体とのブレンド物であってもよい。
【0035】
ポリエチレン系樹脂中にブレンドされることがあるエチレン単独重合樹脂は、実質的にエチレンモノマーのみから構成される分岐状ポリエチレンである。透明性の観点から、エチレン単独重合樹脂の密度は、910kg/m以上930kg/m未満であることが好ましい。このような分岐状ポリエチレンの好ましい例として、低密度ポリエチレン(LDPE)が挙げられる。
【0036】
ポリエチレン系樹脂中のエチレン共重合樹脂は、エチレンモノマーと、その他のモノマーとから構成される樹脂である。好ましくは、ポリエチレンの直鎖を主鎖として、モノマーに由来する側鎖を有する直鎖系エチレン共重合樹脂である。また、エチレン共重合樹脂としては、下記の樹脂を単独でまたは複数種の混合態様で用いてもよい。
【0037】
エチレン共重合樹脂のモノマーとしては、α−オレフィン、ビニル化合物、および(メタ)アクリル系化合物の少なくともいずれかが挙げられる。
【0038】
モノマーとしてのα−オレフィンは、炭素数3以上20以下、好ましくは3以上12以下、より好ましくは4以上8以下である。より具体的には、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等が挙げられる。これらα−オレフィンは、1種または2種以上が組み合わされて用いられてよい。
【0039】
α−オレフィンをモノマーとするエチレン共重合樹脂のより具体的な例としては、直鎖低密度ポリエチレン(L−LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
【0040】
モノマーとしてのビニル化合物は、たとえば、酢酸ビニルなどの不飽和カルボン酸、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどの不飽和エーテルなどであってよい。これらビニル化合物は、1種または2種以上が組み合わされて用いられてよい。
【0041】
モノマーとしての(メタ)アクリル系化合物は、たとえば、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系化合物、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N−アルキルメタアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系化合物、であってよい。これら(メタ)アクリル系化合物は、1種または2種以上が組み合わされて用いられてよい。
【0042】
ポリプロピレン系樹脂中にブレンドされることがある単独重合体は、ホモポリプロピレンである。また、ポリプロピレン系樹脂中の共重合体としては、プロピレンと他のモノマーであるα−オレフィンとの共重合体であってよい。より具体的には、当該共重合体はランダム共重合体(R−PP)および/またはブロック共重合体(B−PP)であってよい。モノマーとしてのα−オレフィンは、エチレンまたは炭素数4以上20以下、好ましくは3以上12以下、より好ましくは4以上8以下である。より具体的には、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等が挙げられる。これらα−オレフィンは、1種または2種以上が組み合わされて用いられてよい。
より具体的には、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、及びポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリブテン−1、プロピレン−エチレン−ブテン三元共重合体などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で、または複数種の組み合わせで用いることができる。
【0043】
上述に例示した中でも、本発明においては、ポリオレフィン系樹脂がプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を主成分とすることがさらに好ましい。これによって、通常水蒸気バリア性を低下させる作用がある軟化剤を含有していても、柔軟性プラスチックの水蒸気バリア機能を好ましく保つことが容易である。この場合、柔軟性プラスチックが、軟化剤がブレンドされたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の単層であっても、水蒸気バリア機能を好ましく保つことができる。より具体的には、ポリオレフィン系樹脂100重量部中、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体が50重量%超、好ましくは60重量%以上であってよい。
【0044】
上記のベース樹脂からは、エラストマーが除外されてよい。エラストマーでない樹脂を用いる場合、ベース樹脂にエラストマーを含む場合に比べ、水蒸気バリア性などの他の機能を具備させやすくなる。
【0045】
柔軟性プラスチックは、0.3mm厚の試験片を作成し、試験片をJIS−Z−0208に基づき、温度40℃、相対湿度90℃の条件下で試験した場合に、たとえば4.0g/m2・day・atm以下、好ましくは3.0g/m2・day・atm以下、より好ましくは2.5g/m2・day・atm以下、さらに好ましくは2.0g/m2・day・atm以下の水蒸気透過度を有する。
【0046】
軟化剤は、エステル系可塑剤、エラストマー、およびベース樹脂より軟質の熱可塑性樹脂からなる群から選ばれてよい。ベース樹脂と軟化剤との組み合わせは特に限定されないが、たとえば、ベース樹脂がポリ塩化ビニル系樹脂である場合は軟化剤としてエステル系可塑剤、エラストマーおよびより軟質の熱可塑性樹脂の少なくともいずれかが好ましく用いられ、ベース樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合は軟化剤としてより軟質の熱可塑性樹脂およびエラストマーの少なくともいずれかが好ましく用いられる。
【0047】
軟化剤の硬度は、ショア硬さ(またはデュロメータ硬さ)でA40以上、またはHDD10以上、またはD10以上である。軟化剤の硬度の範囲に属する上限は特に限定されるものではないが、たとえばショア硬さD85である。硬度は、具体的にはD20、D30、D35、D40、D45、D50、D55、D60、D70、D80、D85であってよく、さらに、これらの数値のいずれか2つを上下限値とする範囲内であってもよい。上記下限値以上であることは、ブリスタ包装体用シートの保形性が良好である点で好ましく、上記上限値以下であることは、ブリスタ包装体用シートの柔軟性が良好である点で好ましい。
【0048】
エステル系可塑剤は、低分子エステル系可塑剤およびポリエステル系可塑剤が挙げられる。低分子エステル系可塑剤は、酸とアルコールとの縮合物である。酸としては、フタル酸、トリメット酸、アジピン酸、リン酸、クエン酸などが挙げられる。アルコールとしては、オクタノール、ブタノール、ノナノールなどが挙げられる。
ポリエステル系可塑剤は、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合物である。多価カルボン酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸などが挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコールなどが挙げられる。
また、エステル系可塑剤の他にも、エポキシ化大豆油などのエポキシ系可塑剤がもちいられてもよい。
これらの可塑剤は、単独で、または複数種の組み合わせで用いることができる。
【0049】
エラストマーとしては、熱可塑性エラストマーであればよく、具体的には、室温(たとえば23℃±15℃)において弾性を示す天然及び合成の重合物であり、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマーが挙げられる。より具体的には、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロブタジエン、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体など全ての共重合様式を含む)、スチレン−イソプレン共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体など全ての共重合様式を含む)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、イソプレン−イソブチレン共重合体、イソブチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン三元共重合体、チオロールゴム、多加硫ゴム、ポリウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロルヒドリンゴムなどが挙げられる。熱可塑性エラストマーは、上記の熱可塑性エラストマーの水素添加型重合体であってもよい。たとえば、水添スチレン−ブタジエン共重合体、水添スチレン−イソプレン共重合体などが挙げられる。さらに、オレフィン系ナノ結晶構造制御型(結晶部の内部に非晶部をナノメートルレベルで組み込み、かつ組み込まれた非晶部同士と他の組み込まれた非晶部とが連結されるように構造制御されたもの)エラストマーであってもよい。たとえば、プロピレン系ナノ結晶構造制御型エラストマーであってよい。
【0050】
ベース樹脂より軟質の熱可塑性樹脂は、ベース樹脂よりも引張弾性率が小さい熱可塑性樹脂であり、かつ、エラストマーが除外される。たとえば、軟化剤としての熱可塑性樹脂は、JIS−K−7162に基づく引張弾性率の、ベース樹脂の当該引張弾性率に対する相対量は特に限定されず、たとえば5%以上95%以下の広い範囲で許容される。当該相対量は、具体的には、5%、7%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、80%、90%であってよく、さらに、これらの数値のいずれか2つを上下限値とする範囲内であってもよい。上記範囲内とすることによって、保形性と柔軟性とを好ましく両立させることができる。
【0051】
軟化剤としての熱可塑性樹脂は、より具体的には、上述のポリオレフィン系樹脂の少なくともいずれかであってよい。たとえば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(L−LDPE)(メタロセン触媒直鎖低密度ポリエチレン(メタロセンL−LDPE)を含む)、エチレン−メチル(メタ)アクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、α−オレフィン単独重合体、などが挙げられる。また、エチレン−メチル(メタ)アクリレートなどのアイオノマーであってもよい。
【0052】
軟化剤のブレンド量は、ベース樹脂100重量部に対し、0重量部超50重量部以下である。特に、ベース樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合は、軟化剤のブレンド量は、ベース樹脂100重量部に対し、0重量部超50重量部以下、好ましくは10重量部以上40重量部以下である。軟化剤のブレンド量は、具体的には、0重量部、10重量部、20重量部、30重量部、40重量部、50重量部であってよく、さらに、これらの数値のいずれかを2つを上下限値とする範囲内であってもよい。軟化剤のブレンド量の上限値が上述のとおりであることにより、通常ブロッキング性を増加させる作用がある軟化剤を含有していても、柔軟性プラスチックのアンチブロッキング性を好ましく保つことができる。したがって、ブリスタ包装体用シートに柔軟性とアンチブロッキング性とを両立させることができる。このため、ブリスタ包装体として成形する工程において、シートの取扱性が良い。
【0053】
軟化剤は、エステル系可塑剤、エラストマー、およびベース樹脂より軟質の熱可塑性樹脂を任意の組み合わせで用いることができる。2種以上の軟化剤を組み合わせて用いる場合、軟化剤の合計量が、上述のブレンド量になるように調整する。特に、軟化剤としてエラストマーと、エラストマー以外の軟化剤とを組み合わせて用いる場合、エラストマーの量は、ベース樹脂100重量部に対し、0重量部超45重量部以下、好ましくは0重量部超30重量部以下でよい。エラストマーの量は、具体的には、0重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部であってよく、さらに、これらの数値のいずれか2つを上下限値とする範囲内であってもよい。このようにエラストマーは少量でよい。本発明においては、軟化剤としてエラストマーを全く含まなくてもよい。このようにエラストマーの含有量を少量またはゼロにすることによって、これによって、低コスト化を図ることができる。また、エラストマーは、通常、水蒸気バリア性を低下させる作用が特に大きいところ、エラストマーのブレンドによる水蒸気バリアの低下を最小限にとどめることができる。このため、ブリスタ包装体用シートに柔軟性と水蒸気バリア性とを両立させることができる。
【0054】
本発明においては、ブリスタ包装体用シートの性能を損なわない範囲で、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、酸化防止剤等の少なくともいずれかの添加剤がさらに含まれてよい。
【0055】
本発明のブリスタ包装体用シートは、上記の柔軟性プラスチック単層構造の場合、および上記の柔軟性プラスチックの層を含む複層構造の場合いずれにおいても、柔軟性プラスチックの層の厚みは、たとえば0.15m以上0.6mm以下、好ましくは0.20mm以上0.40mm以下である。0.15m以上であることにより機械的強度が保たれるため、ブリスタ包装体への製造過程でピンホールまたは破れを生じにくい。0.6mm以下であることにより低コストでの製造が可能となる。
【0056】
本発明においては、ブリスタ包装体用シートが上記の柔軟性プラスチックの層と他の層とを含む積層構造を有する場合、他の層として水蒸気バリア性層を積層することによって水蒸気バリア性を高めることができる。このような水蒸気バリア性層としては、たとえば、塩素系樹脂およびフッ素系樹脂、環状オレフィン樹脂が挙げられる。より具体的には、塩素系樹脂として、ポリ塩化ビニリデンが挙げられ、フッ素系樹脂として、ポリクロロトリフルオロエチエチレンが挙げられ、環状オレフィン樹脂として、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーが挙げられる。さらに、水蒸気バリア性層を積層する場合、水蒸気バリア性層は、柔軟性プラスチックの層の5%以上80%以下、さらには10%以上50%以下の相対厚みを有していることが好ましい。5%以上であることによりブリスタ包装体用シート全体の水蒸気バリア性を良好にすることができ、70%以下であることによりブリスタ包装体用シート全体を薄膜とし、特にPTPとして製造される場合に、柔軟性を向上させつつ、低コストでの製造を可能にする。
【0057】
本発明のブリスタ包装体用シートの製膜方法としては特に限定されず、フィルムおよびシートの成形方法として一般に用いられている方法が用いられる。例えば、Tダイ法およびインフレーション法などの押出成形やカレンダー加工などが挙げられる。
【0058】
[第2実施形態]
本発明のブリスタ包装体用シートは、ベース樹脂として熱可塑性樹脂から構成され、かつエラストマーおよび可塑剤のいずれも含まない樹脂で構成された柔軟性プラスチックを含む。
【0059】
本実施形態におけるベース樹脂となる熱可塑性樹脂は、引張弾性率(JIS K 7162)がたとえば100MPa以上800MPa以下、好ましくは150以上500MPa以下である。上記下限値以上であることにより、ブリスタ包装体用シートの保形性が良好である点で好ましく、上記上限値以下であることにより、ブリスタ包装体用シートの柔軟性が良好である点で好ましい。
【0060】
本実施形態におけるベース樹脂の熱可塑性樹脂は、第1実施形態と同様にポリ塩化ビニル系樹脂およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選ばれてよいが、好ましくはポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィン系樹脂として用いられる樹脂も、第1実施形態と同様であるが、特に、LDPEおよびL−LDPEが好ましく挙げられる。
【0061】
本実施形態において、柔軟性プラスチックの構成材料として除外されるエラストマーおよび可塑剤は、第1実施形態で述べた通りである。
本実施形態においては、軟質プラスチックにエラストマーを含まないため、エラストマーを含む場合に比べ、軟質プラスチックに水蒸気バリア性などの他の機能を具備させやすい。たとえば、水蒸気バリア性(JIS Z 0208に基づき、温度40℃、相対湿度90℃の条件下で試験した場合の水蒸気透過度)が4.0g/m2・day・atm以下、さらには2.5g/m2・day・atm以下であることが好ましい。さらに、ベース樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、水蒸気バリア性はさらに3.0g/m2・day・atm以下、さらには2.0g/m2・day・atm以下であることが好ましい。
【0062】
なお、添加物、層厚、層構造(単層構造および複層構造)および製膜方法などの点については、第1実施形態と同様である。
【0063】
[第3実施形態]
本発明のブリスタ包装体は、たとえば底材と蓋材とから形成される。上記のブリスタ包装体用シートは、底材のみに用いられてもよいし、底材と蓋材との両方に用いられてもよい。また、底材と蓋材との両方に用いられる場合、それぞれのブリスタ包装体用シートは、ベース樹脂の組成、軟化剤の種類、ブレンド比、層構成、および膜厚の少なくともいずれかにおいて異なっていてもよい。
【0064】
本発明のブリスタ包装体の包装方法としては特に限定されないが、一般的なブリスタ包装用の包装機が用いられる。たとえば、本発明のブリスタ包装体用シートを上下加熱盤または加熱ドラムによって加熱し、圧空成形法または真空成形法により収容物(錠剤およびカプセル剤などの医薬品、ならびに食品などが挙げられる。)の形状に応じた凹部を成形し、形成された凹部の中に収容物を充填し、アルミ箔または本発明のブリスタ包装体用シートを蓋材によってシールし、さらに分割用のスリットを施し、最後に所定の形状に打ち抜かれることにより、包装処理される。
【実施例】
【0065】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0066】
下記の原材料を、Tダイ押出法により溶融押出し、厚み0.3mmのシートを作製した。得られたシートを底材として、PTP成型機(シー・ケー・ディー株式会社製FBP−M2)を用いて、ポケット(直径10mmφ、深さ5mm)を成形し、その中に錠剤(0.22g/錠)を充填し、アルミ箔の蓋材(20μm)でシールし、PTPサンプルを作製した。PTPサンプル1枚の長手方向長さは94mm、短手方向長さは37mm、ポケット数は10であった。
【0067】
(実施例1)
ベース樹脂として塩素系アクリルグラフトコポリマー((株)カネカ社製 PRICTMER (R)GU)100重量部、軟化剤としてエチレン系特殊コポリマー(エチレン系特殊コポリマー、三井デュポン・ポリケミカル(株)社製エルバロイ(R)741)30重量部を用いた。
【0068】
(実施例2)
ベース樹脂としてL−LDPE((株)プライムポリマー社製ウルトゼックス(R)4020L)100重量部、軟化剤としてメタロセンL−LDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)社製 ユメリット(R)1540F)30重量部を用いた。
【0069】
(実施例3)
ベース樹脂としてプロピレン−エチレンランダムコポリマー(住友化学(株)社製 住友ノーブレン(R)S−131)100重量部、軟化剤としてエチレン系エラストマー(三井化学(株)社製タフマー(R)DF840)30重量部を用いた。
【0070】
(実施例4)
ベース樹脂としてプロピレン−エチレンランダムコポリマー(住友化学(株)社製 住友ノーブレン(R)FH3315)100重量部、軟化剤としてプロピレン系ナノ結晶構造制御型エラストマー(三井化学(株)製タフマー(R)PN−2060)10重量部を用いた。
【0071】
(実施例5)
軟化剤の量を20重量部としたことを除いて、実施例4と同様である。
【0072】
(実施例6)
軟化剤の量を30重量部としたことを除いて、実施例4と同様である。
【0073】
(実施例7)
軟化剤の量を40重量部としたことを除いて、実施例4と同様である。
【0074】
(実施例8)
軟化剤の量を50重量部としたことを除いて、実施例4と同様である。
【0075】
(実施例9)
ベース樹脂としてHDPE((株)プライムポリマー社製 ハイゼックス(R)5305E)100重量部、軟化剤としてエチレン系エラストマー(三井化学(株)社製タフマー(R)DF840)30重量部を用いた。
【0076】
(実施例10)
ベース樹脂としてプロピレン−エチレンランダムコポリマー(住友化学(株)社製 住友ノーブレン(R)FH3315)100重量部、軟化剤としてメタロセンL−LDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)社製)ユメリット(R)0520F)30重量部を用いた。
【0077】
(実施例11)
ベース樹脂としてプロピレン−エチレンランダムコポリマー(住友化学(株)社製 住友ノーブレン(R)S−131)100重量部、軟化剤としてLDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)社製UBEポリエチレンF222NH)30重量部を用いた。
【0078】
(実施例12)
ベース樹脂としてプロピレン−エチレンランダムコポリマー(住友化学(株)社製 住友ノーブレン(R)S−131)100重量部、軟化剤としてLDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)社製UBEポリエチレンF222NH)50重量部を用いた。
【0079】
(実施例13)
軟化剤としてLDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)社製UBEポリエチレンF222NH)40重量部とエチレン系エラストマー(三井化学(株)社製タフマー(R)DF840)10重量部とを用いたことを除いて、実施例12と同様である。
【0080】
(実施例14)
軟化剤としてLDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)社製UBEポリエチレンF222NH)35重量部とエチレン系エラストマー(三井化学(株)社製タフマー(R)DF840)15重量部とを用いたことを除いて、実施例12と同様である。
【0081】
(実施例15)
軟化剤としてLDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)社製UBEポリエチレンF222NH)20重量部とエチレン系エラストマー(三井化学(株)社製タフマー(R)DF840)30重量部とを用いたことを除いて、実施例12と同様である。
【0082】
(実施例16)
軟化剤としてLDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)社製UBEポリエチレンF222NH)5重量部とエチレン系エラストマー(三井化学(株)社製タフマー(R)DF840)45重量部とを用いたことを除いて、実施例12と同様である。
【0083】
(実施例17)
ベース樹脂として、引張弾性率700MPaのプロピレン−エチレン−ブテンターポリマー(住友化学(株)社製住友ノーブレン(R)FL6737)100重量部、軟化剤として、引張弾性率650MPaのプロピレン−エチレンランダムコポリマー(住友化学(株)社製 住友ノーブレン(R)S−131)100重量部を用いた。
【0084】
(実施例18)
軟化剤として、引張弾性率400MPaのオレフィン系エラストマー(住友化学(株)社製ESPOLEXWT505)を用いたことを除いて、実施例17と同様である。
【0085】
(実施例19)
軟化剤として、引張弾性率200MPaのメタロセンL−LDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)社製ユメリット(R)1520F)を用いたことを除いて、実施例17と同様である。
【0086】
(実施例20)
軟化剤として、引張弾性率100MPaのエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(日本ポリエチレン(株)社製ノバテック(R)LV342)を用いたことを除いて、実施例17と同様である。
【0087】
<柔軟性評価>
底材を一辺15mmの正方形にカットし、正方形サンプルの頂点を掌に当てた場合に全く痛みを感じない場合を非常に柔らかい「+++」、あまり痛みを感じない場合を柔らかい「++」、わずかな痛みを感じる程度である場合を少し柔らかい「+」、はっきりした痛みを感じる程度である場合を「-」と評価した。
【0088】
<保形性評価>
PTPシートの一方の短手辺の中央を親指と人差し指とでつまんで持った場合に、全く撓まない場合を「+++」、わずかに撓む程度である場合を「++」、少し撓むが取り扱いには問題ない程度である場合を「+」、取り扱いに支障しうる程度に撓む場合を「-」と評価した。
【0089】
<アンチブロッキング性評価>
PTP成形機にセットした原反を繰り出した場合に、全くブロッキングしない場合を「+++」、ブロッキング程度がわずかである場合を「++」、ブロッキング程度が軽度であり製造工程上問題ない場合を「+」、製造工程で支障となりうる程度にブロッキングする場合を「-」と評価した。
【0090】
<透湿度>
底材をJIS−Z−0208に基づき、温度40℃、相対湿度90℃の条件下で試験した。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に示すように、実施例1から実施例3により、柔軟性と保形性とが好ましく両立したPTP用シートが得られた。
【0093】
【表2】
【0094】
プロピレンナノ結晶構造制御型エラストマーは、通常、非常にブロッキングしやすい樹脂である。しかしながら表2に示すように、実施例4から実施例8では、柔軟性とアンチブロッキング性とが好ましく両立したPTP用シートが得られた。
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
表4に示すように、エラストマーのブレンド量を少なくすることで、好ましい水蒸気バリア性を達成する一方で、好ましい柔軟性は維持されたPTP用シートが得られた。
【0098】
【表5】
【0099】
表5に示すように、ベース樹脂よりも軟性の熱可塑性樹脂を軟化剤として用いることにより、柔軟性と保形性とが好ましく両立したPTP用シートが得られた。
【0100】
本発明の好ましい実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれらのみに限定されるものではなく、本発明の趣旨と範囲とから逸脱することのない様々な実施形態が他になされる。さらに、本実施形態において述べられる作用および効果は一例であり、本発明を限定するものではない。