特許第6394036号(P6394036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394036
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】電力用半導体素子の駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20180913BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20180913BHJP
【FI】
   H02M1/08 A
   H02M7/48 M
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-79815(P2014-79815)
(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公開番号】特開2015-201980(P2015-201980A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】小高 章弘
【審査官】 小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−359546(JP,A)
【文献】 特開平11−074779(JP,A)
【文献】 特開平10−276075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H02M 7/48
H03K 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御端子に電圧を印加することにより第1端子と第2端子との間に主電流が流れ、かつ、前記主電流に比例した検出電流が第3端子に流れる電力用半導体素子を駆動するための駆動装置であって、前記検出電流を用いて、前記電力用半導体素子を過電流から保護する動作を行うようにした駆動装置において、
前記制御端子に印加される電圧の大きさを制御するための駆動電圧制御手段を備え、
前記駆動電圧制御手段は、
前記検出電流が第1の電流閾値よりも大きくなった場合に、前記制御端子に印加する電圧を第1の時間変化率に従って低減させ、かつ、前記検出電流が前記第1の電流閾値よりも小さくなった場合に、前記制御端子に印加する電圧を、前記第1の時間変化率より小さな第2の時間変化率に従って、前記電力用半導体素子の正常時に前記制御端子に印加される電圧値まで増加させると共に、
前記電力用半導体素子を駆動するための電源により充電されて放電時に前記制御端子の電圧を低下させるように接続されたコンデンサを、抵抗値が互いに異なる抵抗を介して充電または放電させることにより、前記制御端子に印加される電圧の大きさ及び時間変化率を変化させることを特徴とする電力用半導体素子の駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載した電力用半導体素子の駆動装置において、
前記駆動電圧制御手段は、
前記電源の正極と前記コンデンサの正極との間に接続された第1の抵抗と、
前記コンデンサに並列に接続された回路であって、前記第1の抵抗よりも抵抗値が小さい第2の抵抗と第1のトランジスタとからなる直列回路と、を備え、
前記第1の抵抗を介して前記コンデンサを電源電圧にまで充電し、かつ、前記第1のトランジスタをオンさせることにより前記第2の抵抗を介して前記コンデンサを放電させ、前記制御端子の電圧を低下させることを特徴とする電力用半導体素子の駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載した電力用半導体素子の駆動装置において、
前記駆動電圧制御手段は、
前記検出電流が前記第1の電流閾値よりも大きくなった時に、前記制御端子への印加電圧を前記第1の時間変化率に従って所定の下限値に達するまで低減させることを特徴とする電力用半導体素子の駆動装置。
【請求項4】
請求項に記載した電力用半導体素子の駆動装置において、
前記駆動電圧制御手段は、
前記検出電流が前記第1の電流閾値よりも大きくなった時に、前記制御端子への印加電圧を前記第1の時間変化率に従って所定の下限値に達するまで低減させることを特徴とする電力用半導体素子の駆動装置。
【請求項5】
請求項に記載した電力用半導体素子の駆動装置において、
前記下限値を、
前記第2の抵抗と前記第1のトランジスタとの直列回路に直列接続されたツェナーダイオードのツェナー電圧によって設定したことを特徴とする電力用半導体素子の駆動装置。
【請求項6】
請求項2〜4の何れか1項に記載した電力用半導体素子の駆動装置において、
前記駆動電圧制御手段は、
前記コンデンサに並列に接続された回路であって、第3の抵抗と第2のトランジスタとからなる直列回路を備え、
前記検出電流が前記第1の電流閾値以下の第2の電流閾値よりも大きくなり、かつ、前記第2の電流閾値を超過してから一定の第1の時間が経過しても前記検出電流が前記第2の電流閾値を超過している時に前記第2のトランジスタをオンさせ、そのオン状態を、前記検出電流が前記第2の電流閾値を下回ってから一定の第2の時間が経過するまで維持することを特徴とする電力用半導体素子の駆動装置。
【請求項7】
請求項6に記載した電力用半導体素子の駆動装置において、
前記駆動電圧制御手段は、
前記第2のトランジスタがオフ状態であって前記コンデンサの電圧が所定の電圧閾値以下である時に、前記制御端子の電圧を低下させて前記電力用半導体素子を強制的にオフさせることを特徴とする電力用半導体素子の駆動装置。
【請求項8】
請求項2〜の何れか1項に記載した電力用半導体素子の駆動装置において、
前記駆動電圧制御手段は、
前記制御端子に一端が接続された回路であって、第3の抵抗と第2のトランジスタとからなる直列回路を備え、
前記検出電流が前記第1の電流閾値以下の第2の電流閾値よりも大きくなり、かつ、前記第2の電流閾値を超過してから一定の第1の時間が経過しても前記検出電流が前記第2の電流閾値を超過している時に前記第2のトランジスタをオンさせ、そのオン状態を、前記検出電流が前記第2の電流閾値を下回ってから一定の第2の時間が経過するまで維持することを特徴とする電力用半導体素子の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置を構成する電力用半導体素子の駆動装置であって、電力用半導体素子を過電流事故から保護してその破損を防止する機能を備えた駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、IGBT等の電力用半導体素子により構成された三相の電力変換装置及びその制御装置からなる電力変換システムの構成図である。
図1において、電力変換装置は、電力用半導体素子10をオンオフ制御することにより、直流電源20の直流電圧を三相交流電圧に変換し、三相交流電動機等の負荷30に供給する。一方、制御装置40は、電力用半導体素子10の駆動指令を生成する制御回路41と、この制御回路41から送られる駆動指令に基づいて各相上下アームの電力用半導体素子10に対するゲート信号をそれぞれ生成するゲート駆動装置42と、から構成されている。
【0003】
ここで、負荷30の故障や電力変換装置自身の故障に伴い、電力用半導体素子10に過電流が流れることがある。このため、過電流によって電力用半導体素子10が破損し、電力変換装置が破壊に至るまでに、過電流を抑制して電力用半導体素子10を保護する必要がある。
電力用半導体素子10の過電流保護は、図1におけるゲート駆動装置42によって行うのが一般的であり、例えば、特許文献1(特開2012−249481号公報)には、過電流保護機能を備えたゲート駆動装置が開示されている。
【0004】
図7図12は、特許文献1に記載されているゲート駆動装置の構成図及び動作波形図である。以下、これらの図を参照しながら、従来技術について説明すると共に、従来技術の課題について説明する。
【0005】
図7は、第1の従来技術に係るゲート駆動装置110aの回路構成図であり、電力用半導体素子としてのIGBTの過電流保護機能を備えている。
図7に示すように、一般的に使用される過電流保護回路204は、電力用半導体素子104のセンス抵抗202の電圧降下を検出し、電力用半導体素子104に流れる主電流の異常、すなわち過電流を検出してその動作を停止する。過電流保護回路204は、ノイズによる過電流保護機能の誤動作を防止するためのブランキングフィルタ207を介して、過電流検出コンパレータ205により、予め設定された基準電圧(電流閾値)Vよりもセンス抵抗202の電圧降下が大きくなった時に過電流が発生したと判定し、フォルト信号出力部206及びドライブ回路200を介して電力用半導体素子104をゲートオフする。
【0006】
図8は、図7の動作波形図である。
図7に示したゲート駆動装置110aでは、例えば図1に示した電力変換装置において、上下アームの電力用半導体素子が何らかの要因によって短絡状態になり、過電流が流れた場合、過電流状態になってからブランキングフィルタ207によるブランキング期間Tが経過した後に、電力用半導体素子104をゲートオフしている。
この方式の場合、短絡が発生してからブランキング期間Tを経過するまでの間は短絡状態が継続して大電流が流れ続けるため、電力用半導体素子104が担うエネルギーが増大して過電流保護を行えない場合がある。
【0007】
次に、図9は第2の従来技術に係るゲート駆動装置110bの回路構成図であり、図10はその動作波形図である。
この従来技術が図7と異なる点は、電力用半導体素子104のゲートとエミッタとの間に、ツェナーダイオード301とMOSFET 302との直列回路を接続した点と、センス抵抗202の一端とMOSFET 302とをブランキングフィルタ307を介して接続した点であり、これらのツェナーダイオード301、MOSFET 302及びブランキングフィルタ307により、ツェナークランプ保護回路300が構成されている。
ここで、新たに追加されたブランキングフィルタ307のブランキング期間Tは、ブランキングフィルタ207のブランキング期間Tよりも短くなっている。
【0008】
この回路構成の場合、電力用半導体素子104に過電流が流れるとセンス抵抗202に電圧降下が発生し、この電圧降下がフィルタ307のブランキング期間Tを経過するとMOSFET 302が導通し、電力用半導体素子104のゲート電圧がツェナーダイオード301のツェナー電圧にクランプされる。すなわち、電力用半導体素子104のゲートに印加される電圧がそれまで印加されていた電圧よりも低下し、ゲート−エミッタ間が短絡して電力用半導体素子104に流れる電流が減少する。その後、ブランキング期間Tが経過すると、図9の過電流保護回路204及びドライブ回路200の動作によって電力用半導体素子104の動作を停止する。
このような構成にすることで、過電流保護回路204が動作を開始するまでの間、電力用半導体素子104が担うエネルギーを図7よりも低減でき、より確実性の高い過電流保護を実現することができる。
【0009】
なお、前述したように、ブランキングフィルタ307のブランキング期間Tは、ブランキングフィルタ207のブランキング期間Tに対して短い。このことは、過電流保護回路204が誤動作する可能性よりも、MOSFET 302が誤動作する可能性が高くなることを意味する。しかしながら、仮にMOSFET 302が誤動作したとしても、電力用半導体素子104のゲート電圧が低下するだけであり、電力用半導体素子104を停止に至らせずに済むことから、電力変換装置としての機能に大きな悪影響を及ぼすことはない。すなわち、第2の従来技術によれば、第1の従来技術よりも確実性が一層向上することになる。
【0010】
ところが、図9に示した第2の従来技術でも、以下のような問題が生じる場合がある。具体的には、電力用半導体素子104の特性によっては、MOSFET 302がオンオフを繰り返す発振状態に陥ることがある。
この状態を簡単に説明すると、電力用半導体素子104の過電流状態を検知してMOSFET 302がオンすることにより、電力用半導体素子104のゲート電圧が低下し、これによって電流が減少する。これにより、センス抵抗202の電圧降下が減少してMOSFET 302がオフし、電力用半導体素子104のゲート電圧の低下が停止するので、その結果、電力用半導体素子104の電流が再び増加する。
この一連の動作を繰り返してMOSFET 302が発振状態に陥ると、電力用半導体素子104が担うエネルギーを低減することができず、電力用半導体素子104を過電流から保護することができなくなる。
なお、図10は、上述した発振状態に陥っている場合の動作波形図である。
【0011】
図11は、上記の問題を解消するための第3の従来技術に係るゲート駆動装置110を示している。
図11図9と異なる点は、ツェナークランプ保護回路310において、過電流検出コンパレータ305とフリップフロップ(S−Rフリップフロップ)303とを追加した点である。なお、Vは過電流検出コンパレータ305の基準電圧であり、V>Vの関係にある。
【0012】
この従来技術の動作を説明すると、図11において、電力用半導体素子104に過電流が流れ、センス抵抗202の電圧降下が基準電圧Vを超過すると、過電流検出コンパレータ305を介してフリップフロップ303がセットされると共に、MOSFET 302がオンし、電力用半導体素子104のゲート電圧を低下させる。このような回路構成により、MOSFET 302が発振状態に陥るのを防止することができ、より確実性の高い過電流保護が実現可能となる。
なお、なお、図12は、この従来技術の動作波形図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2012−249481号公報(段落[0012]〜[0026]、図2図7等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、図11に示した第3の従来技術でも、過電流が流れた際に電力用半導体素子104を破損から確実に保護できない場合がある。
前述したように、電力用半導体素子104に過電流が流れると、MOSFET 302がオンし、電力用半導体素子104のゲートに印加される電圧がツェナーダイオード301のツェナー電圧にまで急激に低下し、それに伴って電力用半導体素子104に流れる電流も急激に減少する。しかし、電力用半導体素子104に接続されている配線には浮遊の誘導性成分が存在しており、この誘導性成分は電流を流し続けようとする性質を持っているため、電力用半導体素子104に流れる電流が急激に減少すると、その電流変化率に応じて電力用半導体素子104に大きなサージ電圧が発生する。
すなわち、過電流が流れた際に電力用半導体素子104が担うエネルギーを低減すべく電流を低減するが故に、電力用半導体素子104に過電圧が印加されることになり、過電流が流れることによるエネルギーが直接的な原因ではなく、過電圧が直接的な原因となって電力用半導体素子104が破損に至る場合がある。
【0015】
そこで、本発明の解決課題は、過電流及び過電圧に起因した破損を防止して電力用半導体素子を確実に保護するようにした電力用半導体素子の駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、制御端子に電圧を印加することにより第1端子と第2端子との間に主電流が流れ、かつ、前記主電流に比例した検出電流が第3端子に流れる電力用半導体素子を駆動するための駆動装置であって、前記検出電流を用いて、前記電力用半導体素子を過電流から保護する動作を行うようにした駆動装置において、
前記制御端子に印加される電圧の大きさを制御するための駆動電圧制御手段を備え、
前記駆動電圧制御手段は、
前記検出電流が第1の電流閾値よりも大きくなった場合に、前記制御端子に印加する電圧を第1の時間変化率に従って低減させ、かつ、前記検出電流が前記第1の電流閾値よりも小さくなった場合に、前記制御端子に印加する電圧を、前記第1の時間変化率より小さな第2の時間変化率に従って、前記電力用半導体素子の正常時に前記制御端子に印加される電圧値まで増加させると共に、
前記電力用半導体素子を駆動するための電源により充電されて放電時に前記制御端子の電圧を低下させるように接続されたコンデンサを、抵抗値が互いに異なる抵抗を介して充電または放電させることにより、前記制御端子に印加される電圧の大きさ及び時間変化率を変化させるものである。
【0017】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した電力用半導体素子の駆動装置において、
前記駆動電圧制御手段は、
前記電源の正極と前記コンデンサの正極との間に接続された第1の抵抗と、
前記コンデンサに並列に接続された回路であって、前記第1の抵抗よりも抵抗値が小さい第2の抵抗と第1のトランジスタとからなる直列回路と、を備え、
前記第1の抵抗を介して前記コンデンサを電源電圧にまで充電し、かつ、前記第1のトランジスタをオンさせることにより前記第2の抵抗を介して前記コンデンサを放電させ、前記制御端子の電圧を低下させるものである。
【0018】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載した電力用半導体素子の駆動装置において、
前記駆動電圧制御手段は、
前記検出電流が前記第1の電流閾値よりも大きくなった時に、前記制御端子への印加電圧を前記第1の時間変化率に従って所定の下限値に達するまで低減させるものである。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項に記載した電力用半導体素子の駆動装置において、
前記駆動電圧制御手段は、
前記検出電流が前記第1の電流閾値よりも大きくなった時に、前記制御端子への印加電圧を前記第1の時間変化率に従って所定の下限値に達するまで低減させるものである。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項に記載した電力用半導体素子の駆動装置において、
前記下限値を、
前記第2の抵抗と前記第1のトランジスタとの直列回路に直列接続されたツェナーダイオードのツェナー電圧によって設定したものである。
【0021】
請求項6に係る発明は、請求項2〜4の何れか1項に記載した電力用半導体素子の駆動装置において、
前記駆動電圧制御手段は、
前記コンデンサに並列に接続された回路であって、第3の抵抗と第2のトランジスタとからなる直列回路を備え、
前記検出電流が前記第1の電流閾値以下の第2の電流閾値よりも大きくなり、かつ、前記第2の電流閾値を超過してから一定の第1の時間が経過しても前記検出電流が前記第2の電流閾値を超過している時に前記第2のトランジスタをオンさせ、そのオン状態を、前記検出電流が前記第2の電流閾値を下回ってから一定の第2の時間が経過するまで維持するものである。
【0022】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載した電力用半導体素子の駆動装置において、
前記駆動電圧制御手段は、
前記第2のトランジスタがオフ状態であって前記コンデンサの電圧が所定の電圧閾値以下である時に、前記制御端子の電圧を低下させて前記電力用半導体素子を強制的にオフさせるものである。
【0023】
請求項8に係る発明は、請求項2〜の何れか1項に記載した電力用半導体素子の駆動装置において、
前記駆動電圧制御手段は、
前記制御端子に一端が接続された回路であって、第3の抵抗と第2のトランジスタとからなる直列回路を備え、
前記検出電流が前記第1の電流閾値以下の第2の電流閾値よりも大きくなり、かつ、前記第2の電流閾値を超過してから一定の第1の時間が経過しても前記検出電流が前記第2の電流閾値を超過している時に前記第2のトランジスタをオンさせ、そのオン状態を、前記検出電流が前記第2の電流閾値を下回ってから一定の第2の時間が経過するまで維持するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、制御端子への印加電圧の変化率を抑制して電流低減時における電流変化率を抑制することができると共に、発振現象が生じるのを防止し、更には制御端子への印加電圧を低減する過程が終了した後は、安全、確実に電力用半導体素子を停止に至らしめることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】電力変換システムの構成図である。
図2】本発明の第1実施形態を示す回路構成図である。
図3】本発明の第1実施形態の動作波形図である。
図4】本発明の第2実施形態を示す回路構成図である。
図5】本発明の第3実施形態を示す回路構成図である。
図6】本発明の第4実施形態を示す回路構成図である。
図7】第1の従来技術を示す回路構成図である。
図8図7の動作波形図である。
図9】第2の従来技術を示す回路構成図である。
図10図9の動作波形図である。
図11】第3の従来技術を示す回路構成図である。
図12図11の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図2は本発明の第1実施形態の回路構成図であり、図3はその動作波形図である。
図2において、Qは保護するべき電力用半導体素子(以下、保護素子ともいう)であり、ここではIGBTを例示してある。この保護素子Qは、ゲート端子Gに電圧を印加することにより、コレクタ端子Cとエミッタ端子Eとの間に主電流が流れ、この主電流に比例した検出電流がセンス端子Sに流れる。ここで、ゲート端子Gは請求項における制御端子に、コレクタ端子Cは第1端子に、エミッタ端子Eは第2端子に、センス端子Sは第3端子に、それぞれ相当する。
なお、保護素子Qは、例えば図1に示した電力用半導体素子10として電力変換装置の上下アームに使用され、制御装置から送られる駆動指令によりオンオフ動作して電力変換を行うものである。
【0027】
まず、図2において、320はゲート電圧低減回路であり、その機能は、前述した図11(従来技術)におけるツェナークランプ保護回路310とほぼ同等である。また、図2において、220はソフトシャットダウン回路であり、その機能は、図11における過電流保護回路204とほぼ同等である。
本発明の各実施形態では、これらのゲート電圧低減回路320、ソフトシャットダウン回路220、及び、後述する抵抗R、コンデンサC等により、請求項における駆動電圧制御手段の主要部が構成されている。
【0028】
図2図11との大きな相違点は、本実施形態ではダイオードDとコンデンサCとの直列回路を設け、そのコンデンサCの両端に、ゲート電圧低減回路320及びソフトシャットダウン回路220が接続されている点である。
また、図11では、フリップフロップ303が図2のゲート電圧低減回路320に相当するツェナークランプ保護回路310に設けられているが、図2では、フリップフロップ(S−Rフリップフロップ)FFが図11の過電流保護回路204に相当するソフトシャットダウン回路220に設けられている。ここで、後述するように、図2のフリップフロップFFを設ける目的及び動作は図11のフリップフロップ303とは異なっている。
【0029】
以下、本実施形態の構成及び過電流保護動作について、図2図3を参照しながら説明する。
まず、基本的な動作を回路構成と共に説明する。
図2において、QはPチャネル型のMOSFETであり、QはNチャネル型のMOSFETである。保護素子Qに対する駆動指令Sigが否定手段NOTを介して論理積手段ANDに入力されており、論理積手段ANDの出力が「Low」レベルのときにMOSFET Qがオンする。また、駆動指令Sigが否定手段NOTを介して論理積手段ANDに入力され、その出力が論理和手段ORに入力されており、論理積手段ANDの出力つまり論理和手段ORの出力が「High」レベルのときにMOSFET Qがオンする。
【0030】
MOSFET QがオンしてMOSFET Qがオフすると、NPNトランジスタQにベース電流が流れるため、このトランジスタQがオンする。すると、保護素子Qのゲート端子Gとエミッタ端子Eとの間に直流電源Vの電圧(その値もVとする)が印加され、保護素子Qがオンする。
一方、MOSFET QがオフしてMOSFET Qがオンすると、PNPトランジスタQにベース電流が流れるため、このトランジスタQがオンする。すると、保護素子Qのゲート端子Gとエミッタ端子Eとの間はトランジスタQによって短絡されることになり、保護素子Qはオフする。
【0031】
さて、図2におけるコンデンサCは、電源Vから、抵抗Rを介して、または、抵抗RとダイオードDとを介して、電源電圧Vとほぼ等しい電圧に充電される。一方、コンデンサCの並列回路に設けられたトランジスタQまたはQがオンすると、コンデンサCは、上述した経路で充電されながらも、トランジスタQに直列接続された抵抗RまたはトランジスタQに直列接続された抵抗Rを介して放電される。
なお、抵抗R,R,Rは、それぞれ請求項における第1,第2,第3の抵抗に相当し、トランジスタQ,Qは、それぞれ請求項における第1,第2のトランジスタに相当する。
【0032】
ここで、各抵抗値をR,R>Rとし、また、R,R>Rとすれば、トランジスタQまたはQがオンすると、仮にMOSFET Qがオンしていたとしても、コンデンサCの電圧は低下する。また、トランジスタQがオンした場合、コンデンサCの電圧は、トランジスタQに直列接続されたツェナーダイオードZDのツェナー電圧Vよりも低下することはない。一方、トランジスタQがオンし続けると、コンデンサCの電圧はやがて0Vになる。なお、トランジスタQ,Qの両者がオフしている際にMOSFET Qがオンしたとしても、コンデンサCには直列にダイオードDが接続されているので放電経路がブロックされており、コンデンサCが放電することはない。
【0033】
次に、コンデンサC、トランジスタQ,Qの動作について説明する。いま、仮にMOSFET Qがオンし、保護素子Qのゲート−エミッタ間が電源電圧Vとほぼ等しい電圧にまで充電されたものとし、また、コンデンサCも電源電圧Vに充電されていたとする。この状態でトランジスタQがオンすると、前述したように、コンデンサCの電圧が低下し始め、最終的にツェナー電圧Vまで低下する。この時、保護素子Qのゲート−エミッタ間はほぼ電源電圧Vまで充電されているので、保護素子Qのゲート端子Gの電位よりも、トランジスタQ,Qのベース電位が低くなる。これに伴って、トランジスタQはベースに電流が流れなくなるので、トランジスタQはオフとなる。
【0034】
一方、トランジスタQにはベースに電流が流れるので、トランジスタQがオンする。ここで、トランジスタQがオンする条件は、当然のことながらベースに電流が流れる条件である。つまり、保護素子Qのゲート端子Gの電位が、トランジスタQのベース電位(コンデンサCの電圧)よりも高くないと、トランジスタQはオンしない。言い換えれば、保護素子Qのゲート端子Gの電圧がトランジスタQのベース電位よりも低いと、トランジスタQはオフする。
すなわち、この例では、コンデンサCの電圧がツェナー電圧Vまで低下すると、保護素子Qのゲート−エミッタ間の電圧VGEはツェナー電圧V以下に低下することができず、ほぼVに留まることになる。
【0035】
同様に、コンデンサCの電圧が0Vになると、保護素子Qのゲート−エミッタ間の電圧VGEは0Vになる。従って、図2に示した回路構成の場合、MOSFET Qがオンすることにより保護素子Qに過電流が流れたとするならば、保護素子Qのセンス抵抗Rの電圧降下によって過電流状態を検知し、トランジスタQまたはQをオンにすることにより、保護素子Gのゲート−エミッタ間の電圧VGEの大きさを調整することができる。
【0036】
なお、トランジスタQ,Qがオフすると、コンデンサCは抵抗RまたはRを介して放電する動作が停止し、抵抗RまたはRを介して再度充電される。この時、前述した抵抗値の大きさの関係(R,R>R、及び、R,R>R)から、コンデンサCが放電する時の時定数に比べて、充電される時の時定数は長くなる。
ここで、抵抗RまたはRを介してコンデンサCが充電される際の時定数は、請求項における第2の時間変化率に相当する。
【0037】
以上が基本的な動作の説明である。なお、上記の説明において、図2に記載されているものの説明されていない部分があるが、それらについては、以下に、図2図3を参照しながら説明する。
図2図3において、保護素子Qをオンオフさせる駆動指令Sigは、「High」レベルのときに保護素子Qをオンさせ、「Low」レベルのときに保護素子Qをオフさせるものである。また、図2における論理積手段AND,ANDにおいて、それぞれ、否定手段NOT側に接続されていないゲートは、過電流保護をより確実に行うためのシーケンスを司るものであり、通常時は、「High」レベルとなる。
【0038】
以下、図3における各時点(1)〜(10)での動作について説明する。
・時点(1)について
この時は過電流状態ではないため、駆動指令Sigが「High」レベルになると論理積手段AND,論理和手段ORの出力がそれぞれ「Low」レベルになり、MOSFET Qがオン、MOSFET Qがオフし、また、トランジスタQがオン、トランジスタQがオフする。これによって保護素子Qがオンし、そのコレクタ−エミッタ間の電圧VCEがほぼ0Vになると共に、電流Iが流れる。この時、コンデンサCは抵抗RまたはRを介して充電されており、その電圧VC1は電源電圧Vに等しくなっている。
【0039】
・時点(2)について
この時も過電流状態ではないため、駆動指令Sigが「Low」レベルになると時点(1)と反対の動作となり、保護素子Qがオフして電流Iが0になると共に、保護素子Qのコレクタ−エミッタ間の電圧VCEが電力変換装置の電源電圧Eにまで上昇する。
【0040】
・時点(3)について
駆動指令Sigが「High」レベルとなり、保護素子Qがオンする。この際、何らかの要因により、過電流が流れる。
【0041】
・時点(4)について
保護素子Qに過電流が流れ、センス抵抗Rの電圧降下が、コンパレータCMPの基準レベルVOC、コンパレータCMPの基準レベルVSCを超過する。なお、コンパレータCMP,CMPの非反転入力端子の入力電圧は電流Iの大きさに比例するため、図3では、電流Iの波形が上記入力電圧に相当するものと考え、基準レベルVOC,VSCも一緒に表示してある。
ここで、基準レベルVSCは請求項における第1の電流閾値に相当し、基準レベルVOCは第2の電流閾値に相当する。
また、図2において、各コンパレータCMP,CMPの入力側とセンス抵抗Rとの間には、それぞれ抵抗R及びコンデンサC、抵抗R及びコンデンサCからなるフィルタが接続されているが、これらのフィルタはノイズによる誤検知を防止するためのものである。
【0042】
なお、コンパレータCMP,CMPの基準電圧は、VOC≦VSCとなるように設定されている。従って、VOC<VSCの場合には、電流Iの増加に伴い、まず、コンパレータCMPの出力が「High」レベルになり、若干遅れてコンパレータCMPの出力が「High」レベルになる。
また、コンパレータCMPの出力側はトランジスタQのベースに接続されているので、トランジスタQがオンした場合、コンデンサCは抵抗Rを介して放電を開始し、コンデンサCの電圧VC1はツェナー電圧Vまで低下する。これに伴い、保護素子Qのゲート−エミッタ間電圧VGEもほぼツェナー電圧Vまで低下すると共に、ゲート−エミッタ間電圧が低下することによって電流Iも減少する。このとき、ゲート−エミッタ間電圧VGEが低下する速度は、コンデンサCの放電速度と等価であるから、放電経路にある抵抗Rの値を予め最適値に選定しておけば、電流低減時の電流変化率を低減することができ、保護素子Qに発生するサージ電圧を抑制して従来技術の問題点を解決することが可能である。
ここで、コンデンサCが抵抗Rを介して放電する際の時定数は、請求項における第1の時間変化率に相当する。
【0043】
・時点(5)について
保護素子Qの電流Iが減少することによってセンス抵抗Rの電圧降下も小さくなり、コンパレータCMPの基準電圧VSCを下回ることによってトランジスタQがオフするため、コンデンサCの充電が再度始まる。なお、充電時の時定数は、前述した抵抗値の大きさの関係から、放電時よりもゆっくりである(大きい)。
これにより、保護素子Qのゲート−エミッタ間電圧VGEもゆっくりとした時定数で増加し、それに合わせて、電流Iもゆっくりと増加する。従って、従来技術で生じたような発振現象を防止することができる。
【0044】
・時点(6)について
コンパレータCMPは、センス抵抗Rの電圧降下が既に基準電圧VOCを上回っているため「High」レベルの状態にあるが、コンパレータCMPの後段に設置されたタイマTIMERにより、時間Tのマスク期間を経てタイマTIMERの出力が「High」レベルになる。なお、コンパレータCMPの出力が一旦、「High」レベルになると、その後、時間Tが経過してもコンパレータCMPの出力が「High」レベルの状態であれば、タイマTIMERの出力は「High」レベルになるものである。
ここで、上記の時間Tは予め設定された一定時間であり、請求項における第1の時間に相当する。
【0045】
タイマTIMERの出力が「High」レベルになると、フリップフロップFFがセットされ、その出力が「High」レベルになると、トランジスタQがオンする。トランジスタQがオンすると、コンデンサCは、抵抗Rを介して放電が開始され、それに合わせて、保護素子Qのゲート−エミッタ間電圧VGEも低下し始め、保護素子Qをオフさせる動作を開始する。なお、コンデンサCの放電時定数は、抵抗Rの値をあらかじめ最適値に選定しておけば、保護素子Qの電流遮断時の電流変化率を低減することができ、保護素子Qに発生するサージ電圧を抑制することができる。
【0046】
上記のようにタイマTIMERを設けることにより、保護素子Qに過電流が流れていないにも関わらず、ノイズにより、誤って保護素子Qをオフさせる動作に移行してしまうのを防止することができる。
なお、フリップフロップFFの出力が「High」レベルになると、駆動指令Sigが「Low」レベルになって保護素子Qをオフさせる信号(MOSFET Qをオンさせる信号)が入ったとしても、図2に示すごとく論理積手段ANDを設けて保護素子Qをオフさせる信号(MOSFET Qをオンさせる信号)を受け付けないようにする。これは、過電流が流れている期間に、保護素子Qをオフさせる信号が入力されてMOSFET Qがオンしてしまうと、保護素子Qを流れる電流の遮断時における電流変化率を緩慢にすることができず、大きなサージ電圧が保護素子Qに発生するので、これを防止するためである。
【0047】
・時点(7)について
コンデンサCの電圧VC1が0Vとなり、保護素子Qに流れていた電流Iが0になる。
【0048】
・時点(8),(9),(10)について
センス抵抗Rの電圧降下がコンパレータCMPの基準電圧VOCを下回り、タイマTIMERの出力が「Low」レベルになってから時間Tが経過すると、否定手段NOTを介して接続されたタイマTIMERの出力が「High」レベルになり、フリップフロップFFがリセットされると共に、トランジスタQがオフされる。また、トランジスタQがオフされると、コンデンサCは再び充電される。
ここで、上記の時間Tは予め設定された一定時間であり、請求項における第2の時間に相当する。
【0049】
なお、コンデンサCの充電が不十分な状態では、保護素子Qをオンさせようにも完全にオンさせることができず、電力変換装置として所期の動作を行うことができない。 従って、トランジスタQがオフしており、しかも、コンデンサCの電圧VC1が所定の基準電圧(電圧閾値)Vよりも大きいことを図2のコンパレータCMPにて判断することにより、保護素子Qをオンさせるための上位からの駆動指令Sigを論理積手段ANDによって許可するようにする。
【0050】
逆に言えば、コンデンサCの電圧VC1が基準電圧Vよりも小さい場合は、保護素子Qをオンさせる駆動指令Sigが入力されているにも関わらず、論理積手段ANDにより保護素子Qをオンすることを禁止する。この時、本来は保護素子Qをオンさせるべく信号が入力されているのであるから、保護素子QをオフさせるためのMOSFET Qには、オフの信号が入力される。
【0051】
しかしながら、前述したように、MOSFET Qのオンは論理積手段ANDにて禁止され、なおかつ、MOSFET Qもオフの状態になっていると、保護素子Qのゲートは不定の状態になってしまい、動作が保証されない。従って、このような状態においては、MOSFET Qをオンさせるようにする。
具体的には、フリップフロップFFの出力が「Low」レベル、すなわち、トランジスタQがオフであり、しかもコンデンサCの電圧VC1が基準電圧V未満である場合には、そのことを論理積手段ANDにより判断し、その結果をもって、MOSFET Qを強制的にオンさせ、保護素子Qのゲート−エミッタ間電圧VGEを0Vにするものである。
【0052】
次に、図4は本発明の第2実施形態を示す回路構成図である。
この第2実施形態が図2の第1実施形態と異なる点は、図2では、コンデンサCと直列に接続されるダイオードDのアノード端子がトランジスタQ,Qのベース端子に接続されていたのに対し、図4の第2実施形態では、ダイオードDのアノード端子がトランジスタQ,Qのベース端子から切り離され、保護素子Qのゲート端子Gに接続されている点である。この第2実施形態の動作は、基本的に第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
次いで、図5は本発明の第3実施形態を示す回路構成図である。
この第3実施形態が図2の第1実施形態と異なる主な点は、図2では、過電流保護動作として保護素子Qを停止させるためのトランジスタQと直列に接続された抵抗RがコンデンサCの一端に接続されているのに対し、本実施形態では、同様の働きを担う抵抗Rの一端が保護素子Qのゲート端子Gに接続されていることである。
【0054】
過電流保護動作として、保護素子Qに流れる電流の変化率を低減しつつ電流を遮断する手段として、図2に示した第1実施形態では、保護素子Qのゲート端子Gに印加する電圧の大きさの変化率を低減することにより実現していた。
一方、第3実施形態の場合は、保護素子Qのゲート−エミッタ間を、抵抗Rを介してトランジスタQによって短絡することにより、保護素子Qに流れる電流の変化率を低減しつつ過電流を遮断する。
【0055】
図5において、保護素子Qの通常の電流遮断のプロセスでは、トランジスタQがオンすることにより、保護素子Qのゲートエミッタ間を、抵抗Rを介して短絡する。一方、過電流保護時のプロセスでは、トランジスタQがオンすることにより、保護素子Qのゲート−エミッタ間を、抵抗Rを介して短絡する。
つまり、実施している動作は、通常の電流遮断時と過電流保護時との間で変わりはないものの、過電流保護時に用いる抵抗Rの抵抗値を、通常の電流遮断時に用いる抵抗Rの抵抗値よりも大きくしておく。すなわち、R>Rとするものである。
【0056】
保護素子Qのゲート−エミッタ間には、等価的にコンデンサが挿入されているものとして考えて良い。また、このコンデンサを放電させる時定数を長くすることにより、保護素子Qの電流遮断時における電流変化率を低減することができる。このことを利用して、本実施形態では、過電流保護時に電流を遮断して保護素子Qを停止に至らしめる過程においては、抵抗Rによる大きな抵抗値を用いて、保護素子Qのゲート−エミッタ間を短絡するようにしている。
なお、保護素子Qに過電流が流れ始めた際に、ゲート電圧を低減させて過電流を減少させる動作については、図2に示した第1実施形態と同様である。
【0057】
また、図2に示した第1実施形態では、コンデンサCの電圧VC1が0Vになるまで放電するため、コンデンサCの電圧を監視して保護素子Qのオンオフの許可/禁止を判断していた。一方、この第3実施形態では、コンデンサCの電圧VC1が0Vにまで低下することはないため、そのような処理が不要となる。従って、図5においては、図2におけるコンパレータCMP、論理積手段AND,AND、否定手段NOT、論理和手段OR等が不要となる。
なお、本実施形態の動作は、基本的に第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0058】
次に、図6は本発明の第4実施形態を示す回路構成図である。
この第4実施形態は、図4の第2実施形態及び図5の第3実施形態を組み合わせたものであり、その動作は、基本的に第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【符号の説明】
【0059】
220:ソフトシャットダウン回路
320:ゲート電圧低減回路
:保護素子
,Q:MOSFET
〜Q:トランジスタ
:直流電源
FF:フリップフロップ
TIMER,TIMER:タイマ
CMP〜CMP:コンパレータ
ZD:ツェナーダイオード
〜R:抵抗
〜C:コンデンサ
:ダイオード
AND〜AND:論理積手段
OR:論理和手段
NOT〜NOT:否定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12