特許第6394048号(P6394048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394048
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ICタグ内蔵印刷用紙
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20180913BHJP
   G06K 19/02 20060101ALI20180913BHJP
   G09F 3/00 20060101ALI20180913BHJP
   G09F 3/03 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   G06K19/077 304
   G06K19/077 144
   G06K19/077 272
   G06K19/02
   G09F3/00 M
   G09F3/03 D
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-92579(P2014-92579)
(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公開番号】特開2015-210704(P2015-210704A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橘田 遼慧
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼下 利明
(72)【発明者】
【氏名】小林 燃
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−067713(JP,A)
【文献】 特開2012−061619(JP,A)
【文献】 特開2002−288622(JP,A)
【文献】 特開2007−025937(JP,A)
【文献】 特開2002−053204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00 −19/18
G09F 3/00
B42D 25/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にループアンテナとループアンテナに接続するICチップを備えるインレットを、上紙と下紙とで狭持し、上紙と下紙、上紙とインレットおよび下紙とインレットが接着層もしくは粘着層を介して貼り合わされており、前記基材が、紙基材もしくはフィルム基材であり、前記インレットの数が2以上であり、前記インレットを挟持する上紙及び下紙は厚みが150μmのヒートシール剤付のコート紙であり、かつ、ヒートシール剤は、厚さ20μmのエポキシ系粘着層であることを特徴とするICタグ内蔵印刷用紙。
【請求項2】
前記上紙と下紙は少なくとも片面にヒートシール剤が塗布され、熱圧着により貼り合わされていることを特徴とする請求項1に記載のICタグ内蔵印刷用紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品から不正に剥離された場合にそれ自身が破断することでICタグの再使用を防止する脆性機能を備えたICタグ内蔵印刷用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
無線によりICチップに蓄積された情報を読みだせるRFIDタグ(以下、ICタグと略記。)は、入出退管理用の非接触IDカードに内蔵されて用いられる一方、市場に流通する種々の物品にラベルとして貼付され、万引き防止用、真贋判定用、履歴管理、流通管理、在庫管理、等の用途で利用されている。これらのキーパーツであるICタグ自体は、図1(a),(b)に示すような電磁波を送受信するコイル状のループアンテナ3とループアンテナ3につながるICチップ4を薄い基材2上に敷設して、該基材(以下、インレット1と記す。)をフィルム基材あるいは紙基材で被覆しただけの非常に簡単な構造である。
【0003】
IC駆動用のエネルギーは、一般にICタグに近接して置かれたリーダライタから放射される電磁波から受け取り、エネルギー源として電池を内蔵する必要がないため小型軽量化でき、破壊されない限り半永久的に使用できる。通信周波数は、ループアンテナ3を小さくできる13.56MHzや900MHz帯あるいは2.45GHz帯が使用され、通信可能な距離は、数十cmから1m程度である。
【0004】
特に封緘シール用のラベルとして段ボール、封印用袋、電子機器類の筺体などの折り目や、玩具などに貼り付けられたICタグラベルは、貼付された物品が買い手に渡った後では、封緘シールとしての機能を果たし終えてしまうが、ICタグの機能がそのまま維持されている。すると、ICチップ4の内容が読み取られたりするおそれや、中身が改竄されて悪用されるおそれがある。そのため、ICタグラベルを取り外して、開封する時に、外力によりICタグ自体が自壊して、ICタグとしての機能が失われることが好ましい。それもできるだけ弱い外力で破壊されるような脆性機能を有することが望ましい。
【0005】
このような脆性を備えたICタグの構成が特許文献1に開示されている。基本的には図1に記載のインレット1をフィルムで挟み込んだ構成であるが、ラベルを組成する内側のフィルム基材に、ミシン目、切り込み、隙間等、外力に弱い部分を形成して、ラベルを被着体から引き剥がすときにミシン目や切り込み部分からラベル自体が破断されるようにしたものである。その際に、ループアンテナが切断されて通信機能の全部あるいは一部が失われて開封したことが検知できるようになっている。
【0006】
特に脆性の付与だけを目的としたものではないが脆性を有するICタグラベルとして、厚みが60〜150μm程度のインレット1を、抄紙機を使って紙層内に漉き込む技術が特許文献2に開示されている。インレット1を漉き込んだ紙基材は、一定程度の印刷適性を備えてはいるが、カールあるいは紙ぐせが生じやすく、またICチップ4の存在が分かってしまうというマイナスがある。この他、水処理工程があるため通信上の機能障害を生じやすいという問題もある。
【0007】
また、漉き込みタイプには、内蔵位置、大きさ、ICチップ(タグ)の数など設計・検証に多大な時間と労力が必要である。フィルムタイプのICタグにおいても脆性作用を効果的にするには、基材間の接着強度などを制御することが必要で、粘着剤等の選定開発が必要になる。汎用の粘着性フィルムが援用できない場合には、ラベル化以前に新しいタック紙製造工程が必要となるという問題がある。
【0008】
脆性ラベルの多くはより脆性効果を高める目的で、インレット1にも切り込みやミシン目を入れる。ラベルのサイズとインレット1のサイズが同程度であると、ラベルエッジにインレット端部が露出してしまうため、層間剥離や、信頼性の低下、防水効果が皆無になるなど、ラベルとして使用できない場合がある。
【0009】
その点を改善し、高信頼性を目的としてラベルを多層構成にしてしまうと、逆に脆性効果が失われてある程度の力で剥がさなければ、ラベルが自壊しないという問題がある。そのような場合には、剥がし方を工夫するとラベルにダメージを与えることなく、インレット1を取り出すことが可能となり、再利用の危険性が高まるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5035041号公報
【特許文献2】特開2005−350823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、物品に貼付されている間は十分な耐久性を備え、使用を終えて機能を果たし終えた後にICタグラベルを引き剥がす際には、容易に自壊してICタグ部分の再利用が難しいICタグラベルを製造できる、ICタグを内蔵した印刷用紙の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を達成するための請求項1に記載の発明は、基材上にループアンテナとループアンテナに接続するICチップを備えるインレットを、上紙と下紙とで狭持し、上紙と下紙、上紙とインレットおよび下紙とインレットが接着層もしくは粘着層を介して貼り合わされており、前記基材が、紙基材もしくはフィルム基材であり、前記インレットの数が2以上であり、前記インレットを挟持する上紙及び下紙は厚みが150μmのヒートシール剤付のコート紙であり、かつ、ヒートシール剤は、厚さ20μmのエポキシ系粘着層であることを特徴とするICタグ内蔵印刷用紙としたものである。
【0015】
上記課題を達成するための請求項に記載の発明は、前記上紙と下紙は少なくとも片面にヒートシール剤が塗布され、熱圧着により貼り合わされていることを特徴とする請求項1に記載のICタグ内蔵印刷用紙としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、インレットの上下を上紙と下紙とで挟み込んだ構成であるため、インレットを傷つけずにインレットを取り外すことは不可能である。また、層間からも剥離することは不可能であるため、非常に高い脆性効果が見込める。
【0018】
工法的には、インレットと紙のラミネート加工を、市販のヒートシール剤や粘着剤を使ってラミネート装置あるいはラベルコンバーターで容易に実行可能である。また、インレットは、フィルム基材でも脆性効果が見込めるが、紙にすることにより、紙同士が接着するためより高い脆性効果が期待できる。インレットの上下が紙で被覆されているためプリンターやコピー装置、印刷装置で印刷が可能である。ICタグの用途に応じた表面印刷が可能である。
【0019】
また、ラベルのエッジにインレットが露出していないため、断面が露出するタイプに比べて耐久性が高く層間剥離しにくいという効果が期待できる。加えて、本発明は、製造方法の変更や追加工程を増やすことなく通常のラベル加工機、ラベル加工工程で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】インレットの構造を説明する(a)上面視の図、(b)断面視の図である。
図2】本発明になるICタグ内蔵印刷用紙の構造を説明する断面視の図である。(a)上紙と下紙で挟み込む前、(b)上紙と下紙で挟み込んだ後である。
図3】RFIDタグの送受信システムの概要を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上下を紙基材で封印されたICタグ内蔵印刷用紙20は、基本的には、図2(a),(b)に示すようにインレット1のICチップ4側表面と裏面を保護用の上紙6aと下紙6bで被覆した構成である。紙基材6間に内蔵される厚みが100μm程度インレット1は、紙基材もしくはフィルム基材をベースにしており、該基材の表面もしくは表裏にループアンテナ3が形成され、ICチップ4がループアンテナ3の末端に接続固定されている(図1参照)。
【0022】
構造的には簡単であるが、運用・使用環境が苛酷であるためそれなりの耐久性、平坦性、印刷適性が要求される。インレット1は、図2に示すような単純な単層構成が好ましいが、多層であっても構わない。特に、本発明に係るICタグ内蔵印刷用紙20は、インレット1の表裏を、ヒートシール層7等粘着性素材を介して、厚みが100〜200μm程度の上紙6aと下紙6bで被覆した構成で、上紙6a、下紙6bは表面に各種の印刷ができるようになっている。
【0023】
ループアンテナ3は、図1に示すように厚みが40〜60μm程度のフィルム基材か紙基材2の表面にループ状に敷設されている。線幅が10μm程度の配線パターン3を複数回ループ状に引き回し、一端を、スルーホール5を用いて裏面側に一度退避させてから再度表面に引き出してアンテナ両端を接続用アイランドにつなげている。ICチップ4側端子が、接続用アイランドにはんだ接続もしくは異方性導電フィルム(ACF)あるいは異方性導電ペースト(ACP)を介して接続・固定される。
【0024】
フィルム基材には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスチレン(PS),ポリイミド(PI)等のフィルム基材が使用できるが、厚みの選択性、コストからPETが好ましい。
【0025】
紙基材は、上質紙、アート紙、コート紙、マット紙、合成紙等の紙基材のいずれかから選択して用いられる。あるいは、これらフィルム、紙にカオリン、炭酸カルシウムの可塑剤を分散して脆性を付与した基材も使用できる。合成紙は、合成樹脂中に空孔を細かく分散させ多孔質状に成型されたもので固体と気体の不均一分散系である。
【0026】
ループアンテナ3は、インレット1がフィルム基材である場合には、フィルムに貼合さ
れた厚みが20μm程度の銅箔を、定法のフォトリソ・エッチング法を適用してパターン形成する。エッチング液には所定温度の塩化第二鉄溶液を用いる。紙の場合には、銀、金、白金等からなる導電性ペーストを用いる印刷・焼結法により配線パターン3を形成する。配線パターン形成と同時に配線パターンの側壁を対抗させて(図示せず。)コンデンサーを形成する。コンデンサーはアンテナと対となって送受信用の共振回路を構成するために必要である。エッチングの場合、銅箔はアルミ箔でも代用できるし、プレス法によって配線パターン3を形成してもよい。
【0027】
アンテナ末端に接続するICチップ4は、概ね0.4〜1.0mm角程度の大きさである。通信周波数は、13.56MHz(HF)、920MHz、2.45GHz(UHF)のいずれかが好ましいが、特にこの周波数に制限されず用途に応じて選択できる。ICチップ4と接続部を保護するためにICチップを封止樹脂で被覆する場合もある。
【0028】
次に、ループアンテナ3を用いたICタグの送受信システムの概要について説明する。図3は、ICタグの送受信システムの一構成例をブロック図で表わしている。
システムは、リーダライタシステム21と、ICタグ側のRFIDシステム20から構成されている。電源供給用のバッテリを有しないバッテリーレス型のRFIDが用いられている。RFID側のコンデンサー27とループアンテナ26bは共振回路を構成し、リーダライタ側のアンテナ26aから放射された電磁波を受信し、受信した電磁波を電気信号に変換した後、ICチップ7側で処理する。
【0029】
リーダライタ21は、ホストコンピュータ22、DPU(Digital ProcessingUnit23)、変調・復調回路24、25、ループアンテナ26aから構成されている。ホストコンピュータ22は、DPU23を制御して、ICタグ側のメモリ31に所定のデータを書き込むか、または、所定のデータを読み出して、リーダライタ側のディスプレイ上に表示する等の機能がある。
【0030】
DPU23は、ホストコンピュータ22からの指令に基づいて、各種制御用のコントロール信号と送信データを生成し変復調回路に供給する。逆に、変復調回路を介してICチップ7からデータを取得して再生データを生成し、ホストコンピュータ22に出力する。変復調回路24,25は、送信データを送信波に重畳して変調し、または、ICチップ側からの変調波を復調し、DPU23に入力する。ループアンテナ26aは、変調信号に対応する電磁波を放射する。
【0031】
RFID20側は、図3の右側に示すように、ループアンテナ26bとコンデンサー7よりなる共振回路とICチップから構成されている。共振回路の共振周波数は、一般にリーダライタ側の発振器の発振周波数に対応する値に設定されている。
【0032】
ICチップには、整流回路32、変調回路24、復調回路25、レギュレータ29、シーケンサ30、ハイパスフィルター28、メモリ31等が組み込まれている。整流回路32は、ループアンテナ26bより供給された信号を整流平滑化し、正のレベルの電圧を、レギュレータ29に供給している。レギュレータ29は、前記電圧を、安定化させ、所定のレベルの直流電圧に変換し、シーケンサ30、その他の電子回路に電力を供給する。
【0033】
整流回路32につながる変調回路24は、図示はしないがインピーダンス素子とFET(FieldEffect Transistor)の直列回路により構成されており、共振回路のコイルを構成するループアンテナ26bと並列に接続されている。FETは、シーケンサ30からの信号に対応してインピーダンス素子がループアンテナ26bに対して並列に挿入された状態、または挿入されない状態にスイッチングする機能がある。これにより、リーダライタ21側のループアンテナ26aに対するRFID20側の負荷が変化される。
【0034】
ハイパスフィルター28は、コンデンサーと抵抗から構成されるが、整流回路32により整流平滑された信号に重畳されている高周波成分を抽出して、復調回路25に供給する機能を有する。復調回路25は、入力された高周波成分の信号を復調し、シーケンサ30に出力する。シーケンサ30は、ROM(ReadOnly Memory)やRAM(Random Access Memory)を内部に有しており、復調回路25より入力された信号(コンマンド)をRAMに記憶させ、ROMに内蔵されているプログラムに従ってこれを解析し、解析された結果に基づいて、必要に応じてメモリに格納されているデータを読み出す。シーケンサ30はさらに、コマンドに対応するレスポンスを返すためにレスポンス信号を生成し、変調回路24に供給する機能を有している。
【0035】
また、シーケンサ30は、復調回路25より供給されたコンマンドが読み出しコマンドである場合、そのコマンドに対応するデータをメモリから読み出す。シーケンサ30は、読み出したデータに対応して、FETをオン、またはオフする。FETがオンされると、インピーダンス素子がループアンテナ26bに並列に接続され、FETがオフされると、その並列接続が解除される。その結果、ループアンテナ26bを介して電磁結合しているリーダライタ側のループアンテナ26aの負荷回路のインピーダンスが、読み出しデータに対応して変化される。
【0036】
リーダライタ側のループアンテナ26a端子電圧は、その負荷のインピーダンスの変化に応じて変化する。復調回路25は、この変化を読み取ることにより、読み出されたデータを復調し、DPU23に出力する。DPU23は、入力されたデータを適宜処理し、ホストコンピュータ22に出力する。ホストコンピュータ22は、DPU23より入力された読み出しデータを処理し、必要に応じて図示せぬディスプレイ上に表示する。
【0037】
上述した通信システムを有するICタグ20を所定の大きさの紙基材に複数マトリックス状に内蔵したICタグ内蔵印刷用紙に所望のパターンを一括で印刷した後、マトリックス状に断裁して個片の紙製ICタグを得れば、種々の物品に貼付して使用することができる。紙基材、インレット間は粘着層によって固定されているので、インレットを取り外そうとしてもループアンテナ、ICチップにダメージを与えることなしに取り外しはできない。
以下、その点について説明する。
【0038】
UHF帯のアンテナが形成された紙基材からなるインレット1とHF帯のアンテナを備えたPETフィルムからなるインレット1を準備し、これを紙間に挟みこんでから、剥離試験を行い露出したインレットの状況を調べた。
【0039】
<実施例>
ICチップは、UHF帯(EPC global Class-1 Generation-2)準拠品とHF帯(ISO14443)準拠品を使用した。
厚み10μmの銅箔を貼り合わせた厚さ50μmのPETフィルム上に、定法のウエットエッチングにて線幅が10μmのコイル状のループアンテナと接続用アイランドを形成した(タイプ1)。
これとは別に厚さ60μmのコート紙に線幅が10μmのループアンテナと接続用アイランドを銀ペーストを用いてスクリーン印刷し、その後焼結乾燥した(タイプ2)。
【0040】
タイプ1のフィルム基材とタイプ2の紙基材の接続用アイランドに異方性導電ペースト(ACP)を介して前記のICチップを接続・固定したものをインレット1、インレット2とした。インレット個片の外形は10mm×20mmである
インレットを上下から挟み込む紙には、厚みが150μmのヒートシール剤付のコート
紙を用いた。大きさは40mm×80mmでインレットを2行2列の4面付けにした。ヒートシール層は、厚さ20μmのエポキシ系粘着層であり、図2(a)に示すようにコート紙の一方の面を完全に被覆している。面付け数については、適宜設定するが、ICチップを多面付けした大判の紙ではグラビア印刷等で表面印刷が可能であるが今実施例では省略した。
【0041】
ラミネート装置(LAMIPACKER3226Meister/FUJIPLA Inc.)を用いて、図2(a)、(b)に示すようにインレットを上紙/下紙の間に挟みこむと同時に熱圧着を行いICタグを作成した。ラミネート条件は、温度150℃、紙の移動速度は0.4m/min.であった。ヒートシール粘着層の粘着力は、概ね3N/10mm程度の強度であった。粘着層は加熱により溶融して、概ね30μ程度の厚みを呈し、ICチップ4とループアンテナ3を含む紙間を満たした。
最後に、得られた大判紙を所定の大きさに断裁してICタグ内蔵の紙片を作成した。
【0042】
比較のためにループアンテナの内側に露出しているフィルム基材と紙基材に長さ2mm、ピッチ2mmの切り込み(スリット)を入れたサンプルも作成した。ラミネート条件等は同じである。
【0043】
このようにして作成した紙製のICタグについて、剥離試験を行った。剥離はインレットの表裏を覆う上紙と下紙を端の境目から引き剥がした。結果については表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1中の×は上紙と下紙間に内蔵されているインレットが、引き剥がしによってダメージを受けてループアンテナが切断された上に、ICチップが端子から外れて再使用できなくなった状態を意味している。インレット基材が紙であってもフィルムであっても破損状況には大差がなかったが、どちらかといえば紙の方がループアンテナのダメージが大きかった(ループアンテナの材質もある)。インレットにスリットを入れた場合は勿論であるが、スリットを形成しなくともインレットが受けるダメージは変わらず、紙と紙の組み合わせに高い脆性効果があることが確認された。
【0046】
本発明は、実施例に記載した構成に限定されない。特に、紙間の粘着に用いた粘着層については、ヒートシール粘着剤に限らず、80〜90℃の温度で溶解して接着させるEVA(エチレン酢酸ビニル)系ホットメルト接着剤など、各種接着剤が使用できる。
【符号の説明】
【0047】
1、インレット
2、基材
3、ループアンテナ(配線パターン)
4、ICチップ
5、スルーホール
6、紙
6a、上紙
6b、下紙
7、粘着層
8、コートボール紙
9、(一般)強粘着層
20、RFID
21、リーダライタ(RW)
22、ホストコンピュータ
23、DPU
24、変調回路
25、復調回路
26、ループアンテナ
26a、リーダライタ側
26b、RFID側
27、コンデンサー
28、ハイパスフィルター
29、レギュレータ
30、シーケンサ
31、メモリ
32、整流回路
図1
図2
図3