(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394049
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】固形製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/185 20060101AFI20180913BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20180913BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20180913BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20180913BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20180913BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20180913BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20180913BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
A61K31/185
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/26
A61K9/20
A61K9/16
A61K9/14
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-93276(P2014-93276)
(22)【出願日】2014年4月30日
(65)【公開番号】特開2014-240379(P2014-240379A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2017年4月24日
(31)【優先権主張番号】特願2013-103594(P2013-103594)
(32)【優先日】2013年5月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】島口 早也佳
(72)【発明者】
【氏名】松島 歩
【審査官】
参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第1408363(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102210474(CN,A)
【文献】
特開平06−227975(JP,A)
【文献】
特開2012−162533(JP,A)
【文献】
特開昭62−126954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/185
A61K 9/14
A61K 9/16
A61K 9/20
A61K 47/12
A61K 47/22
A61K 47/26
A61K 47/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)5〜32質量%のアミノエチルスルホン酸、b)砂糖粉糖、グラニュー糖、白糖、ショ糖、及びブドウ糖からなる群から選ばれる少なくとも1種の単糖及び/又は二糖、c)1〜10質量%のクエン酸、酒石酸、リンゴ酸およびアスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機酸、及びd)ポリビニルピロリドンを含有することを特徴とする固形製剤(ただし、発泡錠を含まない)。
【請求項2】
顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤または錠剤である、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
a)アミノエチルスルホン酸、b)砂糖粉糖、グラニュー糖、白糖、ショ糖、及びブドウ糖からなる群から選ばれる少なくとも1種の単糖及び/又は二糖、及びc)クエン酸、酒石酸、リンゴ酸およびアスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含む混合物に、ポリビニルピロリドンと精製水を含む液を添加して湿式造粒する工程を含む、固形製剤の製造法。
【請求項4】
a)アミノエチルスルホン酸、b)砂糖粉糖、グラニュー糖、白糖、ショ糖、及びブドウ糖からなる群から選ばれる少なくとも1種の単糖及び/又は二糖、及びc)クエン酸、酒石酸、リンゴ酸およびアスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含む混合物に、ポリビニルピロリドンと精製水を含む液を添加して湿式造粒する工程を含むことを特徴とする、前記混合物の変色防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノエチルスルホン酸、単糖及び/又は二糖、及び有機酸を含有する固形製剤に関する。また、本発明は、アミノエチルスルホン酸、砂糖、及び有機酸を含む固形製剤の変色防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノエチルスルホン酸(別名:タウリン)は様々な効能が知られ、従来から液剤、散剤に広く配合されている。アミノエチルスルホン酸を含有する服用性良好な固形製剤を製造するために、砂糖と有機酸を配合したところ、得られた製剤は経時的に変色を生じた。従来、配合禁忌となっている成分を同一製剤中に配合する方法として、互いに化学反応を起こす成分を異なる顆粒に配合して製剤化する方法が用いられている(特許文献1)。異なる顆粒に分割することは、製剤工程が複雑になるだけでなく、製造コストが高くなってしまう。製造コストをできるだけ低く抑えてより安価な製品を需用者に提供するという観点からは、製造工程は簡略であることが好ましい。
【0003】
今までにアミノエチルスルホン酸、単糖及び/又は二糖、及び有機酸を含有し、変色の抑制された固形製剤に関する具体的な開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−117544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的はアミノエチルスルホン酸、単糖及び/又は二糖及び有機酸を含有しても、変色の抑制された固形製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討の結果、アミノエチルスルホン酸、単糖及び/又は二糖、有機酸、及びポリビニルピロリドンを含有する固形製剤は変色しないことを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)a)アミノエチルスルホン酸、b)単糖及び/又は二糖、c)有機酸、及びd)ポリビニルピロリドンを含有することを特徴とする固形製剤、
(2)c)有機酸がクエン酸、酒石酸、リンゴ酸およびアスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種である(1)に記載の固形製剤、
(3)顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、錠剤またはチュアブル剤である、(1)又は(2)に記載の固形製剤、
(4)湿式造粒法で造粒する工程を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の固形製剤の製造法、
(5)ポリビニルピロリドンを含む液を添加して造粒する工程を含む、(4)に記載の固形製剤の製造法、
(6)湿式造粒法で造粒する工程を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の固形製剤の変色防止方法、
(7)ポリビニルピロリドンを含む液を添加して造粒する工程を含む、(6)に記載の固形製剤の変色防止方法、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、固形製剤中で配合禁忌関係にあるアミノエチルスルホン酸、単糖もしくは二糖及び有機酸が接触する状態で含んでいても、製造工程を少なくしてコストを抑え、しかも、安定性、商品性が高い固形製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明におけるアミノエチルスルホン酸とは、別名タウリンであり、分子量125.15の単純な化学構造をもつ含硫アミノ酸である。本発明の固形製剤中におけるアミノエチルスルホン酸の含有量は、5〜32質量%が好ましい。
【0010】
本発明の単糖もしくは二糖としては、例えば砂糖粉糖、グラニュー糖、白糖、ショ糖、ブドウ糖、乳糖などを挙げることができる。 本発明の固形製剤中における単糖もしくは二糖の含有量は、25〜85質量%が好ましい。
【0011】
本発明における有機酸としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、フマル酸、グルタミン酸、グルコン酸、マレイン酸、アスパラギン酸、アジピン酸、フマル酸などをあげることができるが、特に好ましくはクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸である。本発明の固形製剤中における有機酸の含有量は、1〜10質量%が好ましい。
【0012】
また、本発明におけるポリビニルピロリドンとは、1−ビニル−2ピロリドンの直鎖重合物であり、K値が15〜21、26〜35、50〜62、80〜100の化合物を意味する。また、例えばポビドン又はポリビドンの別名があり、PVPとも略される。例えば、PVP K15、PVP K29/32、PVP K30、PVP K60、PVP K90などと称される。平均分子量は数千から数百万のものまで使用可能であるが、特に平均分子量4万〜120万のものが好ましい。本発明の固形製剤中におけるポリビニルピロリドンの含有量は0.1〜10質量%が最も好ましい。また、本発明の変色防止効果の観点から、ポリビニルピロリドンの含有量は、アミノエチルスルホン酸1質量部に対して0.01〜1質量部が好ましい。
【0013】
本発明の固形製剤には、必要に応じてさらに他の医薬成分、食品成分や添加剤等、例えば各種ビタミン(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンA、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンP、ビタミンK1、ビタミンH、ビタミンF、ビタミンUなど)もしくはビタミン誘導体,必要に応じて添加物(賦形剤、着色剤、崩壊剤、香料など)を添加することができる。
【0014】
本発明の固形製剤の剤型としては、例えば顆粒剤、細粒剤、および用時溶解して用いるドライシロップ製剤、錠剤などが挙げられる。
【0015】
本発明の固形製剤の製造する際の湿式造粒としては、攪拌造粒法、流動層造粒法、押し出し造粒法などの、通常医薬品や食品を製造する際の製造法であれば特に限定されない。また、湿式造粒する際の結合液としては、水又はポリビニルピロリドンを溶解させた水溶液が好ましい。本発明の固形製剤の製造に当たっては、例えば以下の方法が挙げられる。
顆粒剤、細粒剤、およびドライシロップ製剤を製造する場合は、アミノエチルスルホン酸と有機酸と単糖及び/又は二糖を混合し、適宜他の医薬成分や賦形剤と混合した後、ポリビニルピロリドンを精製水に溶解した液を添加し、湿式造粒法により製造することができる。また、アミノエチルスルホン酸、有機酸、単糖及び/又は二糖、及びポリビニルピロリドンを混合し、適宜他の医薬成分や賦形剤と混合した後、精製水を添加し、湿式造粒法により製造することができる。また、このようにして得た顆粒剤、細粒剤に、適宜有効成分や賦形剤などの慣用の製剤添加剤を配合し、混合物を打錠すれば錠剤を得ることができる。
【0016】
以下、実施例および試験例により本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
実施例1
タウリン500mg、クエン酸350mg及び白糖4000mgを秤量し、乳鉢内で混合した後、ポリビニルピロリドン23.4mgを106.6mgの精製水に溶解した液を添加して造粒した後、60℃で乾燥してから篩過し造粒物を得た。
【0018】
実施例2
タウリン1000mg、クエン酸680mg及び白糖5600mgを秤量し、粉砕機(スクリーン径0.5mm)で粉砕後、ポリビニルピロリドン360mgを1640mgの精製水に溶解した液を噴霧して造粒した。その後、80℃で乾燥させて造粒物を得た。
【0019】
実施例3
タウリン500mg、酒石酸350mg及び白糖4000mgを秤量し、乳鉢内で混合した後、ポリビニルピロリドン23.4mgを106.6mgの精製水に溶解した液を添加して造粒した後、60℃で乾燥してから篩過し造粒物を得た。
【0020】
実施例4
タウリン500mg、リンゴ酸350mg及び白糖4000mgを秤量し、乳鉢内で混合した後、ポリビニルピロリドン23.4mgを106.6mgの精製水に溶解した液を添加して造粒した後、60℃で乾燥してから篩過し造粒物を得た。
【0021】
実施例5
タウリン500mg、アスコルビン酸350mg及び白糖4000mgを秤量し、乳鉢内で混合した後、ポリビニルピロリドン23.4mgを106.6mgの精製水に溶解した液を添加して造粒した後、60℃で乾燥してから篩過し造粒物を得た。
【0022】
実施例6
タウリン500mg、クエン酸350mg及び乳糖4000mgを秤量し、乳鉢内で混合した後、ポリビニルピロリドン23.4mgを106.6mgの精製水に溶解した液を添加して造粒した後、60℃で乾燥してから篩過し造粒物を得た。
【0023】
実施例7
タウリン500mg、クエン酸350mg及びブドウ糖4000mgを秤量し、乳鉢内で混合した後、ポリビニルピロリドン23.4mgを106.6mgの精製水に溶解した液を添加して造粒した後、60℃で乾燥してから篩過し造粒物を得た。
【0024】
実施例8
タウリン500mg、クエン酸350mg、白糖4000mg及びポリビニルピロリドン23.4mgを秤量し、乳鉢内で混合した後、106.6mgの精製水を添加して造粒した後、60℃で乾燥してから篩過し造粒物を得た。
【0025】
比較例1
タウリン500mg、クエン酸350mg及び白糖4000mgを秤量し、乳鉢内で混合した後、ヒドロキシプロピルセルロース23.4mgを106.6mgの精製水に溶解した液を添加して造粒した後、60℃で乾燥してから篩過し造粒物を得た。
【0026】
比較例2
タウリン500mg、クエン酸350mg及び白糖4000mgを秤量し、乳鉢内で混合した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース23.4mgを106.6mgの精製水に溶解した液を添加して造粒した後、60℃で乾燥してから篩過し造粒物を得た。
【0027】
評価方法
上記実施例及び比較例で得られた造粒物各2gをそれぞれ白色瓶に充填し、金属キャップで密栓し、65℃恒温槽にて3日間保存後、変色の度合を目視により観察した。変色の有無及び程度は表1に示す基準により判定した。これらの実験結果を表2に示した。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明により、アミノエチルスルホン酸を配合し、安定性、商品性が高い固形製剤を提供することが可能となった。