特許第6394097号(P6394097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394097
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】車両用ギヤポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/18 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   F04C2/18 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-125544(P2014-125544)
(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公開番号】特開2016-3630(P2016-3630A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100164356
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 義和
(72)【発明者】
【氏名】久保 賢明
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−044294(JP,A)
【文献】 特開平11−002191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに噛合う外歯ギヤからなる駆動ギヤ及び従動ギヤを備え、
前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤの回転方向それぞれは、一方向に設定され、
前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤは、前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤの噛合い部が作動流体の吐出室と遮断されないように噛合
前記駆動ギヤのギヤ歯のうち回転方向後方の部分が、基準歯形と歯形を異ならせる切除部を有するとともに、前記従動ギヤのギヤ歯のうち回転方向前方の部分が、前記基準歯形と歯形を異ならせる切除部を有し、
前記駆動ギヤの前記切除部及び前記従動ギヤの前記切除部それぞれはさらに、前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤのうち対応するギヤの歯底に設けられる、
ことを特徴とする車両用ギヤポンプ。
【請求項2】
前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤは、前記駆動ギヤが前記従動ギヤを駆動する状態で、前記駆動ギヤのギヤ歯のうち回転方向前方の部分が、前記従動ギヤのギヤ歯のうち回転方向後方の部分に接触することで、前記噛合い部の一ケ所で接触する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ギヤポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ギヤポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2では、駆動ギヤ及び従動ギヤ間に作動流体の閉込領域を形成するギヤポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−83260号公報
【特許文献2】特開平11−303766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記閉込領域では、圧力が変動する。結果、駆動ギヤ及び従動ギヤが次のように揺動する。すなわち、閉込領域の圧力が上昇すると、駆動ギヤ及び従動ギヤが揺動代分、互いに離間する方向に押え付けられる。その後、回転が進むと、閉込領域はポンプ低圧側の吸入室に開放され、駆動ギヤ及び従動ギヤを離間させていた力が減少する。結果、駆動ギヤ及び従動ギヤが近づき、やがて接触する。
【0005】
このため、閉込領域を形成するギヤポンプでは、上記のようにして生じる駆動ギヤ及び従動ギヤの揺動を原因として、振動や騒音が発生する。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされてものであり、騒音や振動を低減可能な車両用ギヤポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の車両用ギヤポンプは、互いに噛合う外歯ギヤからなる駆動ギヤ及び従動ギヤを備える。そして、前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤの回転方向それぞれは、一方向に設定される。また、前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤは、前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤの噛合い部が作動流体の吐出室と遮断されないように噛合う。前記駆動ギヤのギヤ歯のうち回転方向後方の部分は、基準歯形と歯形を異ならせる切除部を有するとともに、前記従動ギヤのギヤ歯のうち回転方向前方の部分は、前記基準歯形と歯形を異ならせる切除部を有する。前記駆動ギヤの前記切除部及び前記従動ギヤの前記切除部それぞれはさらに、前記駆動ギヤ及び前記従動ギヤのうち対応するギヤの歯底に設けられる。
【発明の効果】
【0008】
上記態様の車両用ギヤポンプによれば、駆動ギヤ及び従動ギヤの噛合い部が作動流体の吐出室と遮断されないように、駆動ギヤ及び従動ギヤが噛合うことで、閉込領域が形成されなくなるので、騒音や振動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の車両用ギヤポンプの概略構成図である。
図2】駆動ギヤ及び従動ギヤを示す図である。
図3】実施形態の車両用ギヤポンプの動作説明図である。
図4】比較例と比較した実施形態の車両用ギヤポンプの作用効果の説明図である。
図5】駆動ギヤ及び従動ギヤの第1の変形例を示す図である。
図6】駆動ギヤ及び従動ギヤの第2の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同一又は対応する構成を示す。
【0011】
図1は、車両用ギヤポンプ1の概略構成図である。図2は駆動ギヤ3及び従動ギヤ4を示す図である。以下、車両用ギヤポンプ1をポンプ1と称す。ポンプ1は、ケース2と、駆動ギヤ3と、従動ギヤ4と、を備える。
【0012】
ケース2は、ギヤ室21と、吸入室22と、吐出室23と、を有する。ギヤ室21は、駆動ギヤ3及び従動ギヤ4を収容する。吸入室22は、ポンプ1が吸入する作動流体を収容する。吐出室23は、ポンプ1が吐出する作動流体を収容する。吐出室23では、ポンプ1の駆動時に、作動流体の圧力が吸入室22より高くなる。ケース2は、複数の部材で構成されてよい。
【0013】
駆動ギヤ3及び従動ギヤ4はともに、外歯ギヤであり互いに噛合う。駆動ギヤ3は複数のギヤ歯31を、従動ギヤ4は複数のギヤ歯41をそれぞれ備える。複数のギヤ歯31及び複数のギヤ歯41の歯数は、ここではともに8枚である。駆動ギヤ3及び従動ギヤ4は、平歯車である。駆動ギヤ3及び従動ギヤ4は、平歯車以外の歯車であってもよい。
【0014】
駆動ギヤ3は、従動ギヤ4を駆動する。駆動ギヤ3は、ポンプ1を搭載する車両の内燃機関によって駆動され、回転する。従動ギヤ4は、駆動ギヤ3の回転に応じて回転する。駆動ギヤ3及び従動ギヤ4の回転方向それぞれは、図1に円弧状の矢印で示すように一方向に設定される。なお、駆動ギヤ3の回転方向と従動ギヤ4の回転方向とは、互いに逆方向である。
【0015】
駆動ギヤ3及び従動ギヤ4は、次のように噛合う。すなわち、駆動ギヤ3及び従動ギヤ4の噛合い部Pが、吐出室23と遮断されないように噛合う。噛合い部Pは、駆動ギヤ3が従動ギヤ4に駆動力を伝達する部分である。駆動ギヤ3及び従動ギヤ4がこのように噛合うポンプ1では、複数のギヤ歯31及び複数のギヤ歯41が次のように設けられる。
【0016】
すなわち、複数のギヤ歯31及び複数のギヤ歯41は、互いに隣り合う2つのギヤ歯31のうち回転方向前方のギヤ歯31がギヤ歯41と噛合い部Pで噛合っている状態で、回転方向後方のギヤ歯31がギヤ歯41と噛合わないように設けられる。これにより、隣り合う2つのギヤ歯31のうち回転方向後方のギヤ歯31がギヤ歯41と噛合うことによって、回転方向前方のギヤ歯31における噛合い部Pが吐出室23と遮断されることが回避される。
【0017】
ポンプ1では、さらにギヤ歯31のうち回転方向後方の部分が切除部32を、ギヤ歯41のうち回転方向前方の部分が切除部42を有する。切除部32及び切除部42は、基準歯形と歯形を異ならせる。基準歯形は例えばインボリュート歯形である。基準歯形は、ギヤポンプに適用可能なその他の歯形であってもよい。
【0018】
ギヤ歯31のうち回転方向前方の部分は切除部32を有しないため、基準歯形に沿った形状を有する。同様に、ギヤ歯41のうち回転方向後方の部分は切除部42を有しないため、基準歯形に沿った形状を有する。このため、基準歯形はこれらの部分によって確認することができる。
【0019】
基準歯形がインボリュート歯形の場合など、ギヤ歯31やギヤ歯41において回転方向前方の部分及び回転方向後方の部分間で形状が対称である場合、切除部32は、ギヤ歯31のうち回転方向後方の部分の形状を回転方向前方の部分の形状と異ならせる。同様に、切除部42は、ギヤ歯41のうち回転方向前方の部分の形状を回転方向後方の部分の形状と異ならせる。
【0020】
このような切除部32及び切除部42は、ギヤ歯31のうち回転方向後方の部分と、ギヤ歯41のうち回転方向前方の部分との接触によって、噛合い部Pが吐出室23と遮断されないように設けられる。
【0021】
具体的には、切除部32及び切除部42は、駆動ギヤ3が従動ギヤ4を駆動する状態で、ギヤ歯31のうち回転方向後方の部分と、ギヤ歯41のうち回転方向前方の部分とが接触しないように設けられる。駆動ギヤ3が従動ギヤ4を駆動する状態とは、駆動ギヤ3が噛合い部Pで従動ギヤ4と接触する状態である。
【0022】
このように設けられた切除部32及び切除部42において、切除部32は、図2に示すように、駆動ギヤ3の厚さ方向における全範囲に亘って、ギヤ歯31の歯先及び歯底間の歯面部を面で切除するように設けられる。切除部42も同様である。切除部32及び切除部42は、基準歯形を形成した後に追加工によって設けることができる。切除部32及び切除部42は追加工ではなく、歯形形成時に設けられてもよい。
【0023】
複数のギヤ歯31及び複数のギヤ歯41と、切除部32及び切除部42とが上述したように構成された駆動ギヤ3及び従動ギヤ4は、駆動ギヤ3が従動ギヤ4を駆動する状態で、噛合い部Pの一ケ所で接触する。具体的には、駆動ギヤ3のギヤ歯3aのうち回転方向前方の部分が、従動ギヤ4のギヤ歯4aのうち回転方向後方の部分に接触することで、噛合い部Pの一ケ所で接触する。
【0024】
次にポンプ1の主な作用効果について説明する。
【0025】
図3(a)から図3(c)は、ポンプ1の動作説明図である。図3(a)は、任意のギヤ歯31及びギヤ歯41の噛合い開始時の駆動ギヤ3及び従動ギヤ4の状態を示す。図3(b)は、任意のギヤ歯31及びギヤ歯41の噛合い開始後、噛合い終了前の駆動ギヤ3及び従動ギヤ4の状態を示す。図3(c)は、任意のギヤ歯31及びギヤ歯41の噛合い終了時の駆動ギヤ3及び従動ギヤ4の状態を示す。
【0026】
図3(a)や図3(b)に示すように、駆動ギヤ3及び従動ギヤ4は、任意のギヤ歯31及びギヤ歯41の噛合い開始時から噛合い終了時直前まで、噛合い部Pの一ケ所で接触する。そして、図3(c)に示すように、これらギヤ歯31及びギヤ歯41の接触が解除された場合に、次のギヤ歯31及びギヤ歯41が噛合いを開始する。結果、駆動ギヤ3及び従動ギヤ4が新たな噛合い部Pの一ケ所で接触する。
【0027】
このため、ポンプ1では、噛合い部Pが吐出室23と遮断されないように、駆動ギヤ3及び従動ギヤ4が噛合う。したがって、駆動ギヤ3及び従動ギヤ4間には、作動流体の閉込領域が形成されない。そして、閉込領域が形成されなければ、閉込領域における作動流体の圧力変動に起因して、駆動ギヤ3及び従動ギヤ4が揺動することもない。このため、ポンプ1は、駆動ギヤ3及び従動ギヤ4の揺動発生原因を減少させることで、騒音や振動を低減できる。
【0028】
このように駆動ギヤ3及び従動ギヤ4が噛合うポンプ1は、さらに次のような作用効果を有する。
【0029】
図4(a)から図4(d)は、比較例であるポンプ1´と比較したポンプ1の作用効果の説明図である。図4(a)では、ポンプ1´及びポンプ1の構成を示す。図4(b)では、図4(a)に示す閉込領域Rにおけるポンプ1´の圧力変化と、閉込領域Rに対応する領域におけるポンプ1の圧力変化を示す。図4(c)では、ポンプ1´及びポンプ1それぞれのトルク変動を示す。図4(d)では、ポンプ1´及びポンプ1それぞれについて、図4(a)に示すX方向及びY方向に沿って駆動ギヤ3及び従動ギヤ4に作用する作動流体力を示す。
【0030】
なお、図4(b)から図4(d)において、図中左側に示すポンプ1´のグラフと、図中右側に示すポンプ1のグラフを結ぶ線は、縦軸スケールの差を示す。図4(d)では、X方向に作用する作動流体力を実線で、Y方向に作用する作動流体力を破線でそれぞれ示す。
【0031】
図4(a)に示すように、ポンプ1´は、噛合い時に2点で接触する駆動ギヤ3´及び従動ギヤ4´を備える。このようなポンプ1´は、駆動ギヤ3´及び従動ギヤ4´間に作動流体の閉込領域Rを形成する。
【0032】
図4(b)に示すように、ポンプ1´では、閉込領域Rで作動流体の圧力が上昇するが、閉込領域Rを形成しないポンプ1では、閉込領域Rに対応する領域で作動流体の圧力上昇が抑制される。
【0033】
このため、ポンプ1では、駆動ギヤ3及び従動ギヤ4間から吸入室22への作動流体のリーク量が減少し、ポンプ効率の向上が図られる。また、作動流体の圧力が吐出圧を上回る、すなわち必要以上に高圧になることも防止される。ポンプ1では、ポンプ1´において閉込領域Rに閉じ込められ、高圧になるはずの作動流体が吐出室23に流出する。このため、ポンプ1ではこれによってもポンプ効率の向上が図られる。
【0034】
上述したように、ポンプ1では、閉込領域Rに対応する領域で作動流体の圧力上昇が抑制されるため、トルクへの影響も軽減される。このため、図4(c)に示すように、ポンプ1では、ポンプ1´と比較してトルク変動も抑制される。結果、ポンプ1の駆動に必要なトルクも減少し、ポンプ1を駆動する内燃機関の燃費改善も図られる。
【0035】
上述したように、ポンプ1では、閉込領域Rに対応する領域で作動流体の圧力上昇が抑制されるため、図4(d)に示すように、ポンプ1´と比較して駆動ギヤ3及び従動ギヤ4に作用する作動流体力も減少する。このため、駆動ギヤ3及び従動ギヤ4の耐久性向上も図られる。
【0036】
ところで、ポンプ1では、駆動ギヤ3及び従動ギヤ4が、駆動ギヤ3が従動ギヤ4を駆動する状態で、前述したように噛合い部Pの一ケ所で接触する。この場合、上述したような閉込領域の対応領域を吐出室23に大きく開放することができる。結果、閉込領域の対応領域で作動流体の圧力上昇をより効果的に抑制することができる。
【0037】
このため、このような構成のポンプ1は、上述の効果を好適に奏することができる。このような構成のポンプ1は、駆動ギヤ3及び従動ギヤ4を噛合い部Pの一ケ所で接触するように構成することで増加する油輸送容積の分、吐出量の増加を図ることもできる。また、吐出量が増加する分、小型化を図ることで、吐出量を増加させる代わりに搭載性を向上させることや、小型化による軽量化を図ることで、ポンプ1を駆動する内燃機関の燃費改善を図ることもできる。
【0038】
ポンプ1では、駆動ギヤ3のギヤ歯31のうち回転方向後方の部分が切除部32を有するとともに、従動ギヤ4のギヤ歯41のうち回転方向前方の部分が切除部42を有する。このような構成のポンプ1は、駆動ギヤ3及び従動ギヤ4を切除部32及び切除部42によって切除した分、油輸送容積を増加させることができる。結果、吐出量を増加させることができる。
【0039】
このような構成のポンプ1は、吐出量が増加する分、小型化を図ることで、吐出量を増加させる代わりに搭載性を向上させることもできる。また、小型化により軽量化を図ることで、ポンプ1を駆動する内燃機関の燃費改善を図ることもできる。このような構成のポンプ1は、駆動ギヤ3及び従動ギヤ4を切除部32及び切除部42によって切除した分、軽量化を図ることもできる。
【0040】
ところで、ギヤポンプは車両のほか、例えばプラント設備で用いられる。ところが、プラント設備と車両との間には一般に、以下のような違いがある。
【0041】
すなわち、プラント設備では、ギヤポンプが安定した温度環境下で定常運転される。また、プラント設備用の場合、ギヤポンプは設備毎に個別に製造可能である。
【0042】
ところが、車両では、ギヤポンプが内燃機関によって駆動されるなど、車両の走行状態に応じて駆動する。このため、車両用のギヤポンプでは、回転速度が頻繁に変化するため、駆動用及び従動用の2つのギヤに揺動が発生し易い。
【0043】
また、車両は幅広い温度環境下で使用される。さらに、量産される車両用の場合、ギヤポンプには量産を考慮した寸法公差が設けられる。このため、車両用のギヤポンプでは、熱変形の影響を考慮して設けられた揺動代や、寸法公差によって生じる揺動代によって、揺動代が大きくなり易い。したがって、2つのギヤに揺動が発生し易い。
【0044】
このような事情に鑑み、駆動ギヤ3及び従動ギヤ4の揺動発生原因を減少させることで、騒音や振動を低減可能なポンプ1は、車両用として構成されるのに適している。
【0045】
ポンプ1では、切除部32及び切除部42が、駆動ギヤ3が従動ギヤ4を駆動する状態で、ギヤ歯31のうち回転方向後方の部分と、ギヤ歯41のうち回転方向前方の部分とが接触しないように設けられる。
【0046】
ポンプ1はこのような構成である場合に、ギヤ歯31のうち回転方向後方の部分と、ギヤ歯41のうち回転方向前方の部分との接触によって、噛合い部Pが吐出室23と遮断されることを回避することができる。
【0047】
切除部32及び切除部42は、次のように構成されてもよい。
【0048】
図5は駆動ギヤ3及び従動ギヤ4の第1の変形例を示す図である。第1の変形例において、切除部32は、駆動ギヤ3の厚さ方向における一部の範囲、具体的には一端部から中央部に亘って、ギヤ歯31の歯先及び歯底間の歯面部を面で切除するように設けられる。切除部42も同様である。
【0049】
このように設けられた切除部32及び切除部42は、駆動ギヤ3が従動ギヤ4を駆動する状態で、ギヤ歯31のうち回転方向後方の部分の一部と、ギヤ歯41のうち回転方向前方の部分の一部とが接触しないように設けられる。したがって、ギヤ歯31のうち回転方向後方の部分と、ギヤ歯41のうち回転方向前方の部分と間で、駆動ギヤ3及び従動ギヤ4が部分的に非接触となる。
【0050】
そして、このように切除部32及び切除部42を設けた場合でも、ギヤ歯31のうち回転方向後方の部分と、ギヤ歯41のうち回転方向前方の部分との接触によって、噛合い部Pが吐出室23と遮断されないように切除部32及び切除部42を設けることができる。
【0051】
図6は駆動ギヤ3及び従動ギヤ4の第2の変形例を示す図である。第2の変形例において、切除部32はさらに駆動ギヤ3の歯底に設けられる。駆動ギヤ3の歯底において、切除部32は、駆動ギヤ3の厚さ方向における全範囲に亘って設けられる。駆動ギヤ3の歯底において、切除部32は、駆動ギヤ3の厚さ方向における一部の範囲に設けられてもよい。上記内容は、切除部42についても同様である。
【0052】
そして、このように切除部32及び切除部42を設けた場合でも、ギヤ歯31のうち回転方向後方の部分と、ギヤ歯41のうち回転方向前方の部分との接触によって、噛合い部Pが吐出室23と遮断されないように切除部32及び切除部42を設けることができる。この場合、ポンプ1は歯底が深くなる分、油輸送容積をさらに増加させることができる。したがって、吐出量の増加や、搭載性向上や、内燃機関の燃費改善をより好適に図ることができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0054】
1 ポンプ
2 ケース部
21 ギヤ室
22 吸入室
23 吐出室
3 駆動ギヤ
31 ギヤ歯
32 切除部
4 従動ギヤ
41 ギヤ歯
42 切除部
図1
図2
図3
図4
図5
図6