(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スリーブバルブは前記一方向に沿って移動可能であり、前記流量は、前記スリーブバルブの前記一方向に沿った位置に応じて制御されることを特徴とする請求項1に記載の空気圧工具。
前記スリーブバルブは、前記圧力が高い場合に前記流量を大きく、前記圧力が低い場合に前記流量を小さく制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気圧工具。
前記メインバルブ及び前記スリーブバルブは、共通の溝の内部で前記一方向に沿って移動可能とされたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の空気圧工具。
外部から供給された圧縮空気を溜める蓄圧室を具備し、前記空気供給通路は、前記蓄圧室と連通されたことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の空気圧工具。
前記メインバルブが前記一方向に沿って移動する際に、前記スリーブバルブが前記メインバルブと連動して移動する構成とされたことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の空気圧工具。
前記スリーブバルブは、前記メインバルブが前記他方の側に近い位置とされた場合には前記流量が増大し、前記メインバルブが前記一方の側に近い位置とされた場合には前記流量が減少することを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の空気圧工具。
前記メインバルブの前記一方向に沿った移動と、前記スリーブバルブの前記一方向に沿った移動とが独立して行われることを特徴とする請求項4から請求項7までのいずれか1項に記載の空気圧工具。
前記圧縮空気を用いて止具部材を打ち込み、かつ前記止具部材に対し回転させる動作を行うねじ打機であることを特徴とする請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の空気圧工具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の建築技術等の進展により、木材、石膏ボード、鋼板等、さまざまな種類や硬さ厚さの板材が採用され、また、これらと係合するよう、ねじや釘等の止め具も多少化しており、従来の圧縮空気を用いる打込機やコンプレッサの減圧弁を用いたとしても打込み力の調整可能な範囲は狭く、その調整を行うことが困難になっている。
【0006】
すなわち、圧縮空気を動力源とした空気圧工具においては、打込み力の調整範囲を広くすることが望まれている。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記の問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の空気圧工具は、圧縮空気が流された空気供給通路から前記圧縮空気を吸気口に流入させることによって動作が開始される空気圧工具であって、一方向における一方の側と他方の側の間で移動可能であり、前記一方の側に位置した際には前記空気供給通路と前記吸気口との間の前記圧縮空気の流れを遮断し、前記他方の側に位置した際には前記空気供給通路と前記吸気口との間の前記圧縮空気の流れを許容するメインバルブと、前記メインバルブが前記他方の側に位置した際の前記空気供給通路と前記吸気口との間の前記圧縮空気の流量を
前記圧縮空気の圧力に応じて制御するスリーブバルブと、を具備することを特徴とする
。
本発明の空気圧工具において、前記スリーブバルブは前記一方向に沿って移動可能であり、前記流量は、前記スリーブバルブの前記一方向に沿った位置に応じて制御されることを特徴とする。
本発明の空気圧工具において、前記スリーブバルブは、前記圧力が高い場合に前記流量を大きく、前記圧力が低い場合に前記流量を小さく制御することを特徴とする。
本発明の空気圧工具において、前記メインバルブ及び前記スリーブバルブは、共通の溝の内部で前記一方向に沿って移動可能とされたことを特徴とする。
本発明の空気圧工具は、前記吸気口を介して内部に前記圧縮空気が導入されるシリンダが内部に設けられたメインハウジングを具備し、前記溝は、前記メインハウジングにおいて、前記シリンダの中心軸から見て前記シリンダの外側に形成され、前記溝の内部において、前記スリーブバルブは、前記メインバルブの外側に設けられたことを特徴とする。
本発明の空気圧工具において、前記スリーブバルブは、前記空気供給通路側に突出するスリーブバルブ突出部を具備し、前記スリーブバルブ突出部の前記空気供給通路側への突出長さが、前記圧縮空気の圧力に応じて変化することを特徴とする。
本発明の空気圧工具において、前記スリーブバルブの前記空気供給通路側における端部には、切り欠き部が設けられたことを特徴とする。
本発明の空気圧工具は、外部から供給された圧縮空気を溜める蓄圧室を具備し、前記空気供給通路は、前記蓄圧室と連通されたことを特徴とする。
本発明の空気圧工具は、前記メインバルブが前記一方向に沿って移動する際に、前記スリーブバルブが前記メインバルブと連動して移動する構成とされたことを特徴とする。
本発明の空気圧工具において、前記スリーブバルブは、前記メインバルブが前記他方の側に近い位置とされた場合には前記流量が増大し、前記メインバルブが前記一方の側に近い位置とされた場合には前記流量が減少することを特徴とする。
本発明の空気圧工具は、前記メインバルブの前記一方向に沿った移動と、前記スリーブバルブの前記一方向に沿った移動とが独立して行われることを特徴とする。
本発明の空気圧工具は、前記圧縮空気を用いて止具部材を打ち込む動作を行う打込機であることを特徴とする。
本発明の空気圧工具は、前記圧縮空気を用いて止具部材を打ち込み、かつ前記止具部材に対し回転させる動作を行うねじ打機であることを特徴とする。
【0009】
本発明は以上のように構成されているので、使用範囲の圧縮空気圧力下限側では流量が十分に制限され、かつ、圧力上限側では流量制限を有しない構成を実現することが可能である。すなわち、打込み力の上下限の差を従来技術よりも大きく取ることができ、より広い範囲の硬さ、厚さの木材、石膏ボード、鋼板などの板材とさまざまな長さ、太さ等のねじや釘に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施の形態))
本発明の第1の実施の形態となるねじ打機(空気圧工具)の構成について説明する。
図1は、このねじ打機100の構成を示す断面図である。このねじ打機100によって、ねじ(止具部材)が下側に載置された板材等に打ち込まれ、
図1においては、ねじが打ち込まれる軸方向に沿った断面図が示されている。なお、ねじ打機を用いて説明を行うことはあくまで便宜的な例示であり、本願発明は、同様に圧縮空気を用いて動作する工具、例えば、打込みを行う釘打機等においても同様に適用可能な技術に係る発明である。
【0012】
このねじ打機100においては、ねじが打ち込まれる軸を中心軸とした略円筒形状のハウジング10内に、ねじに対して下側に向かって打込力を印加し、その後でねじを回転させる動作を行わせるための機構が設けられている。この動作の動力源としては、外部から供給された圧縮空気が用いられる。また、上記の打込力やねじを回転させるトルクの発生源としてこの圧縮空気が用いられるが、これを制御するバルブ等の動作においても、この圧縮空気が使用されている。
【0013】
図1において、メインハウジング10の右側には、メインハウジング10と交差する方向に延伸し、作業者が把持するハンドル50が固定されている。ハンドル50の先端(
図1における右端)には、圧縮空気を供給するためのエアホース(図示せず)が装着されるエアバルブ51が設けられる。圧縮空気は、このエアバルブ51からハンドル50内に設けられた蓄圧室52に溜められ、メインハウジング10側に供給される。なお、エアバルブ51と蓄圧室52との間の空気経路にバネ圧と空気圧の差圧を用いる構成等の公知の減圧弁を設けることによって、蓄圧室52内に供給される圧縮空気の圧力を調整できる構成とすることもできる。また、メインハウジング10内における圧縮空気を用いた動作の後には、圧縮空気を外部に排出することが必要となるが、このための通路となる排気通路53もハンドル50内に蓄圧室52と分離されて上側に設けられている。排気通路53を通った圧縮空気は、ハンドル50の端部においてエアバルブ51の上側に設けられた排気口54から外部に排出される。
【0014】
ねじを下側に向かって打ち込み、回転させる動作は、メインハウジング10の中心軸上に設けられたドライバビット11によって行われる。ドライバビット11は、
図1において上下方向に移動し、かつ回転することによって、その先端(下端)によって、ねじを打ち込み、回転させる。
図1においては、この動作が行われる直前の状態(初期状態)が示されている。メインハウジング10の下側には、上下方向に延伸する射出部12が装着され、ドライバビット11の下端は、射出部12の内部を上下方向に移動する。射出部12の最下端には、射出部12に沿って上下方向に摺動可能であり下側に付勢されたプッシュレバー13が装着されている。また、複数のねじを収容するマガジン60が射出部12の右側(ハンドル50と同じ側)に装着され、1回の動作毎に、ねじ送り部61によって、1本のねじが自動的に射出路12に装填される。装填されたねじは、下方向に、ドライバビット11によって、その全長に満たない部分が打込まれ、その後、回転力が与えられる。
【0015】
また、ハンドル50とメインハウジング10の連結部分の下側には、トリガレバー14が装着されており、その上側には操作弁15が設けられている。操作弁15が動作した(例えば開放された)状態とされることによって、上記の打ち込み動作が行われる。操作弁15は、トリガレバー14が上側に引かれ、かつプッシュレバー13が上側に移動した場合にオンとなるように設定される。当該構造に関しては、周知のトリガレバーやプッシュレバーからなる構造が採用可能である。プッシュレバー13は、作業者が射出部12の下端を板材等に当接させた場合に上側に移動し、前記トリガレバーとプッシュレバーの両方が動作した状態の時に、打込み動作が行われる。具体例として、作業者が射出部12の下端をねじを打つべき箇所に当接させ、プッシュレバーが上側に移動した状態でトリガレバー14を引くことによって、ねじの打ち込み動作が行われる。
【0016】
次に、メインハウジング10内におけるドライバビット11の動作に関わる機構、及び操作弁15がオンとされた際のメインハウジング10内における動作について説明する。
【0017】
メインハウジング10内においては、上側において閉塞され下側で開口され回転自在とされたスピンドル20が設けられている。スピンドル20は、メインハウジング10の最上部に設けられ圧縮空気が導入されることによって回転するエアモータ21と遊星歯車機構22を介して接続される。具体的には、遊星歯車機構22における太陽軸がエアモータ21の出力軸に固定され、その周囲でこの太陽軸と噛合する公転ギヤの軸部がスピンドル20に固定されている。このため、スピンドル20は、エアモータ21の回転に伴って適切な減速比とした上で、メインハウジング10内で回転する。
【0018】
スピンドル20の内部においては、スライダ23がスピンドル20に対して上下方向に移動可能な状態で設けられる。ただし、スライダ23の外周、スピンドル20の内面にはそれぞれ凸部、凹部が係合するように形成され、スピンドル20の回転に際してはスライダ23も回転する。すなわち、スライダ23は、スピンドル20に対しては回転不能かつ上下方向には移動可能とされる。スライダ23は、
図1においては上下方向に分断されているように記載されているが、実際にはこれらは図示の範囲外で一体化されている。また、スライダ23には、スライダ23が下降して後述するプレート部31と接した際にスライダ23の上下方向の空間の間を遮断するためのエア遮断面23Bが設けられている。
【0019】
スライダ23には、副ピストン24が固定されている。副ピストン24は、上側に設けられ上端部がスライダ23に装着された円筒形状のシャフト241と、下側においてドライバビット11が固定されるドライバビット装着部242を具備する。このため、ドライバビット11の動きは、スライダ23、副ピストン24の動きを反映する。
【0020】
スピンドル20の下側には、円筒形状でありメインハウジング10に対して固定されたシリンダ30がスピンドル20の回転軸をその中心軸とした形態で固定される。スピンドル20の下側において、シリンダ30の上部には、スライダ23が下降した際にスライダ23におけるエア遮断面23Bを係止するプレート部31が設けられている。
【0021】
また、主ピストン25が、スライダ23の下側において、副ピストン24を囲むように、スピンドル20の内部に装着される。ただし、主ピストン25は、副ピストン24、スライダ23とは固定されず、これらに対して上下方向で移動可能とされる。なお、
図1においては主ピストン25は上下方向で分断されているように記載されているが、実際にはこれらは図示の範囲外で一体化されている。主ピストン25には、その内側において副ピストン24との間に設けられた空間と主ピストン25の外周とを連通させる連通孔25aが形成されている。
【0022】
スライダ23、副ピストン24、主ピストン25は連動してスピンドル20、シリンダ30の間を上下方向で移動することができるが、スライダ23の下側への移動は、エア遮断面23Bとプレート部31とが当接することによって制限され、スライダ23におけるエア遮断面23Bよりも上側の部分がシリンダ30側に下降することはない。一方、主ピストン25及びその内側に設けられた副ピストン24はシリンダ30側の内部まで下降することができる。シリンダ30の下端側には、副ピストン24等が下降した際にこれに当接して衝撃を吸収する弾性体で構成されたバンパ32がドライバビット11を囲むように設けられている。
【0023】
メインハウジング10内においては、操作弁15に接続された第1空気通路10aと、スピンドル20の外側においてスピンドル20とは隔離された状態でスピンドル20を囲む形態とされた第2空気通路(空気供給通路)10bと、シリンダ30を囲む戻し空気室10cが形成されている。また、エアモータ21を駆動させるための空気が流される第3空気通路10d(破線)も形成されている。第2空気通路10bは蓄圧室52と連通し、その内部には圧縮空気が溜められており、第2空気通路10b内の圧縮空気が、打ち込み動作に直接用いられる。また、スライダ23の上側とスピンドル20の上面との間にはスライダ室が、シリンダ30内にはシリンダ室30aが形成されている。また、シリンダ30における下側付近には、逆止弁が設けられ戻し空気室10cと接続された圧縮空気流出孔30bが設けられている。この逆止弁によって、シリンダ室30a内から戻し空気室10cへの空気の流れが許容され、戻し空気室10c側からシリンダ室a側への空気の流れは抑制される。シリンダ30における圧縮空気流出孔30bの更に下側には、戻し空気室10c側からシリンダ室30aへの空気の流れを許容する圧縮空気流入孔30cが形成されている。
【0024】
上記の構成においては、スライダ室に第2空気通路10b内の圧縮空気が導入されることによって、ドライバビット11が下降しねじを回転させる動作が行われる。この動作を行わせるために、上記の構成要素には、空気を通過させる通気口やOリングが適宜設けられている。以下に、この点について、スライダ23、副ピストン24、主ピストン25等の動作に即して説明する。
【0025】
スピンドル20の側面には、筒吸気口(吸気口)20b、筒排気口20cが設けられており、第2空気通路(空気供給通路)10bから筒吸気口(吸気口20bへの圧縮空気の導入のオン・オフが制御される。圧縮空気の導入がオンとされた場合に、打ち込み動作が開始される。スピンドル20の内部(スライダ室)に圧縮空気が導入されることによって、スライダ23、副ピストン24、主ピストン25は下側に押し下げられる。この動作が円滑に行われるように、副ピストン24におけるシャフト241には、通気口が形成されている。
【0026】
また、主ピストン25の上下方向における中央部付近の外周には、Oリング25bが装着されている。このため、スライダ室側の空気とシリンダ室30a側の空気は、このOリング25bが装着された箇所において分離される。このため、スライダ23等は、Oリング25bよりも上側の圧縮空気によって、上記の下降運動をする。
【0027】
一方、プレート部31には、エアモータ21側と接続された第3空気通路10dと連通した通気孔31aが形成されている。このため、主ピストン25が下降し、Oリング25bが通気孔31aよりも下側となった場合には、スライダ室側の圧縮空気の一部が通気孔31aを介して第3空気通路10dに流れる。この圧縮空気が第3空気通路10dからエアモータ21を通り、排気通路53に流れる際に、エアモータ21が回転する。これによって遊星歯車機構22を介してエアモータ21と接続されたスピンドル20が回転し、内部のスライダ23、副ピストン24、ドライバビット11が回転する。
【0028】
主ピストン25が更に下降し、主ピストン25の外周においてOリング25bよりも下側に装着されたOリング25cが、圧縮空気流出孔30bの位置に達したら、スライダ室20aの空気の一部は、シャフト241に設けられた通気口、連通孔25a、圧縮空気流出孔30bを介して、戻し空気室10cに流入する。その後、主ピストン25はバンパ32で係止され、副ピストン24のみが下降し、副ピストン24のみの推力によってドライバビット11が下降し、かつ回転する。これによって、ねじの締め込み作業が行われる。
【0029】
その後、ねじが所定の深さまで締められると、スライダ23におけるエア遮断面23Bがプレート部31と当接することによって、その下降が停止する。この際、通気孔31aへの空気の供給も停止されるため、副ピストン24(ドライバビット11)の回転も停止する。これによって、ねじの締め込み作業が終了する。
【0030】
その後、操作弁15がオフとされ、第2空気通路10bからスピンドル20の側面の筒吸気口20bへの空気の導入がオフとされた場合には、スライダ室20a内の空気は筒排気口20cを介して、排気通路53に流れ、排気される。その後、戻し空気室10c内の圧縮空気が圧縮空気流入孔30cを介してシリンダ室30aに導入されることによって、主ピストン25等が押し上げられ、初期状態となる。
【0031】
上記の動作においては、打ち込み動作のオン・オフは、第2空気通路10bから筒吸気口20bへの空気の導入のオン・オフと連動する。以下に、この動作について説明する。
図2は、
図1の構成において第2空気通路10bから筒吸気口20bへの空気の導入がなされる直前の状態を拡大して示す図であり、
図3は、
図2において一点鎖線で囲まれた部分を更に拡大して示す図である。
【0032】
この構成においては、第2空気通路10bの下側に、後述するメインバルブ40がその内部を上下方向で移動可能な溝70が形成されている。溝70は、その下側において第1空気通路10aと連通しており、メインバルブ40の上端部であるバルブ部40aは、溝70における第1空気通路10aよりも内側(筒吸気口20b側)に位置する。また、溝70及びメインバルブ40は、スピンドル20から隔離されて共にスピンドル20の周囲を囲むように形成されている。
【0033】
バルブ部40a(メインバルブ40)が最上部に位置する場合には、溝70の上面によってバルブ部40aが係止され、第1空気通路10aと筒吸気口20bとの間がバルブ部40aによって閉塞される。一方、バルブ部40a(メインバルブ40)がこれよりも下側に移動した場合には、第1空気通路10aと筒吸気口20bとの間が連通する。メインバルブ40におけるこうした動作によって、第2空気通路10bと筒吸気口20bとの間の空気の流れが制御される。すなわち、メインバルブ40は、上下方向(一方向)における上側(一方の側)と下側(他方の側)で移動可能とされ、上側にある場合にはオフ、下側にある場合がオンとなるように設定される。
【0034】
メインバルブ40の下端には、溝70を閉塞するようにメインバルブ下端部40bが厚く形成され、メインバルブ40の内側(溝70のスピンドル20側の内面と接する側)とメインバルブ下端部40bの外側(溝70の外側の内面と接する側)には、それぞれOリング40c、40dが装着されている。溝70の内部において、メインバルブ40の下側には、溝70の底面に下端が係止されメインバルブ下端部40bに上端が係止されたバネ71が設置される。このため、メインバルブ40はバネ71によって上側に付勢される。一方、第2空気通路10bには高圧の空気が導入されているために、メインバルブ40は第2空気通路10b内の圧縮空気によって下側に付勢される。ここで、溝70の下端部と連通した第1空気通路10a内に圧縮空気が存在する場合には、メインバルブ40はこれによって上側に付勢されるために、結果としてメインバルブ40は上側に付勢される。ただし、操作弁15が開とされた場合には、第1空気通路10a内が外気と連通するために、第1空気通路10aと、これに連通した溝70におけるメインバルブ下端部40bよりも下側の間における空気の圧力が大気圧まで低下する。この場合には、第2空気通路10b内の圧縮空気の圧力がバネ71の反力に勝り、メインバルブ40は下降し、第2空気通路10bと筒吸気口20bとが連通し、上記の打ち込み動作が行われる。
図3においては、メインバルブ40が最上部に位置した状態(オフの状態)が示されている。
【0035】
なお、Oリング40c、40dによって、メインバルブ下端部40bと溝70の内面との間は封止されるため、メインバルブ下端部40b(メインバルブ40)と溝70の内面との間の摺動抵抗を有している。しかしながら、メインバルブ40は、圧縮空気における高圧と大気圧との間の大きな圧力差によって上端側への移動と下端側への移動が制御されるため、Oリング40c、40dが用いられても、メインバルブ40の上下方向における移動は問題なく行われる。
【0036】
上記の構成においては、溝70の内部におけるメインバルブ40の外側に、メインバルブ40と同様に溝70内を上下方向に移動可能なスリーブバルブ41が装着されている。スリーブバルブ41の下端となるスリーブバルブ下端部41aと、メインバルブ40の下端において外側に突出するように設けられたメインバルブ下端部40bとの間にはバネ72が設置される。このため、スリーブバルブ41は、このバネ72によって上側に付勢される。一方、メインバルブ40と同様に、スリーブバルブ41は、第2空気通路10b内の圧縮空気によって下側に付勢される。ただし、溝70内におけるメインバルブ下端部40bよりも下側の空間とスリーブバルブ41とは隔絶されるため、スリーブバルブ41は第1空気通路10a内の圧縮空気の影響は直接受けず、本実施の形態では図示しない空気通路を介して大気と連通可能な構成であるため、前記のメインバルブ40の上下動に伴ってスリーブバルブ41も上下動する。
【0037】
図4は、スリーブバルブ41の形状を示す斜視図である。スリーブバルブ41は、溝70あるいはメインバルブ40に沿った円柱形状とされるが、その上端側には上下方向に沿った複数の流量調整溝(切り欠き部)41bが設けられている。スリーブバルブ41の周上において流量調整溝41bが設けられていない箇所は、上側に突出したスリーブバルブ突出部41cとなる。
【0038】
ここで、スリーブバルブ41を付勢するバネ72のバネ定数は、メインバルブ40を付勢するバネ71よりも充分低く設定される。この場合、メインバルブ40が上端部に位置する状態(閉じた状態)におけるスリーブバルブ41の上下方向における位置は、第2空気通路10b内の圧縮空気の圧力で定まる。すなわち、この圧力が低い場合はバネ72による反力によってスリーブバルブ41は上昇し、この圧力が高い場合には、スリーブバルブ41は下降する。ここで、前記の通り、第2空気通路10b、溝70等はスピンドル20を囲むように形成されているが、スリーブバルブ41が上昇した場合に、スリーブバルブ突出部41cは、常時内外周を案内する構成であり、上述したバネ72のバネ定数は、当該状況において流量調整溝41bの圧縮空気通過面積が小となるように設定される。すなわち、本構成は、流量調整溝41bの空気通過面積を調整することで打込力を調整する機構としたものであり、スリーブバルブ突出部41cによって流量調整溝41bの空気通過面積が制限される構造である。また、スリーブバルブ41にこうした動作を行わせるために、スリーブバルブ41と溝70の内面との間の摺動抵抗は、メインバルブ40と溝70の内面との間の摺動抵抗よりも低い構造とすることが好ましい。
図3においては、このようにスリーブバルブ突出部41cが第2空気通路10b側に大きく摺動した状態が示されている。なお、スリーブバルブ突出部41cが第2空気通路10b側に摺動する開口量は、所定の第2空気通路10bの圧縮空気の圧力で定まるように設定してもよい。
【0039】
図5は、
図3の状態から、第1空気通路10a内が大気圧とされた場合の構成を示す。この場合には、メインバルブ40(バルブ部40a)が下降し、第2空気通路10bと筒吸気口20bとの間が連通する。この際、スリーブバルブ41は、メインバルブ40との間の位置関係が
図3の状態とされたままで、メインバルブ40と共に下降する。この際に、第2空気通路10bと溝70との接続部分にスリーブバルブ突出部41cが存在するように、
図3の状態におけるスリーブバルブ突出部41c(スリーブバルブ40)の高さが設定されれば、
図5の状態において、スリーブバルブ突出部41は、第2空気通路10bから筒吸気口20bへの空気の流れに対する障害となる。このため、第2空気通路10bから筒吸気口20bへの圧縮空気の流量が低減し、前記の動作におけるスピンドル20内部の圧力上昇の速度が遅くなり、スライダ23等を駆動する圧力、特に打ち込み動作初期の圧力を低下させることができる。ただし、
図4における流量調整溝41bが存在する箇所(スリーブバルブ突出部41cが設けられない箇所)では、第2空気通路10bから筒吸気口20bへの空気の流れは阻害されない。
【0040】
一方、
図6は、メインバルブ40が最上部に位置した状態(オフの状態)において、第2空気通路10b内の圧縮空気の圧力が高い場合における構成を、
図3に対応させて示している。この場合には、
図3の場合と比べて、スリーブバルブ突出部41c(スリーブバルブ40)の位置は低くなり、スリーブバルブ突出部41cの摺動長さは小さくなる。このため、この状態でメインバルブ40を開けた
図7の状態においては、スリーブバルブ突出部41cの位置は第2空気通路10bと溝70との接続部分よりも充分低くなる。このため、円周上においてスリーブバルブ突出部41cが設けられた箇所(流量調整溝41bが設けられない箇所)においても、第2空気通路10bから筒吸気口20bへの空気の流れがスリーブバルブ突出部41cによって阻害されることはない。流量調整溝41bが存在する箇所で、第2空気通路10bから筒吸気口20bへの空気の流れが阻害されない点についても同様である。すなわち、この場合には、スリーブバルブ41は、第2空気通路10bから筒吸気口20bへの圧縮空気の流れに対して影響を与えず、第2空気通路10bから筒吸気口20bへの圧縮空気の流量が
図5の場合よりも大きくなる。
【0041】
このため、上記の構成においては、第2空気通路10b内の圧縮空気の圧力が低い場合には、スリーブバルブ41は第2空気通路10bから筒吸気口20bへの空気の流れを阻害し、第2空気通路10b内の圧縮空気の圧力が高い場合には、スリーブバルブ41は第2空気通路10bから筒吸気口20bへの空気の流れを阻害しない。第2空気通路10bは蓄圧室52と連通しているため、結局、メインバルブ40がオンとされた場合の第2空気通路10bから筒吸気口20bへの圧縮空気の流量は蓄圧室52内の圧縮空気の圧力で調整され、この圧力が低い場合にはこの流量が小さく、この圧力が高い場合には、流量が大きくなるように制御される。すなわち、上記の構成によって、蓄圧室52内の圧縮空気の圧力の変化に応じてシリンダ30に供給される空気流量を調整することができ、結果としてドライバビット11によって印加される力を大きく変動させることができる。
【0042】
この際、蓄圧室52内の圧縮空気の圧力と、ドライバビット11によって印加される力の関係は、
図4に例示されたような、スリーブバルブ41の形状によって調整することが可能である。例えば、流量調整溝41bの上下方向(移動方向)と垂直な幅を狭くすることによって、低圧時においてドライバビット11によって印加される力をより低くすることができる。また、
図4に示されたように矩形の流量調整溝41bを設けず、代わりに、例えばスリーブバルブ41の上端部側の形状を、鋸刃形状(三角波形状)とし、その形状を調整することによって圧縮空気の圧力と、ドライバビット11によって印加される力の関係を調整することもできる。すなわち、スリーブバルブ41の上端部の切り欠き部あるいはスリーブバルブ突出部の形状によって、ドライバビット11によって印加される力と圧縮空気の圧力との関係を設定することができる。
【0043】
また、上記においては、メインバルブ40が全閉の状態(
図3、6)と全開の状態(
図5、7)が示されていた。当該構成に代えて、あるいは、当該構成の過渡的な状態として、メインバルブ40が全閉の状態から僅かでも開いた状態から筒吸気口20bへ圧縮空気が導入され、打ち込み動作が行われる構成としてもよい。こうした場合においては、例えばスリーブバルブ41の位置を
図3と
図5の中間となるような設定とすれば、打ち込み動作の初期においてはスリーブバルブ突出部41cが第2空気通路10bから筒吸気口20bへの空気の流れを阻害し、その後でメインバルブ40が全開に近い状態になった場合にはスリーブバルブ突出部41cが第2空気通路10bから筒吸気口20bへの空気の流れを阻害しないような構成とすることもできる。この場合には、例えばドライバビット11によってねじが下側に打ち込まれる際の初期の圧力を低減するが、その後でこの圧力を高くすることができる。あるいは、木ねじを打ち込む際の圧力は低くするが、その後でねじを回転させる際のトルクは低減しないような制御とすることも可能である。
【0044】
また、上記の構成においては、メインバルブ40の開状態(
図5、7)においては、溝70内は、Oリング40c、40dにより、メインバルブ下端部40bを境界として、その上側が高圧、その下側が大気圧とされる。この場合において、スリーブバルブ41全体は、高圧側の箇所に設けられる。このため、スリーブバルブ41と溝70の内面との間を強固に封止する必要はなく、スリーブバルブ41と溝70の内面との間の摺動抵抗を充分小さくし、スリーブバルブ41の上下方向における上記の動きを容易に行わせることができる。
【0045】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態に係るねじ打機100においては、スリーブバルブ41の下端(スリーブバルブ下端部41a)がバネ72を介してメインバルブ40(メインバルブ下端部40b)に係止されたため、メインバルブ40が下降した場合には、スリーブバルブ41も同時に下降した。このため、上記のように、打ち込み動作の初期と終期で筒吸気口20bへ導入される圧縮空気の流量を変えることができる。一方、打ち込み動作の初期と終期で筒吸気口20bへ導入される圧縮空気の流量を一様にしたい場合、例えば打ち込み圧力を一様に弱くしたい場合もある。第2の実施の形態に係るねじ打機においては、スリーブバルブの動きとメインバルブの動きが独立して行われる構成とした。
【0046】
この場合のねじ打機の構成を、
図3、5〜7に対応させて、
図8〜11に示す。
図8、9は、圧縮空気の圧力が低い場合におけるメインバルブが全閉の場合(
図8)、全開の場合(
図9)をそれぞれ示し、
図10、11は圧縮空気の圧力が高い場合におけるメインバルブが全閉の場合(
図10)、全開の場合(
図11)をそれぞれ示す。このねじ打機においては、メインバルブ80、スリーブバルブ81、及びこれらが設けられた溝90の構成以外については、前記のねじ打機100と同様である。
【0047】
この構成において用いられる溝90も、前記と同様に第2空気通路10b、第1空気通路10aと接続される。メインバルブ80(バルブ部80a)が溝90内を上下方向に移動することによって、第2空気通路10bと筒吸気口20bとの間の圧縮空気の流れを制御することも、同様であり、その流れがスリーブバルブ81によって影響を受けることも同様である。
【0048】
図8に示されるように、ここで用いられるメインバルブ80におけるメインバルブ下端部80bの下側にも、バネ71が設けられているため、このメインバルブ80の動作も前記と同様である。すなわち、溝90におけるメインバルブ下端部80bよりも下側の空間の空気の圧力が低下した場合に、メインバルブ80が下側に移動し、第2空気通路(空気供給通路)10bと筒吸気口(吸気口)20bとが連通する。
【0049】
また、スリーブバルブ81においてスリーブバルブ突出部81cが上側に設けられている点も同様である。このため、スリーブバルブ突出部81cによって、第2空気通路10bと筒吸気口20bとの間の圧縮空気の流れを阻害することができ、圧縮空気の流量を調整することができる。また、スリーブバルブ81の下端側がバネ72の上端を係止するスリーブバルブ下端部81aとなっている点についても同様である。
【0050】
ただし、前記のねじ打機100とは異なり、バネ72の下端はメインバルブ80側で係止されておらず、バネ72の下端は溝90(メインハウジング)の内面に形成されたバネ係止部91で係止される。このため、メインバルブ80とスリーブバルブ81の上下方向の動きは独立となり、スリーブバルブ突出部81cの上下方向における位置は、
図8、9で示されるように、メインバルブ80が上下方向で移動した場合にも変化しない。この点は、第2空気通路10bにおける圧縮空気の圧力が高い場合(
図10、11)においても同様である。この場合においても、スリーブバルブ突出部81cの摺動長さが第2空気通路10b内の圧縮空気の圧力で定まることは同様であり、スリーブバルブ突出部81cあるいはスリーブバルブ81における上端部に形成された切り欠き部の形状等、第1の実施の形態やその応用例と同様の開口溝(流量)調整を行う構造によって、第2空気通路10bと筒吸気口20bとの間の圧縮空気の流量と圧力の関係を設定することができる。
【0051】
なお、この構成においては、スリーブバルブ81とメインバルブ80とが個別に溝90内を移動することができるために、前記のねじ打機100とは異なり、メインバルブ80が開の場合(
図9、11)の場合において溝90からの圧縮空気の漏洩を抑制するために、前記のスリーブバルブ41を用いた場合よりもスリーブバルブ81と溝90の内面との間のシール(封止)を強固に行うことが好ましい。
【0052】
上記の第1、第2の実施の形態においては、スリーブバルブの上下方向における位置が第2空気通路10bにおける圧縮空気の圧力によって自動的に変化し、これによって、第2空気通路10bから筒吸気口20bへ流れる圧縮空気の流量が自動的に制御された。このように自動的にスリーブバルブの上下方向における位置を制御する方法に代えて、手動でその位置が制御できる構成とする応用も可能である。この場合には、例えば上記の溝90内のスリーブバルブ81の上下方向の位置を、外部から摺動可能な取手やリブ等のスリーブバルブ手動開閉手段等を設けることが好適であり、また、任意の箇所でビス等によって固定できる構成とすればよい。この場合には、例えば圧縮空気の圧力が高い場合に第2空気通路10bから筒吸気口20bへ流れる圧縮空気の流量を小さく制限することや、この圧力が低い場合に流量を大きくすることも可能である。あるいは、供給される圧縮空気の圧力を一定として、スリーブバルブの位置を調整することのみによって打ち込み圧力を変えることもできる。
【0053】
また、上記の第1、第2の実施の形態においては、圧縮空気が供給されるスピンドル20(筒吸気口(吸気口)20b)が内側にあり、圧縮空気を供給する第2空気通路(空気供給通路)10bはその外側に形成されるため、メインバルブは、これらの間に設けられる。一方、スリーブバルブは第2空気通路10b内の圧縮空気に接することが必要であるため、スリーブバルブは第2空気通路10bに近い側に設けることが好ましい。このため、シリンダの中心軸から見て外側においてシリンダを囲むように溝が形成され、この溝の中においてメインバルブ、スリーブバルブが共に移動可能とされ、スリーブバルブがメインバルブの外側に設けられた上記の構成が、圧縮空気の流れを円滑に制御し、かつ打込機の構造を単純化するためには特に好ましい。
【0054】
また、上記のようなスリーブバルブをメインバルブと組み合わせた構成は、ねじ打ち機に限定されず、同様の構成を具備し、釘等の止具部材を打ち込む打込機においても有効であることは明らかである。更に、圧縮空気を動力源として用いる他の空気圧工具、例えば、圧縮空気式のドライバやレンチ等のメインバルブ部に適用した場合においても有効であることは明らかである。