(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394129
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】電子部品内蔵モジュール
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20180913BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20180913BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
H05K3/34 501D
H05K3/34 502D
H05K1/18 K
H05K3/28 G
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-141558(P2014-141558)
(22)【出願日】2014年7月9日
(65)【公開番号】特開2016-18928(P2016-18928A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末守 良春
(72)【発明者】
【氏名】小田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】日口 真人
【審査官】
久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−216658(JP,A)
【文献】
特開2005−302835(JP,A)
【文献】
実開平04−131926(JP,U)
【文献】
国際公開第2011/148615(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/18
H05K 3/28
H05K 3/32 − 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の少なくとも一方主面に形成されたランド電極と、
前記ランド電極と接合されたろう材と、
前記ろう材と接合された端子電極を有し、前記一方主面に実装された電子部品と、
前記一方主面上に形成されており、前記電子部品を覆っている封止樹脂と、
を備え、
前記基板と前記電子部品との間に空間が設けられており、
前記ランド電極上の一部に、ろう材レジストが形成されており、
前記ろう材には、前記ろう材と前記ろう材レジストと前記端子電極とによって囲まれた空隙が設けられている、電子部品内蔵モジュール。
【請求項2】
基板と、
前記基板の少なくとも一方主面に形成されたランド電極と、
前記ランド電極と接合されたろう材と、
前記ろう材と接合された端子電極を有し、前記一方主面に実装された電子部品と、
前記一方主面上に形成されており、前記電子部品を覆っている封止樹脂と、
を備え、
前記基板と前記電子部品の間に空間が設けられており、
前記端子電極上の一部に、ろう材レジストが形成されており、
前記ろう材には、前記ろう材と前記ろう材レジストと前記ランド電極とによって囲まれた空隙が設けられている、電子部品内蔵モジュール。
【請求項3】
前記端子電極が、前記電子部品の両端部に形成されたキャップ状の端子電極である、請求項1または請求項2に記載された電子部品内蔵モジュール。
【請求項4】
前記ろう材は、はんだであり、
前記ろう材レジストは、はんだレジストである、請求項1〜3のいずれか1項に記載された電子部品内蔵モジュール。
【請求項5】
前記電子部品および前記基板がフィルムに覆われており、
当該フィルムが前記封止樹脂により覆われている、請求項1〜4のいずれか1項に記載された電子部品内蔵モジュール。
【請求項6】
前記空隙が、前記基板の中央部分と前記電子部品とを結ぶ方向に形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載された電子部品内蔵モジュール。
【請求項7】
前記電子部品とは異なる電子部品が、前記一方主面にフリップチップ実装されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載された電子部品内蔵モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は電子部品内蔵モジュールに関し、更に詳しくは、電子機器の基板等にはんだ付けする際に加熱しても、内部において封止樹脂に含まれる液体成分(水等)から発生したガス(水蒸気等)に起因した電気的短絡や導通不良が発生しにくい電子部品内蔵モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に複数の電子部品が実装され、それらの電子部品が封止樹脂で覆われた構造からなる電子部品内蔵モジュールが、高機能モジュールとして電子機器等に使用されている。
【0003】
このような電子部品内蔵モジュールにおいては、その電子部品内蔵モジュールを電子機器の基板等に実装する際に、内部において、ろう材のフラッシュ(例えばはんだフラッシュ)が発生しないようにすることが重要な課題になっている。
【0004】
はんだフラッシュとは、電子部品内蔵モジュール内で基板上のランド電極と電子部品の端子電極との接合に使用したはんだが、その電子部品内蔵モジュールを電子機器の基板等にはんだ付けする際の加熱により再溶融し、微細な隙間に浸み出したり、更に浸み出したはんだが電子部品の端子電極間等を電気的に短絡させたりする現象をいう。
【0005】
はんだフラッシュにより内蔵された電子部品の端子電極間等が電気的に短絡してしまうと、その電子部品内蔵モジュールが故障し、更には実装された電子機器までもが故障してしまうため、重大な損失となる。
【0006】
このはんだフラッシュの発生を防止するために、従来から、電子部品内蔵モジュールにおいて種々の工夫が施されている。
【0007】
例えば、特許文献1(特開2011−165695号公報)に開示された電子部品内蔵モジュール(回路基板)では、基板上に形成されたランド電極(電極パッド)の形状等を工夫することにより、例えばランド電極を分割する等により、基板と実装された電子部品との間に封止樹脂を充填しやすくして、はんだフラッシュの発生を防止している。すなわち、特許文献1に開示された電子部品内蔵モジュールでは、実装された電子部品の周囲に封止樹脂を緻密に充填し、隙間を発生させないことにより、電子部品内蔵モジュールを電子機器の基板等にはんだ付けする際の加熱によりはんだが再溶融したとしても、電子部品の端子電極間等を電気的に短絡させることがないようにしている。
【0008】
また、別の方法として、特許文献2(特開2005−302835号公報)に開示された電子部品内蔵モジュール(半導体装置)では、逆に、基板と実装された電子部品との間に封止樹脂を充填せず、空間とすることにより、はんだフラッシュの発生を防止している。
【0009】
図10に、特許文献2に開示された電子部品内蔵モジュール600を示す。
【0010】
電子部品内蔵モジュール600は、基板101を備える。
【0011】
基板101の主面には、ランド電極102が形成されている。
【0012】
基板101には、ランド電極102を使って、部品本体の両端に端子電極103aが形成された電子部品103や、部品本体の底面に複数のフリップチップ電極(図示せず)が形成された電子部品104が実装されている。具体的には、電子部品103の端子電極103aや、電子部品104のフリップチップ電極が、ろう材、例えばはんだ105により、ランド電極102に固定されている。
【0013】
なお、部品本体の両端に端子電極103aが形成された電子部品103としては、例えば、コンデンサ素子、コイル素子、抵抗素子等がある。また、部品本体の底面に複数のフリップチップ電極が形成された電子部品104としては、例えば、弾性表面波素子、半導体素子、集積回路素子等がある。
【0014】
基板101に実装された電子部品103、104を覆うように、樹脂製のフィルム106が形成されている。
【0015】
更に、樹脂製のフィルム106上には、封止樹脂107が形成されている。
【0016】
封止樹脂107は、半溶融状態でフィルム106上に配置された後、固化ないし硬化されている。封止樹脂107は、フィルム106が存在するため、基板101と電子部品103、104との隙間には流れ込まず、基板101と電子部品103、104との隙間には、それぞれ空間S
1が形成されている。
【0017】
電子部品内蔵モジュール600では、基板101と実装された電子部品103、104との間に封止樹脂107を充填せず、空間S
1を形成しているため、電子部品内蔵モジュール600を電子機器の基板(図示せず)等にはんだ付けする際の加熱により、はんだ105が再溶融し、体積が膨張しても、その体積の膨張を空間S
1で吸収してしまうことができるため、はんだフラッシュが発生しにくくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2011−165695号公報
【特許文献2】特開2005−302835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
特許文献2に開示された電子部品内蔵モジュール600は、上述のように、電子部品内蔵モジュール600を電子機器の基板等にはんだ付けする際に、はんだフラッシュが発生しにくくなっている。
【0020】
しかしながら、電子部品内蔵モジュール600においても、封止樹脂107が液体成分(水等)を含んでいる場合には、電子部品103の両端子電極103aの間において電気的短絡が起こってしまったり、電子部品103の端子電極3aとランド電極102との間で導通不良が起こってしまったりする場合があった。以下、その理由を説明する。
【0021】
図11(A)、(B)は、それぞれ、ランド電極102、電子部品103、104、はんだ105、フィルム106を省略して示した電子部品内蔵モジュール600の断面図である。したがって、
図11(A)には基板101、封止樹脂107のみが、
図11(B)には封止樹脂107のみが示されている。なお、
図11(B)は、
図11(A)のX‐X部分の断面を示している。
【0022】
上述のとおり、電子部品内蔵モジュール600の製造工程において、封止樹脂107は、半溶融状態でフィルム106上に配置された後、固化ないし硬化されている。この工程において、封止樹脂107に含まれる液体成分は、封止樹脂107の外表面側から順次乾燥していくため、封止樹脂107の中央部分付近ほど、また封止樹脂107の基板101に接している側ほど、液体成分が残留してしまいやすい。
【0023】
図11(A)、(B)において、M
1、M
2、M
3は、封止樹脂107における液体成分が残留している部分を示し、M
1、M
2、M
3の順番に液体成分の残留濃度が高い。
【0024】
このように液体成分が残留してしまった電子部品内蔵モジュール600を、電子機器の基板(図示せず)等にはんだ付けするために加熱すると、封止樹脂107のM
1、M
2、M
3部分に含まれた液体成分が、ガス(水蒸気等)となり、
図11(A)、(B)において黒色矢印に示す方向に膨張する。すなわち、ガスは、基板101の主面と垂直な方向にも膨張するが、基板101の中央部分付近から、基板101の外縁方向に向かって、基板101の主面と平行な方向にも膨張する。このガスの膨張が、電子部品103の端子電極103a間の電気的短絡の原因となったり、電子部品103の端子電極103aとランド電極102との導通不良の原因となったりする場合があった。
図12(A)、(B)を参照して、更に詳しく説明する。
【0025】
図12(A)、(B)は、いずれも、電子部品内蔵モジュール600の要部断面図である。ただし、
図12(A)は、電子部品内蔵モジュール600を電子機器の基板(図示せず)等にはんだ付けする前の状態を示している。
図12(B)は、はんだ付けするために、電子部品内蔵モジュール600を加熱した状態を示している。
【0026】
図12(A)に示すように、基板101には、ランド電極102を使って、部品本体の両端に端子電極103aが形成された電子部品103が実装されている。具体的には、電子部品103の端子電極103aが、はんだ105により、ランド電極102に固定されている。そして、基板101に実装された電子部品103を覆うように、樹脂製のフィルム106が形成されている。更に、樹脂製のフィルム106上には、封止樹脂107が形成されている。封止樹脂107は、フィルム106が存在するため、基板101と電子部品103との隙間には流れ込まず、基板101と電子部品103との隙間に空間S
1が形成されている。
【0027】
電子部品内蔵モジュール600を電子機器の基板等にはんだ付けするために加熱すると、はんだ105が再溶融するとともに、
図12(B)に示すように、封止樹脂107に含まれた液体成分が、ガスとなり、黒色矢印に示す基板101の主面と平行な方向にも膨張する。フィルム106はガスを透過させるため、ガスは電子部品103の端子電極103aとフィルム106との間に入り込み、溶融したはんだ105(図における右側のはんだ105)を押し出して空間S
2を形成することがあった。
【0028】
そして、押し出されたはんだ105が、基板101と電子部品103との間の空間S
1に流れ込み、反対側のランド電極102(図における左側のランド電極102)やはんだ105(図における左側のはんだ105)に到達してしまう場合があった。すなわち、電子部品103の両端子電極103a間が電気的に短絡してしまう場合があった。
【0029】
また、空間S
2が形成されたことにより、溶融したはんだ105が押し出され、電子部品103の端子電極103aとランド電極102との間が導通不良になってしまう場合があった。
【0030】
以上のように、特許文献2に開示された電子部品内蔵モジュール600は、基板101と電子部品103との間に空間S
1を設けることにより、電子機器の基板等にはんだ付けする際のはんだフラッシュの発生を抑制したものであるが、封止樹脂107が液体成分を含んでいる場合には、内部で電気的短絡や導通不良が発生してしまう虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本願発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、その手段として本願発明の電子部品内蔵モジュールは、基板と、基板の少なくとも一方の主面に形成されたランド電極と、少なくとも1対の端子電極を備えていて端子電極がランド電極にろう材により固定されることにより基板の主面に実装された電子部品と、基板の主面上に電子部品を覆って形成された封止樹脂と、を備え、基板と電子部品との間に空間が設けられるとともに、少なくとも1つの、ろう材によるランド電極と電子部品の端子電極との固定部分において、ろう材に、貫通した空隙または途中で壁により塞がった空隙が形成されたものからなる。このような構造からなる本願発明の電子部品内蔵モジュールは、膨張したガスを空隙により通過させることができるため、溶融したろう材(はんだ等)が、基板と電子部品の間の空間等に押し出されることがなく、内部で電気的短絡や導通不良が発生してしまうことがない。なお、ろう材に形成された空隙が、途中で壁により塞がったものである場合は、膨張したガスは、壁を突き破って通過したり、壁を押しやって空隙内に吸収されたりする。
【0032】
電子部品の端子電極は、例えば、電子部品本体の両端部に形成されたキャップ状の端子電極からなる。キャップ状の端子電極の場合には、ろう材によるランド電極と端子電極との固定部分の近傍にガスを通過させる隙間がなく、電子部品内蔵モジュールを電子機器の基板等にはんだ付けする際に、ろう材が膨張したガスの影響を受けやすく、ろう材が押し出されて内部で電気的短絡や導通不良が発生しやすいため、本願発明を適用することによる効果は大きい。
【0033】
電子部品および基板がフィルムに覆われ、そのフィルムが封止樹脂により覆われた構造とすることができる。電子部品および基板をフィルムで覆うことにより、基板と電子部品との間に容易に空間を設けることができる。
【0034】
ろう材の空隙は、ランド電極にスリットを設ける方法、ランド電極上にろう材に対するレジストを付着させる方法、電子部品の端子電極上にろう材に対するレジストを付着させる方法、電子部品の端子電極に電極非形成部を設ける方法等により形成することができる。
【0035】
ろう材の空隙は、例えば、基板の中央部分と電子部品とを結ぶ方向に形成することができる。この場合には、封止樹脂中のガスが膨張する方向と空隙の形成方向とを一致させることができるため、空隙によりガスを通過させやすい。
【0036】
なお、本願発明の電子部品内蔵モジュールは、底面に複数のフリップチップ電極が形成された別の電子部品が、基板の主面に更にフリップチップ実装されていても良い。このような電子部品としては、例えば、弾性表面波素子、半導体素子、集積回路素子等があるが、この場合には、電子部品内蔵モジュールをより高機能化することができる。
【発明の効果】
【0037】
本願発明の電子部品内蔵モジュールは、ろう材に形成された空隙によりガス(水蒸気等)を通過させることができるため、電子部品内蔵モジュールを電子機器の基板等にはんだ付けする際に、封止樹脂に含まれる液体成分(水等)から発生したガスに起因して、内部で電気的短絡や導通不良が発生することが抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電子部品内蔵モジュール100を示す平面図である。ただし、
図1では、フィルム6、封止樹脂7を省略して示している。
【
図2】
図2(A)、(B)は、それぞれ、電子部品内蔵モジュール100の要部断面図であり、
図2(A)は
図1のY‐Y部分を示し、
図2(B)は
図1のZ‐Z部分を示している。
【
図3】
図3(A)、(B)は、それぞれ、電子部品内蔵モジュール100の製造方法の一例において施される工程を示した斜視図である。
【
図4】
図3(B)の続きであり、
図4(C)は、電子部品内蔵モジュール100の製造方法の一例において施される工程を示した斜視図である。
【
図5】
図5(A)から(F)は、それぞれ、第1実施形態に係る電子部品内蔵モジュール100の変形例を示す要部平面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る電子部品内蔵モジュール200を示す要部断面図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係る電子部品内蔵モジュール300を示す要部断面図である。
【
図8】
図8は、第4実施形態に係る電子部品内蔵モジュール400を示す要部断面図である。
【
図9】
図9は、第5実施形態に係る電子部品内蔵モジュール500を示す要部断面図である。
【
図10】
図10は、特許文献2に開示された従来の電子部品内蔵モジュール600を示す断面図である。
【
図11】
図11(A)、(B)は、それぞれ、従来の電子部品内蔵モジュール600を示した断面図であり、
図11(B)は
図11(A)のX‐X部分を示している。
【
図12】
図12(A)、(B)は、それぞれ、従来の電子部品内蔵モジュール600の要部断面図であり、
図12(A)は、電子部品内蔵モジュール600を電子機器の基板(図示せず)等にはんだ付けする前の状態を示し、
図12(B)は、はんだ付けするために電子部品内蔵モジュール600を加熱した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面とともに、本願発明を実施するための形態について説明する。
(第1実施形態)
図1、
図2(A)、(B)は、それぞれ、第1実施形態に係る電子部品内蔵モジュール100を示している。ただし、
図1は平面図であり、
図2(A)は
図1のY‐Y部分の断面図であり、
図2(B)は
図1のZ‐Z部分の断面図である。なお、
図1では、
図2(A)、(B)に示した封止樹脂7を省略して示している。また、
図1では、見やすさのために、図の中で左上のランド電極2、電子部品3のみに詳細に符号を付し、その他の部分では符号を省略している。
【0040】
電子部品内蔵モジュール100は、基板1を備える。基板1は、例えば、樹脂やセラミック等からなる。基板1は、多層構造に形成されていても良い。また基板1は、内部に電子部品が内蔵されていても良い。
【0041】
基板1の主面には、ランド電極2が形成されている。ランド電極2の材質は任意であるが、例えば、銅、アルミニウム等が用いられる。なお、図示していないが、基板1の主面には、ランド電極2間等を接続する配線電極が形成される場合がある。
【0042】
基板1には、ランド電極2を使って、部品本体の両端に端子電極3aが形成された電子部品3や、部品本体の底面に複数のフリップチップ電極(図示せず)が形成された電子部品4が実装されている。具体的には、電子部品3の端子電極3aや、電子部品4のフリップチップ電極が、ろう材、例えばはんだ5により、ランド電極2に固定されている。
【0043】
部品本体の両端に端子電極3aが形成された電子部品3を実装するためのランド電極2のうち、少なくとも1つには、スリット2sが形成されている。スリット2sが形成されたランド電極2は、ランド電極片2aと2bとの2つの部分で構成されている。なお、本実施形態においては、
図1に示すように、大小2種類の大きさからなる合計8個の電子部品3が実装されているが、これらを実装する8対のランド電極2の全てにスリット2sが形成されている。なお、電子部品4のフリップチップ電極を固定するためのランド電極2には、スリット2sを形成する必要ない。
【0044】
スリット2sの形成されたランド電極2と電子部品3の端子電極3aとの固定部分においては、スリット2s上にはんだが付かないため、はんだ5に空隙5sが形成されている。
【0045】
基板1に実装された電子部品3、4を覆うように、封止樹脂7が形成されている。封止樹脂7の材質は任意であるが、例えば、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の硬化性樹脂を使用することができる。
【0046】
封止樹脂7は、半溶融状態で電子部品3、4上に配置された後、固化ないし硬化されている。基板1と電子部品3、4との隙間には、それぞれ空間S
1が形成されている。
【0047】
電子部品内蔵モジュール100は、電子機器の基板(図示せず)等にはんだ付けする際等に加熱することにより、封止樹脂7に含まれた液体成分がガスになり、膨張しても、そのガスをはんだ5に形成された空隙5sによって通過させることができる。このため、ガスにより、再溶融したはんだ5が基板1と電子部品3との間の空間S
1に押し出されることはなく、電子部品3の両端子電極3a間等を電気的に短絡させてしまうことがない。また、溶融したはんだ5が押し出されることがないため、電子部品3の端子電極3aとランド電極2との間等が導通不良になってしまうことがない。
【0048】
なお、電子部品内蔵モジュールが、使用される前に、封止樹脂に液体成分が残留してしまったり、封止樹脂が液体成分を吸収してしまったりする機会としては、製造時や保管時がある。本実施形態に係る電子部品内蔵モジュール100は、万一、製造時に封止樹脂に液体成分が残留してしまっても、あるいは保管時に封止樹脂が液体成分を吸収してしまっても、電子機器の基板等にはんだ付けする際に、内部において電気的短絡や導通不良が発生することがない。
【0049】
また、電子部品内蔵モジュールの耐はんだフラッシュ性を検査する方法として、完成した電子部品内蔵モジュールを、一定時間、高湿度下に置き、液体成分を吸収させたうえで、加熱して基板にはんだ付けし、電子部品内蔵モジュールの内部において電気的短絡や導通不良が発生していないかどうか検査する方法がある。本実施形態に係る電子部品内蔵モジュール100は、このような検査においても、内部において電気的短絡や導通不良が発生することがない。
【0050】
上述した構造からなる、第1実施形態に係る電子部品内蔵モジュール100は、例えば、
図3(A)から
図4(C)に示す工程を経て製造することができる。
【0051】
まず、
図3(A)に示すように、基板1に、ランド電極2を形成する。ランド電極2の少なくとも1つは、スリット2s、ランド電極片2a、2bを備える。ランド電極2は、例えば、基板1の主面全面に銅箔を貼り、所望の形状にエッチングすることにより形成することができる。
【0052】
次に、
図3(B)に示すように、ランド電極2上にクリームはんだ5’を塗布したうえで、ランド電極2上に、部品本体の両端に端子電極3aが形成された電子部品3を仮固定する。図示しないが、同様に、部品本体の底面に複数のフリップチップ電極が形成された電子部品4を、クリームはんだ5’が塗布されたランド電極2上に仮固定する。
【0053】
次に、
図4(C)に示すように、加熱してクリームはんだ5’を溶融させ、続いて冷却して固化させることにより、電子部品3の端子電極3aを、はんだ5によりランド電極2に固定する。図示しないが、同様に、電子部品4のフリップチップ電極を、はんだ5によりランド電極2に固定する。
【0054】
次に、電子部品3、4を封止樹脂7で覆って、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュール100を完成させる。なお、電子部品3、4を封止樹脂7で覆う工程は、例えば封止樹脂7が熱硬化性樹脂である場合には、半溶融状の封止樹脂7を電子部品3、4上に配置し、下面を電子部品3、4の形状に合わせて変形させるとともに、上面を平坦にしたうえで、加熱して硬化させることによりおこなうことができる。なお、電子部品3、4と、基板1との間の空間S
1は、半溶融状態の封止樹脂7を配置する速度等を調整することにより、容易に形成することができる。
【0055】
以上、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュール100の構造、およびその製造方法の一例について説明した。しかしながら、本願発明の内容がこれらに限定されることはなく、本願発明の趣旨に沿って種々の変更を加えることができる。
【0056】
例えば、ランド電極2に形成するスリットの形状、本数等は任意であり、種々の変更を加えることができる。
図5(A)〜(F)に、スリットの変形例を示す。
【0057】
図5(A)に示す変形例では、スリット12sの幅を細くした。
【0058】
図5(B)に示す変形例では、スリット22sの幅を太くした。
【0059】
図5(C)に示す変形例では、スリット32sを2本にした。なお、この場合、ランド電極2は、ランド電極片2a、2b、2cの3つの部分で構成される
図5(D)に示す変形例では、スリット42sの方向を斜めにした。なお、スリット42sのように、その形成方向を斜めにすると、はんだ5に形成される空隙5aの方向とガスの膨張する方向とを一致させることができ、この場合にはガスを通過させる効果を向上させることができる。
【0060】
図5(E)に示す変形例では、スリット52sを、ランド電極2の内部において屈曲させた。
【0061】
図5(F)に示す変形例では、スリット62sを、貫通した形状ではなく、途中で塞がった形状にした。この場合、はんだ5に形成される空隙5aも途中で壁により塞がったものとなるが、この場合には、膨張したガスは、壁を突き破って通過したり、壁を押しやって空隙5a内に吸収されたりする。
【0062】
また、電子部品内蔵モジュール100では、ランド電極2にスリット2sを形成することにより、ランド電極2と電子部品3の端子電極3aとの固定部分のはんだ5に空隙5sを形成しているが、空隙5sの形成方法はこの方法には限定されない。はんだ5の空隙5sは、例えば、ランド電極上にはんだ(ろう材)に対するレジストを付着させる方法、電子部品の端子電極上にはんだに対するレジストを付着させる方法、電子部品の端子電極に電極非形成部を設ける方法等によっても形成することができる。
【0063】
また、電子部品内蔵モジュール100では、ろう材としてはんだ5を使用しているが、ろう材の種類ははんだには限られず、例えば導電性接着剤であっても良い。なお、ろう材である導電性接着剤に空隙を形成する方法としては、例えば、導電性接着剤をランド電極上の離れた複数箇所に印刷する方法等を採用することができる。
(第2実施形態)
図6に、第2実施形態に係る電子部品内蔵モジュール200を示す。ただし、
図6は、電子部品内蔵モジュール200の要部断面図である。
【0064】
図1、
図2(A)、
図2(B)に示した第1実施形態に係る電子部品内蔵モジュール100では、ランド電極2にスリット2sを形成することにより、ランド電極2と電子部品3の端子電極3aとの固定部分のはんだ5に空隙5sを形成した。
【0065】
第2実施形態に係る電子部品内蔵モジュール200では、これに代えて、基板1上にスリットのない幅の大きなランド電極72を形成し、ランド電極72上に、所望のパターンからなる、はんだ(ろう材)レジスト8を形成することにより、ランド電極2と電子部品3の端子電極3aとの固定部分のはんだ5に空隙5sを形成した。はんだレジスト8としては、例えばエポキシ樹脂を使用することができる。
【0066】
第2実施形態に係る電子部品内蔵モジュール200の他の構成は、第1実施形態に係る電子部品内蔵モジュール100と同じにした。
(第3実施形態)
図7に、第3実施形態に係る電子部品内蔵モジュール300を示す。ただし、
図7は、電子部品内蔵モジュール300の要部断面図である。
【0067】
第3実施形態に係る電子部品内蔵モジュール300では、基板1上にスリットのない幅の大きなランド電極72を形成するとともに、電子部品3の端子電極3a上に、所望のパターンからなる、はんだレジスト18を形成することにより、ランド電極2と電子部品3の端子電極3aとの固定部分のはんだ5に空隙5sを形成した。
【0068】
第3実施形態に係る電子部品内蔵モジュール300の他の構成は、第1実施形態に係る電子部品内蔵モジュール100と同じにした。
(第4実施形態)
図8に、第4実施形態に係る電子部品内蔵モジュール400を示す。ただし、
図8は、電子部品内蔵モジュール400の要部断面図である。
【0069】
第4実施形態に係る電子部品内蔵モジュール400では、基板1上にスリットのない幅の大きなランド電極72を形成するとともに、電子部品3の端子電極3aに、所望のパターンからなる電極非形成部9を形成することにより、ランド電極2と電子部品3の端子電極3aとの固定部分のはんだ5に空隙5sを形成した。電極非形成部9は、電子部品3の本体部分が露出しており、はんだは付着しない。
【0070】
第4実施形態に係る電子部品内蔵モジュール400の他の構成は、第1実施形態に係る電子部品内蔵モジュール100と同じにした。
(第5実施形態)
図9に、第5実施形態に係る電子部品内蔵モジュール500を示す。ただし、
図9は、電子部品内蔵モジュール500の要部断面図である。
【0071】
第5実施形態に係る電子部品内蔵モジュール500は、第1実施形態に係る、基板1に実装された電子部品3、4と、封止樹脂7との間に、フィルム6を介在させている。フィルム6はガスを透過させる。フィルム6には、例えば、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの硬化性樹脂やポリフェニレンサルファイドなどの熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0072】
フィルム6は、例えば、真空ラミネート、ラバープレス、静水圧プレス等、複雑な表面形状に追従可能な方法により、基板1および基板1に実装された電子部品3、4上に貼りつけ、続いて、熱硬化や光硬化等の方法により硬化させることにより形成することができる。
【0073】
第5実施形態に係る電子部品内蔵モジュール500は、フィルム6を備えているため、電子部品3、4と、基板1との間の空間S
1の形成が容易である。また、封止樹脂7を形成する際に、はんだ5の空隙5sが封止樹脂7で埋まってしまうことがない。したがって、第5実施形態においても、封止樹脂7に含まれた液体成分によるガスの影響を受けることがなく、電子部品の電気的短絡や導通不良が発生しない。
【0074】
第5実施形態に係る電子部品内蔵モジュール500の他の構成は、第1実施形態に係る電子部品内蔵モジュール100と同じにした。
【0075】
なお、第5実施形態に係る電子部品内蔵モジュール500に適用したフィルム6は、上述した第2〜4実施形態に係る電子部品内蔵モジュール200〜400においても、適用することが可能である。
【0076】
以上、第1〜5実施形態に係る電子部品内蔵モジュール100〜500について説明した。なお、各実施形態においては、種々の構成の変更が可能である。たとえば、はんだ5に形成される空隙5sは、電子部品3の両端の端子電極3aとランド電極2との接続箇所に設けられる必要はなく、一方の端子電極側だけに設けられていてもよい。
【0077】
また、各実施形態では、基板1に実装されたすべての電子部品3に対して、はんだ5に形成される空隙5sを設けるように構成しているが、必ずしもすべての電子部品3に適用される必要はなく、ランド電極間が小さなパターンには空隙5sを適用するが、ランド電極間が大きなパターンには空隙5sは適用されなくともよい。
【符号の説明】
【0078】
1: 基板
2、72:ランド電極
2a、2b、2c:ランド電極片
2s、12s、22s、32s、42s、52s、62s:スリット
3:電子部品(少なくとも1対の端子電極3aが形成された電子部品)
3a:端子電極
4:電子部品(底面に複数のフリップチップ電極が形成された電子部品)
5:はんだ
5s:空隙
6: フィルム
7:封止樹脂
8、18:はんだレジスト
9:電極非形成部(電子部品3の端子電極3aに形成された電極非形成部)
S
1:空間
100、200、300、400、500:電子部品内蔵モジュール