(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の光磁気ディスク装置用の光路調整装置では、第1固定部材と第2固定部材とがボルトにより固定される際に、ボルトの締め付けトルクに起因して、第1固定部材と第2固定部材との位置ずれが生じる場合があるという問題点がある。また、第1固定部材と第2固定部材とがボルトにより固定された状態で、振動、衝撃および温度変化などに起因して、固定状態が緩む場合があり、この場合にも、第1固定部材と第2固定部材との位置ずれが生じるという問題点がある。これらの問題点は、上記特許文献1の構成をプロジェクタおよびヘッドアップディスプレイ装置の光源保持部と、光学系保持部との固定に適用した場合にも生じると考えられる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、光源保持部と光学系保持部とを高精度に位置決めした状態で固定することが可能で、かつ、高精度に位置決めした状態を維持することが可能なプロジェクタおよびヘッドアップディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の局面によるプロジェクタは、光源ユニットと、光源ユニットからの光を走査する光走査部と、を備え、光源ユニットは、光源を保持するための光源保持部と、光源からの光が入射される光学系を保持するための光学系保持部と、を含み、光源保持部と、光学系保持部とが互いにレーザ溶着されて
おり、光源保持部または光学系保持部の少なくともいずれか一方は、光透過性樹脂製である。
【0008】
この発明の第1の局面によるプロジェクタでは、上記のように、光源保持部と、光学系保持部とを互いにレーザ溶着する。これにより、たとえば、光源保持部と光学系保持部とがボルトなどにより固定される場合と異なり、締め付けトルクが生じない。その結果、光源保持部と光学系保持部との固定の際の位置ずれを抑制することができるので、光源保持部と光学系保持部とを高精度に位置決めした状態で、固定することができる。また、光源保持部と光学系保持部とをレーザ溶着により一体化することができるので、光源保持部と光学系保持部とがレーザ溶着により固定された状態で、振動、衝撃および温度変化などに起因して、光源保持部と光学系保持部との位置ずれが生じるのを抑制することができる。その結果、光源保持部と光学系保持部とがレーザ溶着により固定された状態で、光源保持部と光学系保持部とが高精度に位置決めされた状態を維持することができる。これらの結果、光源保持部と光学系保持部とを高精度に位置決めした状態で固定することが可能で、かつ、高精度に位置決めした状態を維持することができる。
【0009】
上記第1の局面によるプロジェクタにおいて、好ましくは、光源保持部と光学系保持部とは、光源を挟む複数の位置で、レーザ溶着されている。このように構成すれば、1箇所のみで、光源保持部と光学系保持部とがレーザ溶着により固定されるのと比べて、光源保持部と光学系保持部とをより強固に固定することができる。
【0010】
上記第1の局面によるプロジェクタにおいて、好ましくは
、光源保持部または光学系保持部のいずれか他方は、光吸収性樹脂製である。このように構成すれば、光源保持部と光学系保持部とを容易にレーザ溶着を用いて、固定することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、光源保持部は、光透過性樹脂製であり、光学系保持部は、光吸収性樹脂製である。このように構成すれば、通常各種の部材(たとえば、光学系に続くプリズムなどの光学部材)が設けられることの多い光学系保持部側とは反対の光源保持部側(光透過性樹脂側)からレーザ溶着に用いられるレーザ光を照射することができる。その結果、光源保持部と光学系保持部とを、容易に、レーザ溶着により固定することができる。
【0012】
上記光源保持部が光透過性樹脂製であり、光学系保持部が光吸収性樹脂製である構成において、好ましくは、光透過性樹脂製の光源保持部は、レーザ溶着される領域に対応する位置に、光学系保持部とは反対側に突出する凸部を有する。このように構成すれば、光学系保持部とは反対側からレーザ光を透過する透明な板(たとえば、ガラス板)により光透過性樹脂製の光源保持部を押圧した状態で、レーザ溶着に用いられるレーザ光を照射する場合に、透明な板と光学系保持部とは反対側に突出する光源保持部の凸部とを容易に密着させることができる。その結果、透明な板と光源保持部の凸部との間に空気(空気の層)が介在してしまうのを容易に抑制することができる。したがって、空気(空気の層)によりレーザ光の集光位置(焦点)がずれることに起因して、レーザ溶着による固定が十分に行われないのを抑制することができる。
【0013】
上記第1の局面によるプロジェクタにおいて、好ましくは、光源ユニットは、光源保持部と光学系保持部とがレーザ溶着された状態で、光学系保持部を保持するためのハウジングをさらに含み、光学系保持部とハウジングとが締結部材により締結されている。このように構成すれば、比較的近接して配置されるため高精度な位置決めの必要な光源保持部と光学系保持部とでは、レーザ溶着により高精度に位置決めした状態で固定する一方で、比較的高精度な位置決めの必要のない(比較的誤差の許容できる)光学系保持部とハウジングとでは、固定作業が容易な締結部材による固定構造とすることができる。また、ハウジングと光学系保持部とが共に光吸収性樹脂製であり、レーザ溶着が困難な場合であっても、締結部材によってハウジングと光学系保持部とを容易に固定することができる。
【0014】
上記第1の局面によるプロジェクタにおいて、好ましくは、光源ユニットは、光源保持部と光学系保持部とがレーザ溶着された状態で、光学系保持部を保持するためのハウジングをさらに含み、光学系保持部とハウジングとが互いにレーザ溶着されている。このように構成すれば、光源保持部と光学系保持部とに加えて、光学系保持部とハウジングとにおいても、高精度に位置決めした状態で、固定することができる。
【0015】
この発明の第2の局面によるヘッドアップディスプレイ装置は、光源ユニットと、ユーザが視認する虚像に対応する光源ユニットからの光を走査する光走査部と、を備え、光源ユニットは、光源を保持するための光源保持部と、光源からの光が入射される光学系を保持するための光学系保持部と、を含み、光源保持部と、光学系保持部とが互いにレーザ溶着されて
おり、光源保持部または光学系保持部の少なくともいずれか一方は、光透過性樹脂製である。
【0016】
この発明の第2の局面によるヘッドアップディスプレイ装置では、上記のように、光源保持部と、光学系保持部とを互いにレーザ溶着する。これにより、第2の局面のヘッドアップディスプレイ装置においても、光源保持部と光学系保持部とを高精度に位置決めした状態で固定することが可能で、かつ、高精度に位置決めした状態を維持することができる。また、高輝度が要求されるヘッドアップディスプレイ装置では、通常のプロジェクタよりも、光源保持部に保持された光源と、光学系保持部に保持された光学系とが近接して配置されることが多い。そして、光源と光学系とが近接して配置される場合には、位置ずれによる影響が大きくなるため、より高精度に位置決めした状態で固定することが要求される。したがって、光源保持部と光学系保持部とを高精度に位置決めした状態で固定可能で、かつ、高精度に位置決めした状態を維持することができるのは、ヘッドアップディスプレイ装置において実用上極めて効果的である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、光源保持部と光学系保持部とを高精度に位置決めした状態で固定することが可能で、かつ、高精度に位置決めした状態を維持することが可能なプロジェクタおよびヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(第1実施形態)
まず、
図1を参照して、本発明の第1実施形態によるヘッドアップディスプレイ装置100の構成について説明する。なお、ヘッドアップディスプレイ装置100は、本発明の「プロジェクタ」の一例である。
【0021】
本発明の第1実施形態によるヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置と記載する)100は、
図1に示すように、自動車600などの輸送用機器に搭載されるように構成されている。また、HUD装置100は、フロントガラスまたは図示しないコンバイナなどのスクリーン601に投影画像を形成する光を投影(照射)するように構成されている。そして、スクリーン601に投影された投影画像を形成する光は、スクリーン601において反射されて、ユーザにより視認される。この際、投影画像は、ユーザに対してスクリーン601の前方の位置で、虚像としてユーザにより視認される。このHUD装置100は、カーナビゲーションに関する情報や、自動車600の速度、各種通知の情報などを、投影画像として投影するように構成されている。
【0022】
また、
図2に示すように、HUD装置100は、光源ユニット1と、光走査部2と、表示制御部3とを備えている。
【0023】
ここで、第1実施形態では、
図2、
図3および
図4に示すように、光源ユニット1は、3つ(青(B)、赤(R)および緑(G))のレーザダイオード10(10a、10bおよび10c)と、3つのレーザダイオード10をそれぞれ保持するための3つの光源保持部20とを含んでいる。また、光源ユニット1は、3つのレーザダイオード10からのレーザ光がそれぞれ入射される3つのコリメートレンズ30と、3つのコリメートレンズ30をそれぞれ保持するための3つの光学系保持部40とを含んでいる。そして、このHUD装置100では、光源保持部20と光学系保持部40とが互いにレーザ溶着されている。なお、レーザダイオード10およびコリメートレンズ30は、それぞれ、本発明の「光源」および「光学系」の一例である。このレーザダイオード10を保持するための光源保持部20と、コリメートレンズ30を保持するための光学系保持部40とのレーザ溶着による固定の詳細については、後述する。
【0024】
また、
図2および
図3に示すように、光源ユニット1は、3つ(青(B)、赤(R)および緑(G))のレーザ光を合成してそれぞれのレーザ光の光軸を揃えるための3つのプリズム51a、51bおよび51cと、プリズム51a、51bおよび51cを通過したレーザ光のスポット形状を整形するためのビーム整形プリズム52と、ビーム整形プリズム52を通過したレーザ光を集光するための集光レンズ53とを含んでいる。
【0025】
また、
図3に示すように、光源ユニット1は、各種の部材を保持するためのハウジング60を含んでいる。ハウジング60は、レーザダイオード10を保持した光源保持部20と、コリメートレンズ30を保持した光学系保持部40とがレーザ溶着された状態で、光学系保持部40を保持するように構成されている。
【0026】
具体的には、ハウジング60では、3つ(青(B)、赤(R)および緑(G))のレーザダイオード10a〜10cに対応する部材(光源保持部20、コリメートレンズ30および光学系保持部40)が、それぞれ、Z2方向側の面、X1方向側の面およびX2方向側の面で保持されている。また、ハウジング60の内部には、3つのプリズム51a〜51cと、ビーム整形プリズム52とが設けられている。
【0027】
光源ユニット1では、レーザダイオード10aは、青色のレーザ光を3つのプリズム51a、51bおよび51c、ビーム整形プリズム52および集光レンズ53を通過させて光走査部2に照射するように構成されている。また、レーザダイオード10bは、赤色のレーザ光をプリズム51b、51c、ビーム整形プリズム52および集光レンズ53を通過させて光走査部2に照射するように構成されている。また、レーザダイオード10cは、緑色のレーザ光をプリズム51c、ビーム整形プリズム52および集光レンズ53を通過させて光走査部2に照射するように構成されている。すなわち、3つのレーザダイオード10a〜10cから出射されたレーザ光は、一点鎖線により示す光路を通って、ハウジング60の出射口60aから光走査部2に向けて出射される。なお、
図3では、集光レンズ53を図示していない。
【0028】
光走査部2は、レーザダイオード10からのレーザ光を水平走査方向に走査するための水平光走査部2aと、レーザダイオード10からのレーザ光を垂直走査方向に走査するための垂直光走査部2bとを含んでいる。水平光走査部2aおよび垂直光走査部2bは、それぞれ、MEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーにより構成されている。
【0029】
光走査部2では、水平光走査部2aは、レーザダイオード10からのレーザ光を反射させて、垂直光走査部2bを介して、自動車600(
図1参照)のスクリーン601に対して水平走査方向に走査するように構成されている。また、垂直光走査部2bは、水平光走査部2aにおいて反射されたレーザ光をさらに反射させて、自動車600のスクリーン601に対して垂直走査方向に走査するように構成されている。これにより、光走査部2は、レーザダイオード10からのレーザ光(すなわち、投影画像を形成する光)をスクリーン601に対して、水平走査方向および垂直走査方向に走査するように構成されている。その結果、投影画像を形成する光が、スクリーン601に投影(照射)される。
【0030】
表示制御部3は、外部から入力される映像信号に基づいて、投影画像の投影を制御するように構成されている。具体的には、表示制御部3は、外部から入力される映像信号に基づいて、光走査部2(2aおよび2b)の駆動を制御するとともに、レーザダイオード10(10a、10bおよび10c)によるレーザ光の照射を制御するように構成されている。これにより、表示制御部3は、光走査部2およびレーザダイオード10を制御して、スクリーン601に対して投影画像を投影する制御を行うように構成されている。
【0031】
次に、
図3〜
図9を参照して、レーザダイオード10、光源保持部20、コリメートレンズ30および光学系保持部40の構成について詳細に説明する。なお、レーザダイオード10、光源保持部20、コリメートレンズ30および光学系保持部40は、それぞれ、3つずつ設けられるが、レーザダイオード10から出射されるレーザ光の色が異なる以外は、略同一の構成であるので、
図4〜
図8を参照する説明ではハウジング60のZ1方向側の面に設けられたレーザダイオード10a(以下、単にレーザダイオード10と記載する)に対応する構成を例にして説明する。
【0032】
レーザダイオード10は、
図4、
図6および
図7に示すように、発光部11と、ステム12と、3つの端子部13とを有している。発光部11、ステム12および3つの端子部13は、共に、金属製である。
【0033】
発光部11は、光軸方向(Z方向)に延びる円柱状に形成されている。また、発光部11の内部には、半導体レーザ素子などが設けられている。ステム12は、発光部11よりも大きい直径で光軸方向(Z方向)に延びる円柱状に形成されており、発光部11を支持するように構成されている。3つの端子部13は、ステム12から発光部11とは反対側に向かって延びる円柱状に形成されており、図示しない配線部(たとえば、フレキシブルプリント基板)などを介して、電源から電力が供給されるように構成されている。レーザダイオード10では、端子部13に電源から電力が供給されることによって、発光部11からレーザ光が出射される。
【0034】
ここで、第1実施形態では、光源保持部20は、
図4、
図6および
図7に示すように、本体部21と、2つの溶着固定部22とを有している。また、光源保持部20は、光透過性樹脂製(ここでは、PPS(ポリフェニレンスルファイド)樹脂製)である。ここで、光透過性とは、レーザ溶着に用いられる所定の波長(たとえば、約800nm〜約1100nm)のレーザ光を、約15%以上、好ましくは約20%以上透過する性質のことである。
【0035】
本体部21は、光軸方向(Z方向)から見て略矩形状に形成されている。また、本体部21には、略矩形状の中央にレーザダイオード10を保持するための開口部21aが設けられている。開口部21aは、光軸方向から見てレーザダイオード10のステム12の直径よりも若干大きい略円形状に形成されており、略円形状の内周縁に3つの嵌合部21bが所定の角度間隔(約120度間隔)で設けられている。また、略円形状の開口部21aの内周縁には、3つの嵌合部21bの他に回転位置決め部21cが設けられている。3つの嵌合部21bおよび回転位置決め部21cは、それぞれ、開口部21aの内側方向(円の中心に向かう方向)に突出するように形成されている。本体部21は、レーザダイオード10のステム12が回転位置決め部21cにより光軸方向を軸線とする回転方向に位置決めされた状態で、嵌合部21bに圧入嵌合されることによって、レーザダイオード10を保持するように構成されている。
【0036】
2つの溶着固定部22は、それぞれ、光軸方向(Z方向)から見て、略矩形状に形成されている。また、2つの溶着固定部22は、それぞれ、光軸方向(Z方向)から見てレーザダイオード10とは重ならない位置で、かつ、レーザダイオード10を挟む点対称の位置に設けられている。また、2つの溶着固定部22は、共に、Z方向の厚みが本体部21よりも十分に小さい厚みに形成されている。これは、本体部21がレーザダイオード10を保持するため所定の厚みが必要である一方、溶着固定部22は、レーザ溶着用のレーザ光が透過するようにある程度厚みを小さくすることにより、容易にレーザ光が透過するように構成する必要があるからである。
【0037】
また、2つの溶着固定部22には、それぞれ、光学系保持部30とは反対側(Z2方向側)に突出する凸部22aが設けられている、凸部22aは、溶着固定部22からZ2方向に向かって突出する略円柱状に形成されており、略円柱状のZ2方向側の端面22bが略平坦に形成されている。また、略円柱状の凸部22aは、その直径がレーザ溶着用のレーザ光のスポット径よりも十分に大きくなるように形成されている。なお、凸部22aは、樹脂材料を金型から離型する際のE/P(イジェクトピン)としても機能するように構成されている。これにより、この凸部22a以外にE/Pを設ける場合と比べて、光源保持部20の形状が複雑化するのを抑制することが可能である。
【0038】
光源保持部20は、この2つの溶着固定部22の凸部22aに対応する裏面(Z2方向側の面)において、光学系保持部40とレーザ溶着されている。なお、
図6では、理解の容易のため、レーザ溶着が行われる箇所(レーザ溶着領域)を、模式的にハッチングにより示している。
【0039】
光学系保持部40は、
図3〜
図7に示すように、ベース部41と、ベース部41から着脱可能な光学系保持部材42とを備えている。
図7に示すように、光学系保持部材42には、内部にコリメートレンズ30が保持されている。また、ベース部41および光学系保持部材42は、共に、樹脂製である。
【0040】
また、ベース部41は、光吸収性樹脂製(ここでは、PPS(ポリフェニレンスルファイド)樹脂製)である。すなわち、ベース部41は、光源保持部20と共通の樹脂材料(PPS)により形成されている。ここで、光吸収性とは、レーザ溶着に用いられる所定の波長(たとえば、約800nm〜約1100nm)のレーザ光を、略吸収する(略透過しない)性質のことである。なお、共通の樹脂材料により光透過性樹脂および光吸収性樹脂を形成する方法としては、たとえば、顔料や染料などの吸収色素を樹脂に配合する比率を調整することにより、溶着用レーザ光の透過率(吸収率)を調整する方法を用いればよい。
【0041】
また、ベース部41は、光軸方向(Z方向)から見て、略矩形状に形成されている。また、ベース部41には、略矩形状の中央にレーザダイオード10の発光部11が貫通する開口部41aが設けられている。また、ベース部41には、光軸方向から見て光源保持部20の2つの溶着固定部22と重ならない位置に、2つの貫通孔41bが設けられている。2つの貫通孔41bは、
図9に示すネジ部材71が貫通するために設けられており、レーザダイオード10を挟んで点対称の位置にそれぞれが配置されている。光学系保持部40は、ベース部41がネジ部材71によりハウジング60に2箇所で締結されることにより、ハウジング60に固定されるように構成されている。なお、ネジ部材71は、本発明の「締結部材」の一例である。
【0042】
また、ベース部41には、光源保持部20とは反対側(Z1方向側)に、光源保持部材42を配置するための台座部41cと、台座部41cのX方向の両側に2つの押え部41dとが設けられている。
【0043】
光学系保持部材42は、内部にコリメートレンズ30を保持した状態で、台座部41cに配置されるように構成されている。また、光学系保持部材42には、ベース部41の押え部41dと係合する受け部42aが、X方向の両側に設けられている。光学系保持部材42は、
図5に示すように、台座部41cに配置された状態で、押え部41dにより受け部42aがY2方向に押えられることにより、ベース部41に取り付けられるように構成されている。なお、押え部41dにより受け部42aがY2方向に押えられた状態では、光学系保持部材42は、台座部41c上を光軸方向(Z方向)に摺動可能な状態である。この状態で、レーザダイオード11との光軸方向の位置決め(位置調整)がなされた後、光学系保持部材42は、台座部41cに接着剤により固定される。
【0044】
次に、
図7および
図8を参照して、光源保持部20と光学系保持部40とのレーザ溶着による固定について説明する。その後、
図9を参照して、光学系保持部40とハウジング60とのネジ部材71による固定について説明する。
【0045】
まず、
図7に示すように、光源保持部20に保持されたレーザダイオード10と、光学系保持部40に保持されたコリメートレンズ30との位置決め(位置調整)が行われる。具体的には、光学系保持部40の光学系保持部材42を光軸方向(Z方向)に摺動させて、コリメートレンズ30とレーザダイオード10との光軸方向の位置決めが行われるとともに、光学系保持部40のベース部41に光源保持部20を押し付けた状態でXY平面内で移動させることにより、コリメートレンズ30とレーザダイオード10とのXY平面内での位置決めが行われる。
【0046】
そして、コリメートレンズ30とレーザダイオード10との相対位置が決定した後、光学系保持部材42とベース部41とが接着剤により固定されるとともに、光源保持部20と光学系保持部40とがレーザ溶着により固定される。
【0047】
具体的には、
図8に示すように、光源ユニット1では、所定の波長(たとえば、約800nm〜約1100nm)の溶着用レーザ光を透過するガラス板80によりZ1方向側(すなわち、光学系保持部40側)に光源保持部20が押し付けられた状態で、レーザ溶着が行われる。詳細には、光源ユニット1では、ガラス板80が光源保持部20の凸部22aの端面22bに押し付けられた状態で、レーザ溶着が行われる。
【0048】
レーザ溶着が行われる際、溶着用レーザ光は、光源保持部20側(Z2方向側)から光源保持部20の凸部22aに向けて照射される。この際、溶着用レーザ光は、光源保持部20と光学系保持部40の境界面の溶着領域において焦点を結ぶように照射される。そして、溶着用レーザ光は、透明なガラス板80および光透過性樹脂製の光源保持部20の凸部22aを透過して、光吸収性樹脂製の光学系保持部40により吸収される。その結果、
図8に示すように、光源保持部20と光学系保持部40の境界面の溶着領域において、光透過性樹脂製の光源保持部20と光吸収性樹脂製の光学系保持部40とが、共に、溶融される。その結果、光源保持部20と光学系保持部40とが溶着される。なお、レーザ溶着は、2つの溶着固定部22の凸部22aの両方で行われる。
【0049】
そして、
図9に示すように、光源保持部20と光学系保持部40とがレーザ溶着された状態で、設計上の光軸とレーザダイオード10の光軸とが一致するように、治具を用いてレーザダイオード10とハウジング60との位置決め(位置調整)が行われる。具体的には、ハウジング60の側面に光学系保持部40を押し付けた状態で、ハウジング60の側面と平行な平面内で光学系保持部40を移動させることにより、レーザダイオード10とハウジング60との位置決め(位置調整)が行われる。そして、レーザダイオード10とハウジング60との相対位置が決定した後、2つのネジ部材71によりハウジング60に光学系保持部40が固定(締結)される。
【0050】
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0051】
第1実施形態では、上記のように、光源保持部20と、光学系保持部40とを互いにレーザ溶着する。これにより、たとえば、光源保持部20と光学系保持部40とがボルトなどにより固定される場合と異なり、光源保持部20と光学系保持部40とがレーザ溶着により固定されるので、締め付けトルクが生じない。その結果、光源保持部20と光学系保持部40との固定の際の位置ずれを抑制することができるので、光源保持部20と光学系保持部40とを高精度に位置決めした状態で、固定することができる。また、光源保持部20と光学系保持部40とをレーザ溶着により一体化することができるので、光源保持部20と光学系保持部40とがレーザ溶着により固定された状態で、振動、衝撃および温度変化などに起因して、光源保持部20と光学系保持部40との位置ずれが生じるのを抑制することができる。その結果、光源保持部20と光学系保持部40とがレーザ溶着により固定された状態で、光源保持部20と光学系保持部40とが高精度に位置決めされた状態を維持することができる。これらの結果、光源保持部20と光学系保持部40とを高精度に位置決めした状態で固定可能で、かつ、高精度に位置決めした状態を維持することができる。したがって、光源保持部20と光学系保持部40との位置ずれが生じるのに起因して、ヘッドアップディスプレイ装置100により自動車600のスクリーン601に投影される投影画像の輝度や画質が低下するのを抑制することができる。
【0052】
また、自動車600のスクリーン601のように外光(環境の光)の影響の強い状況で用いられるヘッドアップディスプレイ装置100では、とりわけ高輝度が要求される。高輝度が要求されるヘッドアップディスプレイ装置100では、通常のプロジェクタよりも、光源保持部20に保持されたレーザダイオード10と、光学系保持部40に保持されたコリメートレンズ30とが、
図7に示すように、近接して配置される。そして、レーザダイオード10とコリメートレンズ30とが近接して配置される場合には、位置ずれによる影響が大きくなるため、より高精度に位置決めした状態で固定することが要求される。したがって、光源保持部20と光学系保持部40とを高精度に位置決めした状態で固定可能で、かつ、高精度に位置決めした状態を維持することができるのは、ヘッドアップディスプレイ装置100において実用上極めて効果的である。
【0053】
また、第1実施形態では、上記のように、光源保持部20と光学系保持部40とを、レーザダイオード10を挟む複数の位置(すなわち、2つ溶着固定部22に対応する位置)で、レーザ溶着する。これにより、1箇所のみで、光源保持部20と光学系保持部40とがレーザ溶着により固定されるのと比べて、光源保持部20と光学系保持部40とをより強固に固定することができる。
【0054】
また、第1実施形態では、上記のように、光源保持部20は、光透過性樹脂製であり、光学系保持部40は、光吸収性樹脂製である。これにより、光源保持部20と光学系保持部40とを容易にレーザ溶着を用いて、固定することができる。
【0055】
また、光源保持部20は、光透過性樹脂製であり、光学系保持部40は、光吸収性樹脂製であることによって、各種の部材(コリメートレンズ30に続くプリズム51a〜51cなどの光学部材)が設けられることの多い光学系保持部40側とは反対の光源保持部20側(すなわち、光透過性樹脂側)からレーザ溶着に用いられるレーザ光を照射することができる。その結果、光源保持部20と光学系保持部40とを、容易に、レーザ溶着により固定することができる。
【0056】
また、第1実施形態では、上記のように、光透過性樹脂製の光源保持部20は、レーザ溶着される領域に対応する位置(すなわち、溶着固定部22の位置)に、光学系保持部40とは反対側に突出する凸部22aを有する。これにより、光学系保持部40とは反対側からレーザ光を透過するガラス板80により光透過性樹脂製の光源保持部20を押圧した状態で、レーザ溶着に用いられるレーザ光を照射する際に、ガラス板80と光学系保持部40とは反対側に突出する光源保持部20の凸部22aとを容易に密着させることができる。その結果、ガラス板80と光源保持部20の凸部22aとの間に空気(空気の層)が介在してしまうのを容易に抑制することができる。したがって、空気(空気の層)によりレーザ光の集光位置(焦点)がずれることに起因して、レーザ溶着による固定が十分に行われないのを抑制することができる。
【0057】
また、第1実施形態では、上記のように、光学系保持部40とハウジング60とをネジ部材71により締結する。これにより、比較的近接して配置されるため高精度な位置決めの必要な光源保持部20と光学系保持部40とでは、レーザ溶着により高精度に位置決めした状態で固定する一方で、比較的高精度な位置決めの必要のない(比較的誤差の許容できる)光学系保持部40とハウジング60とでは、ネジ部材71による簡素な固定構造とすることができる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、
図1〜
図3および
図10を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、光学系保持部とハウジングとがネジ部材により固定された上記第1実施形態とは異なり、光学系保持部とハウジングとがレーザ溶着により固定される例について説明する。なお、上記第1実施形態と同一の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0059】
本発明の第2実施形態によるヘッドアップディスプレイ装置200(
図1参照)は、
図2および
図3に示すように、光源ユニット101を備えている。光源ユニット101は、光学系保持部140と、光吸収性樹脂製のハウジング160とを含んでいる。なお、ヘッドアップディスプレイ装置200は、本発明の「プロジェクタ」の一例である。
【0060】
ここで、第2実施形態では、
図10に示すように、光学系保持部140は、ベース部141を備えている。ベース部141には、光透過性樹脂製の2つの溶着固定部141eが設けられている。また、2つの溶着固定部141eは、共に、光軸方向から見て略円形状に形成されており、レーザダイオード10を挟んで点対称の位置にそれぞれが形成されている。ベース部141では、溶着固定部141eの部分が光透過性樹脂により形成されるとともに、その他の主要な部分が光吸収性樹脂により形成されている。すなわち、ベース部141は、光透過性樹脂および光吸収性樹脂の2色成形により形成されている。なお、
図10では、理解の容易のため、レーザ溶着が行われる箇所(レーザ溶着領域)を、模式的にハッチングにより示している。
【0061】
また、第2実施形態では、光源保持部20と光学系保持部140とが、光源保持部20の2つの溶着固定部22の凸部22aにおいてレーザ溶着されているとともに、光学系保持部140とハウジング160とが、光学系保持部140の2つの溶着固定部141eにおいてレーザ溶着されている。光学系保持部140は、光源保持部20の溶着固定部22の凸部22aの裏面側では光吸収性樹脂製である一方、溶着固定部141eでは光透過性樹脂製であるので、
図10に示す4つの位置においてレーザ溶着することが可能である。
【0062】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0063】
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0064】
第2実施形態では、上記のように、光源保持部20と、光学系保持部140とを互いにレーザ溶着する。これにより、上記第1実施形態と同様に、光源保持部20と光学系保持部140とを高精度に位置決めした状態で固定可能で、かつ、高精度に位置決めした状態を維持することができる。
【0065】
また、第2実施形態では、上記のように、光学系保持部140とハウジング160とを互いにレーザ溶着する。これにより、光源保持部20と光学系保持部140とに加えて、光学系保持部140とハウジング160とにおいても、高精度に位置決めした状態で、固定することができる。
【0066】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0067】
(第3実施形態)
次に、
図1、
図2および
図11を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、上記第1および第2実施形態とは異なり、光学系保持部とハウジングとが付勢部材により固定される例について説明する。なお、上記第1および第2実施形態と同一の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0068】
本発明の第3実施形態によるヘッドアップディスプレイ装置300(
図1参照)は、
図2に示すように、光源ユニット201を備えている。光源ユニット201は、
図11に示すように、板バネからなる3つの付勢部材290を含んでいる。なお、ヘッドアップディスプレイ装置300は、本発明の「プロジェクタ」の一例である。
【0069】
第3実施形態では、光源保持部20と光学系保持部40とがレーザ溶着された状態で、光学系保持部40とハウジング60とが付勢部材290により固定されている。詳細には、光源ユニット201では、付勢部材290によりハウジング60の内側(3つのプリズム51a〜51cが配置される内部側)に向けて光学系保持部40が付勢されることにより、光学系保持部40とハウジング60とが固定されている。なお、3つの付勢部材290は、3つの光学系保持部40に対応する位置に設けられている。
【0070】
付勢部材290には、光学系保持部40をハウジング60の内側に向けて付勢するための2つの付勢部291が設けられている。2つの付勢部291は、それぞれ、レーザダイオード10を挟んで点対称の位置に形成されている。
【0071】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0072】
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0073】
第3実施形態では、上記のように、光学系保持部40とハウジング60とを付勢部材290により固定する。これにより、光学系保持部40とハウジング60との固定構造を、ネジ部材71(
図9参照)による固定構造と同様に、板バネからなる付勢部材290による簡素な固定構造とすることができる。
【0074】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0075】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0076】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置100(200、300)としてのプロジェクタに本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、HUD装置としてのプロジェクタ以外のプロジェクタにも適用可能である。たとえば、PCまたはテレビジョン装置などの外部機器からの映像を投影するプロジェクタに本発明を適用してもよい。
【0077】
また、上記第1〜第3実施形態では、輸送用機器に搭載されるHUD装置100(200、300)に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、輸送用機器に搭載されるHUD装置以外のHUD装置に適用可能である。
【0078】
また、上記第1〜第3実施形態では、光源保持部20と光学系保持部40(140)とが2つの位置(2つの溶着固定部22に対応する位置)でレーザ溶着された例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、光源保持部と光学系保持部とが1または3つ以上の位置でレーザ溶着されてもよい。
【0079】
また、上記第1実施形態では、光源保持部20を光透過性樹脂製とし、光学系保持部40を光吸収性樹脂製とした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、光源保持部を光吸収性樹脂製とし、光学系保持部を光透過性樹脂製としてもよい。また、その他にも、たとえば、光源保持部と光学系保持部とを共に光透過性樹脂製とし、光源保持部と光学系保持部との間に光吸収体を挟むようにしてもよい。
【0080】
また、上記第1実施形態では、光源保持部20の溶着固定部22に凸部22aを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、光源保持部の溶着固定部に凸部を設けなくともよい。なお、この場合には、レーザ溶着のレーザ光が照射される位置に凹部が形成されないように光源保持部とガラス板とを十分に密着させることが好ましい。
【0081】
また、上記第1実施形態では、光学系保持部40とハウジング60とをネジ部材71により固定し、上記第2実施形態では、光学系保持部140とハウジング160とをレーザ溶着により固定し、上記第3実施形態では、光学系保持部40とハウジング60とを付勢部材290により固定した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、光学系保持部とハウジングとをネジ部材、レーザ溶着および付勢部材以外を用いて固定してもよい。たとえば、光学系保持部とハウジングとをUV硬化接着剤などの接着剤により固定してもよい。
【0082】
また、上記第1実施形態では、光透過性樹脂および光吸収性樹脂として、PPS(ポリフェニレンスルファイド)を用いた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、光透過性樹脂および光吸収性樹脂としてPPS以外の樹脂材料を用いてもよい。たとえば、光透過性樹脂および光吸収性樹脂として、ABS樹脂や、PP樹脂などを用いてもよい。さらに、光透過性樹脂と光吸収性樹脂とは、異なる樹脂から構成してもよい。光透過性樹脂および光吸収性樹脂に用いる樹脂材料は、本発明を適用するプロジェクタおよびヘッドアップディスプレイ装置の使用条件(たとえば、耐熱などの条件)に応じて、適宜決定されればよい。