特許第6394142号(P6394142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394142
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】固形製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/06 20060101AFI20180913BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20180913BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20180913BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20180913BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20180913BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20180913BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20180913BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20180913BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   A61K33/06
   A61K47/26
   A61K47/12
   A61K47/02
   A61K9/14
   A61K9/08
   A61K9/16
   A61K9/10
   A61P1/10
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-147713(P2014-147713)
(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公開番号】特開2015-42634(P2015-42634A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2017年7月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-154767(P2013-154767)
(32)【優先日】2013年7月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浜下 智宏
【審査官】 澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−115085(JP,A)
【文献】 特開2004−292356(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/079118(WO,A1)
【文献】 マテリアルライフ,1991年,3(2),p.104-109
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00−9/72,
A61K31/33−33/44,
A61K47/00−47/69,
A61P1/00−43/00
JSTPlus(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硫酸マグネシウムを製剤全体に対して5質量%以上、(B)糖アルコール及び(C)ステアリン酸またはその塩、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び軽質無水ケイ酸から選ばれる1種以上を含有する散剤、用事調製用ドライシロップ、又は顆粒剤である固形製剤。
【請求項2】
(A)硫酸マグネシウムを製剤全体に対して15質量%以上、(B)糖アルコール及び(C)ステアリン酸またはその塩、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び軽質無水ケイ酸から選ばれる1種以上を含有する散剤、用事調製用ドライシロップ、又は顆粒剤である固形製剤。
【請求項3】
成分(B)の糖アルコールが、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノース及び粉末還元麦芽糖水アメからなる群より選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の固形製剤。
【請求項4】
服用時に液体に溶解、分散して用事調製する、請求項1〜3に記載の固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固結が抑制された固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
硫酸マグネシウムは瀉下作用を有する有効成分として汎用されているが、吸湿性が高いため、そのまま固形製剤に配合すると製剤が固結してしまうことから、固形製剤としての提供が難しい。また、硫酸マグネシウムは苦味が強いため、味の改善のために糖アルコールを配合する方法が採られている(特許文献1参照)。しかしながら、糖アルコールも吸湿性が高いことから、硫酸マグネシウムと糖アルコールを配合した製剤は固結してしまうことから、固形製剤としての提供が難しい。そこで、硫酸マグネシウムを水に溶解させて内用液剤として提供する方法が一般的には採られている(特許文献1参照)。
【0003】
固形製剤における固結防止剤の選択は、含有する薬物に依存することはよく知られており、重要な課題と考えられる。しかし、硫酸マグネシウムを含有する固形製剤において固結防止効果に関する情報は不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−339158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、有効成分として硫酸マグネシウムを含有し、糖アルコールを配合しても固結が抑制された固形製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、硫酸マグネシウムと糖アルコールを配合した固形製剤について、その固結を抑制すべく鋭意検討を行った。その結果、ステアリン酸又はその塩、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び軽質無水ケイ酸の少なくとも1種を配合した場合のみ,固結が抑制されることを見出した。
かかる知見に基づき完成した本発明の態様は、
(1)(A)硫酸マグネシウム、(B)糖アルコール及び(C)ステアリン酸またはその塩、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び軽質無水ケイ酸から選ばれる1種以上を含有する固形製剤、
(2)成分(B)の糖アルコールが、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノース及び粉末還元麦芽糖水アメからなる群より選択される1種以上である、(1)に記載の固形製剤、
(3)服用時に液体に溶解、分散して用事調製する、(1)又は(2)に記載の固形製剤
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、硫酸マグネシウムと糖アルコールを配合した、固結が抑制された硫酸マグネシウム含有固形製剤を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、以下の成分(A)〜(C)を含む固形製剤である。
【0009】
(A)硫酸マグネシウム;
(B)糖アルコール;
(C)ステアリン酸又はその塩、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び軽質無水ケイ酸から選ばれる1種以上。
【0010】
本発明は固形の瀉下用製剤であり、(A)硫酸マグネシウムを有効成分として含有することを特徴とする。硫酸マグネシウムの含有量は、有効成分として機能し且つ固結の課題が生じる程度であり、具体的には製剤全体に対して5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%、さらに好ましくは15〜25質量%である。
【0011】
(B)「糖アルコール」の含有量は、硫酸マグネシウムに起因する苦味の改善を図るという点から、硫酸マグネシウム1質量部に対して0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上である。糖アルコールの種類は特に限定されず、例えば、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノース、粉末還元麦芽糖水アメなどが挙げられる。好ましくは、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、粉末還元麦芽糖水アメである。上記糖アルコールを単独又は2種類以上の組み合わせで使用しても良い。
【0012】
本発明は、成分(A)及び成分(B)を含有する固形製剤を製造するにあたって生じる固結の問題を解決するために、成分(C)をさらに加える点に特徴を有する。成分(C)は、ステアリン酸又はその塩、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び軽質無水ケイ酸から選ばれる1種以上である。
【0013】
ステアリン酸又はその塩としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムが挙げられ、好ましくはステアリン酸マグネシウムである。ステアリン酸又はその塩の配合量は、製剤全体に対して0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。
【0014】
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの配合量は、製剤全体に対して0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。
【0015】
本発明で使用する軽質無水ケイ酸は、平均細孔径が21nm以上のものが好ましい。市販品として入手可能な好ましい軽質無水ケイ酸としては、例えばアドソリダー101(フロイント社製:平均細孔径21nm)、サイリシア−350(ワイ・ケイ・エフ社製:平均細孔径21nm)がある。軽質無水ケイ酸の配合量は、製剤全体に対して0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。
【0016】
固形製剤を製造するにあたって、成分(A)、(B)及び(C)を混合する方法や順序に特に制限はない。例えば成分(A)及び(B)に成分(C)を粉末で配合する方法、成分(C)を溶解した溶液を用い成分(A)及び(B)に公知の製造方法により噴霧する方法、成分(C)を溶解した溶液を用い成分(A)及び(B)に噴霧、造粒する方法、または、成分(A)、(B)及び(C)を混合し、公知の造粒方法により粒状製剤を得る方法などがある。また、例えば造粒を行う場合、造粒方法にも特に制限はない。
【0017】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、該固形製剤に他の有効成分及び公知の添加剤を配合することができる。公知の添加剤としては、日本医薬品添加剤協会編「医薬品添加物事典2007」(2007年、薬事日報社)に収載されている添加剤等が挙げられる。
【0018】
本発明の固形製剤は、散剤、用事調製用ドライシロップ剤、又は顆粒剤として提供できる他、これをゼラチンや高分子のハードカプセルに充填し、カプセル剤として提供したり、該製剤粒子を他の賦形剤等と混合し、これを圧縮成形(打錠)することによって、錠剤として提供したりすることも可能である。
【実施例】
【0019】
以下に、実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明を更に詳細に説明する。
【0020】
実施例1
硫酸マグネシウム 5.00g
D−ソルビトール 20.00g
ステアリン酸マグネシウム 1.25g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0021】
実施例2
硫酸マグネシウム 5.00g
D−ソルビトール 20.00g
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム 1.00g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0022】
実施例3
硫酸マグネシウム 5.00g
D−ソルビトール 20.00g
軽質無水ケイ酸(商品名:アドソリダー101) 1.25g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0023】
実施例4
硫酸マグネシウム 5.00g
D−ソルビトール 20.00g
軽質無水ケイ酸(商品名:サイリシア−350) 1.25g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0024】
実施例5
硫酸マグネシウム 5.00g
粉末還元麦芽糖水アメ 20.00g
軽質無水ケイ酸(商品名:サイリシア−350) 1.00g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0025】
実施例6
硫酸マグネシウム 5.00g
D−マンニトール 20.00g
軽質無水ケイ酸(商品名:サイリシア−350) 1.00g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0026】
実施例7
硫酸マグネシウム 5.00g
エリスリトール 20.00g
軽質無水ケイ酸(商品名:サイリシア−350) 1.00g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0027】
実施例8
硫酸マグネシウム 5.00g
D−ソルビトール 25.00g
軽質無水ケイ酸(商品名:サイリシア−350) 2.00g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0028】
実施例9
硫酸マグネシウム 5.00g
D−ソルビトール 25.00g
軽質無水ケイ酸(商品名:サイリシア−350) 1.50g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0029】
実施例10
硫酸マグネシウム 5.00g
D−ソルビトール 25.00g
軽質無水ケイ酸(商品名:サイリシア−350) 1.00g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0030】
比較例1
硫酸マグネシウム 5.00g
D−ソルビトール 20.00g
含水二酸化ケイ素(商品名:アドソリダー102) 1.00g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0031】
比較例2
硫酸マグネシウム 5.00g
D−ソルビトール 20.00g
ケイ酸カルシウム 0.30g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0032】
比較例3
硫酸マグネシウム 5.00g
D−ソルビトール 20.00g
タルク 1.25g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0033】
比較例4
硫酸マグネシウム 5.00g
D−ソルビトール 20.00g
トウモロコシデンプン 1.25g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0034】
比較例5
硫酸マグネシウム 5.00g
D−ソルビトール 20.00g
バレイショデンプン 1.25g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0035】
比較例6
硫酸マグネシウム 5.00g
D−ソルビトール 20.00g
マクロゴール−4000 1.20g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0036】
比較例7
硫酸マグネシウム 5.00g
D−ソルビトール 20.00g
マクロゴール−6000 0.75g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0037】
比較例8
硫酸マグネシウム 5.00g
D−ソルビトール 20.00g
ショ糖脂肪酸エステル(グレード:S−1670) 0.60g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0038】
比較例9
硫酸マグネシウム 5.00g
D−ソルビトール 20.00g
ショ糖脂肪酸エステル(グレード:J−1805) 0.60g
上記成分を30号篩にて篩過した後、ビニール袋にて混合し、固形製剤を得た。
【0039】
試験例1 固結評価試験
(1)方法
実施例1〜10及び比較例1〜9で調製した固形製剤を用い、ガラスビン(2K)に封入、金属キャップにて密栓した。各試料を50℃で3時間放置した後、ビンを逆さまにした際に粉体が落下するか否かで固結状況を確認した。評価基準を以下に示した。
固結状況(○:固結せずガラスビン内で粉体が落下。×:固結してガラスビン内で粉体が落下しなかった。)結果を下表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
(2)結果
表1より、比較例1〜9では固形製剤が固結してしまい、医薬品に用いる組成物としては適当ではないと考えられる。
一方、実施例1〜10では、固結は確認されず、医薬品に用いる組成物として十分に機能することが窺われる。
(3)考察
試験例1の結果より、比較例1〜9の組成物に比し、実施例1〜10の組成物では、固結が抑制され、安定な固形製剤を提供できると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により、固結の問題が改善された硫酸マグネシウム及び糖アルコールを含有する固形製剤の提供が可能となり、医薬品産業の発展に寄与することが期待される。