(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コンタクト層の前記第2部位は、前記集電体凸部の接触面に接触する接触部(243)と、前記酸化ガス流路に露出する露出部(244)とを有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の固体酸化物形燃料電池セル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体酸化物形燃料電池の電池セルが有する空気極およびその空気極の集電体側を覆うコンタクト層は、通常、酸素イオンも電子も流す導電材料である混合伝導体で構成されている。これに対し、特許文献1には、電子伝導パスとイオン伝導パスとを有する電極を空気極にも適用可能と記載されているので、混合伝導体を特許文献1の電極に置き換えたとすれば、Ptのような貴金属が電子伝導材として用いられない限り、電子伝導材の酸化によって電池セルの発電効率が落ちることになる。また、Ptのような貴金属は高価であり、実用性の点で問題がある。従って、空気極の改良を進めるためには、特許文献1とは異なる方法を見いだす必要があった。
【0006】
ここで、発明者らは、
図15および
図16に示す2パターンの空気極90およびコンタクト層92の構成を検討した。
図15および
図16では、集電体94は、空気極90側へ突き出た複数の集電体凸部941を備えている。コンタクト層92は、集電体凸部941と空気極90との間に形成され、集電体94と空気極90とを電気的に接続している。コンタクト層92の気孔率は一様になっている。また、複数の集電体凸部941の相互間には、酸化ガスが流れる酸化ガス流路942が形成されている。但し、
図15では、コンタクト層92は、集電体凸部941に対する接触部分にだけ設けられ、空気極90は、酸化ガス流路942に露出した部分を有している。その一方で、
図16では、コンタクト層92は、空気極90の全面を覆っている。
【0007】
図15の構成では、空気極90の電気抵抗値は一般的にコンタクト層92の電気抵抗値よりも大きいので、空気極90全体のうちコンタクト層92の周囲では、酸素と電子とが結び付き酸素イオンが生じる反応すなわち空気極90での反応は活発に行われる。その一方で、空気極90全体のうち、集電体凸部941の相互間の中央付近における集電体94から遠い側たとえばA1部分は、空気極90での反応にあまり利用されない。すなわち、
図15の構成には、空気極90のうち発電に有効に寄与する有効発電面積を拡大する余地があった。また、これを改善するために、例えば集電体凸部941の相互間隔を狭くしたとすれば、酸化ガス流路942が狭くなり、酸化ガス流路942を流れる酸化ガスの圧損が増すことになる。
【0008】
また、
図16の構成では、空気極90全体のうちA2部分へのガス拡散性が悪くなり、そのA2部分は、空気極90での反応にあまり利用されない。すなわち、
図16の構成にも空気極90の有効発電面積を拡大する余地があった。そのA2部分は、空気極90全体のうち、集電体凸部941に空気極90の厚み方向で重なる凸部直下で且つ集電体94から遠い側に位置する。このような悪いガス拡散性を改善するために、例えばコンタクト層92全体の気孔率を大きくしたとすれば、コンタクト層92の電子伝導性が全体的に悪化する。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、空気極の有効発電面積を拡大することが可能な固体酸化物形燃料電池セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池セルの発明では、一方面(16a)とその一方面に対する反対側に設けられた他方面(16b)とを有する固体電解質層(16)と、
固体電解質層に対し一方面側に積層され、酸化ガスが供給される空気極(18)と、
固体電解質層に対し他方面側に積層され、燃料ガスが供給される燃料極(20)と、
空気極の固体電解質層側とは反対側の表面(18a)を覆い、集電体(12)と空気極とを電気的に接続すると共に酸化ガスが透過する多孔質のコンタクト層(24)とを備え、
コンタクト層は、第1部位(241)と、コンタクト層の厚み方向(DR1)と直交する方向に第1部位に対して隣接しその第1部位よりも気孔率が大きい第2部位(242)とを有し、
第1部位は、集電体との間に、酸化ガスが流れる酸化ガス流路(30)を形成し、
第2部位は、集電体の一部を構成し空気極側へ向かって突き出た集電体凸部(121)に接触
し、
第2部位は、コンタクト層に接触する集電体凸部の接触面(123)の全体が第2部位に接触するように形成されていることを特徴とする。
【0011】
上述の発明によれば、コンタクト層は、第1部位と第2部位とを有し、第1部位は集電体との間に酸化ガス流路を形成し、第2部位は集電体凸部に接触し、その第2部位は第1部位よりも気孔率が大きいので、例えばコンタクト層が空気極の表面に均一な気孔率で設けられた構成と比較して、コンタクト層の導電性を全体として殆ど損なわないようにしつつ、空気極のうち集電体凸部の直下の部位における酸化ガスの拡散効率を高くすることができる。従って、空気極において酸化ガス流路の酸化ガスを満遍なく拡散させることができるので、空気極の有効発電面積を拡大することが可能である。
【0012】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した括弧内の各符号は、後述する実施形態に記載の具体的内容との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態、変形例、および比較例の相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0015】
図1は、本実施形態における固体酸化物形燃料電池セル10の構造を示した図であり、断面図示されている。
図1に示す固体酸化物形燃料電池セル10(以下、単に電池セル10と呼ぶ)は、複数積層されることにより不図示の燃料電池スタックを構成する。そして、燃料電池スタックにおいて電池セル10相互間には集電体12がそれぞれ介装されている。すなわち、電池セル10は、燃料電池スタックにおける発電の最小単位となっている。
【0016】
図1に示すように、電池セル10は、電解質層16と空気極18と燃料極20と中間層22とコンタクト層24とを備えており、コンタクト層24、空気極18、中間層22、電解質層16、燃料極20の順に積層されている。そのため、電池セル10は、それらを積層する積層方向を厚み方向DR1とした平板形状を成している。なお、各層16、18、20、22、24の厚み方向はそれぞれ、電池セル10の厚み方向DR1と同じである。また、電池セル10の厚み方向DR1をセル厚み方向DR1と呼ぶ。
【0017】
電解質層16は、固体酸化物形燃料電池に用いられる周知の固体電解質層である。電解質層16は、燃料ガスが透過するのを防ぐ緻密層である。また、電解質層16は、酸素イオン(O
2−)を透過させ、電気的な絶縁性を有している。電解質層16は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)で構成されている。
【0018】
具体的に、電解質層16は平板形状を成している。そして、電解質層16は、一方面16aとその一方面16aに対する反対側に設けられた他方面16bとを有している。すなわち、電解質層16において一方面16aおよび他方面16bは互いに表裏関係にある。
【0019】
中間層22は、電解質層16に対しその電解質層16の一方面16a側に積層され、その一方面16aに接合されている。この中間層22は、電解質層16と空気極18との間に介装されている。中間層22は、例えばガドリニウムドープセリア(GDC、Gd
1-XCe
XO
2-δ)で構成されている。中間層22は、酸素イオンを透過させる酸素イオン伝導性を有している。また、中間層22は、空気極18の元素拡散を抑制し、それにより電解質層16と空気極18との反応を防止するための反応防止層として機能する。
【0020】
空気極18は、中間層22に対し電解質層16側とは反対側に接合されている。すなわち、空気極18は、電解質層16に対しその電解質層16の一方面16a側に、中間層22を介して積層されている。この空気極18は、固体酸化物形燃料電池に用いられる周知の空気極電極層であるので、導電性を有する多数の微細な金属酸化物粒子が焼結することによって構成された多孔質層となっている。そのため、空気極18は、ガス拡散性を有し、電子伝導性および酸素イオン伝導性も有している。そして、空気極18は、酸素ガスを酸素イオン化する反応場を形成する。空気極18は、例えばランタンストロンチウムコバルタイト(LSC)、サマルトリウムストロンチウムコバルタイト(SSC)、またはランタンストロンチウムコバルタイトフェライト(LSCF)等で構成されている。
【0021】
電池セル10の最外層であるコンタクト層24とコンタクト層24に接触する集電体12との間に、酸化ガスとしての空気が流通する酸化ガス流路30が形成されている。空気極18には、その酸化ガス流路30から酸化ガスが供給される。なお、酸化ガスは酸化剤ガスとも呼ばれる。
【0022】
集電体12は、積層された電池セル10同士の間に介装されている。集電体12は例えばステンレスなどの金属で構成され、集電体12の表面は、例えば、酸化ガスによる酸化を防ぐために酸化防止層でコーティングされている。
【0023】
集電体12は、燃料電池スタックにおいて集電体12を挟む一方の電池セル10に供給される酸化ガスと、他方の電池セル10に供給される燃料ガスとを分離する役割を果たす。それと共に、集電体12は、上記一方の電池セル10が有する空気極18と、上記他方の電池セル10が有する燃料極20とを電気的に接続する役割も果たす。
【0024】
図1および
図2に示すように、集電体12は複数の集電体凸部121を備えている。その集電体凸部121は空気極18側へ向かって突き出ている。その集電体凸部121は、セル厚み方向DR1に直交する凸部並び方向DR2に一定間隔を空けて並んでおり、その凸部並び方向DR2およびセル厚み方向DR1のそれぞれに直交するガス流通方向DR3(
図7参照)に延びるように形成されている。
図2は
図1のII部詳細図である。
【0025】
集電体凸部121は一定間隔を空けて並んでいるので、集電体凸部121同士の間には集電体凹部122が形成されている。この集電体凹部122とコンタクト層24とに囲まれた空間が酸化ガス流路30となっているので、酸化ガス流路30は、コンタクト層24に沿った一方向であるガス流通方向DR3へ延びるように形成され、酸化ガスはガス流通方向DR3へ流れる。そして、複数の酸化ガス流路30は、凸部並び方向DR2に集電体凸部121を挟んで並ぶように形成されている。すなわち、凸部並び方向DR2は酸化ガス流路30の並び方向でもある。
【0026】
燃料極20は、電解質層16に対しその電解質層16の他方面16b側に積層され、その他方面16bに接合されている。燃料極20には、その燃料極20が属する電池セル10に対して隣接して積層された他の電池セル10の空気極18に接触している集電体12が、電解質層16側とは反対側から接触する。そして、燃料極20には、燃料ガスが供給される。
【0027】
燃料極20は、固体酸化物形燃料電池に用いられる周知の燃料極電極層であり、多孔質層となっている。そのため、燃料極20は、電子伝導性、酸素イオン伝導性、およびガス拡散性を有している。そして、燃料極20は、酸素イオンと燃料ガスとが反応する反応場を形成する。燃料極20は、例えばNi−YSZ等で構成されている。燃料極20は、電池セル10の中で最も厚い層として構成され、電池セル10の支持体として十分な機械的強度および耐久性を備えている。燃料極20の多孔質は、「NiO→Ni」の還元反応および造孔剤の作用によって生じたものである。
【0028】
コンタクト層24は、空気極18の電解質層16側とは反対側の表面18aを覆っている。酸化ガス流路30から空気極18へのガス拡散を許容しつつ、集電体12と空気極18との間の電気的接触性を向上させる。また、コンタクト層24は、凸部並び方向DR2およびガス流通方向DR3(
図7参照)における集電体12と空気極18との熱膨張差を緩和する役割も果たす。
【0029】
コンタクト層24は、例えばランタンニッケルフェライト(LNF;LaNi
0.6Fe
0.4O
3)等の導電性を有する多数の微細な金属酸化物粒子で構成された多孔質層となっている。そのため、コンタクト層24は、集電体12と空気極18とを電気的に接続すると共に酸化ガスが透過する。
【0030】
具体的に、コンタクト層24は、気孔率が相互に異なる第1部位241と第2部位242とから構成されており、第2部位242の気孔率は、第1部位241の気孔率よりも大きくなっている。コンタクト層24の気孔率とは、コンタクト層24内に形成された気孔の体積割合であり、気孔率が高いほどガス拡散性も高くなる。
【0031】
コンタクト層24の第1部位241および第2部位242は、ガス流通方向DR3(
図7参照)へ延びるように形成されている。そして、第1部位241および第2部位242は、凸部並び方向DR2に交互に並んで設けられている。すなわち、第1部位241および第2部位242は、凸部並び方向DR2に互いに隣接して配置されている。
【0032】
集電体凸部121はその先端面を、コンタクト層24に接触する接触面123として備えている。そして、集電体凸部121はコンタクト層24の第2部位242に押し付けられ、その第2部位242は、集電体凸部121の接触面123に接触している。その一方で、コンタクト層24の第1部位241は集電体凸部121には接触しておらず、集電体12との間に酸化ガス流路30を形成している。
【0033】
コンタクト層24について詳細に言うと、第2部位242は、集電体凸部121の接触面123の全体がその第2部位に接触するように形成されている。言い換えれば、セル厚み方向DR1から見たときに、第2部位242は、集電体凸部121の接触面123の全体がその第2部位242が占める領域内に入るように形成されている。従って、セル厚み方向DR1から見た第2部位242の面積は、集電体凸部121の接触面123の面積よりも大きい。
【0034】
また、コンタクト層24の第2部位242は、セル厚み方向DR1から見たときに、その第2部位242に接触する集電体凸部121の接触面123と相似する形状を成している。例えば、セル厚み方向DR1から見た第2部位242の形状は、集電体凸部121の接触面123と縦横比率が同じ長方形形状を成している。
【0035】
更に詳細に言えば、コンタクト層24の第2部位242は、集電体凸部121の接触面123に直接接触している接触部243と、酸化ガス流路30に露出している露出部244とを有している。そして、その露出部244は、凸部並び方向DR2において接触部243を挟んだ両側にそれぞれ形成されている。
【0036】
また、凸部並び方向DR2における露出部244の幅は、接触部243と第1部位241との何れと比較しても格段に小さい。例えば、酸化ガス流路30に対して露出部244が面する総面積は、酸化ガス流路30に対して第1部位241が面する総面積よりも小さい。
【0037】
次に、電池セル10の製造方法について、
図3および
図4のフローチャートを用いて説明する。
図3は、電解質層16用のグリーンシートおよび燃料極20用のグリーンシートをそれぞれ製造する製造工程を示したフローチャートである。電解質層16用のグリーンシートと燃料極20用のグリーンシートとは別々に製造され材料が異なるが、フローチャートとしては共通している。
【0038】
図3に示すように、先ずステップS101では、グリーンシートの材料を用意する。例えば、燃料極20用のグリーンシートを作製するのであれば、その材料は、有機溶媒または水に、酸化ニッケル(NiO)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、気孔形成用の造孔剤、バインダー、および可塑剤などを混入したものである。
【0039】
続くステップS102では、ステップS101にて用意したグリーンシートの材料を混合撹拌し、その後、ステップS103では、ドクターブレード法などによって、そのグリーンシートの材料をシート状に成形する。
【0040】
続くステップS104では、成形後のグリーンシートの材料を乾燥させ固化させる。これにより、グリーンシートを得ることができる。なお、グリーンシートとは、金属・無機・有機の微粒子が高分子等の結合剤で保持されたシート状のものであり、グリーンシートの厚みは例えば数μm〜数百μm程度である。
【0041】
グリーンシートが完成すれば、次に
図4に示す製造工程へ移る。
図4は、
図3の工程に続いて電池セル10を製造する製造工程を示したフローチャートである。
図4に示すように、先ずステップS201では、電解質層16用のグリーンシートおよび燃料極20用のグリーンシートを用意する。
【0042】
続くステップS202では、電解質層16用のグリーンシートを所定の外形に成形し、これにより、外形成形後の電解質層形成シートを得る。同様に、燃料極20用のグリーンシートを所定の外形に成形し、これにより、外形成形後の燃料極形成シートを得る。
【0043】
続くステップS203では、電解質層形成シートと燃料極形成シートとを積層して圧着する。続くステップS204では、その圧着したシートを加熱し、それにより、その圧着したシートの脱脂を行う。続くステップS205では、その圧着したシートを更に加熱し、それにより、電解質層形成シートと燃料極形成シートとを一体に焼成する。これにより、電解質層形成シートと燃料極形成シートとから成る焼成基板を製作する。
【0044】
続くステップS206では、ステップS205で製作した焼成基板の電解質層16側に中間層22の材料をスクリーン印刷により形成する。要するに、中間層22の材料を焼成基板に印刷する。
【0045】
続くステップS207では、上記印刷後の焼成基板を加熱し、それにより、中間層22の材料を焼成基板に焼き付ける。すなわち、中間層22を焼成する。
【0046】
続くステップS208では、中間層22が焼き付けられた焼成基板の中間層22側に空気極18の材料をスクリーン印刷により形成する。要するに、中間層22が焼き付けられた焼成基板に空気極18の材料を印刷する。
【0047】
続くステップS209では、上記印刷後の焼成基板を加熱し、それにより、空気極18の材料を焼成基板に焼き付ける。すなわち、空気極18を焼成する。
【0048】
続くステップS210では、空気極18が焼き付けられた焼成基板の空気極18側に、コンタクト層24の第1部位241を構成する第1部位用材料241aをスクリーン印刷により形成する。要するに、
図5および
図6に示すように、空気極18が焼き付けられた焼成基板に第1部位用材料241aを印刷する。詳細には、コンタクト層24の第1部位241と第2部位242とは凸部並び方向DR2に交互に並んで配置されるので、第1部位用材料241aは、第2部位242を形成するために必要な間隔を凸部並び方向DR2に空けて、短冊状に並んで複数箇所に印刷される。
【0049】
なお、
図5は、空気極18上に印刷された第1部位用材料241aを示す斜視図であり、
図6は、
図5のVI−VI断面図である。
図5および
図6では、図示を簡潔にするため、電解質層16、燃料極20、および中間層22の表示を省いている。
【0050】
続く
図4のステップS211では、第1部位用材料241a印刷後の焼成基板を加熱し、それにより、第1部位用材料241aを乾燥させる。この乾燥により、コンタクト層24の第1部位241が完成する。
【0051】
続くステップS212では、第1部位241が形成された焼成基板の空気極18側に、
図7および
図8に示すように、コンタクト層24の第2部位242を構成する第2部位用材料242aをスクリーン印刷により形成する。要するに、空気極18が焼き付けられた焼成基板に第1部位用材料241aを印刷する。詳細には、第2部位用材料242aは、第1部位用材料241aの印刷の逆パターン印刷により、凸部並び方向DR2に並んだ第1部位241同士の間を埋めるように、短冊状に並んで複数箇所に印刷される。
【0052】
なお、
図7は、空気極18上に印刷された第2部位用材料242aを示す斜視図であり、
図8は、
図7のVIII−VIII断面図である。
図7および
図8では、上述の
図5および
図6と同様に、電解質層16、燃料極20、および中間層22の表示を省いている。
【0053】
続く
図4のステップS213では、第2部位用材料242a印刷後の焼成基板を加熱し、それにより、第2部位用材料242aを乾燥させる。この乾燥により、コンタクト層24の第2部位242が完成する。すなわち、ステップS213の完了により、
図1に示す電池セル10が完成する。
【0054】
次に、本実施形態のコンタクト層24による効果を検証するために行った2つの実験について説明する。先ず、第1の実験では、コンタクト層24の形成パターンを5種類設けて、それぞれで電池セル10の出力密度を測定した。そのときの発電条件は、電圧を0.8V、電流密度を所定値、燃料ガスを水素100%、セル厚み方向DR1から見た空気極18の電極面積を49cm
2とした。
【0056】
実験に用いられた5種類のコンタクト層24の形成パターンのうち、上記表1に示すコンタクト層パターン[1]は第1比較パターンである。第1比較パターンでは、
図9に示すように、空気極18の表面18a(
図1参照)全体にコンタクト層24が均一に形成されている。また、コンタクト層24の気孔率は54.5%である。
図9は、第1比較パターンのコンタクト層24を示した斜視図である。
図9〜後述の
図13では、図示を簡潔にするため、電解質層16および燃料極20の表示を省いている。
【0057】
また、上記表1に示すコンタクト層パターン[2]は第2比較パターンである。第2比較パターンでは、
図10に示すように、空気極18の表面18a(
図1参照)においてドット形状のコンタクト層24が凸部並び方向DR2およびガス流通方向DR3のそれぞれの方向に間隔を空けて形成されている。また、コンタクト層24の気孔率は54.3%である。
図10は、第2比較パターンのコンタクト層24を示した斜視図である。
【0058】
この第2比較パターンのコンタクト層24に接触する集電体凸部121は、このコンタクト層24からはみ出ないように接触するドット形状を成しており、第2比較パターンのコンタクト層24と相似形の接触面123を有している。また、上記の第1比較パターンのコンタクト層24に接触する集電体凸部121もこれと同様のドット形状を成している。
【0059】
また、上記表1に示すコンタクト層パターン[3]は第3比較パターンである。第3比較パターンでは、
図11に示すように、空気極18の表面18a(
図1参照)においてガス流通方向DR3にストレートに延びた短冊状のコンタクト層24が凸部並び方向DR2に間隔を空けて形成されている。また、コンタクト層24の気孔率は54〜55%の範囲内に入っている。
図11は、第3比較パターンのコンタクト層24を示した斜視図である。
【0060】
この第3比較パターンのコンタクト層24に接触する集電体凸部121は、このコンタクト層24からはみ出ないように接触するストレートリブ形状を成しており、第3比較パターンのコンタクト層24と相似形の接触面123を有している。
【0061】
また、上記表1に示すコンタクト層パターン[4]は第1実施パターンである。第1実施パターンでは、
図12に示すように、上記第2比較パターンと同形状の第2部位242と、空気極18の表面18aのうち第2部位242以外の部分に設けられた第1部位241とから成るコンタクト層24が形成されている。従って、第1実施パターンのコンタクト層24は、空気極18の表面18a全体を覆っている。
図12は、第1実施パターンのコンタクト層24を示した斜視図である。
【0062】
この第1実施パターンのコンタクト層24に接触する集電体凸部121は、第2比較パターン用と同じであり、コンタクト層24の第1部位241には接触せず第2部位242に接触する。第1実施パターンのコンタクト層24のうち第1部位241の気孔率は54.1%であり、第2部位242の気孔率は60.5%である。
【0063】
また、上記表1に示すコンタクト層パターン[5]は第2実施パターンである。第2実施パターンでは、
図13に示すように、上記第3比較パターンと同形状の第2部位242と、空気極18の表面18aのうち第2部位242以外の部分に設けられた第1部位241とから成るコンタクト層24が形成されている。従って、第2実施パターンのコンタクト層24は、空気極18の表面18a全体を覆っている。
図13は、第2実施パターンのコンタクト層24を示した斜視図である。
【0064】
この第2実施パターンのコンタクト層24に接触する集電体凸部121は、第3比較パターン用と同じであり、コンタクト層24の第1部位241には接触せず第2部位242に接触する。第2実施パターンのコンタクト層24のうち第1部位241の気孔率は55.0%であり、第2部位242の気孔率は68.2%である。なお、上記の気孔率を測定する測定方法に限定はないが、本発明における気孔率とは、例えば、当該物質のバルク体を同一温度で焼成したものを、アルキメデス法で算出した気孔率である。
【0065】
上述した第1、2実施パターンおよび第1〜3比較パターンのうち、第2実施パターンが、
図1に示す本実施形態の実験サンプルである。第1実施パターンは、本実施形態に対して第2部位242の形状をドット形状に変えた変形例の実験サンプルである。また、第1〜3比較パターンは、本実施形態および上記変形例に対する比較例の実験サンプルである。
【0066】
第1の実験を行った結果、上記表1に示すような電池セル10の出力密度となった。ここで、上記表1では、集電体凸部121の形状が2種類あることから、集電体凸部121がコンタクト層24に接触する接触面積が6.2cm
2となっている実験サンプルと、その接触面積が9.8cm
2となっている実験サンプルとが存在する。そして、電池セル10の出力密度は、集電体凸部121の接触面積が大きいほど大きくなりやすいので、出力密度へのコンタクト層24の影響を考察するためには、上記接触面積が同じ実験サンプル同士を比較する必要がある。
【0067】
そこで、集電体凸部121の接触面積が6.2cm
2となっている実験サンプル同士を比較すると、第1比較パターン、第2比較パターン、第1実施パターンのうち、第1実施パターンの出力密度が最も大きくなっており、このことから、第1実施パターンの電池セル10の発電性能は最も高いと言える。
【0068】
また、集電体凸部121の接触面積が9.8cm
2となっている実験サンプル同士を比較すると、第2実施パターンの出力密度が第3比較パターンよりも大きくなっており、このことから、第2実施パターンの電池セル10の発電性能は第3比較パターンの発電性能よりも高いと言える。以上より、コンタクト層24が、気孔率の異なる第1部位241と第2部位242とを備えることは、電池セル10の発電性能を向上させる上で有効であると言える。
【0069】
次に、コンタクト層24による効果を検証するために行った第2の実験について説明する。この第2の実験でも、電池セル10の出力密度を測定した。この第2の実験での発電条件は、上述した第1の実験と同じである。そして、第2の実験では、下記表2のような実験結果を得た。
【0071】
上記表2のコンタクト層パターンの番号すなわち[]内の番号は、第1の実験のコンタクト層パターンの番号と同じパターンを示す。但し、コンタクト層パターン[4]である第1実施パターンと、コンタクト層パターン[5]である第2実施パターンとについては、コンタクト層24の気孔率を違えた実験サンプルを2種類ずつ用意した。
【0072】
詳細に言うと、上記表2に記載された第1実施パターンの2つの実験サンプルのうち、下段に記載のものは、第1の実験に用いられた実験サンプルと同一であり、上段に記載のものは第2の実験用に新たに準備した実験サンプルである。また、上記表2に記載された第2実施パターンの2つの実験サンプルのうち、上段に記載のものは、第1の実験に用いられた実験サンプルと同一であり、下段に記載のものは第2の実験用に新たに準備した実験サンプルである。また、コンタクト層パターン[1]である第1比較パターンに用いられた集電体12の集電体凸部121は、ドット形状ではなくストレートリブ形状となっているので、上記表2の第1比較パターンに対する集電体凸部121の接触面積は9.8cm
2となっている。
【0073】
上記表2の記載において、集電体凸部121の直下とは、第1および第2実施パターンで言えばコンタクト層24の第2部位242のことである。従って、集電体凸部121の直下におけるコンタクト層24の気孔率とは、第1および第2実施パターンでは第2部位242の気孔率のことであり、第1および第2比較パターンでは上記第2部位242に相当する部位における気孔率のことである。
【0074】
また、集電体凸部121の直下の周りとは、第1および第2実施パターンで言えばコンタクト層24の第1部位241のことである。従って、集電体凸部121の直下の周りにおけるコンタクト層24の気孔率とは、第1および第2実施パターンでは第1部位241の気孔率のことであり、第1および第2比較パターンでは上記第1部位241に相当する部位における気孔率のことである。
【0075】
上記表2に示す実験結果から、気孔率を違えた第1実施パターンの何れの実験サンプルでも、電池セル10の出力密度は、第2比較パターンと比較して大きくなっている。また、気孔率を違えた第2実施パターンの何れの実験サンプルでも、電池セル10の出力密度は、第1比較パターンと比較して大きくなっている。
【0076】
従って、この表2に示す実験結果からも、コンタクト層24が、気孔率の異なる第1部位241と第2部位242とを備えることは、電池セル10の発電性能を向上させる上で有効であると言える。また、コンタクト層24の第2部位242のパターン形状をストレート形状に限らず、集電体凸部121の形状に合わせてコンタクト層24の第1部位241および第2部位242のパターン形状を変更しても、電池セル10の発電性能を向上させる効果は生じると言える。
【0077】
上述したように、本実施形態によれば、電池セル10のコンタクト層24は、第1部位241と第2部位242とを有し、第1部位241は集電体12との間に酸化ガス流路30を形成し、第2部位242は集電体凸部121に接触する。そして、第2部位242は第1部位241よりも気孔率が大きい。そのため、コンタクト層24が空気極18の表面18aに均一な気孔率で設けられる構成と比較して、コンタクト層24の導電性を全体として殆ど損なわないようにしつつ、空気極18のうち集電体凸部121の直下の部位における酸化ガスの拡散効率を高くすることができる。言い換えれば、その集電体凸部121の直下の部位へ酸化ガス流路30からスムースに酸化ガスを拡散させることができる。
【0078】
従って、酸化ガス流路30の酸化ガス(
図14のO
2)が、空気極18のうち集電体凸部121の相互間の部位だけに偏らずに、
図14に示すように集電体凸部121の直下にも満遍なく拡散する。それと共に、集電体凸部121からの電子(
図14のe
−)が、空気極18のうち集電体凸部121の直下の部位だけに偏らずに、コンタクト層24を通じて満遍なく行きわたる。
【0079】
その結果、コンタクト層24が空気極18の表面18aに均一に設けられる構成と比較して、空気極18の電極面積に占める有効発電面積を増加させることが可能である。延いては、電池セル10の発電効率を上昇させることが可能である。言い換えれば、
図15のA1部分または
図16のA2部分のような空気極90での反応にあまり利用されない部位を減らすことができ、空気極18の反応サイトを有効に使用できるようになる。なお、空気極18の有効発電面積とは、空気極18のうち発電に有効に寄与する領域の面積をいう。また、
図14は、空気極18における酸化ガスおよび電子の流れを模式的に示した断面図である。
【0080】
また、本実施形態によれば、コンタクト層24の第2部位242は、集電体凸部121の接触面123の全体がその第2部位242に接触するように形成されている。言い換えれば、コンタクト層24の第2部位242は、そのコンタクト層24の厚み方向DR1から見て、集電体凸部121の接触面123の全体が、第2部位242が占める領域内に入るように形成されている。従って、空気極18のうち集電体凸部121の直下の全体においてガス拡散性を高くすることが可能である。
【0081】
また、本実施形態によれば、コンタクト層24の第2部位242は、集電体凸部121の接触面123に接触する接触部243と、酸化ガス流路30に露出する露出部244とを有している。そのため、空気極18のうち集電体凸部121の直下の部位へ拡散する酸化ガスは、第1部位241よりも気孔率が大きい露出部244を介して酸化ガス流路30から拡散するので、露出部244が無い構成と比較して、空気極18へのガス拡散性を高くすることが可能である。
【0082】
また、本実施形態によれば、1つの酸化ガス流路30に対して露出部244が面する総面積は、酸化ガス流路30に対して第1部位241が面する総面積よりも小さいので、酸化ガス流路30に面する第1部位241が小さくなり過ぎず、酸化ガス流路30から空気極18の全体に満遍なく酸化ガスを拡散させることが可能である。
【0083】
(他の実施形態)
(1)上述の実施形態において、
図4のフローチャートではコンタクト層24の第1部位241が形成された後に第2部位242が形成されるが、その順序は逆でも差し支えない。つまり、第2部位242が形成された後に第1部位241が形成されても差し支えない。
【0084】
(2)上述の実施形態において、コンタクト層24の第1部位241および第2部位242はスクリーン印刷により形成されるが、スクリーン印刷以外の他の方法によって形成されても差し支えない。また、第1部位241および第2部位242の形成方法によっては、両方まとめて一工程で乾燥させられても差し支えない。
【0085】
(3)上述の実施形態において、コンタクト層24の第1部位241と第2部位242との間では、両部位241、242の境界を境に気孔率が段階的に異なるが、第1部位241から第2部位242にかけて連続的に気孔率が変化していてもよい。要するに、第2部位242の気孔率が第1部位241の気孔率よりも大きければ、第1部位241と第2部位242とのそれぞれの中で気孔率が一様である必要はない。
【0086】
(4)上述の実施形態において、燃料極20は例えばNi−YSZで構成されているが、他の材料、例えばNi−GDCで構成されていても差し支えない。
【0087】
(5)上述の実施形態において、集電体12の表面は例えば酸化防止層でコーティングされているが、集電体12は、そのような酸化防止層でコーティングされていないものであっても差し支えない。
【0088】
(6)上述の実施形態において、電解質層16は例えばYSZで構成されているが、他の材料、例えばGDCで構成されていることも考え得る。
【0089】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。